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特設コーナー ビンテージアンプの修理
知り合いのGSSさんから、ビンテージアンプの修理を依頼されるようになりましたので、皆様の参考になるような、修理事例です。 中古動作品アンプのオーバーホールはこちら

OTTO/SANYO DCA-450 26W+26W プリメインアンプ \63,800 1970年代前半
症状:バリバリノイズがひどくて、使用できない。保護回路が作動し、出力しない時がある。
原因:パワー部、フォノイコライザ部のトランジスタ破損 破損原因は、元々耐圧不足が懸念される回路設計であった事による。(耐圧が50V定格の半導体を電源電圧75Vで使用等)
対策:トランジスタを、高耐圧の物(2SA970/2SC2240)に交換、基板ハンダ付けクラック補修、SW、VR類接触不良修復 
回路図が入手でき、修理に役立ちました

電源電圧が、耐圧を越えていても、動作している電圧は、A級増幅の場合、半分ぐらいで、確かに、耐圧を越えないという主張ができますが、設定している信号レベルの時だけの話であり、大振幅で動作させれば、電源電圧がコレクタやエミッタにかかり、破損してしまいます。しかし、他社が、50V止まりの中で、75Vという思い切った電圧は、珍しい設計であったと言えます。2SC2240なら、120Vなので、75Vなら十分に耐えられますので、今後のトランジスタ破損は無いと思います。


SANSUI AU-α507R 70W+70W プリメインアンプ \64,800 1992年
症状:Rchの音が小さい、時々音出ない
原因:パワーアンプ基板のハンダ付けクラックとメインボリューム左右の特性違い(ラウドネス回路用センタータップの断線)
対策:パワーアンプ基板のハンダ付け(ドライブトランジスタのECBは必須)、メインボリューム交換(交換部品は、オークションより、ジャンク品アンプを購入)

センタータップ付きボリュームは、絶滅種となり、程度の良い中古品からの移植でしか対応できません。その為、修理不可とも言えます。
大型電源トランスと、10000μFのコンデンサという電源で、普及価格帯としては、立派な電源です。607シリーズでも、トランスは同じぐらいの大きさで、コンデンサも12000μFと、容量差は、僅かです。
 AU-α507R 中央の黒いリレーは、G2R-2-AULに交換しました。
2013/06/13


Marantz #1070 40W+40W プリメインアンプ \69,900 1975年
症状:電源スイッチONにならない。ジーという音がスイッチから出ている。
原因:背面サービスコンセントから、定格を越える電流負荷を与えた事による、接点損傷
対策:交換部品も無いので、電源と連動している、スピーカーミュート回路用接点にて、2回路のパワーリレー(コイル電圧AC100V)を駆動し、電源と、ミュート回路を動作させる。


Marantz PM-64AV 90W+90W プリメインアンプ \60,700 1989年
症状:左右のバランスが悪い バリバリ雑音
原因:マスターVR、バランスVR、トーンVRガリ雑音 パワーアンプ出力リレー接点劣化 修理後もバランス不良偏差 1.6dB
対策:各VRをクリーニング特にバランスボリュームは、
一度基板から外さないとクリーニングできない。リレーは、定番G2R-2-AULに交換 ピンジャック類クリーニング

修理完了後の検査で、Rchが1.6dBほど高かったので、NF回路15kΩに並列に82kΩを取り付けて、調整を行う。偏差0.1dB以内とすることに成功。成功の鍵は、パワーアンプ初段のIC STK3062Wの推奨回路をロシアサイトより入手し、2番、14番が、NFBのかかるピンであることが解かったことによります。
フロントパネルを外すには、予めボリュームや、セレクトSWを外さないと二次故障を引き起こします。
 
PM-64AV 
2013/11/08


LUXMAN CL35U 真空管式プリアンプ \98,000 1972年
症状:接触不良、ヘッドホンアンプDC漏れ、利得不足
原因:切替スイッチ接点の経年劣化、及び設計思想の違い バランスボリューム回路配線違い
対策:スイッチ接点の洗浄及び、大電圧動作による、自己浄化の促進。ヘッドホンアンプは、軽い改良を施す。バランス回路誤配線修理

CL35Uヘッドホンアンプ改造方法
CL35Uヘッドホンアンプは、2SA562/2SC735による、純コンプリアンプですが、単一電源なので、カップリングに、470μF/6.3WVの電界コンデンサを2個並列で使用しています。必要容量が1000μFのところを、当時の部品規格の制限で、2個使用したと推測できます。1000μFは、8Ωの場合の20Hzカットオフとなる容量です。部品が並列になるので、リーク電流も2倍に増えます。当然、現在の部品では、1個で済ませる事ができ、しかも耐圧の高い物が使用できますので、リーク電流の点でも有利です。使用したのは、ルビコンの1000μF25WVです。さらに、空いたスペースに、1μFのフィルムコンデンサを取付けて高域特性を向上させます。カップリング電界コンデンサ以降は、直流負荷がオープンなので、ヘッドホンを接続すると、充電電流が流れ、パキッ!という雑音が出てしまいますので、抵抗を取付けます。使用した抵抗値は、620Ωですが、470Ω〜1kΩでも可です。10Ω台の低い数値の物は、許容電力に注意しなければなりません。ただのリーク逃しなので、620Ωという音響と馴染みの深い数値としました。このような改造により、オリジナル時の呆けた音から、解像度の高い音に変わりました。録音モニターヘッドホン定番のSONY MDR-CD900STで、長時間聴いてみましたが、お奨めできる水準である事を確認しました。8Ωを直結で鳴らす場合、真空管では、トランスが必要で、ここを半導体で直結としたのは、英断でしょう。ヘッドホンとはいっても、プリメインアンプなどの、直列抵抗経由の音と比較し、かなり良い音となっている筈です。同時に、将来の故障予防で、電源の引出し線のハンダ付けをやり直します。レストアをされる専門業者は、ここを押さえておくと、良心的と言えるでしょう。この時代の真鍮製ハトメを使用したハンダ付けは、熱膨張率の違いにより、クラックが発生しますので、直接リード線を銅パターンに接触させてハンダ付けしておくと良いでしょう。

