リトルキャット運用会社と株式会社リトルキャット

リトルキャット運用会社

リトルチャは、リスキーな投機を狙いやすい場所であれば、主戦場のデリバティブ以外に、株式相場、株式先物、商品相場、商品先物そして為替と展開していった。リトルキャットはうるさい猫だったし、取引の成績も良かったので、子猫たちは、当初から、リトルチャの運用枠を多くしていた。本当はスイス組と国内組とで半分ずつの運用枠にした。リトルチャのグループは、その中の半分なので、275億の四分の一の70億弱相当の運用枠の筈だったのに、リトルチャは、デリバティブだけでなく、商品相場も為替も担当するからと云って、はじめから100億弱の運用枠を自分たちのチームに割り当てさせた。その分、スイス組の株・先物グループの運用枠は減り、運用枠は40億相当程度にとどまった。

株・先物グループのリーダー猫だったチャタロウは温厚な性格だったし、前から比べると増えていたので、新しい運用枠の割り当てにもそんなに文句は言わなかった。しかし配下の猫たちは、不公平だとにゃーにゃーと文句を言った。流石にリトルチャも、直ぐに取りすぎた運用枠は、1年間で、70億にして、株・先物グループに返した。リトルチャはなんと1年間で、配当や経費や税金、そして利益の残った金の半分は運用しない金などで取られながらも、運用枠は5倍にするなどの荒業をした。株・先物グループは、前の失敗を参考にして、慎重に取引したので、運用枠は1.5倍程度しか増えなかった。これでも驚異的な好成績だったが、リトルチャは、神をも恐れぬ儲け方をしていた。株・先物グループも、あまりの驚異的なリトルチャの儲け方に度肝を抜かれ、自分たちの運用枠もあっという間に、倍以上にもなったので、その後はリトルチャの運用に更に一目も二目も置いて、ある程度協力する事にした。確かに株・株先物グループも協力した時は信じられないような儲けが出た。しかしリトルチャのグループは、それでももう少し儲けられたと浮かぬ顔だった。リトルチャのグループは、段々と子会社が増え、一人いや一匹の猫毎に独立したようなものだった。リトルチャは強烈な指導力で統括して作戦を立てていた。配下の猫たちは、それぞれ役割を命じられていた。他から見れば驚異的な儲け程度では、リトルチャのグループでは、他の猫たちの子会社とは、大きく離されていた。

運用枠が増えると流石に、配当や経費にもお金がいるし、今のシステムでは運用枠が、5倍なんぞに増える訳はないと誰もが思っていた。しかしリトルチャは神がかりのように儲け続けた。数年間は、その儲け方のペースを持続した。スイスカナコインの猫資金の体制が変わった事もリトルチャに味方した。元々のスイスカナコインでの運用枠に、スイスカナキャットの運用枠を加え、急増していた。チャの手前、リスク管理は厳しくしたものの、そこにリトルキャット運用会社を絡ませて、リスクがあるが儲かる可能性の高い取引をリトルキャット運用会社で出来た。流石に1兆相当の運用枠を越えると、経費や運用しない金なんぞの制約もあり、徐々にペースが落ち、運用枠の拡大は倍程度に落ちてきた。そして2兆相当を超えると、運用する機会も限定的になり、リトルチャも狙い場所とか投資する金額を考えて、運用枠の拡大のペースも更に落ちてきた。4兆を超えると、もはや大規模に投資する場所は確実に減り、投資する金額も限定されてきた。それでも1兆程度も運用枠が拡大していっていた。複雑な経理をしていた正人ではあったが、さすがに正人もリトルキャット運用会社の運用利益が、1兆を超えだした辺りから、経理の不審さを感じだし、調べ出し、リトルチャの運用枠が3兆相当になった時点で漸く、リトルキャット運用会社のアウトラインは判明した。もう一つの大きな銀行の退職者達の経理操作は巧妙で、さすが天下のもう一つの大きな銀行と云えるやり方だった。法に触れず、各国の諸法の網を潜り抜けて、海外の運用子会社にも子会社をつくり、その子会社に金を落とし、全体的な内部留保を増やし、税金支払いも巧みに低くして、利益計上を減らしながら、結局、運用子会社の運用枠が増えて、もう一つの大きな銀行の退職者たちへの報酬も高くする操作がしてあった。正人は、海外での運用子会社の運用実態はまだ複雑で完全には、判らなかった。利益の半分を準備金におくシステム自体も、怪しくなっていた。利益計上を巧みに操作して、運用子会社への内部留保が増えて、実質的な運用枠拡大を多くするようにされていた。正人も事態を深刻に捉えだした。そしてついにリトルチャの運用枠が5兆を超えそうなと思われる時点で、これ以上リトルチャの運用枠を増えすのは、問題だと思い、最初の約束と違うと、いくらリトルチャがゴネても、もうリトルチャの運用枠は増やさないようにしようと思った。正人は、自分が調べた事は黙って、リトルチャの運用枠はもう十分に大きい、運用枠を拡大するよりは、今は準備金として貯めようと、リトルチャと交渉する事にした。リトルチャは、やっぱりゴネた。交渉は難航した。リトルチャは、法律の裏側ももう一つの大きな銀行の退職者以上に知っていた。少しずつでも運用枠が増えないと張り合いがない、我々のグループの中でもそれぞれ競っていると言った。まだまだ元気だったチャにも相談して、仲介に入ってもらった。チャの運用はコマメに運用し、リスクも取り、大きな損失をしないようにしていた。スイスカナコインのシステムも変わり、スイスカナキャットでの金も貯まっていた。ココが貯めていた香奈特別基金も増えていた。スイスカナキャットの現金も十分あった。猫軍団の今後はもうそんなに不安もなかった。チャも歳だった。金がどんだけあってもチャが銀座で遊び回る事もできない。チャの運用は益々慎重になり、運用自体も運用枠が増えていくのに、確実に儲かるとチャが判断した時だけに取引するように、チャタロウとリトルチャには言っていた。ただ実行部隊のリチルチャやチャタロウの面子は重視したので、リスク取りが少ないと判断した時は、チャが独自にリスク設定をしていた。チャはそんなに大きな運用はもう必要ないとリトルチャに言った。リトルチャも取引でも師匠格だったチャには、弱かった。ナンダカンダとの話し合いの上、運用枠は、いくら儲けても最大一千億相当の枠拡大に留め、本来増える筈の残りのリトルチャチームの運用枠の拡大分は、スイス組の株・先物グループに運用を委託し、その運用委託で得た利益の三分の一だけを自分たちのグループの運用利益に名目的に加算する事で、リトルチャも納得した。

正人は、リトルチャの言っている意味がよく判らなかった。チャタロウのチームに運用委託しても、その利益は結局全体の準備金に入る。名目的に運用枠がリトルチャのチームに加算されるだけの事に、なぜ、リトルチャがそんなに拘るのか不明だった。リトルチャには深い意味があった。運用子会社での資産隠しを正人がどれだけ把握しているかは不明だが、リトルチャは、正人の事を所詮経理屋だと思っていた。運用枠拡大に回るべき金が、全体の準備金に入れば、運用子会社への詮索もそんなにしないだろうと思っていた。実際に目の前に金を積んで、全体像をぼやかす作戦だった。どんなに運用子会社を経理操作しても、ある程度の金はやっぱり、計上する事になり、本体に配当として渡していた。その金をコントロールして、正人の注意をそらす作戦だった。目の前に木をあれば、森を見ないようになるだろうと思っていた。リトルチャは、既に運用子会社には、多大な隠し資金を持っていた。沢山の運用子会社の下に子会社があり、運用委託の形で金を分散し、訳の判らない投資ファンドや為替専門会社まで、密かに買収していた。もう運用資金には不自由はしなかった。自分たちのチームに割り当てられる運用枠を、チャタロウのチームに運用委託する。儲けが少ないと言って、チャタロウのチームの運用も、自分たちの運用に利用しようとも思っていた。それに正人にも、金を渡すので、経理屋の正人は、その額をみて納得するだろう。運用子会社での資金隠しや資金分散も正人にバレナイようにもっと精妙にしようと、リトルチャは思っていた。

しかし、株・先物グループのリーダー猫だったチャタロウは、途端に大きな運用委託金を預かる事になり、驚異的な儲けをしないとリトルチャは稼ぎが少ないと文句を言う事が判っていた。チャタロウは、自分たちだけの方針で運用したかった。チャタロウ自身、スイスカナコインの運用枠は増えていたし、スイスカナキャットからの運用委託されている金も使えた。リトルチャに横からガタガタ言われる事はいやだった。単に売買差益だけを目的とするのではなく、長期的な視点での株式保有をスイス組でも取り入れようとして、研究担当や国内組担当とも話し合い、リトルキャット運用会社としてのポートフォリオを再構築する事を提案した。ナンダカンダと猫たちは議論していた。取引なんぞは知らないチビ助であったが、たまたま香奈が例の非公式会議に出席していた事もあり、家でのんびりしていた。これは、非公式会議も出席する人がやたらと増え、ジブトラスト系列では香奈の猫好きは知らない者はいないので、口には出さないものの、非公式会議でチビ助が香奈の横に座るのを見て、嫌な顔をする人も増えてきた。チビ助は人の心も読めるので、波乱を起こさないようにした。どうせ、香奈は、気に入った問題でもなければ、グチャグチャした会議なんぞは、元々性に合わず、冒頭の会議と総括の会議程度しか出ない。直ぐに家に帰り、のんびりするので、チビ助は最初から家でのんびりするようになっていた。チビ助は、ジブトラストの内部事情にも詳しく、ジブトラストでの議論をみんなに話した。そこで猫たちは議論した。ジブトラストと同様に、現金と長期保有株そして金を含む不動産に三分割を手本としようと云う事になった。元々キャッシュポジョンが、50%取っているが、表向きのお金は、準備金として、正人の管理下に入っていた。運用以外に、猫たちの自由に使えるお金も必要と云う結論に達し、リトルチャのグループから運用委託される筈の金を三等分して、予備費、長期保有の株、そして貴金属と不動産に分割する事にした。予備費としての半分は、為替取引きと云うよりは、最も経済的な観点から保有する通貨の選択を、リトルチャグループの為替チームの猫たちに任せ、半分は日本円として保管する事にした。三分の一は、株式と株先物グループが運用するが、その半分程度は株式として長期的に株式を保有するための原資として、海外組が長期保有する株式を研究担当や国内組とも協議して、保有する事にした。残りの三分の一は、貴金属や不動産に投資しようとジブトラストのやり方を猫真似する事にした。株式・株先物グループとしては、六分の一程度だけを、従来の自分たちの運用枠拡大に使う事にした。株・先物グループのリーダー猫のチャタロウは温厚な性格だったが、あれこれと言われる事は嫌っていた。チャタロウは、リトルチャのような神を恐れぬ儲け方はしないものの、普通の意味では取引の天才猫で、自由に自分たちのポートフォリオに基づいて、運用をしたかった。単なる売買差益だけに拘っていては、神をも恐れないような儲け方をするリトルチャと競争する事は無理だと気付いて、成長を期待できる会社を、長期的に保有する企業に投資する事に考え方を変えてきた。このようにすれば儲けが少ないとリトルチャがゴネルのを防ぐ事が出来ると考えたのだった。それに六分の一は、長期目的での株式保有をすれば、自分たちの取引にも幅が出来ると考えていた。

猫たちは、人間のように貴金属特に金なんぞに執着もなかったが、商品相場担当の猫たちは相談した。商品相場担当の猫たちは、貴金属会社そのものを買う事にしようと言った。金や銀そしてプラチナなんぞを一々保有するのは面倒くさいし、保管場所も必要になるといった。ジブトラストでも、本体として二つの貴金属会社、神帥が二つ、神元が一つ、そしてスイスカナコインは貴金属相場を行う会社を持ち、自分たちも金を保有し、更にジブスイス貴金属に金を預けているとチビ助は説明していた。猫たちは、人間と違い、不動産なんぞに執着もなかったが、少しはリトルキャット運用会社でも保有しようと云う結論になった。猫たちは多くの不動産を所有している貴金属会社を買収したら、一挙に二つを達成できると安易に考えた、猫たちだけでは、株式を買うだけなので、正人と相談する事にした。正人は、猫たちから、協議の結果を聞いた。本来リトルチャの運用枠拡大を止めようといったのは正人でもあり、猫たちからの依頼に応じ、そんな会社を探し、それまでそのお金を別途預かる事にした。

