近未来編

香奈スペシャルwith コシロプラスNo.4

統合しようとするジブトラスト

香奈は、ジブトラストの全体会議を開くようになった。

ジブトラストはそれぞれグループ毎独立して、ジブとしてのルールはあるが、香奈の許可があれば、それは例外となっていた。そのグループ内の事は香奈は分かっていても、各グループは知らない事も多かった。そこで、各グループ間の協議や各グループの業務報告をする合同幹部会議をジブホームホテルで、不定期ではあるが、開催する事にした。神之助、神帥そして切人は、各グループの中で成績をまとめ、掌握していたので、簡単だったし、方針も明確だった。神代は短期専門だったので、基本方針などもなく、短期予想に基づいて取引していただけなので、簡単だった。聡美のグループは大変だった。聡美は神子と神代のお告げに基づき、リズム感のある先物をしていたし、大元帥明王さんの指示で株を買っているだけとも言えなかった。それに一定の損がでたら、一定期間の取引禁止にする程度の規則で、みんな自由に取引しているので、まとめるのは大変だった。会議の前に会議して、まとめる事になり、聡美も報告するのが、邪魔くさいので、まとめ役に報告させる事になった。加代子はハナからまとめる積もりはサラサラなく、アメリカでの責任者にまとめさせ、責任者は数人つれてきて、会議の前に加代子に説明し、会議で報告した。神元もまとめるつもりもなくヨーロッパで会議させ、発表者まで選び、会議の前に説明してもらうだけだった。神子は元々長期予測の専門家なので、経済センターの研究も交えて報告し、センター長からも補足させた。神二郎は超長期的な見通しを説明し、不動産管理部門のリーダーに補足報告させた。マリアと沙織も出席をもとめられたが、二人は取引内容をまとめただけだった。それでもみんなお互いに各グループの取引内容や結果がわかり、同じ事をしていたり、反対方向の取引をしていた事もあった。香奈は報告をそれぞれ受け、分かっていたが、みんな驚くので、やっぱり開催してよかったと思った。それで海外の子会社会議も開催して、海外の子会社毎の状況を報告させた。各国の状況についてはグループ会議とは違った考え方もあった。それにグループ間や各国の子会社で協力できる事もあった。
今までのジブは香奈への報告だけで終わっていたので、その後も日程を調整しながら開催する事にした。
香奈 「会議ばっかりしていてもどうかと思ったけど、お互いに協力できる事が判ったのも良い事だよ。瑠璃なんかも香奈オフィスの全体会議をしようと奈津美と話しているわ。」
「冶部ホームホテルは益々予約が取りにくくなったけど、いい事だね。財団でも分科会で協議して全体調整もする事になったの。細かい分野で努力するのもいいけど、全体的に見るのもいい事だわ。」
香奈 「今まで通りのジブでなくてもみんなの役割に応じたり、世の中の動きに分かれてジブが変わっていくのが自然かもしれないね。恵の言った通りかもしれないわ。みんな、自分の役割を果たす必要があるのね。」
「そうだよ。私たちは自分の役割を果たすために精一杯やってきたのよ。まだ役割は終わっていないのよ。」
香奈「それにしてもみんな若いし、元気だね。この間、中国の人と久しぶりに会ったら、全然年を取りませんねと言ってびっくりしていたよ。」
「まあ、まだ頑張りなさいと言われているんだよ。無理はしないけど。」

中国も香奈なき後のジブトラストの方向について強い関心を持っていた。

香奈がいなくなった時の事を心配しているのは、香奈だけではなかった。中国も心配していた。香奈がジブとして中国に進出した時に投資した後の配当を、中国として、中国国内になるべく再投資して欲しいと言った。利益を日本に送金するためのジブ上海銀行だったのに、日本に全部送金するのも控えて欲しいし、送金する時期も相談して欲しいと注文をつけられた、香奈は神之助と話して、ジブ上海のジブトラストの口座に人民元の形で定期預金する方法を提案して、この形なら配当の50%を中国に置くと言った。中国はそのお金を再投資する時には、中国政府のダミー会社と合弁の形を取ったジブ中国を作り、ジブ中国として投資する事を条件に認めた。この時に、結局、香奈は新しくジブ中国を作る時に、出資に必要なお金は、新規にジブトラストとして資金を出したので、中国政府は喜んだ。そうしてジブトラストとそのダミー機関がそれぞれ半分ずつ出資して、ジブ中国が出来ていた。その後は、ジブトラストはジブ中国を含めて、すべての配当と利益の約半分を日本に引き上げ、約半分をジブ上海に保管する事になった。政府としてのダミー的な操作に、ジブ中国は投資していった。ジブ中国はジブの株式担当の神子には、報告と言うより連絡をした。市場での買い支えとか市場活性化のためのカンフル剤的な買い入れ、そして過熱した時の冷やしとかに使った。神子は自分の意見がなかなか言えないので不満もあったが、香奈が、まあそれでも儲かっているからいいじゃないと言った。配当を含めた儲けた金の半分はなんだかんだといいながら、日本に送金し、半分はやっばりジブ上海にそのまま再投資のための準備金の形で貯金する事にした。そして時々、その準備金の中から、要望があれば、ジブ中国に再投資として出資していた。

