第二次大戦も1年経つと、軍部に入り込んでいる製鋼や紡績では、軍内部の動きも判った。宏一も官僚であり、宏には成り行きが判っていた。公的な言動はしないものの、軍内部でも勝てるとは思っていなかった。終戦前の半年ぐらいから、様々のルートで終戦工作は進んでいた。ただ体制保持の条件が、各ルート毎に異なっていた。あくまで無条件降伏を求めるとの要求との差があった事は事実だが、勝てると思っている人は、上層部では少なかった。負けないと言う人もいる程度であった。軍事的には、日本は山も多く、ゲリラ闘争に持ち込めば、安定的な占領は難しかった事は事実である。もっともそうなれば戦後の復興もなかったかもしれない。
戦況が不利になってくると、物資が途絶えてきた。資源の補給線も断たれていた。制空権もなく、空襲は自在となってきた。空襲だけで、敗北した国は本当はない。しかし密集した都市部を抱える日本いや日本の人たちへの被害は甚大であった。各地で空襲はあった。軍事基地や軍需工場付近は特に酷かった。
紡績も製薬も化学いやあらゆる会社も終戦前後は、半年程度から機能が停止気味であった。
そして各地の空襲もあった。都心にある事務所や工場も損害を受けた。郊外にあった家は空襲の被害にも遭わなかったも多かった。あの農園も仕事がなくなった安倍グループの社員たちの手で耕作されていた。製薬会社も薬草園だったものは、製薬の子会社である種苗会社などが所有しており、耕作されていた。東京近郊の土地も、耕作されていた。
妙子も真弓も50才を超えていた。洋之助も戦地にいっていたが帰っていた。食料事情もあり、洋次郎一家も宏一家とともにまだ住んでいた。
幸之助も戦争中に亡くなり、製薬は知子、元紀、孝太郎が中心だった。宏一はまだ官僚をつづけていた。
純子は紡績だけでなく、化学や銀行を作り、商会も大きくしたが、商会は早い段階で多くの企業や人から出資を貰い、安倍、市橋そして治部の三家だけでの比重はいつしか5割を割っていた。化学も積極的に、外部資本を入れており、治部だけの会社ではなくなっていた。銀行も同様であった。純子は色々な会社に援助していたが、一つ一つの会社では、純子の株は、それほど大きな比重にはなっていなかった。製薬も、一族の会社を中心に、多くの会社の株を持っていた。幸之助自身も、化学と機械と合同して会社を作るなどの、子会社も必要に応じて作ったものの、製薬は、それほど大きくせずに、中堅企業として、堅実な姿勢で一族の会社として手堅く守っていた。それでも戦争の被害は大きかったが、知子がその再建に当たっていた。
妙子は外科医だったので、戦時中は忙しかったが、今はそうでもなかった。食糧事情の悪化で、真弓は忙しかった。玲子も、次平も外科医となり、慶子は小児科医になったばかりであった。
宏「ここがあって助かったよ。何とかやっていけた。鉄平さんもお義母さんも凄い人だ。蔵の中には今米も入っているよ。」
真弓「今はお米が貴重です。お酒もあるし、食べ物に不自由しない人は少ないですよ。」
洋次郎「でも紡績の社員にも分けて貰って、大丈夫だったのですか?」
宏「お義母さんは、いくつか土地も買っていて、みんなで耕作してもらったし、当然ですよ。種苗会社も種を残してくれた。混乱は長く続かないです。もうすぐなんとかなりますよ。」
妙子「占領軍の物資まで集まるの。洋之助君、何で集められるの。」
洋次郎「占領軍相手に商売しているです。紡績の製品や商会の物産も売ってます。あいつはお母さんに似て、商売上手だし、英語も出来る。」
宏「治部公爵のひ孫なのに、よくやりますね。」
洋次郎「そんなもの、洋之助、気にもしてませんよ。私が適正な利益と言っても、これでも相場より安く売ってると言って聞かない。功一郎さんや洋一兄貴の所の製品も売ってます。買ってくれた人にも感謝される商売と言っても、相手は占領軍だよ。本当に必要な時は、原価がいくらでも買う。それがビジネスと言うもの。みんないい製品だよ。これ以上下げたらかえって悪い製品と誤解されるよ。今はそんな時代だよ。それに紡績も助かっているでしょう。お祖母さんが生きていても、きっとそうするよと言うんですよ。」
妙子「次平くんは、真面目そのものなのに。奥さんの咲恵さんだって、可憐な人で、うちの玲子と大違いだわ。」
真弓「玲子さんは優秀ですよ。妙子さんに似て綺麗だし。」
妙子「玲子は、こんな時代なのに、男と遊んでいるの。もう30近いのに。咲恵さんはお休みなのに、どこに行ってるの。」
真弓「次平が当直だし、気になる患者さんもいると行って一緒に行きました。」
妙子「そんな事言って、一緒にいたいのよ。同じ病院といっても、科も違うしね。慶子さんは?」
真弓「調べたい事あると言って、出かけています。私、心配なんです。あの子私に似てるし。」
妙子「そんな心配してたら、私は身が持たないわ。玲子は、2週間男切れたら、男の股間に眼が言って、集中できないと言ってるのよ。」
宏「それは妙子さんと同じ。」
妙子「今は時代が違うのよ。女医が男の患者の股間みるなんて冗談じゃないよ。ところで、宏一は銀行に、移すの。」
宏「今はもう少し政府の仕事をしていた方がいいよ、あいつも頑張っているし。」
妙子「宏さんに言ってない?あいつには女がいるよ。女の直感よ。玲子の馬鹿は、宏一がいても裸になる娘よ。でも宏一の様子はちゅっと変なの、最近。眩しそうな眼から変わってるよ。」
宏「玲子にも言わないと、いくら夏でも、風呂上がりに下着ひとつで冷酒飲むなと。」
妙子「それは私も一緒に飲んでるから言えないよ。美味しいよ。玲子とは裸の付き合いしてるのよ。きっと宏一は、若い女がいるよ。」
宏「あいつまだ25だ、それは大変。宏一と話するよ。」
次平は24才の時に、20才の看護婦の咲恵と知り合った。同じ病院であっても科が違うので、咲恵が一目惚れして、悩んだ末に、次平にうち明けた、出征前に結婚したが、直ぐに敗戦となり、帰ってきた。
玲子は29才になるが、初体験は21才と祖母や母よりは遅かったが、男とは良く付き合っていた。理知的な優しい人で、ものが大きくて、太い人が希望で、舐めても大きくならないと、次ぎに進まないだけであった。男を替えていたが、戦争が始まり、若い男が少なくなってきていた。24才の時に知り合った理学部を出た青年、高橋進とは半年ほど付き合い、生で入れて事も許していた。しかし徴兵されまだ帰ってきていない。玲子は待っていたわけではなかった。そんなに手紙も出していない。高橋からは、何度か届いた。それからも男とは付き合ったし、寝る直前まて言った事もあるし、寝た事もあるが、そんなに気持ちも良くないし、すっきりとはしなかった。空襲が来ている時は、それどころでもなかった。
慶子は24才で、男は好きだった。数人とは付き合った。しかしいい男は戦争でいなくなっていた。それに優しく誠実な人はなかなかいなかった。綺麗な姿で、眼が大きく、潤む感じで男を見ていた。勘違いした男が、何度も言い寄ってきた。言い寄ってくる男は優しくも誠実そうにも見えなかった。意識過剰で荒々しい男たちだ。父親に似た人を無意識に探していた慶子は断った。市川健介とは、最近会った。お父さんの匂いを感じた。何度も会った。健介も慶子の眼に気付いたが話しかける勇気がなかった。慶子の勤める治部病院の前は、よく通っていた。弁護士になる直前に招集され、勉強も忙しかった。健介と一緒に歩いてた友人が慶子に声をかけ、断られる所もみた。ついに健介も声をかけた。慶子は一緒に散歩するようになった。市川は弁護士になったら思っていたが、慶子の眼を見ていると、自分が抑えられなくなりそうで、昼間に会っていた。弁護士になる目途もつき、慶子と会っていた。夕方になっていた。健介は思っていた。「慶子さんの家は遠い。もう返さなくては。」慶子は、思っていた。「今日もこのままだわ。話は楽しいけど、キスもまだ。玲子さんなら、自分からキスするのに。」お互い顔を向き合ってしまった。健介も心の壁が低くなっていた。キスしてしまった。場所も悪かった。健介はアパートを借りていた。そのアパートの近くだった。健介は慶子を自分のアパートを連れて行き、慶子も医者なのて避妊も知っていたが、大分焦れていた。
三番目の男と関係を持っていた時に感じてくると腰が動いていた。感じたが、男の顔から優しさが消えて、好色な男と思い、気持ちが冷めて、感じた振りをして腰を引き、ずらした。男は外に出した。もう会わなかった。お母さんが言っていたように、私は本当は男を欲しがる女だ。お父さんのように優しく誠実な男でないと。
健介はそれでも自分を抑えようとして、法律の話をしていた。慶子の顔が近づいてきた。キスをすると、慶子は身体を寄せてきた。健介には慶子の温もりと乳房が押さえられる感じがした。健介は慶子の服を脱がせようとしたら、慶子は進んで脱いだ。健介は慶子の中に入った。慶子の中は濡れていた。又腰は動いた。健介は吃驚したが、もう夢中で自分も腰を動かした。両方が動いて、健介のものが慶子の奥に突き刺さった。慶子は一瞬にして感じが深くなり、膣が動いて締め付けていた。健介は長かったし、長い間していなかった。多量に、勢いよく、慶子の中に飛び出していた。慶子の子宮に本当に当たる感じがした。声をあげて軽く逝った。慶子は健介に抱きついていた。健介は慶子の顔を見ていた。凄く綺麗に見えた。キスをすると慶子は眼を開けた。健介の顔が眼に入った。眼が泣いたように潤んでいた。健介のものは締め付けられていたが、又大きくなった。慶子の腰が動き出していた。慶子自身も驚いていた。私は自分で動いている。恥ずかしいとの思いから、一層感じが深くなっていた。健介も腰が動いたのか動かされてたのかわかないが、動いていた。
腰と腰が度々密着した。慶子の膣が熱くなった。熱く痺れる感じがして記憶が薄くなっていったが、膣は締め付けていた。健介は又出していた。慶子の膣が燃えだした。燃えちゃうと思いながら、意識が消えた。健介も慶子も動けなかった。暫くすると記憶が戻ってきた。お互いにキスをして、身繕いをして、慶子は家に帰った。真弓はその時病院に遅くまでいた。翌日真弓が慶子の顔を見た時、判った。でも輝いていた。悪い男ではないかも知れない。ともかく慶子は、その男に惚れている。心配になった真弓は妙子と相談した。妙子は慶子に聞いた。慶子も自分の腰が動く事を心配していた。自分はおかしいのではないか。妙子は、言った。「慶子さんが求めているのよ。慶子さんの身体も。本当に好きなのよ。でも羨ましいわ、腰が動く人は。私は意識して動かすけど、そんな人もいるのよ。深く感じるでしょう。」妙子は健介の名前を聞き、宏に調べてもらった。真弓は一応安心したが、完全には安心しなかった。健介と慶子は、時々会って関係していた。慶子は感じがより深くなっていた。健介は慶子に結婚したいと言った。健介は地方の弁護士の次男であった。健介は慶子の両親と会った。真弓も、健介に洋次郎の匂いを感じた。あの娘も洋次郎さんが好きだったのだ。慶子が健介の両親に会いにいった。健介の父である健次は、治部家を知っていた。安倍製薬とも関係があった。健介が帰った時に言った。「治部は医学では有名な家だ、それにお父さんの洋次郎さんは大きな会社の社長だ。お前、大丈夫か。」健介「慶子さんのお父さんもお母さんも素敵な人ですし、家は関係ないと思います。」
健次「私と母さんが、慶子さんの家に行って挨拶する。色々と話したい。」
健次と母の涼子が、洋次郎と真弓に会った。洋次郎さんは穏やかな優しい人で、真弓さんは綺麗で一途な人だ。健介は穏やかな性格ではあるが、才能も光っているとも言えない。地味な弁護士にはなるが、会社の経営などは務まらない。健次はそのように言った。洋次郎は言った。
「私が才能に溢れた経営者に見えますか?私は母から言われた事を守ってきただけです。それも妻の手助けがあって出来た事です。母は、私が妻の真弓と一緒になれた事で、今の会社を任す気になったと言ってました。真弓は優秀な医者です。私がふさわしい男ではなかった。しかし真弓を愛し続けて、やっと一緒になりました。愛し続ければ、道は開ける。その気持ちで会社も運営しなさいと言われてやってきました。将来の事は分かりませんが、健介さんと慶子が決める事です。母は言ってました。経営はその任を果たせる人がするようになる。そして女は男で化ける。男も女で成長するも言ってました。二人を見守って成長していくように応援したいと思っています。」真弓「私は、主人に愛されて、ここまで来ました。慶子も自分を愛してくれる人を選んだと思います。」
健次も涼子も圧倒された。お金と地位を気にしていたが、愛しか言わない。反論する事も出来ない正論だったので、結婚の日取り等を相談した。帰ってくるとやはりそんな正論だけで大きな会社が経営できる筈がないと考えた。伝手を辿って、安倍紡績の顧問弁護士に、洋次郎の事を聞いてみた。顧問弁護士は言った。
「洋次郎さんは愛の人だ。そして安倍紡績は愛の会社だ、会社は社員を愛し、社員は会社を愛している。会社と社員は世の中に役に立とうとしている。みんなどこまで続くかと思っていたが、20年以上続いている。今後は判らない、ただ洋次郎さんは、もはや変わらない。自分のやり方が通用しなくなると、会社を去るかもしれないと私は思っている。」
