スピーカーの上手な鳴らし方 論より実験のオーディオ思考−マルチアンプシステム構築の手引き 令和6年11月 日本語 PCサイト ディスプレイ解像度1920x1200以上推奨
はじめに
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音響設備、防災設備 設計、施工、保守、機器修理、アンプ類製作等、広範な分野に関与しました。業務の傍ら、古くからの趣味であったオーディオに、ちょっとした気付きがあり、確かで有益な情報を発信します。
音響ホール工事では、奈落からスノコまで、配線、機器取付を行いました。マルチケーブル、アースドレイン、シールド線の端末処理、XLR半田付けなど、工事が完成すれば、ほんの小さな塊になってしまうのに、何日もニッパーと半田ゴテで格闘します。天井裏では、プロセニアムスピーカー、遮光用ゴムシート、3点吊りマイクなど、命がけの高所作業もやりました。今なら、ガス式半田ごてが使えますが、当時は、仮設電源から、コードリール継ぎ足しで、作業する苦労も有りました。修理現場では、言いたいことは山ほど有るが、黙々と修理を行いました。あの製品、もう一工夫で良くなるという事が沢山あり、そういった経験を自作品に活かす事となりました。
作家や評論家でも有りませんので、記述や構成は、甚だ未熟ですが、難解な所をすっ飛ばしてでも、できるだけ最後までお読み下さり、アクティブユ−ザ−の新たな気付きに貢献できたらと思います。オーディオは、お金でなく、空気で考えましょう。それができないと、底なし沼に!
製作小話:OPA1622 ウィーンブリッジ発振回路+矩形出力回路
上:正弦波 下:矩形波 1kHz 正弦波と矩形波のリサージュ波形 ヒステリシスコンパレーター動作がよくわかります 2024/07/08
オーディオの話題といえば、気難しい事が多く、恐縮です。そこで、暇つぶしに、低周波発振器を作ってみる事にしました。普段、動作確認の信号源としてKENWOOD AG203を使用しています。周波数は、1kHzが主で、次いで100Hz、10kHz、周波数特性では、20Hz〜20kHzが必要です。これらは、フリーソフトWGで作る事ができますが、矩形波は、帯域制限の有るPCでは、満足できる形になりません。矩形波は、トーンコントロールや、フィルターの動作を、波形で見る時に、良く使用します。ボリュームガリ検査では、正弦波を使っています。
前置きが長くなりましたが、ウィーンブリッジ発振回路、ネット検索では、LTspiceで、OPアンプと、AGCにFETを使い、帰還定数を求める記事が多く有ります。尚、古典的なランプをAGCに用いる回路例も登場しますが、ランプに何を使用するかが、一つのネックです。ランプは、今さら感があり、FETのAGCで、始めに作りました。デッドストックの2SK369と、LME49720で、電源は±12Vで製作し、出来上がり出力が、0.5Vで、歪みは、高調波オンパレード0.4%%の歪みとなり、失敗でした。調整方法は、どこにも見当たらず、検索を進めると、FETのAGCでは、歪みが多く、ランプの方が直線性が高く、簡単に歪みが少なく作れるという記事が有り、さらに調べると、AC100Vのナツメ球での製作記事が有り、それを試してみる事に。結果は、うまく発振し、出力も7V以上取れましたが、残念な事に、振動に弱く、フィラメントの長さが問題なのではと、手持ち12Vリード付き電球が有り、それで製作したのが下です。
基板 タカス IC-701-72N(マルツなどで入手可) ランプ12V用 冷温抵抗70Ω ジャンパー線は、0.6〜0.65φスズメッキ線 電源供給は、±12V ピンに電線直付け 2024/07/06
使用したOPアンプは、ヘッドホンも駆動できるOPA1622で、32Ω負荷 THD+N -119dBの性能です。ランプの冷温抵抗70Ωを駆動するには十分です。秋月でDIPモジュール税込み\700です。下は、WSでFFTの結果です。発振器は、デジタルミキサー01V96V2に接続し、96kPCM出力をUA-5で、キャプチャしました。2次、3次高調波歪みだけで、他の歪み成分は見当たりません。OPA1622は、2回路構成なので、もうひとつをヒステリシスコンパレーターとして、矩形波に変換してます。
AG203より低歪み 2024/07/26 回路図及び部品配置図
調整に10回転半固定を使用しましたが、FFTを見ながら、希望の出力値と、ランプAGCの安定しているポイントに合わせます。上の回路では、526Ωが調整値で、220Ω+500Ω半固定で、構成しました。負荷抵抗470Ω時、出力20dBmで、振幅安定度±0.05dBです。
ピンクノイズ発振器
日頃お世話になっているピンクノイズですが、いざ作ろうとすると、アナログ回路では、フィルターのCR数値が、実装に難関でした。参考にしたのは、検索より、トランジスタ技術2004年の記事で、念のため、回路シミュレータで、-3dB/octである事を確認しました。原発振は、2SC1815によるE-B逆接ホワイトノイズで、Vcc=12Vです。トラ技では、ツェナーダイオードを使ってます。
ピンクノイズ用フィルター周波数特性 -3dB/octとの偏差 信号AG203正弦波 2024/07/29
半導体を使った製作
冒頭に低周波発振器製作を持って来たのは、実用品が製作できる例を示す為です。プリント基板を作らないと、半導体を使って製作できないと、まずは考えてしまい、そこから先に進めないではなく、ユニバーサル基板で、ちょっとしたものなら製作できます。SOPもDIP変換モジュールで、8Pソケットも使えます。OPアンプで、音が変わるのは、どうやらヘッドホンアンプの話だったようで、32Ωもの低負荷を、駆動すれば、苦し紛れの叫びで、ヘンな音も出します。OPA1622の場合は、32Ωにターゲットを絞っており、シンプルな構成でヘッドホンアンプが作れます。真空管アンプは、各部品のサイズが大きく、回路構成もシンプルなので、アマチュア製作に向いてます。
オーディオ界への危惧 (これからしばらく気難しい話)
You Tube ホリエモンのお前が終わってんだよ!より、伊沢元彦氏の 言霊(ことだま)信仰というお話で、オーディオ界の類似点に気付いたので、冒頭に紹介します。業界の不合理さが、言霊信仰=宗教より、オカルトに発展し、摩訶不思議なオーディオ観に至ると考えました。
ピュアオーディオという、見下し感が強い言葉は大嫌いで、ハイエンド同様です。それよりも、初期のコンポーネントステレオの方が、響きが良いと思います。廉価でもオーディオ的に性能が高ければシステムに組み込んでいきたいと思います。
音が変わる、音質が、ノイズが・・・そんなに音が変わるのは、システムが未熟である証明で、よく練り上げられたシステムは、音の外れや、破綻が無く、時間が経過しても、安定しています。ノイズは、雷が鳴っても、掃除機掛けても、電ドラ回しても、1ミリたりとも出ません。ノイズに敏感な機材は、それだけの価値しか無く、お金をどれだけ積むかとは無関係です。
万葉の昔より、言葉には霊力が宿ると考える、日本人特有の信仰が存在する
オーディオ界の言霊
ノイズを巡り バランス・・・フルバランス・・・フルデジタル・・・クリーン電源・・・仮想アース・・・マイトランス・・・ノイズカットトランス(この名前は効果と照らし、微妙な代物)アースループを切る為の部品であり、電源から入る雑音は、そのまま2次側に出るのが、性能の良いトランスです。
音質からは 真空管アンプ・・・球の音・・・300B・・・駆動力・・・強力電源・・・ケーブルの音・・・何とかメーカーの音・・・ハイエンド・・・相性・・・オーディオ道(完全に宗教)
重低音、馬力の有る音、パワフルな低音、大出力アンプ、BTL接続の音と続きますが、純音は、大出力でも、おとなしい音で、低音に至っては、風としか感じられません。周波数が低いほど大迫力の低音は、持たざる者の単なる誤解です。
オーディオ機器は、エレクトロニクスと密接な関係が有りますが、そこには霊力ではなく、オームの法則に従った電流、電圧の振る舞いや、右ネジの法則や、フレミングの法則などの、物理法則が支配しています。お金積んで、念力かけても、1V、1A、1Ωの関係は変わりません。
何らかの変化、それには原因があり、科学的に解明可能と考えます。高級機種を据えれば、それだけで良い音だと信じたいのですが、スピーカーは、部屋の反射を含んだ音であり、売場や知人宅の音が、自宅で再現できるとは限りません。
視覚効果 並列の安定感
有名なギターアンプ 出力管EL34パラレルプッシュプル 2017/06/18
有名なギターアンプEL34x4本で、真空管アンプとしては、大きな出力を得ています。一見すると、多数の出力管が並んでいるので、それだけで、力強さを象徴しています。出力管が並列になると、故障率が倍に増え、更に、並列の相方が故障すると、もう一方も被害を生じる事が有ります。真空管では、そうした場合の耐性が比較的に強いのですが、半導体の場合は、電流が片方で多くなると、それに発熱も加わり、電流が集中して増加し、更に発熱をする熱暴走状態となり、短絡し、回路保護にて動作が停止します。
高級機種は、並列やトリプル接続で、大出力とし、価格を高く設定し、低位機種に無い機能を付けたりして、価値を高めようとします。しかし、配線長や、浮遊容量が大きくなり、性能向上は貢献できません。スピーカーも、ツイーターを並列にする光景をよく見ますが、周波数が高いので、コーミングが起き、音圧特性にディップが発生します。見た目がが良くても、音質的には、逆効果です。ダブルウーハーは、周波数が低く、コーミングとは無縁で、ホーンとの2WAYの場合、低域の能率を上げる為の方策として有効です。サブウーハーについては、5.1サラウンド普及の為、商業的な理由で1本使いを強調されましたが、ステレオの場合、左右の音源で立体効果を期待するので、左右の音から抽出されるサブウーハー成分を敢えて、モノラル化する必要はなく、そのまま2chで出した方が、自然な定位になります。一例を挙げれば、ウッドベースの基本音が、サブウーハーの位置で、倍音やその他の音(弓が擦れる音等)が、左右のスピーカーで作られるポジションになり定位が曖昧になるので、サブウーハーは2本設置で。
10パラレルPPで、ダンピングファクター1000というハイエンドアンプが販売されています。出力インピーダンスをを徹底的に低くするという、理想を具現した事は、アマチュア製作では、到底太刀打ちできず、素晴らしい製品だと思います。D級アンプが、安価、高出力を謳い、アナログアンプも競争の為、高出力が望まれる時代かも知れません。しかし、車に例えれば、5m越えの立派な高級車、道路が生物のように成長しない田舎道には、役立たずでしょう。病院とスーパーに行くだけの高齢者には、もっと小振りで、邪魔にならないサイズの方が便利です。
電磁波の怪
電磁波=活動家ワード? 電磁波は波長が長い方から長波、中波、短波、VHF、UHF、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線と続きます。放射線の、α線、β線は、電磁波では有りません。LEDの光は、電磁波ですが、照らされて、オーディオにノイズが出る事は有りません。電磁波測定士という、社団法人の認定資格がありますが、50Hz〜1000Hzまでの商用電源由来の電磁波を対象とする事が、測定器のスペックでわかりました。測定器は、アマゾンで入手可能で、大1枚以内で購入できます。ただ、発生源のレベルを下げた程度で、雑音が収まるものでなく、影響を受ける機器側の対応が、遙かに効果が有ります。科学的に電源ノイズ退治をしたいのなら、ツールとして有っても良いかも知れません。私は、ノイズ源をテレホンピックアップTP-15で調べています。TP-15で、何と人体からもノイズが出ている事がわかります。アースループを退治する事で、ループノイズを軽減するのが、正攻法です。仮想アースは、効果に疑問があり、そこそこで切り上げを。
テレホンピックアップTP-15 自作アンプのアースポイント探しにも効果的 2015/10/23
AM放送がオーディオシステムに混入
AM放送が、スピーカー回線に混入して、放送内容が聞き取れるという現象を経験しています。その時のオーディオシステムでは、平日午前の決まった時間で、スキャンノイズが出ていました。我が家は、敷地内に電力会社の電柱と、柱状トランスが有り、高圧線とは、数mの距離で、リスニングルームがあり、電灯線との関係を疑いました。電源ディストリビュータに漏れが有って、感電した事も有る、そんな期間中、AM放送は、電源が入ってなくても、放送がスピーカーから小さく出ていました。後にシステム改良を進めるにしたがい、こうした不快なノイズとは無縁になりました。この頃、同時進行で、不定期にポップノイズが発生するという現象もありましたが、これは、DCX2496の故障で、別の物に置き換えるまで悩まされました。DCX2496は、フィルムコン使用POST-LPFに自作改造、平衡出力アンプをスルーして、不平衡で出力を取り出しています。
製作中の自作アンプ ノイズフィルター付きACインレット アンプ出力用スピコン定格電流30A 接触抵抗3mΩ以下 2017/10/27
右側は、ヒューズ内蔵のACインレット型ラインフィルターで、左のリレーは、パワーTr回路電源トランス制御用で、A級アンプが70℃以上に過熱した時に、パワーTr電源を遮断します。整流器は、秋月で購入したSBRブリッジ、赤黒の配線は、スピコンで、プロ音響用パワーアンプの定番です。ラインフィルターは、ノーマルモード、コモンモード両方の高周波雑音を抑制でき、1MHzで、-20〜30dBの減衰量が有ります。測定器では、よく使われますが、オーディオ機器では、ほとんど使われません。マークレビンソンのプリアンプでの使用例もあり、高級機なら装備すべきで、自作した機器全てラインフィルタを使用しています。電源周波数から少し上なら、直流に整流する段階で、全てが、エネルギーとして取り込まれますが、AM放送より上は、どこでスルーするか分かららず、入り口を塞ぐのが有効です。
スピーカー回路のスピコン化は、接触抵抗の軽減と、配線換え作業時間の短縮には、合理的な選択で、民生アンプのネジターミナルが、どれだけ格好良く見えても、スピコンの比では有りません。4芯ケーブルで放射ノイズ低減にも貢献できます。
スピコン NL4MP NL4FX 差し込んで右に捻るとロックします。レバーを引いて左に捻ると外れワンタッチ作業です。 2009/03/03
ハイエンドアンプのL社 M-7〜M-10Uに採用例が有ります。4芯ケーブルと相性が良く、プロ音響の定番です。スピーカーケーブルに悩みたくないならお奨めです。音響ホールを舞台から眺めれば、このような機材が使用されている事に気付きます。
聴覚は人それぞれ こちらも参考に→「錯覚」から見える脳の戦略 ガリレオX 第51回
錯覚は、正常な人でも起こり、感覚のみ評価は個人差が多く不正確です。物理量として計測できるデータを伴うと評価が定まると思います。聴覚は、脳で感じますが、声が、それぞれ異なるように聴覚も異なると考えます。聴覚上の満足は、オーディオの最終目標でありますが、個人差を考えると、聴覚だけの判断は、独り善がりだったり、同調圧力の影響を受けます。逆に、測定結果のみに固執したり、価格で判断も危うい考えです。測定データが良くて、音が良い物を素直に受け入れるということで。
音は、空気の疎密波であり、元は、楽器や、自然界の音や声です。生音など再現できっこないからと諦めないで、あらゆる可能性を追求し、取り敢えずやってみました。空気は、速度によって、硬さが変化し、単一SPだけで担う事は至難で、多ユニットで構成すると、ネットワークの問題に遭遇します。情報伝達に必要な帯域だけに絞って、小口径のフルレンジも一つの解です。そうなら、多ユニットを、個別に駆動し、リスニング空間で、合成するのも、フルレンジの応用と考え、マルチアンプシステムを探求してみました。
製作面では、製品ジャンルが無い機器まで作りました。高額で、簡単に購入できないアンプなどは、修理経験に基づき、不安定要素を排除し、手間を惜しまず徹底した部品選別を行い自作しました。例えば、差動増幅器のCMRR(同相雑音抑圧比)は、抵抗の誤差が少ない程良くなり、特殊な部品でなくとも、部品選別が重要です。具体的には、F級金属皮膜抵抗は、メーター最終桁で1カウント誤差とし、PNP-NPNの組合せも、実動作電流で、hFEのペアリングを行います。こういった所に手間を掛けられるのが、アマチュア製作の強みでしょう。
ミッシング・ファンダメンタル 基音がなくても、倍音を並べると、さも基音が鳴っているように聞こえる
Youtube 音楽ガチ分析チャンネルより、倍音の詳しい解説が有り、倍音の中で、基音を抜いても、その音階として、認識してしまうというものが有り、実際に音で提示されていました。小口径スピーカーの低音が、倍音が鳴ることで、実際以上に豊かな低音として聞こえる事があり得ると思いました。第2次高調波歪みが多いから真空管アンプが、倍音が豊かなので良い音という評価が多いように思います。とは言え、増幅素子の非直線性で、オリジナルより良く聞こえたとしても、楽器としてのギターアンプならば、そのような効用を利用しても良いが、オーディオ再生スピーカーや、アンプにそれを期待するべきではないでしょう。
D級アンプの錯覚
電源効率が良くて、SNが良く、軽量大出力で、安価、しかも音質が良いというのが、D級アンプの評価です。音質が良いというのは、解像度が高いという表現が多いようです。都合の良いことは、大きく取り上げ、不都合な真実には触れないでおくという、最近の風潮もさることながら、デジタルアンプという愛称で、CDのように高音質というイメージが作り出され、これを信じる人が多くなっています。中には、愚直にアナログアンプだけを製造しているメーカーの悪口まで、さすがにここまで来ると行き過ぎでしょう。2013年に、業務用4chデジタルアンプを入手して、その性能や、音質の調査をしました。電源効率は、8Ω負荷に、76W出力で消費電力が、192Wで、効率40%でした。このアンプが、アナログ4chアンプを効率の良さで上回るのは、50W出力が分岐点でした。位相特性は、高域では、それほどでもなく、搬送波も聞こえないだけで、かなり大きく残ります。
D級アンプ 10kHz 入出力リサージュ 2013/12/20 真空管アンプ 10kHzリサージュ 2013/10/24
10kHz正弦波のアンプへの入力と出力とのリサージュ波形で、位相が合っていれば、直線になり、歪みがあると、歪んだ線、雑音が少ないと線が細くなります。聴感で、SNが良いのは、左のD級アンプで、右の真空管アンプは、ホワイトノイズが少し残っています。位相の遅れ加減は、両者良く似ています。それぞれのアンプで、音楽を聴いた場合、はっきりした音は、D級アンプの方で決着と思いきや、長く聴いていると、真空管の方が心地の良い音だと分かります。心地の良い真空管アンプの音も、純A級の半導体アンプと比較すると、分解能の悪さに気付きます。高解像で、歪みが少ないと、音源の善し悪しも、はっきり出て、時には、録音のアラまでも出てしまい、せいぜい純A級への評価は、シルキーな音というのが、多くなりますが、純A級は、アンプとして、正解に限りなく近いと思っています。
D級アンプの欠点は、電源電圧変動に弱い事です。アナログ入力をのこぎり波と比較して切り出したタイミングで、電源をスイッチして、スピーカーに直流パルスを印可するのが動作原理ですが、急激に電流が流れ、電源電圧が変動すると、アナログアンプのように、増幅では無いので、電源変動がそのままスピーカーに出ます。これを改善するには、ある程度のNFBを掛ける必要があり、実際にそうした改善を行っていますが、帰還率βを上げると音質劣化が起きます。無帰還論者が喜びそうな欠点ですが、電子回路を用いる以上、無帰還で回路は成立しませんので、OPアンプをディスクリートの下に見る事と良く似ています。D級アンプは、PWMアンプや、スイッチングアンプが正式名称で、スピーカーへは、アナログ電力が供給されます。SHARPがAQUOSに採用していた1ビットアンプなら、デジタルアンプと呼んで良いでしょう。
システムに懲りすぎて火傷をしない為に
最初は、接続ケーブルなどで、迷う事が多いと思いますが、ホームセンターで入手可能な物で問題無いでしょう。HDMIケーブル、光ケーブル、RCAピンケーブル等、見掛けの立派さより、実用性が第一で、立派過ぎるものは、機器側のコネクタを接触不良にする可能性があります。コネクタ部はしっかり固定され、ケーブルは、しなやかさの有る物が良いでしょう。マニア動画などで、電車の線路のような立派なケーブル工作を目にしますが、これは、趣味の世界であり、お手本では有りません。プロの現場では、識別の線札ぐらいは付いていますが、飾りっ気は有りません。
スピーカーケーブルは、1.25SQ平行コードで十分ですが、左右の長さを揃えます。長さを揃える意味は、スピーカーからの逆送電流で発生する電圧を左右同条件にする為です。プロ仕様のスピコン接続は、4S6や4S8を使用します。距離が長い場合は、4S11で、マイクケーブルと見分ける為の灰色を使用していますが、家庭用では、黒色の方が汚れが目立ちにくいと思います。。
電源は、1個の壁コンセントを専用とし、TVもアンプも同じテーブルタップで良いでしょう。テーブルタップは、Pana製で必要な長さの物でOKです。OAタップのような3Pコンセントは必要有りません。大地アースは、むやみに引き込まないで下さい。信号のアースは、増幅度の高い場所のアース端子を基準電位とします。このアース端子は、レコードプレーヤーのアース用であり、大地アースとは、関係有りません。不用意に大地アースすると、AM放送電波や、デジタルアンプの搬送波、スイッチノイズなどの電波雑音を受信しやすくなります。機器の筐体アースも不用です。信号ケーブルの外被が、信号線をシールドしており、筐体アースで、アースループを増やしてしまう可能性が有ります。パソコンとの接続で、ノイズが心配であれば、電気的に絶縁物の光ケーブルで、電磁ノイズを遮断できます。
高額なコンセントや、クリーン電源、パワーコンディショナーなど、オーディオアクセサリーが山積していますが、物理的な測定の網にかかる程の差は有りません。発熱や、発煙しないで安全に使用できる事だけで十分です。金属の種類によって、電流は変わりません。変わるのは、電気抵抗だけです。ノイズフィルター内蔵で、重いパワーコンディショナーなる製品の中身は、大型トロイダルコアに、フィルター用コイルが巻いてあり、回路のON-OFFにトライアックを使ったりで、逆に0V付近で、電圧波形に段差が有り、かえって有害な物も。オーディオで有益な電源装置は、遅延回路付きの電源ディストリビューターと呼ばれる物で、系統毎に時間差で給電されます。電源が入りは、先にプレーヤー系、次いでアンプ電源が入り、切るときは、先にアンプ切り、次いでプレーヤー系が切れるように組み合わせます。
インシュレーターや、防振ゴムなどのアクセサリーに手を出すより、プリメインアンプの使っていない入力RCAに、ショートピンを付けるのは、測定結果からも有効です。RCA用樹脂キャップは、錆び防止の効果が高いです。
商用電源、オーディオ的にはノイズ 歪率は、1.3%〜1.6%
マイトランスにマイ電柱と、諸説有りますが、交流で配電される商用電源は、それ自体が最大のノイズです。AC100Vであれば、ある時は0Vで有ったのが、次は141Vその次は、又0Vで、次は-141V、282Vもの電圧差の有る雑音と見なせます。商用電源だけが、スピーカーに作用しないという都合の良い話は存在しません。たった1mVでもスピーカーに加われば、ハム音として音になります。1mVですら、スピーカーに入らないようにシステムアップしている機器は優秀その物です。
ノイズカットトランスも、そそられる名称で、高周波雑音が無くなるような錯覚に陥りますが、実は、一次巻線と、二次巻線が、磁性芯で結合して、電気エネルギーを絶縁状態で送る事ができるという原理は、普通の電源トランスと同じです。ノイズ発生源となってい電源一次側とのグランドループを切るには有効です。しかし、電源2次側の機器同士のループ切りには役立たず万能ではありません。
高周波雑音を積極的に除去するなら、ラインフィルターが適切で、1MHzで、20〜30dBの減衰が、ノーマルモード、コモンモード両ノイズに対して得られます。自作純A級アンプは、TDK
RPE-2006というACインレットタイプを使用しています。マークレビンソンのプリアンプなどで、このようなフィルターが採用されています。遅延回路付き電源ディストリビューターには、ラインフィルターが内蔵されていますので、ノイズ対策アクセサリーより、安価に対策できます。
直流電源は解決策か
商用電源がノイズまみれだから、直流で機器に給電という説も有りますが、MM用RIAAイコライザー程度の電流であれば、問題無く使用できると思われます。しかし、パワーアンプともなると、電流が多くなり、かえって雑音が増える事となります。商業電源も初期は直流送電でしたが、大電力送電に適さず、高圧送電が可能な交流へと進化しました。オーディオアンプでは、低圧交流に変換、整流、コンデンサで蓄電し、最短経路で低抵抗を維持し、増幅素子に接続しています。クリーン電源なる物を、ワンクッション追加した電源が、どれほどノイズ軽減に役立つか、冷静に考える必要が有ります。クリーン電源のディスプレイの電圧や、歪率は、表示されているだけで、気休め程度の意味しか有りません。アンプは、90V〜110Vの電源変動を常識として織り込んでおり、トランジスタのコレクタ、真空管のプレート抵抗は高く、そうした電源変動に強くなっています。逆に音質が良いとされる直熱3極管の方が、プレート抵抗が低く、電源電圧変動で動作電流が変化しやすくなります。DC電源代表格の12V鉛電池の内部抵抗は、10mΩ台で、内部は6層です。交流電源の電解コンデンサの内部抵抗は、ほぼ同じです。
仮想アースで音質が変わる、アンプの電源極性を揃えると良いという話も有るのですが、電源トランスを使用した機器では、二次と絶縁されていますので、効果は疑問です。入力感度が高い機器のフレームをコモンアースの基準とし、シールド外皮の抵抗値が少なくなるように、機器の配置や配線を工夫しましょう。大地アースは、逆に有害電波を呼び込む事が有りますので、オーディオには向いてません。もし、低レベル信号を長距離配線をするのであれば、音響ホールのように、平衡伝送を行います。PCとの接続も光デジタルを使うと変なループを遮断でき、配線距離が5m以上離れても、OKです。同じ長さを同軸デジタルでやると、結構な放射ノイズが出ますが、多くは超音波領域で、D級アンプのキャリアノイズと同じく聞こえません。音質上、同軸デジタルを使いたいのであれば、AES/EBU XLRを検討します。
AC100V 実測例
敷地内の電柱(敷地料を頂いていますのでマイトランスではない)の柱上トランスと、片時も落ち着かない電源電圧の測定結果です。トランスから数mの距離にある、電源の歪率は1..3%〜1.6%でした。電源電圧変動は、そのまま機器の電源電圧に反映し、増幅回路の電源電圧はたえず変動します。電源をスイッチするだけのD級アンプは、電源電圧変動の影響が有るのですが、歪率が本来良くないので、目立ちませんが、出力変動の原因となります。
出力ビーム管 KT-88 とサンケンLAPT 2SA1186 の特性例
左は、JJ製出力管KT-88の規格表の抜粋で、プレート特性です。右は、自作純A級アンプで使用した、サンケンLAPT 2SA1186のコレクタ特性です。Ic=2A辺りの線が横に寝ており、定電流性が強く、電源電圧の多少の変動でも、出力電流が変わりません。KT-88は、ウルトラリニア接続もでき、この場合は線が立って、3極管の特性を示します。内部抵抗が下がって、定電流性が薄れ、電源電圧の変動で、プレート電流が変化します。直熱3極管300Bや2A3が良い音と言われてますが、電源の変動の影響を受けやすく、整流回路は、チョークインプットにしないと不味いことになります。この辺りの事情が、電源にも資源投入する原因であり、半導体式では、電圧変動に強い事が解ります。半導体のディスクリート回路では、電圧変動の影響を受ける事があり、定電圧電源が有効です。OPアンプは、PSRR値から見てわかるように、電源電圧変動には強くなっています。
前述のように、トランジスタのコレクタ抵抗が高く、定電流性により、電圧変動の影響は受けません。しかし、3極管のようにプレート抵抗が低い場合は、電源変動の影響も考える必要が有ります。
KT-88三極管特性 M−Oバルブ規格表より抜粋 グリッド電圧が一定でも、プレート電圧で電流が大きく変化すなわち内部抵抗が低い
スピーカー逆起電力 内部抵抗8Ωの発電機
・磁界中を運動した時の逆起電力
直流的な解説では、コイルに電圧を加えると電流が流れ、フレミングの左手の法則により、発生した力で、コイルが動きますが、動いている事で、コイル中の電荷にローレンツ力が作用して、逆方向に電荷が動いて、これが逆起電力となって、コイルに加わっている電圧を打ち消し、コイルの加速に制限が加わり、最終的に加速度がゼロで、等速運動となります。DCモーターが一定の回転数で、廻るのも、こういった理由です。この逆起電力は、加えた電圧を打ち消すもので、特別にノイズとして発生するものでは無いです。逆起電力は、フレミングの右手の法則でも解説されます。逆起電力は、加速度に対して増加するので、同じ音量なら、より振幅が小さい大口径SPの方が有利です。又、逆起電力は、磁束密度に対しての関数であり、素材の電気抵抗の関数には、なりません。
・電流を断続した時の逆起電力
通電中のコイル電流をゼロにする過渡状態では、コイルの両端には、加えた電圧とは逆方向の、電源電圧以上の高電圧が発生します。これはエンジンの点火コイルの原理でもありますが、SWでは、接点にアークが発生し、接触不良の原因となり、コンデンサで消弧します。直流回路のリレーや、ソレノイドには、逆方向の電圧を短絡するように、ダイオードを取り付けます。
スピーカーは、入力をゼロにしても、慣性力ですぐに振動が収まらず、暫く動く事により、発電が行われます。又、音が出てれば、その音によっても、発電しますが、この場合は、マイクロホンにもなり得るということで、インターホンや、ナースコールはこの原理を応用しています。スピーカーからは、このようなノイズがアンプに向かって送られてくるという事となります。スピーカー出力から入った逆起電力や、放送電波雑音は、低インピーダンスのアンプ電源で吸収されたり、増幅素子からの発熱で吸収されます。NFBアンプの場合、入力とは違う成分を積極的に打ち消します。無帰還アンプでは、打ち消しは無く、抵抗比分の減衰となります。
レベル調整用ATTと、スピーカー逆起電力の関係 2010/11/18
アンプでスピーカーを動かし、入力がゼロになった時に、赤線のような尾ひれが出ます。アンプ出力は、NFBで、尾ひれは吸収され、VR MAXであれば、赤線部分は無くなります。すなわち、アンプのダンピングが正常に機能する状態です。VRの抵抗が有る中間位置では、アンプ側が綺麗にゼロでも、SP端子では赤線の尾ひれが付きます。スピーカーから見れば、VRの残留抵抗が、ダンピングを悪くしている事となります。
アンプまで抵抗分が無い時 VR最大と、VR中央で抵抗分が有る時のT90A(アルニコ磁石)に加わる波形 2020/03/21
アルニコ磁石なら、逆起電力が少ないとされますが、事実は写真の通りで、レベル調整ATTを絞るとジー音が出ます。
ダンピングファクターDF
スピーカーインピーダンス ÷ (アンプ出力インピーダンス+ケーブル導体抵抗+他の抵抗成分)で、カナレ電気のカタログを参照すると、プロ音響で、音質重視の場合、20〜50となっています。B&Wでは、ケーブルインピーダンスとして、0.1Ω(DF=80相当)を推奨しています。
4S6で、3.7Ω/100mなので、DF=80なら、2.7m 4S8なら、6.7mとなります。使用中の4WAYマルチシステムでは、4S6 3.1m DF=70に該当します。46cmウーハーは、4S8 3.1m DF=170相当となります。4芯SPケーブルは、放射ノイズ低減の為に使用しています。
4WAY各ユニットの実測インピーダンス 46cm(SLF) 7.0Ω(37Hz) 38cm(LF) 8.3Ω(200Hz) Mid 10.7Ω(1.5kHz)
High 9.3Ω(10kHz)
最近の中古オーディオ機器修理
オークションで、中古オーディオ製品にも結構な値段が付くようになりました。サンスイAU-D907Fの修理を行う機会が有りました。故障は、PHONO系統のLchが出力しないというもので、TUNERやAUXは正常動作なので、疑うは、RIAA-EQ基板です。木製のボンネットを外し、内部を確認すると、サイドに基板が2枚有り、多数の半導体が、並んでいる所がMCヘッドアンプである事はすぐに分かりましたが、その後段、EQが見当たりません。オーディオの足跡で、検索すると、907Fは、記載がなく、907F
Extraなら有り、ブロック図を参考に基板を探すと、何とラインアンプと思っていた基板がEQアンプでした。結構な数の半導体が使われており、回路解析はお手上げで、ネット検索すると、Extraのpdfが有り、同一品番ではないが貴重な手がかり、ダウンロードして、回路を読みました。OPアンプ並みの構成で、これこそ、回路図が無いとお手上げです。
1980年製 壮大な回路構成のRIAA-EQ基板 2ch独立 2024/04/24
無通電、P-N接合の電圧測定で半導体の良否をを確認、もくろみ通り、Lch Q15に異常が有り、他は全て正常。他に、Lchの外付け抵抗が、OPアンプ周りのパターンに接触していそうな感が有り、これが原因となった可能性も否定できず、4558Dなので、別の意味も有り、4558DDに交換。原因箇所は、これだけですが、次に大型抵抗の足をチェックしたら、予想通り、半田付けクラックの丸い輪っか、半田付けをやり直した時、パターンと半田の接触部が少ないという、この製造時期に多い欠陥が見つかり、結局、この基板の全部の半田付けをやり直しました。Q15は、A97と読めますが、Ge時代の番号なので、これは無いと、Extraの回路図より、2SA992が該当、規格を見るとVcboが-120Vと高耐圧トランジスタでした。検索すると、秋月で\20也、しかし送料が見合わないので、手持ちを見ると、基板から外した物が有り、これにて対処。これで無事に修理は完了しましたが、回路図が無ければ、できない相談でした。回路図や、マニュアルの有償化が進んでおり、以前は普通にネットに落ちていたものが、いまや、強欲商売のネタとなっています。