 左が使用した部品で、右の2個がオリジナルです 2013/06/19

2013/06/19 2013/06/19
 左が、オリジナルで右が改造後です。電源のブリッジダイオードは、SD-1Bから1N4007に新しくしました。コンデンサは、上の写真のように、電界コンデンサとフィルムコンデンサのセットで交換してあります。リーク逃しの抵抗は、基板裏側のヘッドホンジャックへの出力線(下側)とアースパターンの間にハンダ付けします。赤色が、Lch、白色がRchで、現代の色使いと逆になっています。電源基板へのリード線は全て真鍮ハトメを使用していますので、全てハンダ付けをやり直します。ネットでは、OPアンプで直接ヘッドホンを鳴らした評価が散見されますが、OPアンプは、8Ω負荷を推奨しておらず、場違いなので、音質差が出やすいと思います。OPアンプには最低でも、トランジスタ1段のバッファアンプを付けておく必要があります。この点で、LUXのCL35Uは、大正解で、初段カップリングは、タンタルコンデンサを使用しシンプルな回路構成で、部品点数的には物足らないのですが、好感が持てます。
最終チェックで、トータルゲインが定格に合致しないので、原因を追及したところ、バランスボリュームでの減衰が大きいことが判明し、結果は誤結線と、不思議な抵抗の存在でした。数値は150kΩで、たぶん中点の利得アップ用にオリジナルには無い抵抗が挿入されたと推察しました。本来のACカーブを使用したバランスボリュームは、中点で-3dBで、左右どちらに回しても全体の音量が一定になるのが正解で、本来の配線に戻しました。正常に戻した場合、AUX 180mV入力で定格値2V出力となりました。古い物で、修理履歴がわかりませんので、どの段階でこのようになったのか判然としません。

  2013/06/21
誤配線の原因は、500kΩACボリュームへの、LRの取り違えで、中点で、損失が大きくなりすぎたので、調整の為に150kΩを並列したと想像できます。右側は処置後です。

 CL35Uを試聴 2013/06/21
最終テスト風景で、4WAYマルチアンプシステムのコントロールアンプとして、アナログレコード(デイブブルーベックTAKE FIVE)演奏中です。PHONOで使用した場合、軽いマイクロフォニックノイズが有り、真空管の特徴を表しています。
音質は、真空管アンプなので、抑えの効いた鈍い音を連想しそうですが、そうではなく、華やかというのか、アナログレコードに期待する音質と共通点が多く、好ましい物でした。コントロールアンプとして、現役で通用します。後方に見える、SANSUIのブリッジ出力の、典型的なトランジスタ式アンプとの組合せでも、効果的で、CL35Uの魅力が引き出せています。CL35Uでは、出過ぎぐらいに、シンバル等の金属音が響き、いつも使用している、SANSUI AU-α607XRのPHONOイコライザアンプがやや曇った音に聞こえてしまいました。