健次は尚も聞いた。「それで、会社が大きくなるものでしょうか?」
顧問弁護士「会社を大きくしたのは、お母さんの純子さんだ。純子さんは天分溢れる人だ。愛もあれば計算もあるし、戦略にも富んでいた。ただ会社は愛の洋次郎さんに託した。戦争後、再建中だが、洋次郎さんはそんなに大きくしたいとか利益を得たいという気もない。純子さんが、洋次郎さんに言った。会社は仕事の場所を作り、世の中に役立つものを作るためのものだ。利益がなければ続けられないが、利益を目的とするものではない。みんなそう言うが、本当に守る人はそういない。洋次郎さんは本当に守っている。こんな混乱の時代でも守っていけるか、それは今後の問題と思う。しかし純子さんは、それでは息苦しいと思う人たちのために別の会社を作っているので、今はそういった事を自然に受け入れられる人たちが集まっている。」
健次は思った。「健介はやっぱり苦労するな。あいつはそんな愛の人だったろうか?」
健介は、父の考えていた通り、愛の人ではなかった。要領は良かったし、計算もたった。軍隊生活も、なんとか乗り切ってきた。慶子が治部家の娘で治部病院の医師だと言う事も考慮して、付き合いだした。また家も食料に困っていない事にも惹かれていた。打算だらけと言うほどではないにしても、打算や計算もする男だった。慶子との結婚が決まっても、慶子は何処でもついていくと言ったが、市川は、今は食糧難だから、洋次郎の家に住もうと言った。慶子は、私の為に、無理しないでと言った。市川は、慶子はお嬢さんで、食糧難も知らない人だと思ったが、とにかく洋次郎の家に住む事にした。住んでみると驚いた。ここは、色々な食料がある。占領軍の缶詰や酒もある。洋次郎と真弓は仲良かったし、次平は真面目一筋の青年だ。奥さんの咲恵さんも昔風の日本の女という人だ。自分は違う人種だと思う程の違和感も感じていた。慶子は綺麗だが、寝室の中では娼婦のような、もの凄く事もやる。それにしては純情だ。複雑な思いもしていた。色々な人が、この家にやってくる。この時代にどこからか食料を手に、戦争中に亡くなったお祖母さんのお参りだと言って、やってくる。洋次郎や妙子も気前よく、何でもあるものを渡す。お酒を渡すと涙ぐんでいる人もいる。何か浮き世ばなれしている感じがしていた。妙子と宏そして玲子とうち解けて、話をするようになると、性に関しては、実に開放的な言い方をする。不思議な家だ。たまに帰ってくる洋之助を見ろと、むしろほっとしていた。生意気で尊大な青年だが、何故か人間くさいと感じた。
宏一は、政府に勤めていたが、食堂に勤めている礼子と付き合い出していた。礼子はまだ18才であり、姉の玲子と違い、西洋人形のような風貌も目の醒めるようなスタイルはしていなかった。素朴な娘で良く笑った。宏一への食事はいつも他の人より、多く盛りつけられて、宏一か気付いて、お茶に誘った。終戦1年ほどでそんなに店はなかったし、宏一も暇ではなかった。しかし仕事と情事とは並立するもので、宏一は積極的であった。母や姉は、宏一を男として意識せずに、家の中では、下着一つで歩いていたり、時には下着も平気で、宏一の前でも替えていた。姉の裸は眩しかったが、礼子と付き合うようになり、礼子の裸を見るようになると、年の差を実感していた。礼子は宏一が好きだったが、遊び相手にしかすぎないと思っていた。そのため一歩引いて、肉体関係は避けるようにしていた。しかし宏一から求められると拒む事が出来なかった。宏一といつしか宿屋で、会うようになった。宏一は礼子の服を脱がせ、裸にさせた。礼子ははじめ恥ずかしがったが、いつしか自然に服を脱ぐようになった。礼子には、宏一は初めての男であり、みんなそうするものと思っていたが、そうではないと判っても、もう変えられなかった。礼子は、宏一がいずれ自分から去っていくとは思っていたが、その時期が来るのが怖かった。宏一には、何でも従うようになっていた。
宏一は、姉と同じ読みの礼子に、段々命令口調になっていき、礼子は従うようになっていった。宏一の時間があくと、礼子が呼び出され、礼子も応じるようになった。宏一の言いなりにしゃぶり、足を広げ、宏一を受け入れていた。礼子自身は、何の避妊もしなかったが、宏一は最後は外に出していた。礼子ははじめ、自分を大事にしてくれていると思い、嬉しかったが、段々私は宏一の遊び相手にしかすぎないと寂しくなっていた。そんな関係が半年ほど続いた。礼子は19才になり、両親も見合いを勧めるようになった。礼子は宏一を諦め、見合いをしようと思った。宏一からの呼び出しに、お別れを言うつもりで、応じた。その日の礼子は積極的だった。キスをされて、乳房を弄られてだけで、濡れていた。宏一が中に入り、動いて、礼子が感じ始めた時には、外に宏一は出していた。いつもそうだ。今日は最後だ。礼子は宏一のものを舐めて綺麗にして、もう一度宏一を大きくし、自分で中に入れ、自分で動き出した。もうどう思われてもいい。最後の思い出に一杯感じるのだ、自分の身体へのご褒美なのだ。宏一は母や姉のように積極的に動く礼子に驚いていたが、自分で動いていると姉を犯すような気になってきた。二人は意識して、身体を腰を何度も密着した。宏一は礼子の奥にしばしば入った。礼子は深く感じていた。もっともっとと思いながら、腰を意識して動かしていた。宏一も負けずに動いた。礼子の感じが深くなり、突然身体に腰に力が入らなくなり、意識が薄らいできた。いつもは外に出すつもりが余裕がなかった。突然礼子が宏一を入れたまま、宏一の元に落ちてきた。宏一の意識とは別に思わず出していた。礼子は一番奥で、宏一の精液を受けて、声を上げた。そして宏一の上に崩れていった。暫くじっとしていた。二人とも動けなかった。やがて礼子は意識が戻り、宏一とキスをした。
身繕いをして、礼子が別れを言い出す前に、宏一は約束を思い出していた。こんなに時間がかかるとは思っていなかった。じゃ又連絡するねと言って出ていってしまった。礼子は別れを言い出せなかった事への後悔をしながも、身体の奥からわき上がってくる充実感の中で揺れていた。それから同じような事が何回か続いた。違っていたのは、礼子の感じ方であった。礼子は身体の奥から感じだしていた。礼子は不安になっていた。一度は両親の勧める見合いをして、平凡な生活をしようと思った。自分の身体が恨めしくなった。今の私はまるで娼婦だわ。しかし、会えば積極的に宏一を求め、身体の全体でそして一番深い所で、宏一の精液を受け止めていた。宏一も外に出すつもりであったが、礼子の動きが、膣の動きが、奥に出すような導いていた。そんな時に、宏から聞かれて、初めては否定して、別の見合話を進めていた。うまくいきそうだったが、結局なぜか壊れ、礼子との事を妙子が知っていた。宏一もとうとう話した。妙子は、宏一に言った。「それはお前も覚悟を決めなさい。私は、女騙す男には冷たいよ。」宏一は不承不承、従った。
(礼子ワールドは、色々なケースで考えました。シナリオ1、シナリオ2、シナリオ3、シナリオ4、シナリオ5
話が決まると宏や妙子が動き、あっと云う間に結婚してしまった。礼子は既に妊娠していた。礼子は、宏と妙子の家に住むようになった。礼子、礼子と呼んでいたら、姉の玲子が怒り、「私の礼子さん」と呼ばないと判らないじゃないかと言い出した。下着や靴下程度で呼ぶなよと言われた。宏一は姉が怖かったので、又不承不承従った。
玲子「もう頭に来る。同じ名前の娘を嫁にして、くだらない事で、礼子、礼子と呼んで、私の礼子さんと言いなさいといってやった。」
妙子「確かに、同じ読みだから分かり難いよね。宏一、礼子さんに横柄だから、それは良いことよ。 遊びすぎの玲子さんはまだなの。慶子さんも結婚したわよ。」
玲子「そんな言い方はしないでよ。いい男がいないだけよ。」
妙子「お前、誰かを待っているじゃないの。お前の柄じゃないけど。」
玲子「そんな事ないわよ。私が邪魔なの。」
妙子「そんな事はないよ。お前はすきなだけ家に入れば、いいよ。」
宏一は、母の妙子を怒らすと遺産は入りにくいし、不承不承、礼子を妻にしたが、自分は特殊な人間で、国を動かしているエリートだ、礼子は私の妻になった事を感謝している筈だと思っていた。
洋一も、娘の真智子が早くから結婚して、妊娠出産したので、ここの庭園の一部に家を建てて、引っ越してきた。環境も良く、手厚い保育が出来た。
慶子も結婚した。やがて慶子も妊娠して、次平の妻の咲恵も妊娠している事が分かった。もう乳母や子守の時代ではない。小児科に勤めていた看護婦さんを雇う事にした。礼子は自分で育てたいといっていたが、妙子は、礼子に化学で働く事を勧め、同年代の子どもも仲良くしていたので、昼間は預ける事になった。庭の中に、小さい託児所ができていた。
洋之助は、仕事が忙しくと言うより、あまり女に興味がなかった。慶子、そして咲恵が家にいたし、色々な女にも周囲にいた。それに今は稼ぎ時だ。面白いように金は儲かった。とても出来そうにない事でも頼めば、みんな遣ってくれた。父の洋次郎は、わざわざ求められた仕様書にない事でも、いちいち占領軍に聞いてくれと頼んでいた。膝の部分や袖の部分は補強したい等言い出した。そんな事はどうでもいいのだ。第一手間だ。使い古した衣服を貰ってくれなど言い出す。素直に仕様書通りに作っていればいいのだ。古くさい倫理などはもうないのだ。祖母の純子よりも俺は商売の天才なのだ。父はどうしようもない古くさい倫理にこり固まってる。あの開放的な妙子おばさんでも、饅頭一つもって、純子お祖母さんに参りにくる人に、米や酒を渡している。どうしようもない。高値で売れるのに。あの醸造元も馬鹿だ。今高値で売れるのに、今まで通り、無理して酒をこっそり持ってくる。いろんな食料を運んでくる人もいる。高値で闇市で売ればいいのに。それを貰っても、米や酒を渡したら、何にもならない。みんな馬鹿だ。俺はもっともっと金を儲けるのだ。女を抱いても一文の金にもならない。金を儲ける事は、女抱くよりも快感なのだ。我慢出来ない時は、札束で女の頬を叩けばいい。足を広げ、股を開き、俺のものをしゃぶる。女はそういう生き物なのだ。
紡績も化学は復興は進んだ、みんな手弁当で手伝ってくれた。洋次郎も妙子も、家にあれば、食料もどんどん出した。それに洋之助も不定期ではあるが仕事を取ってきた。功一郎と息子の一郎の機械製造会社も機械化に協力してくれた。設備更新しながら、復興していた。
妙子「玲子の奴、待ってないと言いながら、高橋さんが南方から戻ると、尻尾振って、抱かれに行ったよ。私には一番身体の相性が合うのよ。泣いて頼むから一緒になると強気の言い方してたけど。あいつ7年も待つ奴とは思わなかった。もう31だよ。」
宏「いつも遊んでいる口振りは嘘だったの。」
妙子「嘘ではないと思うよ。少しは遊んでいただろう。ただ女の身体は正直だよ。惚れていれば、触っただけで感じるけど、金では、みんな演技しているだけだよ。身体に未練が残っても、心が切れていれば、続かないよ。あの馬鹿も少しは分かっただろう。女は男に惚れてないと感じないと。」
宏「妙子さんもそうだったの。奥に私が入れてたら、結婚したのじゃないの。」
妙子「女はね、金で演技して感じた振りする人もいるよ。しかしほとんどは、惚れないと股は開かないし、濡れないの。無理してしゃぶっても、段々痛くなるしね。惚れていると段々濡れてくるし、感じ方も深くなるの。宏に奥に出させたのは、惚れていたからなの。女はいつも強がりを言いたがる動物だから。」
洋之助は、混乱期に稼いでいた。朝鮮戦争までは、面白いように金が入った。占領軍への納入も初めは父に借りた金で納入していたが、やがて紡績や商会の扱う商品を納入する時、お金はいらず、右から左に動かすだけで、利益がとれた。功一郎や洋一らの会社が製造する製品も支払期日に払えばよかった。それ以外のものも純子の孫の顔が聞いた。無理な注文も、引き受けてくれる会社が多かった。最初は洋次郎は自分の商才だと自惚れていたが、純子の存在と今まで純子がしてきた援助を恩義に感じてくれる人が助けてくれていると気付きだした。逆にそれも利用して、儲けだした。安倍海運の鉄平とも知り合い、安倍海運の再建のために、幾つかの資産も引き取ったり、安倍海運としてはそんなに荒っぽい稼ぎが出来ない事は、別の会社を共同で作り、一層稼ぎだした。利益の一部は、協力してくれる会社に出資するようになった。自分の会社を作って、まだ安い土地なども買っていた。洋之助は純子の存在を意識していたが、それも利用して稼いでいた。洋次郎は穏和な性格だったし、宏も分析する人だったので、特に注意する事はなかったが、知子は度々洋之助の才覚だけでやっていない事を忠告していたが、洋之助は、十分承知していたが、利用できるものは何でも利用して、兎も角儲けていた。ただ大儲けしながらも、洋之助は案外冷静だった。子供の頃に聞いた純子の言葉を、そして洋次郎や知子の言葉も良く考えていた。混乱期はやがて終わる。特需もやがてなくなる。鉄太郎の遺産を受け取った大岐家や哲之助の遺産を受け取った多岐川家からも、鉄鋼株を売りたいと云う申し入れにも応じていた。又混乱期に苦慮していた企業の株も安値になれば買っていた。純子が買っていた都市部の近在の土地は敗戦の翌年には、耕作していた社員たちも普段の仕事に戻り、宅地や平地に転換していった。洋之助もいい土地があれば買っていた。郊外の家の農園も一部を除いて妙子に管理も大変だからと口説いて庭園にしてまった。燃えてしまった元の次平の屋敷も、洋次郎を口説いて、庭の広いホテルにして立て直した。妙子や知子も食糧難は目途がついたとして洋之助の意見に従った。化学も成長していたので、都市近在に工場が欲しかった。化学繊維の加工工場としては最適だった。土地や不動産は、自分の不動会社を安倍不動産と併せて、スリースター不動産とした。子分たちにも不動産会社や色々な会社を持たせていた。商会と協力する自分の会社も作っていた。やがて、仕事は一段落していった。