今も昔も変わらず貧乏で、907より格下AU-D607Fを使った事が有りましたが、ある時プロテクションが掛かり使用不能に。修理出しがもったいないので、調べたら、何と、パワーアンプ回路のセラミックコンデンサがショートしていました。この一点のみの交換で、事なきを得ました。
SR用パワードスピーカー修理
Meyer Sound UPQ-1P 1000W (LF)+275W(HF) 最大音量136dBというビッグスケールのスピーカーで、オーディオ用スピーカーが、軟弱に見えてしまいます。アンプ部はD級ではなく、Mos-FETによるAB級アナログアンプで、15インチウーハーは、2Ωという低インピーダンスで、アンプから1000Wを絞り出しています。チャンネルデバイダーも、フィルムコンデンサーを多用した、正攻法の物が使われており、価格は\1,350,000、重量は49kgで、オペさんの難聴と腰痛が心配です。後継は、UPQ-D1 D級アンプ43kgと6kg軽量になりました。
UPQ-1P 表面 修理中のUPQ-1P 電源はパワコンでシリーズアウト付き、信号はXLR 2024/06/27
不幸にも壊れてしまい、修理見積が3桁、それならというわけで、当方に持ち込まれ、回路解析を行いながらの、初見修理となりました。直結アンプなので、一つでも見逃せば、アウトなので、部品の良否を正確に行いますが、修理後の通電には、相当な覚悟が必要で、動作電流を見ながら、通電する事が、ひとつの肝です。無信号時の消費電力30W、試験は、大きな音をを頑張って出しましたが、耳塞いで我慢しても消費52W、出力22Wまででした。最近のパワーMos-FETの定格が随分進化しており、TO-220で、ドレイン損失200W Id=57Aという物が使用されていました。本来がスイッチング用なので、トランジスタのようなリニアリティは有りません。入力容量は、3130pFで、真空管300Bは、8.5pFと、同じ電圧増幅素子とは呼べない大きさで、もはや、コンデンサインプットでもおかしくないです。
チェンジニアにならない為の修理ヒント集
1.半田付けが怪しい基板は、半田付けをやり直した時、ぶくぶくと泡を吹き、さっと流れない事が多いのが特徴で、動作温度の高い部品の足は、丸環ができています。1980年前後の物に多く、プリントパターンも機械的に弱く感じます。
2.寿命の短い半導体もこの時期に混入しており、始めはポップノイズで、次第に利得が下がり、その後動作停止します。ポップノイズ段階での発見は、難しく、ロット不良などでメーカーから対策が出ていれば、見込み修理でも効果が有ります。
3.電解コンデンサの不良が多いのは、2000年以降が目立ちます。高温となる環境での漏液や、リード抜け。中には、頭を抑えられ、機内の温度上昇による膨張ストレスの逃げ場が無く、電極の接触不良や、漏液に至る場合もあります。LGモニターTVの電解コンデンサを日本ケミコンの105℃品に交換しましたが、故障に至る期間よりも長く使用できています。電解コンデンサの全交換は、自己所有で、趣味の為であれば良いと思います。
サブシステムの紹介 既成概念に囚われないコンポーネント 脱ブランド信仰
TANNOY+JBL+Fostex 3メーカーによる3WAYサブシステム 2016/11/28 利得偏差を極力無くした自作純A級 5Wアンプ 赤いのは、MUTE−SW IDEC AL6H A14R 2020/11/04
自作パワーアンプは、CQ出版トランジスタ技術2017年5月号別冊付録 黒田徹氏のゼロディストーションパワーアンプの記事を参考に、15W出力→5Wにダウンさせ、ホーンスピーカーを効率良く鳴らすようにした物で、全部で8台製作しています。ひずみ率0.00031%達成というタイトルが、製作意欲を沸き立たせました。試作から本製作へ移り、ミューティング回路と、温度保護、中点電圧保護を付加して、実用できるようにしました。7年経過して、故障は無く、完成度は高いものと自負しています。マルチアンプ構成で、全て能率が高いSPを使用しており、1Wの音量でも、騒音の苦情を受けます。5W出力は、秋月の電解コンデンサ33000μFを使用する事を考えての事で、電源電圧から5Wとなりました。これにより、筐体の温度が40℃台で、発熱の問題から逃れました。THDでは、0.0003%(-130dB)を達成しており、残留雑音は、4μV(A)台です。さて、低歪、低雑音でも音質がと言われる向きもあるかと思いますが、純A級らしく澄み切った音で、聴取レベルを下げても、十分に音楽のニュアンスが伝わるので、クラシックのピアニシモの微細な響きが楽しめるようになりました。類似の40Wキットは、Zdistamp_TG01として販売されています。
写真は、リビング用サブシステムで、3WAY構成です。TANNOY12インチは、ウーハーだけを使用し、Midは、JBL1インチホーン、Highは、国産スーパーツイーターですが、このツイーターは、上も下もワイドレンジで、その意味でもスーパーです。
TANNOYファンなら、1発で済むと考えるでしょうが、同軸ホーンには、それなりの欠点が有り、手持ちホーンで、一番良かったJBL1インチを使いました。上が足りない分は、T90Aを使用。JBL1インチは、ダイヤフラムが軽量小型で、2インチより癖が少なく、使いやすいです。
音の良さは、孫も理解できるようで、家族から邪魔者扱いされず、今も鎮座しています。マルチアンプですので、設定値の確認を1〜2年毎に行っていますが、設定値は安定しています。3WAYのアンプch配分は、上の左側が、LchのMidとHigh 右側が、RchのMidとHighで、下は、アンプ内部のクロストークが極めて少ないLowなので、L-Rとしています。利得偏差を極力抑えており、6chがどの帯域でも割り当てできるのが、自作の強みです。
純A級アンプの利点 家庭用向き小出力アンプなら、発熱も一定温度動作となり、音質安定 アルミケースは、ぬるま湯温度
純A級アンプのこだわったのは、欠点として取りざたされる発熱の問題が、適度な発熱は逆に、半導体の安定動作に寄与するという、利点に気付いたからです。半導体は、温度が上がると、抵抗が下がって電流が増え、熱くなり、さらに電流が増えるという熱暴走を起こすので、そうならないよう回路的に工夫して使用します。エミッター抵抗による電流帰還で、バイアスを安定させたり、放熱板の温度を検出して、バイアス電流を制御します。接合部の温度は、150℃が定格ですので、それを越えないよう放熱設計をしますが、水晶発振回路の恒温漕が60℃程度の温度で動作させるという話にヒントを得て、大型放熱板にA級動作電流を流し、Vbeの電圧値にて、接合部の温度を推定し、30℃の室内温度でも、70℃でうまく熱平衡することが分かりました。熱平衡なので、半導体の温度が安定、すなわち、電流増幅率が安定するし、低温時の増幅率低下も防止でき、一石二鳥です。A級動作は、出力の値にかかわらず、平均電流は一定です。AB級や、D級のように、出力に応じて、電流が変化する事は、電源電圧の変動の原因となり、音に悪影響が多くなると考えました。D級では、電源をスイッチするだけで、出力は電源次第、出力が大きくても、スイッチング損失が小さければ、発熱は僅かですが、レギュレーションの良い電源である必要が有ります。半導体アンプは、入力と出力の位相が安定しているのがメリットで、真空管は低域と高域、D級では、高域が乱れます。商品としての純A級アンプは、ある程度の出力が無いと、他形式のアンプとの競争に不利ですので、新発売する度に出力が上がりますが、能率の良いスピーカーには、出力よりも、価格の引き下げを期待したいところです。音圧90dBを出すのに、100Wのアンプは必要無く、100dBの高能率ウーハーには、1Wでも十分です。商品として、5Wアンプは成立しませんが、自家用でありこの点での問題はなく、発熱量、消費電力、電子部品の寿命等、全てに好結果をもたらします。通風口が無い筐体の温度は、夏場でも、41℃台です。
パワートランジスタは、温度で、電流増幅率が変動し、熱平衡も、リニア動作への近道 70℃動作なので、AB級アンプより感度が高い所で動作
1Aを少し越えたところまでリニア動作なので、5W出力に都合が良く、並列動作させてまで、出力を取り、その結果、音質が悪化は無駄です。高能率スピーカーで、入力電力を抑える事は、逆起電力を減らす事につながります。
オーディオスピーカーの音は、直接音+間接音
直接音は、パワーアンプからの入力電力に応じて、スピーカーから出る音で、間接音は、壁などの反射音で、聞こえるのは、両方の音、スピーカーの音だけが聞こえる訳ではなく、評価も怪しくなります。
逆起電力は、スピーカーへの伝送経路に直流抵抗が有ると、電力として顕在化して付帯音となり、直接音の明瞭度を損ないます。振動板の剛性が足りずに音が歪む場合、音の厚みや、煩さなど、何らかの音の変化の原因となります。
2011/01/12
スピーカーに直列抵抗入れると、ヘンな尻尾がつき、10Ωともなると、相当な振幅で、有名モニターが、3個もATTが並んでいるのは、背筋が寒くなります。B&W社が、0.1Ω以内推奨なのは、この写真で納得できます。
現在の4WAYマルチSPシステム 全ch純A級アンプ駆動 30Wx4台+10Wで、真空管アンプ1台分の消費電力
高能率構成 SLF 97dB/W LF 102dB/W MF 109dB/W HF 106dB/W メインの3WAYは、ヤフオクで、2本3万くらいの人気のないSPですが、中身の分かる人には、ほぼALTECの、お宝です。38cmウーハー、大口径ですが、軽めの低音です。中音は、1インチスロートで、定指向性ホーンです。高音は、アルニコのデフラクションホーンですが、ハイ落ち傾向なので、スーパーTWに置き換えました。これで、6.3kHzから30kHzまでを出してます。サブウーハーは、音響ホールを参考に、46cmパッシブウーハー2本をテストとして、安物を入れましたが、そのまま定住してます。60Hz以下を38cmに被せるように鳴らしてます。その為、実質のアンプ出力は、-7dBで、補助的な鳴らし方としてます。
令和2年までサブウーハーが上 現在は、オーソドックスなプロ音響的配置 耐震対策:ベルトで連結 側面図 2024/07/15
主な機器構成は、サブウーハー46cm CP18SN ウーハー38cm(TOA 380-SE) スコーカー 1インチ定指向性ホーン(TOA 380-SE) ツイーター T90A アンプ 純A級 2SA118+2SC2837(サンケンLAPT) チャンデバ DCX2496(POST-LPF改造) 6連電子VR(PGA2311PA)
音源は、PC〜UA-5〜光デジタル〜DEQ2496〜AES/EBU〜SRC2496〜AES/EBU〜DCX2496〜6連電子VR〜純A級アンプ〜各SPユニット サブウーハーは、自作50Hz24dB/octアナログチャンネルデバイダー 純A級アンプ
38cmと46cmウーハーは、バッフル面を合わせていますが、波長が長い帯域ですので、それほど神経質に合わせる必要はなく、気休め程度です。SPは、地震対策で、荷締めベルトで固定、リンキングパーツにフェルトを入れています。T90Aの下は百均の発泡ゴムシートで、ズレ止めしています。
木製ベースは、発泡ゴムシートでずれませんが、木と金属は滑りますので、この部分は動きます。簡単に位置が決まるよう、箱の前縁に合わせてます。 2015/07/22
タイムアライメント
波形観測で行っています。
1.6300Hz1波トーンバースト 間隔24 1波は54cmで24間隔なので1.3mで1波 Midを遅延ゼロとし、Highの遅延時間を求める
このような波形が見えたら、Mid High間の調整が完了 201//10/13
2.400Hz2波トーンバーストを出し、MidをOFF Highからの音が、2波の始めと終わりに出ているので、それとウーハーの波の2波目の始まり(2波の真ん中)合わせる。周波数は、クロスから1オクターブ下ぐらいが目安です。
この調整では、ウーハー音の到達時間が、周波数で異なり、一致点が見つからず、やむを得ずユニットの寸法などで得た数値を入れる事となります。これが現実的な妥協点で、設定値180msecとしています。
波形観測で求めた遅延時間 室温27℃ Midとのクロスオーバー805Hz 24dB/oct 2024/07/12
タイムアライメントを長年追いかけてきましたが、5kHz以上の波長の短い帯域には、極めて有効な手法であり、反射音の少ないホーンスピーカーには、特に恩恵が有るという結論です。
現在の4WAYマルチアンプシステム 46cmSLF 70Hz 拡張2WAYで使用中 システム総合接続図 sys2023.pdf
アンプ利得は、20.7dBで統一し、ボリュームは無し。音量調整は、チャンネルデバイダーでチャンネルバランスを取り、音量は、6連電子ボリューム一括で行います。常用音量-27dB時0.1W相当となります。シンプルな回路構成で低雑音、低歪率、低クロストークを極限まで追求する事で、自作にて、安価に収める事ができました。2chアンプは、左右に渡らないようして、4台使用しますが、NF抵抗を厳選して、利得偏差を少なくしています。
スピーカーの音量
常用音量 -27dBで、0.1W出力 8Ω負荷時 09.Vです。音圧レベルは、80dB(C)(エリッククラプトンCD「change the
world」)となっています。CDは、最大音量が確実に決まってますので、アナログや、ライブPAのような余裕をみる必要がありません。主要な音は、38cmウーハーが出しているので、102dB/Wのスピーカーを0.1Wで鳴らしたら、80dB(C)の音圧ということです。普通のスピーカーは、90dB/Wなので、アンプ出力は1W必要です。80dB(C)の音量に、15dBの余裕を持たすと、私のシステムでは、5W、普通のスピーカーは50Wとなります。純A級アンプが50W出力となると、発熱も多くなり、価格も相当なものです。
最大出力は、6連電子ボリュームが-11.5dBで、6.75Vrms 5.7W相当です。電子VRの0dBに、80Wのアンプを持ってくると、スケールが揃います。以前使用したアンプが、AU-α607XRなので、最大出力と、0dBが一致しますが、常用音量は、VRを-27dB(角度で11時)で使用することになります。
複雑なシステムも赤外線リモコンでノイズレス起動 ボタンは、電源、音量大小、消音だけを使用しています 2011/12/07
6連電子VRのリモコン制御は、ヤフオクで入手した、学習リモコンにてプログラミングしたCPUで行いました。
マルチアンプシステムで使用した3WAYデジタルチャンネルデバイダの詳細な取扱い DCX2496 VENU360
世に無い物は自作でクリア
デジタルチャンネルデバイダー DCX2496の性能検証により、セラコン排除の自作POST-LPFを内部組込、出力を不平衡にして、過剰利得となるアンプ部を省略。短距離伝送なので、バランス伝送が不用とし、シンプルな構成で低雑音化。
チャンネルデバイダー出力から、各アンプへの間に、DACの性能を最大に利用できるよう、PGA2311PAによる6連電子ボリュームを製作。 赤外線リモコンによる音量調整採用。デジタル部はフルビットで運用、アナログ変換後、電子VRで音量偏差を極小に。
パワーアンプは、自作で純A級動作とし、発熱が問題とならない 5W 出力、33,000μFの大容量コンデンサ電源でも安価な16WV耐圧が使える低い電源電圧とし、低雑音達成、それにより、低歪率にも。音量に困らぬよう、高能率のスピーカーで構成。
サンスイアンプから取り出した100W級大型放熱板に、A級動作の熱を利用し、室温より高い温度で動作させて、hFEの温度変化を極小として、リニアリティを確保しました。マッキンのパワーTrは、温度補償素子内蔵型として、B級でも温度変化を重視しています。
スピーカーは、内蔵ネットワークを撤去し、内部配線を4S6に変更し、8Pスピコンで、簡単接続できるよう改造 直流抵抗を小さくする事で、SPからの逆起電力が音に成らぬように対応。
音を常時モニターできるよう、DEQ2496+ECM8000で、リアルタイムアナライザーを設置し、100Hz以下や、10kHz以上の帯域監視やバランスもチェックし音の見える化を。
機器類の電源は、ノイズフィルター内蔵の電源分配器を赤外線リモコンに対応させ、複雑なマルチアンプシステムをワンアクションで起動、コントロールアンプ代わりの6連電子VRで、システム音量もリモコン制御と、イージーオペレーションを心掛け。
DCX2496通常品との大きな違い フラットケーブル中央より信号を取り出して、左側ユニバーサル基板のPOST-LPF回路へ 2016/02/15
自作に真空管を使わない理由
YouTube動画では、これでもかと真空管アンプが登場しますが、趣味の世界なので、良いと思えばそれで良いのでしょう。自作で、真空管を使わなくなった理由は、高熱と高電圧で、次いで、寿命の短さです。修理は、時々有りますので、感電と火傷に注意しています。部品点数が少ないので、回路を追うのが容易で、チップ部品を多用した現行品の方が修理が難しく思います。完成試験の音出しでは、低音が逞しく聞こえ、高音も煌びやかに、小型SPの物足りなさを埋めるような鳴りっぷりの良さです。とはいえ、使用しているのが大口径スピーカーなので、歪みが少なく、その特徴が活きるように、低歪みで、超低雑音の半導体純A級アンプとしました。真空管アンプの出力トランス1個の金額で、純A級が1台作れ、マルチアンプシステムを全て賄うには、真空管では財布がもたないのも理由ののひとつです。
高性能アンプの真価 スピーカーまでの直流抵抗を減らす努力を ・・・ 0.1Ω以下 by B&W
アンプ性能の評価で、測定値を用いると、必ず音質が・・・という反論が起きます。試聴に使うマルチWAYスピーカーのウーハーは、ネットワーク中のコイルの直流抵抗成分が大きいと鈍重な低音となります。他に高能率SPユニットのレベル調整用ATTも音質を劣化させます。すなわち、アンプとスピーカーの間にある、直流抵抗成分を含んだ部品により、音の変化が起き、アンプ性能を正しく評価できなくなります。抵抗の低いケーブルと、ネットワークが無いフルレンジスピーカーならば、高性能の真価を発揮できます。DFの高い半導体アンプが、低音が出ないと揶揄するのでなく、音質差が少ない事に注目すべきでしょう。DFの低いアンプの場合、スピーカーの音はドンシャリ方向に変化しますが、聴感補正と同じ効果となりますので、補正の必要がない85dB〜90dBぐらいの音量で比較すると良いでしょう。直流抵抗は、スピーカー側で発生する起電力で、電圧を発生させ、電力としてスピーカーに作用し、音質を劣化させます。直流抵抗が小さければ、電流が流れるのみで、電圧が十分小さく、電力も僅かで、音質劣化も少ないという事となります。
結論:高性能アンプは、スピーカーのネットワークやATTにより、本来の音が出せず、フルレンジスピーカーは、高性能アンプにベストマッチ、マルチアンプ駆動もネットワークが介在しなければ、同様。コンデンサは、直流抵抗が僅少ですので、音質への影響は殆ど無いです。
機器改良の限界
著作物のレコードやCDの音が、ダイナミックレンジを圧縮して、聴きやすく調整されている事。TV放送では、低音レベルの扱いがバラバラである事。製品として世に無い物まで作り、結果は、元の音より良い音は出ない、出てきた音を素直に受け止めるでした。
2台のスピーカーを設置して、その間で聴くと、立体音として覚知されるというのが、ステレオの原理ですが、周波数特性に関して、左右別々にフラットに調整しておくか、2台の合成でフラットとするのかですが、多少左右で特性が違っても、SPまでは、左右が全く同じ条件という方が良いでしょう。周波数特性を積極的に調整する装置に、グラフィックイコライザが有りますが、アナログの物は、左右同一にできず、音像が膨らむ事が確認できます。この点では、デジタル制御の方が、左右の誤差が少なく、音像が纏まります。
左右合成の音圧は、周波数が低い方は、約6dBアップし、高い方は、0dBのままというのが、居室内での実測値です。理論では、3dB上昇とされますが、居室内では、それより低音が強くなり、スピーカーを多数鳴らすと、低音の出方が不自然でスッキリしなくなります。
オーディオマニアといえば、真空管アンプですが、内部抵抗が高く、スピーカーの音はドンシャリに変化します。この変化は、小音量時の聴感補正が自動でかかる方へ変わるとも言えます。逆に、半導体アンプは、歪みも少なく、低雑音で、クリアな音ですが、低音が物静かで、迫力に欠ける音という評価を受ける事となります。半導体アンプのこのような評価がさらに進むと、測定値は良いが音が悪いに変化します。こうなると、NFBが厚化粧だから、音が悪い原因とかまで変化。それに呼応して、無帰還アンプが持て囃されます。無帰還アンプを販売していたメーカーは、主張統一の為、全製品を無帰還にすれば、その主張が正しいと思えますが、そうでないのなら、売れれば何でも良いという意地悪な見方もできます。NFBを厚化粧にたとえるのは、随分失礼な物言いであり、出力に誤差が生じないよう、監視機能を持たせる為に考案された電子回路です。言霊信仰恐るべし
演奏者が聴いている音と、聴衆が聴いている音は、同じ楽器から出た音でも、感じ方は異なっている事が、自分で楽器演奏すると、よくわかります。
コロナ籠りで、このような事に 2023/04/03 音楽作品にも登場 D-18 2014/03/26
音質差
コロナ対策で、ギターを再び手に取ったら、いつの間にかこんなに。右奥が、マーチンD-18、長年使用しましたが、弦が指にきつく、練習用に購入した中古クラシックギター、3Gに特徴が有り過ぎ、色々対策をした結果、このように深入りするハメになりました。表板は、左側3本はシダー(杉)、右3本は、スプルース(松)で、弦長は、630mm、640mm、650mm(標準長)、660mmと各種揃いました。一番古いのが50年以上前、弦は、ダダリオEJ-45、サバレス510CR、クラシックギター弦の寿命って本当に短いです。ナット・サドルは、牛骨を削り、深い部分も経験しました。オーディオ的には、演奏者と、聴衆が聴いている音が違うという気付きが有りました。これらのギターで、音の違いが判る訓練も行っているとも言えます。ナイロン弦は、音の変化や、劣化が激しく、生もので、気のせいにはできない違いが有ります
マーチンD-18に ELIXIRのフォスファーブロンズを張りました。ストロークで、ややうるさいのですが、煌びやかな音に変化。セカンドアコギを探し、モーリスのW-30に目を付けたのですが、ことごとく落札直前に邪魔が入り落とせません。現存W-30は、サスティンが、マーチンより良いぐらいで、物の良さを認識していましたが、程度の良い物は、遂に入手できませんでした。TAKE5の練習で、ふとハイポジの演奏が気になり、カッタウェイシェイプも有りと思い、こちらは、めでたく落札できました。モーリスSR-703
NATで、定価7万の物で、傷が少なく、良品でしたが、錆びたフレットや、開放弦がびびったりで、サドルの確認、、トラスロッドの調整を行い、スペアで置いてあったマーチンM140ブロンズ弦で、暫く弾いてみることにしました。このように、楽器では、音の違いが良くわかるのですが、この耳でもっても、オーディオマニアの主張に有るような、オーディオの微細な音の違いに気付くことができていません。アンプなら、球、石、D級の違いはわかりますが、SPケーブルでは、長さによる音の劣化は確認できても、種類による差は見出せていません。電源の善し悪しもさっぱりですが、セラミックCの圧電現象での歪みや、SPの逆起電力の影響は、わかります。
マーチンM140ブロンズ弦を張った SR-703NAT 2023/11/25 A-50C-63に使用 直送のE to E 40mmのナットとサドル 牛骨ホワイト DJ35+DJ08 2023/11/25
クラシックギターが、弦長630 640 650 660と4種有るうちの630mmが、調子悪く、ナット交換へ。クラシックギター用パーツは、国内では、650mm用の物が大半で、630mm用は特注で依頼するしかないのですが、Aliに行けば4種のサイズが有り、ギター生産国の面目躍如といった所ですが、日本市場が薄っぺらになったとも言えます。必要な寸法になるよう、ノギスで測りながら、削りますが、削る量が多く、サイクロン式掃除機の目詰まり警報が出てしまいました。
新品で購入したYAMAHAのグランドコンサートが、ナット・サドルが樹脂製だったので、余っていた中国製の牛骨サドルを削って取付け、やっとローズらしい低音が出るようになりました。他のギターに比べ、、音量が小さい事も気にしていたのですが、表板が、スプルースなので、まだ成長途中かと勝手に想像していました。楽器の音の変化は、オーディオの電源や電線による音の変化より大きく、駄耳でも敏感にキャッチできます。
初期のシステム測定風景 38cm3WAY+46cmサブウーハー DS-700Z WS-N20 ECM8000 ブラウン管HD-TV 他 2011/01/25
オーディオ全盛期の典型的3WAY DS-700Zを入手し、測定しています。アナログ6連マスターVRにAU-α607XRが3台と、もう1台は、別置きで46cmウーハーを鳴らしています。DS-700Zは、3WAYマルチシステムに改造して、音を確認している所です。WS-N20は、サラウンドのセンターSPで、ブラウン管式HDテレビが中央に来ています。FMチューナー、カセットデッキは、寿命が尽きて残っていません。アナログ6連VRは、PGA2311電子ボリューム、AU-α607XRは、解体して放熱板とドライブ基板を流用した、純A級アンプに代わっています。DS-700Zのマルチアンプ駆動をテストした結果、間接音の多い広指向性SPでは、マルチ駆動の効果は薄いとなりました。その結果からも、直接音が多いホーンスピーカーは、マルチ駆動向きであると言えます。能率の高いホーンSPは、ネットワーク駆動では、大きな直流抵抗がレベル合わせの為に入り、実力が発揮できず、残留雑音の少ない、小出力アンプで直接駆動する事で、より真価が発揮されます。
2016/12/19
High Mid各ホーンスピーカーによる、タイミング調整時の空間波形の実例で、左が購入したまま、右が、デジタルチャンネルデバイダーのDLYで、時間的に整合した波形で、細かい波は、測定音源が、反射した音で、指向性の強いスピーカーでは、反射が少なくなり、広い指向性のスピーカーでは、反射音が増加します。上のDS-700Zをマルチ駆動した際に、タイミングを合わせる目的の波が、反射音に埋もれて見つけにくいという事態に遭遇しました。細かい波と、直接音の比率が、左右で異なっている事も注目してください。タイミングの合った音が、結果的に反射音を薄め、直接音中の微細な音(ホールトーンなど)も、はっきり聞こえるようになります。フルレンジ1発ならば、最初から右の音なのですが、帯域の両端で、音圧低下があります。
13cmコーン型フルレンジ 20kHz 2015/07/13 リングダイヤフラム・ホーンTW 20kHz 2015/07/20
フルレンジSPで、20kHzは限界に近く、右のスーパーツイーターとは、音の出方が違います。この違いは、乗り越えられるものではなく、マルチWAYの利点となります。しかし、ホーンSP使用のマルチWAYでは、波長の短い帯域で、タイミングズレが発生します。
13cmコーン型フルレンジ 1kHz+10kHz 13cmコーン型フルレンジ 1kHz+20kHz 2015/07/02
フルレンジSPの、1kHz+10kHzの同時鳴らしで、当然ながらタイミングズレは発生しませんので、10kHzも同時に出ます。1kHz+20kHzは、当然ながら劣化します。可聴帯域は、20kHzまでとされ、SPにもそれなりの性能が要求されますが、RTAでオーケストラのスペクトラムを見ていると、10kHzぐらいまでしっかりと音が出ていれば、十分と思えますので、フルレンジでも十分な高域が再生できます。音源の纏まりから見れば、下手な2WAYより良く、シンプルな構成で、コスパは非常に良くなります。倍音というワードで、超音波まで必要という思い込みは捨てても構わないでしょう。
指向性について 音源の指向係数Q
音響工学では、音源の指向係数として、Qが充てられ、音圧計算に登場します。音の明瞭度を考えた場合、間接音より直接音が大きい方が良く聴き取りができますが、直接音と間接音が等しくなる距離を臨界距離Dc[m]として、計算で求める事ができます。オーディオ用として、市販されているスピーカーは、指向性が広い方が良いとされていますが、PA用では、音の到達距離を考え、明瞭度を確保する為に、ホーンスピーカーが使用されます。更に遠達性を求めるなら、線音源となるラインアレイスピーカーとなりますが、線音源は減衰は少ないのですが、逆に屋内のライブな環境では、反射音も減衰が少なく、かえって明瞭性が損なわれますので、屋外向きです。
オーディオ用途であっても、ホーンSPを推奨したいと考えるのは、クラシックや、ジャズの録音は、ホール録音が多く、敢えてリスニングルームの残響を付加する必要は有りません。上の波形のように、本来の音がピタリ合えば、ホールの残響もはっきりと聞こえるようになります。間接音が多いスピーカーでは、音の良さを伝える大切な録音中の残響がうまく聞き取れません。
小出力アンプは、低利得なので、本質的に残留雑音が少ない 増幅雑音は初段で発生
残留雑音は、アンプから発生する雑音で、入力の有無に関係なく、アンプ動作中に、信号が無くても出力される雑音で、能率の高いスピーカーほど、大きな音圧で、雑音が出ます。アンプ雑音は、初段の増幅素子で発生します。小出力でも、大出力のアンプでも、初段の増幅素子から発生する雑音量は同じです。1W(2.83V出力)と100W(28.3V出力)のアンプでは、増幅度が20dB高く、大出力アンプの残留雑音は、20dB大きくなります。
ホーンスピーカーの能率は、110dB/W、アンプの残留雑音が、も8.9μVであれば、出力音圧は、0dB(1m)となり、1m離れた場合、音として感知できません。小出力=低利得による残留雑音低減と、電源電圧を低くできるので、雑音発生源も小さくできる事で、製作したアンプは、4μV台です。
ハイエンド代表のアキュフェーズも、利得28dBのアンプを-3 -6 -12dBとレベル調整できるようにしています。私の5Wアンプは、20.5dBの利得としています。
SP用アッテネータは、直流抵抗の分圧器で、ホーンSPのレベル調整として用いられますが、逆起電力により。明瞭度が低下します。トランス式アッテネータにおいても、巻線抵抗は存在しますが、カタログでは公表されていませんが、Ωオーダーと無視できない値です。
アルプス製モーター付6連VR D型用ツマミも同時購入 マルチアンプシステムのマスターVRとして使用 赤外線リモコンで、モーターを駆動 後に、連動誤差の少ない電子VRに発展 2009/12/15
デジタルチャンネルデバイダーDCX2496の購入当時、雑音が大きいという悪評が多かったのですが、プロ音響機器は、デジMAX時、+24dBu出力であり、0dBが最大入力で設計されている、民生用アンプには、過大入力となり、レベルシフトを行わないと、聴くに堪えない音となります。
又、プロ音響でも、規定入力は+4dBなので、デジタル機器の+24dBu出力は過大です。ここで、デジタル機器の出力を-24dBで抑える手法を取れば、いわゆるビット落ちとなり、音質劣化を招きます。
最適音量には、大きな減衰が必要で、無駄な増幅は不用
最適音量は、80〜85dB程度とされており、一般的なスピーカーの能率は、90dB/Wで、1mの距離で、80dBは、0.1Wとなります。100W出力のアンプでは、-30dB絞り込む事となります。例として、DCX2496にデジタル入力してマルチアンプ駆動すれば、デジMAX +22dB出力、アンプ定格入力が0dBとして、90dBのスピーカーなら総合で-52dB絞る事となります。ホーンスピーカー110dB/Wを使えば、さらに、-20dB絞り、総合で -72dBの減衰、マイクロホンと同じレベルとなります。アンプが増幅より、減衰が主務とは、これが、小出力アンプに着目した大きな要素となりました。すなわち、大出力を誇るより、無駄な増幅を減らして、低雑音化して、聴取レベルでの、高性能化を目指し、0.01W時でTHD+Nが0.01%以下を達成しました。減衰は、ボリュームで簡単に達成できますが、クロストークや、誘導雑音を避ける為、バッファーアンプで出力します。
これで良いのか、TV放送の低音レベル
TV放送で、気になるのは、低音(LFE)レベルです。番組毎に、LFEレベルが、+10dB、又は、0dBとバラツキがあります。CMでも、そのようなバラツキが有り、大型ウーハーで、精密な低域マネジメントをしたシステムでは、聞き苦しい場合が有ります。これは、サラウンドのLFEレベル規格として、+10dBが提唱されている事が原因です。規格が、+10dBであっても、明らかに音のバランスが狂うと言うことは、ラージュモニターでチェックしたら判ります。スモールモニターでは、全く気が付かないでしょう。何故LFEが+10dBか、それは、エネルギーとして、サブウーハー帯域とそれ以外を等分するからという説明を受けましたが、これは、明らかな間違いです。LFE成分は、FL、FRからの抽出MIXなので、それを、更に+10dBする必要は全くありません。ウィーンフィル・ニューイヤー・コンサートが、正しい低音レベルで放送できるのなら、他の番組もそうすべきでしょう。規格よりも、音優先で、自然な音を提供願いたいものです。
実はTVだけじゃなかった間違った低音レベル
低音レベルをサラウンドのLFEに紐づけて、規格を遵守し過ぎと良心的に解釈していましたが、2chでも、明らかにミスした低音レベルの楽曲が増えています。ポップス系制作サイドは、伝統的なラージュモニターにて、低音レベルのチェックを怠りなくと提言したい。
新しい物ほど良く壊れる
使っていたY社マレーシア製AVアンプが突如壊れました。その前は、O社AVアンプが壊れました。こちらは、何とリレーコイル断線で、非常に珍しい故障でしたが、メーカーなら把握しているものと考え、部品の提供を求めた所、断られました。デジキーで類似品を探し修理を行い、今でも動いています。電源トランスが無い、D級アンプ内蔵コンポが、電源が複雑で、故障しても、初見修理では、直せなくなりました。