中国株式が冷え込んで、ジブ中国の金をつぎ込んだがイマイチ効果が弱い、中国からもっと投資をして欲しいとある時言われ、香奈は、ジブ中国がそのための会社で、結構な資金になっているわよとか、ジブは運用枠を決めているのよとか言って難色を示したが、中国政府の相当偉いおっさんが、わさわざ敷地内に来た。香奈は貴方に来られると仕方ないわねとか言って、恩を着せ、ジブ中国ではなく、ジブトラストとして買うならいいよ。ただ当然、売買は、ジブが単独で決めるわ。せこい儲けなんてとらないわよ。前の株だってまだ持っているでしょうと言って、ジブトラストとしての自由な株式の売買を認めさせた上で、大規模な投資をしたので、中国での保有株は増えた。 ジブトラストは、この時にジブトラストが100%の資本を持つジブトラスト中国を名目上の会社として作り、ジブ中国の中においた。今までのジブトラストが保有していた株式やジブ中国の出資分、そしてジブトラストの預金などを引き継いだ会社だった。やっぱり配当の半分はジブ上海に定期預金とした。それが過熱して高騰した時には売ったり、下がったら、又買ったりする神子の技が出て、利益も上がった。今度はジブがジブ中国に連絡するだけだった。まあ過熱しているから冷やしになったので、ジブ中国も黙って、その注文を取り次ぎ、中国政府に報告した。そんなこんなで、気がついたら、ジブ上海のジブトラスト中国の口座は膨れ上がっていた。ジブ中国の保有株や資金も増えたが、これは中国が勝手に使っていると言って過言ではなかった。なんだかんだとジブトラスト中国の人民元の保有がやたらと増えていった。

中国はもう一つの大きな銀行をひそかに欲しがっていた。もう一つの大きな銀行は中国支配を嫌い、一族の銀行を人身御供に出す積もりだったが、結局、香奈に阻止され、今度は策謀していた筈の、もう一つの大きな銀行自身が危なくなり、本命に資本参加しようと、中国のもっと偉いおっさんが香奈に会いにきて、今度はジブ上海からも少しは出資させる事にした。中国の代理人みたいなおっさんが、ひそかにもう一つの大きな銀行の役員になった。香奈とそのもっと偉いおっさんとの話で決まった事だった。香奈はその代わり、ジブ上海のジブトラスト中国名義のジブ上海銀行の口座の人民元は円やドルに替え、日本に送金するのはジブの勝手と認めて欲しいと言った。当たり前の事なので、反対する事も出来なかった。香奈は続けて、私も歳なので、書面にしてよと言って、ジブ上海の頭取まで、立会人として署名させ、そのもっと偉いおっさんと香奈が署名した。その後ジブは何にもしなかった。逆に、神之助の意見で、日本に送金する売却益や配当などのお金は、3割に落し、7割はジブ上海に保管して、ジブ上海のジブトラスト中国の口座残はもっと膨らんでいった。

神之助は為替で、若い頃、急激な上下を仕掛けた前歴もあり、孫ができた歳ではあるが、世界一の投機筋とか言われていた。ジブ上海はわざわざ、敷地内に支店を出し、神之助の動向を監視していた。中国も他国の通貨を玩具にする事は平気な国なので、神之助と組んで、ジブ上海の金も使い、為替の仕掛けもした。ただ陽太の事もあり、神之助は、円がらみは急激な上下をしないようにした。他の国の投機筋の動きを察知した時は、こっそり日銀や財務省と組んだ事もあった。
陽太の内閣では為替はなぜか、安定していた。他の国の投機筋も、円絡みの仕掛けは怖がっていた。それでも仕掛ける、恐れを知らない人もいたが、逆に大損した。神之助は怒ると、何をするか判らない人と思われていた。それに日銀や中国のどんな筋とつながっているとも判らない人だった。

中国は10年単位で最高指導者が変わるブレナイ国だったが、ジブは50年間以上、指導者が変わらないもっとブレナイ組織であった。香奈亡き後のジブと中国国内のジブの資産については中国は、色々とシュミレーションをしていた。「ジブトラストが分裂する時」と云うレポートがかなり高いレベルで読まれた時もあった。香奈は100才を超えていたので、真剣味があった。それがレポートを書いたおっさんが死んでも、香奈は元気だった。ジブの妖怪も生身の人間なので、いつポックリ逝くかもしれないと中国はかなり偉いおっさんが、色々な話をするためにやってきた。香奈もさすがに100才を超えた後は、神子だったり、神之助だったりを同席させるようにした。香奈がみても、二人は中国のタヌキと比べると化かし合いが下手のような気がした。二人は、取引の天才でも、化かし合いは天才ではなかった。ジブ上海銀行の偉いおっさんが特に用事もないのに、ジプ上海銀行の報告とかほざいて、中国の偉いおっさんに同行してきたので、正人を同席させた。正人は化かし合いの技もなかなかだった。それにはぐらかしの技も使う事が出来た。正人は中国との化かし合い要員に採用され、ジブ上海銀行の偉いおっさんに、正人を非常勤の役員にするようにと言った。あっと云う間に、正人は、もう一つの大きな銀行の役員とジブ上海銀行の役員になってしまった。正人は中国なんかには行けないよ。役員会にも行けないよと強く言った。ここでは若いかもしれないが、僕も高齢者なんだよと言って反対した。香奈は大タヌキだったので、だれが役員会に行けと言った。向こうから色々話があった時に、ここで交渉する役目なんだよ。役員会なんぞ行っても、所詮セレモニーに出るだけなんで、行くことはないよ。時々敷地内の支店で話をするだけだよ。神之助君が為替の話をする時なんかも必要なら出るだけでいいんだよ。もう一つの大きな銀行の役員会にもそんなに出かけなくてもいいよ。と簡単に言った。正人もそれならと言って正人の就任が決まり、正人はさすがにジブ上海銀行に一度は挨拶に行って、二度とは行かなかった。中国のタヌキには、正人がジブの化かし合い要員と云う事が判ったので、正人はもうひとつの大きな銀行と中国政府の窓口に就任した。正人は未来システムの新入社員ではなく、香奈ファイナンシャル国内の事務局のお世話゛係とノンバンクと化した香奈オーバーシーズのお世話係りにもなった。

