dbx VENU360 実践的使用法        令和元年11月更新                                  ホームに戻るボタン 

3WAY チャンネルデバイダーの現況
 マルチチャンネルシステムを構築するのに欠かせないのが、電子フィルターであり、音を各スピーカーに割り当てるチャンネルデバイダー(エレクトロニッククロスオーバー)と呼ばれる機器を使用します。地方の販売店で初めて見たのは、TRIO F-6000でしたが、半導体アンプとして、人気の有ったメーカーの製品なので、何をどうなのか良く解らず、所詮、高嶺の花なので、眺めるだけでした。カタログは、3WAY分のパワーアンプ出力の合計を表示して、そのパワーを強調するといった感じでした。KA-6000 M-6000 F-6000でアンプシステムを構成していました。他社も右に倣えで、そこそこに充実していました。それから50年が経ちましたが、。
 製品は、大きく分けると、アナログと、デジタル方式になります。アナログ方式は、プロ音響用のリンクウィッツライリーフィルターによる、クロス周波数連続可変式が主流で、廉価な2WAY専用機と、ステレオ3WAY機があります。プロ音響用のデジタル機では、アナログ入力の他に、AES/EBUのデジタル入力に対応しています。スピーカープロセッサーと呼ばれる機種もありますが、チャンネル分割以外に、ミキサーと、パワーアンプの間で、広範囲なルーティングと、音の処理を行います。純粋なオーディオ用途では、アキュフェーズ DF-65が有り、デジタル入力は、S/PDIF 同軸、光、HS LINKという民生用フォーマットに対応しています。
 マルチWAYスピーカーの音が、正しく空間合成されるには、音の到達時間が同じになるような、ユニット配置が必要なのですが、ドームスピーカーのような、振動板の浅い物では、若干の工夫で達成できます。一方で、音源の指向性を鋭くして、明瞭度を高くできるホーンスピーカーでは、奥行きが長くなります。ホーンの奥行きを短くするという、妥協的な製品もありますが、音質は今一です。音質の良い奥行きが長いホーンスピーカーを活用するには、電気的に遅延をかける事が必須となり、チャンネルデバイダーでそれを行うことになります。dbx社では、その物ズバリ、ドライバーアライメントディレイという機能となっています。ベリンガー社では、ショートディレイと呼ばれています。アナログチャンネルデバイダーにおいて、LOWにだけ遅延がかかる、CX3400 S-3-way の2機種が有ります。ディレイを全チャンネルに、詳細に設定できるのが、デジタル方式の強みですが、96kHz対応のDCX2496を長らく愛用してきました。改造により、究極の性能となりましたが、劣化が目立つようになり、同じく、96kHz対応で、dbx VENU360をテストする事としました。dbx社には、4WAY対応のDriveRack4800という高級品がありましたが、手頃な3WAY用普及品には、何故かディレイ機能がなく、VENU360の登場で、その空白が満たされました。48kHz機では、EV社 DC ONE、DX46がありますが、PA用途に特化した48kHz機なので、購入には二の足を踏んでいました。他にSP2060がありますが、ディレイの詳細が取説では知ることが出来ませんでした。VENU360でも事情は同じで、何故かディレイの詳細がありません。