LUXMAN MQ60C 真空管式パワーアンプ \89,000 1974年
未通電チェックの結果、右側のLch用出力トランスOY-15-5Kの一次側、片方が断線で、出力管グリッドバイアス回路の半波整流ダイオードDS-16A(Vfが、2.1Vで異常値)が破損しており、プレート動作電流のトラブルによる断線と思われます。
 MQ60C内部 2013/0617
 無帰還アンプと称されていますが、無帰還ではなく、初段6267、次段12BH7Aのカソードには、パスコンが無く、ここでは、NFBがかかっています。出力トランスと出力管には、NFBがかかっていませんので、この部分については、無帰還です。高周波的には、シールド外皮と出力の、12kΩ:180Ωの分圧点が接続されて帰還ループがあるようですが、ごく微量です。原音追求ではなく、オーディオ趣味の、いかにも真空管アンプらしい音が出そうで、半導体アンプとは、全く趣が異なります。良いも悪いも全てがMQ60Cの音なんでしょう。このアンプであれば、コンデンサやコイルのネットワークを、まるごと含んだビンテージスピーカーの音に文句を言う必要は無いでしょう。
 コンデンサ類は、0.22μF350V MPコンデンサは、絶縁不良が確実で、
250V絶縁抵抗計でも、そのような値になりました。こうなると、0.22μF630V OILコンデンサも疑わしく、MPコンデンサほどでは無いのですが、絶縁不良状態でした。結果的に写真中の、OILコンデンサ、MPコンデンサは全交換処置とします。MPコンデンサの古い物は、容量変化と、絶縁不良が多く、電界コンデンサよりも不良発生率が高いので、真空管アンプや、ビンテージスピーカーでは要注意です。一方の悪役、電界コンデンサの故障が増えたのは、PC普及期が圧倒的に多く、製造不良に起因します。故障したオーディオ機器中の電界コンデンサは、高温環境での使用による、電極からの液漏れが多く見られます。
 故障の最大原因が、写真中に見られるニチコン製半固定抵抗の断線で、定格範囲を越えて使用した事です。真空管回路では、電流は僅かでも、電圧が高いので、電力は大きく消費しています。さらに、動作時は、電熱器と呼べるくらいの発熱で、環境温度が上昇し、定格消費電力値その物が小さくなります。すなわち、定格値が0.5Wという規格でも、許容できる電力が周囲温度に反比例して小さくなってしまう事は、修理技術者ならば、知っておかねばならない事です。トランジスタ初期の頃では、熱暴走に神経を使い、半導体の放熱に関する記事が多くそれなりの知識が持てたのですが、抵抗に関して、周囲温度による制限が加わるという記事が少なく、関心が少なかったと思いますが、抵抗器メーカーの技術情報を見れば、正しい知識が付くと思います。
 動作確認だけであれば、固定抵抗で十分なので、さっそく、ムラード位相反転回路12BH7Aのカソード抵抗と、プレート抵抗を固定抵抗に交換し、全真空管の簡単な動作確認及び、最大出力25.9Wで、正常動作を確認できるに至りました。試験結果において、残留雑音が、4mV程度と多めでしたが、底板を付けない値ですので、まずまずといった所です。50CA10が4本共、動作確認が取れて一安心です。
 出力トランスOY-15-5kの直流抵抗ですが、二次側0-4Ω間 520.2mΩ、0-8Ω間 726.6mΩ、0-16Ω間 1.01Ωで、一次側B-P1間 161.8Ω、B-P2間 164.9Ωでした。良否判定の基準にして下さい。出力側の配線抵抗は、トランス−出力ターミナル間 Lch COM側 34.4mΩ、8HOT側49.3mΩ、Rch COM側 20.7mΩ、HOT側 57.7mΩです。出力インピーダンス切換用ロータリーSWの接点抵抗は、0.1Ωを越えているポジションがあり、接点クリーニングと、0.1Aの電流を流してのリフレッシュを行い、12mΩまで低くできました。
修理開始
 発注しておいた部品が到着したので、さっそく部品交換をしました。0.22μF350V MPコンデンサ、0.22μF630Vオイルコンデンサを全て、630Vメタライズドフィルムコンデンサに交換します。念の為、もう一度
250V絶縁抵抗計で、不良コンデンサを確認し、全てがリーク電流の多い状態であった事を確認しました。次いで、問題は無かったのですが、10μF100WV電解コンデンサを10μF160WVと交換します。断線していた半固定抵抗を外し、代わりに固定抵抗を取り付けます。12BH7Aカソード抵抗は、3.3kΩ2W酸金、プレート抵抗は、2.4kΩ、3.3kΩ+1kΩ半固定抵抗と最終的には、半固定抵抗を使用して、ムラード型位相反転回路のACバランスを取りました。ACバランス調整は、いたって簡単で、正弦波を入力し、出力をWaveSpectraで表示すると、第2次高調波が見えますので、その成分が最小になるように半固定抵抗を回せば、最良点がピタリと決まります。表示される歪率は、0.01%前後で、出力管と出力トランスにNFBがかかっていなくて、この歪率は、賞賛ものです。
 修理で外した部品 2013/06/24
古いオイルコンデンサーや、MPコンデンサーは、同時期の電解コンデンサよりも、絶縁が低下しており、交換対象です。変な音質信仰で、何とかのオイルコンデンサーとか言って珍重せず、信頼性も確保したいものです。

修理完了後の内部
2013/06/27
大型のオイルコンデンサの代わりに、メタライズドフィルムコンデンサを使用し、耐圧は、630Vで統一しました。頼りなさそうに見える、古い半固定抵抗ですが、そのまま使用しました。断線していた、半固定抵抗は、位相反転回路のカソードは、3.3kΩ固定抵抗、プレートは、2.7kΩと、3.3kΩ+1kΩ半固定抵抗(サーメット0.5W)という構成です。調整は、efuさんのWaveSpectraで、2ndの歪みを観測して行い、最終的には、4Ω負荷にて、1kHz、0.01%前後という結果になりましたが、FFTソフトで最良点が簡単に探れるのも新しい発見となりました。出力管のグリッドバイアスは、プレート電流40mA台で調整しました。ただし、出力トランスの直流抵抗が、P1,P2で2%ほど異なっており、この差も考慮して、調整しました。出力段でのバラツキが、歪率に占めるウェイトは少なく、直流的な調整だけを行えば良いでしょう。
左右の出力偏差は、0.3dBでしたので、更に追い込みをかける為に入力に4.7kΩ半固定抵抗を取付。8Ω選択時で、0.01dBとしています。ただし、4Ω、16Ωでは、それでも、0.1dBの誤差が出ます。残留雑音は、0.5mV以下、最大出力25.9W、高域限界 Lch65.1kHz(-3dB)、Rch68.8kHz(-3dB)、常用時消費電力は、150W、ボンネットやケースは50℃ぐらいという測定結果でした。
 残留雑音がRchで多く、歪みも、Lchより多く0.03%台と計測されていましたので、6267を左右で入れ替えて、ノイズの確認を行い、初段のNEC製6267から出ていることが確認できました。いわゆる、寿命としてのノイズなので、左右とも交換するとして、ヤフオクで探しました。良品は結構な値段が付いており、触手が伸びず、旧ソ連製の互換管6J32Pを見つけ、それを手配しましたので、良い結果を期待したいです。検索より、球露屋さん曰く
素直な耳をお持ちの豪腕クォード愛好家、勇者ラックス愛好家」の部類になってしまいそうですが、技術者としては、どんな物なのか、自分の耳で確かめたいと思います。幸い、初段は、カソード帰還がかかっているので、多少の誤差は、吸収できます。6267は、NEC管のみならず、松下管でも、同様にポップノイズを出す物があります。MQ80では、LUX管となっていますが、構造は、NEC管に近い印象です。
左は、NEC製6267 右は、ソ連製互換管6J32P
2013/07/01