洋次郎や真弓たちは、まだ郊外の家にいた。別々に2軒建てていたので、出ていく必要もなかった。
真弓「次平先生の家をホテルにしてしまった。洋之助の言う事なんか聞いて。」
洋次郎「でも車なら、ここから会社に通えるし、遅くなったらホテルに泊まれば、いいよ。いつも3室は開けておくと洋之助は言っていた。宏さんも使ってください。」
宏「私は夜遅い時は使わしてもらってますし、宏一も遅い時は、時々使わしてもらっています。うちの玲子も高橋さんと泊まっています。我が家だけが泊まっているような気がして申し訳ないです。」
洋次郎「洋之助はここに帰るとみんなに色々と言われるから良く泊まってますよ。あいつの都合で作ったようなホテルですから。」
宏「洋之助君は、不動産会社やホテルの社長で落ち着ますか?」
洋次郎「まあ、敗戦後ずっと働きづめですし、今何かやっても危険だと言ってます。ボロ儲けは危険と言う事はよく分かったと言ってますよ。」
妙子「化学の工場敷地も用意してくれたけど、化学はみんな悪党揃いと言ってるわ。自分が一番悪党なのに。でも札束で、いい女は買えないと判ったみたい。」
真弓
「なんかあの子、だれかと付き合っているのですか? 私と洋次郎さんの間でなぜあんな子が出来たのか不思議なんです。」
妙子
「まあ次平君と洋之助君に別れたのよ、才覚と愛に。でも、私この間ホテルに泊まったの。洋之助君、女の人と食事してたわ。遠くから見ただけど、お母さんの若い時の感じがした。札束で股開く女とは見えなかったわ。直ぐに出ていったから私に気がつかなかったみたいよ。」
玲子「ここは、農場を庭にしたの正解よ。広々としていいね、進さんと帰ってきてもいい。」
妙子「ここは空気もいいし、ゆったりしているでしょう。宏一の馬鹿は尊大で自分が偉い、特殊な人間と思ってる。礼子さんには化学で働いて貰ってるの。宏一は帰ってくるの遅いし、待ってるよりも気分転換になるしね。化学は時間が自由だしね。まだ部屋は空いてるよ。車さえあれば都心なら通えるよ。洋次郎も旧宅に住んでるよ。ダブルれいこの復活ね。庭の一部は平地にしてるから家も建てられるわよ。」
玲子「姉と同じ読みの人を奥さんにするなんて、宏一も趣味悪い。進さんは大学戻ったけど、あんまり自由に研究できないみたい。あれが軟らかいのよ、最近。化学は自由でしょ。又堅くなって欲しいの。」
妙子「お前にとっては大問題よね。進さんは専攻は化学だったよね。私は、化学の社長になったし、それくらいはなんとかなるわよ。いいわよ、話しとく。でも悪党揃いよ。化学は、あの洋之助くんも尻込みしてたくらいよ。」
玲子「まだ医者もやってるでしょう。」
妙子「良い外科医も揃ったし、真弓さんに院長して貰う事になった。週2日は病院には行くわ。本当の意味での心臓の手術には、もっと医療機器が必要だし、医療用製品の開発をしたいのよ。お前は赤ちゃん、まだ出来ないの。」
玲子「それが出来たの。四ヶ月。それもあるのよ。ここは医者も多いね。保育所もあるし、色々都合もいいのよ。」
妙子妙子「同じ読みの子は止めてよ。」
紡績にも組合は出来たが、一時は過激な分子も社外から入り込んで調べたが、内情が判ると呆れて出ていった。紡績の社員は、そんなに特殊な会社とは思っていなかった。逆に他社と比較すると特殊性が明確になり、今の路線の維持を求めるようになった。製薬は知子が中心になり、孝太郎はグループ各社の経営を勉強するために、各社の役員をしていた。
孝太郎「知子伯母さん、紡績に組合できて、洋次郎さんに交渉してる。」
知子「そんな馬鹿なあるの。洋次郎さんに抗議される事あるの。」
孝太郎「会社の内部留保を増やして欲しいとか運営準備金の充実とかと言ってる。」
知子「逆じゃないの。何かおかしい事いうのね。」
孝太郎「何か問題があっても維持できる会社にして欲しい。洋次郎さんは利益の配分は大事で、利益が上がれば還元するのが、当然と言う。会社の充実も大切と組合は言ってる。」
知子「ますます意味不明な話ね。どっちが会社側なのよ。」
孝太郎「それに組合がもっと利益の確保も必要とか言い出すしね、洋次郎さんはお客様にも還元したいと言ってる。組合はそんなに甘いと会社が待たないと言い出してる。」
知子「それはみんな不安なのよ。私でも、愛の会社で、どこまでいけるか見てるけど、まだうまく行ってる。凄いと思ってるわよ。でどうするの。」
孝太郎「洋之助君に入って貰おうと考えているけど、怖い気もすると洋次郎さんは考えてる。」
知子「極端から極端の変化だね。それは怖いよ、私でも。洋之助君は商才はあるけど、何か怖い。スリースター不動産は、役員会は私行ってる。凄いよ。あの利益、孝太郎も配当の額知ってるでしょ。」
孝太郎「あれ、なぜ出資金の半額もでるの。」
知子「洋之助君が会社名義で持ってる株を少しずつ売ったの。土地も少し売ったしね。」
元紀「うちも保有株を整理すればよかったね、あの時に」
知子「元紀、鵜の真似をするカラスは溺れるよ。うちは、色々な経緯があって持ってるのだから、長期に保管するの。上がっている時に売れる人は少ないのよ。洋之助は結局お姉さんの言う事に従ってるのによ。良い時も悪い時も、長くは続かない。でもそれは後から判る事で、普通の人は良い事はいつまでも続くし、悪い時はいつまでも悪いと思いがちなの。」
元紀「洋之助君は、純子さんを目標にしているらしいね。」
知子「商売の才覚は似てるけど、まだお姉さんのまいた種が成長させているだけよ。自分で種まいてない。一時は自惚れていたけど、判ったみたい。それがあいつのコンプレックスよね。でも混乱期に金儲けるのは巧かった。これからが大変よ。ポロ儲けは大損の初めだからね。それか判ってるから、今静かにしてるけど。どこまで辛抱できるかだよ。ポロ儲けして、地道に働くの難しいよ。姉さんも避けていたぐらいだよ。紡績でコツコツ出来ないよ。」
孝太郎「洋次郎さんはまだ若いから、今なら洋之助君を営業担当と言う事もできるから。」
知子「洋之助君は、悪党そのものよ。愛なんてないよ。あの会社では息できないよ。第一、洋之助君が嫌がるよ。」
孝太郎「それが今純愛中だって。洋之助君も紡績へ行くの満更でもないらしい。」
知子「嘘でしょ。女は、札束で股ひらく生き物と言ったのよ、真弓さんは真っ赤になって怒っていたわ。私、平手打ちしようと思ったら、妙子さんが先にやったの。お前はその股から生まれた生き物だよと言って。怖がって家に滅多に帰らず、ホテル暮らししている男よ。」
洋之助は、30才になっていた。洋之助は思っていた。占領軍や戦争特需で大儲けしたが、気がつけば、兄弟の中で自分だけが一人、ホテルの一室は自分専用にしているが、郊外の家は折角いい庭園にしたのに、帰ればなにかとうるさい。本音言うと叩かれる。自分と比較的似ていると思った宏一も、色々あったけど、素朴で純情そうな礼子と結婚した。金で買える女はもう飽きた。演技くさいあえぎももういい。寄ってくる女は金目当てが見える。買っていた株も半分売って元の倍近い金も入った。土地も倍以上で売った、後の土地は持ってるしかない。不動産会社といっても、補修の繰り返し。元々は資産管理会社。ホテルは元々俺の住まいのつもりでみんなを騙して作ったのに、客が来て、従業員を追加した。でも俺がする事はありまりない。今なにかやると危ない事は俺でも分かる。もう地道にやろうと思っても、何か馬鹿らしい。これが危険だとお祖母さんが言ってたそうだ。それはそうだろう。この間ホテルで紅茶飲んでいた人は、お祖母さんの若い頃とそっくりだった。お祖母さんは、歳取った時でも綺麗だったけど、若い時の写真に似ていた。早速調べてみよう、する事もないし。と思っていた。
その女の人は、デザナーだった。なんか服のデザインをする人だそうだ。そんなもの商売になるかと思ったが、家は、昔は福岡藩のお殿様の家柄らしい。今は貧乏なら、札束でと考えたら、今も金持ちらしい。お祖母さんに似ているのなら、遊び人かと言えば、お嬢さんとも言えないけど、そうとも言えない。ただ気性は強いらしい。どうすればいいのだ。ただうちのホテルは好きで紅茶を飲みにくるらしい。仕方ない。わざとらしいが、前で手帳でも落とすか。
洋之助は、その女の人の前で手帳を落とした。手帳落としましたよ、と言われた。あっすみません。私は、このホテルの社長でして、お話聞かせてもらってもいいですかと聞いたら、あっさり承知してくれた。それを機会にしばしば話をするようになった。
美佳「では治部次平先生のお身内ですか?」
洋之助「治部次平のひ孫に当たる治部洋之助です。」
美佳「これは失礼しました。黒田美佳といいます。」
洋之助「黒田家のお嬢様ですか、よくこのホテルを利用して頂き有難うございます。」
美佳「私の曾祖父の黒田道直は、治部先生に助けて頂いたと聞かされていまして、治部先生の家があった所に、ホテルが出来ていたので寄ってみたのです。お庭もきれいですわ。」
洋之助「私の兄も治部次平でして、今病院に勤めてます。」
美佳「やっぱりお医者様なんですか?」
洋之助「一族の期待の星です。私は頭悪くて医者にはなりませんでした。」
美佳「そんな事ないでしょう。お父様は何をなさっているのですか。やっばりお医者様ですか?」
洋之助「安倍紡績の社長をしています。」
美佳「安倍紡績と言うと愛の会社と言われています。あの安倍紡績なんですか?」
洋之助「愛の会社かどうかは判りませんが、」
美佳「有名ですわ。生地も丁寧な織り方ですよ。」
洋之助「美佳様は生地なんか、よくご存じですね。公爵家なのに。」
美佳「曾祖父が隠居しましたから、子爵でした。治部先生は公爵様です。それに洋之助様も公爵家のお血筋でしょう。私は服のデザインをしていますが、趣味みたいなものですわ。お金にはなりません。でもこれからは必要とされると思っています。」
洋之助「美佳様、一度そのデザインを父に見せてみませんか?今、家は都心ではないですが、庭も広いですよ。」
美佳「美佳様と言うのは止めてください。美佳で結構です。お伺いしても宜しいでしょうか?」
洋之助「一度父に言ってみます。美佳さんはいつが都合いいのですか?」
美佳「私は遊んでいるようなものですから、いつでも結構です。」
結局、美佳の父親の黒田道彦と母の加世子も一緒に行く事になった。黒田夫妻は治部さんに挨拶したいと言って一緒についてきた。洋之助は、妙子やダブルれいこ達に、口止め工作もした。庭園は黒田夫妻も気に入っていた。美佳はデザインを見せた。洋次郎も気に入ったが、黒田道彦に言った。
洋次郎「黒田様のお嬢様が働く事はできませんでしょう。」
道彦「黒田様と言うのは辞めてください。黒田さんで結構です。美佳は見合いもせずに、アメリカにいく跳ねっ返りです。働く事は問題ないんですが、工場ではちょっと。」
美佳「私は平気です。お父様」
洋之助「私が、デザイン研究所を作りますよ。そこで気に入ったデザインをお父さんの所で採用してもらうと言うのはどうですか?」
道彦「それは結構なんですが、美佳のためにそこまで。」
洋之助「いや洋装化が進めば必要ですよね。美佳さん。」
美佳「そうですよ。これから必要ですよ。」
洋次郎「それはいいかも知れない。洋之助そうしてくれるか?」
道彦「それでお願いできれば私も安心です。美佳、洋之助さんにお庭を案内していただいたら」
道彦「治部さん、洋之助さんはまだ独身ですか?」
洋次郎「占領軍相手に商売して忙しくまだ独身なんです。美佳さんも独身なんですか?」
道彦「もう年なのに、見合いもない娘です。」
洋次郎「私の母の若い時によく似て居られます。」
道彦「治部さんは宜しいですか?」
洋次郎「黒田さんも婿養子でなくて宜しいですか?」
道彦「美佳の上に兄が二人いまして」
洋次郎「祖父が黒田様から頂いたものがあります。ご覧になりますか?姉も近くにいましてご挨拶したいと申しております。ごゆっくり、お食事でも。」
道彦「では遠慮なく、そうさして頂きます。美佳と洋之助さんとの話は、今は当人たちの意見も聞かなくてはいけない時代ですから、又連絡を取り合いましょう。」
波乱はあったが、話は進んで結婚する事になった。