香奈は、もう一つの大きな銀行にも、それなりの脅しをかけていた。正人は知らん振りをしていたが、もう一つの大きな銀行の首脳部には、強烈だった。ジブトラストと云うより香奈ファイナンシャルが大株主だったが、冗談混じりにこう言っていた。「ジブトラストは、もう一つの大きな銀行の株をこんなに保有する必要はないのよ。一族の銀行だってジブトラストに取っては、資産効率としてはそんなに良くないのよ。ここは、中国に譲ってもいいけど、やはり日本の資本が持っていた方がいいと思うから、保有しているだけなのよ。それは判ってくれているわよね。」
もう一つの大きな銀行は、正人を通して、香奈のご意向を無視できないようになっていた。正人は知らん振りをしていたが、ジブトラストともう一つの大きな銀行の連絡役のような存在でもあった。それに正人は、もう一つの大きな銀行のそれなりのポストについていた人たちやそうでない人たちにも再就職も斡旋して、香奈ファイナンシャル関係の経理関係の職に就けたり、香奈ファイナンシャルの事務局で働いてもらう事もしていた。ジブトラストは硬軟両面で、もう一つの大きな銀行に対して、それなりの影響力があった。役員会の議題説明に、もう一つの大きな銀行は、香奈と正人に説明に来ていた。香奈は、時には正人に任せたりなんぞの小細工もして、正人の存在は、もう一つの銀行では隠れた大物になっていた。

聖子事件で、突然大儲けしたジブトラスト

「安いよと快適の創業者の治部聖子氏が事故死?」と云うニュースが流れた。聖子は、歳にも拘わらず、みんなが反対する中、お気に入りの羽朗がブラジルで、ブラジルジブ貴金属と合弁で作ったブラジルジブ乳業とブラジルジブ総合食品研究所そしてブラジルジブ牧場を見てきたいと言って、一人で出かけた。

聖子も80代になっていたが、まだまだ元気だった。「いつまでも元気でね、ハイパワー品」も一杯持っていた。ブラジルの快適は大きくなり、快適洋服だけではなかった。快適農園は、至る所に出来ており、軽工業主体だった快適もブラジル資源開発とともに化学工業にも進出して、アフリカの快適化学と連絡を取り、ブラジル快適化学と云う大きな化学会社も作っていた。原油は、ガソリンや石油だけでなく、色々な化学製品の原料になっていた。ブラジルの快適農作物研究所は、農作物の研究では、世界をリードする研究をしていた。ブラジルジブ総合食品研究所はこれらの農作物や快適の持っていた食品会社群の研究所を率い、今までの食品産業を根底から変える研究をしていた。何より広大な土地を買いたがる快適の姿勢により、ブラジルの熱帯のジャングルは、広大な世界の穀倉地帯に変化しつつあった。ブラジルジブ貴金属もお金を持っていた。聖子は、大きく変貌を遂げたブラジルの快適を駆け足で見学して、その現状に吃驚しながらも、上機嫌であった。そして新しいブラジルジブ乳業、ブラジルジブ総合食品研究所を見学し、最後に空港の近くにあった大きな牧場も訪問し、絞り立ての牛乳も一杯飲んで、上機嫌で羽朗に空港まで送って貰った。

聖子が牧場でのんびりし、美味しいといって絞り立ての牛乳を飲み過ぎていたので、空港の近くだったのに、空港に着くのが、チェックイン時間にぎりぎりになってしまった。聖子は車の中でも、牛乳を飲んで、車のスピードもそんなに出せなかった。到着後、羽朗のコネで直ぐにチェックインした。快適はブラジルでは大きな企業グループであり、羽朗はブラジルでは顔が利いた。聖子は元気だったので、搭乗口付近まで道案内してくれた職員をもういいからと言って断った。搭乗口が見えてきた時に急にお腹が痛くなり、お便所に駆け込んだ。急いでいたので、搭乗券も落とした。下痢が止まらなかったので、便所から出られず、やっと出てきても搭乗券を探すうちに、空港で迷子になり、又便所に駆け込む始末で、とうとう乗りそこねてしまった。海外出張はあまりしない聖子だったので、経由地のアメリカのダラスで、綾子の経営しているエレガントホテルで2日間ゆっくり休んで、日本に帰る計画だった。ダラスのエレガントホテルは、綾子自慢の高級タイプで、美味しいステーキを出したので、お肉が好きな聖子を喜ばそうと綾子と相談して、羽朗がスケジュールを立てていた。聖子には、驚かそうと思い、単にダラスでホテルを取って、ホテルから空港に迎えが来ると言っていただけだった。