6267使用時のプレート電圧140.63Vに対し、6J32Pでは、124.59Vと電流が多く流れたのですが、他のWEBサイトの情報を総合して、6J32Pの方が正解です。もう1本の6J32Pとの測定では、125.48V、125.93Vとプレート電圧差0.45Vであり、特にペアリングを行っていないのに、バラツキが少なく、品質は良いと思われます。音質は、6267と、6J32PをLとRに分けて取付けて、モノラル音源で違いを聴いてみましたが、差は感じられませんでした。シールドケースとピンの材質が特徴的です。6267三極管結合アンプの交換用として選択肢が一つ増えたことになります。
修理後記
貧乏学生時代に喉から手が出るほど欲しかったLUXのトランスによるプッシュプルアンプで、友人達が、6BQ5や6BM8などのプッシュプルアンプを製作し、それをうらやましく見ていましたが、今回の修理で、一気に、辿り着き、憧れの高級車を手に入れたような気分で、このような巡り合わせに感謝です。6RA8シングルアンプしか知らなかったのが、修理とはいえ、50CA10プッシュプルアンプに大出世しました。
MQ60Cを修理していて、ムラード型位相反転回路のバランス調整に、FFTソフトが極めて便利に使用できたというのが、最大の収穫でした。


LUXMAN MQ80 真空管式パワーアンプ \169,000 1974年
修理を開始したMQ80 No,M703181 CSPP方式(クロス・シャント・プッシュプル)という珍しい回路で、電源は複雑です。出力トランス一次側は、600Ωと、MQ60の5kΩと比較し、低い値となっており、内部抵抗が低くくなる設計です。又、カソード巻線があり、トランスの専用巻線からカソードにNFBが掛かっています。
2015/10/15

通電確認の前に清掃を行い、部品の劣化具合を目視点検します。
内部点検の結果、バイアス調整用電源回路の160WV100μF チューブラー型電解コンデンサが、パンクしていました。原因として推測できるのは、耐圧不足です。

160V100μF電解コンデンサの電圧を測定しました。電源立ち上げ直後は、200Vをオーバーしており、安定後も160Vを越えたままです。古い製品ですので、現在の物と比較して、耐圧に余裕が有ったのかも知れませんが、長年の使用に耐えられなくてパンクした模様です。
修理を行っている No,M703181 と No,40600800 の2台で確認しており、改良されていない限り、共通事項で、修理をされる場合は、必ず確認のうえ、350WVの物と交換される事をお奨めします。
 
2015/11/13

修理では、350WV100μFを取付けました。電圧グラフは、そのコンデンサにかかっている電圧です。これならば、安全に使用できます。同一基板の47μFも450WVに変更。
バイアス回路の異常により、他で発生しそうな故障を探してみると、Rchの出力トランスが断線していました。Lchはセーフでしたので、モノラル使用ならば、音が出せそうです。

2カ所有る電解コンデンサの耐圧不足ですが、その実測電圧グラフです。350Vでは耐圧不足なので、400V耐圧に変更。
 
2015/11/13
350V100μF+100μFのブロックコンデンサの電圧で、左が、100μで使用している箇所で、右は、並列(200μF)の箇所です。今まで破損していないのですが、やはり問題視すべきでしょう。このブロックコンデンサは、アンプのルックスに影響しますので、そのまま残し、シャーシー内の空いている所に、新しいコンデンサを取り付ける事とし、400V100μと400V220μFで代用する事とし、首尾良く、105℃品を入手できましたので、これで修理を進めることにします。
105℃品2個と、高耐圧チューブラーコンデンサ取付 
2016/01/30

MQ80 No,40600800を入手、出力トランスを交換して再調整を行いました。

再調整は、使用説明書に詳しく解説されていますので、その通りに行いました。
MQ80 調整方法
調整は、両ch共、バイアスを左一杯、DCバランスをボリュームセンターにして電源を投入します。
30分ぐらい通電し、動作が安定してから調整を行います。
最初は、バイアス調整ですが、調整チップ1と2で電圧が、0.5Vになるように、徐々にボリュームを右に回します。その後2と3で、電圧がゼロになるようにDCバランスを取ります。
電流が落ち着いたら、今度は、最終調整で、1と2で電圧が、0.85Vになるようバイアス調整を行います。DCバランスも2と3とで電圧がゼロになるようにします。これで、出力管には、所定の100mAの電流が流れ、Lchの調整完了です。
Rchは、1と4の間の電圧で、バイアス調整を行います。DCバランスは、4と5の間の電圧がゼロになるようにします。最初は、バイアス0.5Vで行うのは、Lchと同じです。
最終的に、0.85Vの電圧が確認できたところで、調整完了です。
無信号時の消費電力は210Wでした。