VENU360
ディレイ

pdfマニュアルだけでは、ディレイの詳細が掴めないので、これを購入している先人に確認をしたところ、ホーンスピーカーのアライメント調整は十分できるという回答でした。又、実機にても確認をし、0.02mSecステップ(0.68mm)で設定が可能でした。
ディレイの最小ステップは、DCX2496が、2mm に対して、VENU360が 6.8mmでした。DF-65では、5mm単位ですが、DF-65の一割という価格で考えれば十分です。
残留雑音
標準DCX2496 127.8μV(80kHz) 19.3μV(A)
改造DCX2496  26.7μV(80kHz)   3.7μV(A)
VENU360     20.9μV(80kHz)   6.4μV(A)) 0dBFS +13.6dBm時 SN比 115.3dB(A)
特徴
ラックに組み込むのが前提なので、電源スイッチが有りません。当然、ゴム足も付いていませんので、据置の場合は、ゴム足を取り付けます。ゴム足で物足りないのなら、タカチのアルミ製インシュレータもお奨めですが、穴開けが可能か不安です。
音が出るまでの時間が28秒と長いので、PAでの電源トラブルは禁物です。消費電力は15Wです。排熱ファンが付いていますが、普段は動作しませんので、静かな環境でも使用できます。据置での長時間動作時の温度は、32℃(室温21℃)でした。
スピーカーを設定するのに必要な全ての機能が備えられています。専用ソフトにより、PC又は、タブレットによる外部コントロールが可能です。○○ハウスさんのページからリンクでもたどり着けますが、Android Mac OS X Windows iOS 7.0 等に対応した4種類のコントロールソフト(無償)が用意されています。

出力の並び順
、一般的には、Lch L、M、H Rch L、M、H が多いのですが、VENU360では、Lch H Rch H Lch M Rch M Lch L Rch L となっていますので、接続時に注意が必要であり、ch表示をしておいた方が間違いが少なくなります。
  マスキングテープを貼ってそこにマジック書き ガムテープは汚れるので、使用不可 
2019/11/12

出力レベル +4dBを選択できるので、デジタルソースをフルビットのまま、アナログパワーアンプに入力できます。DCX2496では、+22dBのままなので、何処かで-18dBしないといけないのですが、この点を解決しているのが後発の強みです。
出力は、平衡出力ですが、不平衡で受ける場合は、歪率特性等の悪化がありました。片相をシールドに落とす不平衡接続ですが、普通はこれで問題が生じる事が少ないのですが、VENU360では、違いが出ました。 測定結果はこちら
 OUTPUT クリップレベル設定 +12dB
2019/11/06

 AES/EBU入力時のTHD+N特性です。音源は、Windows7上のWAVE GENEの正弦波で、0dBFSまでの範囲で測定しました。DCX2496を上回っています。
測定時の出力クリップレベルの設定は、+12dBで、+13.6dBm +8dB設定では、+9.6dBm出力となります。最小では、+4dB設定があり、+5.6dBm相当です。改造したDCX2496と運用レベルを同じにする為に、+8dBとして使用しています。
発売当初は、国内でも扱う所がなく、アメリカでしか入手できない状態でしたが、最近では、価格も下がり、国内でも入手が可能になりました。それに従い、取扱説明書も、ヒビノ株式会社により、日本語マニュアルが提供されるようになり、便利になりました。
今回、実機を入手し、セットアップを行い、オーディオ用途でも使用できるよう、マニュアルでは解りにくい箇所も含めて、オーディオに特化した解説ページをつくりました。

オーディオで、使用しない機能
AFS アドバンスド フィードバック サプレッション:ハウリング防止を目的とします
CMP コンプレッサー:オーバーレベルにならないように、音の圧縮をします。
LMT リミッター:設定値以上の出力が出ないようにします
自動ゲイン制御

場合によっては使用する機能
GEQ 1/3オクターブ 31バンドグラフィックイコライザーとなります。デジタル処理ですので、左右で均一な位相が得られ、アナログイコライザーを買い増す必要はありません。
PEQ 12バンド設定可能です。
SUB サブハーモニックシンセサイザー 低域の歪みを付加して、力強い低音となるようにします。真空管トーンを再現できるかもしれません。

追求すると面白い機能
RTA リアルタイムアナライザーとしても使用できますので、ピンクノイズを出して、周波数特性の確認が簡単にできます。指定マイクとして、RTA-M(\10,800)があり、手持ちがあれば、ECM8000でも使用できます。他に、無指向性のスモールダイヤフラムのマイクならば、大きな誤差は生じません。
音量が読めないのが難点です。