中古品まで高騰
最近のネット広告で、中古品が当時の定価を越えて販売される事を目にするようにになりました。それらは、耐用年数をとっくに過ぎたと思っても良いでしょうが、最近の物は、短命なので、中古品でもそれだけ価値があるのかも知れません。
良い音じゃないのは:オーディオで出ては困る音とも
割れる音 奇数次歪みの増加
アンプ出力が足りないか、スピーカーの能力以上の音量を要求した時に発生。波形的には、正弦波の頭の伸びが鈍くなり、3次高調波歪みが増加します。アンプでは、最大出力を越えた場合、波形が切れたようになり、奇数次高調波が、大きく増加しします。アンプから片側のSPだけ音出しすると、音を出していないch側もスピーカーから音で出ますがこれがクロストークで、出力を出した時だけ発生し、高域で大きくなります。アンプの歪率特性では、この現象を考慮しません。カタログ値も公表される事が有りますが、アンプの動作条件や、周波数が明記されていませんので、数値を鵜呑みにできません。大出力で使用する場合は、単ch動作させると、クロストークの心配が無くなります。音出し側が無負荷では、クロストークは微小で、ダミー抵抗などで、実際に電力を消費すると、顕著に出ます。普段の使い方では、両方から音が出ているので気にならないと思いますが、大出力時に何となく音が濁って聞こえるとしたら、クロストークと考えて良いでしょう。
途切れる音
かすれたような音や、バリバリ音が混ざる音ですが、スピーカーリレーの接触不良で、最初は音量が不安定になり、症状が進むと、途切れるようになり、最後はバリバリ音や、鼻をつまんだ音になり、最終的に音が出なくなります。スピーカーも大振幅で動作させると、ボイスコイルと入力の接続部分が劣化し、かすれた音になり、最後は音が出なくなります。又、エッジも劣化が進んだウレタン製エッジでは、ウレタンがボロボロになり、コーン紙の支持ができなくなります。エッジがちゃんとしていても、コーン紙の裏側のダンパーが破損するケースが有り、小口径で、低域を欲張りったスピーカーの壊れやすい箇所です。
雑音
入力音源に違う音が混ざり、スピーカーから再生される事が有ります。マイクや、エレキギターでのハム雑音は、バンドをやっていると良く悩まされます。照明や、調光を使用した時も同じような雑音が混入します。電気器具のスイッチの入り切りで、パチッと聞こえるノイズ、時には、近くの落雷でも同種の雑音が入ります。FM受信時に、車やバイクのエンジンの点火ノイズが良く入りましたが、今は車の性能が良くなり、気にする事はなくなりました。AM放送の送信塔から、スピーカーラインに直接飛び込む雑音もあり、時には、放送が聞き取れる場合もあります。AM雑音は、アナログアンプの場合は、通電時には、打ち消されます。マイクのハム雑音は、平衡伝送で、同相雑音を打ち消します。FM放送では、FM専用アンテナを設置すると安心して受信できます。入力から混入する雑音には、平衡伝送以外に、光デジタル接続も有効です。LANケーブルも、内部が平衡伝送ですので、良いです。PC等のスイッチング電源を使っている系と、オーディオ系を絶縁するには、光伝送が合理的で、元々は、核爆発で、通信が途絶しないように、確立されたテクノロジーです。同軸デジタルは、外皮から結構な電磁ノイズが出ており、放射ノイズに敏感な機器への影響の有無を確認します。MMカートリッジでは、回路インピーダンスが高いので、放射ノイズ源を近づけなくするか、MCカートリッジにします。レコードプレーヤーから、平衡伝送する方法も、ハイエンドマニアで行われていますが、一般のオーディオユーザーなら、MCカートリッジの使用で十分です。
オーディオの主役は、スピーカー ・・・ 空気とも
スピーカーは、音の出口で、永久磁石の磁界中に有るボイスコイルに電流を流して、それを動力に振動板の空気を動かし、音にします。スピーカーの音は、個性的で多様であり、選択で最も差が出ます。起電力の有る物を電力で動かす事が曖昧さの原点
オーディオは、宗教に非ずで、文系人は、単語の響きに騙されないよう良書を読みましょう。金かけても良い音は出ません。まずは有る物でやってみる事が大切。格闘する相手は、空気、金の賛嘆より脳トレを。
マルチアンプシステムの基本は、アンプとスピーカーを1対1で、直接に鳴らす事で、アンプとのマッチングが最良となり、アンプ性能の良さが引き立ちます。構築に、高い技術と、それなりの測定器が必要で、回り道をしないよう、詳しく解説します。
良い音
良い音とは、ドンシャリ音ではなく、小音量で、輪郭を失わず、大音量で、うるさくない音と表現したい。それは、生演奏で聴いている音が再現された時、その音を良しとするものです。音が出て、消えゆく間に、次の新たな音が生まれ、又消えます。特に消え際は、日本的な美意識にも直結し、静寂も美だと思います。アルニコが高音質とか、300Bが高音質とか、もう卒業で良いのではないでしょうか。「生音など出っこないから、我が道を行く、オーディオは趣味の世界で、とやかく言われる筋合いは無い」は、その通りですが、大金かけずとも、システムを少し工夫する事も、楽しみでしょう。
アナログレコードの音は、FFTで見たスペクトルが、ホールで収録した音と似て、高域にかけて緩やかに減衰します。対して、16ビットCDでは、10kHz以上の帯域でもフラットな分布で、自然減衰してない、近すぎる音です。トライアングルなどの澄んだ音で、レコードとの差が有り、CDでは、滲んだ音が多いです。16ビットでは、高域も減衰が無く、歪みも少ないのですが、レコードの音は、歪みが多く高域で減衰しているにも関わらず、良い音と言われます。24ビットであれば、アナログレコード以上の音となり、後は、音楽そのものの魅力や、録音エンジニアの腕次第となります。
音量の管理 計算の土台 dBデシベル
音の大きさをどのように管理するのかですが、テレビなどでは、リモコン操作時に数字で表され、我が家のTVでは、朝が27、夜は29です。耳の劣化度のチェックとして、ブラインドで、音量を調節してみて、数字の答え合わせをしても面白いでしょう。オーディオアンプでは、大きなメイン音量つまみの機種が大半で、角度を等分した線や、、dB数値が表示されています。高級機では、ディスプレイで、dB値を表示する機種もあります。ミニコンポなどでは、TVのように、数字が表示されます。
プロ音響では、入力、出力共に、dB目盛りで、規定レベルは、0dBで、最大時が+10dBとなる事が多いです。デジタルミキサーでは、フェーダー目盛りだけでなく、小ディスプレイで、ファンクションとdB値を、各フェーダー毎に表示する物もあります。正確な音量管理をするなら、騒音計を用いて、dBで音量を読みます。dBは、対数で、音の感じ方に似ています。可聴最小が、0dB、最大は、120dBとなります。600Ω負荷での電力を基準に、信号強度を表す場合もあり、0dBm(デービーエム)は、1mW 0.775Vです。デジタル音源では、記録できる最大音量は、デジMAX = 0dBとなり、16ビットCDでは、0dB〜-96dBまでの音量が記録されています。音の強さ、電力、デジタル音量で、それぞれのdB表記が違うものに思えますが、同じ意味です。例えば、音の大きさが80dBであった場合、90dBまで音量を上げるには、り、アンプで+10dB上げれば、音量も90dBとなるように、単純な足し算で、計算が可能です。
老人の聴覚は、色々な人がコメントなどで、謙遜して語られていますが、正直なところ若干高域で、聞こえが悪くなっている事は確かです。しかし、オーケストラで楽器から出ている範囲なら、しっかりと聞こえ、聞こえないのは、ノイジーな音楽の楽音以外の音が、聞こえないので、逆に都合が良いかも知れません。ハイレゾの良さは、超音波ではなく、微細音が聞こえるところに有ると思います。
オーディオの適正音量
音楽再生時の適切な音量を知っておく事は、システムに過剰な性能を求めない為に大切な事です。厚生労働省が、労働環境における指針として、90dB(A)以上では、保護具の使用を求めています。90dB(A)というのは、非常ベルや、サイレンに求められる基準音量です。難聴にならないで、安全なオーディオライフを過ごすには、90dB(A)を限界レベルと考えて差し支えないでしょう。なおステレオ再生では、1本だけの値から、室内では、5.5dB(3dBより大きい)ほど音量が大きくなります。レベルメーター付きのアンプをお持ちの方なら、3W以上の音が、かなりの音量である事はご存知でしょう。又、アンプ出力が小さいと、波形がクリップして、スピーカーが破損する事を防止する為に大出力アンプが必要というのは詭弁で、売手側の論理です。アナログ時代では、0dBの上に、ヘッドルームとして、18dBほどの余裕をみていましたが、デジタル音源であるCDでは、最大音量デジMAX以上の音は出ず、突発的な音量に備える必要は有りません。すなわち、デジタル音源では、最大音量が、アンプ定格出力であれば良く、90dBの音量であれば、一般的な16cmスピーカーなら、1Wで十分となります。それより大口径であれば、能率が高くなり、100dB/Wのスピーカーであれば、0.1WのアンプでもOKとなります。ミッドホーンならば、110dB/Wで、何と10mWのヘッドホンアンプでも十分という事となります。
スピーカーを鳴らす必需品 アンプ
学生時代では、せいぜい真空管A級シングル3Wどまりで、10Wも出るPPアンプを羨ましく思え、お金が無くて作れもしないのに製作記事を読んでいました。やがて、トランジスタ(ソリッドステートとも)アンプが発売されました。パワートランジスタの都合で、NPN同士の出力に直流カットのコンデンサが有る、準コンプリメンタルアンプが主で、通電時は、ボン!と音が出ていました。その頃、真空管でも、出力管を多数並列したOTLアンプが有りました。D級とも言えるスイッチング方式の半導体アンプもその頃に紹介されましたが、雑誌の記事だけでした。次いで、PNPパワートランジスタが登場し、正負電源で、コンデンサ無しの時代となり、純コンプリメンタルOCLアンプの全盛期となります。それと並行して、雑誌では、直熱三極管アンプの記事も多く有りました。真空管か、トランジスタかで、両者の中間をいくようなFETも登場しました。現在もFETを使用したハイエンドアンプが販売されています。今は、そこにD級アンプが加わりましたが、D級の良さは、出力の大きさと、軽量さで、スタッフの腰痛防止が最大の利点ですが、難聴には、危険度が増しています。
自身のオーディオアンプ歴は、42シングル、6RA8シングル、マランツ#16コピー、型番不詳国産プリメイン、P306/M506、TA-F333ESJ、AU-α607XR、自作5W純A級となります。4WAYマルチアンプシステムは、AU-α607XRの時に完成しています。607XRは、90W+90Wという出力で、4台で4WAYですが、110dB/Wもの高能率なホーンスピーカーも90Wアンプで鳴らす不自然さを感じていました。電圧増幅をしないで、電力だけ増幅する0dBアンプを検討、プリアンプ出力0dB=0.775Vは、75mW(-11dB)で、101dBのスピーカーなら、90dB/mとなり、常用音量で、過不足有りません。アルテック系や、バックロードホーンSPでは、このような能率が可能です。大出力領域は、普段使わないので、1W以下を高品質にを第一義とし、純A級小出力アンプとなりました。
自作純A級小出力アンプ 0.01W時 THD+N 0.01%以下
2017年トラ技黒田氏の記事を参考に、手持ちOPアンプLME49720+電流ブースターで純A級アンプを試作、オシロ波形も細く、SNが良い事や微小音量で解像度が高く、音量を上げずとも、小さな音でも、明瞭に聴けた事から、本格的な製作へと進みました。
自作した純A級の出力は、5Wもあれば十分としました。5Wとした最大の理由は、16Vの電源トランスと、33000μF16WV電解コンデンサが、コスパに優れていて、それを使用うと出力が5Wとなったという事からです。アンプ出力は、素子の立派さでなく、電源電圧の2乗で効き、放熱に問題無ければ、同じ回路のままで、大出力となります。低い電源電圧なので雑音が減り、純A級5Wアンプは、ケース外側が40℃台という、ぬるま湯の温度で動作します。純A級は、平均電流が変化しないというのが、最大のメリットで、動作温度も安定しています。温度で増幅率が変化する素子が、ある一定の温度で動作するので、直線性が高くなります。M社ハイエンドアンプでは、素子内部に温度補償ダイオードを組み込んだ5本足品を使用してますが、熱容量の大きい放熱板を、環境より温度を上げて動作させるA級アンプなら、温度補償無しの3本足品で十分安定動作します。水晶発振回路を恒温漕で使う手法に似ています。
試作した純A級アンプドライブ回路 LME49720使用 DC保護回路無し、電源デカップリングコンデンサ付き この有り無しで、残留雑音値が大きく変化 2017/06/10
普通のアンプでは、デカップリングをして、パワーステージと共通電源で、電圧増幅段を駆動していますが、雑音値に、これほどの影響が有る事は、実験で始めて気付きました。結果、電圧増幅段の電源は、別系統の巻線で、単純な3端子レギュレーターで供給し、残留雑音の低減をしました。アンプが低雑音となっても、アンプ筐体の振動音が出るようでは、困りますので、電源トランスとシャーシーの間は、板ゴムで、防振対策をしました。トランス直付け時の低い唸り音は、これで無くなり、快適です。
製作記事では、保護回路の記述が無く、実用には、少しハードルが有りましたが、電源ON-OFF時のミューティング回路、中点電圧のDC漏れ保護、放熱板温度による、電源遮断保護を設けました。パワートランジスタの過電流保護は、音質優先で、省きました。過電流に対し、3A電源ヒューズと、放熱板温度保護と、中点保護で、スピーカーは守れるという判断です。
純A級アンプ 4台製作中 2017/12/02 電源トランスとシャーシの間に入れた防振用1mm板ゴム 2018/05/02
入力は、ピンとXLRを併設 出力は、低接触抵抗のノイトリックスピコン使用 ノイズフィルター組込3P電源インレット 2018/11/24
自作した純A級アンプの表面と背面 電源は、ロックポジション付きトグルSWで、日開製、赤いのは、自作機器全てに備えた緊急停止用のMUTE-SWで、IDECのLED自照式オルタレートプッシュSWです。外国製音響調整卓は、MUTE操作に重点が置いてあり、それが国産との大きな違いですが、運用で便利なので、自作機に採用しました。背面は、不平衡入力ですが、RCAとXLRを併設しました。XLRの信頼性は、不平衡入力でも活用すべきです。出力は、ノイトリックのスピコンで、プロ音響定番です。電源は、PCでお馴染み3Pインレット+ノイズフィルターとなっています。国産のAVアンプが何故かこのサイズの2Pを使用していますが、緩みやすく、信頼性に欠けます。採用したケースは、タカチのOSシリーズで、サイドパネルは3mm、別売シャーシは2mm、裏表のパネルが1.5mmとなっており、アルミを多用した、熱抵抗の低いケースです。これにより、純A級動作でも、ケース温度がぬるま湯程度で抑えられています。難点は価格でコストの半分以上を占めています。ただ、頼りのトヨデン電源トランスが製造中止となり、今後の製作に支障を来すこととなりました。0.01W時のTHD+Nは、0.01%以下と、低雑音低歪率、残留雑音は、4μV(A)台を実現できました。
動的な残留雑音 スピーカーが接続されたら、アンプ出力雑音増 クロストークも嫌な音の源
残留雑音は、無信号時のアンプ出力値で、静的な雑音値ですが、実負荷としてスピーカーを接続すると、雑音値が変わります。スピーカーを雑音のある環境に置き、無信号入力のアンプを接続、その残留雑音を計ると、アンプ種類や、主音量の位置で、数値が変化、解像度が高いアンプは、数値が小さくなります。入力を開放と、短絡でも違い、ボリューム開度でも違いが出る事と、アンプの格の違いと相関が有りそうなのです。
クロストークも周波数特性を持ち、単純な数値では表せませんが、これも、製品の優劣を客観的に評価できる指標です。パワーアンプの片chで、出力を出し、もう片方は、無入力としても、音が出ます。出力を大きくすると無入力側の雑音も大きくなります。普段は、どちらのchも、スピーカーから音が出るので、気付きにくいのですが、アンプ内部だけで出力電流が流れるよう、ダミー抵抗を接続すると、もう一方からの漏れをSPで的確に聴くことができます。周波数が上がるほど大きくなりますので、10kHzぐらいで量的な判定をすると良いでしょう。アナログレコード再生時に、針から直接聞こえる音に似ています。クロストークは、自作4chアンプでも問題となり、4chを諦め、2chで作り直しました。その詳細は、これより先で紹介します。
同じく音質に有害なクロスオーバー歪みは、小信号時にガサついたように聞こえます。アイドリング電流を、数10mA流す事で解消します。周波数特性の良いオシロスコープで、観測します。OPアンプや、パワーICなどで、発生する物も有ったり、低周波では良くても、再生周波数が上がると発生する製品も有ります。
測定方法は単純で、片chに入力を入れ、ダミー抵抗で、電力を消費し、もう片方の出力値を読み取ります
Lch出力で+10dBm(0.8W相当)を出した時のプリメインアンプのクロストーク特性 2013/10/24 各種実験結果より
出力段がバイポーラトランジスタなので、優秀な特性ですが、他社のMOS-FETプリメインアンプですと、これより数値が悪化します。この結果より、自作純A級アンプは、バイポーラトランジスタを終段に持ってきました。入力開放時の特性は、高インピーダンス回路の弱点で、低いインピーダンスで、入力する事が大切です。マランツタイプの真空管RIAAイコライザーアンプが、カソードフォロアで出力しているのは、正にこの為で、遙か昔から、技術者間では周知されていた事柄です。
5W出力であっても大型放熱板を使いますが、純A級の動作温度を、熱い目の風呂と同じにする目的で、常温より高い一定の温度で動作し、コンデンサの寿命が心配な高温にならないようにしています。スピーカーの逆起電力等の、外乱は、熱として、消費され、機器の使用温度を上げますので、100Wアンプ用放熱器で、それにも対処しています。電源トランスは、ダーリントン接続の終段回路専用で、ドライブや、保護回路は、別トランスで定電圧電源です。トランス容量は48VA、5Wx2出力に対し5倍の電源容量と、十分な余裕が有ります。SBRブリッジは、ショットキーバリアダイオードの半分のVfで、低抵抗です。パワーアンプ初段は、OPアンプで、別電源でなくても、動作はしますが、デカップリングコンデンサで、残留雑音が上昇するという試作結果が有り、平凡な3端子レギュレーターで、OPアンプに給電して、残留雑音を低減しています。
2ch仕様よりも音が悪かった4ch仕様アンプ クロストークが原因 パワーアンプは、モノラルが理想
アンプのクロストークについては、2014年に相当詳しく調査、動作試験を行っています。 2014年クロストーク解析
2014年に手元に有った様々なアンプのクロストークを解析しており、その経験を踏まえて、2017年から、純A級アンプの自作を始め、ある程度の成果は有り、2chアンプで実現した低雑音、低歪率をそのまま、4chアンプに持ち込み、スペース効率を上げました。チャンネルセパレーション向上の為、4chアンプを、Lch用とRch用として、運用を行い、聞き込みや、他のセッティングを行ってきましたが、どうも気になる点が有るのが、クロストークのせいという仮説を立てていました。クロストークの根本的な解決法は、パワーアンプを全てモノラルアンプとする事で、ネットオークションでも、その点については、正当に評価されているようです。スペース効率からは、最悪手で、フルレンジSPならば、どうにかなりそうですが、4WAYマルチだと、8台となり、専用パワーアンプラックを用意したり、ケースのコストが無視できず、2chアンプで妥協しました。
4ch純A級パワーアンプ 2018/07/17
自作4chアンプは、2ch仕様と比較して、高域のクロストークが多く、音としても認識できていましたが、別の問題解決を優先しており、それらが解決した事で、クロストーク問題に本腰を入れました。試験的に予備の2chアンプ2台を、MchとHchとに入替えた所、音質の向上がみられました。
この結果より、低雑音、低歪率のアンプなら、クロストーク特性も良くないと、それが目立ってしまうと考えて良いでしょう。製作当初の4ch仕様のクロストーク特性ですが、これでも、メーカー製プリメインアンプより良い値です。このアンプの残留雑音は、5.3μV THD+N
0.0007% SN比 111dB(1W時)ですので、特性としては、全く問題無いのですが、音としては、望ましくないと結論しました。音質面において、クロストーク特性は影響が強いと思います。パワーアンプが、ある程度の出力を過ぎると、クロストークが大きくなりますので、パワーアンプで出力を出した状態で測定します。
自作4chA級アンプ クロストーク周波数特性 メーカー製プリメイン並みですが、解体して2chアンプに作り替え 2017/12/29
最後に製作した2ch仕様アンプ内部 再利用したノイズフィルターのラベルが破れました 2022/09/22
4chアンプの部品を流用し、OS-133に入替ました。電源トランスもそのまま流用ですので、容量は80VAで、これで5Wx2を出力します。2ch仕様では、16V3Aを使っていましたが、生産終了で入手できませんでした。クロストーク特性を欲張って、シールド線を使用してみましたが、かえって特性が悪化し、止めました。ケースの向こうに少し見えているのが、その0.75SQシールド線です。他に、電力増幅部の電源を、トランジスタ毎、独立に変更しました。出力配線の引き回しは、クロストークを測定しながら、最良点に近い所を探って決めました。4chアンプ2台から2chアンプ2台への作り替えですので、あと2台作れますが、ケースが高額なので、使わない物を作り置きしておくのも、無駄なので、補修部品として、暫く保管する事にしました。
特性が悪い方が旧2chアンプ それより改善した新2ch(下4本)アンプのクロストーク特性 2022/10/06
新しく製作した2chアンプ2台と、比較の為同じ条件で、旧2chアンプを測定。出力chは、+10dBm(8Ω 0.78W相当)を出しておき、入力が無いchの出力を測定したものです。旧タイプもかなりクロストークが少ないのですが、5kHzあたりから上昇しています。新アンプは、一番悪いchで、10kHzぐらいからの上昇となっています。新旧の主な違いは、元来ブリッジアンプなので、電源配線が、基板内部で接続されているのをそのまま流用しましたが、電源配線を、電解コンからそれぞれ独立して配線した事です。アースラインに大きな変更はありません。全体として、10dBほど高い値なのですが、メーターの違いによるもので、旧アンプのデータは、比較の為です。好結果が得られ、旧アンプ6台も電源の独立配線に変更をしました。
クロストークの影響を理想的に下げたい場合は、モノラルアンプで構成する事です。普通の2chアンプでは、内部が、不平衡、平衡とで、大きな差は有りません。一般的には、並びが良く見えるので、アンプをLRで使用したい所ですが、セパレーションを悪化する方向でクロストークが影響しますので、左chで2台、右chで2台という使い方を推奨します。これは、オーケストラの楽器配置の再現に好結果をもたらします。この4台の動作利得は、少なくとも誤差0.1dB以内と精密に合わせる必要があります。それならばと、4chアンプ2台で省スペースを計ったのですが、鉄パネルケースであった影響も有り、クロストーク特性で失敗しました。モノラルアンプは、高価であり、ステレオプリメインアンプに愛着が有ってという場合は、同じアンプを入手し、コントロール部は1台のアンプに任せ、プリアウトをもう1台のパワーアンプ部に接続する事により、パワ−アンプ部が、モノラルアンプと同等の動作となり、クロストークから逃れられます。(電源部を左右のパワーアンプで共有しなければ、クロストークは発生しません。)古い機種の場合、中古価格はそれほど高騰していませんので、試す価値は有ると思います。フルレンジSPなら、高域がキツイと言われたテンモニが、結構使えるのではと思っています。
同一プリメインアンプ2台で、パワーアンプをモノラル化して、クロストークを避ける一例
中華A級アンプ
デジタルアンプ、DACで、Hi-Fi指向のSMSL社製品唯一のアナログA級アンプVMV A1 出力10Wで、ボリュームは、PGA2311による電子ボリュームとなっています。出力段は、FETで、バイポーラトランジスタではありませんが、自作した5W純A級アンプとコンセプトが良く似ていおり、マルチアンプシステム用として、使えそうなので、紹介しておきます。デジアン揃いの製品群に、唯一登場するという事は、A級アンプには、捨てきれない良さが有るという証明でしょう。取扱説明や、技術仕様の詳細が無いので、実物による確認が必要ですが、平均動作電流が一定のA級ならでは良さが、味わえると思います。電源問題で、沼に落ちる前の目覚ましになるかも知れません。D級アンプは、電源効率が高く、価格の割に大出力で、エネルギーもマネーもコスパが高いのですが、高域位相の問題と、搬送波が、新たなノイズ源となる事を警戒して、マルチアンプシステムへの採用はしませんでした。
真空管アンプ
A級シングルアンプの回路はシンプルですが、出力トランス直流磁化の影響があり、大出力には向きませんが、歪みも多く、真空管の個性が顕れやすいのが特徴です。低DFなので、小口径スピーカーでも豊かな低音で、煌びやかで、艶の多い高音は、魅力です。プッシュプルでは、真空管A級シングルで問題となる直流磁化が相殺され、磁気飽和まで余裕が有り、大出力が可能です。トランスは、一次側の電流が少なく、電流によるアース電位変動が少ないのが最大の利点です。その代わり、グリッド回路は、インピーダンスが高いので、様々な雑音を受ける事となりますので、実装技術の見せ所となります。ヒーター回路は、是非ともDC点火で、無用な交流を回路に近づけない事です。DFが小さいので、スピーカーのインピーダンスの高い部分で、音圧が上昇し、いわゆるドンシャリの音は、真空管アンプの音色となります。ドンシャリは、小音量での聴感補正を兼ねます。フラットな音では無いので、DFの高いアンプと、音質比較で、優劣を論じる事は、そもそも論点が違う事となります。
参考測定値、KT-88プッシュプルで、電気特性は、8Ω1W出力時 SN比71.3〜82.2dB THD 0.25〜0.36% 残留雑音66〜100μV(A)です。歪み成分の殆どは第2次高調波で、基本波とはオクターブの関係です。消費電力は、常用音量時190Wでした。クロストークは、音量VRをMAXにすると盛大に出ました。歪みより遙かに大きいとはいえ、レコード盤がセパレーション30dBなのと大差無く、音は十分鑑賞に堪えられます。ですが、モノラルとして、クロストークを避けるのが最善でしょう。
真空管式プッシュプルは、AB級動作で、KT-88では、50〜60mAほどバイアス電流を流しますが、300Vもの電圧をかけてなので、すでに15Wほどの電力であり、A級動作範囲は相当に広くなっています。
OKWAVEでの興味深い質問の紹介
トランス式アッテネーターで検索をしていたら、マッキントッシュMC2250でマルチシステムのミッドホーンを鳴らし、残留雑音が大きいので、トランス式アッテネーター -15dBで使用し、それでアンプが故障、代わりのアンプでも、ピークが表示されるというQ&Aなのですが、MC2250は、半導体式でありながら出力トランスを持った250Wのパワーアンプで、誘導負荷には強いと思っていましたが、意外な事実でした。250Wアンプを-15dBした場合、約8Wのアンプと同じになります。5Wの高品質なA級アンプが妥当であるという証明です。負荷として、スピーカーではなく、トランスのような誘導負荷を接続した場合、アンプからは、低いインピーダンスが接続された状態となります。過去に、200Wマッチングトランスで、インピーダンス変換をするシステムのテスト中で経験しました。数10Hz帯では、定格電力を送れず、保護回路が動作したり、発振したりで、パワーアンプの機種変更をしても同じでした。さらに、BOSE101にトランスを取り付けて、フロアをハイインピーダンス仕様で鳴らした場合、出力に見合わない大量発熱に見舞われました。誘導負荷では、スピーカー回路から大量に電力が送り返されるので、それに見合った負荷耐力が必要となります。理論と乖離した場合、現場に起きている現象が大切で、机上だけで事を構えないというものでした。取り敢えずこの現場は、オーディオ用アンプではなく、放送設備用の大電力アンプに交換しました。
サブウーハーは2個とし、定在波の影響が大きい帯域をStdWave2で予測 家具の影響で若干変化しますが頼りになります
StndWave2で見た我がリスニングルーム特性 46cmx2総合 JBL 46cmウーハー JRX118 カタログpdfより
46cmサブウーハーの特性例ですが、4πと2π空間で判りやすく表示されています。普通は、床置きで2π空間です。4πは、空中に設置した場合で、コンサートではよく目にします。設備でも、アリーナでは、このような形態で設置されていまます。
ウーハー低域側のフィルター(ステートバリアブル型) OPA2134 自家用ですので、安価なアルミケースを使用 XLRレセプタクルは、77タイプ
サブウーハー用 24dB/octフィルター 2022/06/14 選別された 0.068μF 2016/05/14
2WAYチャンネルデバイダーで、LF 出力、HF 出力、ALL 出力が有ります。ALLは、入力をそのままバッファアンプを介して出しています。ミューティング付きで、フィルター周波数は、実測で、51.6Hz、62Hz、73Hzです。単芯シールド線は、音響卓用 平河 HC-2L1 オヤイデ電気で入手、工作性が良くお奨めです。2WAY 24dB/octチャンデバは、4組のコンデンサーと、抵抗が必要になりますので、多数を購入して、選別をします。コンデンサは、周波数一定の信号源を用いて、交流電圧を測定すれば、精度の高い選別ができます。このようにすれば、位相が動く回路でも、左右は正確に同じ位相で推移します。自作でも、市販品より遙かに高い完成度です。24dB/octフィルターは、次数が多いので複雑と思いますが、複雑なのは、帰還ループだけで、周波数を決めるCRは、4組が同じ数値で、合わせ易いです。抵抗値が、10kΩを越えますので、FET入力のOPA2134を使用。
チャンネルデバイダーのレベル調整は、LF側のみに、測定器並みの10回転ポテンショメーターで行っており、ダイヤルの目盛りは、1000まで読み込め、可変範囲を10dBとして、0.01dB単位まで精密に設定できますが、実際の所は、低音で音が判りにくいので1dB単位ぐらいで設定しています。
ポテンショメーターは、アナログ遅延掃引オシロで、いつも使っており、調整精度の高さと安定性は抜群です。しかも、固定の為のストッパーも装備しており、まさにチャンネルデバイダーのレベル調整にうってつけです。チャンデバに10回転ポテンショメーターという発想は全くのオリジナルと思っていましたが、マークレビンソンLNC-2L(1982年\830,000)というチャンデバでも同じ物を使用し、オーディオでも実例が有りました。
調整範囲10dBで、安定した0.01dBステップで調整可能
LF側に10dB調整範囲の音量調整を設け、ボルテージフォロアで、出力しています。ポテンショメーターは、巻線抵抗ですが、周波数が、100Hz以下ですので、問題無く使用でき、ガリが発生しにくく、精密な変化特性です。
サブウーハー用チャンネルデバイダー合成特性
サブウーハーのような低い周波数では、位相により合成特性が変化します。製品のサブウーハーには、フィルターの周波数と、位相スイッチが付いています。2WAYチャンネルデバイダーの合成特性を測定しました。
2WAY方式 通常のフィルター同士でクロス リンクウィッツライリーフィルター24dB/oct 50Hz 60Hz 70Hz LF出力 HF出力
正相は、上の平坦な部分で重なり、逆相は深いディップに 2022/08/03
拡張型2WAY方式=エベレスト解説文にて使用 LF出力 ALL出力
JBLエベレストは、38cmウーハー2本搭載ですが、1本は、130HzのLPFが入っており、普通のネットワークのような帯域分割ではありません。このような方式を、拡張型2WAY方式と、カタログで説明されており、メーカーが使った用語の方が理解が得やすいと考え、それに倣いました。
ウーハー側は、フィルター無し サブウーハーに LR24 100Hz LPFを設定 極性を反転したものも掲載しましたので、比較して下さい。
0dB同士の合成 上に盛り上がる方が、逆相 正相同士では、フィルター周波数より少し下で、ディップが出ます 2022/08/03
フィルター同士のクロスより、逆相時のディップが浅くなります。ピーク点は、フィルターの周波数より、低い方にずれます。合成のピークを過ぎると、サブウーハー側は、どんどん下がりますが、電力は供給されていても、位相の変化で、打ち消しとなることによります。バスレフの動作にも似ており、アクティブバスレフとも呼べます。
ポテンショメーター目盛 対 合成特性 LPF50Hz+ALL 100ステップ 一番上が、1000です。それぞれ0dBでの合成のピークは、4dBで、最小値は、1.3dBです 2022/08/04
目盛り100ステップ SUB側のみ0dB、+1.5dB、+3dB
24dBフィルターでは、位相変化が大きく、ピークから後は、平坦にはならず、どんどん落ちていきます。右のグラフは、サブウーハー側を0dB、1.5dB、3dBとプラス側に増幅した場合で、ピーク周波数は、サブ側が強くなると低い方にズレます。ピーク周波数は、目盛りを絞り込んだ場合が、41.6Hz、0dBで38.1Hz、1.5dBで37.6Hz、3dBで36.5Hzといった感じで、ピークが大きくなると、周波数が低くなります。ピーク後落ちるのは、バタワース18dBも同じで、リンクウィッツライリーフィルター24dB/octだけの事象ではありません。バスレフのポートチューニングの要領でピーキングするのが妥当な使い方でしょう。
超低音 通常2WAYと拡張2WAYのどちらを選択?
