スピーカーの上手な鳴らし方                                                 ホームに戻るボタン          

アンプによる音質の差異について
オーディオマニアにはこれにこだわる方も多くおられるようで、2010年からヤフーオークションにて、手頃なアンプを入手し、それらの測定や修理、試聴を行いました。
2010/11/02
 テスト用ラック上からSANSUI AU-α607XR、 SONY TA-FA33ES、TOA PD-15、YAMAHA MX-55、SONY TA-F333ESJx2 です。その他、スピーカーは、Pioneer S-UK3 低周波発振器 KENWOOD AG-203 オシロスコープ LEADER 8060で、
全て中古品を入手し、研究費用を安くあげています。

 試聴は、一般的な2WAYスピーカーや、オーソドックスなフルレンジスピーカーを使用して、アンプの比較を行いました。試聴の結果、スピーカーを交換した場合と比べ、アンプを換えた場合の差はわずかで、世間で言われている、音質論議となるような大きな差はありませんでした。すなわち、上の写真にあるような半導体アンプの場合、ほとんど同じような音でした。ただし、SNの善し悪しは、ホーンスピーカーを直接鳴らす場合は、大きく差が出て、難なく鳴らすことができたのは、AU-α607XRとY社 MX-55で、残念ながら、S社 MOS-FETアンプでは、雑音が気になりました。AU-α607XRの場合は、交換した途端に、解像度の高さが他のアンプよりも優れていることがはっきりと判りました。その結果、AU-α607XRを4台使用して、4WAYマルチアンプシステムを構築しました。

AU-α607XRの高い解像度に対して、歪率や、SN比のようにカタログに記載されない、アナログステレオアンプの宿命といえる、クロストーク特性の違いが影響しているのではないかと推測し、その測定を行いました。 アンプのクロストーク特性

中古のアンプは、入手した時に、基本性能チェックとして、アイドリング電流調整や、DCドリフトを確認し、出力リレーを金張り接点の新品の物と交換します。ピンジャックが曇っているような古い物では、ホット側、シールド側、双方をメラミンスポンジで磨きます。ホット側は、作業が難しく、時々スポンジが取り残されて、冷や汗をかきますが、慎重に作業します。○○オフなどの中古販売店で、このような確認がなされているとは限りませんので、販売店が、こうした基本的な技術を持って販売してくれると、ユーザーには有り難いと言えます。
中古アンプのオーバーホールと、ミューティングリレーの接点抵抗値はこちらへ

アンプの選定
 SN特性が劣っているアンプは、コーン型ウーハーのような低能率のスピーカー用で使用します。ホーンスピーカー用には、できるだけSN比の高いアンプを使用します。アンプの最大出力は、10W〜100Wぐらいで良いでしょう。ホーンスピーカーの最大定格入力が、アンプ出力より低い場合、スピーカーにとって、過大入力となると思いそうですが、正常にセッティングされたシステムでは、何も心配いりません。音圧からみれば、ホーンスピーカーでは、出力が1Wもあれば十分なのですが、スピーカーから返されてくる逆起電力を逃すには、それなりの電源と、パワートランジスタの放熱が必要です。その為にも、出力の大きいアンプの方が良い状態で駆動できます。indexページで紹介した、5W純A級アンプは、この条件を満たす物で、シンプルな構成ながら、0.01W出力時 THD+N 0.01%以下と、高性能が、自作でも簡単に達成できます。
 デジタルパワーアンプは、位相特性に問題があり、サブウーハー用途ではOKですが、マルチアンプシステムではあまりお奨めできません。モノラルアンプは、クロストークで絶対的に有利ですが、使用台数が多くなり、大きな設置スペースが必要です。スピーカーまでの距離を考慮し、ケーブル抵抗が0.1Ω以上にならないように全アンプを設置する必要があります。A級アンプと、B級アンプが混在している場合は、低音域をBクラスアンプとし、ツイーターなどに、Aクラスを割り当てます。これは、スイッチング歪みが、高い周波数に対して出やすい事によります。真空管アンプと半導体アンプが混在している場合、真空管アンプをウーハー用に割り当てます。これは、真空管アンプの方が、内部抵抗が高く、低音に対して、定電圧駆動力が弱いので、低音域が独特にブーストされ、真空管アンプの特徴が活かされるからであり、半導体アンプは、ウーハー直結では、しっかりと定電圧駆動しますので、真空管の音に馴れた方には、過制動の音、すなわち貧弱と感じられます。サブウーハー用では、出力トランス式真空管アンプは、MQ60Cのテスト結果からも証明されましたが、使用しない方が良いでしょう。ここを誤ると、安物のアクティブウーハーと同じ、うるさい超低音になってしまいます。高域では、半導体アンプは、入力インピーダンスが低いので、高い周波数でも、クロストークが少なく、波形も鈍りませんので、すっきりとした高音を再現できます。
 プロオーディオ用パワーアンプの場合、大半が、ファン付きなので、リスニングルーム内での設置はできません。別室に設置しないと、ファンノイズに悩まされます。
ファンを意図的に停止させて使用した場合、思わぬ発熱に見舞われ、コンデンサ破損などのトラブルの原因になります。民生用プリメインアンプでも、プリ部とパワー部を切り離して使用できる物ならば使用できます。その場合、パワー部の入力感度が高い物(150mV)は、ゲインオーバーによる、SN悪化に注意します。プロオーディオ用では、+4dBm(1.23V)とほぼ10倍の感度差となります。


スピーカー負荷では、抵抗負荷と違う波形でアンプが駆動
 真空管アンプの修理により、謎の部分が解けましたので、アンプの種類別の波形を公開します。アンプは、真空管アンプ LUX MQ60C、ややそれに近いと言われるMOS-FETアンプ SONY TA-F333ESA、トランジスタアンプの最高峰とも言える、バランス出力アンプ SANSUI AU-α607NRAです。負荷は、TOA 13cmシングルコーンスピーカー F-150Gとし、100Hz、1kHz、10kHzの矩形波を加え、スピーカー端子での波形を観測します。どのアンプも、抵抗負荷では、同じような矩形波で差が出ませんが、スピーカーの実負荷になると、世間の評価に近い波形になります。

真空管式パワーアンプの出力位相特性 LUX MQ60C 50CA10 AB級プッシュプル 抵抗負荷
トランス出力式アンプですので、全帯域で位相ズレがあり、440Hz付近で一旦ゼロになりますが、それ以外では、ずれており、1kHzでも、ずれた状態にあります。この事実は、あまり触れられていませんが、トランス出力式アンプの大きな特徴の一つです。
  
2013/06/27
入力、出力のリサージュ波形 左から100Hz 1kHz 10kHzです。440Hz付近で一旦直線になります。ビンテージアンプが、現代の物と比較して特徴的な音質を持つのは、この辺りも原因のひとつでしょう。

500Hzは直線で、位相ズレは有りません。
2013/06/27              MQ80 10kHz 2016/02/01

下段右側、MQ80の10kHzリサージュですが、MO60Cよりも位相変化が少なくなっています。MQ80の場合は、位相平坦域が400Hzから2kHzまでと広く、MQ60とはかなりの違いがあります。


スピーカーを負荷とした出力波形 
真空管アンプ LUX MQ60C 矩形波
 抵抗負荷では、矩形波の差が出なかったのですが、スピーカーが負荷になった途端に、矩形波出力が変化しました。100Hz 1kHz 10kHz いずれも、立ち上がりが立っており、ハイ上がりの音が予想できます。実際に、きらびやかな音色で、しかもローブーストもかかり、いわゆるドンシャリ音となります。真空管式アンプに多い評価に、柔らかい音、暖かい音という表現が多いのですが、そのような音質とは、いささか異なるようです。
   100Hz 1kHz 10kHz
2013/07/02