Windows PCへのコントロールソフトのインストールについて
PCは、Windows7です。dbxのサイトから VENU360.exe Ver2.05をダウンロードします。ファイルをダブルクリックしてインストールを開始します。
NEXTをクリック →  acceptボタンをチェックし、NEXT

NEXTをクリック →   NEXTをクリック →

 チェック入れNEXT   インストールをクリック

インストールが開始され、以下の画面が出て、完了です。フィニッシュボタンをクリックすると、動作可能なVENU360が有れば、右の画面が表示されます。

              

PCへの接続は、
ストレートケーブル(普通のLANケーブル)を使用してルーターか、ハブに接続します。自家用のVENU360 IPアドレスは、192.168.1.209  説明書の初期値では、169.254.2.2ですが、1台だけなら、それほど気にする必要はありません。2台目からは、違うアドレスを指定しないと、エラーになります。取扱説明書のPCダイレクトのクロスケーブル接続は、Win10 64ビットノートPCからは、接続できませんでした。このノートPCは、無線LANから、接続して使用しました。DELL Win7 32ビットノートPCは、異常終了して使用できません。同じく、DELL WinXPはランタイムエラーで使用できません。Win7 Pro 32ビット デスクトップPCからは、初期にエラー表示されましたが、現在では、正常に動作しています。動作確認したPC4台中、動作したのは、2台でした。
ネットワークが有れば、離れた場所に有ってもコントロールが可能です。その為、タブレットにてPAエリア内で移動しながらセッティングする事が可能になります。又、スマホのアプリで、VENU360よりも精密なRTAが可能ですので、スマホ活用でマイクを会場にセットしなくても済みます。


緑のコネクトボタンを押せば、接続され、以下の画面が表示されます。この画面は、セットアップが進んだ画面ですのが、名前を、380 3WAY + 18' SUBに設定しました。DLYの後ろは、赤矢印となっており、ミュートが掛かった状態です。
プリセット86番のStereo 3Way Mainsを呼び出して、それを基に作成して、27番にストアしました。クロックソースが Internal 96k なのですが、AES/EBU入力とする事もパネルのUtilityから行えますが、デジタル入力が接続されていない時は、エラー表示が出ます。


入力ルーティング画面です。マスターゲインはコントロールできますが、他はこの画面では反応しません。
      

入力ルーティングは、本体のユーティリティーを押して行います。XLRコネクタの用途を指定しますが、アナログの場合は、XLR1にLch XLR2にRchとします。XLR3は、ユーティリティーで表示されず、オーディオでは使用しないと思って下さい。
デジタルで入力する場合は、XLR1を使用すると良いです。最初は、この切換が判らず少しだけ苦労しました。釈迦に説法ですが、デジタル用XLRケーブルは、青色のケーブルで、接続は1本で2ch伝送です。
プリセット変更時、ユーティリティは変更されませんので、デジタル→アナログなどの変更は、プリセットをリコール後に行います。

AFSの画面 ハウリングサプレッサーのセットアップを行いますが、PA用途に限られます。オーディオではOFF GEQのセットアップ画面で、offボタンをクリックすると、点灯して、動作が可能になります。1/3oct 31バンドです。
AFS    GEQ

GEQ(グラフィックイコライザー)の使用
過度な補正は音質を悪くします。ゲインの上下で、位相が動きますので、ステレオの場合は、左右で同じ変化をさせた方が良いです。できれば、リンク機能を使用してもよいでしょう。デジタル入力時では、0dBFSの信号が入る場合は、プラス方向への補正ができません。
補正を、ヒアリングのみで行うと、それぞれの曲毎に、設定が異なってきますので、過度な期待をしない方が良いでしょう。RTA機能で補正量を求めたら、その半分ぐらいが適量でしょう。尚、設定数値は、表示されず、目盛りで読みます。