これは、非常に悩ましい問題で、色々と迷っています。拡張2WAYの場合、40Hz以下の充実感は相当なものが有りますが、副作用として、100Hzあたりで、少しディップがあります。現在は、拡張2WAYで、50Hzで、運用。100Hzの弱いディップは、建材の影響なので、木質の壁を追加するなどの対策が必要ですが、これは見送りです。楽器演奏もしている部屋で、今の所演奏上の問題は有りません。
拡張2WAYでは、超低域が出過ぎており、サブウーハーchレベルは-7dB、定在波対策として、DCX2496 Low ch に PEQ 50Hz
-3dB Q=7.1を設定。
最新の1octバンドレベル ステレオ再生 左右等距離 SLFch-4dBで測定 出過ぎなので、-7dBに下げて使用 2024/02/11
SPL Crossover
SPL社のクロスオーバーで、よく似た仕様の製品が有ります。型番もずばりCrossoverで、特別注文、価格は税込み\392,800です。24dB/octのリンクウィッツライリーフィルターで、周波数が、50Hz、60Hz、70Hzまでは同じで、85Hz、100Hz、120Hzと続きます。大きな特徴は、連続可変のフェーズシフターです。この製品は、全く意識外で、サブウーハーを鳴らす為に、あれこれやっった結果が、一致したという事です。拡張型2WAY、通常の2WAYのどちらにも対応し、モノラル−ステレオ出力切換もできます。
チャンネルデバイダーの、フィルターのタイプと極性に関するデータベースはこちらにまとめました
スーパーツイーター
20kHzがおおよその可聴上限とされていますが、その上の超音波まで再生できるスピーカーをスーパーツイーターと呼びます。主な物をコイズミ無線のホームページで見ますと、帯域では、TAKETが18Hz〜150kHzとあり、人間が聞こえない帯域を広範囲にカバーします。ドライブタイプは、ハイルドライバーですが、先端にホーンを付けて能率アップを図っています。スーパーは付きませんが、ドームツイーターは、30kHzまで90dB/Wが平均的な性能でFOSTEXでは、50kHzまでの物も有ります。ホーン型よりも低い周波数が再生でき、能率もコーン型と同じぐらいです。ホーン型は、再生帯域が5kHz以上が多く、ダイヤフラムの重さで、立ち上がりに差が有ります。ホーンにより、指向性が強くなりますが、不用な乱反射が少なく、澄んだ高音が魅力で、主に一人で聴くオーディオにも適しています。反面、能率が高くなり、アッテネータでのレベル調整が必要で、この直流抵抗分による音質劣化が有ります。これを避けるには、マルチアンプ化が有効ですが、クロス周波数が高いので、ミッドレンジとの正確なタイムアライメントが要求されます。ネットワーク使用でも、タイムアライメントを正確に合わせることが可能です。
ハイレゾのの為に、20kHz以上の再生を狙ったのかと思われそうですが、10kHz以上のフラット感を重視した為の選択であり、副産物として、35kHzまでの再生が可能となり、CD-4レコードのキャリアが空間に出ているという結果を得ました。当然、30kHzののキャリアは、何も感じられませんし、可聴帯域にビート等の影響も有りません。
クロスオーバー周波数
タイムアライメント調整をする時、音の波長が短いと苦労をします。波長は、5kHz 6.8cm 10kHz 3.4cm 15kHz 2.3cm
ですが、180°(波長の半分)で位相反転して打ち消しが起き、mm単位の調整となります。ツイーターと、クロスしないで、コンデンサで上乗せする場合でも、逆相にならないよう注意します。波長が短く、干渉が起きやすい周波数ですので、最低でも12dB/octぐらいで切っておいた方が、すっきりとした音が期待できます。デジタルチャンネルデバイダーDF-65の場合、0.5cm単位の設定ですので、10kHzだと、7コマの調整単位となります。0.5cm以内は、設置位置で補助します。
T90A 現在使用中
高い周波数の再生は、上限を極める為にも魅力的で、スペースを取りません。決して良い物という意味は有りませんが、メインスピーカーの、アルニコのデフラクションホーンツイーターを上回るコスパの良い物として、購入したのがT90Aです。2本購入し、そのテスト中アンプが生きている時にRCAプラグをうっかり差し込み、断線。その修理中、予備として2本購入し、合計4本となりました。良く鳴るが、線が細い?と思い、有名な075をと・・・金額的に無理なので、ホーンが似ているCP22を購入し、比較もして、CP22が予備、T90Aは、メインの4WAY、サブのTANNOY12インチ+JBLホーンで使用中です。T90Aは、手持ち3種の、ホーンツイーターで、一番ワイド、平坦であり、推奨7kHz以上(12dB/oct)ですが、24dB/octでは、5kHzからでも楽に動き、30kHzのCD4レコードのキャリアも完璧に再生できます。日本製ホーンスピーカーらしく、平坦で、ワイドレンジで、ホーンツイーターとしては、非常に完成度が高い物です。派生型で、高級素材の物も有ります。
CP22 T90A 百均のズレ止め発泡ゴムシート上のツイーター 2015/07/20
20kHzトーンバースト20波の波形で、CP22は、立ち上がりは遅いのですが、減衰はスパっと落ちます。ややピーキーなビンテージ品の代用に。T90Aは、立ち上がりは良いのですが、終了時に、ピークが見られ、10kHzのディップも少々気になりますが、実験装置ではないので、物理特性は、ほどほどで我慢。CP22は、1.5インチコンプレッションドライバーによる円錐ホーンツイーターで、T90Aとは違った趣の音です。発泡ゴムシートは、防振というより、木台が、ポリエステル塗装上を滑り、いつの間にかタイムアライメントが狂う事を防止するのが、目的です。
ネットワーク内蔵マルチWAYスピーカー
1台のアンプで、LCネットワークで帯域分割し、それぞれのスピーカーを鳴らすのが、マルチWAYスピーカーで、下は自家用機のネットワーク回路図となりますが、12dB/octの典型的なフィルターで、レベル調整も可能です。このフィルターで、直流抵抗は、コイルと、レベル調整用固定抵抗と、可変ATTに存在します。マルチアンプで鳴らすより、解像度では劣り、普通に聴いているやや鈍い低音ですが、アンプとケーブルだけで鳴らせる簡便さにより、マルチWAYで鳴らす場合が多いと思います。
クロス周波数は、公称800Hz、8kHz 38cm3WAYのネットワーク回路例
アンプ−SP間の直流抵抗による音の変化
2011/01/12
写真は、1波正弦波をアンプから送出しておいて、フルレンジスピーカーに抵抗を入れ、スピーカー端子に現れる波形です。普通のスピーカーでは、0.5Ω〜2.2Ωあたりの波形で駆動されます。抵抗無しが37mΩというのは、測定時に使用したワニ口付きコードの抵抗で、ゼロにはなってくれません。抵抗値が増すと、元の波形の後ろに妙な物が続きますが、この部分はアンプから送っていない電力で、磁石とコイルの持つスピーカーによる電力です。磁石とコイルが無ければ、このような電力は発生せず、問題にはなりません。こうした観点から、磁気ではなく、静電気の力を利用したスピーカーは、静電型あるいは、コンデンサー型と呼ばれ、現在でも、イヤースピーカーとしてSTAXから発売されていますが、動電型とは違うひと味違う音です。
スピーカー用LCネットワーク 普及品のように、低耐圧BPコンデンサは使用していません AC回路での耐圧は、回路電圧の2.82倍必要 フィルムコンは250V耐圧
JBL 2017/01/23 TANNOY 2014/12/17 自家用 2013/10/24
コイルは、EIコア、空芯、フェライトと様々ですが、コンデンサは、フィルムコンデンサです。左2個は、2WAYで、右は3WAYです。普通のマルチWAYスピーカーは、このようなパッシブ素子によるフィルターを介して、個々のスピーカーを鳴らします。皆様がお使いのハイエンドクラスのスピーカーを、改造してネットワーク無しで鳴らそうとする事は無いので、直結したウーハーの音は、誰にも判らないと思います。ウーハーは、低音用と思い込みますが、音楽的にはメインスピーカーという、大切な役割です。このコイルを外せば、当然高音も聞こえるようになり、音は変わるのは、素人でも判りますが、そうではなく、チャンネルデバイダーを通して、同じ帯域を鳴らした時の音の違いで、100Hz以下の音が大きく変わります。ネットワークを使った場合は、力強くドーンといつもの低音ですが、チャンネルデバイダー経由では、拍子抜けのような乾いた低音ですが、スピーカーの音しか聴いていなければ、乾いた低音は、支持が少なく、重く響く方に人気が出ます。縁が有って、各種の太鼓を鳴らして見る機会が有り、実物では、そんな迫力有る低音は出てきません。バックロードホーンのような低音に慣れた耳では、実物以上の、スピーカーでしか聴けないような低音を求めるのが、そこは趣味の世界ならでは出来事でしょう。さらに、著名なハイエンドスピーカーも低音過剰傾向が見られ、紹介動画などを参考に聞き比べて下さい。
LCネットワークの主役 コイル
磁界には方向があり、電流が流れる電線には、右ネジの法則により、右回りの磁界が発生します。その磁界は、電流の往路と復路で逆なので、対になったケーブルでは相殺されます。電線のインダクタンスは、1本の時や、往復で不揃いの場合では、インダクタンスが大きくなり、高音が減衰しますが、正しく対にした場合、磁界キャンセルで、インダクタンスが低下し、高音減衰が少なくなります。ネットワークコイルの極性については、合わせるというより、コイル同士の離隔を取るか、直交させて、相互インダクタンスを小さくする必要があります。直交できるのは、XYZの3軸までで、それ以上の数では、必ずコイル同士の干渉に見舞われる事になります。空芯コイルは、直流抵抗の大きさと、磁束漏れを考慮すれば、あまり良い物ではありません。理想に近いコイルは、デンマーク
JantzenAudio のトロイダルコア 3.3mHの製品定格 直流抵抗0.07Ω 耐電力1500W 価格¥7,906 コイズミ無線WEBサイトより。価格も無難ですが、納期1〜2ヶ月は、航空貨物なら実現しそうだが、船便だと、スエズが通れないので、もっと時間が必要かとも思います。このくらいのコイルであれば、マルチアンプ駆動の音と同等になります。
45°ずれたコイルの位置に注目 ダイヤトーン 2013/10/24 コイル直交 KEF 2014/02/26
もうひとつの視点 以下、知人からのメール原文のまま紹介
『SPのボイスコイルの駆動力は電磁力 F=B×I×lで生まれるので、電流依存であり定電流で駆動すべきように思いがちですが、実際は世の中のSPは定電流駆動ではなく、定電圧駆動で所定の特性が出るよう設計されています。
で、そのボイスコイルに流れる電流波形は、振動系の慣性起因の逆起電流やら、ボイスコイルインダクタンスの影響やらでボイスコイルに印加する電圧波形と同一ではない、即ち電圧波形≠電流波形になってしまうのです。
一方、ボイスコイルの駆動回路に抵抗分があると、電流波形×抵抗値で発生してしまう電圧降下によりボイスコイルに印加される電圧波形は、元の電圧波形から、電流波形×抵抗値を引いたものになり、しかも電圧波形≠電流波形なので、元の波形と異なった電圧波形がSPに印加されてしまう、というわけです。』
ハイエンド電源ケーブル
注目の電気抵抗jは10mΩ以下と大変に優秀で、コンセント側もそれなりに要求されます 2022/05/01
高級オーディオ用電源ケーブルです。自分で購入する事は金額的に無理で、実態が良く判りませんでしたが、太さは、5.5SQ相当と考えら結構な重さです。柔軟性は無いので、機械的なストレスが、機器側に及ばないかを考慮する必要があります。普通の3Pインレットへの嵌り具合は、硬くてしっかり感があります。電気抵抗は、10mΩ以下でした。普通の3Pケーブルは、70mΩ〜400mΩまでぐらいでしたので、電気抵抗的には相当に優れた物です。しかし、アンプの電源は、一次側の影響が少なくなるように設計されていますので、抵抗値より、安全第一である事が大切です。自作アンプで使用した、秋月購入の0.75SQ3P-2P電源コード\300は、片側が、70mΩでもう一方が200mΩで、不揃いでした。自作アンプのインレットは、3Pのフィルター付きを使用していますが、その通過抵抗は、両極とも37mΩです。海外製品の電源ヒューズには、5Ωぐらいの抵抗入りも有ります。
電源に影響されやすいパワーアンプには、こうした高級パーツの出番があるかもしれません。A級アンプは、一度立ち上がれば、電流が一定ですでの、こうしたケーブルのお世話にならずとも、安定動作が可能です。B級や、D級のように、出力で、電流が変化するパワーアンプをお使いで、こうした方向で、攻めたいマニアは、気になるアイテムです。
1本6万円の電源ケーブルや、XLRケーブルが、業界大手から販売されるようになり、オーディオ業界が、これほどの苦境なのかとも思っています。
フィルターの性質
スピーカーをマルチWAYとして駆動する場合、無くてはならないのが帯域を分割するフィルターです。用途により、ハイパスフィルター、ローパスフィルター、バンドパスフィルターという名称で呼ばれます。ある工房のメールマガジンで、フィルター通過後の成分を合成した音と、以前の音では、明らかに差があるという情報に接しました。今まで気にも留めなかった事で、早速、実験を行いました。元音と、3WAYフィルター通過後の合成音が違うのは、どうやら確かなようです。デジタルフィルターであるとか、安物であるとかの非科学的論理で決めつけるのは、一般受けするには違いないのですが、我がポリシーに反するので、PCソフトにて、1kHz 1波のトーンバースト波を、バタワースフィルターを通し、各帯域を合成し、その波形を比べてみました。バタワース特性のみとしたのは、ソフトの都合上の事で他意はありません。その結果、2WAYで、6dB/octの場合のみ、原音と、フィルター通過後の合成が一致するのみで、他は、一致しませんでした。
1kHz 1波を、3WAYのフィルターを通して、その合成結果ですが、3WAYのMidレンジの極性は、よく間違えられるますが、バタワースフィルターの場合、奇数次が同相で、偶数次が、隣とは逆相です。PCでの理論的合成なので、違いがはっきりしますが、リスニングルームでは、反射音が有り、それらが混ざり合う事で、実音では、判りにくくなります。12dB/octの場合、Midレンジの極性は、逆相が正解です。
3WAY 805Hz,4980Hzとした場合の、PCによる合成結果
バタワース6dB/octが、綺麗な合成結果で、コンデンサ1個による、2WAYの好結果が見えてきます。こうしたシステムを組むには、スロープ緩さを考慮し、帯域の広いツイーターで、ウーハーと音色が似ている物が必要であり、コーンスピーカー同士の2WAYも良いかも知れません。
チャンネルデバイダーの実際の出力をミキサーで合成した波形画像を特集しました。
2インチドライバー導入試験
2インチドライバー2445+2380でシステムアップ 2020/04/06 2012/08/11
結果は、音圧ピークが1〜2kHz間に有り、この周波数から見て、高域側が早く落ちるので、クロスが5kHz以上にできなくて、試作だけで終了。1インチドライバーの方が、フラットで、使用できる周波数広く取れる事が判明しました。歪みは、2インチドライバーの方が低いので、魅力は有りましたが、1インチドライバーの方が応答が良く、癖の少ない音である事が決定打となり、元通り、3WAYBOX内のアルテック互換CDホーンを使うことに。
専門店動画 ハイエンドSPの磁気回路説明
You Tubeでは、様々な動画がが有り、専門店のハイエンドSPの紹介を見ました。最近は、億越えのスピーカーも発売されたりで、1千万越えに驚かなくなりました。さて説明の中で、欧州製品のA社、B社ともに、磁石に特殊な鉄粉を用いて、電気抵抗を高くして、渦電流が流れない仕組みとなっているというものが有り、ふとフェライト磁石でも同じではないかと思いました。JBLがポールピースに、ショートリングを付けた事は承知しており、渦電流が、磁束の乱れを起こすという説明も一理ありと納得していいました。逆起電力の説明で、磁気回路から発生する説明が有りますが、これは間違いです。コイルの電流を遮断した時、コイルの両端に電源電圧以上の電圧が発生しますが、これが逆起電力で、インダクタンスに由来し、磁石の中では有りません。導体に磁力線を作用させた時に流れるのが渦電流で、円盤のある電力計がその応用です。
しかし、一千万円越えのスピーカーなのに、LCネットワークが有るのが、不思議に思いました。LCネットワークによる音質劣化後の音は、アンプ直結の音とは、だいぶ違うと思います。又、磁性流体を使用せず、昔ながらのエアーギャップというのは、初動感度や、耐久性を考えた場合、至極当然の選択です。SRのように、大音量、高品質を求めるなら、放熱の為にも磁性流体ですが、音質が重視のハイエンド製品は、耐入力より、音質優先でしょう。磁性流体は、長年の使用で変質し、ボイスコイルの動きが制限される事を数例見ています。
T社同軸12インチSPの、ホーンSP磁気ギャップに、スポイドで、磁性流体(黒い液体)を充填しているシーンです 2014/12/20
T社の修理KITには、磁性流体も付属しています。写真の物は、横浜ベイサイドネットさんより購入し、まだ残っていますが、磁石を近づけて遊ぶ程度で、出番は無くなっています。
短命な、最近のオーディオ機器
1970年代〜2000年までの、オーディオ機器は、壊れにくく、例え不具合が有っても、汎用部品で修理ができ、修理後の安定度も高い物が多くありました。しかし、C国生産が主流となった昨今のオーディオ製品は、品質面で、不安が多く、時には、修理が出来ないような作りで、昔ながらの品質を保った製品は、高価になりました。
2014年製 2022/02/28
PWMアンプ 10kHz 入力−出力リサージュ 2013/12/21
写真は、有名ブランドの、CD+FM+USB+ネットワークにアンプが付いた、多機能な製品ですが、チップ部品で、高集積化され、コンパクトです。しかし、メーカーでは、既に、修理を打ち切っています。8年前の製品なので、法的には問題は有りません。上の製品は、スピーカーを付けた状態で、CDを再生すると、発振するという故障で、CD以外では、普通に動作し、スピーカーの代わりに、8Ωのダミー抵抗や、ヘッドホンならば、CDも動作します。何とか修理できないかと内部を確認しようと試み、その結果は、取り外すネジの種類も、数も多く、やっとの事で、基板が見える所まで辿り着きましたが、動作させながら、故障原因を探るのが、非常に難しいので、修理マニュアルが無いと、無理との判断をしました。
現在の普及価格帯アンプの定番となっている、デジタルアンプ(正式名PWMアンプ)は、アナログアンプの出力とは全く別物で、耳には聞こえない数100kHzの搬送波が残り、位相ズレも有ります。写真は、10kHz正弦波 入力−出力リサージュですが、アナログアンプでは、綺麗な細い楕円になりますが、デジタルアンプでは、歪んだ楕円で、線が太いのは、搬送波漏れです。又、10kHzで、これほどの位相遅れは、如何な物かと思います。
別の有名ブランドの同じ仕様のアンプも、上の物と比べれば、まだ修理がしやすく思えましたが、当然ながら技術資料が無くて、修理できませんでした。AC100Vダイレクト整流で、これを元に、±35V、±15V、起動用5.6V等の電源を作り出しており、電源基板の面積がかなりの部分を占めています。額面どおりに動けば、電源効率が良くて、コンパクトで、安価、しかも憧れのブランドと良いことずくめですが、故障が多ければ、逆にブランドイメージが傷付きます。壊れやすく直しにくいのが、最近の傾向なんでしょう。
ハイレゾ
JEITAによるハイレゾオーディオの定義は、CDスペックと同等か、超える事であり、96kHz24ビット音源は、ハイレゾに分類されます。オーディオ協会は、これに付帯して、アナログ機器は、40kHz以上が可能である事としています。ハイレゾと言えば、超音波に注目しますが、聞こえないない音を再生する事に何の意味もありません。名器とされる録音用マイクは、20kHz止まりで、オーディオ協会の定義に当てはまりません。それでも、普通のコンデンサマイクであれば、30kHzくらいは、収音が可能で、人が対象なら、十分な高周波性能を持っています。最近、大手安売り店で購入した廉価イヤホンは、5〜80000Hzでハイレゾマーク付きです。スピーカーについても、スーパーツイーターや、リボンツイーターで、そのような超音波を再生しようとします。ハイレゾ性能と音の良さは、無関係と割り切りましょう。低雑音は、ハイレゾ性能の重要な要素です。
スーパーツイーター 2015/07/20 シンバルにスティックが当たった瞬間 2009/04/15
シンバルにスティックが当たった瞬間の音は、オーディオマニアなら、ツイーターに一番期待する音でしょう。残念ながら主な音は、800Hz付近で、ウーハーとスコーカーが、その音を担っています。ツイーターは、脇役です。クラシック音楽も、最近は、You
Tubeで、海外の優秀な演奏が視聴できますが、RTA(リアルタイムアナライザ)にて、10kHzでは、-40dBで、音の大半は、1kHzまでに集中しており、音楽の主役は、ウーハーという事になります。装飾は、スコーカーで行い、主な倍音はこの辺りです。ツイーターは、たまに鳴るぐらいで、レベルも僅かです。例えば、ウーハーが1Wで鳴ったとしたら、-40dBは、0.1mWです。たかだか0.1mWを出す為に、マルチアンプシステムで、100Wものアンプを用意するという事は、実に滑稽です。0.1mWは、電圧が28.3mVで、高級アンプを指向するなら、このような微少出力が非常に大切で、これに対応するには、増幅しない
0dBのバッファアンプでも、CDプレーヤーでは、既に過大出力となってしまいます。すなわち、20dB台の増幅度を持ったパワーアンプでまともにスピーカーを動かすには、高品質を保って、音量ダウンするかが重要になります。皮肉にも、増幅より、減衰が大切なのです。
真空管礼賛物語には、評価が聴感のみであったり、暖かい音という表現に疑問。DFが低いので、典型的なドンシャリになる事、歪み、雑音が多く、マイクロフォニックノイズを含め、特異な音は出るが、音源の良さを活かしきれない点と、出力管には寿命が有ります。出力管により、音質が違っても、音が違った物同士なので、そこは、五十歩百歩で、深追いは禁物です。真空管アンプは、楽器の音が華美で、重低音感が有り、金物がいつもキンキン、カンカンと鳴るかどうかで聞き分けると良く判ります。
半導体アンプは、性能が拮抗しており、どれも似たような音ですが、それは、安定的で好ましい事だと考えます。安定した音なら、あとは、スピーカー側で工夫次第です。工夫の極致が、Qの高いホーンスピーカーを鳴らし切るマルチアンプシステムと考えます。PWMアンプは、電気性能よりも、音質を強調していますが、歪み、位相ズレ、搬送波漏れに言及していません。音数の多い音源は、賑やかに良く鳴るが、静まり方では、良質なアナログアンプより劣るという印象です。フルデジタルアンプも、構想は完璧でも、必ず音量調整が伴い、そこでの音質劣化は免れません。フルデジタルは、DACまでの役割と考え、以降は、アナログ処理で、必要十分な音量で音楽を楽しむ事が適切と考えます。
真空管アンプの矩形波応答 8Ω抵抗負荷
1kHz 矩形波 8Ω抵抗負荷 10kHz 矩形波 8Ω抵抗負荷 2020/07/23
よくある安定度試験で、負荷にコンデンサを並列に抱かせる事を行いますが、コンデンサ無し純抵抗のみで、このような波形です。
1ビットデジタルアンプを検索しててなぜか somann S-75mk2が有り、リンクへ行き
https://procable.jp/setting/14.html において ■パワーアンプから消えたボリューム・その異常性を大公開!!
パワーアンプのボリュームに関しての大ウンチクが延々と述べられ、少しは理解してみようと読みました。ボリュームに関して、こだわりのある論調で、プリアンプで上げておいて、パワーアンプのボリュームは絞って使うと良い的な論調で、ニーブや、スチューダーの卓にも触れており、プロ色満載でした。ここで不思議に思ったのは、ボリュームの無いパワーアンプを良くないと決め付け、果ては、メーカーの技術者が、主張が通らないから仕事を辞めたとかです。そんなに大騒ぎする物なのか、性能を調べる為、検索すると、THD+Nの表に行き当たりました。0.01W時、0.01%以下というにはほど遠く、更に、ジーというノイズは、良い音の出ているアンプなら音楽を聴くのに気にならないとまでありました。パワーアンプのボリュームは、無くせるものなら、無くしたいのが技術者の良心だと思います。大出力アンプの為に、高い電圧利得となり、普通なら1Wもあれば済む常用出力に下げる為に、ボリュームが必要なだけです。100W定格なら、常に-20dB必要です。ボリュームは、DACで、0dBが決まり、その時システムの最大音量が得られれば良いので、1箇所あれば事足ります。0dB=最大音が基準で、後は、運用レベルにより、音量制御すれば良く、DAC出力後の音量調整に適していたのが、電子ボリュームでした。理由は、常用音量域が、-40dB〜-20dB範囲が多く、OPアンプが介在する事で、どの音量でも低いインピーダンス出力となり、余計なクロストークや、周波数特性の乱れが無く、-40dB以下でも音が呆けないという結果からです。
デジタルは魔法ではありません
デジタルの特長は、情報が変化しない事で、CDや、PCMでは、コピーを繰り返しても、音が変化しません。これは、ワードをビットに変換するからで、これにより、PCで高速かつ正確な処理が可能になります。これに類似するのが、スイッチングで、パワーロスを少なくできる事が利点です。パワーロスが少ないので、大出力アンプも可能になります。バッテリードライブでも、電池寿命の点で利点が大きいです。スイッチングで作られた量に対するパルス列を、アナログ増幅しないで、大電力をスイッチングして電力を得ますので、デジタルとはほど遠いものです。スイッチングアンプの、音質が良いとする広告宣伝は、多くありますが、音質が良ければ、客観的な評価である、SNや歪みもそれに比例して良くなる筈です。しかし、平均的な実力は、60dB 0.1%です。オーディオ測定の新しいフィルター規格は、AES17で、帯域外を急峻なフィルターで切った数値です。音質の話は、絶対的な評価基準が無く、言いたい放題なので、鵜呑みにしない方が良いでしょう。
デジタルチャンネルデバイダー+マルチアンプシステムを音量制御する為の自作赤外線リモコン対応6連電動ボリューム 2009年製作
今は使用していない100kΩ6連ボリューム 2009/12/15
マルチアンプシステムで困るのは、ボリュームで、アナログチャンネルデバイダーでは、プリアンプで音量をコントロールして、パワーアンプは、個々に入力ボリュームを調整する事になります。アナログチャンネルデバイダーで、遅延回路が付いた物は、CX340が有りますが、Lowにだけ設定できるのみで、いささか不自由です。満足できる遅延を行うに、デジタルチャンネルデバイダーが必要不可欠となりますが、プリアンプのボリュームを絞った音では、ビット落ちで、ギザギザの波形となり、常用音量での品質が低下します。フルビットで動作させる事で、アナログ機と遜色無しで使用できますが、その場合、後段のパワーアンプに対し、とんでも無く過大な信号となり、ここで、かなりボリュームを絞る事になります。
電子VR PGA2311 デジタル音楽の起点DACの能力を100%活かす
マルチアンプシステムを始めた時、607XRで統一し、音量調整時に、各ボリュームを操作する訳にもいかないので、アルプスの6連VRを入手し、マスターVRとして使用開始しました。その後、システムの精度が向上すると、ギャングエラーや、周波数特性劣化などのロータリーVRの欠点を見直す為に、電子VRに辿り着きました。JRCかテキサスかで迷い、手動か、リモコン対応かでも迷い、結果として、PGA2311で、赤外線リモコン対応、dB直読とし、チップ3個を同時制御して、6連化し、満足できる結果を得られました。この時期にお世話になったMさんは、すでに別分野をやっておられ、同じ物を製作できなくなりました。6連VRは、現在でも3台稼働中で、他にも測定器中のATTとして動作中です。PGA2311を使用したのは、単純に、電源電圧がDACチップと同じ±5Vで、シリーズ中で最も雑音出力が小さかったという理由です。当初はDCX2496の+22dB出力が、パワーアンプには、過大入力である為、13dBのATTを組み込みました。その後、DACチップの電源が±5Vであり、その後段のドライブアンプで所定の出力としている事を知り、DCXのドライブ回路前の不平衡段で、出力を取り出す事となりました。DACチップが主な接続先なので、±5VのPGA2311が電子ボリュームとして、無駄な利得の上げ下げが少なく、相性が良いという結論です。
従来の2連ボリュームの特性例で、修理を依頼され、微調整した際のデータ、初期値(青)と、調整後(マゼンタ)で、横軸を回転角とし、角度毎の左右偏差を縦軸にとりました。
海外製品で、20万円以上の価格のプリメインアンプ ボリュームのギャングエラー 2021/10/18
PGA2311 6連電子ボリューム システムで2台使用 2011/09/05
2023/1/24
現在のシステム構成で、アナログ音源は、AU-α607NRAのセレクターで選択します。SRC2496で、デジタル録音出力も取り出しますので、アナログ入力レベルを録音頻度が高いFMに合わせ、それ以外の音量調整を、6連電子ボリュームにて0.5dBステップで可変します。AU-α607NRAは、LINEレベルの信号は増幅していないで、通電していなくてもセレクターが使用できます。このシステムでは、デジタルチャンネルデバイダーを、0dBで運用する事で、DACの能力を目一杯利用し、アンプの手前で、ボリュームで減衰させ、パワーアンプに入力しています。電子ボリュームは、アンプへの出力インピーダンスを低くでき、ノイズの飛び込みを防ぎます。SRC2496は、OPT入力が故障しており、RTA用のDEQ2496にて、OPTからXLRに変換しています。
フラットケーブル中央より信号を取り出して、左側ユニバーサル基板のPOST-LPF回路へ 2016/02/15
POST-LPFをフィルムコンデンサとした基板を組込、その不平衡出力をそのまま出力のXLRコネクタに接続し、DAC AK4393が、理想動作するようにしました。これにより、0dBFS時の出力を+8.1dBsと低くして、無用なレベルアップを防止し、後段の電子ボリュームで、-10dB時に、5.4W出力が得られます。ボリューム0dB時は、54W相当です。改造は、後面のIO基板と、DAC基板を繋いでいるフラットケーブルに、DACの出力6ch分が有りますので、ここから、信号を取り出しています。セラミックコンデンサを、フィルムコンデンサに付け替えるのが、一番スマートなのですが、いざ交換していみると、電極が溶けてうまく行きませんでした。やむを得ず、タカスのユニバーサル基板で、回路を組み込みました。抵抗やコンデンサは、CMRRが上がるように、選別しています。
バランス伝送=ハイエンドか?
マイクの場合
バランス伝送は、主に、長いマイクケーブルを使用する時に用います。マイクは、非常に微弱な信号で、定番のSM-58の感度は、-54.5dBV/Pa(1.85mV)です。ステージでは、AC100V照明電源のレベル差94.5dBものノイズ源が有る所での使用となります。ローインピーダンスマイクといえども、数10mもケーブルを延ばせば、ハム雑音から逃れる事ができません。この時のハム雑音は、マイクケーブルに、等しく加わるコモンモードノイズなので、バランス伝送で、打ち消しが可能になります。家庭用オーディオでは、接続距離が短いので、不平衡伝送が主流です。平衡伝送は、伝送路のコモンモードノイズに圧倒的に有利ですが、アンプの+−の入力端で発生する雑音は、同期の取れないランダムノイズなので、コモンモードノイズのような訳にはならず、SNが悪化します。結論として、伝送路が長い場合は、ややSNの劣る平衡入力アンプでも、総合的なSNが良くなるが、インピーダンスが低く、距離が短い場合は、不平衡の方がSNが良くなります。
レコードプレーヤーの場合
MMカートリッジは、47kΩのハイインピーダンス接続ですが、プレーヤーのアース線を接続すれば、アンプからハムが出て困る事はありません。MCカートリッジは、数Ω〜数100Ωというローインピーダンスで、元来ノイズに有利。しかし低出力なので、アンプ感度が高くなり、それを原因として、MMよりSNが悪くなります。ホール音響プレーヤー卓は、EQアンプが組み込まれて、平衡で入力パッチ盤に送られています。最近、カートリッジ出力が、バランス伝送可能という事で、PHONOアンプも平衡入力として、これで、ノイズが少なくなり、音質が良くなるという説が有るようです。下は、自家用MCカートリッジですが、出力は、左右独立して、赤、白、青、緑の線で、特にシールド線にはなっていません。レベルが低く、本来なら、シールド線が必要な箇所ですが、こんな配線でも、ノイズで、困ることは有りません。神経質な方は、真空管ヒーター配線のように捻って使用する場合も有ります。原理上、平衡受けが可能で、伝送路の劣化防止できますが、どのくらい改善できるか、データで示されていないのが気になります。製品としては、YAMAHA GT-5000が平衡出力に対応している事を確認しています。中古Technicisプレーヤの場合、改造して、容易に、平衡出力に対応できそうで、トーンアームからの配線が、基板で出力コードに接続されており、シールド心線をHOT、網をCOLD、平衡ケーブルのアースは、出力アース線に接続となります。
2017/05/2 2017/05/24
上の写真は、プレーヤー出力部 トーンアーム内配線 平衡化は、簡単にできます。
カートリッジ電気特性の例 MM型 4mV 内部抵抗800Ω 負荷抵抗47kΩ MC型 0.4mV 内部抵抗33Ω 負荷抵抗100Ω
MCカートリッジ
2021/02/02 カートリッジの内部抵抗と同じ値の抵抗を取付て測定 2021/02/22
レコードプレーヤーの信号漏れ量の実測
トーンアーム内は、シールド線ではなく、フラットケーブルが使用されており、ここを不平衡伝送する場合と、平衡伝送する場合と差が出る可能性が考えられます。平衡伝送では、コモンモードノイズに強いのでノイズは無視できると考え、不平衡伝送で、どのくらいのノイズが有るのか、実際に測定してみました。MCを想定して、ヘッドシェルに33Ω、出力測定側100Ωで、Lchに信号を通し、Rch側への漏れを測定し、それをdBで表すと、1kHzで-105.7dB 10kHzで-88.5dB ホワイトノイズで-81.3dBとなりました。MMを想定した場合、ヘッドシェルに800Ω、出力測定側47kΩとして、1kHz -84.8dB 10kHz -71.8dB ホワイトノイズ
-62.8dBという結果です。測定に使用したプレーヤーは、名器SL-1200MK2で、参考までに、ヘッドシェルリード線から、RCA先端まで、0.991Ω、シールド側、0.425Ω、容量103pFです。アナログレコードの実際のSNは良くて50dB程度。これらの関係をどう考えるかの参考にしてください。信号送り出しアンプは、OPA1622で、歪率THD+N(80kHz)0.001%で、使用電圧は1Vとして、漏れを検出。ヘッドシェル付属リード線抵抗0.004Ωも測定しておきました。
測定結果について
信号は、代表値として、1kHzと、周波数が高いと漏れが多くなるという予想で、10kHzと、ホワイトノイズとしました。EQアンプのRIAA特性は、10kHzでは-13.7dB感度が低く、ノイズ耐性は強まります。MC、10kHzの測定結果をRIAA補正すると、102.2dBで、16ビットCDの理論値96dBを上回っています。ホワイトノイズでは、81.3dBなので、悪くなるような感じがしますが、EQアンプのSN比と同じくらいです。この結果で見れば、あえて、平衡化する必要は無いと考えます。MMカートリッジでは、インピーダンスが高いので、影響が大きいようで、平衡にすれば、それなりのメリットが有るかも知れませんが、何が何でもとは思えません。以上により、私的には、平衡化せず、MC型を使い続ける事にしますが、自作したLT推奨EQアンプのLT1010出力直列抵抗を220Ωに下げて、不平衡時のノイズ耐性を少し上げる改良を行いました。
DACは本来バランス出力
DACチップでは、バランス出力なので、これを使用する、CDプレーヤー、USB DAC等は、バランス出力を得るのに、苦労はしませんが、一部のハイエンド機を除いて、POST-LPF回路で不平衡に変換して、出力しています。DCX2496では、POST-LPF回路出力を、さらに増幅して、平衡出力を得ています。オーディオ的には、増幅段数を多くする事は、音質劣化しやすいので、POST-LPF回路を、そのままパワーアンプに入れる方が良いと思います。ライントランスを入れる手法は、グランドループを切りたい時には、有効ですが、使用最大電圧が制限される事に注意します。しかし、ループノイズが無い場合は、わざわざ音質劣化させるような必要はありません。有名なオールドNEVEの、トランス出力は、30kHz付近に気になる利得上昇ポイントがありますが、これを重宝するか、憂いの無い、別の手段にするかと問われれば、後者にしたいと思います。
音響ホール パワーアンプまで
音響ホールでは、調整室と、アンプ室が離れており、時には、階が異なる場合も有り、グランドループで、雑音が発生しますので、こういった場合は、平衡伝送を行います。古いホールでは、調整卓と、電力増幅架は、同室なので、不平衡でも問題は無く、調整卓も、不平衡出しの物もありました。最近のプロ用パワーアンプは、熱容量が小さく、空冷ファンが付き物で、ファンノイズの面からも、別室という設計になっています。
SSM2142 平衡ラインドライバーIC
600Ω負荷に10V負荷容量0.16μFまで安定的に駆動できます。マイクケーブルが数100m有っても、OKです。平衡出力アンプで大切なのは、平衡度で、高い抵抗精度が求められますが、製造時にレーザートリミングをすることで、所定の性能を得ています。電子回路の実験をしていると、時々平衡信号が欲しい場合が有り、製作してみました。入力は、できるだけ低いインピーダンスで駆動する事が要求されていますので、LME49720のボルテージフォロアで駆動。アナライザーが不平衡なので、測定信号をLME49720+SM2142に入れて平衡出力し、2mのマイクケーブルで、LME49720のシングルエンドコンバーターに入れ、その不平衡出力を測定しました。残留雑音7.1μV(A) SN(1V) 100.4dB(A) SN(MAX)119.4dB(A)という測定結果です。SM2142の利得が6dBなので、残留雑音が多くなりました。パワーアンプ入力での使用は、1V前後のレベルなので、SNは100dB台となり、16ビット音源再生には、不足有りません。やはり、何でもバランスが良いと単純に考えないで、適材適所で、利用したいものです。家庭用オーディオで、平衡回路が要求される事は稀であるとお伝えしておきます。テスト回路は、±15Vで製作していますが、電源電圧を±18Vにすれば、出力10Vまで使用できます。下の測定は、平衡ラインドライバーを、LME49720で受信して、不平衡で測定しています。
平衡ドライバー THD+N特性THD特性 2021/01/25
ライントランス
ライントランスは、巻線比1対1で、10kΩ:10kΩ 600Ω:600Ωなどの表示がされています。マッチングトランスという呼称もあり、インピーダンスを厳密に合わせねばという固定概念に囚われそうですが、送り出し側から見たインピーダンスは、トランスの表示インピーダンスではなく、受信端の入力インピーダンスとなりますので、600Ωで受ければ、600Ωで、ライン入力で多い10kΩなら10kΩと測定されます。周波数特性は、低域、高域が減衰し、高域側でピークを持つ場合が多く、有名なニーブのアンプでは、30kHzに独特なピークがあります。歪みは、多く、信号レベルが高くなると、アンプの飽和と同じように歪みが多くなり、これには十分注意します。音質が良くなるという表現が多く有りますが、これは単なるキャッチコピーで実態を表してはいません。例えば、デジタルの音がアナログの音に変わるという表現がありますが、むしろ逆で、テープヒスのようなノイズが付加されます。バルクハウゼン効果といわれるもので、磁化が、連続しないで、ブロック磁石毎となっている事で、波形観測をしていると、ギザギザ波よくお目にかかります。効用は、音声帯域のみを通すバンドパスフィルターとしての働きと、アースループを遮断できるので、ループノイズ発生時に、パッシブ素子だけで対応できる事です。監視カメラのアナログ映像伝送時に、電源ノイズの干渉縞が発生した場合の対策に良く出動します。しかし、PWMアンプ高出力時のスイッチングノイズのノイズ妨害には、これでも歯が立たず、配線を遠ざけるか、金属配管中に収容するしか無いようです。
ハイレゾは、迫力と静寂の同居こそ最大の利点
ハイレゾは、定着しましたが、超音波が音楽に必要で、空気感再現に不可欠との主張がよく見られます。再生側の周波数特性が結果として、20kHzを越える事には、何も問題はありません。しかし、聞こえません。100kHzまで音が出たとしても、良い音の保証はありません。良い音の解は、PCMならば、96kHz24ビット音源でしょう。これは、上は48kHzまでですが、20kHz以上の再生は目的ではありません。折り返し雑音を捨てるゴミ箱付き音源と称すると良いでしょう。評価すべきは、マイクや、アンプの能力限界を超える、ビット深度で、可聴限界の-120dB以下の微音域を持っている事です。16ビット音源の限界は、-96dBですが、音を小さくしていった時-90dBあたりから、やや音が大きくなったり、基本周波数以外の音が大半を占めるようになります。すなわち、可聴音として、雑音が出てくるのが最大の欠点で、24ビット音源では、-110dBを越えてもそういった現象はありません。すなわち、静まりきらない16ビットCDは、澄んだ音色に制限が有り、PCM96kHz24ビット音源の澄んだ音が、ハイレゾ最大の効用です。DSDに関して、演奏者に負担が大きく、ヘンな緊張感で録音をすべきではないと思います。編集の容易なPCMでも十分な再生音が出ているし、そうなるように、再生装置を整備をするのが先でしょう。空気感ならば、風のような超低域に鍵が有り、100Hz以下を充実させました。
アナログレコード ”HEY BRUBECK,TAKE FIVE” CBS SONY SONP 50003 と CD ”TIME OUT” SME SRCS 9631 ← モノラル空気録音ファイルとリンクしていますので、PCでお聞きください 2020/05/05
古いアナログレコードなので、スクラッチノイズが多くなり、CDで補完しました。同じ曲が数曲有り、比較しやすく、「BLUE RONDO A LA
TURK」の冒頭1分間を96kHz24ビットで、4WAYマルチSPシステムの音を空気録音しました。
録音機材 マイクロホン RODE NT2A 単一指向で使用 フィルター無し、ATT 0dB MIXER YAMAHA 01V96V2 USB
UA-5 部屋のほぼ中央 高さ1260mm CDプレーヤー Pioneer DV-578A MCカートリッジ DENON DL-301U RIAA-EQ
LT1115+LT1010 AD変換 SRC2496
ステレオ録音では、著作権で危うくなりますので、利用価値の無い、モノラル空気録音としました。アナログレコードの、鳴りっぷりの良さを聴いてください。録音は、1曲丸ごと行い、最大音量を合わせ、双方の冒頭1分間だけを切り出しました。この1分間に、この曲のエッセンスが詰まっています。タイムアライメントの試聴レコードとして、今も頻繁に再生しています。CDも有名で、ブルーベックをお持ちでないなら、お奨め品です。
上のレコードとCDの同曲同士による音質比較は、シンバルの音が、アナログレコードでは、クリア、CDでは、滲むといった、16ビット音源の限界も聞き取れますので、是非とも実験をして下さい。You
Tubeには、リマスター24bit96kHzが有ります。全てを試聴してみて、アナログレコードは、やはり何物にも代え難い、優れた音質です。当時の技術者のレベルが非常に高いとも言えます。
デジタルを過信しない
レコードの話が出たところで、お奨めしたい簡単な実験
同じ曲のレコードとCDを100dBを越える大音量で再生してみてください。CDではうるさく感じても、レコードならスクラッチノイズ有りでも、聴けます。生音や、24ビット音源も同様で聴けます。ハイエンドCDプレーヤでも、ローコストネットワークオーディオプレヤーの音に負けてしまいます。CDの問題点は、16ビット処理にあり、スクラッチノイズが皆無で、歪みが少ないのは事実です。16ビット音源、-80dB台の音は、奇数次高調波歪みが、聞き取れます。デジタルの良さは、一度デジタル化すれば、音が劣化しない事で、記録メディアや、PCへの伝送を繰り返しても劣化しません。劣化しなくても、16ビットでのデジタル化では、DACが高性能だとしても、カバーできるものではありません。24ビットであれば、-144dBまで処理でき、120dBという、音に必要なレンジを十分にカバーできます。デジタルアンプでは、音源が言葉のデジタル情報であるのに対し、アナログ量をパルス幅に変換するので、デジタル量自体が別物です。
アップサンプリング 16ビットの音を24ビット化しても、音質向上できず、ファイル容量が増える
例えば、CDの44.1kHz16ビット音源を、96kHz24ビットに変換して音を聴く事を、アップサンプリングと称し、音が良くなる方向に持っていこうとする手法がありますが、確かに、96kHzのPCMに変換はなされますが、出てくる波形は、44.1kHz16ビットのままです。
下図は、44.1kHz16ビット 1kHz正弦波 -94dB を96kHz24ビットにアップサンプリングしたものです。点の数は増えますが、矩形波のような波形はそのままで、想像した滑らかな正弦波にはならず、変換による音質向上は有りません。アップサンプリング後のGEQ,やチャンネルデバイダにおける、音質劣化を少なくする効果は期待できますが、原音以上の良い音にはなりません。
16ビット低レベル時の正弦波
-94dBだと正弦波には見えず、どちらかといえば、矩形波に見え、16ビットCDが大音量で、音が破綻する原因
24ビットであれば、-100dBの正弦波でも綺麗な波形となります。24ビットは静まる音、16ビットは静まらない音とも表現できます。
JBL 4343 今でも崇拝者が多いことで有名
4343は、ネットに回路図が有りましたので、それを見る限り、LF、MFは、普通の12dBフィルターですが、HFとUHFは、HPFが18dBで、HFのLPFが6dBフィルターと、複雑です。製品内のLCネットワークについては、このようなセオリー外が多く見られます。YouTube動画を参考にすれば、4343の低音は、LCネットワークによるぼわっとした低音の域を出ず、改善の余地が有ります。ネットワークを取り去り、適切にマルチ化すれば、低歪に低音楽器の個性がはっきりと出てくると思いますが、15インチウーハーだけでは役不足で、18インチサブウーハーを付加した、5WAYにまで発展が必要でしょう。マルチ化時、ホーンSPのHPFは、できるだけ急峻にカットすると、低域の歪みの多い帯域の音が出なくなります。間違っても6dB/octは使用しないで下さい。次数の多いフィルターでは、遅延時間が無視できませんので、フィルター毎に、タイムアライメントを合わせる必要があります。タイムアライメントが合っていれば、アタック音の実在感が増し、トライアングルのような微少な音も、滲むこと無く、埋もれずに到達します。これとは別に、ユニット縦一直線のS4700という現行の3WAYがあり、こちらの方が簡単に良い音が出る筈です。詳しくはYouTube動画で確認して下さい。
JBL4344 マルチアンプ駆動 参考例
2022/08/21
予算があれば、DF-65なのでしょうが、そうは行かない場合、VENU360とアナログ2WAYデバイダの組合せとなります。Highのクロスは、10kHzよりも7kHz〜8kHzの方が、良いと思います。4WAY化に必要なアナログチャンネルデバイダーは、Delayが無いので、2235Hと2122Hのコーン型同士で使用、クロスが低く、波長が長いので、VENUで割り当てたDelay値で十分です。図では、高級機のF-25となっていますが、廉価な223xsでも使用できます。VENUは、平衡受けした方が動作が安定します。4WAYのチャンネルバランスは、ピンクノイズを出して、VENUのRTA機能で行えます。RTAマイクは、廉価なECM8000でも構いません。ミュートSWで、各帯域をON-OFFしながらチェックします。LCネットワーク無し、アッテネータ絞り込み無しの音は魅力的でしょう。2235と2122は、本来の音となり、ネットワーク込みの鈍い音から変化しますので、レベル配分も変化します。
4WAYチャンネルデバイダー出力波形 2022年7月2日撮影
WG+UA25より、アナログにてDCX2496に入力して、出力を、アナログミキサーで合成して、オシロスコープで観測しました。DCX2496は、丁度良い周波数が無いので、316Hz、1.29kHz、7.97kHzで、リンクウィッツライリーフィルター24dB/oct 4WAY構成です。
調整は、ピーク to ピークが最大になるのを、調整値と見て差し支えないと思います。
7.97kHzの1波トーンバースト LPF MidHigh出力、HPF High出力、合成
1.29kHzの1波トーンバースト LPF Mid-Low出力 HPF Mid-High出力 合成出力 タイミングを見やすくする為に、ツイーター信号を強めて表示
ツイーターからの端々の信号
316Hzの1波トーンバースト LPF Low出力 HPF Mid-Low 出力 合成出力 タイミングを見やすくする為に、ツイーター信号を強めて表示
ツイーターからの端々の信号
スピーカー音の位相 smaartで解析
上は、使用中のマルチアンプシステムの位相ですが、フルレンジと比べて位相変化が大きいのですが、乱れてはいません。どちらも、低域ほど位相が進んでいます。位相がフラットというのは、単なる謳い文句で、ネットワーク無しフルレンジでも、位相が動きます。
現在、使用中の4WAYマルチアンプシステム 高次フィルターでもそれほど複雑化していません
13cmフルレンジスピーカーならではの教科書的な位相特性 平坦ではなく、常に傾斜している点に注目
互換ダイヤフラムの位相(極性)
不幸にしてダイヤフラムの交換に迫られる事がありますが、交換用のダイヤフラムのプラス極に赤のマーキングが有ります。普通は、赤がプラスです。しかし、ミッドドライバーでは、凸面から見てのプラスなら、逆向きで取り付けますので、逆相の可能性も有りで、結果は取付後の測定待ちとなりました。元々の部品であるダイヤフラムのカバーの+刻印と、新規取付のダイヤフラム本体の+は反対側に有り、心配した通り、全く逆でした。トーンバースト波で、位相を確認しましたところ、カバーの刻印が正解でした。
しかし、もしも12dB/octLCフィルターならば、更に位相を逆にしなければなりません。こうなると、理屈や、表示より、空間の波が重要で、やはり波形を直接観測する事が不可欠です。百聞は一見にしかず!