美佳はなかなか、明確な返事をしなかったが、話は進んでいた。敗戦直後に解放的な空気になり、美佳は、いつしか男と付き合うようになっていた。何人かの男に抱かれるようになったが、それほど深く感じず、男たちにも物足りなさを覚え、別れていた。秘密にしてはいたが、過去が問題とされるかもしれない。それも怖くて、見合いも断っていた。母は薄々知っているようだ。しかし、今度は、父の道彦や母の加世子は強引に進めていた。美佳も洋之助に好意を感じていた。しかし、本当に自分の以前の男関係が問題にならないかと、悩んでいた。
美佳「洋之助さん、私は以前、男の方と付き合っていました。お調べになると直ぐ判ります。」
洋之助「それなら、良かった。私、心配していました。お返事が遅いので、私の事が問題になったのかと。」
美佳「父も調べたようです。色々とお遊びだったと。でも殿方は勲章ですが、女は。」
洋之助「私は、女の人に傲慢な態度とって、伯母達に怒られていました。美佳さんに知られないように、頭さげて回っていたのです。私の家は、女が遊ぶのには寛容ですが、男の遊びには厳しい家なんです。」
美佳「洋之助さんは、そんなに女の人とお付き合いがあったのですか?」
洋之助「いや、私はお金目当ての女しか相手にしていません。女は金さえあれば言う事を聞く生き物と言って、伯母達に叩かれました事もありました。」
美佳「それは暴言です。私でも叩きますわ。」
洋之助「美佳さんに会って考えは変わりました。」
美佳「では私の前の事も気にならないのですか?」
洋之助「私には、今の美佳さんで十分です。」
美佳「私は上品なお嬢様ではありませんよ。後になって、下品とか、ふしだらと言われても」
洋之助「私も上品でもありませんし、そんな事は言いません。」
美佳「では試着していただきましょうか、驚いてもしりませんよ。」
洋之助「幸いここはホテルです。」
美佳は、寝室に入ると直ぐに服を脱ぎ、洋之助のものを見た。大きい。こんなに大きい人は初めて。少し舐めた。美佳はこんな事をすれば、呆れるだろう。後でなんと言う娘だと言われたくないと思っていたが、洋之助は驚かなかった。洋之助は、大きなものを持っていたし、美佳も口には入らないものを見てびっくりしていた。私に入るかしら。洋之助は美佳の中に入った。美佳は動けなくなって、感じていた。洋之助は緩急をつけて、動いていた。動きを止めて、接吻したり、乳房に接吻したりしていた。激しく動いていると、美佳は何回も逝っていた。もう一度動きを止めて、又接吻すると、美佳の反応は少し緩慢になっていた。激しく動き続けた。美佳は声を出し続けていた。美佳の身体は洋之助の動きだけでなく、美佳自身も動き、時々痙攣しているようであった。美佳は意識が薄れていったが、その間洋之助が乳房を弄ったり、乳首を舐めたりして、美佳は反応していた。洋次郎は激しく動いて、深く挿して、多量に勢いよく出していた。美佳は声を上げ、身体は大きく揺れ、静かになった。荒い呼吸の中で乳房が波打っていた。少し経って美佳は、いった。「凄い。こんな事初めて。でも試着ではないです。名前を奥に書きましたね。悪い人なんですね、洋之助さんは。」洋之助が接吻すると美佳は接吻を返して、長く続け、息をついた。美佳「父に結婚を急いで貰います。私なんか出来たような気がしています。本当に悪い人。」
洋之助は、その後も結婚の話し合いを美佳と続けていた。気がつくと、美佳は、洋之助に裸で抱かれていた。美佳は深く感じてようになり、最後は、身体が溶けていく感じがしてきた。白い霧の中で美佳は。溶けて意識が消えていった。美佳「結婚する前から、こんなになってしまった。洋之助さんは本当に悪い人。父も急いでくれて、やっと結婚だけど、直ぐに妊娠がわかりそう。結婚したらアメリカに洋装の視察に連れて行って。私は数年間妊娠していそう。」
洋次郎「初めはもっと先のつもりだったのに、早くなった。洋之助もできるだけ早く、黒田さんも早くと言いだしてね。庭に家建ててからと思っていたのに、当座はホテルもあるしと言って。洋次郎は、アメリカに美佳さん連れて、洋服の視察にいってる。」
妙子「やっぱり洋之助だね。やってしまったのだね。赤ちゃんできたのよ。」
宏「そんな事は分からないでしょう。」
妙子「女は出来たと思う事あるのよ。」
真弓「それはありますね。これは出来たと思う事が。」
妙子「美佳さんはお母さんに似ていると思っていけど、そっくりね。洋一や京子さんも吃驚していた。」
真弓「私もあまりお義母さんに似ているので、お嫁さんの気がしません。美佳さんと話していると、お義母さんとお話しているような気になります。」
洋次郎「洋之助は安倍紡績を手伝いたいと言ってきた。美佳さんの服を作って売りたいと言ってきた。昔は安い利益でよくやるよと言ってのに。」
宏「まさしく女で変わったね。洋之助君。」
妙子「でも洋之助が入ると、抑えは洋次郎一人で大丈夫なの。あいつは、本質的には悪党よ。」
洋次郎「私も不安な気もする、あいつ、口がうまい。健介君も説得しよう。」
洋之助は、金は儲けていたが、純子の影をいつも感じていた。機転や才覚に自惚れていた時期もあった。多くの会社や人の協力が得たが、純子さんには助けて貰ってという話をよく聞かされた。美佳は純子に似ていた、洋次郎のものは大きく、女は直ぐにあえいだり、感じていた。一方、洋次郎は返って冷めていく事が多かった。洋次郎は冷静な男だったので、一時の欲情が去ると冷静になり、静かに外に出すだけだった。しかし、美佳があえいだり、恍惚とした表情になると、洋次郎はなお興奮して美佳を責めた。アメリカでもどちらともなく求め会ったので、美佳は感じ方が強くなり、夜には身体が溶けて、朝になると再生していた。アメリカでの最後の晩、意識が戻ってきた美佳は言った。「私の身体はどこかも溶けていないの?どろどろと溶けて行ったような気がするの。大丈夫なの?」洋之助「大丈夫だよ。ここも大丈夫だろ。」美佳「へんな所触らないで。又感じだした。でも今日は、私はもう無理。洋之助さん、お休みなさい。本当に悪い人。」と言って寝てしまった。
洋之助と美佳は、気に入った洋服を買い、幾つかの会社と日本での専売権について交渉していた。洋之助は、アメリカに行く前に、美佳のデザイン研究所を創立していた。
洋次郎は、健介も紡績に入れた。化学も銀行も掛け持ちして法律問題を扱い、顧問弁護士と相談する事になった。
知子「やっぱり姉さんの血筋は凄い、みんな焼け太り。化学も進さんが入って、化学繊維にも手を出すし、妙子さんは、医療用機械や医療用製品も作る。ここも恩恵受けているけど。洋之助はデザイナー連れて紡績に入り、洋服も作り出す。健介さん入れて法律問題扱わせる。宏一も銀行へ入れるそうだ。洋一は鉄鋼支えているし、病院と学校は真弓さんがまとめ、玲子や慶子そして次平が頑張っている。」
孝太郎「うちも鉄平がいてるよ。海運会社を継いで頑張ってるじゃない。」
しかし宏一の銀行入りは容易ではなかった。大蔵省から直接銀行は憚れてたし、妙子は化学へ入れた事にした。
妙子「宏一は化学へ入れようと思うの。」
宏「直接、銀行入りは少し目立つし、規制もあるみたいだし、それがいいよ。」
妙子「それだけじゃないのよ。宏一は、自分はエリートと思って自惚れている所があるよ。化学は不良が多いし、大蔵省出身でも、治部家の人間でも、あんまり気にしないのよ。」
宏「妙子さんは別でしょう。」
妙子「私でも報告はくるけど、制御は難しいのよ。お母さんが、勝手に自由に遣らせていたのが、受け継いでいるのよ。私は、役員として長くてもこれよ。宏に経理見て貰うつもりだけど、急に役員は無理だしね。」
宏「礼子さんも経理やってるのしょう。」
妙子「子どもが生まれたから、ここは子ども多いでしょう。小さな託児所みたいもの作ったでしょう。宏一も遅いし、化学の経理を手伝ってもらったら、礼子さん優秀で、今では経理の実務を仕切っているのよ。まず礼子さんに教えて貰うのよ。」
宏「あいつ、部長格で入るのじゃない。」
妙子「化学は役職あんまり関係ないのよ。自由にやってるから製品は多いし、区別も大変なのよ、製品群によって設備の原価消却も違うけど、途中まで同じ工程取っているものもあって、解釈難しいの、それを整理したり、部門毎に違う名目を整理したりしたのが、礼子さんなの。今まで適当にやってたの。細かい計算嫌いな人多いの、化学には。全体で見れば利益は出てるけど、細かい分析しないの。それに投資も増えるし、新分野でも出ていっているし、ますます複雑なのよ。古い機械でも動いているからといっても、新しい機械ならもっと利益が出るかなんてあんまり気にしなかったのよ。礼子さんの手助けないと無理よ。」
妙子は、宏一を経理部付きの部長にした。通常の処理は宏一の出る事がないし、複雑な製品群の分析は礼子に聞かないといけない。礼子は子どもの世話があるので、みんなより早く帰ってしまう。家でこっそり聞くけど、細かくは判らない。同じ竹内だから、化学でも珍しく肩書きを付けるけど、竹内部長に質問したり、相談したりする人はいなかった。経理部長は一応、宏一の顔を立てて、相談してくれるけど、細かい事が判らないと、返事も大した事は言えない。天下国家や大局観もあまり必要がない。結局、礼子の暇な時に、細かい事まで聞く事になった。確かによく整理している。改良した方法を見付けないと夫の面子も立たない。製造工程や製品の売上や動向も知らないと思って、勉強している内に数年たった。宏も歳だからと云って、銀行へ行く事になった。少しだけ考えた事を言ったら、礼子は誉めてくれた。
宏「宏一は腰が低くなった。役人風もしなくなった。礼子さんの才能も認識したようだ。」
妙子「二人目のこどもが出来た時もよく手伝っているし、良かったよ。銀行にも良いんじゃない。」
宏「化学の会社を勉強して、民間会社の解析もできるようになった。良かったよ。」
美佳は本当に、洋之助との最初で、子どもが出来ていた。庭園の中には、洋之助と美佳の家も出来た。洋之助達が、引っ越しした後に分かった。
美佳「結婚して、3ヶ月入った時に、妊娠3ヶ月なんて、恥ずかしいわ。」
洋之助「みんな気にしないよ。」
美佳「黒田の父と母に報告したら、指折って数えるのよ。お前が真剣な顔で頼むからまさかと思いながらも、早くてよかったねと言うの。」
洋之助「ここは誰も気にしないよ。」
美佳「デザイン研究所も暫くお休みね。」
洋之助「ここでやればいいよ。今の場所には、ショールーム作るよ。」
美佳「ここでやってもいいの。」
洋之助「ここの方がいいでしょう。庭もあるし。近くにいると僕が仕事出来なくなる。美佳さんも仕事出来ないよ。」
美佳「そうね。貴方といると、私、いつも裸で喘でいるような気がするの。この間のお休みの時も、朝から貴方が火つけるから、お昼過ぎに、お義母様や叔母様にあったら、朝はいいでしょう。と言われたの。やっばり洋之助さんは悪党よね。私、貴方が気になってるの。お産も実家には帰らないつもりなの。ここはお医者様も多いし、保育所も作っているでしょう。庭園も広いし、黒田の父母もその方がよいと言ってるの。」
昭和も30年に近づくと安定してきた。宏、真弓そして妙子も60才に近づいた。
真弓「妙子さんも病院にもっと来てください。学校へも理事会にしか来ないし。」
妙子「もう、昔のように手が動かないのよ。それに外科も拡充してきた。次平君も良くやってるよ。私は次平先生に教えられ、皮膚感覚で手術してきたけど、もうそろそろ新しい医療器械や医療用製品を駆使した手術が出てくるわ。化学でも、製薬や機械会社と共同して開発しているのよ。医療は、特に外科は、職人的な要素は無くなりはしないが減っていくよ。まだまだ少しは頑張れるけど、出番は減ってくるよ。ただ職人的な要素、これは天分もあるけど、経験は必要ね。私も手術の数はこなしたから、参考になればと思っているの。週1、2回で丁度いいのよ。次ぎの世代が中心にならなくては。真弓さんは内科だから、まだまだ頑張ってね。」
真弓「確かに内科は、経験の要素は外科よりは多いかもしれませんが、根気も必要なんです。病院長なんか妙子さんが押しつけるから、大変なんです。玲子さんも頑張ってくれているし、週に何日は休むようにしているんです。慶子も落ち着いて来てほっとしているんです。」
妙子「健介さんとの間で子どもも出来て、表情も落ち着いてきたね。小児科には向いているよ。」
真弓「男欲しそうな表情してた時は心配してました。いかにも私、男に飢えてますと言ってる顔してました。健介さんと一緒になってよかったです。ようやく普通の顔になって。次平は本当に外科に向いているんですか? 学者肌のような気がして。」
妙子「まだ経験は必要だよ。ただ器用なだけと言う人よりも、着実に一歩ずつ進んでいる。手術も職人肌というより、手堅くやってるよ。手際もいいよ。私は戦争中に、外傷性の手術が多すぎた。今はそんな事もないし、外科医としては伸びやすい時期なのよ。もうすぐに心臓手術も安全にできるようになるよ。私も色々な機械を考えている。外科は変わっていくよ、これからは。次平先生も、もう少し後で生まれたかったと言ってたけど、私も同じ気がしてるよ。」