サブハーモニックシンセサイザーの設定画面 真空管アンプの音が再現できるかも知れません。         AUTO EQの設定画面 GEQ同様、過度な補正は音質を悪くします。PA用途と考えて下さい。
 SUB    Auto EQ

CMP コンプレッサーの設定ができます。宅カラオケをする場合は、スピーカー保護になります。          PEQ パラメトリックイコライザーの設定画面です。他のイコライザーと同様、オーディオでは、過信しないでください。
 CMP    PEQ

クロスオーバーの設定画面です。最初は、ホームマークの下の鍵が閉じた状態ですが、クリックすると、編集が可能になります。
 Crossover
現行設定値 
LOWS HP 20Hz BT18   LP 850Hz LR24 Gain  0dB DLY 0.31mSec
MIDS HP 850Hz LR24   LP 7kHz LR24 Gain -6dB
HIGHS HP 7kHz LR24   LP 20kHz BT6 Gain -5.5dB DLY 0.79mSec
おおよその目安にしてください。

クロスオーバーのフィルタータイプは、変更が可能ですので、画面のように、リストを表示してその中から選んでください。
 Crossover
選択できるフィルターは、バタワースフィルターが6,12,18,24,30,36,42,48dB/oct リンクウィッツ ライリー フィルター 12,24,36,48dB/octとなっていますが、スピーカークロスオーバーは、24dB/octが定番です。
Low End は、バタワース18dB/oct  High Endは、バタワース 6dB/octが一般的な選択となります。なお両方とも、端まで来たら、OUT表示され、無効化できます。
ローエンドは、大出力時にウーハーの振幅が大きくなり過ぎないようにするのが目的です。大振幅により、ダンパーが破損したりしますが、音楽での聞き分けでは難しいと思います。0.1Wぐらいの正弦波でスイープすると、発見は容易です。スイープ時に、劣化したウレタンエッジは簡単に壊れますがそれ以外の材質のエッジはそんな簡単には壊れません。レコードプレーヤーを音源とした場合、オーディオ用スピーカーでは、ふらつきが見て取れますが、ふらつきは、音にはなっていませんので、フィルターONでふらつきが防止できます。
ハイエンドは、ノイズだけで聞こえない帯域をカットする目的で使用されます。右端で、OUT表示となります。
フィルターの肩特性が良いのは、バタワース18dB/octなので、耳の良い方は、比較試聴して、判断してください。リンクウィッツでは、クロスオーバーで、平坦につながるのが利点ですが、肩特性はなだらかです。バタワースでは、クロス点で、盛り上がりがあります。
フィルターのスロープは、48dBまで用意されていますが、48dBフィルターは、通過帯域の位相回転が大きくなります。 フィルター種別、実測による、振幅特性、位相特性は、こちら を参考にしてくだい。

LMT リミッター設定画面ですが、スピーカー保護で活用できますが、動作時は、頭の切れた波形となります。
販売店の説明で、頭が切れないように、大出力アンプをお持ちの方は、使用しないでください。              出力制御画面で、下のボタンをクリックして、ミュート解除を行います。
 LMT      Output Meters

ドライバーアライメントディレイのセット画面です。ボタンをONにして、矢印を押すとそれぞれに数値が動きます。設定単位は、0.02mS単位で、真ん中がフィート表示、右がメートル表示です。
上の設定は、0.79mSで、左右でリンクしています。下の方は、0.31mSで、左右が分かれていますが、リンク動作にも設定が可能です。チャンネルは、上からHIGH L、R MID L、R LOW L、Rです。 
Alignment Delay