赤にプラスを加えると、コーンスピーカーと同じように、凸面に動きます 写真JBL2425用互換ダイヤフラム 2020/04/29 ドライバーへの実装状態では、凹面側から前に音が出ます JBL2445 2012/08/21
クロスオーバー周波数の怪
マルチWAYスピーカーシステムでは、スピーカーを各帯域に分割して音を出しますが、それらが、重なり合う周波数がクロスオーバー周波数となります。例えば、3WAYのローとミッドの間は、500〜1kHzが代表的ですが、コイルの巻き直しができない、LCネットワークの場合は、ボイスコイルインピーダンスに依存するので、クロス周波数が計算と一致せず、同じLCの値を用いても、ユニットのインピーダンスがクロス点で一致しないので、綺麗にクロスしません。マルチアンプでは、インピーダンスの影響は無く、チャンネルデバイダーで周波数が変更でき、それによると、Low-Mid間を700Hz〜1kHZまで動かしても、変化の差を聞き取るのが、難しいです。ミッドホーンを使用した場合、高域限界は、音圧レベルの低下具合で、判断できますが、低い方に問題があり、ホーンのカットオフ周波数と、さらに、その下で、著しく歪む周波数帯があります。この帯域の不都合な音を出さない事が、クロスオーバー周波数を決める第一の要素となります。これには、傾斜の強いフィルターを用いるのが最善です。間違っても、6dB/octフィルターで、自然減衰を組み合わせて、音のつながりを求めようとは思わないでください。ツイーターに関しては、高域で、2つのスピーカーから同時に音が出れば、コーミング現象で、音のディップが規則的に現れます。従って、コンデンサ1個で、ツイーターを鳴らせば、同様の事が起きます。又、並列に鳴らしても、同じです。ステレオの左右では、距離が離れており、干渉は考えません。
TV放送でよく登場する SX300のインピーダンス特性 公称インピーダンス8Ωですが、100Ωを越える帯域が有ります。低域が2山なのはバスレフである事によります。
タイムアライメント調整 マルチチャンネルシステムでホーンスピーカーを使用するには必須
調整で使用したのは、遅延掃引ができるアナログオシロスコープです。中古をかなり安価に購入しています。右の実音波形は、100周期間隔で、1波というトーンバースト波形で、これが安定して表示できます。
50MHz 2現象オシロスコープ 2015/06/17 2013/10/24
振動板の位置合わせより、ホーン開口面を揃える事を優先で ディレイ付きチャンネルデバイダー必須
何故ホーンスピーカーだとタイムアライメントが問題になるのかは、下の写真で見た通り、中音と高音SPは、奥行きが違い、ダイヤフラムの位置を合わようとすれば、下の様にアジャストする手法があります。フロント面から、ダイヤフラムまでの距離は、およそ3cmと25cmで、その差22cmあります。正面軸上でそれぞれのスピーカーから出た音は、同時に到達しますが、正面以外では、同時になりません。リスニングポイントを1点のみとすれば、このようなレイアウトでも、同時に音が到達しますが、それ以外エリアでは、同時に音が来ません。重ね餅のようなリニアフェイズSPが、後に平面SPに進化したのは、こういった事情でしょう。もしも、フロント面を合わせ、高音側で出る音を22cm分遅くすれば、それらの音は、フロント面から同時に音が出て、空間をそれぞれのホーン特性に従い拡散し、原音が崩れない伝送ができます。22cmのズレは、クロス周波数が5kHzとすれば、約3波に相当します。
ディレイ付きチャンネルデバイダーを使ってまでも、ホーンスピーカーを使用するのは、指向性が強いので、壁反射の影響が少なく、生音に近いというメリットを活かす為です。
アナログチャンデバ時代に、振動板位置を合わせる実験で、その欠点を確認 ホーンフロント面を合わせる事が最良でした 2011/04/18
雑学:煩雑なケーブル類をまとめるには
マルチアンプシステムのように、複雑な構成の場合、ケーブル類も煩雑になって、蜘蛛の巣状態になり、舞台裏は大混乱です。蜘蛛の巣でも、ケーブル同士の離隔が取れて、干渉を防ぐには、都合が良いのですが、やはり、それなりに、何らかの法則に従って、まとめた方が、精神衛生上も好ましいと思います。ケーブルをまとめるに、手っ取り早いのは、製品の電源ケーブル付いている、ねじりっこの再利用でしょう。開梱と同時に、捨ててしまうより、何か良いことをした気分になります。しかし、ねじりっこには、思わぬ落とし穴が有り、樹脂の中心にある、鉄線が、時間の経過と共に、ケーブルの被覆を締め上げ、凹みができてしまいます。ノイズにうるさい人なら、鉄線に誘起される、電磁ノイズにも注意です。
タイバンド(インシュロック)は、手早く締められ、緩まないので、工事でよく使用します。しかし、後で電線を追加する時は、切らないと駄目で、無駄が多くなります。その欠点を無くした、ロックを外せる物もありますが、主流ではありません。タイバンドも、時間が経つと、電線を締め上げるので、電線には跡が残り、その後、バンド自身が切れる事になります。特に屋外では、寿命が短くなります。TVアンテナ等に使用した物は、最後には、脆くなって切れ、同軸ケーブルがダラ下がり状態になります。マジックテープを使用した、ケーブル結束用バンドも最近見かけるようになりましたが、一本物には、それなりに便利ですが、オーディオ環境には、絨毯に絡み付いたりで、それぼど便利ではありません。
意外に便利なのが、伝票を綴じる黒い紐です。45cm物が販売されていますが、音響現場でも、マイク、スピーカーケーブルをまとめるのに良く使われています。コクヨやPLUSのうるし先の物が、一番使い易く、緩み無く束ねる事ができます。プラスティック先で、綿紐の物は、緩みやすく、要注意。ケーブル類を蝶結びで束ねておけば、後で、ケーブルを追加しても簡単にやり直しができます。音響的にも、制振効果もあり、しかも、絶縁物とあって、電磁ノイズ皆無です。ケーブルに跡も付かず、経年劣化も無く、高級ケーブルにも安心して使えます。
安定動作ならA級 無駄といわれる発熱は、熱平衡状態での動作に貢献
電源からは、一定の電流が流れ、音楽信号によって、平均電流が変化しません。これは、温度によって増幅特性が変化する半導体でも、使用温度が一定となる事を意味します。無駄な発熱で、常温より高い温度で動作するA級アンプですが、環境温度より高い動作温度、すなわち熱的な平衡状態で動作が出来ます。高い周波数安定度のある、水晶発振器でも、さらに安定させる時は、恒温漕で使用しますが、これは、ヒーターで、一定の温度(一例として60℃)で動作させています。パワートランジスタの接合部温度は、最大150℃までなので、下のように、70℃であれば、かなり余裕のある温度条件です。電流が変化する、B級、D級アンプでは、電源電圧が使用電流によって変動、言い換えれば、変調されるので、余計なノイズとして、アンプ回路に流入します。A級アンプでも電源ノイズとして、音と同じ成分が乗りますが、これがミソで、音と同じ成分なので、明らかなノイズではなくなります。
4chA級アンプでのTr接合部温度で、機器内部は、50℃台 1kHz1W時の電源リップル波形
温度保護を67℃としましたので、エアコンを使用しないで、室内が30℃を越えた時、2年間で一回だけ、保護動作しました。SWを切って、エアコン(28℃設定)を動作させ、以後は保護回路は動作しませんでした。6月に入り、晴天につき、保護回路が動作、エアコンONにしましたが、熱中症警報器として活躍とも言えます。保護回路が正常動作しているかの確認が取れる事も重要で、4ch仕様だけ、現在は2℃上げて、69℃設定としています。
4ch純A級パワーアンプ、チャンネルデバイダー、6連マスターボリューム(平衡入力+POST-LPF回路付き)
4ch純A級は、思ったよりクロストークが多く、2chアンプとして作り替えました 2021/06/28
VENU360は、平衡出力でないと残留雑音が多く、後段のマスターボリュームの入力を、DACチップ直後のPOST-LPF回路と同じ物とし、特有のパルスノイズを除去しています。DCX2496では、通常のノイズだけですので、このような特殊な回路は必要ありません。VENU360についても、通常の残留雑音、SN比、歪率等の測定では、判定できない帯域のノイズで、波形を見るまでは存在すら疑いませんでした。オーディオアナライザーでは、おおむね150kHzぐらいまで帯域を扱い、それ以上は不問ですが、使用しているオシロスコープは、60MHzまでの帯域で、このような高周波雑音を見逃しません。安価で大出力のデジタルアンプも同じく、高周波雑音がしっかりと出ていますので、ご注意ください。
VENU360残留雑音 後続のマスターVR内にPOST-LPF回路設置 2021/06/26
アンプ内部電源の実態 負荷抵抗 8Ω(スピーカー実負荷ではない)
2020/01/05
上は市販B級アンプのプラス電源とマイナス電源のブリッジ整流直後の平滑コンデンサに乗っている出力に応じた波形です。リップル量は0.1V/cm 0.6Vぐらいです。出力は、1W 1kHzとしています。B級ですので、プラス側と、マイナス側が交互に半波づつ電圧が生じています。コンデンサの容量は、3,300μFです。上下の波形を合成したら、出力に応じた1kHz正弦波が現れます。ほぼ直線上に並び、メーカー製品の電源トランス、センタータップの精度が高い事も証明されます。このアンプの性能は、1W時 THD+N 0.00321%(80kHz
BW) SN 102.5dB(A) 残留雑音 16.6μV(A)。
+側 −側 合成 2020/01/05
自作5WA級アンプの電源回路と、1W 1kHz出力時の電解コンデンサにのリップル波形で、33,000μFで、10倍の容量ですが、リップルも皆無ではなく、出力と同じ波形が乗ります。A級増幅ですので、正弦波1サイクルで、乗っています。合成波形は、電源トランスのセンタータップの精度が悪くプラスとマイナスが矩形波のような感じになります。定格電圧精度は、±5%で、CTと表示されていないので、やむを得ないところです。RSで扱っている2巻線トロイダルトランスなら、もう少し精度が上がるかも知れませんが、出力線が、エナメル線のまま出ていて、配線の収まりが悪く、EIコアの普通品にしました。電源電圧が、+−で対称ではないのですが、この時のTHD 0.00006%(80k) THD+N 0.00071%(80k) SN111dB(A) 残留雑音 4.4μV(A)です。理想的な2電源でなくても、性能は確保できています。
リップル波形観測時、電源由来のノイズは発見できませんでした。アンプ出力の最上流の平滑コンデンサが、このような波形であっても、アンプは、静寂を保っています。入力にないものを出力から排除するし、出力から返されるノイズも除去できます。やたら謎呼ばわりする物では無いことは確かだと思います。正負で非対称な電源であっても、このような性能を発揮することから、この電源の一次側(商用電源側)の影響は、アンプ回路の仕組みにより、十分に除去されていると考えます。
クリーン電源として、リチウムイオン電池から交流を出力して、ノイズの無い電源を供給するという、クリーン電源の宣伝動画、確かに理想的な電源ではあります。ネットに登場する検索記事は、その効用を謳うものが殆どで、反論めいたものは有りませんでした。その効用は、ノイズフロアが低下し、音がはっきりするとしています。主に、商用電源からのアイソレーションの効用を強調しているのかと思います。CDが基本的に16ビット 96dBのレンジであり、ノイズフロアを下げても、96dB以下は、ディザノイズで埋められています。96dB以下のノイズ領域に含まれる電源由来のノイズが、音にどのように影響するのか不透明です。動画の試聴は、マランツのCDプレーヤー+アンプで行われていますが、逆説的に言えば、マランツ製品が電源の影響を受けるという事になってしまいます。勿論、そんな事は無いのですが、エアコンを使用する時期は、音が悪くなるという他所の解釈にも繋がります。どこかに、人々の活動レベルの高い昼間は音が悪く、深夜は、電源がクリーンになって音が良くなるという説もありました。技術者的には、高価な電源ケーブルと同様の、納得のいかない製品が登場という感です。音響用ケーブルのキャッチコピーで、銅の純度を謳う製品が多く有りますが、例えば、アナログプレーヤーとRIAAイコライザ間のケーブルに使用すると音が良くなるとあります。RIAAイコライザーの入力回路には、信号源インピーダンス整合の為、2.2kΩの直列抵抗が入っています。1mΩ以下のの銅線中で起きる音の劣化と、2,200,000mΩの抵抗で起きる音の劣化どちらが支配的なのか考えさせられます。
大出力アンプの欠点
車もオーディオアンプもひたすら巨大化して、豪華さを強調していますが、ジャストサイズで高性能で有ることの方が望ましいと思います。車がグローバルサイズといっても、日本の道路は、生物のように成長しませんので、結局、田舎道では邪魔者にすぎません。同じく、オーディオアンプも同様で、400W〜1kWと最大出力を誇っても、家庭では、85dBの聴取レベル止まりで、1Wもあれば十分です。用もないのに、大きな残留雑音を聞かされても、高額なアンプなので我慢して使っているというのが実情でしょう。高出力アンプだから高い駆動力という表現を見ますが、電圧が有って、電流が流れ、従って電力(仕事)となるのですから、定格出力の違いで、オームの法則が変わってしまう事はありません。ローインピーダンスへの対応力というくだりも、確かに、市販スピーカーでは2Ω台のインピーダンスとなるスピーカーが実在します。これを、8Ωのアンプで駆動できないという迷信が有るようですが、アンプは定電圧駆動ですので、このような低い負荷では、電流が多く流れるだけで、8Ω負荷で許容される電流値までは、どんな低いインピーダンスの負荷でも使用できます。電力は電流の2乗x抵抗なので、許容出力が、2Ω負荷なら、8Ω時の4分の1になるだけです。例えばアンプ出力が100Wであれば、25Wまでは普通に使用できるし、この範囲で、特に歪みが多くなることもありません。先ほどの、平均聴取レベル85dBであれば、25Wでも過剰と言えます。ただし短絡は、別で、電流は電源の能力一杯流れ、とても危険な状態となります。
ハイエンド大出力アンプ 1W時のSN比
有名なハイエンドアンプが、大出力にもかかわらず、2.83V(8Ω1W)でのSN比を表示し、その値は85dBです。最大出力400WのSN比は、111dBとなりますが、どうみても良い数値ではありません。しかし、このハイエンドアンプを購入して、測定する事はできず、事実を確認する手段もありません。本当に良い音なのか、それが、スピーカーを豹変させる程の鳴りっぷりなのか、真相は闇の中でしょう。いわゆるプロ音響界における、高級品に数々触れて、アンプとは、このような物であるだろうという、概念はおおよそできています。そうした中で、自家用アンプを製作するのに、重視したのは、実用域での性能の良さです。MCヘッドアンプにもなりうる1nV以下のノイズ性能であるOPアンプが数百円で購入でき、その結果として、2.83V時のSN比は、110dB(A)、THD+N
0.00033%(A)、とハイエンドアンプでも実現しない高性能になりました。低雑音にこだわるなら、不平衡が有利※で、完全な対称性が命となる、複雑なフルバランスアンプ(平衡)は見送りました。A社のアンプ解説で、リニアリティの良い5W分を1組のパワートランジスタに持たせているからわかるように、最小分の1組5Wのみで、シンプルにして、高性能を得ました。オーディオメーカーも本当の所と、商品としての魅力の狭間でお悩みとは思いますが、企業が存続する為の努力も、大いに評価しておきたいと思います。
※引用資料 TI社 JAJT010によれば、OPアンプのノイズフィギアは、実測値で 非反転11.5dB 反転13.0dB 完全差動30.6dBとなっています。適切なシールド処理をすれば、不平衡アンプの方が、低雑音です。Luxman
M-200のSN比が102dB(BAL) 107dB(不平衡)と正直に記載されており、好感が持てます。出力25W+25Wで、無信号時消費電力30Wと、B4サイズで、コンパクトなパワーアンプです。
スピーカーの入力とアンプの出力の関係
You○○○○などの動画や、ネット記事で気になるのは、ハイパワー信仰と、そちらへ誘導しようとする根拠の無い論説です。例えば、10W入力と100W入力のスピーカーが有れば、100Wの方がパワフルだろうと考えてしまいますが、我が家の102dB/Wのスピーカーと、82dB/Wの市販小型2WAYスピーカーを比較した場合、1Wで、102dBのスピーカーを鳴らした音量と、100Wで82dBのスピーカーを鳴らした音量は同じです。古典的な高能率SPに慣れた人から見れば、音が小さくなって壊れているとさえ思えるほどの音量しか出ないのが、最近の小型スピーカーです。
家庭での平均聴取レベルは、85dBを越える事は滅多になく、それに要するアンプ出力は0.1Wです。すなわち、0.1W出せば、事が足りるのですが、何故かピークマージンを考えて100Wやそれ以上のアンプでないと不安を感じる人が多いのではないかと思います。その不安をあおるように以下の説明には驚きました。メーカーの営業さんは、このような説明をして、大出力アンプを是としてきましたが、確かに、大出力アンプでは、大振幅でも綺麗に出力が出ますが、小出力も、頭が切れる範囲以内までは、綺麗です。そして、図のような事態になったら、○部分が発生し、これを原因として、奇数次の高調波が発生します。そして間違った解説 平坦部で直流が発生 ? と続きます。しかし、平坦であっても、上下均等なので、これも交流であり、直流成分は有りません。奇数次高調波が増えるだけです。この部分を直流と称して、直流が流れ、ユニットが張り付き、焼けてしまうから小出力のアンプは怖いという説明です。実際のところ、ホーンツイーターに矩形波(真四角な波)を直接入力しても、焼ける事はありません。焼けるのは、長時間の過大電流による温度上昇によってであり、入力した電力に関係しますす。その電力の加え方で、連続正弦波と、ピンクノイズでは、差が出ます。連続正弦波に対しては、耐入力が小さく、ハウリングなどで、ツイーターが飛びます。アンプによっては、クリップ時に発振する物があり、耳に聞こえない高周波であれば、音も無く壊れる事もあります。その他に大出力アンプを通電中に入力を接続した際のショックノイズでも焼損します。普通に85dB程度の音量ならば、アンプ出力の大小が破損につながる事はありません。オーディオ用ツイーター正味の耐入力は、極めて小さく、正直に表示されてない製品が多くあります。ピンクノイズで、100W入力とされていても、3dB/octでパワーダウンするのが、ピンクノイズなので、ツイーター帯域での電力は、1Wに過ぎません。矩形波を100Wアンプで入れたら、あっという間に焼けます。
もっと凄い解説文では、小出力アンプを危険視するような表現が有ります。100Wから5W出力のアンプにスケールダウンして、2年以上経過しましたが、事故は皆無です。
← 完全なミス解説であり、丸まっていても、切れていても0Vを上下対称にに挟んでいますので、直流成分はありません。
超ハイエンドスピーカーの取扱説明書日本語部分にも、アンプが飽和してスプリアス信号を出して、ツイーターを損傷するという表現があります。スプリアス信号とは、アンプが発振する際に、電波として放射される成分を言いますが、電波がスピーカーを破壊することは無く、あくまでも、入力信号に含まれない、発振による高周波出力が、スピーカーケーブルを通して、過大出力され、焼損に至る事が正解です。現在5Wという小出力アンプで、スピーカーシステムを鳴らしていますが、小ささ故の破損事故はありません。デジタル音源では、0dB以上の信号は無く、ボリュームMAXで、最大出力とし、それから絞り込む運用をしていますので、どの周波数帯でも、クリップする事はありませんので、従って事故になりません。CDや、ネット音楽では、0dB以上が無いという制御された信号ですので、心配無用です。全ては、大出力アンプが存在価値を失わない為の方便でしょうが、1.2kWものアンプの出力メーターが、動画で見れば、1.2W以上を示さないのが現実で、30dBものピークマージンが何の為に必要か、よく考える必要があります。
同じ項英文では、Choosing the right amplifier
It is not an excess og amplifier power that can damage your loudspeakers
and speaker drivers but a lack power. Moreover ,if the volume is turned
up too high,the amplifier saturates and generates parasite signals that
may damage the tweeter. ・・・・・・・・・ Your retailer will be able to help you
choose the amplifier best suited to your tastes and budget.