以上の調整により、No,M703181の6336Aは、所定のプレート電流が流れない所まで劣化している事が判明いました。No,40600800の6336Aは、1本は完全に正常でしたが、新しく見えるGE管が、電流ドリフトが多かったのですが、良質な球が市場に無いので、リスクを取らずこれも使用する事とし、No,M703181へ換装しました。完成試験を行い、内部抵抗が少ない事もわかりました。
2016/02/01


DCX2496
症状:ch6に、ざわつきノイズが目立つ
原因:フラットケーブルのコネクタ接触不良
対策:脱着及び、コンタクト洗浄 (なかなか完治せず、現在でも古いラジオのように、時々たたいて直しています。)


平成26年2月26日に再度、挑戦し、今度は、ネジを外して、基板の裏側を検査して、フラットケーブルコネクタに、品質の悪い(かなり艶の無い)半田が使用されている事が判明し、ホームセンターで入手した、グッドの60/40半田で、きれいな艶が出る半田付けを行いました。現在まで、ノイズは確認できず、完治しそうです。最近購入したDCXでは、右側のRS232C用フラットケーブルコネクタの半田付け不良で、データー保存ができていませんでしたので、品質の悪い半田の問題は、製品初期から現在に至るまで継続しているようです。全国どこにでもあるホームセンターで入手できる半田ですが、当たり前のように高品質の半田が入手できる日本のありがたみが良く解ります。

症状:両ch共、パリパリノイズが出る
 
平成27年12月から平成28年1月の間に、自作したPOST-LPF回路を、本体内に組み込む作業を行いましたところ、上の機械だけが、デジタル入力時に、パリパリと雑音を出すようになってしまいました。半田付け手直しをさんざん行った機械ですので、思い当たる所も殆ど無く、悩みましたが、Wave Gene 5kHz〜10kHz正弦波にて、明解に歪みが出るタイミングが判明し、ch1入力 アナログ AES/EBU切換リレーにたどり着きました。BT-5S コイル電圧DC5Vで、よく見かけるサイズなので、ネット検索で、定格や性能を調べ、秋月から購入した、941H-2C-5D \100で代用が可能と判断し交換し、順調に動作するようになりました。歪率特性も向上しました。不良品という事ではなく、老朽化と考える事象なので、10年くらいで定期交換すると良いかも知れません。このタイプは、日本大手製品でも、良く壊れ、定番修理でした。
 
しばらく、快調でしたが、6月になり、You Tubeを見ていて、又もやパリパリノイズが出るようになりました。ソースがYou Tubeなので、レベル関係を疑いましたが、Wave Geneでの0dB出力でも同じ症状なので、やはりDCX2496のハードウェアトラブルと考え、再三手直しを行っているので、もはや疑う箇所も見あたりませんでしたが、何らかの手を打って解決しないと、廃棄第1号になってしまいますので、修理を開始しました。診断の結果、上のDAC基板が関係しており、他の箇所は、あまり関係しない事が判りました。特に、スイッチングレギュレータ周りに不安定な箇所が有るようで、レギュレーターの動作温度も高いので、その周りの電解コンデンサも劣化していそうと判断し、12個交換しましたが、それでも完治しません。次に、電源からのケーブルに振れてみると、状態が良くなり、このケーブルの両端のコネクタが不安定とし、DAC基板側は、既に半田付け手直し済みでしたが、電源側も含めて、半田付け手直しを行い、何とか上手く行ったようです。
製品末期のようで、あちこちが不安定になっているようですが、しばらくは、これで様子を見ることにします。
DC5V 2回路リレー BT-5S

症状:スクラッチノイズのような雑音
平成28年12月
上の作業後、しばらく安定していましたが、12時間以上の通電後、アナログレコードの針音のような雑音で出始めました。
DAC基板上の電解コンデンサも全て交換済みで、一向に解決もしないので、動作温度の高いレギュレーターを取り外し、放熱板上に取付け、半田付けをやり直し何とか落ち着いてくれました。
2017/01/23 2016/12/25
本格的に3mm厚アルミ板にレギュレーターを取り付けました。別のDCX2496も同じような症状が有り、さすがに、もっと簡単な方法として、銅の圧着端子と、5.5SQIV線を裸にして、レギュレーターのネジ穴に取付ました。
フラットケーブルコネクタ部の接触不良もたびたび発生しますが、DAC基板などで発生する場合は、半田付け手直しで修理可能ですが、パネル面でこれが発生すると、修理不能で、廃棄処分です。
平成29年になってから、度々この雑音に悩まされています。現在は、フラットケーブルの半田を一度、吸い取ってから、もう一度半田付けを行い、この方法でも効果はあるようで、暫くは、雑音が収まります。雑音の発生の有無は、WaveGeneで、2kHz〜10kHzの正弦波で、レベルが、-10dB〜0dBの範囲を入力し、波形の乱れを確認します。雑音の確認や、修理にも慣れてきましたが、製品末期には変わりが無く、次の機種選定をしなければなりませんが、これだけのコスパの高い製品は他に見あたりません。
平成29年10月
配線代えをしていて、通電中に電源が切れ、それ以後、電源が入らなくなりました。原因は、電源基板のD3短絡でした。D3:HER303は、200V3A 使用したのは、ER504 400V5Aで、同じ外形ですが、より高性能な物と交換しました。
2017/11/02 2017/11/03