毛利貴金属は大きくなったものの、やはり、毛利貴金属以外にも、古くからの貴金属会社もあった。その会社は、やたらと有効利用していない僻地の不動産も沢山持っていた。元々不動産を持つ事が好きな創業者一族だった。その会社は今更、毛利貴金属グループの傘下に入りたくはなかった。しかし海外でも成長する毛利貴金属に対抗しようとして、多額の資金を借りて、海外に子会社を買収したのはいいが、多額の資金を借りたので、その返済の為、又お金を借りると云う負のスパイラルに入り、もう一つの大きな銀行に融資を頼んでいた。借金返済のための貸し出しなんぞには、銀行は慎重な姿勢を示し、ジブの新宿の監視と指導を条件として、香奈オーバーシーズに協調融資を頼んでいた。正人は、流石に真理への配慮から、香奈オーバーシーズからの融資には応じにくいと考え、正人はその協調融資の事は、香奈にも言わなかった。株式会社リトルキャットの設立の時に、神二郎と正人はそれなりに話が出来ていたので、新宿からの監視や指導を頼むのは問題なかったが、毛利貴金属との関係が問題だった。正人は真理にそれとなく、この会社について、話をした。真理は毛利貴金属とは今までの経緯もあったが、本来良い会社なのよと言っていた。ただ国際化の波に乗ろうとして、無理に海外の貴金属会社を買収したのがたたり、有利子負債が多すぎるのよ。あんなに無理をするから、負債を返済する必要が出来、経営が苦しくなるのよ、貴金属はじっくり寝かせないと儲かる商売ではないのよ。出資して、有利子負債分を出資に切り替えれば、楽に運営できると思うわよ。毛利貴金属としてはライバルがある事はそんなに気にしないわよ、あの会社は、細かい細工も得意だし、競争は成長の源なのよ。足の引っ張り合いは困るけど、ライバルが頑張れば、毛利貴金属にも逆に刺激になって良い事だよと云った。それでも、正人は尚も躊躇していたが、リトルチャの儲けは続き、正人が貴金属や不動産を購入するための原資として預かる資金は七千億に達していた。あの貴金属会社は借金返済に窮して、やいのやいのと泣きついてきた。貴金属相場は上昇に次ぐ、上昇をしていたが、やはり調整のためか、一時的に、急激に落ち込み、調子に乗って貴金属の保有を増やしていたこの貴金属会社の含み資産は急激に落ち込み、含み資産の低下の為、資金繰りが極度に悪化していた。

リトルキャット運用会社、貴金属会社を買収する。

正人は、香奈オーバーシーズからの融資ではなく、リトルキャット運用会社として出資する事を、この貴金属会社に打診した。まさか猫を取締役に派遣する訳にも行かず、ジブシティの猫カフェの世話をして、猫チャンネルが出来ていた不動マンションの住人だった猫野鋤也を取締役として受け入れる事を条件にして、5千億の出資を提示した。これは、株式の過半数なんぞを大幅に超え、買収にも近い条件だったが、経営陣もそのままで、派遣される新しい取締役が一人だったので、基本的に受け入れる事にした。ただ、この連中は、女々しく、今の状態ですんなり出資を受け入れば、全ての資産の売買決定権はなくなると考え、貴金属会社の資産である、ほとんどの不動産や貴金属は、みんなリトルキャット運用会社が時価で購入する事を条件とした。僻地の山間部の山々から、本社ビルや商業ビルなどのあらゆる不動産や保有している貴金属まで売って、必要な不動産は、安い家賃で貴金属会社が借りる事にして欲しいと我侭をいった。更に、販売に必要な貴金属も貴金属会社が必要に応じて、その時の相場の5%引きで利用できるようにして、大幅な債務を持っていたと云うよりは、債務を移動させた海外の子会社である貴金属会社を、そのままリトルキャット運用会社が買収するスキームまで作りだした。そうすれば、創業一族も資産を売った金を臨時配当に回し、合併後の出資比率を高くして、自分たちも金が入ると考えた、そんな事を言われれば、正人もタヌキ心を刺激され、丁々発止の化かし合いの一幕があった。結局、この貴金属の会社が保有する貴金属は、常に前日の終値の5%引きで、加工や販売な必要な量を貴金属会社に販売した形とするが、リトルキャット運用会社は、すべての不動産とその貴金属会社や海外の子会社が保有する貴金属を、現在の市価や相場の10%引きで、根こそぎ買った。海外の貴金属会社は、この貴金属会社に協力する事を前提として、貴金属会社の保有する海外子会社の全株式とかなりの債務を含めてリトルキャット運用会社が、割り引いた価格で買収する事になった。従来の創業者一族は、この売却で得たお金を、自分たちへの臨時配当とした。こうして受け取った臨時配当の中から、一部を自分たちの増資にあてて、資産のないガランドウのような貴金属会社にして、リトルキャット運用会社の出資を受けた。従来の創業者一族も合計40%程度の株式を持ち、経営陣の安泰も図った。金を貰い、経営はそのままと自分勝手な言い分を通したと積もりであった。名より実を取った積もりだった。一方、正人は、買収に予定していた金額で、主要な資産はそっくり100%リトルキャット運用会社の所有にしてしまったし、派遣する取締役も猫野一人ではなく、もう一つの大きな銀行を辞めた若い年寄りを経理担当にして、ジブトラストの新宿Bチームのメンバーまで、非常勤の取締役にした。正人は、貴金属会社なんぞは特に欲しい訳でもなかった。子猫たちは、貴金属を保管する保管庫と不動産を持っておきたいと言っていたので、それに応えた積もりだったし、安いとは云え、税金分以上の家賃は入ってきた、その上ジブの不動産チームに管理もしてもらえた。ただ大赤字になったり、貴金属を販売すると言って、市価より安く提供する貴金属を横流するなどの無茶をしないかどうかを見張るために、もう一つの大きな銀行を辞めた人に監視するように言った。猫野はいかにも頼りないし、新宿から派遣の役員は、貴金属会社の営業実態に興味があるようだった。貴金属会社は名前も変えず、そのまま運営した。有利子負債は、リトルキャット運用会社が、その負債込みで、資産を購入していたので、新しい出資で十分な運転資金を持ち、経営はずっと楽になった。それに売ったとは云え、本社ビルを始め、営業に必要な不動産も従来通り使え、貴金属も従来通り使用できた。単に在庫がなくなった貴金属会社となった。貴金属の保有リスクはなくなったが、保有している事によるウマミも当然なくなった。ただ販売するとその販売量だけは、貴金属が市価より安く買え、必ず儲かるシステムになった。ただ一時急激に下がっていた貴金属の価格は、その後は一転して、上がり続けていったのは、誤算だった。貴金属相場の変動リスクは、リトルキャット運用会社が負担するが、貴金属価格が上がれば、利ザヤを稼ぐ事が出来た。

子猫たちは、貴金属や不動産購入に予定していた七千億の内、残った二千億を原資として、貴金属相場と貴金属の価格や保有量を考慮して、貴金属先物をしたり、安ければ貴金属の現物の購入をしていく貴金属勘定を作った。貴金属勘定は、名目的には、リトルキャット貴金属となって、商品相場チームの支配下にもなり、名義上の役員は、運用子会社の役員が兼務するリトルチャの運用子会社の一つのようになった。単に商品相場だけの売買利益ではなかった。現実に保管する貴金属のリスクと長期見通しそして貴金属会社に販売する差益や差損を管理する必要があった。商品相場担当の猫たちは、研究担当の猫たちにも相談して、相場だけではない、勉強もしていった。リトルキャット貴金属がほとんど100%近い出資をした事になった海外の子会社の経営には、毛利貴金属の力もこっそり借りた。表面的には、正人が、真理や小百合たちに頼んだ。小百合は、ココハナコと友達になり、ココハナコは、真理や小百合たちの貴金属グループとも親しくなり、その縁で貴金属勘定の子猫たちは、真理や小百合との毛利貴金属の連中とも親しくなっていた。貴金属勘定の猫たちは、ココの子猫の子猫たちが商品相場を担当すると共に、貴金属勘定を担当していた。貴金属勘定の子猫たちは、香奈の家に遊びに来た真理と小百合たちに、猫語翻訳機を使い、直接頼んだ。毛利貴金属は、あっさりと引き受けた。海外の毛利貴金属の子会社は、やっぱり海外の会社だった。利用できるものは、利用したいと考えていた。その上、この買収された海外の貴金属子会社では、毛利貴金属の子会社との販売提携もこっそりしていた。海外の貴金属子会社は、毛利貴金属と合併をしたように受け取り、経営は安定すると考え、歓迎ムードであった。こうして海外の貴金属子会社は、名前も変えずに、そのまま運営して、猫たちの貴金属勘定つまり、リトルキャット貴金属がほとんど保有する会社になって、実質的には、毛利貴金属がこれらの海外子会社の経営も総括的に運営して、利益がでれば、一定の利益も貰う運営委託のような形を取る事にした。

貴金属会社に派遣された夢野は、珍しく不動マンションでは破産はしていなかった。債務は、しれていたし、清香の法律事務所が債務を精査して、不動ファイナンシャルが金を貸し、和議で収めた一人だった。不動マンションでは破産者は山のようにいたが、猫野はそうでなかったので、取締役になれた。猫野はボーとしていた人間だったが、器用な貴金属の細工職人だった。猫たちには人気があり、特にナターシャが気に入った人間だったので、煩いリトルチャやリトルホワイトを始め、その他の猫たちも納得した。猫の気持ちが判る人間として評価されていた。

こうしてリトルキャット運用会社は、やたらと不動産まで持ったので、管理なんぞは、ジブトラストの不動産チームに管理を任せた。貴金属は、その貴金属会社や海外子会社が今まで通り、当然のように保管する事になった。

株式会社リトルキャット

リトルキャットは、衣料品やバッグなどを辺郎のアジア快適を中心に製造委託をしていた。貴金属勘定の猫たちは、商品相場も担当する猫たちでもあったので、リトルチャの指示に従って、銀を安値で仕込み、商品相場の暴騰を仕掛け、買いあがってから、一挙に売りを強め、往復ピンタで大儲けをした。しかし、貴金属勘定の猫たちは、安値では現物でも銀をドーンと買っていた。十分儲けたものの、現物は残った。安値で買ったので、依然として現物でもまだまだ利益は出ていたが、このまま現物を売るのは芸もないし、銀そのものは、やがて高値を戻ると思っていた。今は銀が安いとの評判もあり、銀を使った細工物が売れるではないかと思い、猫野に頼んだ。猫野も細工職人でもあり、アクセサリーなどもしてみようと思い、暇に任せて、銀や金などを少し使って、リトルキャットデザインのネックレスなんぞを考えた。基本となるチェーンは、もはや標準品となった毛利貴金属のものを使ったが、バーゼルタイプのヘッド取替えタイプにしたり、ヘッドだけにして、リトルキャットのデザインを金や銀を巧みに使い、お飾りだけの役員で暇な猫野が手作りで作り、リトルキャットの直営店だけで販売した。毛利貴金属は資産価値を大切にするので、金に銀を混ぜるなどは考えてもいなかった。金は、少しは銀や銅を混ぜるとアクセサリーとしてはより綺麗になった。今回は銀を多く使ってくれと云う猫たちの頼みだったので、半分程度、銀を使った。あの貴金属会社は、従来の経営陣が、従来通りの方針で、従来の店で同じように売っていたので、誰も資本が変わっていたなどは判らなかった。創業者一族も流石に得意げに言う事もしなかった。猫野の細工品は、初めからそこそこ売れたので、猫野は、細かい細工をするグループを少人数の気難しく、自分と合いそうな腕の立つ職人たちを集め、自分の直轄チームを作り、自分たちの気に入った細工物だけをしていた。資本の代表としての取締役ではあるが、猫野はボーとした職人だったし、猫野が集めた少人数のグループがする事なので、誰も気にとめなかった。むしろ銀行あがりの経理担当は細かくチェックしていたので、みんなその人がリトルキャットからの見張り役と思い、マークしていた。リトルキャットは名前こそ猫の名前があるものの、香奈の意を受けた正人の別働隊であると云う意識が強かった。新宿からの兼任の人は販売や売上動向なんぞは詳しく調べていたが、そんなに経営そのものには、口は出さなかった。 不動総合企画や新宿は貴金属関係の知識はなく、正人からの依頼を受けて役員を派遣したものの、業界の知識や営業実態の把握に努めるだけであった。