スプリアス信号とは書かれていません。アンプボリュームを上げていると、アンプが飽和したり、寄生振動が発生して、ツイーターにダメージを与えるというのが適切です。英文は、適切な表現ですが、日本語訳は、誤訳で、理系ならば、ピンときます。
次にスピーカーのインピーダンスと、アンプの定格負荷インピーダンスの関係で、スピーカーを、抵抗器のように、抵抗一定とみなし、直並列の計算をする例です。これは便宜上そのような計算をするだけで、スピーカーの公称インピーダンスは、低音からスイープして、低音域の山を越えて、一番インピーダンスが下がった時の値であり、周波数が変われば一定ではありません。大半の周波数で、それよりも高いインピーダンスになります。TV番組内でお馴染みのEV SX300は、100Ω以上の帯域があり、それでも表示は8Ωです。ただし、リボンツイーターでは、ほとんどインピーダンス変動はありません。それ以外に、このようなインピーダンス変動を嫌い、並列に補正CRを付けたスピーカーもあります。
まとめて言えば、アンプから見た負荷インピーダンスは、ある一点の周波数(300Hz前後が多い)にのみ、定格値どおりで、定格8Ωというアンプでも、計算上2Ωのスピーカーを取り付けても普通に鳴ります。同じボリューム位置でも、8Ωより大きな音量になりますので、迫力が有るなどと勘違いしないで下さい。アンプが出している電力は、ボリューム位置とは無関係で、あくまでも、音の大きさに関係します。当然、音が大きく感じられれば、アンプの出している電力は大きくなります。
5W出力の、スピーカー音圧について
自由音場では、スムーズに減衰しても、居室内では、反射音で、音圧が高くなり、必要なパワーも少なく済みます。
高能率 8Ω 102dB/Wでは 110.2dB SPL at 2m 7m以内なら100dB以上あり
工学的な音圧グラフですが、このような減衰曲線は、専門書でも珍しいと思いますが、これは、かなり以前に研究用で開発した拙作ソフトウェアです。2mでの音圧値は、6畳〜8畳程度のリスニングルームを想定しています。自由音場では、直線的に減衰しますが、居室内では、残響が有るので、距離が離れても、ある音圧に収斂します。必要な音圧は、85dBなので、能率の低い現代スピーカーでも、5WアンプでOKという事です。102dB/Wのアルテックタイプウーハーならば、5Wでも、難聴の危険が生じ、5Wフルパワーでは使用できません。
30W程度の真空管アンプで、映画を上映する為の、有名なA7は、103dBというカタログデータです。上のグラフでは、20m離れても結構な音圧が得られています。実際の映画館は、もっと残響の多い環境ですので、音圧的には十分確保されますが、ライブ空間という事で、ホーンスピーカーで、Qを上げ、明瞭度を確保しなければなりません。その為、ウーハーもショートホーンとして、奥行きのあるセクトラルホーンとでタイムアライメントが一致している、A7のライブな環境でのパフォーマンスは相当なものだったでしょう。JAZZ喫茶でも、A7ならば、Qが高いので、忠実度の高い音が出せます。
大出力アンプ特性 実測例
某チューニングショップ 大出力アンプ 2017/10/09
メーカー製 出力380W+380W 重量38kg 大出力パワーアンプの歪率実測結果 0.01W時0.02%越えです。0.01W時で0.01%を切るか切らないかが、解像度の目安と思いますが、最近は、こういった測定結果が公表されず、スペックと、音質が別物という噂で、代用されています。
THD+N特性では、歪率は、出力増加と共に、直線的に下がり、性能限界から暫く横ばいが続き、上昇が始まってクリッピングポイントで一気に上昇します。
追加:KT88 A級シングルアンプ評
YouTube動画を見ていると、真空管アンプを礼賛する物が非常に多く、いかに宣伝が行き届いているかを思い知らされます。ヤフオクを見ると、人気が有るのか、高額で取引されています。余りの人気振りに、ついつい1台くらい使ってみようかと考えていたら、タイムリーにも、KT88A級シングルアンプを修理する事になりました。A級シングルで、10W出力の堂々たる風貌です。消費電力105W クロストーク
1W時 59.13dB 1kHz 60dB(入力短絡)44.6dB(入力開放) 10kHz 残留雑音(入力短絡)180μV(A) 2.86mV(80KHzBW)
左がKT88 A級シングルアンプで、右が愛用している、LAPT純A級アンプです。ダンピンファクターは、KT88アンプ 1.46 LAPT純A級 50.2(4S6 3m SP端にて 実使用条件)
THD同士の比較で、真空管では、-60dBがやっとで、LAPT純A級アンプでは、かなりの範囲で、-120dB以下で、可聴限界以下となっています。低歪アンプが音が良いかと言えば、そもそも論として、録音時の歪みが浮上し、低歪アンプの方が、それを際立たせてしまうという、逆効果となる場合が多く現れます。しかし、低歪率、低雑音のアンプを求めるのは、それでも、忠実性を求めるからであり、間違った考えでは無いと思います。歪んで嫌な音が出たとしても、録音源がそうならば、受け入れし、いつも、同じ音が出る方が良いと、評価をシフトすれば、問題は無くなります。音源にコンプ歪みが内在していたとしても、それを含めて作品として受け入れたいものです。
特徴的な低ダンピングファクター
KT88アンプの特徴は、何と言っても、低いダンピングファクターです。真空管アンプ時代は、DF=3が具合が良いとされていまして、何とそれより低い、DF=1.46の音は、電流駆動的になり、やはりドンシャリで、独特なダイナミックスの音に変化しました。
参考:スピーカーケーブルメーカー、カナレの説明では、ケーブルを含めたダンピングファクターは、20〜50が、実用的な要求レベルとしています。音響ホールでは、4S11を使用し、できる限りの努力はしていますが、仕様上の限界が有り、その面での劣化は容認されていますが、やはりボワッとした低音になっています。自作したLAPT純A級アンプでは、4S6ケーブル3mで、DF=50.2となっており、極めて妥当な値で、専門分野のホール音響を凌いでいます。
DFが低いことにより、定電流駆動に近づき、原音とは、かなり異なった鳴り方なので、ダイナミックス面で、違いが創出されています。趣味オーディオであれば、原音より艶やかな音を賞賛しても良いと思いますので、ロクハンなどで、楽しむなら、真空管アンプも選択に入ります。好ましく感じるだけで、事を進めるならば、これも一つの選択でしょう。厚みのある音は、歪率の高さも原因の一つで、同じ電力で、感じる音の強さは、歪みが多いほど増します。消防サイレンの電子化時に、作りやすい正弦波で作って、電力の割に音が届かず失敗して、矩形波に変更しました。ピアノも、1音づつ弾けば、おとなしい音ですが、オクターブで弾けば、重厚な演奏に変わります。
マルチシステム開発ヒストリー:デジタルミキサーから、純A級アンプにまで
adat 8chデジタル伝送(48kHz24bit) と、PCM48kHz、96kHzの比較実験を行う 2004/12/26
2002〜2008年 96kHz24bitハイレゾ音源 デジタルミキサー活用 CD自主制作 マルチアンプ駆動実験まで 最初は中級オーディオファン
オーディオは、かつての隆盛期を知る者として、現状は非常に寂しいものとなっています。かく言う私も、2008年(平成20年)までは、15インチ3WAYスピーカーを、MOS-FETプリメインアンプで、好きな音楽を聴くという、中級オーディオファンで、振動や、電線の音の違いは、頭が痛くなるだけで、百害有りと、関わらぬようにしていました。
2002年、CDとは次元の違う(今で言うハイレゾ)、96kHz24bitデジタル音源を得る為に、UA-5を購入し、efuさんのWaveSpectra、
WaveGene等のソフトを駆使して、パソコンとの関連を研究。縁有って、アマチュアライブのPAを手伝うようになりました。馴染みの楽器店で、中古デジタルミキサーProMix01を購入し、その性能に触れてみました。スチューダー録音卓のように、モーターフェーダーで、一気にシーンチェンジできる事に圧倒されました。48kHz20ビット機でしたが、デジタル出力を、PCでデジタル録音し、ライブCDを作って、演奏者にプレゼントしました。これにより、デジタルミキサーの将来性が有望と思い、時代に乗り遅れぬよう、2004年、96kHz24bitデジタルミキサー01V96V2(当時\250,000)を新品で購入し、その実用性などの研究を行いました。コンデンサマイクや、マイクスタンドも買い求め、8chデジタル伝送adatも使用してみました。
2005年には、録音した24ビットマスターから、CDを制作。勿論、デジタルミキサーは、良い所ばかりではなく、運用レベルを下げたとき、ギザギザの出力となる体験もしています。このような不都合は、なかなか表面化しませんが、実際に使用して、初めて知り得る情報であろうかと思います。この体験がきっかけとなり、デジタル音源を MAX=0dBFS のままDA変換し、アナログ段階で、パワーアンプに必要とされる音量を確保するという音量調整システムを採用する事にしました。
2008年頃は、小型スピーカーも各種所有するようになって、それらの周波数特性や、歪率測定をWaveSpectraで行っていました。その結果、小型スピーカーは、再生帯域の何処かで、必ず歪みが多くなる所があり、大型スピーカーとは差が有る事がわかりました。
仕事が、PA機器修理から音響ホール保守にシフトしていった結果、SR用スピーカーや、その駆動形態に触れることができました。ホールでは、15インチのウーハー、HFドライバー+ホーンの2WAY構成が多く、大半が、マルチアンプ駆動されていました。キャノンコネクタ、ノイトリックスピコンなど、家庭用オーディオとは違う、プロ現場ならではのパーツと、関わるようになりました。この時まで、マルチアンプ駆動と、LCネットワーク駆動では、同じスピーカーを鳴らすのだから、さしたる音の違いが無いと考え、自家用スピーカーは、1台のプリメインアンプによるLCネットワーク駆動でした。
使用していた1984年製38cm3WAYが、20年以上経過しており、引退時期と考え、スピーカー入替前に、3WAYマルチアンプ方式を試してみました。マルチアンプ方式は、聴感だけの判断ではなく、ピンクノイズで、正確なレベル調整する必要がありますが、測定器自体が高価なので、購入できる筈もありません。そこで、ピンクノイズによるエネルギー測定ではなく、マルチメーター程度で調整が可能になるように、周波数が変化しても、振幅が変化しない、ワーブルトーンを用いる事にしました。WaveGeneで1オクターブバンドと1/3オクターブバンド幅のワーブルトーンを作り、実験に使用しました。
2008年末 ウーハーにディレイ(遅延)を掛け、音の変貌ぶりに驚く 廃棄前のマルチ駆動好結果により、廃棄を翻意
廉価な、CX3400を入手して、実験を開始。CX3400は、LFchにディレイが掛けられる仕様でしたので、配線が済んで、試聴段階で、ディレイを操作してみると、かなり音色が変化し、ある所で、パット明るくなるような箇所が有ることに気付きました。この後、しばらく、この変化を確かめるように、色々と試聴をしてみました。大きく変わったのは、ピアノの音で、リアリティが出たという事と、シンバルの音が、JBLのような分厚い音に変わったという事で、これは驚きでした。曖昧なアナログディレイでの変化ぶりから、デジタルディレイならばもっと正確な最適値が、ツイーターを含む全チャンネルに設定できると考え、その仕様を満たすDCX2496を2009年に入手しました。DCX2496は、デジタル入力がプロ仕様のAES/EBUなので、デジタルフォーマット変換用としてSRC2496をセットで購入しました。
2009/04/14 2波トーンバースト使用の遅延実験
2009年 デジタルチャンデバで大きく変貌
LCネットワークを捨て、DA変換 → 6連マスターVR → パワーアンプ → SPユニットへ直結
2009年は、DCX2496導入により、システムが大きく変貌しました。メインの3WAY SPは、LCネットワークとアッテネータを取り外し、SPまで直結としました。0.5Ωと接触抵抗が大きいフォンプラグも、接触抵抗が低いスピコン入力に改造し、内部配線は、LFとMFを4S6にて等長で接続しました。20kHzでの再生レベルに難が有った、ツイーターは、FOSTEX
T90Aを外付けして難を解消。同時進行で、アルプス製モータードライブ式6連ボリュームによる、マスターボリュームを自作し、パワーアンプの音量設定をシンプルなものとしました。
2009年11月には、時々歪みが出るパワーアンプの問題点が、古くなった出力リレーが原因であることを解明し、所有アンプのリレーをG2R-2-AULに換装して、音質の不安定さを解消。30kHz超となった高域再生能力とバランスする為、超低域を、18インチウーハーを加えた4WAYシステムとして、現在にまで至るマルチシステムが完成しました。最初は、SPユニットのタイミング調整は、2波のトーンバースト波でしたが、よりシンプルな1波のトーンバースト波にしました。このようにして、捨てるつもりのスピーカーが、全く最新の音へと変貌しました。大金を使わなくても、庶民レベルの予算で、ホール音響(保守点検で日常的に接している)をも凌ぐ事が可能となり、この感動と実現手法を皆様に発信する為に、ホームページを充実する事となり、現在に至っています。
2010年 アンプ機種統〜アナログ6連ボリュームに代わり、ギャングエラーが少ない6連電子VRを製作
このように、どっぷりとオーディオの世界に再び浸かってしまいましたが、機材を全て新品で購入していては、財布が保ちませんので、あまり進歩していないアンプは、ネットオークションで安上がりに揃える事にしました。パワーアンプは、重厚長大で、しかも割高でしたので、プリ部と、パワー部が分離できるグレードの、プリメインアンプ中で選ぶ事にしました。
まずは、手持ちのアンプと合わせる為に、SONYのMos-FETアンプを入手、安価で短時間に揃える事ができました。Mos-FETアンプの次は、オーソドックスなバイポーラトランジスタアンプという事で、オーディオの足跡を参考に、手頃なアンプを求めましたが、人気機種は、かなり高額で、落札も難しく、少し仕様落ちのSANSUI AU-α607XRを落札しまして、性能比較を行いました。艶っぽい音のFETアンプに対し、低雑音で高解像度の607XRとかなり迷いながら、4WAYマルチアンプシステムは、SNが良い607XRで統一する事としました。現在までに、607XRは、6台、MR、NRAがそれぞれ1台で、合計8台入手しました。607XRは、バランス出力であり、これに相当する現行製品を購入していたら、かなりの金額になります。
2011年は、電子ボリュームIC PGA2311PAにより、6連ボリュームを製作しました。アナログボリュームと比較し、ギャングエラーと、クロストークが少なく、音量の精密な制御が可能となり、-40dB以下の微少音量でも、明確なステレオ定位が得られるようになりました。アナログボリューム時の、-25dB以上で音がうるさくなる現象は、電子ボリュームを実用化している段階で解消されました。音量ステップは、0.5dBでかなり正確です。PGA2311PAは、電源電圧がDACと同じ±5Vで、余分な増幅を必要としません。他方、±15V系ICでは、プロ音響のデジタル機器には対応できますが、0dBFS時+22dBuの信号を+4dBuまでパワーアンプで、レベルダウンしており、信号の無駄な増減が、音質の劣化につながります。これがPGA2311PAを使用した理由です。
2013/06/17 真空管式プリアンプCL35Uチェック中 ヒーターDC点火で、質の高い製品でした。
尚このヘッドホンアンプ回路は、DCカットコンデンサが無く、ヘッドホンを差し込むと結構大きなショックノイズが有りますので、修理をされる際には、この点の改善もお忘れ無く。
2012年〜2014年
Mos-FET、バイポーラTR、真空管、スイッチングアンプ(デジタルアンプとも言う)の各方式と、スピーカー負荷との関係を熟知 理想の点音源とされる同軸2WAYスピーカーを3組入手
2012年にて、マルチアンプシステムは、ほぼ完成し、アンプと、マルチシステム用SPユニットの購入も一段落しました。マルチの次は、理想の点音源を体験したいと思い、2012年暮れ、KEF製同軸2WAYスピーカーQ15を入手し、マルチシステムとの比較を行う。同じ頃、アナログレコードを大量に譲り受け、デジタル保存。LUX真空管アンプMQ60の修理を行うチャンスがあり、真空管アンプの音質や物理特性などに触れる。デジタルパワーアンプ(スイッチングアンプ)も、音質や物理特性のデータを収集し、各アンプ方式を比較。
2014年は、KEFのQ70も入手し、現在の高級品スピーカーレベルの4WAY構成を味わうことが可能になりました。同軸2WAYの元祖TANNOYの12インチスピーカーも3台入手でき、うち1台は、高音ユニットの磁性流体交換を行いました。同軸2WAYも、ホーン、ドームの2方式を比較できるようになり、これらと、4WAYマルチシステムとの比較もでき、常人とは異なった体験ができたと思っています。一般には、理想的な点音源再生と評される、同軸2WAYですが、リスニングポジションは、センターから少し離れると片寄りが顕著になります。同軸2WAYの3システムを交互に使用できる環境での検証の結果、センターで聴かなくても、定位が安定しているという、評価は正しくありませんでした。それと比較して、直線上にSPユニットの中心を揃え、ホーン開口面も揃え、リスニングポジションへの各ユニット音の到達時間を整合した、4WAYマルチシステムの方が、定位が安定しているエリアが広く、どっしりとしています。ホーンツイーターは、リスニングポジションにおける、耳の高さに設置すると良い結果が得られます。奇数次歪みが多いドームタイプ同軸2WAYは、ニアフィールド用、距離が取れる場合は、奇数次歪みの少ないホーンスピーカーが優位と考えるべきでしょう。
2015年〜2016年
SPシステムもほぼ完成で、仕上げにオーディオアナライザーを入手し、セラミックコンデンサーによる悪影響を検証 その結果より、チャンネルデバイダーを改造
2015年になると、自家用スピーカーシステムは、落ち着いて使用できるようになりました。業務のキャリアアップの為、自家用でオーディオアナライザーVP-7722Aを入手し、自己所有のアンプや、チャンネルデバイダーなどの歪率、SN比測定などを行いました。更に、APのアナライザーも使用する機会に恵まれました。このような測定器が有れば、、ゼロの数を追いかける、測定マニアになりそうに思えるのですが、そうでは無く、オーディオアナライザー導入の成果として、機器に使用されていた、セラミックコンデンサーによる、歪率特性悪化の実態把握と、改造による特性改善にまで踏み込む事となりました。
セラミックコンデンサーによる歪率特性悪化とは
音響機器のTHD+N歪率値は、出力が上がるにつれ、低下していきますが、オーディオ信号が大きくなると、途中から反転して、歪率が悪化する機器に遭遇しました。これを解析してみると、音声回路中のチップタイプの積層セラミックコンデンサーに原因がある事が判りました。コンデンサ歪みでネット検索すると、DC電圧がかかると容量が変化して歪むという解説も多くありますが、全く直流がかかっていない回路での測定結果であり、この説明では不十分です。コンデンサに交流信号を通すだけで、歪みが発生している事実が重要であり、その原因を取り除く事は、純粋なオーディオ環境構築に、重要な作業です。問題を発見した時のコンデンサの容量は2200pFでしたが、470pFでも発生することがわかり、以後のコンデンサに対する考えは大きく変わりました。動作原理上から部品を吟味するのではなく、実際の測定結果から判断するのが、この問題を防ぐ方法です。最近に秋月で購入したMLCCタイプ積層セラミックコンデンサ47pF、220pFがそのような歪みが発生せず、同じタイプの0.1μFでは盛大に歪みが発生します。このように、測定しなければ判らない事にも遭遇しています。是非とも・・・だからという決め付けではなく、必ずデータを取ってみる事が最善の方法かと思います。小容量コンデンサでは、マイカコンデンサもどうかと思い、62pFと100pFを入手し測定を行いましたが、フィルムコンデンサよりは、やや劣るような歪率性能でした。47pFのフィルムコンデンサなる物も入手しましたが、こちらは全く問題有りません。銅箔タイプのスチロールコンデンサも測定しましたが、通常のスチロールコンデンサとの違いは全く有りませんでした。
きっかけになったチャンネルデバイダー歪率測定結果 2015/12/01
オーディオ信号がセラミックコンデンサを通過する事で、0.2V以上の出力では、歪みが上昇しています。フィルムコンデンサでは、10Vで、0.0008%ぐらいです。ただし、OPアンプのVcc、Veeピンのデカップリング用0.1μFは、セラミックコンデンサが最適なので、誤解しないでください。
2017年
LM3886パワーアンプ/LT1115 MC専用RIAAイコライザー
インピーダンス測定の信号用源に使用した単電源のTA7252APパワーアンプが、2電源使用のOPアンプ部と相性が悪く、信号を共用すると、ハムが出て対策に苦労していました。それならばと、2電源で使用できる、パワーIC LM3886を使ってみる事として、一応の成果を得ました。電源ハムから解放され、残留雑音が、98μVと優秀で、THD+N 0.0038% とまずまずでした。気を付けるのは、思ったより、安定度が低いという事で、結構、発振しやすく、NF定数には注意が必要です。後は、電源OFF時のミュート回路の工夫をすれば、実用可能です。
LT1115でMC専用RIAAイコライザー自作
真空管式プリアンプCL35Uを修理して、アナログレコード試聴を行い、12AX7の鳴りっぷりの良さと、どことなく、くすんだ自家用アンプのRIAAイコライザーに物足りなさを感じていましたが、ここを埋めるべく、RIAAイコライザーの自作に取り組む。FETヘッドアンプ+OPアンプ構成、完全ディスクリート、OPアンプだけの構成とあれこれ悩みましたが、トラ技 黒田先生の記事に影響を受け、最近の低雑音OPアンプで作ることにしました。記事はLT1028による、MC用イコライザーアンプでしたが、関連するOPアンプのデータを調べているうちに、LT1115に辿り着く。オークションで、データーシートと同じ回路の基板が出ており、これに挑戦。LT1115 秋月¥450で入手、容量負荷駆動用パワーバッファLT1010が入手できず、マルツ\547で入手。イコライザー偏差を追い求めたが、温度ドリフトの問題で、0.02dBの壁に当たる。実測結果は、±0.1dB以下を余裕でクリア。この基板は、MM-MC切換可能ですが、EQ偏差を厳密に追求すれば、それぞれ専用が望ましく、MC専用として製作。
気になるSN比は、1kHz 5cm/sec DENON DL-301Uで、74.3dB(A)で、自家用機とは、7dBの改善という結果となりました。入力換算雑音は、-144dBVです。OPアンプでも、これだけのSNが確保でき、聞き古したアナログレコードから、新たな音の発見という楽しみができました。自作で成功する秘訣は、EQ偏差や、LRのバランスに関係する部品を、徹底的に選別する事で、大量に部品が残りますが、できあがった物の完成度の高さにより、無駄は感じません。電源は、PSRRが高いOPアンプなので、ディスクリートアンプのような厳格な低雑音電源は必要なく、3端子レギュレータでも結構いけてしまいます。
アンプ試作 アイドリング電流変化時の、歪率特性変化(B級からA級まで)
このアンプで、アイドリング電流を変化させた歪率特性を測定しました。0.1mA 1mA 10mA 100mA 200mA 測定結果は、10mAを越えると、差がわずかとなり、ヒアリングでもその差が感じられなくなりました。通常のアンプでは、40mA〜60mAを流して、AB級動作としていますので、アイドリング電流による問題発生は、それほど考えなくて良いでしょう。1kHzでの歪率特性を以下に紹介しますので、参考にして下さい。100mAと、200mAでは、殆ど同じですので、100mA以上有ればその差はわずかとなります。
アイドリング電流で迷ったらこのデータを参考に 2017/06/14
2ch仕様A級アンプは、低残留雑音2〜4μV(A)を実現
直近に製作したアンプの歪率特性 2017/12/09
0.01W時 THD+N(80kHzLPF)=0.01%以下
THD+Nが0.01W時0.01%以下のアンプは、数が少ないので、どんな音になるのか興味が湧きますが、果てしなく解像度が上がるという表現に尽きます。0.01%は、SNでは80dB相当です。スピーカーの能率が100dB/Wなので、0.01Wで音圧80dB(1m)となりますが、0.01%歪み成分の音圧は0dBとなり、聞こえません。このような、低雑音、低歪率アンプの音は、録音中の残響がしっかりと聞こえ、ボーカルのコンプレッサー歪みも簡単に判別できます。各部を低歪率、低雑音化していくと、その段階毎に、残響が深まり、金属音のリアルさが増すというのが、一連の音質評価を行っての、共通の結果です。出力レベルにより、供給電流が変動しないのは、A級アンプの最大メリットです。高能率スピーカーにより、音圧面での妥協も無く、小出力アンプでも、十分な音圧が確保でき、小出力なるが故、発熱量も少なくできます。小型フルレンジスピーカーとも、親和性が高く、ナチュラルな音色のスピーカーならば、高解像度が活かされ、音楽ジャンルを問わず聞き込めます。A級低歪率アンプは、スピーカーと1対1接続ならば、最高のパフォーマンスを発揮します。ネットワーク式マルチWAYスピーカーを鳴らして、あれやこれやアンプに注文を付ける前に、スピーカー環境を整理すると、低歪率アンプの真価が発揮できます。
メーカー製A級パワーアンプ部歪率特性 定格出力30W 実測SN比 99dB(A) at 1W 8ΩFET差動カレントミラーカスコードブートストラップ回路 高級機ですが、0.01W時の雑音歪率が、0.01%以下ではなく、0.02%以上有る事に注目。A級、B級が切り換えられますが、多くの方が言われるように、音質差は認められず、発熱面でのデメリットを感じました。残留雑音が、年代の割に少なくて好ましいアンプですが、10Wを越えて歪率が上昇しているのは、セラミックコンデンサの影響なので、フィルムコンデンサに置き換えれば、0.001%以下の歪率まで下がると思います。
メーカー製A級アンプ 歪率測定結果 2018/02/10
2018年 アンプとスピーカーの関係を証明する為に、アンプのSP実負荷時の、スピーカー側での歪率特性を測定
オーディオ全盛期には、数値競争が、ありましたが、近年は、音質と全く関係ないという、論説が流布され、具体的な数値さえも採らず、すぐに、音質だとか、エージングに話が行っていますが、このあたりが、オーディオがオカルトになっている、原因のひとつと考えています。
聴いた話とは、聴取者の脳で処理された話なので、顔が違うように、他者でも同じように聴取される保証は有りません。しかも、アンプの音質にいたっては、スピーカーの型番、試聴音源データ、接続条件の明示もなく、いきなりの評価がされていますが、これらは、小説的な、読み物としては通用しても、科学的には通用しません。
意外にまともなデーターが無いアンプとスピーカーの関係
アンプとスピーカーの関係を調べようと、ネット検索をして、思い描くようなデータが見つからず、落胆しましたが、それではと思い、さっそく測定をしました。最小出力 0.01mWから測定しています。測定結果をしっかりと読み解けば、アンプとスピーカーを1対1で鳴らすことで、スペックの良いアンプが真価を発揮することが解るでしょう。ちなみに、自作A級アンプの1W出力時、THD+N 抵抗負荷 0.00071%で、それに、13cmのスピーカーを並列にした場合、0.0028% に歪みが増加しました。
2018/04/04
測定条件 アンプ 自作5WA級DCアンプ SN(1V)98dB(A) THD+N(80kHzBW) 0.0007%(1W 8Ω) SN20171205A
Rch オーディオアナライザー VP-7722A ID.813302D122 アンプ出力ケーブル 4S6 往復42mΩ スピーカー側ケーブル 1.25SQ平行線 往復24mΩ スピーカー TOA F-160G
13cm+3cmドーム 2WAY 150W 91dB/W 8Ω
左は、アンプとスピーカーの間に、3.3mHのコイルを直列に入れた場合で、ウーハーのネットワークを仮定したものです。右は、金属皮膜抵抗の2.2Ωを入れて、ケーブル抵抗やアッテネータを仮定したものです。一番下の青線が、一般的な、ダミー抵抗負荷時の歪率特性で、マゼンタ色が、実際にスピーカーの両端に現れる、アンプの出力で、少し歪みが増えますが、緑色よりは、遙かに少なく、アンプの出力に忠実に従っています。しかし、線路中に、抵抗や、コイルが有ると、0.01Wぐらいから、歪率が上昇しています。フルレンジスピーカーや、マルチアンプシステムが、マゼンタ色の歪率に相当しますので、良いアンプであれば、それに確実に追従すると見ても良いでしょう。しかし、LCネットワークや、ケーブル抵抗が大きい場合は、低歪みアンプからでも、実際には、歪んだ入力が加わっています。但し、歪んだといっても、0.1%前後ですので、普通の音量では、大半の聴取者は、気付かないでしょう。スピーカー負荷では、実音を出しての測定であり、0.1Wを少し越えた所で、我慢の限界となりました。
コイル(含まれる抵抗分)や、直流抵抗は、低歪アンプの動作を妨げて、歪みが増えて、歪みの多いアンプと同じ動作になっています。SPだけを直接鳴らせば、歪率性能が音に反映します。ケーブルを替えて音を楽しむのは、アンプの性能どおり鳴ってからの方が良いかと思います。
ウーハー直列のコイルを取り去れば、同じスピーカーとは思えない、引き締まった低音に変貌しますが、同時に、中音の能率が高くなり、相対的に低域が少なく聞こえます。これを40Hz〜50Hzを補強する18インチクラスのサブウーハーで補完したら、リアルローサウンドの完成です。中高域のATTも無くすとクリアな音になります。4○○○シリーズなどは、もっと音が良くなります。
2019年 OPA1622 ヘッドホンアンプ MDR-CD900STで使用
自家用ヘッドホンアンプ(A社USBオーディオキャプチャ)の歪率特性
2019/02/09
USBオーディオキャプチャのヘッドホンアンプ部の特性は、思ったより、良くなかったという感想です。
そこで、自作A級アンプが、低雑音なので、ヘッドホンアンプとして使用できるか試験を行いました。音質的に、直列抵抗無しで接続しても、雑音は問題は有りませんでした。しかし、利得が大きすぎて、スピーカーとヘッドホンを切り換える度に、ボリュームを変えるのが煩わしくて、実用的でないという結論となりました。そこで、秋月の、TI OPA1622 DIP化モジュールを試してみました。利得0dBでの結果は、以下のようで、高性能OPアンプ並みの性能です。下はその歪み特性ですが、ケースに入れないで測定していますので、雑音が多めに測定されています。
2019/02/22
測定時の電源電圧は、±15Vで、負荷は、33Ωの抵抗で、直列抵抗無しです。残留雑音は、2.9μV(80kHzBW) 1.2μV(A)で、1mW出力時SN比93.5dB(80kBW) 100.3dB(A) IMD 0.0016%で、自作A級アンプに匹敵する性能です。
2019/02/09
左が、ヘッドホンアンプ用途のOPA1622で、右は、自作A級アンプ電圧増幅に使用したOPA1612です。両方とも、TI社 SoundPlusシリーズで、低雑音、低歪率です。OPA1622は、DAC直後の、電子ボリューム内へ組込ました。音源となるFX-AUDIO DAC-SQ5Jの0dBFS出力は、1.821Vで、ヘッドホンアンプの利得を0dBとすれば、電源電圧±5Vでの最大出力は、100mW(33Ω負荷)となり、適切な値です。モニター用ヘッドホンSONY MDR-CD900ST使用には、丁度良いものとなっています。OPA1622は、利得0dBのボルテージフォロアとしました。G=+1時は、オーバーシュートが出ますので、小容量のコンデンサを使用して補正しています。
スズメッキ線0.6φ 0.1μF積セラx2と100pFマイラーx2基板裏付け 電源±5V ユニバーサル基板 タカス IC-701-74 マルツで入手可(これより小さい基板も可) OPA1622の出力抵抗は、短絡保護回路が有るので、必要有りません。出力ジャックMJ-189LP(秋月購入)で、短絡しないことを確認済みです。出力回路に直列抵抗が必要なのは、600Ω負荷系のOPアンプであり、OPA1622は、特性表では、16Ω負荷容量600pFもドライブできるとなっており、ヘッドホンからの逆起電力をショーティングする為にも、抵抗無しでの使用が理想です。
OPアンプの音質比べが、8Pソケットで気軽に交換はできますが、そもそも600Ωぐらいでの使用を想定した物など、比較の対象にはなりません。OPA1622は、ヘッドホンアンプや、ラインドライバーとしての用途が設定されており、非常に高性能です。上のように簡単に作れてしまいますので、チャレンジしてみてください。電源は、安定化しなくても、2200μF程度の平滑コンデンサだけの物でも、ハム雑音は聞こえませんでした。
SONY MDR-CD900STの定格は、63Ω 106dB/mW ですが、OPA1622ヘッドホンアンプで、鳴らした場合、最小音が-115dBまで聞こえました。このアンプの運用レベル0dBは、1.82V(52.6mW at
63Ω 123.2dBSPL)ですので、8dB相当の音圧です。電圧的には、3.2μVで、ヘッドホンも耳も反応して、音として感知できました。電流ならば、50nAです。常用レベルは、-30dB未満(93dBSPL相当)で使用しています。OPA1622は、±2Vから使用できますので、エネループ単3電池2本づつの電源で動作させてみた結果は、それほど好ましくなく、±5V電源よりも、悪化しました。
スチロールコンデンサ復活
写真の100pFマイラーコンデンサは、一般には入手できなくなっていましたが、オーディオ特性の良好なスチロールコンデンサが秋月で入手可能になりました。47pF、100pF、470pFなどが1個\20です。OPアンプの位相補正には、お奨めです。
大振幅のオーディオ信号回路では、セラミックコンデンサでは、歪みが増加します。フィルムコンデンサで、この問題をクリアできますが、小容量品は、入手出来なくなっていました。早速47pF、100pF、470pFを在庫として入手しました。
dbx VENU360
dbx VENU360を、DCX2496の後継として使用開始しました。6連マスターボリュームと自作A級アンプとのトータルでの性能も申し分無く、オーディオレベルで十分使用可能です。デジタルは、AES/EBUにのみ対応ですので、インターフェースに注意します。出力レベルが、+4dBを選択できるので、デジタル0dBFSの信号を、そのままアナログパワーアンプに入力できます。DCX2496が、+22dBのままなので、18dBの開きがあり、DCXをオーディオで使うには、ノイズで悩まされる方が多かったと思います。平衡出力が少しシビアなので、必ず平衡で使用すると良いでしょう。平衡入力回路の抵抗値の誤差は、CMRRの劣化に直結しますので、厳密に選別してください。RTA機能がありますので、PCで、RTA画面を見ながら、WAVE
GENEで簡単に周波数特性が確認できます。コンデンサーマイクは、RTA-Aが推奨されています。手持ちのECM8000も使用できました。
共立エレショップ PGA2311PA+コントローラセット/CTRL2311 による 6連ボリューム製作 20連動も可!