真空管アンプ LUX MQ60C 抵抗負荷とスピーカー負荷の周波数特性です。スピーカー負荷では、変動が大きいので、Lch、Rch 共、測定しました。ローブーストに匹敵するぐらい低域が持ち上がり、ドンシャリ音になります。
 

真空管アンプ LUX MQ80 真空管アンプとしては、出色の平坦さで、内部抵抗が低くなっています。ローエンドで、出力電圧低下が少ないので、豊かな低音が出そうです。


真空管に動作が似ている
MOS-FETアンプ SONY TA-F333ESA スピーカー負荷時の矩形波
100Hz 1kHz が真空管アンプほどではないが、立っており、傾向が似ています。素子の原理イメージに囚われず、聴感で音質傾向が捉えられれば、免許皆伝です。後継機種 
MOS-FETアンプ SONY TA-F333ESJ も同じような波形でした。
   100Hz 1kHz 10kHz
2013/07/02

MOS-FETアンプ SONY TA-F333ESJによる 抵抗負荷、スピーカー負荷 周波数特性
平坦な方が抵抗負荷で、こぶが有る方がスピーカー負荷です。真空管式アンプの10分の1ほどではありますが、ドンシャリ的な周波数特性です。
 変動幅は真空管アンプの10分の1である点に注意してください。

真空管アンプ派の嫌いな
トランジスタ式バランス出力アンプ SANSUI AU-α607NRA MOS-FETより原音に近く、これなら本来の誇張されていない音が出そうです。このアンプがもはや絶版とは残念です。
   100Hz 1kHz 10kHz
2013/07/02

トランジスタ式バランス出力アンプ SANSUI AU-α607NRA による 抵抗負荷、スピーカー負荷 周波数特性 MOS-FETアンプの更に半分の変動幅です。
 AU-α607NRA 抵抗負荷とスピーカー実負荷

 真空管、MOS-FET、トランジスタアンプの順に変動幅が小さくなります。

スピーカー負荷として使用した、F-150Gのインピーダンス特性 低域の二つの山が、真空管式アンプ、MOS-FETアンプ、トランジスタ式アンプの周波数特性に影響しています。
 



業務用デジタルパワーアンプ(英語表記 Switching Amplifier or Switch-Mode Power Amplifier)の性能
 型番は現行商品ですので、不詳としておきます。定格出力は、250Wx4ch(4Ω負荷)で、定価\269,850というパワーアンプです。特徴は、1Uサイズで、250Wx4chとスペース性能が抜群であり、完全なる設備用途なので、入力は、ユーロブロック、出力は、4φねじ止め端子、電源は、一般的な3Pインレットであることです。デジタルパワーアンプといえば、CDのようなデジタルソースをイメージしますが、残念ながら、スイッチングを行って音声電力を得ていますので、入力、出力ともに、アナログです。アナログなので、デジタル機特有の信号遅延(レイテンシイ)は存在せず、リアルタイムで出力されます。出力波形は、アナログアンプとほとんど同じで、直線性は、高域で劣化しています。直線性劣化なので、もちろん位相特性も高域で劣化しています。従来の出力トランスの付いたPAアンプと同等の性能であると考えて良いでしょう。出力のマイナス側はシャーシーと同電位です。
 0.6VP-P 373.73kHz 8Ω負荷 残留雑音
2013/12/19

 負荷として、8Ωの純抵抗を接続した場合の無信号時出力は、周波数373.73kHz、0.6VP-P(正弦波とみなせば、0.21Vrms)です。参考までに、300kHzが測定範囲外となってしまうデジタルマルチメーターによる計測では、-27.2dBm(34mV)と少なめに測定されです。0.6VP-Pを残留雑音とし、単純にSN比を計算すると、44.9dBとなりますが、300kHzの音は、人の耳では聞こえませんので、聴感上のSNは、これより良くなります。気になる消費電力ですが、無信号時では、61Wでした。クーリングファン2個は、周囲温度とは無関係に常時動作しています。ファンの動作音は、かなり気になりますので、リスニングルーム内設置は、無理です。実効値に近い値が出るクランプメーターによる測定で、10W出力時は、75W、20W時86W、30W時98Wという測定結果です。クロストークの出方が、不快音がほとんど無く、穏やかです。量的にも、それほど多くくはないのですが、クロストークがキャリヤ残りの雑音成分にマスキングされてしまい、正確なクロストーク量測定ができません。8W出力時の周波数特性は、20Hz-0.23dBとフラットで、高域での-3dBポイントは、45.2kHzで、位相特性は、真空管アンプ並で、10kHzでは、かなり回転します。歪み特性は、低域では問題ありませんが、高域でかなり多くなります。

デジタルパワーアンプ 出力対電源電流
 X軸 1kHz 8Ω負荷端電圧 Y軸 AC電源電流値 動作1chのみ 他ch無接続
 X軸 20Vが50W相当で、Y軸 1.6Aの電源入力電流で、消費電力160VAとなり、出力がゼロ時は、81VAです。電流測定クランプメーター フルーク i200使用。無信号での消費電力は、実効値表示に近いカイセSK-7600では、61Wですので、力率も含めて、デジタルパワーアンプの消費電力傾向が読み取れると思います。無信号時動作電流は、アナログ4chアンプよりも多く、クーリングファン2個が動作しているとしても、多すぎであると言えます。有名なA社○-1も、無信号時で、消費電力は、100Wを越え、発熱が多く、温度上昇に注意です。

アナログパワーアンプ 出力対電源電流

 4chアナログパワーアンプ MX-55 同一条件
 効率が悪いとされるアナログパワーアンプでは、ファンがないので、無信号時消費電力45VA 50W時149VAで、50Wの出力増加に対し消費電力は、104VA増加しています。デジタルパワーアンプでは、79VAの増加と、効率の良さが証明されましたが、50Wまでの出力ならば、消費電力的には、アナログパワーアンプが有利となっています。電源入力電流の変化は、アナログアンプが直線に近くなっています。家庭での平均聴取電力は、0.1Wとされていますので、消費電力による、デジタルパワーアンプの優位さはありません。

デジタルパワーアンプの1kHz出力波形
  
1kHz 8Ω抵抗負荷 12.5W 2013/12/20
正弦波の上側で高周波雑音があります。矩形波も、立ち上がりに角があり、高域で、ゲインの高いところがあるようです。
下は、1kHz正弦波出力のFFT解析結果で1kHzの整数倍の歪みが出ています。



入力対出力のリサージュ
 アナログアンプより、リサージュが太くなります。
 
1kHz     20Hz 2013/12/20
位相は、1kHzでは、若干の位相ズレが有りますが、500Hz以下では、直線になり、20Hzにおいても、大きなズレは有りません。

デジタルパワーアンプの10kHz出力波形
  10kHz 抵抗8Ω12.5W 出力
2013/12/20

正弦波の直線性が悪く、歪んでいます。矩形波では、真空管式アンプと傾向が似ています、波形が鈍っており、立ち上がりのツノもあります。
デジタルパワーアンプの10kHz出力のFFT結果


10kHzでは、歪率が0.5%を越え、3次高調波も高くなっています。
 真空管式アンプより、位相がずれており、直線性も良くないようです。
2013/12/20
20kHzでは、もっと丸に近づきます。

デジタルパワーアンプの5kHz出力のFFT結果 1KHzよりも歪率が高く(0.16%)、整数倍した高調波が多くあります。


デジタルパワーアンプの入力と出力のリサージュ 1kHz 10kHz
 
2013/12/21
 1kHzと10kHzのリサージュです。アンプ出力は、8Ω1Wとなるように、2.82Vという出力電圧値ですので、残留している、300KHz台の高周波が帯になって観測されます。デジタルパワーアンプの動作が良く解ると思いますが、帯になっている高周波は、人の耳では聞こえませんが、アンプからは、電力として、負荷に供給されています。このノイズは、ローインピーダンス用アンプで、0.6VP-Pで、ハイインピーダンス用では、もっと大きくなります。