乗り遅れてしまった聖子は、格好悪い理由なので、こっそり別の航空会社の便でアメリカ経由で日本に帰るチケットを、急いで買った。偶然に直ぐに出発する便に空きがあり、直ぐに取れた。おみやげで一杯詰まり、ハイパワー品も入ったトランクは、飛び立った飛行機の中だった。すぐに飛行機に飛び乗り、おみやげは機内の中で買う始末だった。飛び立った飛行機の中でも、お便所が使える時間になるとお便所に駆け込こんだので、ニューヨークに到着すると、乗り継ぎ時間が8時間もあり、これを利用してタクシーを急がせて、すぐに神三朗のエンジェルホープ病院に行き、下痢止めの薬を貰った。トランクがなく手荷物だけだったので、あっという間に空港の外に出た。「いつまでも元気でハイパワー品」が切れて時間も経ち、ニューヨーク空港では疲れていた。聖子はいかにも安物の快適の服を着て、ブランド品でなく、安いよで売っていた、いかにも安物のハンドバックを持った高齢者に見え、病院に行くと言ったので、アメリカと云っても、流石にみんな気の毒がって順番を譲ってくれた。景気が良くなり、有希のブランド品は好調で、聖子が製造販売していた洋服や靴を一杯売らないと、洋服部門の利益では、負けていた。聖子は意地でも有希のブランド品を着る訳にはいかなかった。

不気味に若く見えていた聖子であったが、航空券を探して走りまわり、下痢が続いていたので、流石にしょぼくれていた。60才後半の貧乏なお婆ちゃんに見えた。それに神三朗のニューヨークの病院は金も取らず、治療するので有名だった。タクシーの運ちゃんも見て貰った事もあった。又、あっという間に病院に着いた。病院に着くと、病院も気の毒がって少し日本語の話せる人がいて、黙って下痢止めをくれた。その時は日本人の医者もおらず、下痢止めくらいなので、そのまま渡し、具合が悪くなったら、もう一度来なさいと親切に言ってくれた。しかし聖子は病院から帰る時には、急に元気になり、下痢止めも結局飲まず、帰りには近くの洋服屋に入り、気に入った洋服も買い、安いよの参考にと思い、スーパーも見て、のんびりしすぎ、また乗り遅れそうになり、どたばたしながら空港に駆け込み、直ぐに飛行機に乗り、その日の夜にニューヨークを飛び立ち、飛行機の中では疲れてすぐ寝てしまった。そして日本に着いた。1日も早く日本に着いた。お昼過ぎに敷地内の家についた。大人数の家なのに、誰もおらず、「いつまでも元気でね、ハイパワー品」もトランクの中にあり、長い間飲んでいなかったので、直ぐに自室に戻り、自室にあった「いつまでも元気でね、ハイパワー品」を飲んだ。飲んだ後は、飛行機の中で寝た筈なのに、又急に眠たくなり、取りあえず寝た。少し寝る積もりが熟睡して、翌日の朝お腹が減って目が覚めた。さすがに二郎とは別の部屋で寝る年になっていた。今では家族も増え、俊子たちの家の朝の食堂は洋之助一族にとっては、ホテルのレストランと化して、朝早くから、自分でパンを焼いたり、フルーツを食べたりする事が出来るようになっていた。レストランから焼きたてのパンやハムやチーズなども届けられていた。聖子は朝早くから、一人でパンに、お気に入りのドイツのチーズペーストをたっぷり塗って、届けられていた生ハムサラダを食べ、牛乳をたっぷりいれたカフェオレを飲んでいた。

一方、聖子が乗る筈だった飛行機は、聖子ともう一人の到着をいらいらしながら待っていた。出発が遅いといって、受付まで文句をいいにくる人まであり、受付は混乱していた。もう一人の人はお便所の前で聖子の搭乗券を見つけ、わざわざ受付に渡した。受付は混乱しており、それを一緒に処理して、出発時間も遅れていたので、直ぐに出発してしまった。運悪くメキシコ湾でハリケーンが発生し、それを迂回したり、空港でも到着する飛行機が多く、ダラス空港ではやたらと旋回した。遅く飛び立った筈の聖子の乗っていたニューヨークに着いた時には、まだ旋回中だった。ダラスに着く時間が遅れていた。そして、その飛行機は、旋回中に鳥が吸気口に飛び込み、エンジンが突然停止し、機械も故障して着陸用の足も出ず、失速しながらも、パイロットが上手に機体を立て直し、何とかダラス空港に胴体着陸したが、着陸後火が出て、燃え上がった。爆発寸前に消火したが、救急車も来て、搭乗客の救出も始った。その頃には、聖子は、ニューヨークの病院を出ていた。羽朗から連絡があって、ダラスの空港に出迎えに来ていたエレガントホテルの人があまりに到着が遅く、空港を眺めていた。飛行機が胴体着陸し、燃え上がる所を見ていて、大慌てで、みんなに連絡した。早朝から、敷地内では対策会議が開かれた。

神子も神代も、聖子はアメリカにいると言った。二郎はオロオロして役に立たず、取りあえず、清太郎と綾子が、急遽ダラスに行って、聖子の安否を確認する事になった。清太郎と綾子が飛行機に乗る時には、聖子は既に日本に向かって飛んでいる飛行機の中で寝ていた。