バラックで、試験中 2019/12/16
プログラム済みのPIC12FとPGA2311PAのチップのみ販売し、サポートは一切無いという物で、ひょんな事で、相談を受け、6連化の方法を伝えておいたのが、結局、作ってみる事になりました。PGA2311は、電源が±5Vなので、制御範囲が、CDプレーヤーの出力と同じレベルで、無駄な信号の上げ下げを無くせます。雑音出力レベルも、TIの他のボリュームICと比べて低いので、高性能が期待できます。手持ちのdB直読式6連ボリュームは3台有りますが、コントロール基板が絶版なので、次回の製作では、何を使うのか思案中でしたが、図らずも、dBが読めないタイプの物で製作する事になりました。6連化は、それほど難しくなく、コントロール線3本を並列で接続するだけです。MUTEも同様に並列にすれば、連動が成立します。写真中央の基板は、PGA2311PA3個と、PIC12Fで、6連ボリュームを構成しています。右側は、6chの平衡−シングルエンドコンバータです。XLRコネクタで平衡入力した信号のレベルダウンと、不平衡への変換を行います。電子ボリュームの出力は、不平衡のまま、XLRコネクタで出力しています。平衡出力する場合は、SSM2142などのラインドライバーを使用しますが、+6dBのゲインがが有ります。SNの悪化も招きつつ、更に次段のパワーアンプで、平衡受けすれば、又SNが悪化します。ボリュームとパワーアンプ間が、100mも離れていれば、このような上げ下げもやむを得ませんが、ホームオーディオでは、離れても数m程度なので、ここは素直に不平衡ローインピーダンス送りで済ますのが最善です。
製作例として、平衡入力−平衡出力で、5WAYステレオ用で、実に20chを連動するという物も、完成したとの報告もいただきました。(令和2年3月)
このコントローラセットの仕上がり後のスペックは、PGA2311PAの定格と同じく、プラス側ゲインが+31.5dBなので、このままでは、オーバーレベルとなり、非常に使いにくい物になります。チャンネルデバイダーをDCX2496とした場合、デジMAXでは、+22dBの出力となり、+4dBのパワーアンプには、18dBオーバーです。さらに、常用音量は、-30〜40dB下がったところですので、適切なレベルセッティングが必要になります。その為、多回転半固定抵抗を付け加え、デジMAX時に、+4dBとなるように、ボリュームの可変範囲を制限しました。平衡シングルエンドコンバータで、-13dBダウンし、0dB信号でも、PGA2311PA内で、飽和しないようにしておき、更に、ボリュームの可変範囲を制限し、ボリュームMAX時パワーアンプの定格+4dBとしました。連続ボリュームなのですが、可変ステップは、0.5dB単位でした。ボリュームMIN時は、-103dBまで下がりました。同じく、PGA2311PAのMUTEを使用した場合は、-82dBでした。実用化にあたり、電源ON時のミューティングと、マニュアル操作でMUTEができるようにしています。停電時や、電源OFF時には、停電検出リレーにより、PGA2311PAにMUTEをかけています。
DCX2496を含めた、ch利得変動は、MAX時±0.03dB以内 THD+N 0.006% となっており、マルチアンプ駆動用としての精密さを備えています。常用域までVRを絞って、-37dBとした場合でも、0.17dBの範囲内という優秀さは、アナログボリュームの比ではありません。基板は、ユニバーサル基板で製作。電源は、ヤフオク入手。シールド線は、音響卓用 平河 HC-2L1を使用しました。シールド線の選定は、作りやすさや、信頼性に影響しますので、ヘンな音質論に惑わされない事が肝心です。入手先は、オヤイデです。2芯シールドは、手持ちのカナレL-2B2ATですが、平河 HC-2L2も用意しました。THD+N特性は、PCから96kHz24bit 1kHz -1dBをDCX2496に入力し、ボリューム出力でのオーバーオール 0.006%以下 ケースに入れていないバラック状態であり、ケースに入れると更に性能向上します。DCX2496は、デジMAXで、上側が少しクリップしますので、テスト信号は-1dBとしています。
回路図 pic12f01.pdfと、基板配置図 pic12f02.pdf を用意しました。ケースは、タカチ OS88-43-23SSを想定しましたが、機能、性能的に、これくらいの立派なケースに見合う価値が有ると思います。ケースのコストが全体の過半数になると思います。DCXユーザーは、この電子ボリュームが有ると、SNに優れたシステムを構築できます。VENU360ユーザーは、+4dB出力を選択し、同じ回路構成で、平衡シングルエンドコンバータの入力抵抗を、10kΩから2.2kΩに変更して、利得0dBで使用してください。製品の性能を最大のパフォーマンスで、パワーアンプに送り出す事ができます。
2022年
純A級アンプといえども、4chのように多chにすれば、クロストークにより音質劣化が生じる事を確認し、4chアンプを諦め、2chアンプに作り替えました。2017年より製作を開始しまして、4WAYマルチシステムを4chアンプ2台で駆動してきましたが、音源によっては、音質に不満が有り、他の解決すべき事柄も多くあり、問題の処置を先送りしていましたが、他の案件がほぼ落ち着いた事で、解明に乗り出し、2chアンプで置き換えた時の、音質の向上ぶりで、音質劣化の原因が、クロストークであるという結論を得ました。4chアンプは、スペース効率が良くて重宝していましたが、2chで構成した時の音質の良さには勝てず、4chを解体して、2chアンプに作り替えました。クロストークは、筐体中にパワーアンプ部を複数持つ場合の宿命であり、これから逃れるには、モノラルパワーアンプを使用する方法が最善の解決策でした。音質面については、録音の違いも関係するので、パワーアンプのクロストークが原因という確証を持つまでに5年を要しました。とはいえ、4WAYマルチシステムを全てモノラルパワーアンプとするには、更なるスペースの確保が必要という事と、自作に適した部品の入手が困難になった事により、2ch4台で、我慢となりました。
以上が今日までの流れです。現在は、優れたオーディオ解説をしているサイトが多くあり、私も、参考として読んでいます。しかし、何と言っても、考えの基礎となった、「オーディオの科学」には、本当にお世話になりました。オーディオの科学は、理論解説が豊富で、参考になります。現在、リンクフリーになっていますので、リンクしました。科学的に向き合わなければ、音という空気の物理現象が見えて来ないと思います。科学的に、正しく空気を動かす事により、音楽家の芸術に心地よく触れる事ができる筈です。
オーディオとオカルトが同義語になりそうなサイトも多々ありますが、頭ごなしに否定せず、簡単に実験できそうであれば、それらの主張を検証するようにしています。最新の科学情報を求め、You Tube動画を検索し、書籍も読んでいます。
宇宙論、量子力学、素粒子論、スピントロニクスなどにより、電線で音が変わるとか、振動の影響の有無とかのヒントを得ようとしました。真空の世界の解説からヒントを得たのが、NFBが有るからこそ、アンプとスピーカーの関係が良好に保たれる事です。ピュアから連想するのは、濁りがなく清廉である事でしょうが、発電機で、発電機を駆動するのだから、音が出ていなくても、騒がしい関係であり、それを制御するのが正攻法でピュアだという考え方となりました。対生成と対消滅のように、アンプとスピーカーの動的関係を考えました。最新の宇宙論は、宇宙は無から始まったとか、ダークエネルギーにダークマターなど、180億光年先は観測不能だとか、面白いです。
動画サイト、良い音と思えば時々コメントしていますが、消費者を騙そうとしているコンテンツは、コメント無しで、悪い評価だけをしています。明らかに勘違いしている場合は、気分を害しないようコメントで伝えています。動画で見るJAZZ喫茶さんのこだわりの音が、大切に扱われるアナログレコードにのその源が有るように、地方にも素晴らしい音の世界が有ります。老人が頑固で新しい物を受け付けないのではなく、価値のある新しい物が無いからでしょう。折角のコミュニケーションエリアなので、文化レベル向上に貢献していきたいと思います。
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理系人間の非営利日本語サイトです。オーディオファンが無用な投資と不安に陥らないように、メーカーや、販売業者のミスリードを防止する主旨で立ち上げています。過剰な文学的修飾を避け、科学的に実証可能である事を最優先としています。
ハイエンドアンプ1台分の予算で、それらを完全に凌駕できる、4WAYマルチアンプシステムが作れます。自作と、中古品活用で実現しましたが、結構な労力が必要で、それらを紹介しております。
アマチュアオーディオファンからサラリーマンオーディオエンジニアまで幅広く対応し、、正しい知識が継承できる事を願っています。 金のかからぬオーディオ発展の為に 2022年 著者。
データ提示で使用した測定器と測定仕様の紹介
1.デジタルマルチメーター(バッテリーにて機動的な測定)
Fluke社製89、189という2台のデジタルマルチメーターを用い、独自に開発したトレンドグラフソフト(初版2000年)で、測定結果のグラフを作成しています。周波数特性グラフは、250msec毎 480ポイント(2分間)実測値で20Hz〜20kHzを表しています。抵抗、インピーダンスは、通常の2線式測定では、測定リードの抵抗が、測定値に入ってしまい、1Ω以下が測定できませんので、2台の測定値(電流−電圧)をPCで計算させる4線式測定法にてmΩオーダーで行いました。1本の短い電線でも、インダクタンスや微少抵抗があり、巻き方でインダクタンスが変化します。4線式測定で、電線を測定すれば、電線が温度計として使用できるほどの精度となります。スピーカケーブル、リレー接点抵抗と音との関係を、このような高精度測定で分析しました。
自作差動アンプのCMRR向上を図る為、抵抗を選別する事が不可避ですが、#.####kΩという測定値は、その用途に最適です。最下位の桁が1違えば、1kΩの場合、0.01% で、精密抵抗の規格値に匹敵します。小数点以下第4位は、測定器の定格からみて、絶対値として、信頼ある数値ではありませんが、差動アンプでは、両極に同じ抵抗値を必要とし、測定器で数値が合えばOKです。コンデンサも、インピーダンス値と同じ直列抵抗を使用した交流電圧測定で、桁数の少ない容量レンジよりも、高精度な選別が可能です。
FLuke 89 189 289 測定リード先端短絡をした時の2線式測定によるメータ指示値 2008/05/28
安価なデジタルテスターとの違いは、AC電圧測定の周波数レンジで、フルーク89登場時の国産メーターは、強電用途であり、400Hz程度でした。オーディオ測定で、400Hz範囲のメーターが使えないかと言えば、十分使えます。測定周波数を1kHzに特化しないで、300Hz〜400Hzで、アンプ出力値を測定しても、何も問題にはなりません。440HzAの音は、音楽では重要な周波数で、一番音楽を代表しているのであり、1kHzは、10進法において、丁度であるだけの周波数に過ぎません。
測定結果表示グラフについて
測定値間を直線で結んで、時間経過を表すものと、測定値をドットだけで表示した、測定値分布を表すものとの2通りです。測定値は、メーターからのバイナリデータを、独自解析して、csv形式で保存し、現在も保管中です。メーター測定値は、実効値ですので、インピーダンスは、実効インピーダンスに非常に近い測定結果となります。測定結果を500回単位で分割し、それらを重ねて表示する事で、半導体の特性データー表なども、瞬時に表示できます。開発は2000年に行い、その後も、若干の改良を行っています。ソフトの意匠は、自由に使用しても構いません。開発意図は、1週間ぐらいの間にまれに起きる電気現象をとらえる事が目的でした。
2.HIOKI3237、3239、VP−7722A(ベンチ測定)
フルーク289は、交流電圧測定が、200μVになると、ソフトウェアで強制的にゼロ表示となり、微細な雑音測定に不向きで、不具合の無い 89 189は、現在、製造していません。測定システム維持する為、現行機種のHIOKI3237を入手し、テストを行い、オーディオ測定が可能であることを確認しました。早速ソフトウェアを改良し、40msecの高速測定をできるようにしました。データ要求は ":READ?" で、PCと同期して測定できます。さすがに高速測定であり、20Hzが1周期50msecなので、FASTでは、様々な測定値となってしまいます。FASTで安定するのは、300Hz以上で、300Hz以下は、MEDIUMでないとうまく測定できません。HIOKI 3239は、4W式抵抗測定ができ、最小単位は、1mΩです。アースポイント確認や、配線抵抗を実測と大活躍。
2015/05/03
オーディオアナライザVP-7722Aを、2015年にようやく、入手し、その恩恵にあずかれるようになりました。趣味で購入するには、金額もかかりますが、FFTだけでは、済まない部分もあり、オークションにて購入しました。歪率測定以外に、レベルメーターとして、0.1μVから読み取り可能で、アースポイントの確認など、自作アンプの調整にも威力を発揮できます。轟音ファンなので、ケース後部のファンを、少し回転数の少ない物と交換し、放熱口のネットの振動も止めて、リスニングルームでの測定が楽になりました。オーディオアナライザといえば、メーカー保守は、オーディオプレシジョン一色です。使用中のVP-7722Aの残留雑音は、Aフィルターで、0.8μV LPF30kHz 2.6μV LPF80kHz 2.8μVでした。なお、本来の使用目的以外にも、リレー劣化判断が、歪率計で、簡単に行えます。
ブリッジアンプ測定用の定格200W平衡ダミー抵抗 2015/11/19
メタルクラッド抵抗で、平衡/不平衡ダミーロードを作りました。赤白の電線は、バランスを取る為の電線で、13mΩを得ています。右上は、サーモIC(TC622)によるファン制御部で、40℃にて、MOS-FETをスイッチして、ファンを駆動します。右下は、リードリレーで、18dBのATTを構成しています。信号源の対称性は、高いCMRR(同相信号除去比)を目指す場合必須なので、測定できる最後の桁まで合わせます。測定レンジを伸ばす為に、18dBのアッテネーターが、シングルモード、ブリッジモードとも構成できるように、7個の抵抗で構成しています。2Ω50Wx2、1Ω25Wx3、0.5Ω25Wx2で構成し、シングル、ブリッジどちらのモードでも、7Ω対1Ω(-18dB)の関係が得られるようにしています。
自作した4線式測定ツール
100円ショップの樹脂製クランプを使用して、ケルビンブリッジを作り、従来から用いていたワニ口4線式測定コードとの、測定誤差を調べてみました。その結果、ケルビンブリッジにこだわらなくても、簡易的なワニ口4線式測定コードでも、十分な精度の測定が可能で、3239では、0.000Ωが表示されます。
2014/10/05
左側、自作ケルビンブリッジでは、電線を噛む力が弱く、実用的とはいえませんでした。右側、従来から使用しているワニ口4線式測定コードで、測定器側は、キャノン4Pで、ケーブルは4S6、ミヤマのミノムシクリップ(MJ002)の先端に、電線を2本半田付けし、電圧計と、電流計に接続します。ケーブルは、スピーカーケーブル4S6を使用しており、測定時の感触も良く、耐久性にも優れており、4Pキャノンを使用したことで、バナナプラグでは実現できない優れた接続性を持っています。半田付けは、2本まとめて、できるだけワニ口の先端で行います。半田付けは、圧着とは比べ物にならいないくらい、接触抵抗が低く、又、軟らかいので、すぐに、新しい面が露出し、測定誤差も少なくなります。測定システムにおける写真のコードの残留インピーダンスは、1.1mΩ(1kHz)、残留直流抵抗0.17mΩです。
このコードの意匠は自由にお使いください。mΩオーダーが自由に測定できると、配線に対する物の見方が変わると思います。リレーの接点抵抗は完全に捉えられます。測定電源を、交流とすれば、低いインピーダンスも測定できますので、電線のインダクタンス成分の分析もできます。
3.測定音源等
タイムアライメント(アライメントディレイとも言う)は、スピーカーから測定マイクまでの間で、正弦波が1個だけとなる間隔で1波トーンバースト音を出し、客観性が高くなるよう、オシロスコープ波形で調整します。これにより、SR用途のスピーカーの方が総じて、音の無くなり具合が良い事が判りました。各スピーカーの音圧バランスは、ピンクノイズではなく、楽器演奏と似ている、1オクターブ幅のワーブルトーンを使用しました。この方法は、低音域で変動が多い、ピンクノイズによる測定よりも、ワンオーダー高い精度が得られ、0.1dBの違いが意味を持つようになります。測定レンジが30kHzぐらいの交流電圧計であれば、使用可能です。グラフィックイコライザ用に1/3オクターブ幅のワーブルトーンも使ってみましたが、部屋の定常波の影響が出て、精度を上げる意味もなく、又、位相変化をデメリットと考え、イコライザを使用しなくなったので、1/3オクターブの方は使用していません。
要点:音のタイミング確認 トーンバースト波(1周期) 周波数特性 オクターブバンド幅にFM変調したワーブルトーン
トーンバースト波
WaveSpectraのお陰で、かなりの解析を行えるようになりましたし、手軽にオーディオキャプチャにて、FMや、アナログレコードの録音ができ、WaveGeneも、色々な測定の音源として活用できる時代が来ましたが、デジタル音源になり、過渡応答を見るために用いていた矩形波が出せなくなりました。そこで、デジタル音源から作り出せる代用波形として、デジタル音源ならではの、トーンバースト波に注目しました。波形は、正弦波なのに、ゼロからフルパワーになり、又、素早くゼロになるというところが、考えようによっては、スピーカー向きであると思えます。
WaveGeneでは、波の数と、間隔が指定でき、間隔をうまく指定すれば、スピーカーから、測定ポイントまで、ただ1波だけ存在するようになります。左右同時に出せば、等距離であるか否かが、簡単に判定できます。複数のスピーカーユニットからの距離合わせにも利用できます。
ワーブルトーン
スピーカーの周波数特性を求める際に使用しますが、定在波により、測定結果が影響を受けないようにできます。周波数が、いつも変化するのに、電圧が一定という信号です。マルチチャンネル駆動では、音のバランスが大切で、測定値がふらつくピンクノイズよりも、精密な調整に使用できます。
4.収音機材
測定マイクは、無指向性コンデンサマイクロホンが必要ですが、安価なECM8000を使用しました。これよりも、数10倍以上高価な、測定用マイクロホンと同じ測定現場にて、性能比較済みです。マイク用の増幅器は、利得誤差0.01dB以内の01V96V2というデジタルミキサーを使用。このマイクとミキサーを使い、WaveSpectraにて、低歪みの権化のようなTANNOYスピーカーを解析し、このような測定機材で、十分な結果が得られることを確認しています。
K&MショートブームSTにC2用ステレオペアアーム使用 2011/01/08
写真のように、ECM8000をリスニングルームに常設して、DEQ2496により、音量監視、RTAをいつでもできる態勢です。1/2カプセルで、無指向性コンデンサマイクであれば、高級品でも、1万円以下製品でも性能に大きな違いが無く、10年以上使用していますが、びっくりするような崩れた波形もなく、期待通りのツールとして活躍しています。ECM-8000 内部雑音は、価格なりですが、周波数特性などで、DPA等に劣る事は無く、オーディオマニアには十分な性能です。
DEQ2496 常設SPL測定とリアルタイムアナライザで徹底したデジベル値の管理
コンデンサマイクは、外部から直流電源(DC12V〜48V)を供給して使用します。この外部から供給する電源はファンタム電源と呼ばれ、ミキサーや、専用機のXLRコネクターからマイクへ接続すると、供給される仕組みです。
ECM8000は、デジタルミキサーYAMAHA 01V96V2により、増幅し、LEADER 8060 2現象オシロスコープにて波形観測を行いました。デジミキは、複数ch入力できますので、チャンネルデバイダー出力の合成結果の確認にも応用できます。
ミキサー 2005/09/28 2現象オシロスコープ 2015/06/17
5.波形で確認
百聞は一見にしかず 音響の事象で、良く当てはまります。スピーカーは耳で聞きますが、聴覚は、脳の働きと密接な関係にあり、心臓の鼓動や、血液の流れる音等の、体内音を消し去ってしまうほどの、脳の働きを考えると、個人の聞いた話は、個人差が大きく、客観性に乏しいと考えました。趣味としてのオーディオで、オシロスコープを駆使して、音を探求できる人も、それほどはいませんので、その代理として、多くの波形データーを撮影し、提示しています。音の波形は、アナログ2現象オシロスコープをデジカメで、直接撮影しています。RTA(リアルタイムアナライザ)は、常時使用し、再生帯域と音量を確認して聴くことにしています。
波形でしか判らない、ツイーター・スコーカー間の時間ズレの例 左がずれている状態で、右側が、整合している状態です。カメラのレンズが映り込んで見苦しいのですが、本当に撮影している証拠です。
2012/09/25
マルチチャンネルシステムは測定器抜きでは成立しません。より良い調整の為には、それらの取扱いを習熟する必要があります。最終確認はヒアリングであっても、そこに至るまでは、測定器による確認の集積があっての事です。
聴覚だけを過信して、高額なアクセサリー類に手を出さず、基本を固める為に、測定スキルを磨きましょう。ハイグレード電源ケーブル1本分の予算で、測定器を揃えてもおつりが来ます。
6.SN比、歪率、ACレベルの数値について
音響機器の性能を判定する場合、よく参考とするのが、SN比、歪率、入出力定格電圧と、インピーダンスです。パワーアンプでは、出力電力も重要な数値です。最近では、ダイナミックレンジも表示する例が多くなっています。
SN比
S=Siglnal N=Noiseの比をdBで表します。最大出力電圧(S)と、入力が無いときの残留雑音(N)との比を20xlog(比の値)とし、例えば、最大出力が1Vである機器の残留雑音が1μVであれば、SN比は、120dBとなります。音の大きさでは、120dBは、人が聴くことができる、最大音であり、最小可聴音は、0dBとしています。SN比が120dBの機器ならば、全ての音の強さを表現できると考えます。
人の聴覚は、低音域で聞こえにくいという特性があり、その感覚に似せた特性のAフィルターで、雑音を測定して、SN比を測定する方法が、カタログ値としては、主流のようです。騒音は、Aフィルター測定した値dB(A)が用いられますが、低周波騒音が問題とされるとき、Aフィルターによる、測定値では、騒音の絶対量が把握し難くなります。
最近のデジタル音響に関係した機器では、20Hzから20kHzを測定対象として、Aフィルターを使用し、20kHz以上は、AES17フィルター(24kHz-60dB)を併用します。純粋な可聴音に対する評価という定義ですが、当然ながら、デジタルマルチメーターによる測定結果とは、かなりの違いとなり、10dB以上数値が良くなります。
歪率
増幅器の性能表示で最も重視されます。この値が小さいほど、増幅器の性能が良いとされます。注意しなければならないのは、歪率とだけの表示で、純粋に高調波歪みだけを総合計した、全高調波歪みなのか、雑音を加えた歪率かがわかりません。雑音歪み率の場合、THD+Nと表記するのが一般的です。真空管アンプの場合は、全高調波歪みだけを表示する事が多く、歪率値が良い半導体アンプでは、THD+Nが多く用いられますが、SN比と同様に、フィルターをかけた測定が多く、フィルター条件を見なければ、数値同士の比較ができません。メーカー製品では、歪率でも、Aフィルター+AES17フィルターで表示している場合もあります。本サイトでは、20Hz〜100Hzのような超低域測定も多く、LPF80kHzで統一するようにしています。尚、歪率-100dB(0.001%)、SN比120dB越えが合格ラインで、製作目標と考えます。雑音や歪みに対する、基本的なスタンスは、聞こえない物は聞こえないです。
電圧値
本サイトでは、主に、フルーク社のデジタルマルチメーターを使用していますので、直流成分を除いた電圧の真の実効値であり、バンド幅(BW)は、100kHzです。オーディオアナライザーのレベル測定は、主にLPF80kHzを使用してます。オーディオ機器の雑音を表示する場合は、BWは、狭い方が数値が小さく、広い方が大きくなりますので、同じ測定を行っても、数値が異なります。メーカーの場合、雑音に関連した電圧値は、ほぼ例外なくAフィルターを使用しているようです。Aフィルターによる測定値は、本サイトでは、(A)を加えた表記としています。
ウェイト
音響測定時に、ウェイトをかけて測定しますが、上の説明中のAフィルターがそれに相当し、A、C、None等の3通りで、騒音量なら、Aフィルター、スピーカーレベルでは、Cフィルターが一般的です。マルチ調整では、Cあるいは、Noneで行うのが、正解です。
ウェイトに関して、本解説は、dBの後に(A)とか(C)と記載しています。
無視できない吸音材の効果 テーブルのスモークガラスの下は、同じサイズの2mm厚ビニルシートがあり、ガラスの振動を抑えています。(TVのブラウン管に共振して、変な音だった時の対策のなごり)
スピーカーとリスニングポジションの間のガラステーブルと、反射の影響を調べた、100円ショップ60cm四方のフェルト
遅れてやって来る反射音(右側の小さい波)
16kHzトーンバースト(テーブル面は、ガラストップのまま)と(60cm四方フェルトを置いた場合) 2014/10/13
スピーカーから直接来る音と、ガラス面で、反射した音で、反射音は、直接音よりも、遅れて来ますので、右側で観測されます。右側の写真は、テーブル面に、60cm四方のフエルトを置いた場合ですが、反射音が小さくなっています。僅か1.3mmの薄っぺらいフエルトで、これだけの差となります。スピーカーとリスナーの間には、何も無いのがベストですが、生活空間でもありますので、テーブル等を置くのですが、音が反射すると、こうした現象が起きます。ところで、16kHzのトーンバースト波がこのように、綺麗に再生できるのは、指向性が鋭いホーンスピーカーだからなせる技で、ドームスピーカーでは、反射波が乱立します。
スピーカー入力 接触抵抗 低減への改造 左のTRS入力部と、LCネットワークを取り外し、右側のように、スピコン入力としました。TRSでは、0.5Ω以上の接触抵抗になることもしばしばあり、スピコンでは、0.003Ω以下と安定しています。
TRS入力端子(オリジナル) 現在 スピコンに改造して使用 内部配線も4S6に変更 LF MF使用し、HFは、外部スピーカーを取付 2009/01/25
プロ音響定番アイテム スピコン
ノイトリック スピコン NL4FX 40Aという凄い電流定格値です。2009/03/03
家庭用コンセントが15Aまでなのに、この価格で40Aを扱えるというのは、凄いことで、Sound Reinforcement定番です。従来のXLRでは、使用できないような、太いケーブルが使用できるようになりました。対して、オーディオでは、旧態依然の緩みやすいネジ式大型ターミナルが用いられています。アンプ側が立派でも、スピーカー側が貧弱ですと、そこで知らぬ間に、緩んでしまいます。スピコンの接触抵抗は、3mΩ以下と優秀で、抜け止めのロック機構があります。
20017/12/13
スピコンのケーブル接続はネジ止めで行い、ポジドライブドライバー #1を使用しますが、ホームセンター \697 で入手できます。4S6は線径が細く、2本をよりあわせて接続しますが、4S8であれば、丁度良いサイズです。4S11まで使用可能。
NL-8は、8極で、SP4個まで接続が可能で、3WAYスピーカーを4S6 2本、4S8 1本で、DS700Zのマルチ化の実験をしました。 2011/03/11
3.11の午前中
この撮影は、東日本大震災が起きた日の、午前中11:50に撮影しました。午後も色々な実験をしていたのですが、いつもと違う長い揺れに見舞われ、早速TVスイッチONで、あとは、想像を絶する出来事の連続でした。
サラウンドにも対応した機器構成
高級品が全く無い、現在のオーディオラック内の機器です。4k液晶テレビを中心とし、左右に、センター用SPTOA F-150G(フルレンジ)と、M-H用A級パワーアンプを配置、上段、自作A級アンプ2台、下段中央、改造DCX2496 6chデジタル制御マスターボリューム、右に2WAYチャンネルデバイダー、左は、3段遅延式電源ディストリビュータPD-15、FMチューナーSA50ES。他に、SL-1200MKU+DL301U(MC)、自作LT1115使用MC専用RIAAイコライザー(MUTE付き)です。SRC2496 DEQ2496 DVDプレーヤーDV-578A AVアンプ RX-V771 アナログ音声切換用として、AU-α607NRAが有ります。AVアンプにより、7.1サラウンドにまで、正式に対応しています。電源ディストリビュータPD-15は、3系統x5個のコンセントを持ち、各系統ごとに、ノイズフィルターが内蔵されています。3段階で電源が入切りできるので、ショックノイズ防止もでき、システムの電源操作も簡単になります。赤外線リモコンに対応するように改造し、一度のリモコン操作で、10台ほどの機器全ての電源が入り、微妙なセッティングを保つことができます。
2022/09/24
通常1個の5.1サラウンド用センタースピーカーを2個配置
センタースピーカーは、従来は、TV直下に1個置いていたのですが、デジタル制御ボリュームの表示が見にくいので、写真のように、TVの両サイドにTOA
F-150Gを2個配置しました。この配置は、大型スクリーンを備えた、公共施設にも設置例が有り、特殊ではありません。センタースピーカー2個設置で、センタースピーカーとTV位置関係の諸問題が、一気に解決します。サブウーハーも、アクティブウーハー1個という固定概念に囚われず、フロントL,Rのローエンド強化という形で、18インチパッシブウーハーを2個設置しており、完全な左右対称配置ができています。サブウーハーチャンネルの音は、FL、FRの低域成分を抽出ミックスして作られていますので、大型ウーハーを使用して、本来の低音のまま再生すれば良く、サブウーハーチャンネルが無くても、バランスの良い、サウンドが楽しめます。機器構成のpdfはこちら 実体図 4way_av.pdf
スピーカーは発電機
逆起電力は、コイルに投入する電流を断続した場合に発生する電力で、ここで測定している雑音電力ではありません。コイルと磁石を持っているスピーカーは、それ自身が部屋で鳴っている音で、発電をしています。
音圧レベル 80dBのピンクノイズを鳴らして スピーカーの発電量 能率が90dB/W 国産12cm口径スピーカー(F-150)にて、8Ω負荷の電圧は、-55dBm(0.24μW相当)でした。このスピーカーを鳴らし、1m離れた場所が80dBとなるには、0.1Wの電力が必要です。この時の電圧値は0.89V(+1.2dBm)、発電電圧値-55dBmとの差は、-55-(+1.2)=56.2dBで、%で表すと、0.15%です。反射は、あらゆる場所で発生するので、三角波のような高い反射波も加わると考えられます。0.15% が無視できる量なのか、微妙なのですが、音質を繊細に捉える事ができる方ならば、考慮する要件となると思います。
12cmスピーカー 8Ω負荷(ピーク80dBの音楽中で測定した発電電圧) 測定器フルーク89W ACmV 2015/09/07
上と同じ条件で46cmウーハーをアンプに接続しておき、途中でアンプを通電してみました。通電時は、アンプで見事に雑音が吸収されています。アンプの内部抵抗が低くて、アンプ雑音が少ないほど有利です。
AU-α607XR パワーアンプ部(Xバランス)にて 2015/09/09
通電中は、およそ-65dBm(None Weight)で一定の値です。両端は、電源OFF時で、アンプ通電中は、-65dBm一定で、これがアンプの残留雑音の値です。アンプ動作中は、スピーカーの周りで音楽などが鳴らされていても、その雑音がスピーカー端子に現れないように抑制されている事が解ります。-65dBmという値は、アンプによって異なり、SN比が高いほど小さくなります。
自作A級パワーアンプでは、-87dBmまで低下 2018/01/25
残留雑音4μV(A)台の自作A級パワーアンプで、80dB(C)のピンクノイズ音場で、アンプ開放時-35dBm、アンプ接続時-77dBmと、AU-α607XRより良くなっています。ピンクノイズを鳴らさない時は、-87dBmとなっています。測定条件は、アンプ側4S6155cm+0.75SQ45cm〜測定ポイント〜4S82.45m+46cmウーハーで、ケーブル抵抗は、100mΩ 測定ポイント 38mΩで、スピコンなので、接続部が露出できませんので、中間部分での測定なので、-77dBmで、ピンクノイズで揺れています。アンプ出口では、無音時と同じ-87dBmぐらいと予想できます。シングルエンドアンプにもかかわらず、バランスアンプより、高い雑音抑圧ができています。高い雑音抑圧は、録音中の残響を、部屋の残響に乱されないで再生できるようになり、録音中のホールトーンが明瞭に聞こえるようになります。
定電圧駆動以外では、鳴らされた音による発電で、スピーカー端子電圧が揺さぶられますが、アンプの出力インピーダンスや、ケーブル抵抗がが高いほど多くなります。LCネットワークに、アッテネーターが付いた市販スピーカーも、同様の理由で、スピーカーには、様々な雑音電力が加わり、解像度はそれほど高くなりません。
ここで紹介した反射波による雑音電力は、原音に無い別の音楽表現をもたらします。この変化をオーディオ趣味として楽しめばきりがありません。これらの雑音を排除して、ひたすら高解像度を追求する、マルチアンプ駆動は別次元の音で、音源の良否判断も明解で、システムの音質変化への悩みも少なくなります。この雑音電力は、音の一次反射が、早い段階で起きるほど、強いエネルギーとなり、原音よりも時間が遅れた電力として、スピーカーに加わりますが、それらは、ルームエコーとミックスされ、目立たないだけで、存在します.。この環境に対し、低インピーダンス駆動できる、アンプを接続すると、雑音電圧値が小さくなり、スピーカーに加わる雑音電力が低下します。NFBのお陰で、入力信号に無い成分が、出力から逆送されても、アンプ自身の増幅力で、短絡されます。ゆえに、長いケーブルを接続すると、容量負荷や、雑音電力の為、アンプは、大いに働かなくてはならなくなり、かなり発熱することも有ります。建物に、ホール音響用アンプと、BOSE101を使用して、この発熱現象に悩まされ、後日、出力トランス付きで、出力帯域が狭い業務用ハイインピーダンスアンプに交換して、発熱を避けた実例もあります。
音以外のAM放送電波や、電灯線からの電磁誘導雑音もアンプONで消える
オーディオシステムに接続したSPの雑音(アンプOFF時) チューナーが無くてもAM放送がきれいに受信できています。 右は、アンプを通電した場合で、雑音量は増えますが、AM放送は消えます。録音は、UA-25EXで行いました。
雑音源:AM放送 送信所 5kW出力 距離4km 他に、8kHz〜10kHzを定期的にスキャンする正弦波雑音(電灯線が発生源) 休日は無く、平日の午前中に多く現れ、電磁雑音のみに反応するテレホンピックアップでも綺麗に拾えます。
オーディオシステム中の18インチウーハー単体の8Ω負荷への雑音 ここには、AM放送は現れません。ボイスコイルのインダクタンス分が効いて、高域でインピーダンスが上昇し、発電量が減ります。
2015/10/08
誘導 音を消すには、回路を短絡
インターネットでは、建築音響設備施工経験者の常識的トラブルが解説される事がほとんど無く、オーディオファンに至っては、無知といわれる現象があります。それは、工事会社の技術者が伝承する、誘導と呼ぶ現象で、工事(結線)ミスが起きると、スイッチ選択OFFの放送区域であっても、他のエリアで放送中の音が、かなりの大きさで鳴ります。アッテネーター(音量調整器 大 中 小 切り)で、OFFにしても、音が出ます。その原因は、100Vラインという、高電圧でスピーカーが駆動され、電力の高圧送電と同じ仕組みで、伝送損失を防ぎますが、電磁結合、静電結合などにより、放送をしていない系統の配線に、放送中の音が誘起されて、スピーカーから音が出るという事です。
その現象が起こらないよう、放送をしない区域の配線を、下図のように、アンプ側の回線SWで短絡しておいて、スピーカーに誘起される電圧をゼロにする事により、駆動電力を無くしています(電力=電圧x電流で電圧が0)。スピーカーと、アンプの間にある、閉ループでは、放送の内容に応じた電流が流れていますが、電圧をゼロにするので、電力が発生しないという原理です。スピーカーが100Vラインで駆動されていますので1W時で、10kΩのインピーダンスとなり、配線抵抗が少々有っても、選択スイッチで回線を短絡すれば、無音になります。
業務放送では、片切スイッチで開放せず、負荷から見てアンプ側が短絡で切りとしています。
ところが、ホール音響など、高忠実度な音響設備では、ローインピーダンス駆動なので、小さな抵抗値で、回路を短絡しないと、誘導による、駆動電力が発生します。ローインピーダンスとはいえ、100Wでは、約30Vという電圧となり、アンプの出力インピーダンスを十分に下げる必要があります。このような科学的に証明できる現象を防ぐ為には、放射ノイズの少ない4芯スピーカーケーブル0.1Ω以内使用と、出力インピーダンスが低いNFBのかかった高忠実度アンプを推奨します。音質が悪いNFBアンプが有るのは、事実であり、型番はメーカーの名誉の為に伏せておきますが、原因を探れば、NFB経路が無配慮でした。正しく製造されたアンプでは、このような劣化はなく、数値競争時、盛大に宣伝した製造メーカー自身が、NFBを否定するなどは、ミスリードと言えます。今日の半導体事情の為製造されているD級アンプでは、高周波雑音が、電線の間を飛びやすくなりますので、商業設備ではこの限りでは無いとしても、高忠実度が必要な設備では、遮蔽ケーブルを使うか、金属配管を施すかを行い、離隔にも注意した方が良く、無線設備と同等に考える方が良いでしょう。(遮蔽ケーブルのみでは、一旦トラブルが発生してしまうと、この手法のみでは、ノイズトラブルは防ぐ事ができないという事例もあります。)
マイクも同様
マイクのトークスイッチもマイク側で、信号回路を短絡しています。ここを、片切スイッチで開放にすると、アンプから盛大なハム雑音が出ます。トークスイッチの接点が接触不良にて、抵抗値が上昇すると、OFFにしても、完全に切れずに、音が送り出されます。このようなマイクに気付かず、おしゃべりをしていると、全館に放送されますので、ご注意ください。
DMMにて抵抗両端の誘導電圧を測定
デジタルマルチメーターは、テスターのような外観ですが、内部にアンプが有り、微少電圧も測定できますが、これで、抵抗両端の電圧を測定してみました。抵抗値は、1MΩと390Ωで、ACmVレンジです。結果は、35mV対0.053mV、抵抗値は、1MΩが、真空管、FETなどの電圧増幅素子、390Ωが、低雑音バイポーラOPアンプを意識しました。その差は56.4dBもありました。ハイインピーダンスな回路を、無防備にさらすと、ノイズ洪水になります。しかし、抵抗値さえ低ければ、そのような環境でも、ノイズの影響が少なくなります。FETのゲートは、ガードパターンを置いたり、アンプ全体をシールドすると良いでしょう。アンプケース全体が金属でシールドされていても、内部で拾っていては洒落になりません。内部で起きる誘導は、その信号が入力された時だけ発生しますので、測定の網には引っかかりにくいと思います。自作A級アンプでは、信号経路に、大きな抵抗を使用しないで、少しでも誘導雑音を避け、バイポーラOPアンプ入力としました。このアンプ入力は、同じくバイポーラOPアンプ出力による電子ボリュームでの低インピーダンス駆動とし、信号線でノイズが乗らないように配慮しています。
アンプ内部も同じ現象が
矩形波では、高周波成分が多いので、相当な量のクロストークが出ます(下側の波形) 2020/02/15
ステレオプリメインアンプで、上が片chに10kHz7.5Wの矩形波出力で、下が入力の無いもう一方のch出力です。入力の無いchの条件は、左が入力オープンで、右が入力に47Ωの抵抗を付けてショーティングした場合です。オープンは、真空管アンプのプレート出力、47ΩはOPアンプの出力と考えると良いかと思います。マランツタイプのPhonoEQアンプのように、カソードフォロア出力であれば、OPアンプに近くなります。
クロストーク量は、左が、29.5dBで、右が56.5dBその差は、27dBです。オープン時は、尖った波形で、47Ω時は、通常の逆相クロストークだけで、反射音と同じ成分です。悪く表現すると、左が、少々荒れた音で、右が無味乾燥で、良く表現すると、厚みのある音と、クリアな音というように、アンプを通過して、音質が変わる要素の一つとして考えると良いでしょう。このように、余計な音が加わらないようにするには、低いインピーダンスで送り出す事が重要です。
スピーカーの音質を悪化させる直流抵抗 コイルの直流抵抗やレベル調整用ボリューム
前出のLCネットワークで使用しているフェライトコアを使用した3.3mHのコイルの直流抵抗は、469mΩ、入力端子から直列になるコイルを通ってウーハの端子までの抵抗は、568.4mΩでした。アンプのダンピングファクターが300とした場合、スピーカーからアンプまでを、完全ゼロΩのスピーカーケーブルを使用しても、コイルの直流抵抗で、ダンピングファクターは、13.4以下となります。実際には、アンプまでのスピーカーケーブル抵抗(参考までに、現在使用している4S6 3.1mのケーブル抵抗は、片側で60mΩです)と、アンプ出力端子の接触抵抗、アンプ内部のミューティングリレーの接点接触抵抗10mΩ前後などの直流抵抗が付加されますので、ダンピングファクターは更に悪化します。又、より高級とされる空芯コイルでは、巻数が増えて、直流抵抗はもっと増加します。