真弓「それは誰でも思いますよ。進歩してますから。この知識や経験があれば、若い頃の失敗もないんですから。でも一歩ずつ進んでいくしかないんです。」
妙子「そうよね。自分の役割をするしかないよね。次平先生の夢は、次平君が果たすのかもしれないね。お母さんの夢は洋次郎が継いでいるし、洋之助も美佳さんで変わった。」
真弓「洋之助も金、金と言ってた時と変わり、美佳さん、美佳さんと言い出して、毎日のように抱き合ってましたが、この頃やっと落ち着いてきました。妊娠するまでに、美佳さんは、私、壊れそうと言ってましたよ。夜はいつもぐったりと死んだように寝ていたらしいです。朝になると欲しくなるし、我慢して働いて、夜はまた精魂使いはして寝る日が続いていたらしいです。3回毎年妊娠したら、少し休めますし、ようやく落ち着いたようです。私もそうだったたけに、身につまされて、話してたんです。私もふらふらになっても洋次郎さんに抱かれると欲しくなっていたと言ったんです。美佳さんもこの頃、やっと落ち着いて楽しめるようになったと喜んでました。」
妙子「洋之助はみんな規格外だよ。私も美佳さんに話聞いたよ。毎日身体溶けて、頭真っ白にされると嬉しいけど、怖くもなるよ。美佳さんもこんなに強い人を一人にしたら、大変と妊娠しても実家にも帰れなかったらしい。三人目は黒田さんも孫見たくなり、少し帰ったけど。今は間隔あけて、やってるみたいね。」
真弓「美佳さん、正直に顔に出ます。数日間は、開けているようです。私この頃身体が熱くなると言ってたので、燃える感じがするのと聞いたら、お義母様もそうだったですかと聞くから、私は、あの中に火が着けられて、腰から燃えていく感じがしてたの。と言ったんです。そんな感じなんです。声あげてるみたいなんです。私もそうだったけど、時間経てば、心がとても温かくなってきたの。心の中から、感じるようになるわ。40すぎたら、もっと深く感じるわよ。美佳さんはそんな風になれたらいいですね。でもこんな事言って私、下品ですかね。と言うんです。私は、女なんだから大切な事だわ。一杯感じて働くのが、この家のやり方よと言ったんです。」
妙子「そうよね。お母さんも私もそうしてきたわ。宏とも、昔のような激しさはないけど、やっぱり心で感じているわ。女はいつまでも女よ。」
美佳は思っていた。私の洋服も売れてきたし、男性用も手がけるようになった。洋之助は化学や商会にも顔をだすようになってきた。毎日のように、私も欲しくなって、洋之助さんも求めてきて、毎晩身体溶ける感じになっていた時は、嬉しかったけど怖かった。朝起きて身体を触るのが、癖になった。妊娠して、洋之助さんが紡績手伝い出すと、そんなに激しく出来ない。私もデザインをするようになって、我慢できるようになった。洋次郎さんも仕事忙しい時は精力が発散するのだ。私も仕事するとそんなに毎日欲しい事もなくなった。でもあんまり間があくと、やっぱり欲しい。洋之助さんも3日に一回程度、頑張ってくれる。毎日は大変だった。壊れるかと思った。二人とも仕事をしないと、壊れるまでやるのかもしれない。壊れるのは、やつぱり私が先かな。子どもが出来た後は、溜まってるだけに凄い。洋次郎さんは大きくて堅いし、長いのに、勢いよく出すので、子宮に穴が開くかと思った。声上げて意識がなくなった。目開けるとお義母さんがいた。洋之助さんが心配してお義母さんを呼んでいた。私が泡吹いて白目になって逝っていたらしい。もう少し待って欲しかった。お義母さんには何でも話しているとはいうものの、裸で泡吹いて逝ってる姿を見られるのは恥ずかしい。しかも後でよく見ると私の所から洋次郎さんの白いものが出ていた。洋次郎さんが急に抜いたようだ。それを見て、顔が真っ赤になった。お義母さんは黙っていてくれた。子どもを出産しても、お腹はすぐにへっこむ。長い間してないので、毎晩激しく動くから、私も痙攣するし、お腹も揺れる。あれで三人できた。洋之助さんには、仕事頑張って貰おう。私も楽しめる。お休みの前日はやる日になった。子ども達もお義父さんの家に泊まり込む事も多い。私は遅くまで逝ってばなし、少し微睡んで、また朝には激しく逝かされる。時には2回も。ふらふらとしながら、冷えたビールを二人で裸で飲む。これがとても美味しい。洋之助さんは私に悪戯する事もある。私は洋之助さんのものを掴み、悪党、もう無理よ。又今度ねと言って、そのまま裸で抱き合って眠る。この時が最高の気分。起きて身繕いをして、子ども達を迎えに行くとお義母さんはとても綺麗といってくれる。お義母さんは、40位から、腰から燃えるのではなくて、心から感じるようになる。と言ってた。それも素敵だな。洋次郎さんは浮気しそうな悪党だけど、やっぱり好き。美佳以外に出す気はないと言ってくれた。本当かな。妊娠中にお口に出してもらう事もあったけど、凄い量だった。本当かもしれない。私をこんな女にした悪党だけど、私の大切な洋之助さん。
洋之助は思っていた。商売で頑張っていると、美佳さんも休ませる事ができる。美佳さんがいなければ、まだポロ儲けを狙っていた かもしれない。いい転機だった。美佳さんは私の幸運の女神だ。美佳さんを大切にしよう。やる日は週1回、休みの前日、徹底的にやる。これ以外にもやるけど、ほどほどにしよう。美佳さんも欲しい時もあるだろう。もっとも私がいたずらしてやる事が多いけど。
洋之助は、紡績に入ってると、なんと甘い管理をしていると思っていた。父は後生大事に保管しているだけだ、今は成長している時代だ、運用しなくては。適正な利潤、それはいいことだけど、チャンスを逃す理由ではない。先行利潤と言う事もあるのだ。父はいい人だ。それだけではみんなを幸せには出来ない。お祖母さんの遺徳も永遠ではない。しかしこれでここまでやってこれたと言うのも、凄い。時代の波に乗っていたと言う事もあるだろう。しかし基本的な事を着実にやっている事もいいことなのかもしれない。
美佳さんのデザイン研究所は、治部洋服として、美佳さんを社長にして別会社にした。製造は紡績でしてもらう事にして、自由な発想で進めていこう。取りあえず、お祖母さんの寄贈した金や内部留保の一部はスリースター不動産に運用を委託してもらう事でようやく父も納得した。市川さんの指摘もあって、一部スリースター不動産の土地を担保にして、銀行から現金の貸し出し枠を作った。土地、株、金で運用した。スリースターとしても、留保金の半分程度は運用している。地方の土地も不要の土地を区分させた。新規投資も進めるように言った。輸出は好調、工場の設備を更新して、原価を下げた。商会と化学の役員にもなった。ここは悪党揃いだ。悪党との駆け引きも面白い。ここは余剰金は運用している。化学は元金の50%以上、上がれば売却する。少し少ないと思うけど、都心の土地は売らずに展開を考えると言ってる。それは一つの見解だ。伯母さんの考えかと思ったら、礼子さんの意見らしい。堅いのは結構だけど、数値に拘らずに売り時もあるよと言ったら、その時は言え、そのための役員だろうと伯母さんが言った。新規投資も更新も利益が出そうならやっている。手を広げすぎているので、いずれ子会社をいくつか作るだろう。紡績して共同出資していけばいい。紡績も好調だけど、やはり新規投資が少なすぎる。父に言おう。商会は部門によって差が有りすぎる。自由は結構だけど、統廃合も検討してはといったら、実は検討中と言っていた。運用もプロ揃いだけど、経緯のないものについても、化学とか紡績と違い、交渉用に使っているような口振りだけど、それは割り切った方がいいと思う。危険だろう。中短期運用と長期投資は分けないと。色々と言っていると、いつの間にか商会でも専務になった。
洋之助は、始めは営業担当で紡績に入ったが、管理にも口を入れだした。洋次郎は口のうまい洋之助に対抗するために弁護士でもあった慶子の夫である市川も一緒に会社に入れた。それでも洋之助は純子の築いた優良な資産や現金を活用して運用して資産を増大させた。紡績も利益の出る経営体質にしたかった。ただ父の洋次郎や紡績の社風は頑固だった。なかなか紡績の経営体質の改善を出来なかった洋之助ではあるが、洋之助の商才を見込んで、一族の会社であった化学や商会は、この商才を生かそうとして、洋之助を役員とした。洋之助は、単に役員となったのではなく、自分の立場を利用して、いくつかこの三社を巻き込んだ子会社を作る事にした。この子会社には、洋之助自身の管理会社をさり気なく出資させ、自分の子分たちに経営を任せた。子分たちにも少し出資させた。化学や商会では洋之助の魂胆はある程度分かっていたが、時代はまだおおらかであり、認めてくれた。紡績が最大の出資者である事も原因だった。紡績は、基本的には純子の母体とも言える存在だった。これらの子会社は基本的にはさや抜きを目的とした会社であった。ただ三社への納入価格は同じでも、量が増える事を理由に今までの納入会社には、値下げさせた。そのさやを抜いた。もっとも色々な名目はつけた。共同購入とか新しい市場への参入とか運送の一体化とか理由は色々考えた。洋次郎や市川は、理屈が立てば良かった。化学と商会は、配当として利益が入り、原価が下がればよかった。現実的に新しい分野への新規参入を計画した子会社もあったし、洋之助の代理としての子分の参加も認めざるを得なかった。洋之助は子分も多く、洋之助の管理会社も一杯作った。子会社も紡績だけの子会社も作ったし、化学との合弁もあったし、商会だけとの合弁もあった。紡績が思うように動かないので、洋之助は別会社を作って動かざるを得なかった。
時代も良かった。新しい需要を見つけ対応していくのには、限定的な責任を負う子会社システムは時代にあっていた。洋之助は紡績の営業でも地域や製品に応じて、子分たちのために子会社を作り、洋之助自身の管理会社や子分たちにも出資させ、営業開拓をしていった。そうして紡績自身の営業成績は上がりだした。
美佳の洋服を販売する会社は冶部洋服と名前が変わったが、ここには紡績も出資したが、洋之助と美佳が出資した管理会社が多く出資して、海外ブランドのデザインとか美佳がデザインした洋服を企画して、販売する会社だった。製造は紡績に任せたものの、営業は洋之助自身が一体となって行った。それだけにどこまでが、紡績なのか次部洋服なのか判然としたい状態だった。化学や商会は洋之助の商才を活かすために、こうした子会社を作る事にはむしろ積極的だった。しかも紡績が主に出資していれば、名目も付き、洋之助の商才も利用できた。こうして紡績の子会社は増え、洋之助の管理会社も増えていった。洋之助自身も商売に力を入れ、今までの子分や新しく紡績で出来た子分をフルに活用して、紡績本体への利益還元もしながら、子会社そして自分自身の管理会社に利益を蓄積していった。
紡績本体は頑迷にいいものを作ると云う高級路線、どこに出しても引けを取らない丁寧な仕事、適正な利潤を守る社風が徹底していた。洋之助は、紡績自体を変える事を諦め、紡績とは別の子会社として自分の意向で動く色々な子会社を作っていった。それは従来の治部洋服がもっとも代表的な会社だった。美佳のデザインで、色々な洋服を作っていった。美佳は婦人服が中心にデザインしていたが男性用の洋服も作り始めた。紡績と化学で合弁して、治部レーヨンも作り、化学繊維を入れて生地も作り出した。
商会でも、紡績や化学の製品、そして治部レーヨンの作った生地や治部洋服の作った服を輸出し始めた。商会でもやがて洋之助は副社長になった。洋之助は、紡績、化学そして商会の仕事をして、紡績と化学の合弁企業では、幾つかを統合して、治部レーヨンは大きくなり、洋之助は社長になった。洋之助は忙しくなった。それらの会社にも治部洋服ほどではないが、自分の管理会社をさりげなく入れたり、それらの下請け会社に自分の管理会社や子分たちに出資させ、子分たちに経営させていった。今までに買っていた土地や建物などの不動産や株についても、幾つかの不動産会社を作り、子分たちに任せる事になった。不動産事業については、普通の不動産会社になり、各不動産の管理や販売などをするようになり、独自の株取引はしなくなった。ただスリースター不動産だけは、まだ洋之助直系の子分たちで固め、洋之助の判断で、色々な運用を続ける事もして、利益は貯まっていった。スリースター不動産を中心に、洋之助は自分の判断で、色々な不動産会社を手足のように使い、情報を集め、独自に運用したり、土地転がしのような事もして、資産を増やしていった。
ただ洋之助も以前のような儲け方が続けられるとも思わなかった。さや抜きだけの会社は単に時間稼ぎでもあった。子分たちの前途を> 考えて、自分の才覚を生かして道を切り開くように薦めていた。スリースター不動産や各不動産会社で運用したり、物件の横流しなどで荒稼ぎする時代は終わろうとしていた。
洋之助「もう今までにみたいなボロ儲けを狙う時代じゃない。不動産でも、調査会社でも、飲食店でもいいから、自分でやっていける仕事を探してみる事だよ。」
子分A「直ぐには無理ですよ、それにまだまだ儲けられるますよ。」
洋之助「俺は親父たちの会社で仕事しているから、小さい関連会社を作り仕事を回してやる。それを手伝いながら、考えていけば、いいよ。もうそんなに大きな儲けを狙っているとしまいに大損するぞ。」