LG L246WH 24インチPCモニター
10V3300μF 10φx24 
2016/02/21
PCモニターL246WHが電源が入らなかったり、白画面で立ち上がって表示されないなど動作不安定になりました。普段使用しているモニターなので、廃棄するのか、メーカー修理するのか迷い、ネット検索をしてみたところ、かなりヒットして、電源の電解コンデンサが、問題とわかりました。この程度ならば、修理可能なので、修理に取りかかりました。部品の場所は、解っているのですが、分解方法が問題で、初見修理では、高いリスクが伴います。幸いネットには、詳しく写真入りで解説しているサイトもあり、役に立ちました。画面枠を外すのに、少し勇気がいりましたが、何とか外せ、目的の電源部にたどり着けました。このコンデンサは、3個まで並列に入るパターン設計で、パターンは、面積が取ってあり、ここでも放熱させたいという意図もわかります。交換するコンデンサは、同じ物を用意して交換する方法も有りますが、同じ物では、同じように時間で壊れてしまうので、上手くありません。
手持ちの関係で、日本ケミコン製の16WV4700μF85℃を使用しました。パッケージが、16φx26と一回り大きいので、発熱には、余裕が有りそうです。どんな製品でも、必ずウィークポイントが有りますが、それにしても、短命でした。


Mackie ONYX-24.4 No,OM8803
現行のアナログミキサーで、表面実装の基板です。ch1のPFLが時々できないという故障で、いざ修理に取りかかると、故障が再現しません。時間をかけて観察するしかなく、最終的にたどり着いたのが、ダイオードで、片方の電極が剥離していました。
それにしても、何故こんなストレスが掛かったのか疑問に思います。チップ部品を使った製品は、今後も増えるでしょうが、修理は、ますます難しくなるでしょう。今回は、デジカメ写真を参考に回路把握を行いました。

YAMAHA PC4002 No,QH01082 トランジスタ式パワーアンプ 430W+430W at 8Ω 重量43kg 1993年
Ach側 出力を上げると歪む 重量が凄いのですが、ブロック毎に取り外しできるので、パワーアンプ基板の半田付けと、半導体の検査を行い、問題が無いことを確認し、入力基板のチェックを行いました。
業務用機は、入力のHPF、MODEスイッチが有り、信頼度的には、ここがウィークポイントで、定期的にスイッチを動かす事も必要です。XLRコネクターも信頼度は高いのですが、さすがに黒い汚れが有っては駄目で、洗浄します。
この時代は、電解コンデンサの品質は、問題無く、バブル崩壊後から液漏れ事故が多発しています。
2017/01/19
症状的には、STEREO-MONO MODEスイッチも怪しいので、接点洗浄と半田付けの確認を行い、良好に動作するようになりました。
電源電圧は、±98Vで、大出力アンプの凄まじさが実感できますが、スイッチング歪みも無く、歪率特性、SN比共に全盛期の品質でした。
プロ音響用なので、クーリングファンが2基有りますが、60℃まではOFFで、10W連続運転でもファンは動作せず、オーディオ用途でもいけそうです。

BSS FCS960 30pt グラフィックイコライザー
症状:音出ない 及び ch2 10kHz下半分接触不良
音が出ないのは、電源ヒューズの断線でしたが、容量0.5Aで、回路電流0.32Aでしたので、交換のみの対応としました。
10kHzの動作で、上半分は良好でしたが、下半分が接触不良は、半田付けが剥離しており、外部から強い衝撃が加わったようです。無通電でも、正常にPASS出力します。
パネル取付プラスネジの頭の形状が、ドライバーと合わず、修理前から、つぶれた状態で、これで相当な苦労をしました。

BSS FDS360 チャンネルデバイダー
症状:出力しないchが有る。
周波数固定式で、修理した物は、250Hzが実装されていました。リンクウィッツ24dBフィルターで、各チャンネルには、リミッター機能がついています。周波数の精度も申し分なく、測定器並みの基板はさすがです。
基板点検にて、レギュレーター出力側の電解コンデンサの液漏れが有り、電解液で、抵抗も腐食し、断線していました。部品交換と、基板の洗浄を行いました。
尚、出力仕様は、3番HOTで不平衡出力なので、現在の2番HOT機と混在する時は、位相にも注意が必要です。
FCS960と同様に、パネル取付プラスネジの頭の形状が、ドライバーと合わず、修理前から、つぶれた状態で、これで相当な苦労をしました。特に2本ほど、固着しており、ドリルで、ネジ頭を丸ごと切削し、パネルは外せたのですが、ネジ部が更に硬く、ドリル歯も折れて、危険で、やむを得ずネジ部を残しました。


JBL 3105 2WAYネットワーク 1973〜1983年
症状:2台間で、HF側のレベル偏差が大きい
定格銘板が無くて、仕様がわからないので、オーディオの足跡を参照 さらにpdfもDLして、LFが16Ω HFが8Ωで、7kHz 12dB/octという仕様を確認。
最初に、LF側の接触不良があり、プッシュターミナルの下側の分解清掃を行う。裏パネルは、一見ネジ止めに見えたが、接着固定されているようで、ネジではなく、リベットを外す必要が有り、一気に難易度アップ。
ドリルで、リベットを切り抜き、さっそく内部の点検と、ターミナル取付ネジと、電極の洗浄を行い、特性の検査を行う。