このような直流抵抗が有った場合、アンプから音楽を鳴らしている最中でも、スピーカーの前で手を叩くと、マイクと同じく、手を叩いた雑音が観測できます。ところが、スピーカーをアンプ直結とすると、手を叩いた雑音は、かなり低い値となり、アンプ直結の場合、そのような雑音が発生しないように抑制される事がよく判ります。この状態が、アンプによるダンピングが効いている状態であり、真空管アンプでも半導体アンプでも、この制動効果が直流抵抗成分を含んだLCネットワークにより損なわれます。実際に、直流抵抗成分を含んだLCネットワーク経由では、ぼやけた低音で音量も多く感じられ、アンプ直結では、それより音階が低く、音量は少なく感じられます。人によっては、過制動といった表現で、この状態を批判するとは思いますが、定電圧駆動という理想状態であり、この状態で、スピーカーが最良の音質となるよう、スピーカー自身も開発されなければなりません。B&W社では、推奨スピーカーケーブルインピーダンス 0.1Ω以下 と規定しています。この値は、直流抵抗をつないでの実験結果からみても妥当であると思います。
下は実験機材です。SPケーブルは4S6を使用し、SPレベル調整用8Ω巻線型ボリューム(NOBLE ACRW403 定格8Ω)をスピーカーとアンプまでの間にある直流抵抗とみなし、スピーカー側(2番)とアンプ側(3番)の波形の違いを2現象オシロスコープで観測するという手法をとります。ケーブル長は、アンプまで2m、ボリュームからスピーカーまで75cmとしました。
この実験用ケーブルの直流抵抗の詳細は、測定コード残留抵抗0.56mΩを使用し、COM側(白−白)55.4mΩ HOT側(赤ー赤)94.2mΩ(VR MAX時) 7.19Ω(VR
MIN時) 測定コード残留抵抗は、55.4mΩの約1%で、メーターの測定誤差より小さく、無視できると思います。
2010/11/18
写真左はスピーカー用ボリューム(8Ω)と、ホーンスピーカーFOSTEX T90Aです。 その右は、フルレンジコーン型スピーカーTOA F-150G(下)と2WAYスピーカーTOA F-160G(上)、ホーンスコーカー ONKYO HM-450Aです。駆動アンプはAU-α607XRを使用しました。固定抵抗ではなく、ボリュームにしたのは、ネットワーク構成部品として、よく使用されるからです。それと、スピーカーと並列にボリュームの抵抗が入り、スピーカーで発生する逆起電力を逃す作用の度合いを確認する為です。
トランス式アッテネータの場合は、直列に入る抵抗が無いのですが、トランス巻線自体に直流抵抗があり、無視できません。アンプによる制動効果を期待するのなら、スピーカーアッテネーターを使用しないで、アンプ直結が良いでしょう。
スピーカー用アッテネーターは、アンプ側がきれいな波形でも、スピーカー端子側では崩れる
フルレンジコーン型F-150G 200Hz 上側の入力波形はきれいですが、下側のスピーカー端子側での波形は、正弦波がゼロになっても、制動不足のふらつきがあります。この測定は、抵抗があれば、簡単にできますので、波形を見ながら音を聞いてみてください。1個のボリュームの2番と3番でこんなにも波形が変わってしまう事に注目です。抵抗器は、直線素子で、本来ひずみの原因ではありませんが、スピーカーという発電機からの余計な電力を発生させてしまいます。片やアンプは、働き者なので、見事なまでに波形をキープ、ボリューム入力端子ではきれいな波形のままです。アンプとスピーカー直結のメリットは、ここにあります。直結にすると、NFBのかかったアンプが正しくスピーカーを定電圧駆動することになります。直流抵抗成分が多いLCネットワーク使用したマルチウェイスピーカーを、NFBのかかったアンプでも、正しく駆動できず、結果的に、特性の悪いアンプによる駆動と大差無いことになってしまいます。スピーカー1個に1台のアンプであれば、正しく駆動できるので、アンプの特性が良いほど原音に忠実となります。JBLの4344では、3個のアッテネーターが並んでおり、これを使わずに、マルチ駆動して、タイムアライメントを合わせれば、もっと高解像度な音が出る筈です。せっかく大金をかけても、安物と区別できない鳴り方になるのなら、ブランド信仰で満足するより、鳴らし方を改め、本来の音が出るようにするべきでしょう。
NFBは、音質を良くする為の正しい方法であり、アンプの音質論議で悪人扱いされ、冷や飯を食った時期があります。CDに収められた音楽ができあがるまで、どれほどNFBが利用されているか、現実を直視するべきでしょう。真面目に作られた90年代の普及価格帯のアンプの能力を出し切るには、スピーカー1個に1台のアンプを割当て、徹底した直流抵抗の低減に神経を注ぐべきでしょう。とはいっても、0.1Ω以内が目標値で、高価なスピーカーケーブルも必要ありません。1m/60円の4S6でも可能です。スピーカーの音質を意識されている方は、是非この実験を行ってください。10円もしない安い抵抗1本で音が呆けるのが確認できます。抵抗を無くすと、曇りのち晴れというように、音の鮮度が上がります。
2011/01/12 SP用8Ω巻線ボリューム
ボリューム位置真ん中における、F-150G 200Hzの波形と2現象オシロスコープ LEADER 8060
同じ、左、2WAYスピーカーF-160G 200Hzでは上のF-150Gと全く同じです。 真ん中は、ホーンスコーカー HM-450A 1.25kHz 少ないですがあります。右は、T90A 8kHz この中では、最小です。
フルレンジでも、2WAYでも、同じような波形が入力されます。コーンスピーカーだけに限らず、ホーンスピーカーでも同様です。アルニコ磁石のT90Aがふらつきが少ないのですが、ホーンツイーター
Beyma CP22 フェライト磁石でも、T90A同様の結果で、磁石による差ではない事は、解明しました。磁力は、電子のスピンで得られ、材質によって色が付いているわけでもないので、必要な磁束が有れば、アルニコでも、フェライトでも一向に構わないと思います。
2011/01/12
矩形波入力のSP端子側波形 フルレンジスピーカー F-150G入力端子の波形で、左が、8Ωボリューム最大です。
右が、SP用アッテネーターをセンターにした時で、矩形波の立ち上がりが取り残され、スピーカーの逆起電力による、ツノが現れてきます。このような場合、ジーという奇数次高調波は、同じ大きさで聞こえ、基本波の1kHz成分の音が弱く聞こえます。右は、同じアンプによる、抵抗負荷の波形です。
スピーカー実負荷 スピーカー用8Ωボリュームセンター時
駆動条件:アンプ SONY TA-F333ESJ(MOS-FET)で、オシロスコープの垂直感度は、固定です。
上と比較し、抵抗負荷でのアンプ出力はきれいです。
2014/03/31
直流抵抗は、スピーカーだけでなく、ヘッドホンでも、音質劣化を招く
プリメインアンプ ヘッドホン出力部
上図、オーディオ全盛期頃の、プリメインアンプのヘッドホン出力回路には、330Ωの直列抵抗が入り、適切な出力がヘッドホンに加わるようになっていました。同時に、アンプの残留雑音もこの抵抗で小さくでき、実用性を持たしていました。中には、この抵抗が入る事で、定電流駆動となり、音質が向上するとの、解説も有りました。定電流駆動は、周波数特性が変化するのみで、音質向上とは無関係です。周波数特性は、出力抵抗が増加するので、真空管アンプと同じ傾向の音、すなわち、ドンシャリとなります。ところで、ヘッドホンの磁石が小さいとはいっても、コイルも有り、逆起電力が発生すると見るのが、科学的でしょう。それが無視できるような小さなものか、影響を考える必要が有るのか、皆が議論だけで、実験を試みません。或る有名なサイトのコラム欄の議論も、影響は考えなくても良いような感じで議論が終わっていました。
実験に使用したのは、モニターヘッドホンの定番 SONY MDR-CD900STで、駆動アンプは、拙作純A級5Wアンプ、直列抵抗は、酸金330Ωです。
250Hz 抵抗有り 4kHz 抵抗有り 4kHz 直列抵抗なし 2018/11/26
250Hzは、上がアンプ側、下が330Ω後の、ヘッドホン入力波形です。4kHzも、同様ですが、スピーカーと同じく、直列抵抗の後は、細かな波が観測できます。一番右は、直列抵抗無しでの、ヘッドホンの端子電圧、上がL、下がRです。音量は、普通に聴ける大きさです。
結論は、ヘッドホンの磁石が小さくても、スピーカーと同じように、抵抗無しとしなければ、解像度の高い音は得られません。バランス駆動という4線引きの方法は、逆相クロストークを低減する効果は有りますが、逆相なので、波形歪みではなく、反射音として、音源に紛れ込みます。ハイエンドアンプに、フルバランス駆動が多くなった為の、あやかり商法と思いますが、ヘッドホンを改造してまでも行うメリットが有るのか疑問です。
ハイエンドアンプでは、あまりにも、大出力で、残留雑音も多く、ヘッドホンに生接続できません。上の、拙作5W純A級アンプならば、感度の高いホーンスピーカーでも、モニター用ヘッドホンでも、どちらも対応できますが、ボリューム操作がその都度必要です。そこで、TI Sound
PlusシリーズのOPA1622を0dBアンプとして使用した例を冒頭でご紹介しています。DIP化モジュールは、秋月で\700で入手できます。
直列抵抗が無いと、プラグ挿入時に短絡するとの懸念は無用です。秋月\90 6.3mmステレオジャック パネル絶縁型と、カナレF-15との組合せで実験の結果、ゆっくりと動かしても、短絡は確認できませんでした。どうしても不安ならば、音を小さくして抜き差しすれば、全く問題もなく、直列抵抗を入れない設計者を素人扱いするなどは、以ての外でしょう。 注:少なくとも、ネットで意見を述べるなら、人の噂ではなく、こんな簡単な実験ぐらいやってからにしましょう。
ワニ口コード、バナナプラグ類の1kHzインピーダンス実測値 黒変した電線ではインピーダンスが増加
色 | 抵抗値 | 修理後 |
---|---|---|
赤 | 30.8mΩ | − |
白 | 32.3mΩ | − |
黒 | 32.8mΩ | − |
緑 | 54.6mΩ | 31.4mΩ |
黄 | 32.3mΩ | − |
測定コード残留インピーダンス 0.92mΩ室温15℃ 測定平均値31.9mΩですが、色セット物の内、緑色だけが54.6mΩと極端に大きく、原因を調査したところ、表面が少し黒変した古い電線が使用されていました。修理は、新しい面が出るように目の細かいヤスリで磨いてから、ハンダ付けしました。
SPのバイワイヤリング接続の説明中によくある、バナナプラグによるジャンパ線や、ショートバー(KEF製)の抵抗値です。ジャンパ線を作るより、ショートバーの方が断然、抵抗が低いです。ショートバー、表面は金メッキですが、内部はニッケルメッキらしく、軽い磁性があります。電線は、2SQで約8cmの物を測定しました。とはいえ、バイワイヤリングのスピーカーは、ジャンパーを外して、2対のケーブルで接続するのが正解です。微妙な音質の違いを強調するなら、このような、バナナプラグを使用せず、スピーカーケーブル端子と直に接続する方が、異種金属の境界面を通り抜ける回数が減り、より良い音になる筈です。
アンプ内部の配線抵抗
スピーカーまでの直流抵抗の中に、アンプ内部の配線抵抗も含まれます。それでは具体的にどのような抵抗値が有るか、実際に測定できる機会を得た機種についての抵抗値。
LUX 真空管式パワーアンプ MQ60C 4Ω L 582.74mΩ R 592.53mΩ 8Ω L 788.02mΩ R 799.67mΩ 16Ω L 1.085Ω R 1.095Ω 大半がトランスの巻線抵抗です。
負荷となるスピーカーTOA F-150に 真空管アンプMQ60C(50CA10pp)による200Hzトーンバースト波形 と、スピーカー負荷時の周波数特性(比較用に抵抗負荷も表示)。
真空管式アンプのSP実負荷での周波数特性変化
真空管アンプは、トランス巻線全体から起電力が生じるので、どのような波形になるのか興味がありましたが、2.2Ωに近い波形となりました。結果より、巻線全体に生じる電力の内部抵抗は、0Ωのような特殊な数値をとらず、直流抵抗より、高い値で、インピーダンス値ほどではない値という結果と見なして良いでしょう。スピーカー実負荷時の周波数特性は、抵抗負荷特性がフラットでも、上図のように、スピーカーインピーダンスをトレースした、ドンシャリとなります。
SANSUI AU-α607NRA Lch A 70.6mΩ B 60.2mΩ Rch A 70.5mΩ B 71.1mΩ カタログ定格値ダンピングファクター150を実現するには、53.3mΩ以下が要求されますが、最良値でのDF値は、129という結果です。
SANSUI AU-α607XRでは、もう少し良い結果が得られ、カタログ値は満足しています。SONY ミニコンポ LBT-V710 平均 230mΩ それより配線経路の短い SONY ミニコンポ HCD-F3MD 69.7mΩ
デジタルチャンネルデバイダーを最高性能で使うには
アナログチャンネルデバイダーでは、コントロールアンプ(プリアンプ)のボリュームで音量調整をします。しかし、デジタルチャンネルデバイダーは、このような使用方法では、小音量ではギザギザの波形になります。これを避けるには、常にMAXとなるような入力が必要です。
CDなどのデジタル音源は、デジMAXまで出ていますので問題有りませんが、FMチューナーや、PHONO、サラウンドフロント信号などのアナログ音源では、0dB前後の音量ですので、更に20dB以上増幅しなければなりません。デジタルパッチベイSRC2496により、アナログとデジタル信号のレベルマッチングや、デジタルフォーマット変換が行えます。
マスターボリューム
これにより、常に最大音量で動作している、デジタルチャンネルデバイダー出力をどこかで所定の音量に下げないと、通常のリスニングができません。個々にアンプボリュームを調整しても、音量は変えられます。しかし、マルチアンプシステムでは、音量バランスも厳密な調整事項なので、一つでも音量が狂えば、命取りになります。その為に、6chバッファアンプ付マスターボリュームをチャンネルデバイダと6台のパワーアンプの間に使用しました。6連ボリュームを使用して、3WAY分を一気に音量調整できるというのがポイントです。
アルプス製モータードライブ6連ボリューム 現在、電即納では、取り扱っていませんので、入手不可です。電子ボリュームを使用してから、部品庫行きとなりました。2個在庫中です。
6連ボリュームにバッファアンプを取り付けたのは、減衰量を大きくする目的で、ボリューム抵抗値100kΩを選択しましたので、出力シールド線のキャパシタンスの影響を避けるのと、後続アンプ内部でのクロストーク特性悪化防止の為です。バッファアンプは、Q2031Aオリジナル RC2043SE による2次フィルターと、MUSEコンデンサで構成しました。
シールド線のキャパシタンスは、高域で6dB/octのフィルターを形成し、振幅の減衰と、位相ズレを起こします。100kΩのボリュームを絞り込んで使用した場合、プロ定番のマイクコード
L-4E6S 2mでは、370pFのキャパシタンスとなり、4.3kHz(-3dB)というフィルターを形成します。この結果、高域のレベル低下、位相ズレを招き、良く言えば、刺激の少ない音、悪く言えば呆けた音となります。17.2kHzで、-15dBですので、高齢者では、気が付かない可能性も有りますが、これでは、正しいシステムとは言えません。特に、左右で長さが均等でない場合、当然高域に行くに従い、左右の位相ズレを起こします。インピーダンスの高い回路では注意します。市販のRCAピンコードでは、左右等長なので、問題なく使用できます。
市販3mRCAピンコード 直列抵抗による高域特性劣化(入力インピーダンス47kΩ時)
このような高域劣化は、真空管や、FETによる、高インピーダンスで信号を受けても、改善されません。信号経路に高抵抗が入ると、様々な音質劣化の原因となります。
当然ですが、デジタル伝送では、1と0の文字情報を、、ケーブルによる高域劣化した信号を、レシーバー側でパルス整形して使用しますので、長距離の音声伝送でも情報の変化も無く安心です。なお、デジタルパワーアンプ出力は、文字情報ではなく、振幅情報ですので、高域劣化を否定できません。CDのデジタルの意味と、パワーアンプのデジタルの意味は全く異なります。動作原理上、スイッチング式パワーアンプか、パルスドライブ式パワーアンプと呼称すべきでしょう。最近のMJ誌の広告ページでも、PWMスイッチングアンプ搭載とか、スイッチング方式パワーアンプという名称を用いるメーカーもあり、良いと思うなら、姑息な紛らわしい名称を使用しなくても、堂々と原理を明快に謳うべきでしょう。
CDのようなデジタルソースは、0dBが上限です。マスターボリュームMAX位置で、パワーアンプのボリュームを絞り込んで、アンプの最大出力になるように調整します。こうすれば、CDの最大音でも、アンプ出力はクリップしないので、スピーカー破損の原因を減らす事ができます。この調整をシステム中で一番能率の低いスピーカーに行えば、他のスピーカーは、その能率差だけ低い入力電力が保証されますので、過大入力になりません。マスターボリュームで絞り込んだ量は、そのままシステムの余裕を表します。-31dBが常用レベルとすれば、あと31dB音量が上がるというように読みます。なお、常用レベルは、後述のデジタル制御式電子ボリュームでは、さらに解像度が上がりましたので、もっと低い-46dBでも、十分に聞こえるようになりました。ところで、DCX2496をデジMAX出力をした場合、1kHzでは何も問題なく出力できていますが、100Hzでは、上側がクリップ(DAC以降2段目のOPアンプにて)しており、LOWchの設定を-0.2dBとしたら治まりました。デジタル機では、このような確認をしておかないと、理論と一致しない部分に気付きません。DCXユーザーは、LOWchの場合、0dBではなく、必ず-0.2dBより下げて使用する事が鉄則です。デジMAXまできっちり録音しているCDもPOPS系を中心に多く有り、カーステレオなどで再生すると歪んで聞こえます。こうなると手に負えないので、-0.3dB程度レベルダウンしてCD-Rとして作り直す事も検討に値します。
CDなどのデジタル音源を、デジタル的なボリューム処理をすると、ビット落ちして、ギザギザが目立つ波形になり、必ずアナログ化をフルビットで行い、パワーアンプの前で、所定の音量を得ると良いでしょう。そうすれば、96dBしかないCDのダイナミックレンジを確保したまま音を小さくできます。
デジタル機とアナログ機のSN関係図
上図は、アナログとデジタルチャンネルデバイダーの残留雑音と最大出力の関係ですが、ボリュームを最小音から上げて、右回りで、所定の音量とするのなら、アナログ機の方が 84dB-60dB=24dB
もSNが良くなります。デジタル機をこのような使い方をすれば、当然24dBもSNが悪化した状態となり、DCXユーザーによる悪い評価は、こうした使用法であると思われます。ところが、デジタル機でも出力側で、ボリュームを最大側から下げて(左回り)所定の音量とするのなら、82dBという高いSN比を保った使用できます。アナログ機の場合、入力でボリュームを絞りますので、後続機器自体の雑音はそのまま残り、絞った分だけSNが悪化します。特に古い民生用パワーアンプでは、利得が高いので、ボリューム以降にチャンネルデバイダーや、イコライザを経由する場合、雑音に注意しなければなりません。
さらに高性能を目指して電子ボリュームICによる、デジタル制御6chマスターボリュームを製作
使用した、電子ボリュームIC テキサス PGA2311PA 実装時の周波数特性は、DC〜1MHzまでフラットです。デジタルマルチメーターの測定範囲を越えてフラットである事はオシロスコープで確認できます。100kHz矩形波も怪しい波形崩れは無く、減衰特性、クロストーク特性とも非の打ち所が有りません。さらに、出力は、OPアンプ出力と同等ですので、発振防止で入れる出力抵抗47Ωのみとなり、パワーアンプまでのシールド線による高域劣化が非常に少なく、後続パワーアンプ本体内部でのクロストーク軽減効果もあります。
20111/09/05
クロストークが多かったアナログボリューム(矩形波入れてVR絞れば、誰でも観測できます)
電子ボリューム製作時に、アナログボリュームとクロストーク比較を行い、アナログボリューム内部で、かなりの量のクロストークが発生することに気付きました。電子ボリュームでは、クロストークが圧倒的に少なく、-40dB以下の音量でも、クリアな定位が得られます。その結果、強い音はより強く、弱い音はより弱く聞こえ、レコード中の残響がより豊かに聞こえるようになりました。スピーカーの音質が、録音ソースの音質に、より依存するようになり、楽器が本来持つ美しい音、特に帯域が広くて、立ち上がりが急な楽器の音が美しくリアルに聞こえるようになりました。又、演奏の副産物である演奏家の息づかい、ペダルやバルブの操作音、バイオリンの弓の弾み加減なども、CDの16ビット2chステレオで十分味わえるようになりました。アンプのクロストークにあれだけこだわっておきながら、ボリューム内部のクロストークにまで踏み込めなかったのですが、問題が複数ある時は、ステップバイステップでしか解決ができないという事でしょう。クロストークの低減以外にも、電子ボリュームでは、ゲインエラーが±0.05dBと極めて優秀で、多連ボリュームのような、実用音量域での制御の曖昧さは、ありません。高域成分が多い矩形波も、きれいに伝送します。最近、電子ボリューム搭載の高級プリアンプ(コントロールアンプ)なども登場してきましたので、メーカーの技術陣も、良い方向性を持ってきたと感じています。
電子ボリューム歪率周波数特性
2015/05/20
デジタル制御6chマスターボリューム 歪率−周波数特性で、-20dBと絞り込んでも87dBを確保しており、これで、出力インピーダンス47Ωなので、後続のパワーアンプの入力回路で発生するクロストークには有利です。
後続のパワーアンプ回路にて、直列に大きな抵抗が入っている場合、電子VR出力波形にノッチ歪みが発生する可能性があります。応用回路を試作していた時、見慣れぬ波形があり、追求してみたところ、下記のような回路構成の場合、ノッチ歪みが現れました。
2015/05/22
写真の信号周波数は10kHzですが、ほぼ全部の帯域で確認できます。絞り量は、50dBです。負荷として抵抗と可変抵抗器を組み合わせた回路ですが、入力が可変できる機器では、このような回路が入っています。直列抵抗が47Ω(図の4.7kΩの百分の一)だけの場合は発生しませんでした。やはり、信号源抵抗が大きくなった場合は、浮遊容量による高域劣化以外に、色々な雑音に注意しなければならないでしょう。
ミューティングリレー(パワーアンプ)の実態 オーディオ信号は微少電流であり、リレーはこれが苦手です。
アンプには、ON-OFF時にスピーカーを保護するようにミューティングリレーが使用されています。ジャンク品で購入したYAMAHA MX-55の場合、このリレーが接触不良を起こし、時々音が途切れたり、高音が妙に汚い音がでるので、調査したところ、信号が1dBほどこのリレー接点を通過する際に失われていました。リレーの型番は、OMRON
G5R-2232P で現在は入手不可です。もう1台の手持ちアンプ SONY TA-F333ESJにも同じリレーが使用されており、接触抵抗を測定したら、スピーカーA側は、いつも負荷があるので、10mΩでしたが、使用していないB側は、50mΩと高い結果でした。そこでB側に8Ωのダミー抵抗を接続し、大電流が流れるようフルパワーでリレー接点を断続したところ、接点がリフレッシュされ、15mΩまで下がりました。下は、左側が、現在入手可能なG2Rタイプの直流接点抵抗で7mΩぐらいです。MX-55で故障状態だったリレーは、短時間に接触抵抗が変化して安定しません。右側は、オーディオ帯域のリレー接点インピーダンスで上2本は、古品G5R-2232Pで、下2本が新品G2R-2-Sで、それぞれ、インピーダンスが低い方が電流を多く流した測定値です。新品リレーでは、高域でインダクタンス分によるインピーダンス上昇が見られます。
リレー接点は、微少電流が苦手です。最大定格電流4Aよりも、10Aの物が良い物と思いがちですが、それは間違いです。実際に動作している電流は、このスピーカーシステムの場合、0.1Wで94dBぐらいの音量ですので、負荷が8Ωとした場合、112mA以上流れる事はなく、実音量がそれよりも20dB低いとしたら、11.2mAという低電流となり、大音量で使用しなければ、低電流に起因する故障が起きやすくなります。リレーメーカーOMRONのホームページで調べたG2Rタイプ銀接点データでは、故障率 P水準(参考値)にて、定格10Aの物で、DC5V100mA、定格5Aの物で、DC5V10mAと10倍の開きがあります。オーディオ用途では、安定した電流値で使用できることがなく、微少電流から大電流まで幅広く対応しなければならないので、リレー選択は難しい事となります。下の測定グラフのG2R-2-Sにおいても、新品測定時は問題無かったのですが、YAMAHA MX-55に実装して間もなく、接触不良に悩まされるようになってしまいました。やはり銀接点では、開閉時に火花が出るような電流で使用しないと接触抵抗が安定しないようです。古いアンプで電源投入直後にうまく音が出ないで、その後ボリュームを上げると正常に動作する物は、このように、ミューティングリレーを交換すると良いでしょう。古いリレーでは、リフレッシュして、一時的に接触抵抗が低下しても、すぐに、抵抗値が上昇してきますので、新品のリレーに交換する必要があります。
リレー接点インピーダンス特性 右側は、上2本が不良品リレーの接点インピーダンス 下2本は良品の特性です。
ケーブルで迷ったら、おすすめはプロオーディオの定番 カナレ4S6です。ケーブルに印刷してある、MADE IN JAPANが、最近頼もしく思えてくるようになりました。100m巻を6,000円で購入しました。部屋が大きく3m以上のケーブル長であれば、1サイズ太い4S8もあります。音響ホールでは、さらに太い、4S11を使用する場合もあります。他社のスピーカーケーブルとの大きな違いは、4芯構造なので、放射ノイズを出しにくいという点です。これにより、並行する入力系の信号線に悪影響を及ぼさなくし、結果的に、システム全体の音質が良くなります。カナレ電気カタログcanare_201206.pdf中に、スピーカーケーブルの使用方法があり、理想的な配線が行えない設備用途において、ダンピングファクター20〜50を推奨し、同社のケーブルの該当する長さが記載されていますので、プロ音響業務に携わる方は是非ご覧ください。4S6 3.7Ω/100m DF50=3m、4S8
1.5Ω/100m DF50=7.3m、4S11 0.87Ω/100m DF50=12.6mというのが主な数値です(パワーアンプ 0.05Ω
DF=160 at 8Ωの場合)。
静電容量も、カタログに記載されていますので、参考までに、4S6 125pF/m 4S8 145pF/mです。参考資料 canare_201206pdf。
最近、4本のうちの1本だけ、純白のケーブル被覆が、直射日光で劣化して、硬化ひび割れする事が解りました。OP線を屋外で使用した場合と同じ劣化をしました。日の当たらない黒ビニルの中では劣化していませんでしたので、先端だけを切って、使用しています。
SPケーブルのインダクタンス特性
4S6の実物(約20m)と、インダクタンスキャンセルのグラフ 高域でインピーダンスが上昇している方が、片線だけの場合です。上昇していない方が、ペアで正しく使用した場合です。写真のように巻き込んだ状態で測定
(2009/07/23)
4本線の一般的な使い方は赤と薄赤をよじって1本の線とみなして+側とし、もう一方は白とクリアをよじって−側とします。スピコンで使用する場合、4S8以上がメーカーにより推奨されていますが、4S6でも4S8でも、ドライバーで確実にネジを締め付けないと推奨の意味が無いので、業界関係者はご注意下さい。上のケーブルの直流抵抗は、片道0.307Ωで、巻いてあるのでインダクタンスが増加して15.2〜15.6μH/mですが、赤白を行き帰りで使用すれば、インダクタンス分は可聴帯域内では、ほぼキャンセルされてゼロになります。片方の線だけ使用すると、10kHzでは、7.5Ωのインピーダンス値ですが、往復(ペア)で使用すると、0.67Ωとなり、キャンセル効果が重要であることがわかります。インダクタンスが多い状態(片線だけ使用とか)で接続した場合、4S6を使用しても高音の入力電力が、半分に落ちます。
B&W社のオーナーズマニュアル(CM1-5_Manual.pdf)でも、超高域での減衰を避ける為にローインダクタンスのケーブルを使用してくださいとあり、メーカーとして、適切な見識を持っている事が判ります。その他にも、スピーカーに関連する記述があり、参考になりますので、一度読んでみると良いでしょう。
4芯スピーカーケーブルの音が悪いか?
スピーカーケーブルの音質をかなり高度な、技術的解説で論じているサイトがあり、音楽信号が正負非対称なので、4芯構造のスピーカーケーブルの2本で音を鳴らし、他の2本に直流電流を流すと音が激変するとあり、再現実験をしてみました。
2015/01/02
その説明では、DCの電圧はDC1V〜180Vで、電流が0.5mAから音が変化を始め、100mAでは激変するという記述なのですが、その条件を満たすように、上の実験装置を作りテストを行いました。DC電源は、アルカリ電池2本でおよそ3Vの電圧です。電池ケースは、タミヤ模型製で、電源の極性が変えられます。写真の+とマジック書きした方にレバーを倒すと、オレンジの配線に+の電圧が出ます。電流制限抵抗と、直流電流計をセットし、スピーカーの音を出しながら、直流を流してみました。10Ωの抵抗をを使用したとき、回路電流は、210mA流れました。試聴曲は、「夜霧のしのび逢い」で、ギターでは、超有名な曲です。普段からギターを演奏していますので、音の違いがわかりやすいという理由で選曲しました。結果は、正負共に変化なしでした。当然ですが、0.5mAから変化が始まるという記述に基づき用意した4.7kΩでのテストは、必要有りませんでした。次いで、1kHz矩形波、トーンバースト波をアンプから出して、オシロスコープで、スピーカーの端子の電圧を観測して見ましたが、直流電流印加による、波形変化は有りませんでした。ケーブルは、4S6 2.05m 電流計は、フルーク189、スピーカーは、TOA F-160で、一般的な2WAYです。
結論:4芯ケーブルが、直流の影響で音質が変化する事は有りません
スピーカーケーブル音質論は、諸説有りで、加えて、特許を交え複雑な様相を見せていますが、日常的に、電線に触れて、音響業務を行っていますが、大半が、オームの法則による、変化のみが検知されます。すなわち、アンプがフラットで送り出したとしても、スピーカー端子では、周波数特性が変化し、ケーブルが長いほど、特性変化量が大きくなり、インダクタンスキャンセルを怠ると、スピーカー音がハイ下がりになる事は、事実としてあり、ケーブル長が左右で極端に違う使用方法では、ステレオ再生に有害な位相差が生まれます。音響機器自体も左右のアンバランスがあり、程度問題なので、1mmでも違えば駄目とかという事ではありません。許容範囲は、かなり広いと思いますが、電線の銅純度を気にされるようなハイレベルな方ならば、10%以内の誤差にはと思います。
アナログレコード復権
CDよりも古くから有るハイレゾ音源ですが、取扱いが雑ですと、すぐに針音だらけになりますが、丁寧に扱えば、何10年経っても、実用に耐えます。ハイレゾ対応能力は、手持ちMC型レコードカートリッジ DL-301Uの再生周波数特性は、20Hz〜60kHzであり、CD−4方式レコードの30kHzのキャリアを楽々と再生できます。CDでは、100dBぐらいが音量限界ですが、アナログレコードでは、110dBでも平気で上げられ、大音量再生が可能で、まさにディスコの主役です。CDでもスクラッチができますが、やはり、アナログレコードの方が、DJの感性に合います。
現在は、新作のLPが、\4,000ぐらいで入手が可能で、又、レコードプレーヤーの老舗、Technicsも、受注生産ながら、定価160万円のプレーヤーも、発売されました。さすがに、この値段には、手も足も出ません。庶民は、中古のSL1200MKUが精一杯です。朗報として、SL1200MK7が、価格も、今のオーディオ界の常識からすれば、圧倒的に低価格な\90,000(税抜き)で発売されました。ハイエンド製品も、エソテリックから700万円というプレーヤーが発売され、新次元のドライブ方式で、ハイエンドマニアなら、見逃せない製品でしょう。
アナログレコードプレーヤーのネット広告
LUX、YAMAHAの100万円級アナログレコードプレーヤー広告が有りました。塩ビ盤再生に、これだけの価値を認めたのでしょう。庶民には、手の届かない価格に思われます。億越えの1戸建てのリスニングルームなら鎮座しそうです。年金暮らしともなると、NHK-FMでなるべく代用しようと思っています。
リアルタイムアナライザーで確認できる、自然に近いアナログレコードの音
同じ曲でも、アナログレコードとCDでは、高音域のエネルギーが異なっており、CDでは高域までフラットですが、同じ曲のアナログレコードでは、ピンクノイズのように、高域では、なだらかに下がっていき、自然の音に近くなる結果となります。スタジオ録音では、高域までフラットなレコードが多く製作されます。トライアングル、シンバルなどの金属製打楽器では、同じ曲であれば、アナログレコードの方が、透き通った音で、CDでは、滲んだ音という違いがあります。低音の歪みは、CDの方がが少ないのですが、アナログレコードでは、豊かな低音です。一部のオーディオマニアから絶賛の真空管アンプの音は、アナログレコードに近い音です。CDでは、こういった音が少ないのですが、96kHz24ビットのデジタル音源になると、アナログレコードに近づき、締まった低音+澄んだ高音と、理想に近い音となります。20kHz超の超音波がレコードから再生されるので、音が良いとする、ハイレゾ周波数ドメイン信仰者さんには、申し訳ありませんが、聞こえない音は聞こえなくて良いと思います。
アナログレコードを聴くなら、以下のアイテムが有れば、十分です。
タ−ンテーブルは、往年の名器 Technics SL-1200MK2で、まだ動きます。カートリッジは、MM型 270C-U VM型 AT15Ea、AT10G 等と、写真のMC型 DL-301Uを使用しています。アンプ性能や、カートリッジの音質で、各種選択できます。スタティックバランス式トーンアームなので、水平器も有ると安心で、ホームセンターで入手しました。レコード盤のメンテナンスは、新品レコードには、ナガオカ Stat-Ban
562とアルジャントを使用し、一般的なレコードには、テクニカ AT6086 AT6017+AT634で行っています。
ナガオカ Stat-Ban 562は、レコードの高寿命化に貢献できます。新品レコードは、すぐに埃を吸い寄せますので、初期メンテナンスは確実に行っておきましょう。
MM型とMC型
カートリッジには、MM型とMC型が有り、それぞれの違いは、WEB検索すれば、図解付きで、詳しく解説されています。そして、結論的に、MM型は、出力が大きく、針交換も簡単で、初心者でも使いやすい。MC型は、出力が小さく、昇圧トランスか、ヘッドアンプが必要で、針交換は、メーカー出しで、使いにくいが、音は良いとなっています。これらの結論は、正しいと思いますし、このようなイメージで良いと思います。
しかし、総発電量を電力で見た場合は、MC型の方が、発電量が大きくなります。数値は、MM型の代表 V-15は、内部インピーダンス1,350Ω3.5mV MC型 SPU-G 2Ω 0.2mVで、出力電力は、V-15が0.009μW SPU-Gが0.02μWで、MM型の2.2倍の出力電力です。電圧増幅だけで考えれば、確かにMM型有利ですが、電力で優るMC型は、MM型の応用ではなく、その特質を活かした回路設計をすると更に性能が向上する余地が有ると思います。
MC専用フォノイコライザー製作
2017年には、マルチ駆動スピーカーシステムは、完成域に達し、システム改良案も出尽くしました。Spice関連の勉強を進めながら、ふとRIAAイコライザー回路の位相特性が気になり、シミュレーションをしてみると、激しく位相が変化するという結果が得られました。可聴帯域で±20dBも利得変化すれば、当然、位相も激しく変化しますので、偏差を小さくする必要があります。フォノイコライザーには、SN、歪率、イコライザー偏差、LRバランスのどの項目が欠けても良くなく、製作テーマとしては、大変ハードルが高い物です。
試しに、自家用機(M5220L使用)MC-MM切換式のRIAA偏差と左右の感度差を測定しました。RIAA偏差は、+0.2dB 〜 0dB 〜 +0.3dBのドンシャリ傾向で、左右の感度偏差は±0.1dB以下と大変優秀でした。基板を読み、回路図にしてみた結果も、非の打ち所がない設計でしたので、問題なく、このまま使用できます。
色々と、先人の研究を見たり、ゼロバイアスのFETヘッドアンプの試作や、Spice上での回路の検討などを進め、最近の低雑音OPアンプによる、MC専用イコライザーを製作する事とし、部品の入手などの検討を行っていた所、ヤフオクで、LTのOPアンプ用基板が目に止まり、これで、製作を開始する事にしました。LT1115は、0〜400Ωの信号源抵抗での、ベストOPアンプとして、LT社より推奨されており、MCカートリッジには、良い選択でもあります。何よりも、LT推奨回路のプリント基板が実際に入手できるというのは、大いに製作意欲が湧くところです。
入手したLT1115用基板の解説ページは http://cat0048.my.coocan.jp/index.htm です。EQ定数は、入手しやすさを考慮して変更しました。
完成した基板と選別中のEQ回路部品 2017/05/12
DENONテストレコード OW-7401-ND 1kHz 5cm/sec DL-301U にて、216.82mV 残留雑音 41.8μV(A) SN
74.3dB(A) EQ偏差±0.1dB以内 参考までに、AU-α607NRAでは、利得が低く117.63mV 感度差 5.3dBでした。
スルーホール基板ですので、部品の安易な付け替えはできません。故に、EQ素子は、外付けで、十分に確認を取らないと失敗します。
ところで、MCカートリッジの場合、負荷抵抗は、100Ω、負荷容量は、1000pF+(カートリッジ内部インピーダンス33Ω)が定番で、周波数特性の変化には、鈍感です。
しかしMMカートリッジの場合は、指定容量が、100〜450pFまであり、迷います。更に、負荷容量と、周波数特性が密接に関係すると言うことで、EQ側で備える、コンデンサ容量に対して、シビアな選択が要求されます。
カートリッジから見た、負荷容量は、カートリッジリード線、トーンアーム内部配線、出力シールドピンプラグまでの容量と、基板に実装されたコンデンサ容量との合計となります。各所のホームページでは、ヒアリングで決めるとする所が多く有りましたが、如何にも、オーディオそうろうで、不確実です。最低でも、プレーヤーからアンプ入り口までの容量は、既知の値なので、ネット上で探しましたが、見あたりませんでした。そこで、実際に、自家用機で測定しました。測定結果 Technics SL-1200MK2 約103pF MMカートリッジを最適に使用する場合の参考としてしてください。
RIAA偏差を究極まで追求すると、温度ドリフトに悩まされ、0.02dBの壁を感じました。もう少しこだわるので有れば、恒温漕が必要となり、常温環境では0.02dBが、限界でしょう。これとは別に、MMとMCポジションでは、同じEQ素子であっても、偏差が異なり、SW切換による、兼用ではなく、MC専用としました。
A級アンプに続き、EQアンプも完成 EQ用ケースは、廉価なYM350にしました。とはいえ、使用部品に妥協は有りません。電源SWは、レバーロック形 照光式SWは、IDEC AL6H-A14R、
RCA TOMOCA C60、ITT XLR-3-32等を使用しました。
2018/06/11
EQアンプは、MUTE機能を充実させました。電源ON-OFF時は、自動でMUTEがかかります。手動にも対応していますので、針の上げ下ろしのショックノイズをMUTEできます。入力はプレーヤに合致したRCAピンプラグで入力し、出力は、不平衡ですが、接触不良の少ないXLRコネクタを使用しました。MUTEは、Panasonic TX2-24リレーで、出力のLPF回路に抵抗が入っているので、その出力側をリレー接点でアースに短絡しており、再生信号が通過しないので、音質劣化しません。電源トランスは、電源検出用を追加して、2個、立ち上げ時のMUTE時間は、8秒です。 MUTE回路図 eq_mute.pdf
内部写真 ノイズフィルター付き3P電源インレット、2個の電源トランス、ミューティングリレー等が有ります。
MC用RIAA-EQは、入力インピーダンスが低いので、偏差測定は、600Ωがターゲットの発振器では使用できない事があります。
2018/06/11
LR偏差 ±0.02dBとなりましたので、左右の位相差も極めて少なくなりました。RIAA偏差は、30Hz〜30kHzで、±0.1dB以内なので、ハイエンド機と遜色有りません。マークレビンソンを測定しましたが、やはり高い精度でした。ステレオ機なので、左右のレベル差=位相差となり、そのまま音質に影響が有り、RIAAイコライザーでは、この点にも注意すべきでしょう。
測定器リスト
コンデンサマイク ECM8000 マイクスタンド K&M 21020 25500B
マイク用アンプ 01V96V2 オシロスコープ リーダー 8060 8064
デジタルマルチメーター フルーク 89W 189 289 HIOKI3237 3239
USBオーディオキャプチャ EDIROL UA-5 UA-25 UA-25EX
ソフトウェア 自作:デジタルマルチメーター用トレンドグラフソフト Adbe Audition Smaart V7、V7.330日間お試し版 Wave
Spectra Wave Gene
最後までお読み下さり感謝です。