テレビでは聖子は、ブラジルからダラスの飛行機に乗っていなかったかも知れないと言う人も現れたと報道され、夜の電話番もおかれていたが、聖子からの連絡もなく、みんなの疲れの色も濃く、絶望感が強くなっていた。安いよでは密かに社葬の手配も始めていた。聖子とは仲の良かった沙織も心配して、ジブトラストもお休みして、テレビにかじり付いていた。沙織は、翌日は取引も気になり、ジブトラストに行き、朝早く、青不動さんに相談した。すると青不動さんが出てきて、心配するな、もうすぐ会えると言ってくれた。沙織は聖子と連絡が取れたと思い、安心して稼ぎだした。その日の午後遅く、たまたま本体の管理と話に来た、神二郎と一緒に、子供たちもつれ、ケチな沙織もレストランに行き、好きな鯛のフルコースを奮発して頼み、神二郎はステーキを食べ、子供たちも好きな料理を食べ、マンションに帰り、神二郎をゆっくり堪能した。神二郎も聖子が無事と沙織に聞いて、沙織を堪能した。堪能しすぎて、翌朝いつも早起きの二人は、食堂に行くのが遅れた。

青不動さんは、沙織にしか言わず、香奈は心配して、チャとココと一緒に、家でテレビを見ていた。2日目の夕方、晩ご飯を食べていた時に、神子と神代は、聖子はアメリカには、もういないと言った。ついそこにいるような気がすると言っていた。流石に、怖くて聖子の部屋を覗く気にはなれなかった。みんな心配して、夜遅くまで、テレビに釘付けになっていた。ダラスでは、いくつかの病院に分けて運ばれていた。不幸にしてなくなる人もあり、ダラスでも混乱していた。ニュースもその話をしていたが、流石に話題も古くなり、事故の放送時間が少なくなり、チャンネルを変えたり、アメリカのニュースチャンネルを見たりした。

聖子「お義母さん、お早う、清太郎はいつも早起きなのに、今日は遅いね。」
俊子 「お早う、清太郎と綾子はダラスに行っているのよ。みんなも遅いね。聖子ちゃん、聖子ちゃんなの、幽霊なの。」
聖子 「幽霊じゃないですよ。昨日帰ってきました。」
俊子 「昨日?昨日の何時頃なの。何故もっと早く言わないの?」、
聖子 「お昼過ぎですよ。帰ってきた時は誰もいなかったし、少し眠る積もりが、熟睡してしまって。」
俊子 「ブラジルからの飛行機がダラス空港で火災になったのよ。乗らなかったの。」
聖子 「お便所に入ったら下痢が続いて、おまけに空港で迷子になり、乗り遅れて、ニューヨーク経由で帰ってきたのです。やっぱり、牛乳を飲み過ぎると良くないですね。」
俊子「早く連絡してよね、ニュースぐらい見ないの。」
聖子 「代わりのチケットを買ったり忙しく、それにずっと下痢気味で、ニューヨークでは、急いでエンジェルホープ病院に行って薬貰ったの。日本語も通じて便利でした。なんとなくこの家にいるみたいで元気になる病院でしたよ。ニュースなんか見ませんでした。早口の英語は苦手なんで。」

清太郎と綾子にすぐに連絡して、清太郎と綾子は、安堵と怒りの複雑な気持ちで、日本に、帰ってくることになった。

「聖子ちゃんも人騒がせだね。直ぐに連絡すればいいのに。」
香奈 「まあ良かったわよ、元気で。いつまでも元気でハイパワー品と分岐状の水が入った牛乳を飲むと吸収が早くなって、下痢が続くかもしれないと徹行が言ってたわ。まあ聖子ちゃんは、牛乳を飲み過ぎていたみたいだよ。」

聖子の無事の帰還で、聖子に対して徹底した検診が行われた。聖子は帰っていた時は、しょぼくれていたが、ゆっくり寝ると元気を取り戻して、一挙に若く見えた。それでも下痢をしていた事もあり、検診した。驚くことに、聖子の身体が30才以上若返り、もはや普通の40代よりも若くなり、内蔵器官も健康そのものであり、記憶力、判断力そして計算力等の頭脳活動も格段に向上していた。その原因を考えて、徹行は、ある仮説を立てた。

ハイパワー品を飲んで、分岐状の水が一杯含まれる絞り立ての牛乳を多量に飲用すると、細胞活性効果が強くなり、乳蛋白の吸収も促進されるが、一種の乳アレルギーによる下痢も促進されるのではないかと考えられた。ただこの下痢が続くと体内の老廃物が身体の中に出て、体内が全てリフレッシュされ、その後体内の内蔵が全て活性化されると云うものであった。牛乳療法と云われる療法の構想ができた。ただやたらと下痢が続くと予想されるのが難点だった。その後ジャパンドリームを服用すれば、寿命が相当のびると思われた。脳の寿命は、ジャパンドリームでは、影響されないが、パワースターは、性欲がやたらと出るが、脳細胞の活性促進効果も付け加わるので、分岐状の水が多く含まれる絞り立ての牛乳を大量に飲み、その後「いつまでも元気でね、ハイパワー品」を飲むと云う牛乳複合治療が効果的と思われた。

