英語の文型は日本語で言うところの<てにをは>に相当するものです。<文型>と言いますが、実際には<文>以外の<不定詞句><分詞句><動名詞句>などでも<主語>こそないものの、<目的語>や<補語>がつくことがありますので、本来は<動詞型>と呼ぶべきものです。
文型は人間の頭の中にある<枠組>なので、これを直接見たり、聞いたりすることはできません。話し手は自分の表現したいことをこの<文型>(<動詞型>)に当てはめて、表現しますが、そのままでは聞き手に示すことができないため、<語順>を媒介させて文字にしたり、音声にしたりします。聞き手はこの文字や音声を受け取って頭の中にある<文型>(<動詞型>)という枠組みに当てはめて、話し手の表現したいことを理解します。ただし、この枠組みにうまく当てはめることができない場合は理解できないため、文章が単なる単語の羅列になってしまいます。
実際の文を文型という<枠組>に当てはめていくには以下のようにします。まず、文(sentence)を従属接続詞や接続関係詞<関係代名詞>、カンマなどを手がかりにして、節(clause)に分解します。次に節の中には定形動詞が必ず1つありますので、それを見つけます。文の要素としては、定形動詞の前[左側]には主語や副詞句・副詞節などが、定形動詞の後[右側]には目的語や補語・副詞句・副詞節が来ます。これを情報構造という観点から観ていくと、(定形)動詞の前[左側]には既知情報[聞き手が知っているはずの情報]が来るのが原則です。また、定形動詞の後[右側]には既知情報または未知情報[聞き手が知らないはずの情報]が来ます。
<不定詞><分詞><動名詞>については、定形動詞と同様に動詞の後[右側]に目的語や補語・副詞句・副詞節が来ます。これらも含めて<動詞型>として分析していくことになります。
文型というと、五文型を取り上げる場合が多いのですが、五文型はもともとC.T.アニアンズ(またはオニオンズとも言われる)が書いた『高等英文法―統語論』で提示されたもので、英語の母語話者を対象としたものですので、日本人が金科玉条のように考える必要はありません。英語学習の導入部分として、五文型を示すのはいいのですが、五文型の下に下位区分の文型を掲示した全体構造が示されていないことが多いので、自分で理解するためには、不定詞や分詞、that節などに分散された箇所から自分で全体構造を築き上げる必要があるのです。専門家ならともかく、通常の語学学習者に文型の全体構造を作れというのは、困難だと思います。このように文型の全体構造がわかる本は少ないのですが、日本人が英語を理解する上で参考になるのは『英文構成法』(佐々木高政 著)での24文型や『英語の型と語法』(A.S.ホーンビー 著)での29文型があります。
ただし、文型というのは、文意を理解するための<枠組>ですので、文型の個数は必ずしも決まった数があるわけではありません。目的に応じて、何個でも設定することが可能ですし、文(または節)によっては、当てはめることができる文型が複数存在する場合もあります。