デジタルパワーアンプのステレオ出力のリサージュ 10kHz
 10kHz スピーカー負荷時 出力2ch間のリサージュ
2013/12/23
 出力電圧1.8V(0.4W相当)時の10kHz正弦波 出力2ch間のリサージュですが、入力−出力で見られた、位相遅れは無く、ステレオ再生が問題なくできる位相特性です。音としては聞こえない300kHzのスイッチングノイズが大きく乗っていますが、出力電圧が1.8Vなので、太く見えます。
音質は、商業施設や、スポーツ施設などの業務用に求められるレベルはクリアしています。オーディオ用としては、デジタルパワーアンプを礼賛しているサイトの評価が全て当てはまるとは思えず、導入は、慎重に考える必要があります。サブウーハー用であれば、オーディオ用途としても、十分な性能です。



各種アンプの総評
周波数特性から

 抵抗負荷では、アナログアンプはどれも素直な周波数特性で、デジタルパワーアンプが、古い時代のPC用サウンドカードと似た特徴的な周波数特性になっています。スピーカー負荷となった途端にアナログ、デジタルどちらも、同じような傾向で、抵抗負荷特性との差が出ました。スピーカーのインピーダンス特性と、傾向が似ており、変動幅は、アンプのダンピングファクターを表していると言っても良いと思います。特に真空管アンプは、スピーカー負荷となった途端に、ドンシャリ音に変貌します。アンプの音質比べ、スピーカーとの相性、ケーブル音質など、様々な論点が有りますが、このような、電気的に証明される変化を均一にしないと、正しい音質評価はできません。
波形から
 矩形波から類推できるように、真空管アンプは、暖かい音と呼べず、ど派手な音というぐらい、ハイ上がりな音です。冷たい音と呼ばれるトランジスタアンプですが、原波形に忠実なので、鳴らされるスピーカー側に問題を探らなければ、良い音は出せません。使用温度イメージで、真空管が暖かい音と表現するならば、半導体アンプでも、フルパワーで鳴らせば、放熱板は、80℃ぐらいまで上昇するので、暖かい音が出るという論調になりますが、如何でしょう。プッシュプルアンプの場合、スイッチング歪みを問題にされるようですが、スイッチング歪みはどこにも見あたりません。スイッチング歪みが有れば、60MHz程度のオシロスコープでもくっきり映ります。USA製アナログミキサーや、国産のちょい古いミキサーで、そんな波形を確認しています。又、30W出力のパワーICでもそのような製品があります。探しても見えない歪みは、そもそも存在せず、有れば、測定器で、はっきりと観測できます。ただ、B社ファンレスアンプのように、1kHzはOKでも、4kHzを越えると出るような性格の場合もありますが、固定概念(
1kHzへのこだわり)に囚われなければ、発見できます。
位相特性から
アナログ半導体アンプでは、位相ズレがほとんど無く、真空管式アンプが、ほとんどの帯域で、ズレがあるのが特徴的です。同じ半導体アンプでも、デジタル式では、低域の位相ズレはほとんど無いのですが、500Hz以上では、順調にずれていき、10kHzでは、真空管アンプよりも悪化しました。

NFB有害論に反論
 抵抗負荷ならば、NFB無しでも、必要な特性が確保できれば問題は無いと考えますが、スピーカーは、磁石とコイルが有り、発電もします。信号とは異なる発電が行われた時、それを打ち消し方向に作用できるのが、NFBです。無帰還アンプでは、スピーカーからの起電力は放置され、違った音が出る筈です。
 NFB量が問題になるのは、NFBループ内に時定数が多数段有る真空管アンプで、安定したNFBを掛けるには、それなりの技術が要ります。又、出力インピーダンスが高く、スピーカー負荷インピーダンスが高い低音域の出力が上昇します。一方、半導体アンプは、コンデンサやトランスを使用しないで、スピーカに直結できるのが特徴です。高域特性が良く、時定数の段数が少ないので、安定して大量のNFBがかけられ、これにより、電流増幅率のばらつきが多いトランジスターの欠点を補い、安定した性能で、長寿命となりました。ただし、回路が複雑になれば、NFBを掛けたアンプは不安定になりますので、パラレル数を増やした大出力アンプでは、高い実装技術が必要になります。電圧増幅段にOPアンプを使用すれば、実装上のトラブルが少なく、簡単に、低雑音、低歪率といった高性能が得られます。同じだけの完成度をディスクリートアンプで得るには、相当な労力が必要でしょう。製品に独特な個性を必要とするメーカー製品ならば、ディスクリートありきですが、自作マニアであれば、OPアンプで諸問題をスルーした方が、完成度の高いアンプが製作できます。
 NFB有害論で多いのは、NFBを女性の厚化粧に例える事ですが、素材の良い美人女優さんでも、ライト焼け防止で、厚化粧します。アンプに流れる電流よりも早く有害な電流が流れる事などあり得ません。電流が帰還する事をハウリングと混同してはいけません。全ては、同時進行の電気現象なので、予期しない動作というオカルト現象は、オーディオ装置の中では、起きません。NFBが、普通のオーディオ信号で破綻するのなら、自動制御など、危険な技術となってしまいます。半導体マイコン搭載の高級車に危なくて乗れなくなります。ひところ話題になった高級車の暴走も、コンピューターではなく、フロアマットが原因でした。
 カソードフォロアー、エミッターフォロアーなどは、全帰還であり、NFBによる厚化粧に匹敵するので、NFB有害論からは、音が悪くならなければならず、科学的ではありません。フォロアー回路は、出力インピーダンスを下げ、後続回路での、レベルダウンや、ハイ落ち、クロストークを予防する、とても頼もしいアンプ回路だと思います。大手メーカーが、オーディオから撤退した原因が、非科学的な議論に関わるほど暇ではなかった事もあると考える一人です。90年代のアンプは、涙ぐましいほどの、防振対策の山です。アンプの振動が気になる事は良く判りますが、振動が音に最も影響するのは、真空管アンプのマイクロフォニックノイズと見るべきでしょう。
 NFBが有害とする根拠となりそうなアンプが手元にあり、使用すると、何故か透明感が無く、音が悪いのですが、低雑音、低歪率で、クロストークも少なく、静特性では非の打ち所が有りません。この事実より、NFBを大量に掛けた半導体アンプ全てが音が悪いというような方向に持って行かれそうなのですが、内部を点検すると、NFB経路が長く、chによって不揃いです。その結果、帰還ループ内の波形は相当に酷く、回路的にもシンプルさが無く、コンデンサの多さが目立ちます。特徴的なのは、他の機器の電源OFF時に、入力が接続されて無くても、大きな雑音がスピーカーから出るという事です。一部にこうした製品も存在しますが、この機種だけが悪い訳で、全てのNFBアンプに共通でないので、メーカーも自信無さそうにNFBを否定する必要は無いと思います。NFB経路も、アンプにしてみれば、重要な信号源なので、スピーカーケーブル長と同じように、ch毎の対称性も必要と考えます。

現行業務用2chアンプの歪率特性 内部配線引き回しに問題が
 
2015/08/03
 10kHzの測定値が大きく違っています。定格値は、0.1%以下なので、故障ではありません。NFBに大きく依存している半導体アンプも実装により、こんな結果となりました。同じ回路なのに、こうなるのには原因がある筈ですので、調査してみました。すると、電源から、入力基板に行っているアースを動かしてやると、10kHzの歪率が変動することが解りました。ですが、両chが、程良い特性に落ち着きませんでしたので、アースによるアプローチを止め、特性の悪いch1側だけで改善を図ってみました。その結果、マイナス電源線を他の配線から少し離すと改善しました。下が、改善した特性と、内部写真です。
 