上は、レベル偏差を求めたもので、左がLF側 右がHF側で、HFのATTは、フルです。フィルターが効いてレベルダウンしているHF側1kHz以下の範囲は、測定範囲外なので、無視してください。
結果は、LF側は、現代の製品と比べても精度が優れており、問題無し。HF側は、1〜2dBの偏差で、この違いに気が付いたユーザーの聴力は本物です。
12dB/octフィルターなので、コンデンサ1.5μFとコイル0.6mHの双方が関係してきます。コイルによる調整は、難易度が高いので、コンデンサによるトライを行い、結構満足できる結果が得られましたので、正式に調整で使用した部品を取付。
修理後の偏差を測定

左はATTフルで、右側は、ツマミの4のポジションで、この位置は、-3dB相当です。2kHz〜20kHzで、満足できる結果となりました。位相的な面での確認で、LFとHF間でリサージュをとり、クロスオーバーポイントで、180°反転する事で、2個のクロスオーバーポイントが合っていることを確認しました。クロス周波数は、6.2kHzで、カタログ定格値が7kHz、一方、回路図によれば、6kHzなので、自慢の逸品に仕上がりました。
2017/01/18
LF HF共に、黒のプッシュターミナルなので、極性がわかりませんが、1+ 2− 3− 4+です。
バタワース2次フィルターでは、隣り合う極は反転ですので、実際のスピーカーの取付での極性は、LF側 1+ 2−で、HF側 3+ 4−となります。
3WAYとして、既存の2WAYネットワークにプラスした場合は、スコーカーがLF側で、1− 2+ ツイーターがHF側で、3− 4+で、単独2WAYで使用した場合の逆になりますので注意してください。


修理に使用する部品について
発熱トラブル
 ビンテージアンプ品を修理する場合の、最大の問題点は、交換部品です。上記のように、既に、メーカーが存在しない場合や、メーカー修理不能の可能性があります。仮に、メーカーが、場合によっては、修理が可能ですといった表現もありますが、完全修理や、一部小改造がふさわしい場合は、メーカーにその点を要求するのは不可能です。幸い、アンプの場合は、汎用部品で修理可能な事が多く、定格値が合っていれば、不都合無く動作する事が多く有ります。汎用部品で修理する場合に、注意する点は、火災の危険性を見逃さない事でしょう。誰しも、火災が起きるような修理をするつもりが有る筈は有りませんが、例えば、抵抗を1本断線という理由で、同じ定格値の部品に交換したとします。部品を新品にすれば、断線理由の如何に問わず、しばらくは動作します。しかし、断線の本当の原因が、他の部品の劣化である場合、そちらを解決しなければ、又、同じ故障が起きてしまいます。それと恐いのは、ちょっとした、部品への圧力や、衝撃で、他の部品が壊れたり、ハンダ付けクラックが発生する、いわゆる二次故障を招く事です。現在では、無接触で温度測定ができますので、修理完成検査時に、丹念に温度分布を調査する事で、そうした事態を予防できます。現在、Raytek MINI TEMP使用しており、℃と華氏の切換と、レーザーポインターが付いています。
定格値選定
 定格値には、電圧、電流、電力などの数値がありますが、上記修理例の半固定抵抗を交換する場合ですが、既に同じ部品が無く、定格電力が少し不足する場合が有ります。定格電力が、0.5Wでも、アンプ内部が60℃になるような場合、0.3Wぐらいしか保証されなくなりますので、そうした問題の有無を検討します。もし、問題があれば、半固定抵抗を半分の数値にして、残り半分を固定抵抗に受け持たすのも安全な方法です。勿論、調整範囲が狭くなりますが、最良点さえ、確実に押さえれば、良い筈です。又、調整範囲が狭いという事は、最良点を精密に探し出せるという利点も副次的に発生します。コンデンサでは、耐圧に注意します。電界コンデンサは、耐圧を越えて使用すると、白煙を上げて破裂します。大型コンデンサは、相当な破裂になります。容量は、電源のフィルターの場合は、大は小を兼ねますので、33μFを47μFで置き換えても、支障なく動作します。無極性コンデンサを交流回路で使用する場合は、使用電圧に対して、2.82倍(約3倍)見ます。スピーカーのネットワークはそれに該当しますので、100V耐圧のBPコンデンサを使用して、短絡してしまった事故例があります。メーカーに対し安全の為、報告しましたが無回答でした。
半導体品番
 メーカー修理では、さすがに同一品番の純正部品を使用しますが、メーカー修理対象外となったビンテージ品では、同一品番は入手困難のケースに良く遭遇します。今あるかどうかは、判りませんが、CQ出版からトランジスタ互換表が出版されていますので、そちらを頼りに探すのが第一の方法です。電源の整流ダイオードは、逆耐圧と電流容量さえ同一以上であれば、全て使用可能です。ブリッジ整流では、4本同一品で置き換えます。ショットキーバリヤーダイオードを普通のシリコンダイオードと置き換えても、電源では、問題なく使用できます。温度補償用シリコンダイオードでは、時々3個直列になったような製品もありますので、そのまま置き換えできませんが、多くの場合、バイアス電流が、規定値より低くなりますので、そこで間違いに気付きます。
パワートランジスタが1本だけ故障している場合、1本で交換するのか、良品も外して、2本共交換するのか、迷うところです。こういった場合、修理やアンプに対しての考え方で、様々な対応が考えられます。同じ品番のトランジスタが入手できた場合は、PNP-NPNの組合せの場合は、ペア性能にあまりこだわらずに交換しても、NFBの効用で、特性の劣化は少ないです。違うコンプリ品番の場合は、、ペアで交換します。パラレルプッシュプルの場合は、hFEを有る程度合わせなければなりませんが、誤差も有る程度は許されます。とはいっても、hFEランクの異なる物同士は、避けた方が良いでしょう。全く互換品が無い場合は、パッケージが同一で、最大定格が、上回っている物とし、遮断周波数は、高いにこした事はありませんが、60MHzを40MHz品としても、回路が不安定になることは少ないです。このような修理になった場合、高級品アンプでは、LR共に交換対象となりますが、費用面で拒否された場合、故障chだけの交換とします。この場合、左右で違うパワートランジスタを使用しますが、この状態の音を聞き分ける事ができれば、相当な達人です。
 ややパッケージの大きい中電力のトランジスタは、パッケージ規格を合わせ、最大定格に注意します。ただし、ドライブ回路などで、150mAほどの回路であれば、Icが、3Aの物を2Aに換えても問題ありません。中電力トランジスタには、内部でダーリントン接続された物がありますので、ダーリントントランジスタを交換する場合は、ダーリントントランジスタを必ず使用します。
ノーマルトランジスタの代わりとして、ダーリントントランジスタは使用できません。
 信号用トランジスタの場合は、耐圧性能が問題ですので、回路電圧以上の耐圧があれば、品番違いでもそのまま使用できます。例えば、2SC1000の代わりに、2SC2240を使用する場合などが該当します。半導体その物が、温度によって特性が変わり、hFEも同一品番、同一ランクでも、倍の開きがあります。東芝のGRランクは、150〜300の範囲とされ、真空管のμがほぼ一定とは違いますが、多くの半導体回路は、そうした誤差を許すように設計されており、それが、NFBの効用です。