株式会社リトルキャットは、次第に不動総合が運営に全面的に入り、精密機械、小さい細工物とか工事や建設用の機械、農業機械なんぞのオーダーメイドの機械を機械と協力したり、食品関係なんぞも始めて、訳の分からん会社になっていた。不動総合は、どんな会社でも再生の手伝いをしていたので、取り扱い品目は多かった。リトルキャットの名前が有名になり、一般消費者向けには、リトルキャット系列の方が商売しやすいと云う理由だけで、リトルキャットを総販売先とした会社もあった。株式会社リトルキャットには、リトルキャット運用会社からの年寄りそして経理関係は、もう一つの大きな銀行の正人ルートで人を入れ、アーダコーダとは云うが、経営の主導は、やっばり不動が握り、第二不動総合企画と云う側面を見せるようになっていった。

株式会社リトルキャットは、日本を含め、世界に進出して、直営店を持ち出していた。それに衣料品だけでなく、カバンや靴などのファション品まで扱うようになっていた。聖子は、強引な性格を反映して、その中の普及品と云うか中程度の価格以下の製品を、すべて日本では安いよを、日本を除く世界では、快適に販売を独占させて、販売した。従って、リトルキャットはグランドリトルキャットと呼ばれた高級品だけを、自分の直営店だけで売るしかなかった。実は、この直営店も、運営は快適が主体となって担当していた事が多かった。みんなは知らなかった。グランドリトルキャットの製品は、アジア快適の職人みたいな人が、一品物とか手作業の刺繍が入ったり、特別な素材を使ったりする高級品にした。猫野は、アクセサリーだけでなく、リトルキャットのロゴ入りの細かい貴金属の細工物を衣料品、カバンや靴などにも組み込めるようにした。これは手作りの細工物だった。グランドリトルキャットの価値を保全し、価値を高める事にも繋がった。元々価値の高い、金や銀を組みあせて、細かい工夫をしているロゴは複製が難しかった。このグランドリトルキャット製品は、ドンドン人気が出た。レアな一品は、それこそ価値は高かった。それに実際に製造していた辺郎のアジア快適の技術は、高かった。手作業も多く、器用な職人もいた。私が作りましたとの手紙も入る手作りの一品だった。丈夫で、カッコよく、綺麗な金や銀のロゴもさりげなく入っていた。「一つは持ちたいグランドリトルキャット」とか云われ、単にブランドだけでなく、高品質な製品になった。

リトルチャの変貌

リトルチャは、スイスの投機筋として、有名になり、スイスの荒事師として、相場では有名になっていた。大きく相場が動く時には、犯人扱いまでされるようになっていた。やたらと儲けていたが、突然と投機的な取引をしなくなった。大損をこいたとか病気説まで流れ、挙句には死亡説まで囁かれた。

リトルチャは、取引も配下に任せ、軽く取引内容を見るだけになり、昼間に、お不動さんを眺めたり、保養施設の子供たちを覗いたり、ジブシティーまで行って、財団ビルのお不動さんの石仏を眺め、リトルキャット運用会社も覗き、猫ビッフェに行って、一口食べて、昼寝したりするようになった。リトルチャのグループは、リトルチャ自身が、取引に積極的ではないので、実際に取引している猫たちは同じ猫なのに、今までのような神がかりの成績ではなく、普通の驚異的な成績になっていた。元々スイスコインではチャのリスク管理も徹底していたので、そんなに変わらなかったが、リトルキャット運用会社では、その収益は、神がかり的な成績ではなく、単に驚異的な成績になっていった。

スイスカナコインでは、香奈特別基金がスイスカナキャットに全て移行された。スイスカナコインでの猫たちの儲けは大きかった。スイスカナコインでの香奈特別基金は、スイスカナコインの準備金になった。当然ながら、スイスカナキャットは、かすりをそんなに取られないので、もっと大きくなっていた。スイスカナコインとしての運用枠は、猫たちが儲けていたので、長期保存株は別との拡大解釈がきっちりルールになり、運用利益の25%ずつ増えていたが、スイスカナキャットは、掠りを取られる金は、なんでそんなに高いのと言う、15%だったが、もっと儲けた。運用枠は、スイスカナコインの運用枠の5倍以上にも膨れ上がっていた。スイスカナコインの連中は、香奈に嘆願書を出した。運用は従来通り、スイスカナコインとして行って欲しい、運用手数料は5%とせずに、10%とする代わりに、スイスカナキャットの運用は、スイスカナコインでの運用枠と同額運用の形を取り、スイスカナキャットでの運用利益の15%だけを手数料としたい、スイスカナキャットの余った運用枠の半分を、スイス総合企画に預けて、スイス総合企画と一緒に出資して欲しい、配当が出れば、出資比率で、スイスカナキャットにも配当がでるようになる。そして残りの半分をスイスカナコインの医学研究所に出資して欲しいと言った。リトルチャやチャタロウたちがドンドンと稼いで、スイスカナキャットの運用枠は、スイスカナコインの猫たちの運用枠の5倍以上に膨れ上がっていた。運用していない、スイスカナキャットの現金も山のようにたまっていた。チャは、スイスカナキャットが持っている現金資産が貯まってくると、運用そのものも押さえ気味になっていた。そんな巨額な運用をする必要もなかった。運用枠は十分余っていた。スイスカナコインとしての運用は、口座残高比例で運用するので、スイスカナコインの取り分は減っていた。同額運用なら、スイスカナコインとしての収入は多くなった。猫たちの運用総額のは減少傾向だった。それを見越してお願いでもあった。スイスカナコインの準備金を使えばいいけど、やっぱりこの準備金は、何かあった時のために、そっくり残したい。スイスカナキャットの運用が減れば、運用に使っていた金があまる。それを使おうと思った。まったく勝手な言い分と言えた。スイス総合企画は、盛んに活動していた。香奈の懸念通り、企業が再生していくのには、やはり時間が掛かった。それなりに順調に伸びいているようでも、再生のために投資して、直ぐに回収できる訳でもなかった。スイスカナコインは手広く事業を進め、それぞれの事業拡大にも金が要り、各部門がスイス総合企画に回す金は少なく、スイス総合企画の再生用の資金がやはり不足気味だった。医学研究所も薬の開発には金が要った。安部製薬フランスとの共同研究と言いながら、薬屋の資金力とは、スイスカナコインの準備した金とは決定的な差があった。安部製薬フランスは、ジブトラストに大幅な増資まで頼んでいた。スイスカナコインの準備した金の残りは少なくなってきた。ここまでは、共同研究と云うより、安部製薬フランスの補助研究になってしまう。スイスカナコインの医学研究所の資金を補充したいと考えていた。香奈は、仕方ないなと思ったが、一応、チャに聞いた。チャもスイスカナキャットで現金が貯まっていたし、いつまでも運用だけで儲かる事もないと思い、将来性のある事業に投資するのは、いい事だと思い、納得した。香奈は、色々な手続きはスイスカナコインがするように言って、認める事にした。こうしてスイスカナキャットの保有株式は、スイス総合企画が出資する時に、資金が不足すると、補完的に出資していくので、増えていった。スイス総合企画の活動は盛んになった。スイスカナコインの医学研究所にも、スイスカナキャットが、大幅な出資をした。資金の不安は解消して、研究に取り組む事が出来て、研究も活発になった。企業再生もそんなに直ぐに進む訳でもなく、配当がバンバン直ぐに入る訳でもなかった。医学研究所も、まだ実際には何も儲けてはいなかった。チャは、それでも、猫軍団の将来にとって、役に立つだろうと思っていた。

リトルチャの奥さん猫は、テレサと云う正真正銘の雑種の猫だったが、ロボット工学に興味を持ち、大学院大学なんぞにも通い、研究所にも通う変な猫だった。そのテレサがもう高齢なのに、妊娠した。孫のチビ助よりも若い子供いや子猫が産まれる予定だった。リトルチャはウロウロして落ち着かなくなっていたのだった。

「この頃、猫カフェや保養施設にも、目つきの鋭い茶色の猫が時々来ているようなのよ。直ぐに出て行くけど、辺りの空気が変わり、緊張感が走ると言っていたわ。あんな猫も、香奈さんの家の猫なの。」
香奈「それが、リトルチャなのよ。あいつは凄いんだよ。神之助君の若い時と同じ雰囲気があるのよ。リトルホワイトの親父で、チビ助のお爺さんなのよ。最近落ち着かないのよ。奥さんが妊娠していてヤキモキしているみたいなの。リトルホワイトたちが産まれた時は平気だったくせに、今回はウロウロしているのよ。」
「猫としては、もう歳だから、気になるのよ。猫も人間と一緒だね。太朗君や二郎君も正子ちゃんや聖子ちゃんの妊娠している時は、落ち着かず、ウロウロしていたと俊子さんも言っていたわ。」

テレサは、二人の子供いや二匹の子猫を産んだ。茶色の猫と白い猫だった。リトルチャは目を細め、二匹の子猫を見ていた。

リトルチャの取引スタイルは一変した。リトルキャット運用会社でもスイスカナコイン並の複雑なリスク管理を行うようになった。リスキーな勝負は、余程の事がないとしなくなった。配下の猫たちも、人いや猫が変わったと噂した。ただ神之助と同様に怒らせると何をするか判らない怖さは依然として残っていた。実際、気が向けば、大勝負する事もあった。

明かされた真実

夢野たちの発表が、学会報告前に新聞一面を飾った。「無限のエネルギーを持つレアメタル」とも言われた。常勝ジブトラストの謎の一つが明かされると書いていた経済新聞まであった。フランス安部製薬とスイスカナコインの医学研究所も共同で記者会見を開き、人類の歴史を変える薬の研究に既に着手していると発表した。歳を取らず、元気になり、頭も冴える薬が出来る可能性があると言った。マウスが新聞を読んでいる写真まで出た。

仕方なしに、製薬も自分たちの研究成果を報告した。まだ理論的には全て解明されていないといいながら、レアメタルを水に入れ、その水を飲ませたマウスの状態まで見せた。神三郎のエンジェルホープジャパン病院での驚異の治療例まで付け加え、ジブシティーでの飲料水の濃度まで発表し、さりげなくジブシティーの製薬の工場で作っている薬まで紹介した。世界中大騒ぎになった。あのレアメタルの価格は天井知らずになった。奇跡の病院と云われたエンジェルホープジャパン病院には人が押し寄せたし、ジブシティーのオフィスも空室がなくなり、マンションの空室は直ぐになくなった。ジブシティーは、工場を中心とした、未来都市的な静かな町だったが、いきなり一変した。