2015/08/03

上の横に走っている緑線を結束からバラして、移動させると、歪率特性が変化しましたが、ch1を良くすると、ch2が悪くなってなので、元通りの場所で結束し直し、ch1だけを改善する事とし、左側の青線(マイナス電源)を結束からばらす事で、10kHzの歪率特性が改善されました。
このように、NFB経路や、電源の引き回しなどで、アンプの特性が変化し、かなり微妙であることが、理解できると思います。実装技術的には、何も問題ありませんが、歪率計レベルでの調整により、業務用アンプが、ステレオアンプとして、不足なく使用できるようになりました。
業務用ですので、平衡入力が可能で、グランドリフトスイッチも付いています。しかも、自然空冷で、電源トランスの鳴きも無く、コンパクトな1Uサイズです。定価は、75,000円で、現行です。今少し、基板のレイアウトを工夫すると、特性が揃って都合が良くなるでしょう。ちなみに、Maid in Japanで、60W+60W、BTL時180Wで、実測によるSN比は、98dB(BPF 80kHz)で、マルチ駆動用アンプとして、ホーンスピーカーも駆動できます。


音響機器電源
 音響機器の電源で、音質が変化するというネットの記述をよく見かけますが、電気工事士を困らせるだけで効果も少ないので、その詳細を述べます。音響機器の電源とは、一般に、日本国内では、50Hzか、60Hzの交流で、実効電圧100Vの商用電源を意味します。変電所から、高圧線で、近所の電柱まで送電され、電柱の柱上トランスで、低圧に変換して家庭に送られてきます。最近では、都市部で電線地中化が行われ、電柱や、柱上トランスは、見かけなくなっった地域もありますが、地下の共同溝に同じ部品が移動しただけです。又、ソーラー発電設備を備えていても、交流電源の形で、家庭内の音響機器が使用されます。変圧器の二次側からは、3本の線で送電され、家庭にある、分電盤のメインブレーカーに供給されます。メインブレーカーの負荷側は、赤、白、黒の3本の電線が接続され、赤−白間で1個のブレーカー、黒白間でもう1個のブレーカーへと配線され、それぞれのブレーカー回路は、AC100V電源として、各所に供給されます。赤−黒間では、AC200Vとなり、単相200Vを電源とするエアコンの電源として使用されることもあります。白線は、電柱で大地アースされており、家庭内でも、大地間との電位差はほとんど有りません。この配線は、単相3線方式とも呼ばれ、街路灯などの簡単な設備以外のほとんどで用いられています。音響機器電源は、容量的に15Aもあれば十分なので、1個のコンセントから複数の機器に供給する事になります。この時、ホーム分電盤から、壁のコンセントまでの
配線材料にこだわりを見せたり、各機器への電源極性を揃える事に有意性も持たすネット記述を多く見ます。

電源のクリーン化
も、専門知識が無いと、惑わされる言葉です。確かに、歪率ゼロのAC電源は、理想的であり、音質向上に直結しそうな雰囲気はありますが、音質への関与は全くありません。機密性の高いリスニングルームでは、エアコンなどが併設されていますが、インバーター制御なので、強力な交流雑音が発生している筈なのに、アンプは、静寂を保っています。もちろん、電源周波数の雑音すら、聞こえてはきません。交流電源は、約300VP-Pも有るのに、アンプの残留出力は、5μV(A)以下を実現します。インバーター照明の蛍光灯スタンドをすぐそばで使用しても、その音は、スピーカーから聞こえません。もしも、都合良く、音楽が鳴っている時だけ電源の雑音が影響するのであれば、音楽と雑音がビート雑音として聞こえる筈なのですが、それも聞こえません。ダーティ電源でも、悲観する必要は無くて、音響機器は、それらを織り込み済みで回路設計されています。

実際の電源波形(電源トランス二次側) SEL SP2405 22V-24Vタップ 33Ω負荷 2.32Vrms THD+N (80kHzBW) 1.3〜1.6%
アナログ電源として使用される電源はこんな波形です。歪率1.3〜1.6% 確かに悪いです。 
2018/10/04

-0.1dB
2018/10/05
FFT解析では、3次、5次、7次、9次・・・・の奇数次高調波成分が見てとれます。FFTの歪率も1.56%と歪率計測定値と同じような値です。上がつぶれて角張っていますので、波形からも奇数次高調波の存在が解ります。

交流と直流の違いは、簡単には、直流が一方向にだけ電流が流れますが、交流はある時間毎に流れる方向が変わることです。交流は、交互に電流方向が変わりますので、電流を合計したら、±ゼロなのですが、静止している訳では無いので、動きの有った分のエネルギーは伝わります。動きの方向と、伝達するエネルギーには、関連が無く、動きの総量がエネルギーの総量なので、交流電源に極性が関係する要素がありません。もちろん、電流が逆の時でも、マイナスのエネルギーには、なりません。ペルチエ素子というのが、電流方向により、発熱したり、冷却したりできますが、電源が直流の場合でのみ、そうした事が可能です。直流といえば、雷も直流で、これは、雑音発生源であり、トランジスターなどに、逆方向電圧として加わった場合、破損してしまいますので、雷ガード付きのテーブルタップを使用する価値があります。
 極性を考える必要がある交流電源は、三相交流であり、、交流モーターを回す時、極性を変えると、逆方向に回ります。三相交流は、動力電源で用いられ、一般家庭のコンセントには、使用されません。大電流を消費するホールの照明でも、電源は単相です。5000Wという大出力パワーアンプでも、単相AC100V電源なので、ここは、技術者として、?が付きますが、移動設備の場合、電源を統一する為ならば、やむを得ないのですが、設備用途であれば、AC200V三相交流電源として、電気工事士が、ネジ止めで施工する方がより安全では無いかと思います。もしも、こんなアンプ電源が有ったとしても、モーターでは無いので、極性は、無関係となります。参考までに、三相電源は、整流した場合のリップル含有率が低く、電圧が高いので、電流が少ない分、電力損失が少なく、大電力アンプにも理想の電源です。

 
2012/02/10
 分電盤上側が赤白で、下側が黒白で、それぞれAC100Vを負荷に送ります。クリーンな電源にこだわるのであれば、上と下の2回路を音響機器まで持っていき、それぞれの使用電流を同じにする必要がありますが、それを行っても、音質変化は無く、無駄な徒労に終わります。
あるウェブサイトで、上と下の電源を混在で音響機器に接続したら、最悪の音になるという説明がありましたが、少なくとも音響設備電源を単相だけで引いているケースは少なく、それらの設備でも、まともな音が出ています。逆に、ノイズカットトランスを電源としている音響ホールもありますが、驚くような高音質であれば、音響技術者が大勢いるので判る筈ですが、今までそんな事例はありません。
 埋め込みコンセント定格15A 左の長い方が接地極(W)で、白色につながっています。
2012/0210

 接地極といえども、本当の大地アースとの間には、電位差があり、階が上の場合、相当な電圧がかかりますので、アース極といえども、触れば感電します。もちろん、
42V以上であれば、死亡事故の可能性が有ります。もしも、不幸にして、金属ケース部に触れると、電気を感じる機器が、音響システム内に紛れている場合は、その機器の電源プラグを逆にします。こうすると、以後、感電する事が無くなりますが、音響機器では、そのような機械は大変少なく、何か支障が有ったらという程度で考えれば良いでしょう。当然ですが、分電盤には、漏電ブレーカーがあり、重大な事故が起きないように動作しますので、安心して使用できます。上の分電盤では、左から2番目のブレーカーが漏電ブレーカーとしての機能が有ります。