子分B「そうかもしれませんね。なんとか考えていますよ。まだ見捨てないでくださいよ。」
洋之助「そんな事するくらいなら、相談しないさ。不動産会社でビルの補修や維持だけなら、いつでもやらせてやるけど、それじゃつまらないだろう。みんな、金がある内に、考えていった方が、結局自分たちの為になるぞ。サラリーマンになるのもいやだろう。」
子分C「それは無理ですよ。貸しビル業でもやりながら、株でもやっていこうかと思ってます。」
洋之助「まだ儲かるけど、株も注意しないと、いつまでも上がるとは限らないぞ。まあまだまだ俺も死なないし、儲けていくつもりだから、みんなもゆっくり考えていけばいいさ。それに関連会社で仕事しているうちに、なにか見つかるかもしれないぞ。」
子分A,B,C「お願いしますよ。社長。」
しかし、そんなに簡単ではなかった。洋之助は、様々な分野で数多くの会社に出資したり、融資したり、関係する事になった。洋之助は悪党だったが、子分は大事にして、出来る限り面倒をみた。それが、又洋之助の会社に、隠れた力になっていった。
妙子は60才になると、実は洋一と洋次郎と、相続について話し合っていた。
妙子「集まって貰ったのは、我々の相続の事なの。お母さんは今頃から考えていたし、検討した方がいいと思うの。」
宏「今は、相続税の事もあるしね。」
洋次郎「健介くんや洋之助にも相談しないといけない。洋之助は、財産管理会社作った方がいいと言ってる。」
洋一「それはスリースター不動産があるじゃない。」
京子「私には良くわからないけど、利益も配当も多いし、もう管理会社とは言えないと思うけど。」
洋一「詳しいね。」
京子「私宛に入ってくるけど、商会と差が無いこともあるのよ。」
妙子「洋之助が勝手に大きくしたからね。もう投資会社のようになっている。」
真弓「洋之助は、小規模のホテルを又作ってます。」
妙子「あれはあいつが勝手にやってるのでしょう。」
洋次郎「洋之助は伊豆の海岸が好きだから、作ってるだけみたい。別荘作っても管理が大変だからといってホテルにしてる。会社としてやっているのか、個人でやってるのかよく分からない。あいつは会社を一杯持っているしね。」
妙子「宏一や洋之助などの子どもたちも呼ぶかね。ただ大筋では、銀行は宏一にしたいの。化学はまだ決めてないの。」
洋一「鉄鋼は俺の会社とは言えないよ。俺が社長やってるだけだよ。婿養子の清彦君が名義つぐことにしたいけどね。」
洋次郎「洋之助が紡績は継ぐようにしたいけど、市川くんとの関係もある。」
真弓「病院と学校はどうするのですか?」
妙子「それはもう決まってるよ、次平君だよ。」
真弓「でも玲子さんもいるし。」
宏「まだ我々直ぐに死ねわけじやない。また相談しようよ。」
洋一「他の名義もあるよ。商会も分散してるし。少しは、美術品もあるし。」
宏「洋一さんの所の清美さんの旦那さんはまだ官僚なの。」
洋一「寺下くんは、もう辞めて、鉄鋼の関連会社の役員をしてもらってます。」
子どもたちも呼ばれた。
洋之助「父からも聞きましたが、分散して困るものは、財産管理会社に保管して、その名義にした方がいいのじゃないですか?市川さん。」
健介「それはそうですが、目的毎の会社にした方がいいですよ。お義父さんと伯母さんや伯父さん達で何社か作った方がいいと思います。税理士にも聞いて。」
宏一「会社としてみれば、商会は我々の比率は少ないです。化学も銀行も全部まとめれば、相当だが、分散すれば、少なくなります。」
清彦「私が言える立場では言うのもなんですが、個人名義では細分化しています。子どもが少なくなれば別ですが。」
寺下「私もそう思います。」
洋之助「複数作ったとしても、やはり相続税はかかるのでしょう。」
健介「それは当然です。ただ計算が複雑になります。上場していない会社の株は比率の問題もありますし。譲渡や贈与も本質的には一緒です。こんな事いったら何ですが、分かり難いので長期的にやっている人もいます。」
洋之助「贈与も税金いるけど、利害のない人と会社との売買は別ですね。」
健介「それはそうです。しかしあまり露骨にすると問題ですよ。」
洋之助「時間をかけて、複数の会社を使って、やりますよ。私は、自分が名前に出ない会社も持ってます。あれは色々と便利なんですよ。」
洋之助「銀行は宏一さんに継いで欲しいのでしょう、我々がまとまれば、なんとか押し切れる。ただもう治部、市橋そして安倍の一族という時代でもないです。それに株の名義と経営は分離しています。役員には成れても運営できるかは別の問題です。いずれ上場していくことになるのでしょう。株も分散化しなくてはいけません。」
妙子「お前はお母さんみたいな事いうのね。」
宏「でも洋之助君の言う通りになるよ。いずれはね。」
京子「でもやっぱり、今は一族に継いで欲しいですよね。」
健介「銀行、化学、商会、紡績、鉄鋼そして病院と学校があるのでしょう。病院は医療法人になってますし、学校は別法人です。スリースター不動産は、本来商会の資産を管理するための会社でした。紡績や化学なども同様の会社をつくるのですよ、そうすれば分散は避けられます。」
洋之助「私が今住んでいる家だけど、相続とは別に、ある程度僕に譲ってよ。お金は出すよ。」
妙子「出ていけとは言わないよ。私は土地だけだから。」
洋之助「それもあるけど、今は税や管理会社の問題もあるよ。現金の相続はやっぱり最後でしょう。伯母さんの家や玲子さんに必要な所は残し、残りの土地、庭園部分や残りの土地を玲子さんと宏一さんに譲渡や贈与してもらって、それを僕が買う。父の家もホテルにしてしまったので、相続や贈与してもらって、次平兄貴や慶子姉さんの分も僕が買う。洋一伯父さんは昔のお父さんの家や幾つかの地所も継いでいるから、それも同様にやればいいよ。一番税負担の少ない方法を検討して貰います。金は一度に払う事もできる。貸付を入れてもいい。名義移転が進むにつけて、返済と売買が進んでいくやり方でもいい。そのお金で子ども達は、管理会社を作る。伯母さん、伯父さんそしてお父さんたちから、会社の株を出来るだけ安く、別の会社や人を中継したりして、子どもたちの管理会社に、できるだけ安く売る。伯父さんや伯母さんたちは少しつづお金が入ってくる。時間をかけて、万一の為に、条件つけてもいい。各家の管理会社は子ども達を対象に株を分けておく。伯母さんたちは、株や資産は少なくなってくが、お金は増えていく。そして子どもたちの管理会社では株と配当が入ってくる。スリースター不動産の株も子ども達に対して一定の比率で割り振っていきます。その後スリースターの保留金は配当に回していきます。私は、運用を子ども達ともに別の会社も作り、配当と利益を調整しながらやっていきます。子ども達の負担も少しは分担できると思います。今は製薬の人たちも株を持ってますので、了解をとって同様に指定された人への株を割り当てます。最終的には、かなりの現金と少量の各社の株とスリースター不動産の株そして各家の管理会社の株などが伯父さん達に残ります。その後の贈与や相続は各家で考えていきます。相続税は払いますが、できるだけ少なくして、資産は外部に売却せずに済むと思います。」
妙子「洋之助、お前はお母さんの悪党の部分引き継いでいるよ。」
洋之助「美佳さんには、いつも悪党と言われているよ。それ以外でも処分したいものがあれば、相談してよ。私の不動産会社か別会社作るかして、買った事にすれば、いいよ。」
洋一や妙子そして洋次郎は、子ども達に少しずつ土地を贈与していった。贈与された土地は洋之助が買い取った。税金を負担しても、かなりの現金が子ども達に入った。それで子どもたちは、管理会社を作った。
スリースター不動産は、知子たちも株をもっているので、洋之助は話をした。
知子「孝太郎、お姉さんの所の相続決まったよ。まあ想像通りだけど。管理会社の乱立らしいよ。洋之助が土地や株を買い取って、負担を軽くする。スリースターも相続するこども用の出資枠を設定して、配当を多く出す。、製薬も同じように出資枠つけるけどどうすると聞いてきたよ。やり方も内緒にしてねと言って、洋之助が説明にきた。純子会という管理会社も作ったそうだ。お姉さんに援助して貰っていた会社もここに株を割り当てるようだよ。製薬の弁護士も早い方がいいと言ってる。製薬も同様にすればと言ってたわよ。製薬は関連会社も各社の株も多いし、名義も複雑だし。みんなで相談しよう。」
元紀「まだみんな若いよ、洋次郎さんは50過ぎじゅないの。妙子さんでも60才位でしょう。」
知子「10年位かけてやるつもりらしい、お姉さんの時も同じようだった。洋之助に頼んで、ここも一緒にすれば、やりやすいよ。」
製薬の市橋一族も、複数の管理会社を作った。旧薬草園や西日本に点在する土地は、多くは、個人名義のままであり、今はほとんど使われていなかった。スリースター不動産が、子どもたちへ名義を割り当て、配当を出し、子供たちが複数の管理会社を作った。
作業を進めている時に、妙子たちは、蔵の中を調べてみる事にした。蔵は食糧難の時代に穀物倉庫のように使っていたが、奥においてあるものは、そのままであった。いつも気になっていた。洋一も子どもの真智子が妊娠をしたりして、一族の保育所もあり、環境もいいこの場所に引っ越してきていた。いつも誰かが出かけているが、たまたまみんな揃っていた。妙子はみんなに声をかけて、整理してみる事にした。鉄平の分と先代の次平とに分けていた。
美術品も沢山出てきた。妙子たちは、鉄平さんも絵も好きだったねと言いながら、整理していると小判も出てきた。先代次平の所蔵品も沢山あった。小判も出てきた。美術品の価値は判らないので、専門家に鑑定してもらう事になった。
鑑定結果が出てくると、高価なものも多く、国宝級のものも出てきた。妙子は功一郎とも仕事上の付き合いもあり、功一郎も呼び、鉄平も呼んだ。洋次郎は知子や孝太郎も呼んでいた。
親戚が集まるので、鉄平達と次平達の法要を行い、食事も系列の料理店に準備させた。
妙子「鉄平さんの蔵には、先代の次平先生の所蔵品も入っていた。お母さんやお父さんの物もあったかもしれないけど、色々会ったのよ。それぞれ五百両ずつの小判も出てきたの。みんなの法要をしてどうするか考えて欲しい。」
功一郎「それぞれ時価は大変な価格みたいだけど、この蔵はもう洋次郎さんや妙子さんのものだと思う。」
知子「ここの家は空襲も合わず、みんなの会社も色々あっても、なんとかやっていけたのも、ここの小判が守っていたのかもしれないね。」
洋一「私もそう思うよ、これからもみんなの会社や家を守っていてくれるように、保管していこうよ。」
宏「でも小判は陳列する訳にもいかないよ。」
健介「美術品は、美術館でも作りますか。」
美佳「私、絵が好きなので、専門の人と相談します。」
功一郎「機械会社として美術品を、記念に数点か持っておきたいのです。そんなに高い物は無理ですけど。」
洋次郎「紡績もそうしますよ。」
妙子「美術館に寄付する前に言って来てね。化学でもそうするよ。宏さん、銀行もそうしたら。」
宏「そうだね。でも小判はどうするの。」
洋之助「貴金属の会社でも作って、保管させましょう。やり方は税理士でも相談するよ。みんなが株主になればいいと思いますよ。」
各会社が数点ずつ購入して、そのお金で美術館を作る事にした。小判は弁護士と相談しながら、相続した事にして、保管するための会社を関係者が作り、鉄平会と次平会と云う2つの貴金属会社を作った。
妙子はこれで片づいたと思っていたら、いつもお酒を届けている醸造元が、相談にきた。調べてみると純子名義のままにしている株や土地もまだあった。
妙子「グループ以外のお母さん名義の株は、どうしよう。まだあったのよ。戦争中に亡くなったでしょう。混乱期だったし、そのまま放置されているの。土地の名義もあるのよ。税金大したことないから、私が払っていた。それ以外にもあるのよ。お金も貸していたみたいだけども、お金の価値は全然変わっているし、お金はもういいと言ったら、それは困りますと言うのよ。判ったものは相続したけど、私もそのままにしてたし。」
洋一「別に配当くれる状況でもなかったしね。僕もそれどころでもなかった。」
洋次郎「私もそうだよ。」
妙子「土地は幾つかは洋之助に任せたけど、私も手が回らなかった。お酒のお純は、まだ生きてるのよ。毎年新酒持ってきてくれているでしょう。あの会社の好意と思っていたら、あの会社も代が替わって、「お純」も増産できるようになってるから、断りきれない所には売りたい。蔵も会社に吸収して、会社全体の一部の株にしたい。ご了承をと言ってきたのよ。あのお酒はこの家が買っていたと私は思っていたのね。蔵は、名前だけじゅなかった。お母さんの名義だったの。息子さんが後を継いで、ちゃんとしたいと考えてきたのよ。そんな事をこの頃言ってる所が何社かあるのよ。」
洋之助「そうなんですよ。私と商売している会社もそうだった。無理な注文も良く聞いてくれていた。お礼を言ったら、純子さんに助けられた会社ですから当然ですよと言われてね。つぶれかかった時にお祖母さんが援助したらしい。一族の管理会社も二つ作って、洋介会と純子会でもすればいいよ。」