「大変な騒ぎになったわね。ジブシティーは人で溢れているよ。レストランやホテルの水を、持参した水筒に入れて持ってかえる人までいるらしいよ。ニコニコホテルでは、一人ではポリタンク一つにして欲しいと言ったみたいだよ。みんなポリタンクもって泊まりにくるらしい。お不動さんの奇跡の水は、長い行列が出来ているよ。テレビでは、どっかのおっさんは、あのレアメタルは、日本の香奈オフィスが、世界のシェアのトップとか言っていたわよ。しかし探せば、日本の他の山間部でも取れる筈だとも言っていたよ。「いつまでも元気で」もあっと云う間に売り切れているらしいね。」
香奈「私はよく知らないけど、スイスカナコインの牧場付近でも取れるそうだよ。金の廃坑だった所にも金と同様にあると言っていたわよ。他にも幾つか見つけたらしいよ。フランス安部製薬とスイスカナコインの医学研究所でも、EUから直々に連絡があって早く製品化しろ、と言われ、早急に薬を作るらしい。まあ長い間生きればいいと言うものじゃないけどね。」
「それはそうだわね。でも私はこの頃益々元気に、若くなっているような気がするのよ。50才以上も若くなった気がしているのよ。」
香奈「私もそうなのよ。徹さんも益々元気なのよ。徹行が、今ごろ言うのよ。この辺りの水は、特に濃度が高いらしいのよ。空気の中にも相当含まれて、山の中腹は特に高いかもしれないと言うのよ。」
「あの保養施設も予約は1年以上詰まっているのよ。あそこに滞在するとみんな元気になるらしいのよ。そのせいもあったのね。」

いつの間にか騒ぎは収まったものの、「いつまでも元気で」は予約制の順番待ちになったし、「ジャパンドリーム」や「アジアンミラクル」、「フレンチミラクル」も見直されて、飛ぶように売れていった。ただこれらの薬品では、リング状の水の濃度は低いとも言われていていた。あのレアメタルを組み込んだ、浄水セットを香奈オフィスが不動グループの会社と組んで、医薬品承認を求めた所、信じられない速度で許可がおり、飛ぶように売れた。ヨーロッパでは、薬の開発には時間もいるからと言って、スイスカナコインとフランス安部製薬とが組んで、レアメタルを入れた水差しを奇跡の水差しとか言って、売り出していった。

パワースターについても話題になったが、副作用である性衝動が高くなる事については、小さく紹介され、世界中で出生率が急増した。その後急速に研究が進み、あのレアメタルとの接触によって発生するリング状の水には、パワースターと別性質の性衝動を高める効果がある事は判った。しかし、そのリング状の水は、安定化に優れ、脳細胞の活性化の作用についても独自の働きをしている事もわかりつつあった。実はそれは香奈の家の猫によって証明された。発表者には猫の名前はなく、表向きは、遺伝子工学研究所での研究成果として発表された。この水は、脳細胞全体の活性化と云うよりは、今まで利用されていない脳の部位も活性化して脳細胞を再構築していく事が判った。頭が冴えるだけでなく、脳細胞が全体としてレベルアップしていく。そして分裂した新しい脳細胞も複製される毎に元気になっていく。遺伝子レベルでの複製でのエラーも極度に低下し、本来、人が持っていた自己修復機能が活性していく事も判った。今までは、脳細胞も老化していき、人では130歳を越えた時点で、脳細胞も限界ではないかとの意見は、修正されていった。ただ若年、特に乳児の時から、この水を飲んだ時は、まだまだわからない未知の領域と報告されていた。

製薬は、このレアメタルを使った薬の研究や開発に忙しく、香奈の家の近くの水の定期検査は簡単な水質検査だけをしていた。それが、分岐状の水も高濃度であったが、リング状の水の濃度は驚異的なレベルに達していた事はまだ誰も知らなかった。元来、パワースターから出来るリング状の水は自然分解のような形で減少していくものとされていたが、レアメタルとの接触によるリング状の水は、自然分解のような形で減少せず、逆に段々とリング状の水が、ある程度の期間は、少しずつ自己増殖のように増加していく事までは、まだ判っていなかった。湧き出る水量は増加しており、敷地内の水にも一部混入していった。その上、香奈の家の近くの牧場では、乳牛は好物になったパワースターやエンジェルスターの葉も食べ、牛乳中の分岐状の水やリング状の水の濃度は、冗談のように高くなっていった。そして敷地内の家にこの牛乳は配られ、敷地内のレストランでは料理にも使われていた。

テレサも猫としてはもういい歳なので、母乳はそんなに出ず、子猫たちは、主に牛乳を飲んで育った。テレサもついでに牛乳を飲んでいた。リトルチャも見かけにも似ず、牛乳が好きだった。香奈の家の猫は、ほとんどの猫が牛乳好きだった。子供が生まれたテレサは、何故か、更に頭が冴え、出産後にロボット工学研究所で、猫のための色々なグッズを作り出していた。完全自動化の猫トイレとか、猫の手ロボとかを作り出した。猫の手ロボは、猫の手は細かい作業をするには、不便であったので、猫のしたい細かい作業をロボットが代行してくれる機械であった。テレサは自分で作業しにくいので、考えた。テレサは、猫の言葉を人間の言葉に変換して話すロボットの試作までしていた。正人や奈津美に自慢して、見せた。正人と奈津美は既に猫チャンネルも出来ていたが、やっぱり食い違う事もあり、必要だとテレサは考えていた。しかし、リトルチャが、これ以上どんどんとクダクダへ理屈をこね出すと、大変と思った正人は、アーダコーダと改良点を得意の詭弁の技を交えて意見を言い、尚試作中と言う事になった。一応、香奈の家の平穏は維持させる事になった。しかし、テレサは指摘された点を含めて、更に改良を加えていった。

次々と見つかるレアメタル

リトルキャット運用会社が保有していた、あの貴金属会社から買った僻地の山間部についても、管理を委託されたジブの不動産管理チームは、有効利用を考えていた。山だったので、香奈オフィスに一応、資源探査を含む、資源が見つかった時の、資源の採掘販売権を一任する契約を結び、資源探索を依頼する事にした。香奈オフィスもあのレアメタルが高値で売れても、供給量をそんなに上げる事はしなかった。しかし、医療用品にもなり、少しずつは供給量を増やしていた。それでも、高値を出しても大量には売らない事もあり、売り惜しみとか言われるようになったので、資源の枯渇を恐れるとか言い訳をしたが、資源探索のポーズも見せないといけなかった。そこで、関係先が保有する山間部を探索する事にして、見つかりそうもなかった、あの貴金属会社が保有していて、今はリトルキャット運用会社が保有している山を大々的に探索した。マスコミまで呼んで、資源探索に努力しているとのポーズを見せた。

予想もしない事だったが、巨大なレアメタルの鉱脈がいきなり見つかった。それも純度が高かった。かなりの埋蔵量だった。資源探索ロボも進歩し、毛利レアメタルの資源分別ラインも更に進歩し、直ぐに供給できる目途もついた。10年程度は他の鉱山を温存したままでも十分に供給できる見通しがついた。あのレアメタル以外にも、夢野には、興味があるレアメタルも存在し、それは、更に資源研究所で研究する事にして、別途保管した。夢野はこの別のレアメタルに特に興味を示し、研究を始める事になった。夢野は、超高齢になっていたが、ジブ総合研究所が出来、奥さんと一緒に、学術ゾーンにあるマンションに住むようになって、益々元気になり、頭は冴えていた。敷地近くの山に、少量存在していた別のレアメタルが、ずっと気になっていた。そのレアメタルは、あの僻地の山間部から見つかったレアメタルにもごく微量だが、存在していた。夢野は、このレアメタルが今話題のレアメタルが内臓しているエネルギーよりも高いエネルギーが、このレアメタルにあると直感した。ただこのレアメタルは水に極微量でも溶解しないように思われた。エネルギーの取り出し方が不明だったので、まだ誰にも言ってなかった。しかし香奈の家周辺の水が持つエネルギーは、今話題になっているレアメタルのエネルギーだけから由来するものとは思えなかった。香奈の家の近くの水の持つエネルギーは、計算値よりも遥かに高かった。

水のエネルギー測定なんかは、従来出来なかった。資源関係の大学院大学で勉強している猫たちもいた。ココの子供たち、いや子猫たちの配偶猫のロシアンブルーのプーチンは、カッコいい二枚目の青年、いや雄猫だった。プーチンはそれなりに可愛がってもらっていたのに、発情期に、女の子、いや雌猫を追い掛け回し、やがてどこにいるのか分からなくなっていた。それでも、プーチンは珍しい猫だったので、食べるのは、色々な家でめぐんで貰えた。夜遊びに出かけたココの子猫を引っ掛けて、ココの子猫にウチでは鯛の活け造りもたまには出るわよと言う言葉に惑わされ、香奈の家に来た。ココがウチの娘を傷物にしたと怒り、そのまま香奈の家にいる事になった。直ぐにココの娘は妊娠して、やがて出れなくなった。香奈の家で、本当に絶品の鯛の活け造りもカニの足の身も時には出た。それにも釣られた。プーチンは、入り婿だったので、マスオさんのように、香奈の家ではそんなに強くなかった。女たらし、いや雌猫たらしのプーチンは、香奈の家の水を飲み、発情期などは飛んでしまい、その反動でやたらと賢くなった。ただ、プーチンは、暑いのが苦手だった。猫は一般的には、暑くても平気だったが、プーチンは暑いのが苦手だった。香奈の家でも、多くの猫たちがクーラーが嫌いだし、山から涼しい風もくると言って、クーラーはあまりいれなかった。暑い夏だった。プーチンはどこか涼しい所を探していた。山の保養施設にも行った。そんなに涼しくない。香奈専用チューブの中の方が涼しい。それで学術センターに行った。偶々夢野も暑いのが苦手で、夢野の教室は、クーラーをガンガン入れて、夏でも寒い位の教室だった。夢野は、頑固な人で、夏でもクールビズなんぞはせず、ヒラヒラしたサマースーツではなく、ちゃんとした紡績製の高級スーツに、長袖の名前入りのカッターに、カフスをして、ネクタイもキチンとする人でもあった。拡大敷地内は、自家発電で発電能力にも余裕もあり、どんどん発電しているし、節電のお願いなどはしていなかった。夢野は天才でもあり、学会でも長老で、平易な講義なんぞはせず、小難しい事を早口で口走るので、不評だった。ただ世界的な権威でもあり、無理して出席する人もいたが、ガラガラと言わないまでもいわないものの、人はまばらだった。そこにプーチンが涼みにきた。夢野は猫好きではなく、むしろ猫は嫌いだった。香奈が猫好きなので、プーチンの事は見ない振りをしていた。プーチンは急速に賢くなっていたが、本質的には、移り気な猫だった。あっちこっちと大学院大学の講義を聴いていた。直ぐに厭きた。プーチンはやたらと賢くなり、手抜きしたり、思ったほど講師の能力が大した事がないと知ると、講義を聴かなくなった。ただ、そのため色々な知識を断片的に知っていた。そうして夢野の講義を聴いた。夢野の教室は一番涼しかった。夢野の話を暇つぶしとして聴いた。夢野の講義は難しかった。夢野は、講義に手加減などはしなかった。学生のレベルなんぞは気にせずに、自分の知りうる限りの最高技術、最高理論を喋った。しかも夢野は、すぐに結論を話すような人だった。前略、中略して、いきなり結論を話す癖があった。その位、自分で勉強しろと云う態度だった。しかし、プーチンは聴いている内に、何故か気に入った。夢野の難しい話も理解できた。夢野は忙しいのに、無理して講義しているのに、訳の判らん顔をしている学生が多いのに、プーチンは納得したような顔をしていた。夢野にも何故か猫チャンネルが出来、プーチンとも会話できるようになり、プーチンは夏でも寒い位の夢野の研究室にも出入りするようになった。夢野は、やがて単なる猫ではなく、共同研究者としてプーチンを考えるようになった。夢野は天才で、常識なんかに振り回されず、自分の追及する真理を求める科学者でもあった。プーチンと一緒に、研究していた。プーチンは自由な発想をした。プーチンの発想により、物質が潜在的に持つエネルギー測定装置が出来ていた。

敷地内では多くの人が、香奈の家の周辺に移り住み、水使用量が減ったので、夢野は学術ゾーンにも、敷地内の水が少し流れ込むように進言もしていた。そうすると学術ゾーンの水のエネルギーもグンと高くなっていた。ジブシティーのお不動さんの池に流れ出る水は、リング状の水の濃度は、香奈の家の周辺の水の濃度よりは低いものの、水のエネルギーとしては、それを上回る高いエネルギーを示していた。今話題のレアメタルの持つエネルギーが、水にエネルギーを転移する事は確かではあるが、このレアメタルからのエネルギー寄与の推定も出来ず、その上エネルギー移転のメカニズムも不明だった。夢野とプーチンは二人、いや一人と一匹はこの問題に取り組んでいた。プーチンは、単体ではなく、今話題のレアメタルとの相互作用によるエネルギー転移ではないかと言っていたが、夢野にはまだ理論的に説明できないと慎重だった。奈津美には、とりあえず、今話題のレアメタルの精製時に分別されるこのレアメタルは貴重なレアメタルである可能性が非常に強いので、大事に保管するように言っていた。

