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「古代ギリシア語文法の全体構造」
「古代ギリシア語文法の全体構造」

I-B-4.ラテン語文法の全体構造

文法の概要は以下の3つの項目に分かれています。

文法の概要

  1. 定形動詞の活用
  2. 「てにをは」の表現方法(ラテン語では名詞や形容詞の格変化(曲用))
  3. 接続詞等の使い方(文から節・句へ分解する方法)

定形動詞の活用

このうち、まず定形動詞ですが、他動詞の場合は6階層、自動詞の場合は5階層の構造を1語の中に圧縮した形で持っています。したがって、定形動詞の意味を把握するには、この6階層ないし5階層の構造を正しく分析することが必要になります。

他動詞の定形動詞の階層は法・態(原因/非原因を軸とする相)・(時間を軸とする)相・時制・人称・数の6階層、自動詞の定形動詞の階層は法・(時間を軸とする)相・時制・人称・数の5階層になります(自動詞には<態>の階層はありません)。これらを図示すると以下のようになります。

定形動詞の階層のうち、法・相・時制の関係図

        定形動詞の階層構造(1)
   

定形動詞の階層のうち、人称の関係図

        定形動詞の階層構造(2)
   

定形動詞の階層構造の概要についてはこちらをご覧ください。

また、定形動詞に対応するものとして「主語」がありますが、ラテン語には「主題」はあっても「主語」はないというのが私の考え方です。詳細は「主語と主題」をご覧ください。




「てにをは」の表現方法

次に「てにをは」の表現方法ですが、言語の種類によって大きく3つの方法に分かれます。

第1に格変化を使う方法です。名詞や形容詞を格変化させて、「てにをは」を表現します。ラテン語や古代ギリシア語はこの方法を採用しています。現代でも、ドイツ語(かなりの部分を冠詞に頼ってはいますが)やロシア語がこの方法を採っています。これらの言語では、実際に使われている格変化した形から辞書に掲載されている元の形を導き出さないと辞書が引けません。

第2に文型(動詞型)などを使う方法です。ヨーロッパの言語では、もともと上記の格変化が主流でしたが、しだいに格変化が衰えてくる言語が出てきました。こうした言語で格変化に代わって生まれてきたのがこの方法です。多くの文型(動詞型)は動詞と不定形や分詞・節・前置詞などとを組み合わせることで「てにをは」を表現しています。こうした言語では文型がわからないと、文の意味が把握できません。英語やフランス語、スペイン語、イタリア語などが該当します。広い意味では支那語(漢語)もこの中に含まれます(支那語(漢語)では<文型>というよりも<字>の並べ方によって意味を表しているところがあります)。

第3に「てにをは」を助詞などの「辞」で表現する方法です。日本語や朝鮮語・満州語・モンゴル語・トルコ語・フィンランド語などが該当しています。




接続詞と接続関係詞[関係代名詞]の使い方

接続詞は「等位接続詞」と「従属接続詞」の2つに分類されます。

等位接続詞は、語と語、句と句、節と節をつなぐための接続詞です。ac「~と」、at「しかし」、aut「または」、autem「他方では、しかしながら」、et「~と~」、sed「しかし」、-que「~と」、-ve「~または」などが該当します。

従属接続詞は、従属節の先頭に来る接続詞です。cum「~するときに、~なので」、dum「~している間」、etsī「たとえ~でも」、igitur「それ故、したがって」、nisi「もし~でなければ」、postquam「~した後で」、quia「なぜなら~」、quamquam「~だけれども」、quim「なぜなら~」、quod「なぜなら~」、quoniam「~したとき、~の後で、~するやいなや」、「もし~なら」、sīve「あるいはもし~なら」、ubi「~するとき」、ut「~するとき」などが該当します。

接続関係詞[関係代名詞]は、本来は関係詞[代名詞]ですが、節と節を接続する特殊な機能を持っている言葉です。具体的には、quīquālis「~のような」、quamvis「どんなに~でも」、quīcumque「~する人は誰でも」、quisquam「どの~でも」、quisquis「~する人は誰でも」、ubi「~するところに」などがあります。

従属接続詞は、副詞節や名詞節の先頭に来ますので、そこから文を副詞節や名詞節に分解することができます。また、接続関係詞[関係代名詞]は、形容詞節や名詞節の先頭に来ますので、そこから、文を形容詞節や名詞節に分解することができます。

そのほか、ラテン語では従属接続詞や接続関係詞[関係代名詞]を使う代わりに分詞を使って、節(clause)と同じような役割を果たす<独立奪格句>があります。




文意の把握の方法の概要

上記のような文法の概要を踏まえた上で、文意を把握するには以下のように行います。

まず、接続詞や接続関係詞[関係代名詞]などを手かがりとして、文(sentence)を節(clause)に分解します。また、ラテン語では独立奪格句などの節に準ずる句がありますが、これについては分詞を手がかりにして、文から句(phrase)を分離して調べます。文が1つの節から成り立っている場合は、この作業は必要ありません。

上記の節(clause)には、主節と従属節がありますが、従属節は、名詞節・形容詞節・副詞節の3つの種類に分類されますので、たとえば以下のように、それぞれを異なる記号ごとに区分して、節(clause)を括っていくと文意を把握しやすくなります(必ずしも以下の記号である必要はありません)。

  1. 名詞節:[名詞節]
  2. 形容詞節:<形容詞節>
  3. 副詞節:(副詞節)

次に、節には定形動詞が必ず1つずつあるはずです(等位接続詞などで定形動詞が接続されている場合は2つ以上になることもあります)。その定形動詞が他動詞であれば6階層、自動詞であれば5階層の構造を持っていますので、その構造を1つずつ分析していき、辞書掲載形である事実法[直説法]・能動態・現在・1人称単数形を導き出します。

第3に、定形動詞以外の項目は以下の3つのいずれかになります。

  1. 名詞や形容詞、関係詞[代名詞]などの格変化する言葉
  2. 前置詞などの変化しない言葉
  3. 動詞の不定形

まず、格変化する項目については、それぞれ以下のような階層について分析します。

  1. 名詞は、性(Gender)を調べ、数(Number)・格(Case)の各階層について分析し、辞書掲載形である単数・主格を導き出します。
  2. 形容詞は、性(Gender)・数(Number)・格(Case)の各階層について分析し、辞書掲載形である単数・主格・男性形を導き出します。
  3. 分詞は、態(Voice)・相(Aspect)で分析した後、さらに性(Gender)・数(Number)・格(Case)の各階層について分析し、単数・主格・男性形を導き出した後、辞書掲載形である動詞を導き出します。

上記の数(Number)・格(Case)については可能性が複数存在することがありますが、以下のような点に注目しながら分析します。

  1. 定形動詞の人称(Person)と数(Number)に一致する主題が存在する場合は、名詞は主格となり、名詞の数(Number)が単数であれば、定形動詞は第3人称単数形となり、複数であれば、定形動詞は第3人称複数形となるはずです(主題は必ず存在するとは限りません)。また、主格であってもいわゆる「補語」の場合には主題にはなりません。
  2. 前置詞は、それぞれ属格や対格など特定の格の名詞や形容詞とともに使われます(これを前置詞が属格や対格を支配する、または属格支配、対格支配などといいます)ので、前置詞と支配する格との関係も考慮に入れながら分析します。
  3. 例えば、与格動詞など与格の目的語を取る動詞のように、特定の動詞が特定の格の目的語や補語をとったり、特定の前置詞などとの結びつきがあることも考慮に入れながら分析します。


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