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アンプのオーバーホール1 SONY TA-F333ESJ

オークションで購入したSONY TA-F333ESJですが、経年劣化がかなりあり、オーバーホールを行いましたので参考に写真を掲載しておきます。

主な障害 振動を与えるとプロテクションが動作して音が出なくなる。メインボリュームに軽いガリがある。ミューティングスイッチ動作時雑音多い。TUNER入力でLchが歪んだり音が出なくなる。

 ファンクションSW基板の向こう側がPHONO EQアンプ基板でその下にあるPOWER AMP A 基板中でハンダ付けクラックがあり、振動でプロテクションが動作しました。処置は、ハンダ付けの手直しを行いました。
メインボリュームは、Panasonicサービス部品メカクリーナーによる洗浄でガリ修復を行いました。TUNERで音が出なくなるのは、最初はファンクションスイッチを疑いましたが、スイッチの接触抵抗値を測定すると正常範囲の10mΩ以下で問題がありませんでした。原因はピンジャックの中心コンタクトの汚れで接触抵抗が1Ω以上でかなり不安定な抵抗値でした。ピンジャックは、メッキ部がかなり曇った物がありましたので、水だけで磨ける、メラミンスポンジ(激おちくん)等を使用して、アース側、ホット側を共に磨きました。結果判定は接触抵抗の実測値が7mΩ台になった物を良としました。

 水道水はメッキ部品の錆の原因にはなりませんので安心して使用できます。反面、雨水は空気中の二酸化炭素を溶かし込んで、酸性となり、電子機器には深刻なダメージとなります。雨に当たって鉄板のシャーシが錆びているような中古品は、ただのゴミで、売買できる対象で無いことをリサイクル業者は理解していなければなりません。

  使用されているリレーの分解写真

メラミンスポンジで、ピンジャックの中心コンタクトを磨いている様子
 先の曲がったピンセットでメラミンスポンジを使用して磨いているところです。このアンプのピンジャックの心線側は、上下2ヶ所に接点がありますので、そこを10回程度こすると、接触抵抗が500mΩ以上有った物でも、7mΩまで下がります。結果には個体差がありますので、実測しながら行いました。金メッキされている物は、接触抵抗値は8mΩ台で安定していますが、軽く磨いておきます。普通のメッキの物は、最良値が金メッキのピンジャックより低い抵抗値となります。ミューティングリレーは、ここまで分解したのなら、新品の金張り接点G2R-2-AULに交換する事を推奨します。
他に電源ヒューズのクリーニングも行っておきます。パワーアンプのバイアス電流は、測定端子が2ヶ所有り、サービス規定値30mVと基板にプリントされていますので直流電圧計で測定します。オフセット電圧は調整できませんが、測定して確認しておきます。バイアス電流は、温度で変化しますので、通電30分後ぐらいにもう一度測定し、極端なズレがなければ可とします。又、この製品では、PHONO EQアンプのLch出力が1%ぐらい低かったので、PHONO EQアンプのNF回路に並列抵抗を抱かせて利得調整しています。


アンプのオーバーホール2 SANSUI AU-α607MR
 こちらも同様にオークションで最近入手したSANSUI AU-α607MRです。内部は、XRとの違いはほとんど有りません。調整箇所も同じです。右側上部の電源トランスのクローズアップ画像で黒いのがオリジナルのリレーで、接点抵抗は、1.2Ω以上ありました。このような抵抗値ですと、時々音が出なくなったり、汚い音が出たりして、不安定な鳴り方となります。左側透明ケースの物が新品で、G2R-2-AUL 金張り接点で接触抵抗値は7mΩ以下と優秀です。接点は2C構成ですので、交換の際は、NC(ノーマルクローズ)ピンは、ニッパで切り取りって取り付けます。写真の基板のリレーを交換する際は、手前のコンデンサを2個外して、交換するリレーの通路を確保してから行うと良いでしょう。。
 