とりあえず、奈津美の言い訳の積もりの探索で、値を下げずに、高値でのオーダーには対応する事ができた。掘れば掘る程、金になり、香奈オフィスは、やたらと儲かった。奈津美は、結構、各方面への分配率を高くしてしまっていた。毛利レアメタルの経費とか、資源探索契約での所有者への利益の配分とか、夢野の資源研究所への技術指導料の比率も高くしてしまっていた。それでも、この話題のレアメタルだけで、香奈オフィスは、ナンダカンダと分配しても、純利益で年間で1兆を超える儲けが出た。海外の香奈オフィスはそれぞれ子会社化していたのに、本体香奈オフィスだけで、1兆数千億もの利益になった、海外の子会社も儲けていた、子会社からの配当率は僅かだが、株は社員にも、持ってもらっていたので、配当は5%程度はやはり出さざるを得なかった、税金も恐ろしく高かった。配当は利益の5%から変えなかったが、世界の資源メジャーとか言われていても、すべての香奈オフィスを集めても、資本金は大した金額でもなかった。瑠璃がボッタクリのように鉱山や資源利権を買っていた時には、香奈ファイナンシャルに増資してもらっていたが、奈津美は買い取るよりも資源探索契約を結んで、利権買取なんぞはそんなにしなかったので、資本金は、二千億程度だった。香奈オフィスは非上場だったので、要するに株の額面価格の30%近い配当を出した。スイスカナキャットは、2パーセントの株式を保有していた。香奈名義の株式は、一部と言っても結構多い株式が依然として香奈名義だったが、既に多くは香奈ファイナンシャル国内に移行していた。何といっても香奈は創業者だったので、香奈オフィスでは、香奈国内を除いては、筆頭株主ではあった。瑠璃は途中から香奈オフィスの経営を引き継ぎ、株式の保有も香奈についで多かった。香奈は、瑠璃や徹彦と言った子供たちに早くから、香奈オフィスの株式を持たせるようにしていた。途中での増資は、香奈ファイナンシャル国内が全て負担していた。香奈は、、奈津美や正人と云った孫世代でも、香奈オフィスの株式を多少ではあるが、まだ個人名義で保有させるようにしていた。流石に香奈のひ孫になると、国内ファイナンシャル香奈の株式を保有するように変更していた。香奈オフィスの株式と同様に、香奈はスイスカナキャットの株式も、譲渡できず、一代限りとし、額面額だけの返還とする、冶部独特の規約に既に変更していた。

更に巨大化するリトルキャット運用会社

レアメタルの採掘により、巨額の利益は、山間部の所有者であるリトルキャット運用会社にも入る事になった。管理料とか云って、ジブトラストの不動産管理チームにも利益は入った。しかし、リトルキャット運用会社の猫資金にはそれだけで、貴金属会社を買収時に使用した資金に匹敵する巨額のお金が入ってしまった。しかも今後、暫くはこの収入が持続しそうなので、正人は、子猫たちと協議した。

子猫たちの運用はリトルチャのグループは、5兆円相当を超える巨大な資金を持っていたが、スイス組の株・先物グループも運用委託されたお金も入り、元々普通の意味では驚異的な儲けを続けていて、1兆円相当の運用枠を持っていたし、別に保有する株式も相当増えていた。国内組は、ココ流の堅い取引がベースだったので、そんなに吃驚する程の好成績ではなかったが、数千億の運用資産になっていた。それとは別に、スイス組との連携で運用委託され、保有していた株式まであった。

正人が、預かる運用しない準備金も、もう10兆をとっくに超していた。保有する現金は、リスクを分散させるために、香奈ファイナンシャルや香奈オーバーシーズと同じように、神之助に預けていた。これは運用しない筈のお金だった。しかし保有する通貨によってし目減りするかもしれない。円がどんどん円安になるかもしれないし、ドルが高くなるかもしれない。現金で保有すると言っても、最適な保有する通貨を選択する必要があった。その保有する通貨の選択を、神之助に任せると言うのが、ジブトラスト内での一般的なやり方だった。世界各地のジブトラストはローカルな通貨で、利益を計算する。これは当たり前の事だった。ドイツで、ドルベースでは利益も出さない。そうした儲けは一旦各地の金融センターにプールし、もっとも有利な時に為替処理するための組織が、金融センターであった。これは当初の役割だった。ただ金融センター自身にも、各地のジブ子会社からの配当が入り、ジブへの送金以外の為替処理とか、現金をそのまま現金としてではなく、各種の債券にしたりしていた。それが債券自身も動き、為替も動き、その調整を総括するのが、神之助だった。思わずお金が増えていたのだった。神之助は、キャッシュポジションを重視して、つまり、日本では円で保有する事を基本としていたが、いつもいつも円高ではなかった。円安になると思えばドルに換えたり、ユーロにしたり、スイスフランにしたりしていた。それは世界各地の金融センターも同様だった。それも現金ではなく、債券とすれば利子もついた。そうした事を管理していたのが、神之助だった。ただ神之助は、投機の神様みたいな存在だった。単に通貨の選択と云う程度では収まられず、為替や債券などで儲けていた。年に1割はざらだった。時には数割にもなる時もあった。それが積み重なっていった。親基金である筈の香奈特別基金が、国内の香奈では、数千億相当程度の基金に膨れ上がっていて、大きな基金とも言えたが、それに比べても、子会社とも呼べるリトルキャット運用会社は巨大な資産を持っていた。ただ神之助は、香奈直系と言え、ジブシステムに入るか入らないか微妙な存在のリトルキャット運用会社からの運用委託には、上限を設定する事にした。リトルキャット運用会社からの運用委託は上限を10兆とする事にした。これは、カヨコファイナンシャルの運用委託の上限を6兆としたのに、比べると非常に多く、香奈に配慮したものであった。親基金である香奈特別基金の五百億もやたらと増えていたが、神之助に取っては、一兆を超えない金は、まだ気にしなかったので、それには上限など決めなかった。ジブトラスト内の三つのオーバーシーズは、運用上限などを設定せずに、一部を除いて、運用した利益も元金に加えて、ドンドン増えていた。

リトルキャット財団の誕生

それは兎も角、このレアメタルの採掘によって、この思いがけない収入が入ってきた。正人は、珍しく子猫たちと全体会議をした。香奈はジブトラストに行っていた。テレサは自慢の猫語翻訳機を持ち出した。そこで意外な事が起こった。今まで香奈の家で産まれた猫たちは煩く文句を言ったが、配偶猫はみんなおとなしかった。香奈の家の猫たちは、猫チャンネルは使用できたが、途中からきた配偶猫はそんなに使えなかったのも原因だった。ナターシャやテレサを始めとして、配偶猫たちは、早速猫語翻訳機を使い、口々に悲惨な野良猫時代の食生活の事を言った。香奈の家の猫たちの一部の猫は、それなりに聞いていた事でもあるが、改めて事態を深刻に受け止めた。リトルキャット運用会社として、地域猫の保護を目的とする財団を作ろうと言い出した。ただリトルホワイトは慎重だった。途中で腰砕けになると、前よりも事態は悪化する可能性があると言った。猫も人間も、現状を当たり前と捉える傾向がある。長期間、持続出来ない事は避けなければならない。我々だって香奈に大きく依存している。香奈は、我々をそのまま認めてくれているが、香奈以外の人間に、そんなに期待するのは危険だ。「所詮、猫」と言われて傷ついた事もあるリトルホワイトは、多くの人間も抱きこんで、少しずつ拠点を確保しながら進めていこうと言った。我々は、今は香奈のペットに過ぎない。香奈と云う大きな巨木の陰で、自由を貰い、好きな事をしているから、今のリトルキャット運用会社がある。我々は、まだ人間の助けを必要としている。もっと多くの人間を巻き込んで、猫の能力を引き出して、人間との協力関係を少しずつ築いていく時期なのだと力説した。聞いていた正人は苦笑し、多くの猫たちも、改めて現状を認識して、同意した。結局、子猫たちの管理の元に、今までの予備費として貯めていたお金を、はっきりと運用しないお金として、新しくリトルキャット基金として確保し、更に今回の予想外の収入は、地域猫の保護などを猫たちのための財団であるリトルキャット財団を設立する金に回す事になった。地域猫の保護や拠点となる施設などは、正人に頼んだ。更に暫くはこの利益も加味されるリトルキャット運用会社としての利益の10%をリトルキャット財団に寄付し、リトルキャット財団の安定化を図る事まで決めた。リトルチャを始めとするスイス組では、利益が出ても、運用枠の拡大に使うお金は、リトルチャのグループでは最大一千億、株式・株式先物グループでは、1割に留め、運用枠拡大に使うべき残りのお金は、もうリトルキャット基金に組み込む事にした。国内組も従来の運用枠拡大に使っていたお金の半分だけを運用枠拡大として、残りは、一部だけを貴金属勘定に入れて、長期的な視野で貴金属を保有する原資として、残りの多くのお金をリトルキャット基金に組み込む事にした。リトルキャット基金は、今後の香奈の家の猫の生活の面倒をみる基礎ともなるので、運用しない金として大切に保管して、その保有リスクを低減するために、その半分を通貨の選択だけをリトルチャの為替グループに任せていく事にした。円資産でずっと持っているよりも、他の通貨での保有すべきかどうかなどを任せた。正人もそれで納得し、今まで運用枠拡大に使うべきお金の一部を、準備金としていた事もあり、準備金の一部も、リトルキャット基金に組み込み、一兆円規模の基金となった。不動産は暫くこのままで保有して、貴金属勘定は、長期的な視野が必要なので、一応独立勘定とした。今後の長期保有株は、運用枠も増えていたチャタロウのチームの中で考える事にして、今まで運用枠拡大に使用しようとしていた金を当分の間は、すべてリトルキャット基金として貯めて、基金の充実を図る事にした。来年以降のレアメタル採掘によるお金もリトルキャット基金に組み込んでいった。正人も同意した。リトルキャット財団は、リトルキャット運用会社からの拠出として設立し、香奈国内の事務局のメンバーやリトルキャット運用会社の株主たちを理事とした。リトルキャット運用会社のからの理事は地域猫保護に尽力していたグループと早速話し合った。恵たちの財団にも猫と人間の協力関係を確立するための協力を求めた。正人は、グダグダ説明するのも難しく、香奈には、単に猫のための使うとか言った。

リトルキャット財団

レアメタル関係の予想もしなかった収入をベースに出来たリトルキャット財団ではあったが、金だけで、財団は運営できるものではなかった。正人は、不動財団が増設し、そして更に増設されていく予定だった不動マンションに目をつけた。神二郎や陽太に頼み、不動マンションを建設する時に、隣接する土地に、リトルキャット財団として猫ハウスを建設し、既存の不動マンションでは、近くに、猫ハウスを作り、不動マンションの住人に、猫ハウスの世話をして貰って、世話代なんぞも支払う事にした。不動マンションの住人たちにとっても、賃仕事のアルバイトになるので、陽太たちも引き受ける事にした。テレサの作った猫語翻訳機や自動猫トイレなども用意され、野良猫いや地域猫の資質向上に役立つように、猫スペシャルのレアメタル浄水機を、不動マンションや猫ハウスにも備える事にした。この猫スペシャルはプーチンの発想により、話題のレアメタルだけでなく、微量ではあるが、別のレアメタルが組み込まれ、香奈の家の周辺の水の濃度に近似するように作られていた。医薬品承認も受けてないので、猫用だけとして、猫ハウスだけを考えていたが、陽太がそれに抵抗し、不動マンションにも備える事にした。浄水器の医薬品承認程度の圧力程度は陽太には出来た。あのレアメタルの効能は云えないものの、話題のレアメタルはちゃんと入れていたし、分岐状の水もリング状の水の濃度も高かった。別のレアメタルはまだそんなに採掘していないので、値段も高かったが、香奈オフィスも特別バージョンで売る事にした。特別バージョンの価格の違いがうまく説明できないので、そんなに売れなかったが、敷地内の水は近いと云うだけで、それでも買う人は少しはいた。