音響機器の故障実例

マイクロホン

落下等による、ウインドスクリーン周辺の機械的な破損及
ダイナミックマイクのユニット断線
繰り返しストレスが有る箇所の金属疲労による断線。シールド線外皮
コンデンサマイクユニットのアース緩みによるハム雑音
ピンモールドの取付ネジ緩みによるハム雑音
大声での長時間使用にて、シングルラインICのリード線金属疲労による断線や、電流集中している、ピン接合部の半田付け劣化

スピーカー
経年劣化による、エッジの破損 ウレタンエッジ、ゴムエッジ
アルニコ磁石の経年による、減磁
過大入力による、ダンパーの破損、ボイスコイルの焼損
落下による、ホーンスロート部の割れ
寿命的な、ボイスコイルと、取り出し線の接合部の断線 大型ウーハーに多いが、パチンコ店での小口径スピーカーでも発生

アンプ類
入出力端子の機械的な破損 取付部の半田付けクラック、RCAジャックの心線側接触不良
ミューティングリレーの接点劣化による、小音量時の歪み
高温部品近くの電解コンデンサの容量抜け、積層セラミックコンデンサの電極接触不良
特定の年代の、電解コンデンサのリード接続部不良による容量抜け 樹脂ベースの小型コンデンサと、普通品の2タイプ
古いオイルコンデンサ、MPコンデンサの絶縁不良 絶縁抵抗計により、測定できる
消費電力の多い抵抗のリード線部分の半田付け劣化
真鍮ハトメと、半田の間の割れ 異種金属の熱膨張率の違いで発生
実装密度の高いコネクター端子の半田付けクラック 目視では、見つけられない
特定の品番の半導体トランジスタ、ICの製造工程を原因とする不規則雑音の増加
ゲート保護不十分のC MOS IC 劣化
メモリー電池の消耗放置による、プログラム消去
半固定ボリュームの接触不良による、調整値の変動 DCドリフト、アイドリング電流
落雷を原因とする、入力側半導体の破損、電源からの回り込みによる、パワーアンプドライブ回路半導体の破損
低インピーダンス負荷、長時間駆動や、、ブリッジアンプの絶縁不良負荷駆動による、パワートランジスタの焼損


以上の例は、製品の修理を行ってきた中の、実例の一部分ですが、参考にしてください。
闇雲に、部品を大量に取り替えるのではなく、原因を正確に把握してからの適切な処置に心がけましょう。

テレホンピックアップで、漏洩磁束(リーケージフラックス)を検知
アンプを自作する場合、雑音発生源を探る便利なツール SONY製 テレホンピックアップ TP-15 です。


本来は、黒電話の音声を録音する為のテレホンピックアップです。これを使用すれば、電磁雑音が発生しているかどうかが簡単に判ります。電源トランスからの漏洩磁束や、蛍光灯の雑音、ワイヤレスマウスが発する雑音、ノートパソコンの雑音などの検知と、応用範囲は広く、普通のマイクでは、音波でないと収音できないのですが、テレホンピックアップでは、音には反応しないで、電磁ノイズにだけ反応します。マグネットを組み合わせると、電磁ノイズを発しない物体の振動も検知できるようになります。聞いただけの話で終わりがちな振動の実体をつぶさに検証し、可視化する為に役立つと思います。人体も電磁雑音が乗っている事も観測できました。


チャンネルデバイダのフィルター特性の実測結果

スピーカーのタイムアライメント