洋次郎「そんな会社できたら、紡績にも出資してよ。紡績も出資するよ。みんな喜ぶよ。」
妙子「化学もまだ信者いてるから同じかもしれないね。」
洋一や妙子そして洋次郎たちは自分たちの家の管理組合をつくり、両親の管理組合も作った。見つかった純子名義や書き換えていない純子名義の株や土地は、最終的には純子会の名義にした。純子が援助していた多くの会社は、純子会に新しい株を割り当てた。紡績も化学も株を持ち合った。商会は遅れて知り、同様な処理をした。洋介会についても寄付したいと云ってくる人も出てきた。東京近在の料理店や貸しビルなどを純子会が買い取り、配当などの収益の一部を加えて、治部病院での医療補助に行う会社を作っていくようになった。各家の管理会社や相続する予定の子供たちの管理会社も、小さなビルや関係する小さな子会社も買い取っていった。
知子や孝太郎名義だけでなく、恵子名義や幸之助郎名義なども残っていた旧薬草園などの土地を相続していった。そして、洋之助の不動産会社に売り、名義知子や孝太郎たちから最終的に、製薬の株を買い取っていた。一平と恵子会も作って、市橋一族の管理会社も作った。安倍鉄平も鉄平会に入った。管理会社と事業会社と個人が絡み合って、複雑な操作を行った。
知子「洋之助の奴、複雑にやるもんだろから、当事者でも分からなかった。」
元紀「顧問弁護士も今どうなっているか、よく分からないと言ってた。」
孝太郎「全然関係ない会社や人も出てきたけど、あれは何。」
知子「はっきり言えば、洋之助の子分と子分の会社だよ。利害もないしね。持ち逃げされないか心配だったけど、洋之助も別にエサやってるらしい。洋之助はなんか条件つけてたみたいだよ。その上別に不動産会社つくった。一平と恵子会は、純子会の流れかね。」
元紀「全部そうすれば相続税ももっと安くなるのに。」
知子「元紀、そんな事したら、目立つだけだよ。それに個人名義も持っていなければ。洋之助も考えているよ。儲けは六分目がいいの。」
元紀「洋之助君のような人も、市橋から出るかな。」
知子「元紀も孝太郎も聞いてね。お姉さんは、明治維新で今までの価値が変わる時に出てきた天才だよ。いつまで経っても、幼い感じがした容貌と言葉を隠れ蓑に使い、必死で計算し、才略を立てていた。大儲けもしたと思うよ。だがその反作用にも耐えて、結局姉さんなりの結論を得たんだと私は思う。綺麗事だけの人ではないんだよ。時代と天分が必要なんだよ。そんな人でも帰ってくる場所が必要なんだよ。それが洋介義兄さんだった。姉さんも普通の人のように、洋介義兄さんとの生活を楽しもうとしてたよ。もしそうしていたら、姉さんの天分が爆発していたかもしれないし、普通の生活を楽しめたかもしれない。天分があると言うのも大変なんだよ。洋之助には、そんな姉さん譲りの才覚もあり、姉さんの蒔いた種も有効に使って敗戦という価値判断がひっくり返る時代に大儲けをし続けた。その反動も強かったと思うよ。ただ美佳さんが現れていて、美佳さんを好きになり、美佳さんの服を売りたいと云う思いで、普通の生活に戻れた。天分は一種の劇薬だからね。使い方も難しいし、時代も必要なんだよ。私は姉さんも洋之助も見てきた。うまく行くには、多くの条件が揃う必要が有るんだ。普通の人は堅実が一番だよ。製薬は、姉さんにも洋之助にも恩恵受けてきたし、助けられてきた。でも、ここは堅実にやっていくしかないんだよ。いつも変動や混乱期ではない。普通の時代の方が多いんだよ。天分持っていても大変だし、天分持っていないのに、自惚れる事は最悪だよ。ここは堅実にやっていくしかないんだよ。孝太郎、判っているね。」
孝太郎「私には、それしか出来ないよ。」
製薬についても処理するために、事業会社毎にしたり、子ども達毎にそれぞれ管理会社を作り、中継する会社や人が複数になり、5年ほど経つと、複雑な売買を繰り返して、大きな仕組みが出来できてきた。混乱期に洋之助の儲けた金は、多くは、土地や株に換わりつつあった。個人名義は、まだ相当残っていた。
安倍グループは本来製薬が中核であったが、鉄鋼に進出して、長男の鉄一が経営していた。鉄一が若くして、急死して、相続問題で揉めて、鉄一の妻照代も急死したので、相続は更に揉めた。鉄一の娘の春江は、鉄一が意に染まぬ結婚を押しつけてから、鉄一とは不仲だった。鉄一の長男の鉄造や鉄二郎とも不仲だった。春江は鉄鋼と縁を切りたいといって、鉄造や鉄二郎が買い取ったが、資金が足らず、グループ内の他の会社の名義は、恵子や純子に買い取ってもらったりした。それでも足らず、恵子や純子の鉄鋼の株を買い取って貰っていた。鉄鋼不況の時に合併し、純子に資本投入も依頼した事もあり、鉄造も鉄二郎の比率は下がっていった。鉄造と鉄二郎の息子は、戦争中に亡くなり、安倍は春江の婿養子に入った鉄平だけになっていった。
安部製薬は、安部鉄平が作り上げた薬種問屋を土台に、娘の恵子やその夫の市橋一平が製薬会社を作り、恵子と一平の息子の幸之助がそれを守り、恵子の最後の娘であった知子がそれを受け継いでいた。
恵子が会長で、一平が社長となっていたが、一平が65才になると、幸之助を社長として、自分は副会長となった。恵子と純子はよく話し合っていた。大震災や昭和恐慌もそれなりに対応して切り抜ける事が出来た。恵子は幾つかの会社の名義を持っていたが、純子は、母の恵子が製薬を大切にして、分散させる事を嫌っていた事は知っていたので、製薬の多くは幸之助や知子が継ぐようにしていた。純子は、製薬の株は一部しか継がなかった。
知子の兄の幸之助は医者であったが、知子とは20才離れていて、幸之助は開発担当の常務となり、やがて会社全体をみるようにしていった。幸之助には、二人の子どもがあった。孝太郎と佳恵であった。
知子は、男の子を出産した。鉄平と名付けられた。恵子の父親の名前を継いだ。製薬会社の創設者の名前だった。知子は乳児を抱えながらも、奮闘していた。一平と恵子は、看護婦を付けてくれた。知子は出産後も生でしたくなり、元紀に毎日のようにやっていた。元紀は、知子のような複雑な頭もなく、切り替えも出来なかったので、私立の法学部へ行くようになった。知子は、二人の子どもを産んだ。二人目も男で紀一郎と名付けられた。知子は、安倍製薬に入社して、恵子の側にいつもいた。
知子は、管理室長となっていた。母の恵子は知子が生まれる前から会長だった。知子は安倍グループの他の会社の役員となって、経営の勉強をしていた。
一平が亡くなり、母の恵子もやがては亡くなった。その後も何かと純子は幸之助に話するようになっていた。恵子は極めて、堅実で現実的対応をするタイプだった。関連会社も結構あったが、それぞれ堅実に運営していた。製薬は開発は積極的だったが、堅実な社風を維持していた。幸之助もその路線を継承していた。製薬は開発を中心に、堅実に運営していた。幸之助は多角していく純子の会社には、知子を役員に派遣して連絡役に使っていた。
純子は製薬の役員会には出たものの、意見があると知子に言うようにしていた。幸之助は慢心しそうになったら、知子から純子からの伝言を伝えていた。
幸之助「もう姉さんは何でも知ってる人だね。」
知子「どこまで知ってるか判らないけど、私も呼ばれると緊張するよ。製薬も大きくする考えも教えてくれたのに、兄さん断るなんて。」
幸之助「あれは姉さんの誘いというより、私を試しているだけだよ。お母さんと良く似てるよ。この頃ようやく判ってきたよ。」
知子「そうかな。」
幸之助「私が考えているより、先を考えて大きな話をしてくれる。私がよく考えるようにとね。でも色々と助けてくれているよ。」
幸之助は孝太郎を早く会社に入れて、少しずつ手元において勉強させていた。今度は知子は、孝太郎に勉強させるために、孝太郎を各会社の役員にしていた。製薬はそんな風に後継を育てていった。美子も病院も辞めて、製薬の研究を手伝うようになった。佳恵は医者になったが、同じ医師の杉野良平と暮らしていた。
幸之助は、第二次大戦中に亡くなり、製薬は知子が経営をみる事になった。製薬会社は関連会社や小さい病院を抱えていた。純子や恵子が話してあって、安倍グループを運営し、幸之助も純子に相談していたのだ。薬草園を多くは実験農場として、薬草だけでなく種苗の研究もしていた。戦争中や戦後もなんとか乗り切れた。純子は、戦前にも、東京近郊でも土地を確保しており、それを開墾して畑として、社員の仕事と食料も何とか確保していた。純子の子ども達は、洋一は鉄鋼の中核だったが、既に資本は分散していた。
純子は戦争中に亡くなり、グループ全体をまとめる人は、欠けていたが、混乱期の後、しばらくして朝鮮戦争特需もあり、各企業とも好調だった。純子の孫の洋之助は混乱期に一人稼いでいた。濡れ手の泡の稼ぎをして、戦後成金の一人にもなっていた。そんな洋之助に対して、意見できるのは、洋之助の伯母の妙子と知子程度だった。父の洋次郎は穏和ないい人だったし、宏も銀行の頭取でもあるが、学者肌だった。
製薬も、知子は60才に近づいていた。元紀は知子に頭が上がらなかった。息子の鉄平は鉄一の娘の春江の婿養子となり、春江の海運会社を継いでいた。春江は離婚し、離婚の時に小さい海運会社を分けて貰い、資本投入していた。戦前には、安倍海運は多くの船を持つ大きな会社になっていた。それだけに敗戦による被害は甚大で、鉄平は必死になって再建の糸口を掴もうとしていた。
孝太郎が知子を支えていた。佳恵と紀一郎は医者になっていた。孝太郎には、二人の男の子、良太郎と浩介がいた。佳恵は夫の医師の杉野良平との間に隆太郎と言う一人の男の子がいた。鉄平には妻和恵との間に一人の女の子、良子がいた。紀一郎には二人の子ども、紀太郎と紀子がいた。
洋之助は、全くの個人会社としても、複数の不動産会社や運用会社を含む会社群と美佳を社長とする治部洋服そしてその関連の直営店を始めとする関係会社そしてホテルも東京、伊豆、大阪、箱根、軽井沢そして千葉と6つ持つようになった。ホテルも個々の会社として一族にも少し持って貰い、株主優待の形で、宿泊できるようにした。知子や孝太郎の子どもたちから、贈与などで得た土地も買いとっていた。
製薬グループの知子や孝太郎たちの土地を洋之助が購入し、洋之助は製薬関係の管理会社も作る手伝いをしていた。安倍海運は、戦前は多くの船を所有していたが、大きな船は、軍に取られ沈没されられていた。戦後残った船や国内の運送などで会社の再建を図っていた。洋之助が戦後成金になっていく途中で、鉄平と知り合い、幾つかの会社を作り、鉄平の安倍海運とも協力して、安倍海運の再建に協力しながら、洋之助も大きな利益を得ていた。春江は鉄鋼以外の安倍グループの株を持っており、幾つかはそれを譲り受けていた。知子から譲渡された土地や幾つかの株を洋之助に売っていた。そして、船を作り、戦後復興の波にものり、安倍海運は大きくなっていた。洋之助は鉄平と親しくなる時に、一つの海運会社ではなく、幾つかの子会社をまとめていく形で再建していく事を提案していた。鉄平には、一人娘の良子しかいなかったので、今の内から、会社そのものを単一の大きな会社にする事を避けるように提言していた。良子の縁組みについても色々と調査していた。
洋之助は荒稼ぎする中で、無意識に純子の後を追いかけて、幾つかの会社の株を買い取っていた。鉄鋼株もそうだった。洋之助は、紡績の仕事をする内に、商会にも関与しだし、輸出する時に安倍海運を使い、安倍海運の再建に協力していた。鉄平はなにかと洋之助に相談していた。安倍海運は色々な物資を運んでいた。鉄鋼石もその他の鉱石も。鉄平も一族としての意識もあり、一族の会社には便宜を図る事も多かったし、助けられる事もあった。
洋之助「ホテルも建てたし、結局、荒稼ぎした金はほとんど無くなってしまった。」
美佳「良いじゃないの、ホテルも幾つか建てたし、土地や株に換わっただけでしょう。」
洋之助「製薬の人たちの土地も買ってしまった。でも買ってしまうと隣接する土地もつい買ってしまった。混乱期で買った株も、経緯もあって持ってるので、そんなに簡単に処理できない。運用して荒稼ぎも出来なくなった。スリースターも内部保留が少なくなって、建物の維持や立て替えにいるしね。そんなに運用できない。まだ儲かるのに。僕個人もそんなに残っていない。」
美佳「それは、もうこれからは、地道には働きなさいと言っているのよ。洋之助さんは絵が好きなの。この間絵の保管庫もあったので驚いたの。」
洋之助「ある経緯で絵を買って、ある程度は売ったけど、忘れていた。保管庫が必要と言われ、作っていた。又売って金に換えるか。」
美佳「私は絵が好きなの。一度ちゃんと見せてよ。」
(洋之助が言った、ある経緯とはなんでしょうか? 詳しく、ご覧になりたい人は、 ある経緯をクリックしてください。)
美佳は、洋之助の所蔵していた美術品を見た。驚いた事に、有名画家の絵をかなり所持し、今は有名になった新進画家の絵もあった。
美佳「洋之助さんの好みは分からないわ。有名な画家なら手当たり次第に買っているだけね。でも新進画家も一人だけあるのね。」