香奈の家の猫たちには、ネットは必須だったので、猫ハウスには、ネット接続した猫仕様のパソコンを置いた。ネットは、猫語で書かれていないので、テレサは猫語翻訳機を改造して、猫語読み上げ機を考え、パソコンオタクの子猫たちがソフトを作った。ココの子猫の二人の女の子の内、ココハナコはラッセルと一緒になり、ココジュンはプーチンと一緒になっていたが、ラッセルは職人肌の猫だったし、プーチンは頭は良いものの、移り気な猫だった。その子供たち、いや子猫たちもそれぞれ自分の好きな事に打ち込む猫だった。ラッセルタロウと呼ばれた男の子は、パソコンオタクの猫になった。ラッセルの子供たちには、実業分野に興味を示す猫とか、取引に興味を示す猫もいたが、ラッセルタロウは異色の猫だった。ココハナコは、ラッセルタロウを可愛がった。自閉症気味のラッセルタロウには、正人に言って、ラッセルタロウ専用にバソコンを与えた。プーチンハナコと呼ばれた女の子も、同様だった。ココジュンも自閉症気味のプーチンハナコを気にしていた。頭はいいものの、人いや猫との付き合いが苦手で、一人でパソコンに向かって、ナンダカンダと触っているうちに、ネットでコンピューター言語を知り、コンピューター言語にやたら詳しくなった。プーチンの子供たちは、研究分野に興味を示す猫たちが多かった。ただみんな移り気な所はプーチンに似ていたが、プーチンハナコは、コンピューター言語がのめり込んでいった。その他のプーチンの子供たちでも、みんな移り気であっちこっちと勉強している内に、理論経済学や取引で利用できる数学的、統計的な分析などに打ち込んでいく猫になった。移り気なようで、漸くたどりついた自分の分野には打ち込む猫たちだった。ただプーチンハナコとは違い、それぞれの分野は専門的ではあるが、それなりに他の猫たちと話をしていたが、二人、いや二匹の猫は異色だった。この二匹の猫は、ほとんどコンピューターの事しか考えず、やたら専門的な事だけを話す猫だった。この二匹の猫が、コネコソフトを作ったようなものだった。

ごきげんソフトが作った情報処理施設の中の情報処理研究室には、この二匹専用の部屋まであった。ただこの二匹は、いとこ同士ではあるが、やっぱり男と女、いやオスとメスであった。そんな二匹が同じ部屋にいて、リング状の水が多い水や牛乳を飲んでいた。いくら脳細胞の活性化に使われるといっても、プーチンハナコは、なかなか綺麗な猫だったし、ラッセルタロウも可愛い猫だった。やはり間違いが起きた。プーチンハナコのお腹が大きくなった。ココは古いタイプの猫だったので、一度は逆上したが、チャはとりなした。好きな猫同士が一緒になるのがいい。二人ともなかなか似合いのカップルではないかと言った。プーチンハナコは、二匹の猫を生んでいた。血が濃いと色々と面倒が起きる事もあるが、大天才ができる事もあった。生まれた猫は、二人、いや二匹の猫は男だった。ビットとマクロと名づけられた、二匹の猫は、生まれた時から、パソコンが横にあった。そして父も母もコンピューターの天才だった。この二匹は、分岐状の水とリング状の水を飲んで、コンピューターの大天才となった。この親子たちがコネコソフトの基礎を築いていった。この親子にはごきげんソフトの優秀なプログラマーやエンジニアたちの人間たちは太刀打ちできなかった。プログラムは簡単で、モジュールなんぞをくっつけていた人間のプログラムなんぞはとても敵わなかった。ラッセルタロウはプログラミングの達人、いや達猫だったし、プーチンハナコは言語系の達猫だった。ビットとマクロは、やがてネコネコCと呼ばれる言語を作った。これは、機械語交じりの言語だった。普通の人間でも理解を超えた、ごきげんソフトの優秀な人間達も舌をまいた。

各地の猫ハウスや不動マンションの人間の中にも、二人、いや二匹の猫と同類の猫や人間もいて、そうした人間や猫たちが、やがて集まってきた。この四匹の猫たちがナンダカンダと話し合って、猫語読み上げソフトを作ったのが、子猫たちがソフト制作を始めるきっかけとなった。四匹の猫たちには、株式会社なんてものは、まったく判らなかったが、テレサの旦那は、法律や会社設立なんぞの方法に詳しいリトルチャだった。リトルチャは忙しいものの、配下の人間たちも一杯いて、四匹の猫が判らない内に、株式会社コネコソフトが出来ていた。会社は出来たものの、猫たちが対象で、収入は期待できないから、はじめはリトルキャット財団のサービス部門としていた。その内に不動マンションの住人たちの中にも同類の人間がいたり、各地の猫ハウスの猫たちの中にもそうした変り種が何故か出来てきた。そうした連中は、コネコソフトの仕事をするようになり、コネコソフトのパワーが増えてきた。ごきげんソフトの下請けをしたり、ネコニックスと云われるOSも作るようになった。独自に色々なソフト開発を行うようになった。法律的には、猫だけで会社は出来ないので、リトルキャット運用会社の子会社の役員に名義を借りた。名義を借した人間たちは、リトルチャの配下みたいな人間だった。これがまずかった。やたら法律に詳しく、駆け引きにも強く、コンピューターのシステムなんぞは詳しくは判らないものの、ごきげんソフトともナンダカンダと駆け引きして、法律的にもソフトの権利などを強く主張して、コネコソフトは、結構な収入を持つようになってしまった。 その後も不動マンションの住人たちの中にも、そんな変り種が出てきた。各地の猫たちの中にもいた。あの四匹の猫たちではじめたコネコソフトでコネコネットだったが、そうした人たちや猫たちが、コネコソフトやコネコネットでも働きだした。陽太が作った不動ネットは、商売人のネット業者に頼んで、単に不動マンションの情報を交換するためのものだったが、コネコソフトは、OSやコンピューター言語まで研究している会社だった。当然、不動ネットがコネコネットに吸収されていった。実質的には、コネコソフトやコネコネットは、不動マンションの住人と子猫たちが実務というか研究や開発を行い、リトルチャ配下のリトルキャット運用子会社の法律ゴロみたいな奴が、運営するソフト会社になっていった。実務をしている人間や猫たちは、技術屋みたいな人間や猫たちでも、実際の交渉や運営を行う奴が法律ゴロみたいなくわせものみたいな奴だと言う会社が、コネコソフトだった。

今までのソフト会社では、やがて法律ゴロみたいな奴が実権を握り、少しはコンピューターの一端をかじり、さも自分が会社を大きくした風にみんなに言って、変質していくのが、普通だった。しかし、コネコソフトは違った。プーチンハナコやラッセルタロウたち親子のバックには、恐怖のココと呼ばれたココがいた。猫最高会議の二匹の猫はラッセルタロウとプーチンハナコの母親だったし、もう一匹のココタロウは、ココの言いつけには従順だった。この三匹の猫は、普通の状態では、リトルチャの手腕に感服して、リトルチャの言い分には理解を示していてくれた。しかしラッセルタロウやプーチンハナコの一家が自由に伸び伸びと仕事が出来なくなり、自閉症みたいな状態に戻ると、猫最高会議でもリトルチャへの批判が増えるのは必定だった。それに、流石のリトルチャもココの前では大人しかった。所詮、子供扱いされた。チャは、チャタロウやリトルチャの自主性を認めてくれたが、ココはチャに子供に甘いといつも言っていた。それでもチャの手前もあり、そんなにリトルチャやチャタロウには、直接文句は言わなかった。ラッセルタロウもプーチンハナコも、ココには大切な孫だった。ココはラッセルタロウとプーチンハナコの一家は、気がかりだった。人いや猫たちとの付き合いが上手く出来ない自閉症みたいな、この一家の事を、ココは案じていた。この一家が自由に伸び伸びと働いて、生き生きしている所を見ると、ココは目を細めていた。リトルチャにとって、コネコソフトなんては小さい問題だった。コネコソフトで、この一家の猫たちが自由に伸び伸びと働ける環境を作り、金をドーンと出す以外の選択支は、リトルチャには考えられなかった。そんな金はリトルチャに取っては大した金ではなかった。一方、法律ゴロみたいな奴に取っては、リトルチャは雲の上の天皇みたいな猫だった。運用子会社のボスのボスが、国内のダミー子会社の幹部だった。そしてこの幹部のボスのボスが、リトルチャだった。リトルチャは、この一家の猫たちを自由に伸び伸びと働ける環境を作れ、金なぞ心配するなと、直接の配下の人間に厳命していた。そしてその事が、次々と下に流れ、法律ゴロみたいな奴には、この一家の猫たちには、自由に伸び伸びさせる環境作りは、大前提だった。この一家の猫たちは、コンビューターの達猫だった。ビットとマクロは大天才だった。そこに、リトルチャがドーンと金を出した。法律ゴロみたいな奴が、新しい仕事を取って、次々に難しいプログラミングや言語を考える事は、一家の猫たちに取っては、いい刺激になった。法律ゴロみたいな奴は、実力主義のリトルチャグループなので、高収益ならば、報酬は当然上がった。コネコソフトは、次々と難しい課題に挑戦し、成功を収め、利益もドンドン上がり、法律ゴロみたいな奴も報酬が上がり、営業網も充実し、更に仕事を取り、プログラミングの天才と言えたラッセルタロウが、難しいプログラミングを完成させ、言語系の天才みたいなプーチンハナコが、言語体系を作っていった。そしてビットとマクロは自由にシステムを考えた。各地の猫ハウスのパソコンオタクの人間たちと猫たちが更に勉強して、技術の幅が広がっていく事になった。

不動グループは、不動マンションにいる時は、陽太が再生のために、バイトみたいな仕事も斡旋し、精神的、経済的に自立できるように援助していた、実際に再生していく時は、神二郎の不動総合の直属部隊が世話していくシステムになっていた。ところが、情報処理グループは、微妙だった。不動マンションに住んでいても、プログラミングやシステム維持の賃仕事は時間給も高く、正式のコネコソフトの社員でもなれば、高給が出た。その限りでは十分自立しているとも言えた。ただ精神的に自立したとは言いがたい連中も情報処理の連中の中にはいた。それに仕事場も不動マンションの情報処理室である事が多かった。不動マンションの住人に取っても、簡単なコーディングやプログラムの入力なんかは賃仕事としては、必要だった。コネコソフトが不動マンションの近くに、サテライトオフィスを作り、そこでコネコソフトの仕事をしてもらう事を検討していた。それがコネコソフトの全国の支社になり、プログラムだけでなく、システム維持などの仕事をしていくようになる切っ掛けとなり、不動マンションの情報処理室が、コネコソフトと不動マンションの住人とを結ぶ練習場みたいになっていった。心理ケアの問題もあって、そうした連中にとって、どの時点で自立したのかは、難しい問題でもあった。それでも不動マンションの住人にとっても、大きく成長していくコネコソフトでは働く事は、一つの自立の方法だった。不動総合企画に入ったり、株式会社リトルキャットで働いたりする事の他にも、色々な選択支の一つとなった。コネコソフトは技術屋グループでありながら、高収益企業への道を歩むようになり、その人材供給も各地の不動マンションそして猫ハウスが大きな役割を果たすようになっていくとは誰もこの時点では思わなかった。