RTA画面です。フロントパネルのXLRコネクタに、コンデンサマイクを接続すると動作します。ファンタム電源は+48Vが供給されています。無指向性で、スモールカプセルのコンデンサマイクが使用できます。
新規購入ならば、RTA-Aですが、ECM8000も使用できます。
左は、1kHz正弦波のRTAで、裾の広い、窓関数を使用しているようです。右は、使用中のシステムをピンクノイズで鳴らした結果です。リスニングポジションから、1.5mほど後方ですので、ハイ下がりですが、40Hzからほぼフラットに出ています。
WAVE GENEで正弦波を鳴らし、RTAで、測定後、GEQ機能でピーク潰しをすると、癖を和らげる事ができますが、音の強弱は、水面の波のような分布ですので、補正量を半分に減らすと良い結果が得られると思います。
 RTA

デジタル ABS/EBUの生成について
プロオーディオでは、AES/EBUでやりとりする事は減少しており、DANTEなど、ネットワークに多重信号を載せる方式が主流となっています。VENU360も、DANTE対応品が有りましたが、現在メーカーサイトでは、見かけなくなりました。
現在、手持ちのシステムでは、PCからUSBで、UA-5に行き、そこでS/PDIFの同軸と光を作り、同軸をディスクトップモニターへ、光をメインシステム用に分けています。光で送られた信号は、SRC2496に入力され、そこでAES/EBUに変換し、DCX2496に送っています。
ところが、SRC2496の光入力は、相次いで壊れて使用できなくなりましたので、普段からRTAや、音圧レベル監視をしている、DEQ2496へ光で入力し、バイパスした出力をAES/EBUで取り出し、光入力の壊れたSRC2496のABS/EBU入力します。SRC2496の選択スイッチにて、アナログ系と、デジタル系を選択して、AES/EBUでデジタルチャンネルデバイダーに送っています。
 アナログ信号ならば、劣化極まりない処置ですが、デジタルならば許されます。デジタル信号は、振幅値を数字データで送っていますので、そもそも信号の劣化は有りません。ノイズの混入での劣化については、誤り訂正が効きます。PCから光で送っていますので、この区間は、電磁ノイズの影響は全く受けません。又、この光ケーブルは、外径2.1mmなので、絨毯下に配線して隠すことが可能です。


パワーアンプは、平衡入力で
歪率測定中に気が付いたのは、使用しているオーディオアナライザーが、不平衡である為、片相(コールド)をシールドに落として測定をしていると、歪みが増加する傾向があり、平衡受けできる、測定アダプタを介したら、直線的に下降する正常な結果が得られました。
マゼンタ色が、VENU360の出力(+4dBu設定)です。青色は、
不平衡入力、緑色が、平衡入力パワーアンプの出力電圧−THD+N(80kHz)特性です。
2019/11/07
 信号源は、WaveGeneによる、96kHz24ビット200Hz正弦波で、VENU360は、出力+4dB設定で、6連マスターボリュームに入力します。マスターボリュームは、そのままでは不平衡入力です。この入力に平衡入力コンバーター(ADP)を取り付けて平衡入力としています。
マスターボリュームが-2dBの時、自作A級アンプが最大出力となります。測定時のアンプ最大出力は、5.8Wです。パワーアンプでの増幅分だけTHD+N値が上昇しています。パワーアンプでの増幅度を下げる事が、THD+N特性を良くする事になり、出力の小さいアンプは有利です。
1W出力時のTHD+Nは、0.005%で、86dB相当です。この時、THD(A)では、0.00021%(-113.6dB)なので、1W時のスピーカーの出力音圧(約100dB)からみれば、遙かに小さく、音量的には、0dB以下(-13.6dB)なので、人間の耳では聞き取れません。逆にあと、13.6dB音量を上げたとき、歪みが聞こえ出すとも言えます。オーバーオールでこの特性なので、オーディオ的な魅力も十分です。

平衡出力には平衡入力を
片相をアースに落して、不平衡に対応する事はよく行いますが、最近の平衡ラインドライバICで、やはり、うまく動かないケースがありました。確認したのは、SSM2142ですが、TIの同じ機能のICも内部構成が同じですので、注意します。プロ音響では、大半が平衡になっていますので、XLRコネクタで普通に配線すればトラブルは生じません。オーディオで使用する場合は、不平衡入力アンプが多いので、機種選定に注意します。