 サンスイ製アンプの電源コードで、接地側を示す白いラインがあります。
2012/02/10
電源極性

 電源の極性を揃えると音質が向上するという説がありますが、意識した事もありませんし、音質が変わった事もありません。サンスイ製アンプは、幸いにも、極性が区別できますが、他の2Pコードは、極性の区別がつきません。3Pコードでは、アース極があり、極性の違えようがありません。アメリカでは、意識しなくても、極性が揃うことになります。しかし、一次側で運良く極性が揃ったとしても、下に述べる理由で、それが、無駄な徒労で有ることが理解できます。

主観だけで述べる訳にもいかないので、実際に雑音を測定(2階での実験)

 測定条件は、パワーアンプ出力に、8Ωの負荷抵抗を付け、その両端の雑音電圧を測定しますが、入力は短絡します。測定器は、フルーク89は、ACmVレンジで、-90dBm台の指示値が得られ、測定範囲が広く取れるので、これを使用します。
コンセント極性反転を反転させ、それぞれのノイズ量を測定しました。上のアンプ(AU-α607XR)において、パワーアンプ部直接動作とし、ボリューム回転角も変えて測定しました。フルークDMMの測定では、測定場所により、結果がバラツキますが、変化の多い所では、6〜8dBの違いがあり、確かに、ある一方が、雑音が少なく測定されました。そこで、測定ベンチのオーディオアナライザーで同じ測定を80kHzBWとAで行い、差を求めましたが、今度は、どちらかの極性で、優劣が決まらず、ランダムな状態になりました。
 自作小出力A級パワーアンプの場合、測定ベンチにて、最大2.6dB程の差で、極性による優劣は固定されました。結果として、コンセント極性は、残留雑音に影響する場合が有るのですが、差は微少で、アンプ本来の雑音が優る場合も有ります。
自作アンプは、4μV(A)台という超低雑音で、差が固定されたのですが、その差は、SN比(1W)で、108.6dB(A)と109.1dB(A)で0.5dB、THD+N(80kHzBW) 0.00073% 対 0.00077%で差が最も大きく、THD+N(A)は、0.00036%で同じ、THD(A)は、0.00006%で同じでした。
SNと歪みの差を見る限り、これで音質差があると言うには無理が有ると思います。
精神衛生上の安定を図るのなら、雑音測定でコンセント極性を決定しても良いでしょう。もしも、機器接続をして、原因不明のノイズが出たら、コンセントの極性を反転してみる程度の考えで良いのではないでしょうか。

音響機器の電源の仕組み
ブリッジ整流回路 
2018/10/05

電源トランスの二次側出力は、整流ダイオード4個からなる、ブリッジ整流で、直流に変換されます。乾電池等の直流とは、かなり様相が違いますが、これでも、一方向にしか電流が流れず、直流です。
この波形のFFT解析です。今度は、60Hzの偶数倍した高調波がたくさん含まれている事がわかります。交流電源であれほど有った奇数次高調波が見あたりません。交流成分は、-5.7dBほど少なくなります。
2018/10/05

このまま電源にしたら、スピーカーからは、ハム音の嵐が聞こえますので、整流器の後に、平滑用コンデンサを取り付けて、滑らかにします。コンデンサは、大容量が必要なので、電解コンデンサが使用されます。容量は、470μF〜47,000μFぐらいで、必要な電流と、リップル含有率に応じて、算出されます。
まだ脈は残っていますが、これが平均的なパワーアンプ電源です。
2018/10/05

上のFFT解析で、交流成分は、-43dBとなります。電解コンデンサの容量は、2200μFです。
 2018/10/05


このようにして作られた直流電源ですが、電圧は不安定なままです。しかし、このような電源で、パワーアンプが動いているのが、実際の所であり、オーディオ装置に大金を掛けていれば、これを安定させたいと、思うのではないでしょうか。
交流電源電圧は、常に変動します。測定:2000年4月27日5時25分

 上は、ある日の電源電圧です。まるで安定していませんが、これでも、柱状トランスから、6mほどしか離れていませんの、ほとんどマイトランスのようなものです。マニアは、マイトランスとか称して、宅内に電柱と、トランスを置いて、他の施設との分離を図るのですが、一次側が、発電所と、負荷のバランスを取りながら動いていますので、二次側だけ安定させても、安定しません。それではという事で、独自のアースを設置して、他所の汚いアース電流と分離して、基準点を綺麗にしようとなるのでしょうが、そううまくは行きません。アース電位そのもが、変動しており、綺麗なアースの基準がないのです。それならば、ソーラー発電や、EV自動車で供給したら、クリーンではという発想ですが、発電時は、直流でも、インバーターで、交流変換しますので、インバーターノイズが含まれます。究極は、リチウム電池、直接でとなるのでしょう。

 電源のクリーン化は、程度問題なので、元々、こういった不安定さを織り込み済みで、回路設計が行われていますので、全く気にする必要はありません。ピンポイント設計ではなく、アバウトにしておかなければ、日本中のいたる所で、電源にまつわる事故が起きてしまいます。音響ホールでは、調光装置が電源波形を劣化させるので、ノイズ防止で、音響系電源を大型トランスで分離する事もありますが、分離していないホールも多々あります。この大型トランスを、ノイズカットトランスと命名するので、響きが良く、使ってみたくなるのですが、使ってみても、効果はほとんどなく、高い請求書がくるだけです。
 実例があり、
本体工事で、普通の2芯シールド線を、マイクコンセントまで配管無しで配線し、調光ノイズでマイクコンセントが使い物にならないというクレームをつけたら、絶縁トランスを取り付けておいたからと、機器代16万円の請求が、本体工事業者からきて、驚いた事があります。そんな手抜き工事じゃなく、金属配管工事とカナレの電磁シールド線で、マイクコンセント工事をやり直さないと、解決には至りません。大手の電気工事業者ですら、この有様です。電源にまつわる多くの商品は、安全に配慮した物だけに価値を見出すと良いでしょう。

CONDITIONED AC POWER REGULATOR
という名称の機械がありますが、トライアックで、3P電源タップにシーケンシャルで4系統のAC電源を出力し、OFF時は、逆順で、電源が切れます。超大型のトロイダルトランスがあり、結構な重量です。こうした機器を使用するメリットは果たして有るのかと相談を受けたら、シーケンシャルスイッチャーとしての役割は、果たしても、ここでのクリーン化は、音響機器といえども、システムパフォーマンスの向上には役立ちませんと答えます。

パワーアンプ以外の音響機器電源ならば、3端子レギュレーターを活用 TA7812S 1個 50円もしませんが、働き者です。
 2018/10/05

上は、3端子レギュレーターによる、定電圧電源のFFT解析ですが、高域に若干のノイズが見えますが、これは測定ケーブルに誘起されるノイズで、電源によるものではありません。交流成分は、-72dB有りますが、平滑コンデンサだけの電源よりも、さらに30dBほど雑音が少なくなります。
下は、測定系の残留雑音で、-80dBほどですが、3端子レギュレーターが、結構、働いている事が解るでしょう。
 測定系残留雑音 01V96V2 2018/10/05

 パワーアンプも、定電圧電源で動かせば、綺麗な電源で、音質も向上するという発想が生まれると思いますが、これは、効果が有ります。しかし、大出力アンプで、そこまでした例は有りません。高価格のハイエンドアンプなら、実現可能なのではと思いますが、1A程度の、電源なら、数10円のIC1個なのですが、パワーアンプ丸ごととなると、難易度も高く、費用対効果で考えると、必要性が無くなります。

 下は、自作 5W純A級アンプです。5Wでも、パワートランジスタは、100W級を使用し、電圧増幅段には、3端子レギュレーターによる正負電源を使用しました。元々、OPアンプは、電源ノイズの除去が得意で、その電源部をさらに定電圧化して、電源ノイズに対し鉄壁の防御をしています。電流増幅段は、普通の平滑コンデンサ33,000μFの電源ですが、パワートランジスタのコレクター電流は、定電流なので、電源電圧変動の影響を受けません。これにより、低雑音、低歪率を実現しています。これならば、外部にクリーン電源を入れる必要はありません。
残留雑音 4.8μV(A) 全高調波歪率 0.00005% 1kHz 1W 混変調歪率 0.0017%