猫語は、言語としては、発音のトーンで意味が変わるだけに、ネットや本でコミュケーショするのには、適当な言語ではなく、人間の言語や文字について知る事が必要となった。配偶猫が、私はこうして、人間の文字を読めるようになったと体験記を書いて、掲載したりして、やがてコネコネットは充実して、各地の猫ハウスを繋いで、教えてネココーナーも出来たり、ネコ通信教育講座、ネコネット講座まで出来た。これはパソコンオタクの子猫たちが管理した。各地の猫たちの中には、グングンと頭がよくなる猫がいて、ジブ大学院大学の講義も一部をネット配信するようにもなった。それを見ていた陽太も不動マンションの住人たちが使えるように、各地の不動マンションのパソコンもコネコネットに繋ぐようにした。コネコネットは、誰でも見られるネットではなく、猫たち専用の一種の閉鎖されたネットだったが、ここで猫たち以外に人間でも見られるようなネットに変質していった。リトルチャは、こうしたインフラ設備のための出資は、惜しまなかった。国際金融ルートの構築を進めていたリトルチャに取っては、大した金とは思えず、猫最高会議のココの子猫たちに、ラッセルタロウやプーチンハナコのために、これだけ使っているとアピールする事も出来た。それに、リトルチャに取っては、こうした経費は、決算対策や税金対策にも使えた。リチルチャはコネコソフトへの投資は惜しまなかった。こうした多大の投資が効いて、インフラ設備は一挙に進んだ、不動マンションの住人も猫たちと一緒にジブ大学院大学の講義を受けたりするようになった。ジブ大学院大学では、コネコソフトは、ごきげんソフトとも協力して、情報処理研究室も作り、通信コースも出来た。猫たちは、各地の猫のための通信コースの積もりで作ったが、陽太が、不動マンションの住人も参加できるようにした。ジブ大学院大学も、こんな通信教育コース用のインフラを活用し、参加希望者に広げていった。オープンキャンパス、市民大学講座なんぞと広がっていった。猫たちが教育の重要性に気付いて、陽太もそれにのって、不動マンションの住人にも門戸を開いたものであったが、意外な事に、このシステムを十分利用していったのが、社会福祉研究所であった。財団の各支部とも連絡して、保育コース、心理学コース、介護コースなど各種のコースを作りだし、妊婦さん用には、単なる講義だけでなく、教育ビデオなんぞも作り、各支部で妊婦さん相談デスクまで作った。ついには、公的な妊産婦助成制度とも共同で色々な事までするようになった。公的福祉か民間団体かの区別は、とっくに判らなくなった。ジブ総合研究所は株式会社だったし、技術部門は、子会社のジブ研究ベンチャーを作り、パテント代や委託研究費も取り、経済研究所もジブトラストから金を貰ったのに、社会福祉研究所は金を稼ぐ事はしなかった。実は、国や地方自治体から色々な教材の作成を請け負い、相談料なんぞも貰っていたので、セコク儲けようと思えば儲けられたのに、言われない事まで、しっかりと作り、社会福祉研究所の研究員とか心理学研究室の研究員が決まった数以外にも実際に各地に出かけ、相談などをしていた。そしてその結果を受けて、コマメに修正していた。そのため社会福祉研究所としては、大赤字での活動だった。

香奈「社会福祉研究所が、突然、やたらと金を使うんだよ、他の研究所は稼いでいるんだよ、夢野先生の資源開発研究所は信じられない程、稼いでいるんだよ。香奈オフィスが、あの話題のレアメタルの用途開発する時に、技術指導料を結構高く設定していたけど、今は、あの話題のレアメタルは信じられないような儲けをするから、技術指導料も、思いがけなく上がったんだよ、瑠璃が技術指導料を下げて欲しいと言った程だよ。徹さんに怒られていたよ。あの話題のレアメタルで、どれ位香奈オフィスが儲けたと思う。開発研究をケチッて、儲けられると思っているのかいとお説教されていたよ。奈津美もこれ以上利益を出しても、税金は最高税率だよ。税金ばっかり払うだけで、手取りは、思ったほどそんなに増えない、税金に半分以上も取られるのよ。それよりも資源開発研究所は香奈オフィスと未来エネルギーの研究をしているから、今後のための研究費用に回した方がいいのよ、と瑠璃に言ったらしいの。香奈オフィスは、今は、凄い儲けだからね。夢野先生は、強気なのよ、社会福祉で金を儲けようとセコイ事を考えるなと、平気だけどね。」
「そうだよ、社会福祉では金は稼げないわよ。でも本当は、やり方次第ではそれなりに金は入るけどね。そこが、福祉の不思議なんだけどね。要はやり方なのよ。でも社会福祉研究所は、今の所長でも、直ぐに自腹を切るのよ。夢野先生がそんなセコイ儲けなどを考えず、最善と思うものを作れと所長に言っているのよ。国から請合う仕事も殆ど赤字だよ。あの教育ビデオも恐ろしいほどの安値で国に提供しているのよ。お金の問題だけでなく、研究スタッフの事もあってね。社会福祉研究所のスタッフは充実しているし、実はもう社会福祉研究所抜きでは、もはや公的制度も維持できないようになっているのよ。でも今回は少し違うみたいだよ。社会福祉研究所の所長が、海外の有名な賞を受賞して、海外出張中で少し不在だった時に、所長代理の天野さんが、役人と大喧嘩してね、今まで研究所と国、そして地方自治体なんかと財団がほぼみんな等分に負担して、対外活動をしていたのに、国と地方自治体の負担分もみんな研究所が負担したのよ。大騒動だったのよ。天野さんは気が短いのね。大臣が飛んできたわよ。陽太君には内密とか言っていたらしいよ。金は兎も角、国の事業でもあるからね。」
香奈「そうなの。天野さんは、昔リトルホワイトと喧嘩した事もあるらしい。偉い先生なんだけど、気は短いのよ。夢野先生も強気の先生だからね。収める事はしないだろうね。ジブ総合研究所全体としては黒字だからね。」
「なんだよ、きっちり赤字になっていると思ったのに。元々儲けるための組織でもないのでしょう。」
香奈「私もそう思っていたわよ。だから基金も積んでおいたのよ。数年間は出る一方だったけど、でも研究ベンチャーみたいな組織も作ってね、今は結構稼いでいるのよ。基金も結局増えているのよ、社会福祉研究所は大赤字だけどね、そんな赤字も補ってしまう程儲けているのよ。」
「だったら、何の問題もないじゃないの。」
香奈「でも突然大きな赤字になったからね。このままのペースで、社会福祉研究所の赤字が増えつづければ、陽一さんは、折角増えていた基金を、又取り崩す事にもなりかねないと心配していたのよ。夢野先生には、陽一さんは何にも言えないのよ。」
「それは直ぐに戻るわよ。社会福祉研究所の所長も帰ってきて、ナンダカンダと話をしているみたいだよ。財団の関係者も修復に動いているわよ。天野さんは、今海外のナントカと云う賞を受けるのに、海外に行っているのよ。受賞講演とナントカ大学で講義をするとか言って、暫くいないのよ。今の内になんとか収めようとみんな動いているのよ。金の問題だけではないのよ。公的福祉制度そのものにも関係するのよ。社会福祉研究所は、所詮民間団体なのに、一時期とは云え、公的福祉制度を担当してしまったからね。天野さんは、清香さんの事務所にも連絡を取って、今までの慣習なんかにもメスを入れて、清香さんの事務所も色々と細かく調べてね。国や地方自治体も慌てているのよ。今年の分は未払い分として処理して、来年度以降に、追加して払う方向で落ち着きそうだよ。でも大学院大学も通信コースも作って赤字にならないの? 社会福祉関係の通信教育は格安だよ。」
香奈「通信教育は、元々リトルキャット財団が提案して、コネコソフトがインフラ設備を作ったし、その後もリトルキャット財団が維持費を出して、コネコソフトがシステムを維持しているし、不動財団からも少し金を貰っているらしいよ。大学院大学としては、システム維持費がほとんどかかっていないのよ。その上、ジブ関係の企業も、会社を休職させて派遣するのを渋っていたけど、通信教育ならと言って、結構申し込んでくるのよ。通信教育としては、儲けているのよ。社会福祉研究所の通信講座は安くしているけど、でも赤字じゃないのよ、他の通信教育は結構儲かっているのよ。通信教育以外は赤字だから、そんなに大きく儲からないけど、結局トータルとしては、赤字ではないみたいだよ。基金はそんなには減っていないよ。ほとんどそっくり残っているみたいだよ。おまけに出版事業も、教科書みたいなものを作って結構儲けるのよ。心理学研究室なんて、ベストセラーを出して大分儲けているしね。天野さんは、軽妙な啓発書を書くのよ。リトルホワイトも手伝っているみたいだよ。」
「天野さんは、天才で、倣岸不遜とか云われているのに、そんな一面もあるんだね。保養施設でも丁寧に話すると言っているよ。」
香奈「天野さんも、リトルホワイトも、元々天才肌で、倣岸不遜なタイプだからね。意識して、修正しているのよ。でも倣岸不遜な相手だと、つい地が出るのよ。役人なんかと折衝するのは、一番合わない人だろうね。」
「社会福祉研究所の所長は温和な人だからね。ぼやきながらも、それなりに、役人に合わせているのよ。役人は、福祉で儲けている人たちも知っているから、態度もデカイのよ、自分の金みたいな態度を取るしね。福祉で儲けているように言われると、天野さんはカチンとくるんだろうね。でも今回は国にもいい経験になったと思うわよ。元々セコイ予算でなんとかなっていると思っていたみたいだよ。所長は、国の関与も大切と思って我慢していた所もあってね。陽太君も、それなりに大臣に言っているみたいだよ。教材関係は実費程度は出すように言ったらしいね。陽太君は知らん振りしているけど、なんでも良く知っているよ。」
香奈「陽太君は、あれが特技なんだよ。選挙も相当上手いらしいよ。ナンダカンダと各方面に話をしているらしいよ。無料診察制度も維持され、不動財団の活動も活発になっているのも、それが原因みたいだよ。この間会った中国の人は、そんな事を言っていたよ。こっそりと陽太君とも時々会うらしい。」
「陽太君は、朗らかそうな顔をして、何も知らない振りをしているけど、やっぱり政治家なんだね。」
香奈「神子ちゃんでも、陽太君の予測は出来ないらしい。」

コネコソフトは、リトルキャットのホームページの管理もして、リトルキャットのネット通販のシステムを完成させた。このコネコネットは、リトルキャットのネット通販だけでなく、安いよのネットスーパー、個人宅配のシステム作りまで関与していき、ネットショップとしては大きくなっていったが、それはもう少し、先の話である。更に、やがては、リトルチャの国際金融ネットワークのシステムを担当して、チャタロウチームの会社のネットワークシステムまで担当して、猫たちのごきげんソフトみたいな存在になっていったも、もう少し、先の話である。なにしろ、リトルチャは、このコネコソフトにドーンと投資した。決算対策や税金対策もあったが、ウロウロ動けない猫たちにとっては、コンピューターネットワークは必須と考えていたからでもあった。猫独自のOSやネコネコCは、独特の世界であった。機密性に優れて、コンピューターウィルスなんぞは入り込む事は出来なかった。広い意味ではリトルチャのグループでもあったし、運営や商売を受ける奴は、リトルチャの配下の法律ゴロみたいな奴がしていたので、利益率はやたらと高くなっていったが、実際の研究、開発そしてシステム維持は、コンピューターの天才のような四匹の猫たちを中心に、オタクのような人間たちとオタクのような各地の猫たちが、ナンダカンダと担当している技術屋中心の会社でもあった。技術レベルでは、もはやごきげんソフトを超えていた。