OUTPUTクリップレベル 設定値毎の違い
 デジタル入力 0dBFSまでの OUTPUTクリップレベル 設定値毎の歪率特性 設定は、+4、+8、+12、+14、+17、+20、+22までと7通りできますが、+4、+8、+14の状態が良いことが判ります。意外なのが+17dB設定が、途中から悪化しています。+22dB設定でも同じような傾向があり、これの測定はしませんでした。プロ用アナログパワーアンプであれば、入力定格が+4dB BALとなっていますので、そのまま接続が可能です。入力アッテネータは、フル(0dB)となります。出力を制限する場合は、制限値まで、アッテネータを絞ります。例えば、100Wのアンプを10W出力に制限する場合は、10dB絞ります。最近は大出力アンプが多くなりましたので、波形が歪んでしまうリミッターよりも、レベルマッチング状態で接続後に、アッテネータで出力制限すれば、0dBFS時でも、パワーアンプでクリップしないので安心です。
2019/11/07
組み合わせるパワーアンプについて
民生品、LUXMANのパワーアンプは、利得が各機種29dBで統一されているようで、+4dB出力時では150W(8Ω換算)となりますが、これでは、過大出力となり、常用レベルとしは、-20dB〜-30dBしなければなりません。ちなみに、同社のパワーアンプには、入力ボリュームが無く、コントロールアンプでそれだけ絞る事になります。
アキュフェーズでは、同じく28dBで統一され、ゲイン切換で、0dB、-3dB、-6dB、-12dBと4段階で切換可能です。電力比では、定格値、1/2定格、1/4定格、1/16定格となります。一番出力が小さいA-36で30Wなので、-12dB時1.88Wとなりますが、これでも音が大きすぎると思います。80dB台の能率の低いスピーカーの方がマッチングします。
YAMAHA M-5000では、2Vで100W出力とされていますので、+4dB出力時は、38Wです。国産の代表的なパワーアンプは以上のようです。現在では、パワーアンプ単体で製造を継続しているメーカーが減少しており、残ったメーカーの製品は、一律に重厚長大化して、手頃な物は入手できません。
手頃な物は、スイッチングアンプの超小型品が多くなりました。カーオーディオ用アンプも同様で、アナログアンプは見かけなくなりました。

プロ用パワーアンプ

 プロオーディオ用パワーアンプでは、冷却ファンが有り、オーディオ用途では、不適当です。ホール音響のように、別に専用のアンプ室を設ける必要が有ります。アンプ室を大袈裟に考えず、隣室程度のものと考えます。要は音響的に遮断されていれば良いので、遮音性の高い壁で隔てれば済みます。海外製品は、およそ高額であり、スイッチングアンプの増加も目立ちます。老舗の、マッキントッシュや、マークレビンソンには、優秀なアナログパワーアンプが有るようです。国産アンプすらも、高価格化し、パワーアンプ単体での使用自体が、贅沢になっているというのが、現状です。

自作A級5Wアンプ

 自作したA級5Wアンプは、全く静かであり、発熱も問題なく、しかも低雑音低歪みです。各社のハイエンド製品が、およそ40μV(A)の残留雑音となっていますが、それを20dBも上回った残留雑音性能で、マルチシステムを構築出来たことが、幸運と思えます。
大したノウハウでもないのですが、そこはコロンブスの卵であり、少しずつの工夫が有ります。放熱板と、パワートランジスタ回路基板をサンスイプリメインアンプから流用してのアンプなので、完全自作ではありませんが、それでも、高性能の割に小型で、零式艦上戦闘機的アンプです。

コントロールソフトのGUIは、Smaartに良く似た、カラフルな画面です。ヒビノ株式会社の日本語マニュアルを精読して、是非とも、VENU360にチャレンジして下さい。         トップページへ