高調波歪みより有害なクロストーク

 歪率やSN比には、関心があっても、クロストークには、ほとんど関心が払われませんが、これもアンプには重大なファクターです。
音響設備を多数扱ってきて、その経験上、雑音が、60dBより悪化すると、耳障りな雑音として聞こえてきます。本来の音ではない、付加音には、雑音、高調波歪み、クロストークがあります。これらは、増幅器を信号が通過する際に、本来無い音が、付加されて出力されます。その内、雑音と、高調波歪みは、アンプの回路中のNFBにより、軽減されて、目立たなくなりますが、NFBループ外で加わるクロストークのような音に対しての軽減効果はありません。もちろん、抵抗を信号が通過する場合に発生する、熱抵抗雑音もそれに加わりますが、量的には、微量で、問題にはなりません。クロストークの大半は、静電容量によるもので、インピーダンスの高い所で、飛び込みやすく、周波数が高いほど増えます。アナログボリュームの内部や、その周辺は、特に気を付ける場所です。

パワーアンプのクロストーク測定は、以下のような接続で行いました。



パワーアンプに、電流が流れることによるクロストーク測定なので、必ず負荷抵抗を入れて実際の出力を加えます。抵抗は熱くなりますので、可燃物を近くに置かないようにしてください。

  
2014/04/23
クロストーク測定の写真ですが、負荷は、ホーロー抵抗を使用します。板の焦げ痕は、右側の抵抗によるものです。入力信号となる音源は、測定誤差を減らす為に、クッキングホイルで、シールドしています。

クロストークと、出力増加の関係
電源から、電流をたくさん流し込むと雑音が増加し、結果として、クロストークの悪化として、反映されるという
仮説をたて、その測定を行いました。
測定に使用したのは、YAMAHA 2/4chパワーアンプ MX-55で、入力感度調整VR付きで、VR最大で測定しました。クロストーク測定側(Rch)は、入力短絡、VR最大です。
 MX-55 4ch動作 VR Max FL(信号入力)-RL(入力短絡)間で測定 2014/04/23
 
信号は、10kHz正弦波を使用し、低周波発振器の出力を手動で可変し、Y軸は、クロストーク量、X軸は10kHzの出力値を表しています。測定値は、全てドットで表現し、測定数は、2622ポイント有ります。クロストーク比は、87dB有り、測定自体もうまく行っているのではないかと思っています。負荷抵抗は、クロストーク測定側が8Ωで固定し、出力側は、8Ωと、100Ωの二通りとし、アンプ回路の動作電流への依存性を見ています。仮説としては、電流による、影響が大きいとしていたのですが、動作電流の影響は少なく、信号レベルに大きく影響されるという結論となりました。電流の少ない側を100Ωとしたのは、一番電流が少なく、装置が簡単な無負荷では、測定値に環境ノイズの影響が出て、精度が高くならないという、失敗が有ったためです。実際の負荷電流は、出力最大値が、19.54Vrmsで、8Ω時が、2.4A 100Ω時が、0.2Aと比較するには、十分な電流差があります。結果をよく見ると、線が2本有るように見えますが、上側が、8Ωで下が100Ωです。電流比が12.5 (21.9dB)に対して、クロストーク測定値が、0.1dB〜0.3dBと、本当に小さな違いです。なお、クロストーク測定側を開放にしてしまうと、環境ノイズの影響で、もっと大きな測定値が出てきます。
クロストーク増加量は、出力電圧に大きく依存し、電流量には、依存が小さいという測定結果となりました。

 MX-55 4ch動作 2014/04/24 再測定 VR MAX位置 3350ポイント
翌日の再測定では、差が大きくなり、1.4dBほどとなっていますが、前日の測定結果は、この2本の線の間にちょうど収まっています。

次に入力信号の周波数への依存性を調べてみました。2ch駆動と4ch駆動の差が無かったので、4ch駆動時の測定結果を表示しています。
MX-55
 10kHzでは、0dBm出力時に-72dB付近に測定値があります。VRセンター位置
MX-55
 50kHzでは、0dBmで-63dBmと、10kHzより9dB悪化しています。VRセンター位置
100Hzと1kHzは、クロストークの起き上がりが無く、表示していません。
測定は、2ch駆動と、4ch駆動で、100Hz、1kHz、10kHz、50kHzで行い、2chと4ch間のデーター差はほとんどなく、周波数が上がるにつれクロストーク量が増すという結論でした。入力条件は、クロストーク測定側の入力端子にショートピンを取り付け、VRを双方センターにして、より現実的な条件で測定しました。10kHzでは、20dBm時72dB、50kHz63dBという結果となりました。クロストークが、起き上がる前は、-75dBmという残留雑音で推移しています。

周波数を、20Hz〜20kHzまで変化させて測定した結果です。
左がVR最大で、右が、VR最小です。入力はショートピンが付いていますが、VRを最大位置にすれば、出力chの周波数が上がるにつれて、約5dB/octぐらいの傾斜で、クロストーク値が上昇します。
MX-55
  2014/04/24
クロストークは、入力信号の周波数が高くなるほど大きくなります。出力値はマゼンタ色+20dBmですので、クロストーク比はY軸値-70dBで90dB相当となります。

以上の結果より、ボリュームを最小にすれば、可聴帯域では、クロストークがほとんど発生しません。これにより、クロストークが、ボリューム以降では、ほとんど無く、ボリューム以前の入力部で発生していると考えられます。
それでは、ボリュームを最大にしておいて、
入力の信号源インピーダンスの影響を測定してみます。
MX-55

  2014/04/24
グラフの上から順に、開放、100kΩ(真空管プレート抵抗値)、47kΩ(MMカートリッジ)、10kΩ(ライン抵抗)、4.7kΩ(カセット録音回路)、620Ω(音響ライン600Ωの代用)、47Ω(OPアンプ寄生振動防止用)、短絡です。それぞれの抵抗は、右側写真のピンプラグカナレF-10内部に取り付けて、シールドされた状態としています。注目すべきは、OPアンプの出力に、容量負荷による発振止めで一般的に使用する47Ωが、短絡と変わらないクロストーク防止効果を発揮していることです。10kHzにおいて、88dBという高いクロストーク比となっています。シールド線を延ばさないで、パワーアンプの入力に直接取り付けたピンプラグでこのような状態となりますので、シールド線の材質を云々するより、接続機器の出力インピーダンスの正味の値の方が重要です。プロ音響機器では一般的なOPアンプ出力ですが、後続機器の内部でのクロストークを抑止できる能力が高いといえます。

M-AXD7
クーリングファンのあるパワーアンプ
 
KENWOOD システムコンポ 2ch/4chアンプ M-AXD7 放熱ブロックにクーリングファンが有ります。出力電圧で、ファンが低速と高速に切り替わります。

2ch動作で、左は+15dBm出力でファンは低速動作、右は、+20dBm出力でファンは高速動作します。

 
ファンが高速回転すると、雑音が発生する様子が良く判りますが、ファンは、音響機器に使用しない方が良いという一例です。通常の音量では、ファンは高速回転する事はありませんが、大音量で高速回転しても、スピーカーからの大きな音に消されて、実用上は覚知しにくいと思われます。
M-AXD7 20kHzクロストーク 2018/01/01

1990年代ステレオプリメインアンプのクロストーク特性

VRセンターで、Lchは、8Ω負荷抵抗に+20dBmの出力とし、Rchは、入力にショートピンを取り付け、クロストークを測定

SONY TA-F333ESJ 
10kHzで、51dBというクロストークです 2014/04/30
上が、CD入力トーン回路フラット、次がADAPTOR入力、CD入力ソースダイレクトON(トーン回路を通らない)、一番下が、DIRECT入力で、信号経路の長い、トーン回路を通したケースで、クロストーク特性が悪くなっています。