「いつまでも元気でね、ハイパワー品」は、元々100才以上の限定品だったが、今では80才を超えると飲用が認められるようになっていた。敷地内に住む80才以上の人には効果的な療法だった。仮説に基づき、敷地内の小さい牧場でも乳牛も飼った。エンジェルスターやパワースターは既に栽培していた。乳牛の絞り立ての牛乳を調べて見た。分岐状の水が絞り立ての牛乳に一杯あった。レストランで低温殺菌した牛乳も調べた。分岐状の水を含んだ水で生育した牛の牛乳であっても、殺菌処理すれば、分岐状の水分子は大きく減少した。そのため絞り立ての牛乳を用い、牛乳複合療法が行われる事になった。敷地内でも犠牲的精神のあった香奈や恵たちが、この実験的な牛乳複合治療に参加した。下痢は続くが、体内の老廃物を全て出した後、その後再び「いつまでも元気でハイパワー品」を飲んで、ぐっすり休んだ。徹や健次郎も参加した。お便所の取り合いも予想されたので、超高齢者だけを少しず分けて行われた。大変効果があり、みんな若返り、頭もすっきりして、判断力も上がった。勝、徹、洋太郎たちは、みんな30才以上若くなった気がした。頭も冴えて、前よりも、もっと判断力も洞察力も出た。超高齢の100才以上の年寄りが元気になり、子供たちの高齢者も羨ましがり、初めは100才以上に限定していたが、80才前後の正子たちも参加する事になった。聖子はちゃんとした治療ではなかったので、もう一度参加した。牛乳好きな正子には強烈な効果があり、もっと牛乳好きな聖子は強烈すぎた。二郎も参加したが、30才も若返った気がした。二郎のものも反り返り、ビンビンになり、聖子の色ボケが蘇り、激しいバトルが二郎と起こり、絶頂感が、聖子に蘇ってきた。

敷地前の牧場の敷地は小さく、乳牛は分岐状の水を飲むだけでなく、ウロウロ歩き、エンジェルスターや落ちていたパワースターの葉も食べ出して好物となり、むしゃむしゃ食べて牛乳の中の分岐状の水、リング状の水やパワースターの薬理物質も段々増えてきていた。乳牛の体内で抽出が行われていた。香奈たちに実験療法する時でも、測定した時よりも、分岐状の水やパワースターの薬理物質は、牛乳の中で遙かに増えていたが、その後の正子たちの時には、強烈に増えて、パワースターの薬理物質も強烈に増えていた。ジブホームレストランでは、牛乳を低温殺菌して敷地内の家、正確には、三軒の食堂に配り、残った時には、レストランで使っていた。殺菌すると分岐状の水は激減したが、敷地内では、牛乳にパワースターの薬理物質も含まれて、リング状の水の保護作用もあり、フランスやブラジルの牧場の絞り立ての牛乳の半分程度に収まっていた。それは徐々に増えていった。乳牛だけではなく、肉牛もつられて当然食べた。肉質も改善していた。この事は2年後に漸く判った。牛乳を3本も飲んだ人が下痢気味になり、調査した。牧場の牛乳は美味しく、子供たちも飲み、牛乳好きな人も飲み、カフェオレにして飲む人もいた。多くの人は、少しコーヒーや紅茶に入れて飲んでいた。敷地内では妊婦が増え、敷地内の病院は産婦人科病院のようになっていた。幼稚園や託児所は大きな建物を建てていた。やたらと神童だらけになり、幼稚園では小難しい英語の本を読んでいるくそ生意気な子供達もいるようになっていた。幼児語でくそ難しい議論をしている変な幼稚園だった。

「牛乳混合療法を受けてから、体調がいいのよ。レストランのステーキが前よりも美味しいと思うようになったよ。」
香奈 「あのステーキは、美味しくなったみたいだよ。子会社の連絡会議の時に出したら、みんな吃驚していたよ。前に食べた時も美味しかったけど、今回は比べようもないほど美味しいと言っていたよ。」
「なんかあったのかね。朝のコーヒーも美味しいのよ。」
香奈 「判らないねえ。美味しくなるのはいい事だよ。子供たちもここの牛乳は美味しいと言っているよ。チャもココも好きみたいだよ。」
「まだ、あの猫たちも元気なの。やっぱりコシロの子だね。」
香奈 「この頃は特に元気だよ。チャも良く儲けるようになったよ。スイスコインも驚いているよ。ココも突然上がるボロ株を見つけるのよ。」
「凄い猫たちだね。でも変と思わない。この頃みんな良く妊娠するね。妊婦だらけだよ。」
香奈 「託児所も幼稚園も大きくする予定らしいよ。子供が出来るのは良いことだよ。子供は宝だよ。」
「それはそうだけど、こんなに子供が増えるのも何か変な気もするよ。」
香奈 「優花ちゃんは、ここに住んでいないけど、毎年出産しているよ。気のせいだよ。」
「そうかねえ。」

