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I-B-4.ラテン語文法の全体構造

ラテン語の命令法・自発受動態・第1式[現在]と第2式[未来]の活用

ラテン語の命令法・自発受動態・第1式[現在]と第2式[未来]の活用

それでは具体的に命令法・自発受動態・第1式[現在]と第2式[未来]の活用を見ていきましょう。命令法の語幹は、事実法[直説法]・原因能動態・現在形の語幹と同じです。命令法の第1式[現在]と第2式[未来]は従来、現在形と未来形という誤った名称で呼ばれていますが、実際には第1式・第2式と呼ぶべきもので、事実法[直説法]の時制のような概念はありません。

第1式[現在]と第2式[未来]の違いは第1式[現在]が命令する相手に対して、直接、命令や要求を示すのに対し、第2式[未来]は法律文書や格言などで使用される特殊な用法で、「一定の時間的余裕をもった上で実行せよ」と表現したり、間接的な命令を表現するときに使用します。間接的な命令とは、たとえぱ、「国王が大臣に対して、家臣の一人であるAさんに何らかの内容を実行せよと命じる」というような場合に使用する命令です。このとき、国王は家臣のAさんに直接命じるわけではありませんので、第1式[現在]は使用することができません(こうした場合、命令法ではなく、反実法[接続法]を使用する場合もあります)。

また、第1式[現在]には第2人称単数形と第2人称複数形しかありませんが、第2式[未来]には第2人称単数形の他に、第3人称単数形と第3人称複数形があります(第2人称複数形はありません)。


ラテン語の定形動詞の活用形の種類と幹音との関係

活用の種類 命令法の幹音
(命令法の語幹の最後の音)
語幹の作り方
第1活用 ā(長音のa) 現在不定形から-reをとったもの
第2活用 ē(長音のe) 現在不定形から-reをとったもの
第3正則活用 -子音 現在1人称単数形から-ōをとったもの
第3変則活用 i(短音のi) 現在1人称単数形から-ōをとったもの
第4活用 ī(長音のi) 現在不定形から-reをとったもの

ラテン語の定形動詞の活用形の種類ごとの事例

実際に語幹と語尾を組み合わせて、活用形を作ってみましょう。


ラテン語の命令法・自発受動態・第1式[現在]と第2式[未来]の第1活用の事例

下記の表の中にある「第1法則」等の説明は一番下の囲み枠をご覧ください。

人称と数 命令法の語幹 命令法の語尾 命令法の活用形
第1式第2人称単数形 amā re amāre
第1式第2人称複数形 amā minī amāminī
第2式第2人称単数形 amā tor amātor
第2式第3人称単数形 amā tor amātor
第2式第3人称複数形 amā ntor amāntoramantor(第3法則適用)
(注)第1式第2人称単数形は原因能動態・現在不定形と同形です。

ラテン語の命令法・自発受動態・第1式[現在]と第2式[未来]の第2活用の事例

下記の表の中にある「第1法則」等の説明は一番下の囲み枠をご覧ください。

人称と数 命令法の語幹 命令法の語尾 命令法の活用形
第1式第2人称単数形 monē re monēre
第1式第2人称複数形 monē minī monēminī
第2式第2人称単数形 monē tor monētor
第2式第3人称単数形 monē tor monētor
第2式第3人称複数形 monē ntor monēntormonentor(第3法則適用)
(注)第1式第2人称単数形は原因能動態・現在不定形と同形です。

ラテン語の命令法・自発受動態・第1式[現在]と第2式[未来]の第3正則活用の事例

人称と数 命令法の語幹 命令法の語尾 命令法の活用形
第1式第2人称単数形 reg ere regere
第1式第2人称複数形 reg iminī regiminī
第2式第2人称単数形 reg itor regitor
第2式第3人称単数形 reg itor regitor
第2式第3人称複数形 reg untor reguntor
(注)第1式第2人称単数形は原因能動態・現在不定形と同形です。

ラテン語の命令法・自発受動態・第1式[現在]と第2式[未来]の第3変則活用の事例

人称と数 命令法の語幹 命令法の語尾 命令法の活用形
第1式第2人称単数形 percuti re percutere(例外:percutireとはならないので、注意すること)
第1式第2人称複数形 percuti minī percutiminī
第2式第2人称単数形 percuti tor percutitor
第2式第3人称単数形 percuti tor percutitor
第2式第3人称複数形 percuti untor percutiuntor
(注)第1式第2人称単数形は原因能動態・現在不定形と同形です。

ラテン語の命令法・自発受動態・第1式[現在]と第2式[未来]の第4活用の事例

下記の表の中にある「第1法則」等の説明は一番下の囲み枠をご覧ください。

人称と数 命令法の語幹 命令法の語尾 命令法の活用形
第1式第2人称単数形 audī re audīre
第1式第2人称複数形 audī minī audīminī
第2式第2人称単数形 audī tor audītor
第2式第3人称単数形 audī tor audītor
第2式第3人称複数形 audī untor audīuntoraudiuntor(第3法則適用)
(注)第1式第2人称単数形は原因能動態・現在不定形と同形です。

ラテン語の定形動詞の活用形の3つの法則

参考までに定形動詞の活用形の3つの法則を挙げておきます。

ラテン語の定形動詞の活用形の3つの法則

  1. 第1法則:<長母音+長母音>は<短母音+長母音>になります。
  2. (例:ēōeōになります。ただし、āōaōを経て、最終的にōになります)

  3. 第2法則:tdmrが語尾に来ると、その直前の母音は短母音になります
  4. (ここで直前とは、活用形の最後の文字から左側に向かって、さかのぼる形で見ていったときに、子音に出会うまでの母音すべてを指します。たとえば、amatであれば、最後の文字からtaと調べていって、最初にぶつかる子音のmまでの間にある母音であるaを直前の母音と言います)

    (また、audiamであれば、最後の文字からmaと調べていって、最初にぶつかる子音のdまでの間にある母音であるiaを直前の母音と言います)

  5. 第3法則:ntndはどこにあっても(注)、その直前の母音は短母音になります
  6. (ここで直前とは、活用形の中にある該当する文字から左側に向かって、さかのぼる形で見ていったときに、子音に出会うまでの母音すべてを指します。たとえば、amantであれば、最後のntから順に調べていって、最初にぶつかる子音のmまでの間にある母音であるaを直前の母音と言います)

    (また、audiunturであれば、ntからuiと調べていって、最初にぶつかる子音のdまでの間にある母音であるiuを直前の母音と言います)

    (注)「どこにあっても」は正確には語の先頭以外ということですが、第2法則と混同しやすいため、「語中または語尾」などと言うよりも、こちらのほうが覚えやすいと思います。


【事実法[直説法]・原因能動態】現在形  未完了形  未来形

【事実法[直説法]・原因能動態】現在完了形  過去完了形  未来完了形

【事実法[直説法]・自発受動態】現在形  未完了形  未来形

【事実法[直説法]・自発受動態】現在完了形・過去完了形・未来完了形

【反実法[接続法]・原因能動態】第1非現在  第2非現在  第1非過去  第2非過去

【反実法[接続法]・自発受動態】第1非現在  第2非現在  第1非過去  第2非過去

【命令法・原因能動態】第1式[現在]・第2式[未来]

【命令法・自発受動態】第1式[現在]・第2式[未来]



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