VRセンターとし、CD入力(トーンOFF、トーンON FLAT)と、CD DIRECT 、LINE DIRECT

SANSUI AU-α607NRA

10kHzで76dBというクロストークです 2014/04/30  20kHz
1.7kHzと、3.4kHzに特徴的なコブがありますので、他のアンプとは、違った音質になる可能性があります。ブリッジアンプなので、リサージュが取れず、20kHzでの単純なクロストーク波形です。

SANSUI AU-α607NRA プリアンプ部 増幅回路無し CD Lch入力−プロセッサーOUT
 
 Rchのクロストーク Rchの入力を上から開放、1kΩ、短絡で測定
増幅が行われなくても、入力の条件で、クロストークが現れます。入力を短絡していなければ、雑音が出てしまうのが、不平衡入力回路の宿命ですが、平衡入力にするか、接続機器の出力インピーダンスを下げるのがクロストークを少なくする方法です。スピーカーの逆起電力を少なくする方法と同じです。商業施設などの店内放送は、放送を切る場合、スピーカー回線を短絡しないと切れません。普通のスイッチでOFFにした場合は、誘導で音が出るので、、放送をしている所としていない所の音量差はわずかとなってしまいます。

2000年代のAVアンプのクロストーク特性
1990年代のステレオプリメインアンプとの大きな違いは、ボリュームが、電子ボリュームとなり、信号が直接フロントパネルまで来なくなり、配線経路が短くなっていることです。反面、アンプ数が7.1ch仕様で、7chのパワーアンプが有り、2chだけのステレオアンプより、はるかに複雑です。90年代アンプは、測定数値にこだわっていたのですが、90年代後半、海外生産が進むにつれ、SNや歪率のカタログスペックが、1桁ほど悪化し、現代に至っていますが、現代のデジタルパワーアンプの歪率は、さらに1桁悪化し、小数点3桁だったのが、1桁になっています。
DENON AVC-1620(2005年製) EXT IN FLchが+20dBm出力時における、各chへのクロストークを測定 入力値 0dBmで、ボリューム値 -13です。 
 10kHzで-71dBというクロストークです 2014/04/30
残留雑音が多いので、低い周波数での値は、それほど下がりませんが、さすがに電子ボリュームで、入力信号の影響をさほど受けていません。

他のアンプ 20KHz逆相クロストーク

P-60D 業務用アンプ   自作A級パワーアンプ
 2018/01/01

SN、歪率も平均より良いアンプなので、素直なリサージュです。自作A級級パワーアンプでは、絶対量が小さいので、感度を上げましたので、太くなっていますが、クロストーク側の波形も非常に綺麗です。
クロストークも、基本波成分が殆どですと、逆相=反射音と混ざり、聴き取りができなくなります。しかし、基本波以外の成分は、歪みと同じく、音質に有害で、うるさい音の原因の一つです。 トップページのクロストーク解説に戻る



電源を介した他機への影響を調べる
電源コンセントや、電源ケーブルをうるさく言う場面に接する事が時々あり、実測してみました。
  2014/04/25
同じアンプを上下に重ね、上側が影響を調べるアンプとし、下側が、出力するアンプで、電源プラグは、テーブルタップの隣同士とし、プラグの極性を変えて、4通りの測定を行いました。プラグ極性を変える意味は、極性の影響も調査するということであり、残留雑音には多少影響がありましたが、大きな差ではなく、電源ケーブルの微妙な位置ズレもあるかもしれませんが、測定値が変化しました。残留雑音は、@-72.92dBm A-72.53dBm B-72.72dBm C-73.12dBmとなりました。電源極性を気にするのであれば、残留雑音を測定しながら、最良の組み合わせを求めても良いでしょう。測定は、出力側のアンプを+20dBmの電圧値で、20Hz〜20kHzまでスイープして、被影響側アンプの入力プラグ無し、ボリューム最大で行い、一番雑音が少ないCのケースでは、出力スイッチを4回操作して、電流を不連続にしてみたときの影響も調査しました。
2014/04/25
マゼンタ側が出力値で、+20dBm、出力スイッチ操作は全部で4回行いました。1kHzで、7.85Vrms 7.7W出力相当で、電流は0.98Aです。クロストーク比は、93dBを維持しており、極めて優秀です。実験に使用したアンプは、手持ちの中で、電源ノイズの影響を受けやすく、しかも低雑音出力なので、測定の意味が十分保たれるという判断から選びました。結果は、出力の周波数を変えようが、出力値を急激に変えようが、別のアンプでは、何も起きない結果となりました。

アナログレコードファンの為にこんな測定結果もあります

下の左側はTechnics SL-6に実装されているMM型カートリッジ P24Cの内部インピーダンス特性です。1kHzで1kΩで、かなり低い値ですが、10kHzでは、10kΩと高くなりますので、ケーブルの静電容量が大きいと、高域が減衰しやすくなります。
右側は、SL1200MKUのトーンアームから、ピンコード先端までのシールド側の配線インピーダンスです。ほぼ0.5Ωぐらいの値を保っています。1.5Ω〜3Ωという低内部抵抗のオルトフォンのMCカートリッジでは影響があるかもしれません。MCカートリッジに使用時の終端抵抗には注意します。
内部インピーダンスが高いMMカートリッジでは、指定負荷抵抗と、指定容量がありますが、SL-1200MKUでの静電容量は、実測で、103pFです。

 

カートリッジからアンプまでの配線抵抗の測定 Technics SL-1200MKUについて、ヘッドシェルから、ピンプラグまでのインピーダンスを測定してみました。インピーダンス特性は、フラットで、ホット側が0.91Ω シールド側が、0.51Ωでした。ヘッドシェルからカートリッジまでのリード線抵抗は、0.01Ωにも満たず、測定の誤差範囲程度で、この部分の抵抗が材質によって変わっても、全体の抵抗値には、何も影響が無いという結論が出ました。測定中に抵抗値がどんどん下がって行き、測定前では、接触抵抗が大きくなっていたことを確認しました。測定は、リフレッシュの為、故意に70mAという大電流を流して行いましたので、接触抵抗が少なくなりました。MMカートリッジを使用した場合の出力電流は、0.1μAですので、古くなったプレーヤーでは、トーンアームからアンプまでのシールド線抵抗が大きくなっているという可能性があります。このような測定結果により、カートリッジ出力線の材質にこだわる必要が果たしてあるのか、もしあるのなら、トーンアーム内部と、出力コードを無視して良いのか、検討願いたいと思います。



チャンネルデバイダーや、オーディオキャプチャなどアンプ周辺機器のクロストーク


アナログチャンネルデバイダー CX3400
2WAY使用時で、LFから他chLFへの漏れと、HFから他chHFへの漏れですが、非常に少ないのですが、高域で増加しています。
 

デジタルパッチベイ SRC2496
アナログへ入力し、変換した96kHz24ビットデジタル信号を、同軸、OPTの2方式でUA-5に接続し、アナログに変換した出力2ch分を測定しました。
 アナログが平衡入力であっても、意外にクロストークが多いです。

主chが、-10dBぐらいの出力に対して、-40dB台のクロストークなので、予想以上に悪い結果となり、ひょっとして、UA-5のアナログ出力部のクロストークが含まれているのではないかと思い、デジタル信号を、WAVEファイルに保存し、FFT解析を行ってみました。

アナログ−デジタル変換時のクロストーク特性
デジタルパッチベイ SRC2496

20kHzでのクロストークLch -41dB Rch -49dBです。UA-5やUA-25と比較して、気になるような過大入力はありませんでした。左右で、8dBも数値が異なりますので、内部の配線などを調査しましたが、配線の問題ではなく、基板設計に改善の余地が有るようです。
-1.4dB 1kHz THD 0.006%


