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I-B-3.語学の全体概要

[語学習得のための要諦]で述べたように語学は「理解すること」と「慣れること」の両方が相互に依存しているため、どこから学習していけばいいのかわかりにくい面があります。また、この要諦を正しく理解しないと、「理解できないこと」が「慣れないこと」につながり、さらに「慣れないこと」が次の「理解できないこと」につながってしまうため、語学学習の「負のスパイラル」に陥ってしまうことになります。

語学学習において、こうした「負のスパイラル」に陥らないようにするには「全部、一度に、完全に」ではなく、「少しずつ、何度も、漆塗りのように」行うことが必要です。まず、語学の全体概要を知った上で、個々の学習項目がこの全体概要とどうつながりがあるかを確認しながら、少しずつ覚えるようにしていくことになります。

語学の全体概要は、以下の4つの項目に分かれています。一般的にはレトリックは文法の範囲に含めませんが、これは西洋の中世以来の伝統的な区分ですので、日本人がこれらの区分にとらわれる必要はありません。

語学の全体概要

  1. 単語(語法)
  2. 文法
  3. 文化・常識
  4. レトリック(修辞技法)

まず、単語(語法)は、基本的な単語の原則的な意味を理解した上で。その後、派生的な意味、応用的な意味へと進めていきます。専門的な単語については単語だけを暗記する方法もありますが、基礎的な単語(2,000から3,000語程度)については、単独で覚えるのではなく、必ず、文または文章の形で覚えます。特に動詞はそうしないと使えるようになりません。

また、ラテン語の単語で名詞や形容詞など格変化を行うものについては、格変化の表の覚えた後に、単語カードを使用した以下のような方法を採ると格変化が確実に定着します。まず、単語カードの表に格変化した形を書きます。例えば、第1変化名詞のrosa「バラ」であれば、表に"rosa"と書き、単語カードの裏に「単数主格」と書きます(このとき、"rosā"は「単数奪格」と書いておき、マクロン(長音記号)がついている場合も付記しておくとさらに効果的です)。同様に"rosae"であれば、「単数属格」・「単数与格」・「複数主格」と書いておきます。これを何回も繰り返し、見ながら覚えていくと、特にラテン語の読解に効果があります。

次に、文法は、規範文法によって学習します。ただ、実際に「外国語として」学習するのに適した文法書はなかなかないのが実情です。というのは、動詞の活用や名詞・形容詞の格変化(曲用)について、実際に使用した言語から帰納的にまとめた法則性を示すこともできず、ただ丸暗記せよと述べるものや、従来の教授方法に安住して、仮説すら立てられないものが散見されるからです。したがって、どんな文法書や参考書であっても批判的に読みながら、概要を捉えていくしかありません。文法の概要は以下の3つの項目に分かれています。

文法の概要

  1. 定形動詞の活用
  2. 「てにをは」の表現方法(ラテン語では名詞や形容詞の格変化(曲用))
  3. 接続詞等の使い方(文から節・句へ分解する方法)

第3に「文化・常識」です。たとえば、ラテン語で古代ローマについて学習するのであれば、古代ローマの歴史や地理、当時の文化全般にわたった知識が必要となりますが、特に「ギリシア・ローマ神話」の知識は必須と言えます。また、ウルガタ聖書などを読むのであれば、「キリスト教」の知識が必要になります。

最後に「レトリック(修辞技法)」です。レトリックというと、詩や演説などによく使われますが、それ以外でも、ラテン語特有の表現方法として、ラテン語らしいラテン語にするためには、このレトリックの技法が必要になってきます。



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