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I-B-4.ラテン語文法の全体構造

ラテン語の定形動詞の活用について

概要

従来、ラテン語の定形動詞は法・態・時制・人称・数に応じて活用すると言われてきましたが、[定形動詞の階層構造]で説明したように、従来<時制>と呼ばれてきたものは語の形式と意味を混同したものであって、語の形式としては1つのように見えますが、語の意味としては<時制>と<相>が複合したものなのです。たとえぱ、事実法[直説法]・能動態・現在形というのは、意味から言えば、事実法[直説法]・能動態・単回遂行相・現在時制または事実法[直説法]・能動態・進行相・現在時制を意味するので、決して、現在形と現在時制は同じものではないのです。

また、ラテン語の定形動詞は語の形式としてみた場合には、<活用の種類>という階層があります。たとえぱ、事実法[直説法]・能動態・現在形であっても、活用の種類によって、形が異なることがあります。

以上のことから考えると、活用形を考える場合も<時制>という名称は適切ではありませんので、形式から見たときの階層としては<時相>という名称にしたいと思います。つまり、ラテン語の定形動詞は、意味の面から見ると、法・態・相・時制・人称・数の6階層(ただし、自動詞には<態>の階層がないので、5階層)となりますが、形式面から見ると法・態・時相活用の種類・人称・数の6階層(ただし、自動詞には<態>の階層がないので、5階層)となることになります。

ラテン語の定形動詞の活用形の階層と種類

それでは、定形動詞の活用の種類を見ていきましょう。ラテン語の定形動詞は<語幹>と<語尾>を組み合わせて作られていますが、このうち、<語幹>と<語尾>は上記の法・態・時相・活用の種類・人称・数の6階層のうち、法・態・時相・活用の種類の4階層によって、決まっています(ただし、事実法[直説法]・原因能動態・未来形の第3活用動詞や第4活用動詞のようにこの4階層だけでは事実法[直説法]・原因能動態・現在形と同じものもあります)。

<活用の種類>は第1活用・第2活用・第3正則活用・第3変則活用・第4活用の5種類があります。このうち、第3変則活用は第3B動詞とか、混合活用などと呼ばれることがあります。<活用の種類>を分ける基準は現在形の語幹の最後の音(これを幹音と言います)にあります。<活用の種類>と幹音の関係は以下のようになっています。

ラテン語の定形動詞の活用形の種類と幹音との関係

一見すると、全く異なっているように見える第3正則活用と第3変則活用がなぜ同じ「第3」となっているかはわかりにくいと思いますが、これは現在不定形の形がどちらも-ereになっているためです。第2活用の現在不定形が-ēreとなっているのと混同しないようにしてください。

活用の種類 現在形の幹音
(現在形の語幹の最後の音)
現在不定形
第1活用 ā(長音のa) āre
第2活用 ē(長音のe) ēre
第3正則活用 -子音 ere
第3変則活用 i(短音のi) ere
第4活用 ī(長音のi) īre

ラテン語の定形動詞の活用形の法則

ラテン語の学習で最初の難関となるのは、定形動詞の母音が何の脈絡もなく、長音になったり、短音になったりするように見える点だと思います。この点について、多くの学習書ではきちんとした法則を示していません。単に活用表を掲げるか、「学べ」の一言で済ましているのが実情です。しかし、実際には帰納的に導き出せる法則があります。以下に掲げるラテン語の定形動詞の活用に関する3つの法則を覚えておけば、規則動詞の活用で母音が長母音になったり、短母音になったりする理由が理解できると思います(ただし、以下の法則に当てはまらない不規則動詞が存在することは言うまでもありません)。

ラテン語の定形動詞の活用形の3つの法則

  1. 第1法則:<長母音+長母音>は<短母音+長母音>になります。
  2. (例:ēōeōになります。ただし、āōaōを経て、最終的にōになります)

  3. 第2法則:tdmrが語尾に来ると、その直前の母音は短母音になります
  4. (ここで直前とは、活用形の最後の文字から左側に向かって、さかのぼる形で見ていったときに、子音に出会うまでの母音すべてを指します。たとえば、amatであれば、最後の文字からtaと調べていって、最初にぶつかる子音のmまでの間にある母音であるaを直前の母音と言います)

    (また、audiamであれば、最後の文字からmaと調べていって、最初にぶつかる子音のdまでの間にある母音であるiaを直前の母音と言います)

  5. 第3法則:ntndはどこにあっても(注)、その直前の母音は短母音になります
  6. (ここで直前とは、活用形の中にある該当する文字から左側に向かって、さかのぼる形で見ていったときに、子音に出会うまでの母音すべてを指します。たとえば、amantであれば、最後のntから順に調べていって、最初にぶつかる子音のmまでの間にある母音であるaを直前の母音と言います)

    (また、audiunturであれば、ntからuiと調べていって、最初にぶつかる子音のdまでの間にある母音であるiuを直前の母音と言います)

    (注)「どこにあっても」は正確には語の先頭以外ということですが、第2法則と混同しやすいため、「語中または語尾」などと言うよりも、こちらのほうが覚えやすいと思います。

ラテン語の定形動詞の活用形の学習ステップ

ラテン語の定形動詞は、さまざまな参考書で説明する順番が異なっていますが、個人的には以下のような順番がよいのではないかと思います。

ラテン語の定形動詞の活用形の学習ステップ

  1. 事実法[直説法]・原因能動態・現在形-未完了形-未来形
  2. 事実法[直説法]・原因能動態・現在完了形-過去完了形-未来完了形
  3. 事実法[直説法]・自発受動態・現在形-未完了形-未来形
  4. 事実法[直説法]・自発受動態・現在完了形-過去完了形-未来完了形
  5. 反実法[接続法]・原因能動態・第1非現在-第2非現在-第1非過去-第2非過去
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