色ボケ三人組の無謀な試み

知加子は、大学では、一心不乱に教育や研究し、日本を代表する経済学者と言われるようになった。ブータンの国民総幸福量と云う考えに、計量経済学と財政学を取り入れ、国民福祉経済学と云う訳の分からない学説を提唱し、みんなを煙にまいた。福祉に使う金を現実的な内需喚起効果と計算し、福祉予算での内需喚起を強く主張し、陽太の影の経済顧問と云われるようになっていた。しかし、家では、色ボケ女と変わり、いつのまにか、聡美と色ボケ同士で仲良くなり、あれの舐め方やしゃぶり方そして体位の話をして盛り上がる、エロ友達となっていた。哀れな子供達は、色ボケ女のエロ話に付き合えず、気の毒な事に真面目に勉強していた。夜勤族の聡美と大学教授の知加子では、時間がずれたが、午後に知加子が家に自宅研修している時に、時たま、エロ話をしていた。聡美は、神元のものが大きすぎて、十分に口の中に入らず、鬼頭を舐めるだけだったので、しゃぶり方なんかは、知加子の話を羨ましがって聞き、知加子は、神元の大きさを羨望した。でもおしゃぶりをして喉の奥に当たった時は興奮するよとかいって二人で盛り上がっていた。二人であまりに盛り上がっていたので、夜勤族で、病気が治っていた筈の加代子も元々変態気味だっただけに、話に加わっていた。

知加子「聖子おばさんに聞いたけど、牧場の絞り立ての牛乳を一杯飲んで、下痢をしてから、ハイパワー品を飲むと凄い絶頂感が得られるらしいよ。二郎おじさんのものも、又反り返ったらしいよ。」、
聡美 「ハイパワー品を一度飲んだけど、神元さんが元気のない時でも大変だったよ。あれは危険だよ。」、
知加子 「私も飲んだ時は、大変だったわよ。でもあの絶頂感ももう一度体験したいと思わない。もっと凄いらしいよ。」、
加代子 「私は飲んだ事ないわ。そんなに凄いの。」、
知加子 「初めての時は、死ぬかと思ったわよ。絶頂感が2時間続いたのよ。あれより凄いらしいのよ。」、
加代子 「それは凄いね。でも絞り立ての牛乳を飲み過ぎると凄く下痢するらしいよ。」
知加子 「私たちだけで飲むのよ。土曜日の朝早く、加代子さんが早く仕事を終えて、ハイパワー品を飲んで、その後絞り立ての牛乳をコップ3杯こっそり飲んで、おトイレに入って下痢をして、もう一度ハイパワー品を旦那と一緒に飲むのよ。」、
聡美 「それはいいかもしれないわね。2日間お休みだし、効果は持続するかもしれないわ。」、
加代子 「今度の金曜日は何も経済指標の発表の予定がないのよ。神子おばさんの見通しでも特に変化もないと言っていたわ。早く仕事を打ち切るわ。神三朗さんも土曜日や日曜日でも、病院に呼ばれる事もあるけど、お休みの日が多いの。」
聡美 「でもハイパワー品が一杯いるわよ。」、
知加子 「聖子おばさんが一杯もっているので、貰っているの。」、
加代子 「牧場の牛乳の殺菌する前のものが手に入るの。」、
知加子 「それもこっそり話しているの。朝早く採乳した時にみんなで飲むのよ。レストランで殺菌する前に飲むのよ。」

聡美が受けた報い

色ボケが続いていた聡美と新しく色ボケの女となった知加子、折角自分を取り戻した加代子が恐れを知らず、ハイパワー品を飲んで、溢れれる程分岐状の水を含んだ、絞り立ての牛乳をこっそり飲み、激しい下痢の後、「いつまでも元気で、ハイパワー品」を飲み、旦那たちにもこっそり飲ました。神元は稼ぎだして、元気一杯だったのに、ハイパワー品を飲み、これ以上ないほど大きくなり、聡美は、絶頂感の中で、消防ホースから出る水のような精液を受ける事になった。別世界に意識が飛んだ。大元帥明王さんに怒られた。

大元帥明王さん「聡美、前にも言ったのに、また危険な事をして、今度は三つ子になるぞ。もう止めなさい。仕方ないな。記録的な儲けが出るけど、もうするなよ。本来 100才以上の限定品なのに、正子も聖子も妊娠するぞ。」、
聡美 「もうしません。聖子おばさんがあんまり上機嫌なんで、こっそり飲みました。死ぬかと思いました。絶頂感も3時間も続くと呼吸も出来なくなりそうでした。」、
大元帥明王さん 「年を考えなさい。神元なら、次は4時間突き続けるぞ。精々限定品で十分だ。あれでも1時間だぞ。イギリスの繊維会社とイタリアの自動車会社そしてフランスの機械会社を買え。切人が買っているから、聞け。1週間の稼ぎをすべて、吐き出して、1週間買い続けろ。5倍以上で売れ。」

聡美は、早速、月曜日のヨーロッパの相場の始まる前に、切人に会い、上がりそうなイギリスの繊維会社とイタリアの自動車会社そしてフランスの機械会社を聞いた。切人は、多くの銘柄を買っていた。何をしている会社まで親切に書いてくれた。この3社も含まれていたが、もう既に高いよとも教えてくれた。1週間分の稼ぎと大元帥明王さんは言っていたので、総合口座システムとは別に5社程の証券会社に、この株式投資用に証券会社の株式口座に、少し多いとは思ったが、二千億円相当をファイナンシャルの自分の銀行口座から入れて準備した。シブシステム外の証券会社では、総合口座にも反映されなかった。結局そのまま口座にお金は残っていた。聡美は、それから1週間、鬼のように儲け続け、4つの市場で阿修羅の如く手を動かし儲け続け、驚く事に、八千億を超える儲けがあった。この三社は、既に高く、決算発表前に思わぬ高値になり、切人は、上がり過ぎと思い、決算を出す前に売ってしまっていた。月曜日の現地時間の午後に発表された決算は、突然の大赤字になり、上がりすぎた反動もあって、その週は、大きく下げ続けた。あまりにも安値になり、その週の終わり頃には、切人は打診買いを始めていた。しかし、大きな買いもなく、まだ下がり続けていた。翌週の月曜日にもまだ下げ続けていた。