測定結果として、意外ににクロストークが多かったので、今後は、単純なデジタル−デジタル変換に使用方法を改めて行こうと思います。

USBオーディオキャプチャ UA-5
Lch Rch 共に-77dBですが、クロストークの出方が少し異なっています。アナログ入力部が、過大入力で歪みますので、-4.3dBまでのファイルを作成しました。
-10dB 1kHz THD 0.01%
 

もう1台のUA-5で、付属のACアダプターを使用せず、外部の安定化電源で駆動した場合で、120Hz、240Hzのハムが軽減されています。録音は、44.1kHz16ビットで行っています。
 


USBオーディオキャプチャ UA-25

Lch -82dB Rch -83dBと高い性能で、この特性ならば、合格ラインです。UA-5と大きく違うのは、TRSアナログ出力が、平衡出力になった点と、アナログ入力から直接モニターすることで、レイテンシーの影響を避ける事ができます。UA-5では、一度DA変換してから、モニター出力となっています。

-10dB 1kHz THD 0.007%


USBオーディオキャプチャ UA-25EX
Lch -76dB Rch -80dBとUA-25ほどの性能はありません。製品が新しくなって機能が向上したのですが、左側のLchからRchへのクロストークが増加し、歪率性能もUA-5と同等にまでダウンしました。音量が既知の音源の場合は、UA-25の方が、少し良い性能であると言えます。とはいえ、生録音などに気軽に使用できる、コンプレッサーリミッター機能は、UA-25EXの大きな魅力で、矩形波観測を行うと、ヘッドホンモニターアンプや、アナログ出力は、UA-25より性能が向上した事がわかります。
-10dB 1kHz THD0.01%



デジタルミキサー 01V96V2
オーディオキャプチャーではありませんが、デジタルミキサーにも、デジタル出力がありますので、その測定です。Lch -79dB Rch -78dBという結果ですが、HPFを21.2Hzに設定しています。HPFを使用しないと、-71dBぐらいに悪化します。
-0.5dB 1kHz THD 0.004%


オーディオキャプチャーの役割
オーディオキャプチャーでは、デジタル録音で、WAVEファイルをパソコン内に保存できますが、録音中の音は、そのままデジタル信号として、流す事ができません。機器のヘッドホンジャックを使用してモニターするか、アナログOUTを使用する事となります。デジタルミキサーや、SRC2496などは、アナログ信号をSPDIFとして出力できますが、パソコン側にデジタル入力が無いと、そのままでは録音できません。この場合は、オーディオキャプチャーのデジタルINに入力して、USB経由でパソコンに録音する事になります。


新品アンプでも、こんな事が スイッチング歪みの実例

 ファンレス仕様パワーアンプ(現行商品)の出力波形で、スイッチング歪みが見事に出ています。高調波歪率は、0.4%です。周波数が高い場合に顕著に出ます。1KHzですと気が付かないレベルですが、4kHzでは、このようになり、有害な3次高調波12kHzが聞こえますので、きっと品の無い音となるでしょう。購入時は、SLF用で使用しましたので気が付きませんでしたが、測定数値よりも、聴感での残留雑音が多いことに気が付き、テストをして幸いにも発見しましたが、一般ユーザーでは気が付かぬままでしょう。
4kヘルツでは、スイッチング歪みがはっきりとオシロで観測される。 業務用機ですので、オーディオ専門店では、販売されていません。
2009/12/08

FFT解析 高調波歪率 0.4% で、明らかに異常です。特に第3次高調波成分が大きい事が解ります。
2009/12/08

B級アンプ〜A級アンプ アイドリング電流による差

 アンプを自作する場合、パワーアンプ プッシュプル段でのアイドリング電流は重要な調整事項ですし、その気になれば、様々なアイドリング電流による、変化を測定する事が可能なので、現在、製作中のA級3Wパワーアンプでそうした、測定を行ってみました。
B級アンプのスイッチング歪みについて、うるさく論じる向きもあります。しかし、そうしたアンプを冷静に観察すれば、決して解説本にあるような図にはならないことが解ります。勿論、20年以上前のパワーICの一部で、アイドリング電流不足の、典型的スイッチング歪みが見られる事も確認しています。某30W製品がそれで、シリーズの15W製品は、ディスクリート構成で、スイッチング歪みは有りませんでした。現在製作中のアンプでは、0.1mA時においても、観測できるのは、ほんの小さな部分のみであり、1mW出力時、0.1%という、雑音歪み率なので、90dB/Wのスピーカーであれば、雑音歪み音圧が、0dBとなり、聴くことができない音量です。実際に音を聴いてみても、判別できません。波形もスイッチングアンプより、ましな形をしています。気になったは、FM民放の平均レベルを上げた音源自身の歪みの方でした。
下図、0.1mAと1mAは、ほとんどB級動作と見なして良いでしょう。10mAと100mAは、一般的な市販アンプと同じアイドリング電流値、AB級で、10mAは下限、100mAは上限と考えて良いでしょう。200mAは、完全なA級ではありませんが、1.6WまでA級動作しています。
100mAと、200mAでは、特性の違いは僅かです。100mAより、多く流した分は、余裕や、安定の方向に作用すると考えました。今回A級アンプ製作にこだわったのは、家庭内において、必要な音圧を得るには、1Wもあれば十分という、10年間のシステム運用実績からの、結論に基づいています。 大出力A級アンプは、目玉焼き製造器といわれるぐらいの発熱がありますが、3W出力ならば、4ch分まとめても、12Wで、CDプレーヤーと同じ消費電力です。小出力なので、ヘッドホンアンプとしても使用できます。終段は、コレクタ損失100Wのパワートランジスタと、SBRブリッジ、33000μF大容量電解コンデンサによる、低インピーダンス電源との組合せで、製作進行しています。へたなマルチWAYスピーカーを鳴らすには、スイッチングアンプでも変わりはないでしょうが、1対1で、スピーカーと対峙した時、NFBをかけた、アナログA級アンプが真価を発揮します。超低雑音OPアンプを使用しており、110dB/Wを越えるホーンスピーカーも、ありのままで鳴らし切ると期待しています。

残留雑音 4.4μV(A) 0.125W(1V)時SN比100dB(A) 構成:LT1115 2SA1015/2SC1815 2SA1186/2SC2837
 現在、電源トランスは、HT165 90VA、整流ダイオードは、新型のSBRブリッジ、平滑コンデンサは、33,000μFという、低インピーダンス電源で駆動中で、試作を進めています。電源が、実装用になったので、アイドリング電流を所定の値まで上げてみましたところ、思いの外低い値で頭打ちとなってしまいました。急遽エミッタ抵抗を0.47Ωから0.2Ωまで小さくして、どうにか所定の値になったところです。パワートランジスタ表面温度は、64℃、放熱板は、52℃といった温度状態で、熱暴走の気配はまったくありません。3Wアンプでこの有様ですので、ハイパワーA級アンプでは、すさまじい発熱かと想像します。


このページの簡単なまとめ

1.アンプによる音質の差異には、抵抗負荷と、スピーカー負荷間での単純な周波数特性変化も含まれ、その割合も大きい。
2.音響機器の電源は、交流部分の極性、コンセントの材質、ケーブル材質よりも、安全が保たれる方が重要で、無意味な言葉に惑わされて、無駄な投資をしない。
3.アンプのクロストークは意外に多く、接続機器の出力インピーダンスの影響も受ける。
4.アンプ以外の、チャンネルデバイダーや、オーディオキャプチャでもクロストークが発生し、中には、40dBと歪率換算1%にもなる事がある。

5.スイッチング歪み(クロスオーバー歪みと同意)は、問題レベルではなく、音源そのものが歪んでいる方が有害。コンプレッサーなどで、圧縮した音声等

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