 AU-α607XRや、MRでは、パワーアンプの調整箇所が多くなります。片chでDCオフセットに関する物が2個、バイアス電流調整も2ヶ所あります。アンプが4台入っているので、このように調整箇所が多くなります。それと、プリアンプ部にもDCオフセット調整があり、DCアンプであることが実感できますアンプの残留雑音は、155μV以下と、MX-55には及ばないまでも、TA-333ESJの3分の1以下の雑音値です。電解コンの裏側に8Aヒューズがありますので、底面パネルを外して磨いておきましょう。調整は、最低でも30分ぐらい通電した後で行います。
 パワーアンプ部のDCオフセットは、入力を短絡した状態か、実際に使用する機器を接続して行います。最初に音量ボリュームをMinにして調整開始します。シャーシアースとSP端子HOT間のDC電圧をゼロに限りなく近くします。次に、HOT側とCOLD側アンプのHOT間の電圧がゼロになるようにします。ここで、音量ボリュームをMaxまで回し、DC電圧の変化をみます。変化幅が大きい場合、Maxの位置で、HOT−GND間のボリュームを回し、ゼロに近づけます。再度ボリュームをMinに戻し、0Vとのズレを見ます。ここで、ずれた場合は、もう一度HOT-COLD間のボリュームを調整し、再び0Vにし、音量ボリュームをMaxまで回して、ズレを見ます。変化幅が大きい場合は、この調整を繰り返します。
基本的な事項は、Minで0Vに調整したものが、Maxでも0Vが理想ですが、そうはいきませんので、ズレを5mV〜10mV程度の抑えれば上出来でしよう。パワー部のDC調整が完了してから、プリ部のDCオフセット調整を行いますが、こちらも、ボリュームを回して最良点を探ります。

 バイアス電流は、サービス値がプリント基板に印刷されていないので、不明ですが、4台あるアンプのパワートランジスタエミッタ抵抗にかかる直流電圧の平均値あたりで揃えておけば問題なく動作します。もしも流しすぎれば異常に熱くなりますので、それで判定します。普通は抵抗値により、電圧測定を行えば電流が計算できますので、30mA〜50mAに相当すれば問題なく動作します。ちなみに、エミッタ抵抗は0.22Ωを使用していますので、11mVぐらいが、最適値です。A級アンプの音が良いそうだという理由で、電流を多く流してみても、電力の無駄遣いなだけで、607シリーズのようなバランスアンプには、大きなアイドリング電流は必要ありません。


SANSUI AU-α607XRのパワートランジスタ交換
トップページでふれた、マイナス側とシャーシが短絡して壊れたAU-α607XRは、ローランドのPAアンプを修理した際に返却された被交換トランジスタが、正常品ばかりであるので保存しておいた東芝製の2SA1553/2SC4029を使用して修理しました。


応急修理で使用した東芝のトランジスタは、コレクタ損失が150Wコレクタ電流15Aという大きな物で、もちろん非磁性体Trです。ただし、トランジション周波数が10MHzと、サンスイの物よりは劣ります。それと外形が大きいので、一部基板を削って収めました。サンスイオリジナルは写真のようにトランジスタには型番がなく、NPN、PNPというように極性の表示しかありません。今回サンケンLAPT 2SA1303/2SC3284を5組新品で入手しましたので、これと交換することにしました。コレクタ損失は120Wコレクタ電流14Aで、トランジション周波数は50MHz(PNP)60MHz(NPN)と申し分のないスペックです。
アンプは写真のように、底板を外し、放熱板とシャーシを止めている4mmの黒いネジを4本外します。パワートランジスタは、3mmのタッピングビス1本で放熱板に取り付けられていますので、そのネジを外します。4個全てを外したら、トランジスタを外します。


作業途中の写真ですが、パワートランジスタを3個外した段階です。トランジスタは、東芝の物でオリジナルより大きいパッケージです。白いのは、放熱を良くするためのヒートシンカーです。硬化していたら、古い物をを除去し、新たに塗布します。密着性を上げる為に使用する物ですので、メーカーがやっているようなベトベト状態まで厚塗りするのは避けましょう。絶縁用のマイカシートは忘れないでトランジスタと放熱板の間に入れ下さい。これが無いと、電源を入れた途端に分電盤のブレーカーが落ちてしまいます。