洋之助「絵が好きで買ったというより、初め別の目的で絵を買った。買った時は敗戦後の混乱期で安かった。結構転売で儲かった。その残りだよ。売るつもりが忘れていた。」
美佳「美術館に寄贈した方がいいわよ。ある程度は、今の家に置いて。」
洋之助「結構金になるよ。一部は売りたいけど。」
美佳「悪党もいいけど、少しは心入れ替えないと、駄目よ。私が整理して、美術館も整理するわよ。」
洋之助美術館は税金対策のつもりだったのに。」
美佳「ある程度は売って良いわよ。悪党の顔も立ててあげる。」
美術館は専門の人を置き、増築した。各ホテルにも数点ずつ置いた。幾つかは、売ったけれども美術館の増築費用なども必要になり、洋之助が思う程には、金にはならなかった。洋之助は美佳に言った。、
洋之助「結局、あんまり金にならなかった。美佳さんも悪党になったね。」
美佳「貴方に感染されたのよ。でも結構立派な美術館になったでしょう。」
子どもたちへの名義書換作業もある程度進んだ段階で、機械、鉄鋼、化学、商会そして銀行の各社は上場した。子会社も含めて株は分散化させるようにしてたが、かなりの株は売る事になった。製薬は知子たちが、紡績は洋次郎が反対した。両社とも堅実な気風であり、そのまま運営していく事になった。紡績と協力していく、服飾関係の会社は、洋之助は上場するを視野に入れていたが、まだ大きくなっていなかった。
洋之助「結局、株は売らされる羽目になった。金にはなったけど、もう少し持っていたかった。もう運用して荒稼ぎはする気もなくなったよ。長期的に運用していくよ。みんなにも聞かれたけど、そう言ったよ。山師気分は抜けたつもりだったが、なかなか抜けていなかった事を痛感したよ。お祖母さんはよく知ってたよ。」
美佳「この頃お義母さんも妙子伯母さんも家でのんびりしている事多いでしょう。お祖母さんの話も良く出るのよ。お祖母さんは、お母さんから、若い時から天分に溺れやすいから、注意しなさい。人間はどんな人でも悪の部分持ってる。天分を持っている人は、その悪の部分も強いから、注意しなさいと言われていたらしいの。妙子伯母さんもお祖母さんから言われたらしいよ。私に似ているから、注意しなさいって。」
洋之助「私は父から、何にも言われてないよ。」
美佳「お義父さんは、そんな部分あまりない人じゃない。元々生真面目な人だし、お祖母さんの愛の部分とかお祖母さんの言った事を忠実に守る人だしね。妙子伯母さんは、貴方の事気にしてたよ。でもこの頃真面目になってるから、私からさりげなく言っておきなさいと言われたの。」
洋之助「どうも、ここの家は、極端に別れやすい。私と兄は全然違うしね。姉もおとなしいし、健介さんといれば楽しいと言ってるよ。母は元々張りつめたような感じで父を愛していたので、姉もそんな傾向が強かったけど、健介さんは現実的だしね。その影響もあって、少し穏やかな雰囲気に変わっていったよ。私は家族の中では、いつも違和感持っていたし、時代も儲けやすかった。でもあのまま突っ走っていたら、今は大損してたかもしれない。美佳さんが止めてくれた。」
美佳「私は何も言わなかったわ。」
洋之助「美佳さんは、お祖母さんに似てるから、お祖母さんの言っていた事を思い出す事が出来た。美佳さんが、私の幸運の女神のような気がするよ。」
美佳「でも私は悪党の洋之助さんが好きよ。貴方は貴方よ。ただ自戒しておく事は必要だけど。妙子伯母さんも自分の悪も見ながらも、自分らしくと言ってたよ。私もそう思うわ。私はお義兄さんはいい人と思うけど、緊張するのよ。この間ついに本当に意味で、心臓手術ができたと言っていた。妙子伯母さんやお母さんと話してたわ。次平先生の夢は、やっぱり次平の時代に実現できたと興奮して話していた。次平先生の夢とはなんなの。」
洋之助「曾祖父の次平先生は、心臓の先天的な異常も手術で治したかった。ただ麻酔の方法や血液循環の問題もあって、心臓内の手術はなかなか出来なかった。でも人工心肺で血液循環を迂回させたり出来るようになってきた。妙子伯母さんは、医療装置や機械を使って、心臓の手術もできるようになるだろうと言っていた。一時的に人工心臓も使えるかもしれない。心臓の手術についても医療器械などの進歩で進んでいくと考えているみたい。」
美佳「洋之助さんは、商売と女の事以外も知ってるのね。循環器というのはなぜ? それに心臓手術は戦前にも行われていたのでしょう。妙子伯母さんもしたと言ってたよ。」
洋之助「お祖父さんもお母さんそして兄や姉も医者なんだよ。身体の中を血液は回っているだろ。美佳さんの身体の隅々にも血液は回っているんだ。循環させる臓器だから循環器と言うの。心臓は血液を循環させているから、他の臓器と違って、暫くお休みしてくださいという事が出来ないんだよ。戦前の手術は、心臓の表面や外部の傷を治していたけど、心臓は動いていたんだよ。胃とか腸も大切な臓器だけど、人間はいつも食べてる訳じゃない。ある程度はお休みもできるだろう。そこが心臓と違うんだよ。」
美佳「次平先生はどんな人でも医療出来る事も考えていたのでしょう。一度うまくいったと聞いているけど。」
洋之助「それは一時的で、限定的なものだよ。日本でも、アメリカでも、寄付で無料診療している所もあるでしょう。でも一部の人だけの力では限界がある。お金持ちでもいつもお金有る訳じゃないし、多くの人が助け合う事ができれば、可能になるかもしれない。本当に困っている人もいるけど、中には狡い人もいるでしょう。本当に困っている人を考えていても、狡い人が悪用するかもしれない。厳しくすれば狡い人の悪用を防ぐ事を多少できるけど、本当に困っている人が利用出来なくなる事の方がずっと多いのにね。」
美佳「誰とは言わないけど悪党もいるしね。」
洋之助「僕は、自分なりに、鉄平さんや純子お祖母さんそして多くの人の夢に挑戦していかなければならない。運用したり、株とかの売買で金儲けるだけではなくて、多くの人に仕事と夢を与えるようにしていかなくては。父はいい人だけど、僕も自分の考えを入れて、いい人だけじゃなしに多くの人を巻き込んで、夢を実現していくつもりなんだ。」
美佳「悪党もいい人を助けるのね。」
洋之助「僕はいい人とは言わないよ。でもお祖母さんは悪党の部分も、いい人の部分も持っていた人なんだ。僕は混乱期に金を儲けたよ。でもお祖母さんなら、もっと儲けながら、人を助けてかもしれない。それは分からない。お祖母さんは、大儲けした後の怖さも知っていた。僕は頭では分かっていたけど、実際には抜けきれなかった。美佳さんを好きになったり、偶然にもそうする事が出来ない状態に追い込まれてやっと冷静になれた。美佳さんは私にとって、救いの女神かもしれない。」
美佳「私も夢が出来たのよ。」
洋之助「美佳さんの洋服は僕が広めていくよ。」
美佳「それもそうだけど、別の夢も出来たの。私はあの保育所もおかげで助けられた。もしなかったら、私は大変だった。慶子さんにも話をしたの。私は自分の夢を追いかけるため、そして悪党との生活を楽しむための我が儘だったけど。 今後は、働く女の人がもっと出てくるわ。夢を追いかける人もいるし、生活のための人もいるし、自分だけの事情を持っている人もいるでしょう。そんな人のために、あの保育所を少し大きくしたいの。私は我が儘な女だから、そんな崇高な思いはないの。でも少しずつ幾つか増やしていきたいの。慶子さんも手伝ってくれると言ってくれた。まだまだ判らない事も一杯あるから、無理をしないで、少しずつやっていきたいの。決して利益にはならないと思うけど。悪党も助けてね。」
洋之助「私も出来るだけの事はするよ。でも女の人が赤ちゃんを、子どもを育てるのは、当然と思う人はいるよ。それに赤ちゃんや小さい子どもを預かるのは、大変だよ。利益にはなりにくいし、難しい仕事だよ。そんな金なら私が稼ぐよ。」
美佳「お金の為じゃないのよ。私のためなのよ。世の中の半分近くは女なの。女だけでは子どもは出来ないわ。子どもが夜泣きしても、どれほどの男の人が世話しているの。少しでも女の人を助けるのは大切よ。今は、この一族のための託児所や保育所でしょ。この一族は女の人も働いてきたわ。働く女の人を助けたいのよ。私は、昔の自分の為に、そして自分と同じように働いていく人の為に、何かしたいのよ。まだどうするかもはっきり判らないけど、どうすればいいか考えていきたいのよ。」
洋之助「美佳さんも単なる不良ではいやになったと言う事か?人にふさわしい服装を考える事も大切だと思うけど。」美佳「それはやっていきたいのよ。しかし私も何かしたいの、自分のために。託児所や保育所は色々と問題は多いと思う。家の近くになければならないしね。でも私は助かった。一人でもそんな人を応援したいのよ。少しずつしか出来ないけどね。」
洋之助「僕も妙子伯母さんやお母さんとも話をしてみるよ。でも美佳さんがそんな事考えているなんて。」
美佳「やりたいたけの女とでも思っていたの。」
洋之助「そんな事はいってないよ。ただ商売だけで、僕は考える癖があるから、子どもを一杯集め、保育料を高くとれば、儲かるよ。でも子どもの数は安定しないし、緊急の用意もいるしね。ここの施設は結局、乳母や子守の延長だからね。多くの人の子ども預かるのは、大変と思うよ。」
美佳「そんな事は悪党も考えるのよ。利益なんか気にしてないけど、いつまでも赤字ではやっていけないから。」
妙子も洋次郎たちは、託児所や保育所は一時的なものと考えていた。結構経費もかかっていたし、知らない人に庭園の中に入るのも、好まなかった。ただ一族の中で、出産する人もこれからもありそうだった。取りあえず使用者を限定して、英才教育をする幼稚園との一体化を検討していくことになった。洋之助は自分の不動産会社の一つが都心の貸しビルを作り、家賃収入の三分の一を寄付する事にした。慶子も治部病院が内科、外科に深化していく過程で、小児科は置き去りになっていくようで寂しかった。美佳の小児科の専門病院の構想に共鳴して、治部病院と話をして、関連病院として治部小児科病院を洋之助と美佳の協力を得て作る事になった。洋之助は週数回ではあるが、小児科の医院も作り、保育所と幼稚園に併設する事にした。
洋之助「庭も減らされたり、金も要った。美佳さんも悪党だよ。」
美佳「私も、悪党かもしれない。悪党を好きになったから。でも二人で考えて行く事で道は開けるかもしれない。」
洋之助「補填するだけの事業は無理だよ。」
美佳「それは判ってます。でもこの一族の女には助かっているわ。株で損したと思ってよ。」
洋之助「僕は損した事まだないよ。」
美佳「いずれ、損するわ。百戦百勝は無理よ。いくら悪党でもね。」
洋之助「保育所に通う子どもをもう一人、作りたい。美佳さんは反対しないよね。」
美佳「悪党らしい発想ね。溜まってるの。」
洋之助「溜まってるよ。子宮直撃してあげるよ。僕は儲けないと、美佳さんを襲いたくなってくるようだ。」
その日の洋之助は、激しかった。美佳は突かれている内に、意識がなくなりかかった。そして、本当に子宮に直撃されている気がして、記憶が切れた。直ぐに意識が戻った。洋之助が電話を握っていた。
美佳「お義母さんに電話した?」
洋之助「これからかけようとしている所。」
美佳「もう大丈夫。」
洋之助「又泡吹いていたよ。本当に大丈夫。」
美佳「貴方が突きすぎているからじゃないの。本当に出来たような気がする。白い霧の中で鐘鳴ってたわよ。本当に悪い人ね。限度も考えてよ。壊さないで使ってね。いつまでも。」
洋之助「大切にするよ。僕の幸運の女神だから。」
二人は接吻して、抱き合って眠った。
初代の次平の残した各医院は、東京は大きくなっていたが、外科と内科に深化させていたので、総合病院には向かなかった。学校は、別の学校と併合して、新しい大学となった。大阪は、病院は新しい大学の付属病院となっていった。福岡は、製薬の援助で、大学と付属病院になった。それ以外の各地の医院は、製薬が病院としていった。
そして、二代目の次平が、心臓手術も行い、初代の夢は実現した。妙子はより安全な医療器械や医療用品の開発を進めていった。功一郎たちも応援してくれた。
美佳の考えていた保育所と幼稚園は、充実した設備をもつ、保育料が高く、一族及びそれに関係する人たち用が先行した。新しく、保育料を下げた託児所、保育所そして幼稚園を作っていった。美佳自身も服飾で忙しかったので、実際の運営は保育の専門家に任せていた。治部病院は内科と外科に特化していったので、慶子が洋之助や美佳らの支援を受け、作った治部小児科病院に専念していくようになり、結婚した女医などを雇いながら、乳児や幼児を預かる施設を訪問するようになった。
初代の次平の目指していた「だれでも、医療を遠慮なく、受けられるようにする。」そしして、鉄平たちの夢そしてお純の夢である「多くの人に仕事を与え、自分の能力にあって働いて貰い、個人の夢を叶えながら、社会の為に役立つ会社にする」事への挑戦はまだ続いていた。
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