■日本人のための英文法

■ナビゲータ

[南北館(最初のメニュー)]

  1. 日本人のための英文法
    1. [学習書・独習書・参考書・辞書などのご紹介]
    2. [日本人のための英文法入門]
      1. [言語とは何か]
      2. [語学習得のための要諦]
      3. [語学の全体概要]
      4. [英文法の全体構造]
        1. [定形動詞の階層構造]
        2. [主語とは何か?/主題とは何か?]
        3. [いわゆる「代名詞」とは何か?]
        4. [冠詞とは何か?]
        5. [文型(動詞型)について]

I-B-3.語学の全体概要

[語学習得のための要諦]で述べたように語学は「理解すること」と「慣れること」の両方が相互に依存しているため、どこから学習していけばいいのかわかりにくい面があります。また、この要諦を正しく理解しないと、「理解できないこと」が「慣れないこと」につながり、さらに「慣れないこと」が次の「理解できないこと」につながってしまうため、語学学習の「負のスパイラル」に陥ってしまうことになります。

語学学習において、こうした「負のスパイラル」に陥らないようにするには「全部、一度に、完全に」ではなく、「少しずつ、何度も、漆塗りのように」行うことが必要です。まず、語学の全体概要を知った上で、個々の学習項目がこの全体概要とどうつながりがあるかを確認しながら、少しずつ覚えるようにしていくことになります。

語学の全体概要は、以下の4つの項目に分かれています。一般的にはレトリックは文法の範囲に含めませんが、これは西洋の中世以来の伝統的な区分ですので、日本人がこれらの区分にとらわれる必要はありません。

語学の全体概要

  1. 単語(語法)
  2. 文法
  3. 文化・常識
  4. レトリック(修辞技法)

まず、単語(語法)は、基本的な単語の原則的な意味を理解した上で。その後、派生的な意味、応用的な意味へと進めていきます。専門的な単語については単語だけを暗記する方法もありますが、基礎的な単語(2,000から3,000語程度)については、単独で覚えるのではなく、必ず、文または文章の形で覚えます。特に動詞はそうしないと使えるようになりません。覚える文の数は500から600程度が1つの基準になります。もちろん、それ以上であってもよいと思います。

次に、文法は、規範文法によって学習します。ただ、実際に「外国語として」学習するのに適した文法書はなかなかないのが実情です。というのは、動詞の活用や名詞・形容詞の格変化(曲用)について、実際に使用した言語から帰納的にまとめた法則性を示すこともできず、ただ丸暗記せよと述べるものや、従来の教授方法に安住して、仮説すら立てられないものが散見されるからです。したがって、どんな文法書や参考書であっても批判的に読みながら、概要を捉えていくしかありません。文法の概要は以下の3つの項目に分かれています。

文法の概要

  1. 定形動詞の活用
  2. 「てにをは」の表現方法(英文法では文型や動詞型)
  3. 接続詞等の使い方(文から節・句へ分解する方法)

第3に「文化・常識」です。たとえば、英語圏で常識となっているイギリスやアメリカを初めとする各国の歴史や地理・慣習など、文化全般にわたった知識が必要となります。最近では脱宗教化が進んでいるようですが、キリスト教の知識も必要です。また、ヨーロッパ独自の考え方として、この世には五感では認識できない世界があるというものがあります。このあたりは古田博司 著「ヨーロッパ思想を読み解く」(ちくま新書 2014年)をご覧ください。この本の中で古田教授は五感では認識できない世界を「向こう側(Other Side)」と呼んでいますが、ヨーロッパ思想では、この「向こう側(Other Side)」が五感で認識できる「こちら側」を規定しているという思想が底流にあるのです。このあたりはあまり認識されていないようですが、ここが理解できないとヨーロッパの哲学や思想が十分に理解できないままになってしまいます。

また、専門書などの専門知識が必要な論文や記事を読む場合には、そうした専門知識を事前に習得しておくべきだということはいうまでもありません。例えば、物理学や化学・医学・経済学などさまざまな学問分野がありますが、そうした各種の学問分野に関する専門書を読む場合には、「単語」と「文法」がわかれば読めるということはありません。

最後に「レトリック(修辞技法)」です。レトリックというと、詩や演説などによく使われますが、それ以外でも、英語特有の表現方法として、英語らしい英語にするためには、このレトリックの技法が必要になってきます。

前へ     次へ

Copyright (c) 2013-2016 Mitsuo Minagawa, All rights reserved.