 新しいトランジスタは、ヒートシンカーを塗布し、マイカ板に密着したところでネジ止めをします。足のハンダ付けは全部のトランジスタを取り付けてから、基板にストレスをかけないように足を折り曲げてから行います。加熱不良が無いよう、ハンダがしっかり流れる事を確認してください。ハンダは、スズ60%のものを使用します。自家用アンプですので、鉛フリーの必要はありません。ハンダ屑などでパターンを短絡していないかを目視でチェックします。交換作業が終わったら、通電しますが、エミッタ抵抗の0.22Ωの電圧を監視しながら通電して、手早く低めの値に調整します。時間の経過とともに電流が増え、通電から30分ぐらいは、変動しますので、調整を再度行います。DCバランスはもちろん狂っていますので、前述のように調整が必要です。

オリジナルの半固定抵抗では、調整がクリチカルなので、もう少し楽に調整できるように、多回転型と交換してみました。抵抗値は、100Ωと、470Ωですが、470Ωが無いので、500Ωを使用しました。真っ直ぐに取り付けると、ドライバーが入りませんので、斜めに取り付けています。



アンプのオーバーホール3 SANSUI AU-α607NRA
AU-α607NRAを購入し、さっそくオーバーホールを行いました。電源トランスのマウントが銅メッキプレートから、アルミアングルに変更されています。

パワーアンプ部の調整ボリュームの位置です。左右対称に2台のアンプが用意されており、アイドリング電流調整ボリュームが2個有ることでそれが良く判ります。NRAの場合、ドライブ段の動作電流が多くなっており、かなり発熱していますので、ハンダ付け劣化が起きやすくなっており、このアンプでも、対シャーシ間DC電圧調整ボリュームがダメで、他の部品も、ハンダ付けが輪になっており、ハンダ付けをパワー回路基板全部に対してやり直しました。XRやMRでは、ここまでの事はなく、それより新しいNRAでは、逆に要注意です。

その後、607XRと同じく、オリジナルの半固定抵抗では、調整がクリチカルなので、もう少し楽に調整できるように、多回転型と交換しました。


ミューティングリレー交換
 
勿論、ミューティングリレーは、金張り接点(G2R-2-AUL)と交換します。取り外したリレーは、測定の結果、全くの良品で問題有りませんでしたが、自家用機ですので、無用のトラブルを避ける為に、交換をしておいて良かったと思います。
リレーを外す際、BPコンデンサを外すと、その隙間から、リレーの出し入れができるようになります。ただし、リレー交換が済んだら、必ず元に戻します。戻し忘れると、少し出力を上げるだけで、保護回路が動作してしまいます。

オークションで購入したアンプで使用されていたミューティング用リレーの接点インピーダンス特性

不良品 No,1(左) 片側がギザギザがすぐに無くなったのですが、0.5Ωもあります。  不良品 No,2(右) 片側の接点は、普通では良品の範囲でしょうが、50mΩ以上あり、導体インダクタンスは計測されておらず、平坦なままです。
 

不良品 No,3  不良品 No,4
 

不良品 No,5  不良品 No,6
 

不良品 No,7  不良品 No,8
 

不良品 No,9  不良品 No,10
 

良品 AU-α607NRA の AリレーとBリレー 6mΩ前後と十分低く、高域で、導体インダクタンスが計測されています。
 

推奨品 G2R-2-AUL(\735)の特性で、5mΩ前後です。 右は、G2R-2A-ASで、10mΩを越えています。一応、新品であり、良品の部類です。但し、この特性では、オーディオアンプ用には推奨できません。
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強電用 G2R-2-Sは、50mΩ以上であり、ほとんど新品なのですが、これでは、オーディオ用途には使用できません。モーターのような負荷であれば、フラッシュで、10mΩ以下になるのですが、微少電流向きではありません。


接点インピーダンス特性を測定したリレー類 黒いのがオークションで購入したアンプに使用されていたG5R-2232で、一番最後に購入したAU-α607NRAで使用していた2個だけが良品で、他は全部不良品という測定結果となりましたので、1995年以前のアンプでは、出力リレーを交換しなければ、使い物にならないという証明ができました。G2R-2-AUL(\735x2)の投資で、往年の名器が蘇るはずです。中古販売店さんは、販売利益だけ考えず、こういったメンテナンスサービスを提供する義務があるのではないでしょうか。もちろん、有償サービスでも問題なく、付加価値の非常に高いサービスでしょう。



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