山間部を中心にして、猫ハウス以外に猫牧場も計画した。不動マンションは、住人の再生のために、都市部近郊に建設するので、どうしても、猫嫌いの人とのトラブルも予想されるので、トラブルの少ない山間部にも猫牧場を計画した。これは大きな猫ハウスみたいなものだった。猫牧場を含めた大きな牧場を作り、食品加工施設を持つ食品事業を考えた。猫の世話担当として不動マンションも必要だった。この事業には、正人は、貯まっていたリトルキャット運用会社の準備金から出資する事にした。猫たちの食に関する指摘は鋭く、遺伝子研究センター、快適農作物研究所、ブラジル食品総合研究所そしてスイスカナコイン微生物研究所からも、既に猫たちは、こっそりとジブ総合研究所や大学院大学に通う猫たちの手によって、協力を取り付けていた。単なる従来型の食品事業ではない予感が、流石に正人にも感じられた。そんなに乗り気でもなかったイチコプロダクツを巻き込んで、リトルキャット運用会社の子会社の一つとしてリトルキャットプロダクツを作り、牧場や養豚場、食品加工施設なんぞも計画した。陽太は不動マンションの住人の再生に役立つので、協力する事にした。あの貴金属会社から買った僻地の山間部では、全て鉱山になった訳でもなかったので、土地はまだまだ空いていたので、そこに目を付けて、土地の有効活用を図る事にした。リトルキャットプロダクツは水産資源にも注目して、幾つかの漁業関係者とも話をした。リアルな漁業も組み込み、巨大な釣堀みたいな大きな池を山間部に作り、天候などの気象条件に左右されない、新しい養殖漁業も考えていた。正人は、実業なんかはした事がないので。経験のあるイチコプロダクツに運営を頼み、不動財団や不動総合企画にも協力を貰い、人を派遣して貰い、少しずつ事業展開をしていく事にした。

組織作りに乗り出す正人

国内香奈の事務局は、正人と正人が集めたもう一つの銀行の退職者を中心に運営していた。香奈オーバーシーズはもう一つの大きな銀行と協調融資もしていたので、香奈オーバーシーズの事務局も兼ねていた。正人の息子の正一や正智も晴れて、日銀や大学も退職したので、早速それぞれ国内香奈そして香奈オーバーシーズの事務局に入れていた。

香奈の指示通り、研究所に勤める切人の子供たちの一人も、海外香奈との連絡役として、国内香奈の事務局に非常勤として入れていた。リトルキャット運用会社もデカクなり、事務処理や税務処理などは、従来頼んでいた、もう一つの大きな銀行の退職者だけでは足らず、人は増えていた。子猫たちは、かなりの株式まで保有しており、ナンダカンダと事務の量は増えていた。

国内香奈は、ノンバンクでもある香奈オーバーシーズ、そして大きくなったリトルキャット関係の事務処理、そして本来の香奈国内の事務処理もしていたので、そんなに簡単な事務処理量でもなかった。それに正人自身はもう一つの大きな銀行やジブ上海を通して、中国担当の渉外担当でもあったので、やたらと忙しかった。香奈ファイナンシャル関係の企業もそれぞれデカクなり、融資や出資関係の仕事も増えていた。正人は、もう一つの大きな銀行の退職者の再就職を斡旋すると同時に大きくなっていく本体香奈の組織を再構築する必要に迫られていたいた。リトルキャット運用会社も、子会社であるリトルキャットもデカクなっていた。株式会社リトルキャットの事務や運営などは、不動総合企画がほとんど担当していた。もう一つの大きな銀行の退職者を中心とするネットワークそしてリトルキャット運用会社に集まった猫好きの年寄りたちをそれぞれ使い分けながら、仕事をなんとか遣り繰りしていたのだった。そのため、子供たちが晴れて退職すると、早速下働きをさせる事にしていた。正一も正智も、正人ほどではないが、言い訳の技、人を煽てて使う技、はぐらかしの技そして詭弁の技なんかは、身に付けていた。自分の関係する部門から人を巧みに集め、それとなく使うなんぞは出来る男たちだった。

天網恢恢、疎にして漏らさずとの喩えもあり、リトルキャット運用会社の急成長は、ジブトラストではとっくに漏れていた。スイスカナコインでは、噂の巨大な資本が結局、リトルキャット運用会社である事を突き止めていた。ジブトラストの幹部会議でついに話題となり、香奈特別基金の個人会社ではあるが、業績の説明や取引手法の説明などを求める声は、次第に強くなった。香奈はリトルキャット運用会社が好調とは聞いていたが、詳しく報告されていなかった事もあり、正人に報告するように言った。正人は、はぐらかしの技に長けた正一に白羽の矢を立てて、リトルキャット運用会社の役員にして、誤魔化す事にした。

正一は、リトルキャット運用会社の大物と云えたリトルチャと猫語翻訳機を使い、話をして、適当に話をデッチ上げる事にした。誤魔化すなんぞは正一の得意の技だった。しかしそれだけでも不安なので、リトルチャにも会議に出てもらう事にした。こっそり猫語翻訳機を使い、カンニングする準備もした。リトルチャは、研究担当の猫たちとも相談して、綿密な報告書を作り、正一に渡した。しかし、リトルチャは自分自身で説明する事態も予測して、リトルホワイトたちとも相談した。リトルチャは、好感度を持つ話し方なんぞ出来ないので、説明の仕方や表情の作り方、話のトーンなど、綿密に準備していた。リトルチャは、人にも猫にも好感度の高いチャタロウに、猫軍団の将来のために協力しようと呼びかけ、チャタロウも同意して、チャタロウは国内組にも参加を呼びかけたが、国内組はチャタロウに任せると言い、チャタロウは国内組とも相談して、株式保有の理由などの説明も準備した。果たして、付け焼刃の正一の説明なんぞに納得するジブトラストの連中ではなく、リトルチャ、チャタロウ、研究担当の猫たちそしてリトルホワイトたちの猫が、猫語翻訳機を使い、直接説明する羽目になった。

香奈は、なんだかんだと猫たちが議論していたので、猫たちの動きは薄々知っていたし、リトルキャット運用会社が好調に推移している事は、正人からも報告されていたが、詳しくは聞かなかった。正人も説明が厄介だと思い、ちゃんと説明していなかった。香奈自身もリトルキャット運用会社の実態を詳しく始めて知った。リトルキャットブランドは、不動や辺郎のアジア、神帥のアメリカ、そして羽郎のブラジルが、単にリトルキャットのブランドを使って事業展開しているだけと軽く考えていた。リトルチャは、これらの事業展開やその収益構造などについても詳しく調べさせ、リトルホワイトたち、子猫たちに今後、リトルキャット運用会社としての事業展開、更に実業への展開と絡めた保有株式の整理なども考えさせていた。思いがけない猫たちの発表に会場は思わずどよめいた。しかし結果がすべての運用の世界なので、スイスカナコインの発表以来の衝撃はあったものの、すぐに議論は白熱し、今後のジブトラストの運営や方針とも絡み、真剣な議論が展開されていった。猫たちの発想は、独特だった。猫たちには、基礎と応用なんぞの区別もなく、リトルチャからの依頼により、研究担当の猫が、その分野を調べ、リトルチャとチャタロウたちが投資計画を組み立てていたのだった。投機筋が、注目を受けて、その手法や手口なんぞを説明しては、もはや投機筋ではなくなるが、リトルチャは、あえて手口を明らかにして、従来の投機的な手法からの発展を図ろうとしていた。今後の猫軍団の未来を考えると、今までの投機的な取引手法だけでなく、ココやチャたちのリスク管理を厳しく取った取引を超える新しい展開がある筈だと感じているリトルチャたちであった。

「香奈さんは、珍しく、この間のジブの会議にずっと出ていたね。神太朗君たちそして時には神之助君までも、香奈さんがジブに行っている時にも香奈さんの家に来ているよ。誰と話しているのよ? みんな騒がしくなっているわ。何かあったの?」
香奈「ジブの会議で、リトルチャがリトルキャット運用会社の業績や今後の展開などを説明したのよ。猫語翻訳機なども出来ているのよ。正人がちゃんと説明しないから、私も初めてじっくり聞いたのよ。みんな唖然としていたわ。私が猫の取引と言っている時は、みんな冗談のように聞いていたくせに、やたらとみんな質問するのよ。リトルホワイトが司会なんぞをして、議論を判りやすいように整理するのよ。リトルチャは、もはや運用だけではなく、猫たちの将来のためには、猫の能力を発揮できる事業に進出して、安定的に猫軍団の将来を支えて行きたいと考えているみたいなのよ。チャタロウも株式保有をしている理由をうまく説明したわよ。それに野良猫たちも出来るだけ保護して、その能力を活用していきたいと考えているらしいのよ。」
「それは私は聞いているわよ。今までの地域猫保護の人たちとリトルキャット運用会社の人たちが話している事は財団の人から聞いたわよ。陽太君は不動マンションの人たちの仕事にもなるからと言って、不動財団は、協力しているらしいわ。財団でもペットとの共存による精神安定効果を考えているから、協力できる所はあるかも知れないと考えているわよ。」
香奈「神太朗君たちの実業グループも衝撃だったみたいだよ。株式会社リトルキャット以外にも色々な事業展開を考えているのよ。スイスカナコインの連中もショックだったみたいなの。スイスカナキャットが本当に猫の会社とわかったし、スイスの猫たちにも異才はいるらしいとリトルホワイトが言うから、猫語翻訳機を貰って、話してみると言っていたわ。今は日本語変換機能だけでも、ネコスキーノはまだ元気で、日本語もできるし、大学院大学では日本語をできる人もいるらしいのよ。コッソリートも猫に元気づけられ、取引のヒントも貰ったと言っているらしいのよ。イチコプロダクツと合弁で会社を作り、食品事業から始め、ロボットや資源なども展開していくらしいのよ。猫の能力を最大限に発揮するための薬なんかも猫たちは考えているのよ。遺伝子研究センターも色々参考にしていると今頃、言うのよ。神太朗君は、スイスカナコインとも連絡を取って、事業分野の調整をするらしい。リトルチャがスイスの投機筋だった事も判り、神之助君まで驚いていたわ。リトルチャと神之助君は、波長が合うみたいなの。会議が終わってもナンダカンダとこっそり話していたわ。猫語翻訳機なんか必要ないみたいだったわ。加代子ちゃんのグループのアメリカの責任者までも加わって、話をしていたわ。この三つのグループは気が合うみたいなのよ。リトルチャの説明を聞いて、納得していたわ。今後もこっそり相談しようとか言っていたわ。」
「猫も大したものなのね。」
香奈「そうだよ。私がいなくなったらドーダコーダなんて言っている場合ではないのよ。うかうかすると、人間が、猫のペットになってしまうわよ。」

リトルキャット運用会社の新たな展開

リトルキャット運用会社は、従来の子会社でもあった株式会社リトルキャットやその関連会社を持っていた。しかし、これらの会社は、今では神二郎の不動総合企画や辺郎のアジア快適そして羽郎のブラジルと協力した神帥の食品会社などによって、それぞれの会社の別働隊のようになっていた。リトルチャたちは、今までの進展を高く評価し、特に口を挟もうとはしなかった。それにナターシャを始めとする猫たちのデザイナーたちも活躍して、リトルキャット運用会社のデザイン室は、かなりのデザイン料も貰っていたし、配当も入ってきていた。ジブシティ内のリトルキャット本店には、リトルキャット運用会社の株主たちも運営に参加したが、それ以外では参加する余地なんぞは、極めて限定的だった。リトルキャット運用会社では、新しく設立したリトルキャットプロダクツの食品事業以外でも、いくつかの事業展開を模索していた。猫たちは、切った張ったの取引だけでなく、研究担当の猫たちの意見を考慮して、猫たちも参加していける幾つかの事業を選んで、取引以外にも進出していこうと考えていた。猫たちも取引に興味のある猫以外にも、色々な分野に興味のある猫がいた。ナターシャのデザイン分野は特殊だったが、それ以外にも学術センターや研究所に通う猫たちの能力も生かしながら、香奈国内の正人や正一たちを通して、国内香奈の事務局に交渉させていた。又、リトルチャがジブトラストの幹部会議で知り合ったスイスカナコインの連中にも奈津美を通して交渉させ、スイスカナコインの関係する事業に近い所で、リトルキャット運用会社の海外事業を展開していく事をリトルチャは考えていた。

スイスカナコインの猫牧場の猫たちにも異才はいる筈だった。猫語翻訳機は、日本語だけでなく、英語バージョンやドイツ語バージョンをテレサは既に開発していた。人間と猫たちは協力していけると考え、香奈の家の猫たちは、猫たち独自の事業展開を、スイス総合企画の連中とも話し合いながら、日本とスイスで、とりあえず実施していく予定であった。

香奈とジブトラストの今後に続く
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