鬼のように儲け、阿修羅のように取引していた一週間も終わり、聡美はすっかり忘れていた。切人に、書いて貰った紙まで、なくしていた。その日も先物は、やたらと儲け、落ち着いて現地時間のお昼頃、レストランから届いたお弁当を電子レンジで温めて食べた。食べ終わったお弁当を片づけている時に、ひょこり切人に書いて貰った紙が出てきた。語学のセンスのない聡美だったが、イギリスの繊維会社は、判った。この会社の株を、ジブカミイギリスのトラストとファイナンシャルの先物口座で儲けた二千億で、根こそぎ買って、一番安い価格で一週間有効の膨大な買い板をたてた。フランスとイタリアの会社は判らなかった。ジブフランスに、日本語もできる人がいた。もう一度切人に聞くのも情けないので、ジブフランスの人に、フランスの機械会社とイタリアの自動車会社で安くて上がりそうな会社を教えてくれとメールで頼んだ。そんな会社があれば既に買ってるよと思ったジブフランスの人だったが、安値と思った会社を何社教えてメールを送ってくれた。まだ聡美は先物で忙しかった。その日の午後は少し経つとだらだらしてきた。聡美はもう早めに終わろうと思い、片づけていた時に気づいて、今度は、ジブカミフランスのトラストとファイナンシャルの先物口座から儲けた分で、切人とジブフランスの人が薦めていた会社で、重複する会社の株の売りに出ていた株を根こそぎ買い、一番安い価格で一週間有効の膨大な買い板をたてた。フランスの会社は合っていたが、これだけ聞いてもイタリアの会社は、自動車会社ではなく、切人の薦めていた、乳製品を製造している食品会社の株を買ってしまった。イタリア語は難しかった。それにそんなに大きな会社でもなく、聡美の立てた買い板は多すぎた。1週間で聡美は、やたらと儲けていた。聡美は単純にジブフランスで1週間儲けたお金の三千億を半分ずつ分けて株を買おうとしていた。それにイタリアの食品会社の株は、そんなに安い訳でもなかった。少し下がっていたが、元々配当が高く、含み資産も多く、値動きの少ない小さい会社だったが、この時は、期待に反し、売上げも利益も伸びず、その反動で株価が下がっていただけだった。普段は、1日の売買高も少ない株だったが、実はこの時に、聡美の出した膨大な買い板を見て、業態違いの複数の大株主が、この会社の株の売却を決めた。

切人の書いてくれた紙とジブフランスのメールを今度は印刷したものを机の引き出しに入れて、記憶から消して、帰った。いくら色ボケの聡美でも毎日は、しなかった。休み前から、日曜の晩に突いて貰い、数日は充電した。水曜日に、神元は為替が順調で大儲けして、元気一杯だった。先週大儲けした聡美にも今週は勝ちそうだった。やがて早朝のバトルが始まり、薬の効き目が残存したかどうか、分からないが、聡美は呼吸困難になるほどついて貰い、意識が飛んだ。大元帥明王さんが出てきて、食品会社も面白いけど、小さすぎるし、売買数量も少なすぎるのでもう売れないよと言った。もう一度よく見て自動車会社を買えと言った。聡美は、買う量も教えてくれないと分からないとぼやくと、大元帥明王さんは、投資は自己責任だから、自分でそれくらい調べて考えなさいと諭した。

木曜日に相場の始まる前に、今度はもう一度切人の書いた紙をよく見て、発行株式とチャートまで見た。チャート的にも底のように聡美には見えた。昨日の出来高の2倍程度買う事にした。ジブカミフランスでの3日分の儲けは、一千億程度だった。今度はジブフランスの人に、ジブカミとして購入するように頼んだ。今までの儲けから六千億を使ってしまっていたので、先物取引を頑ばらないといけなかった。そんな事をしている場合ではなかった。ただ聡美は、昨日が大商いで株価は大きく下がり、その余韻で今日も下がって始まった事を、知らなかった。ジブフランスは、聡美のような買い方はしなかった。一応株屋なので、聡美から依頼された量を細かく割って、時々成行で買った。その日は昨日よりも下げはきつく、時々聡美の成買で、一時下げは止まるものの、又売り込む勢いは強かった。木曜日、金曜日と売買量は増え、ジブフランスは、聡美からの依頼分はほとんど買えた。まだ下がっていたので、最後に下3本分程度の成買をすれば終わりだった。切人も低い所で拾っていたものの、同じ事を考えていた。それほど安かった。最後に買えば安く買えるかも知れないので、最後に成買して終わる事にした。聡美の株式の手伝いは管理スタッフがジブカミとして取引し、手数料を貰い、利益に応じた収入にもなり、管理スタッフの副収入になっていた。切人は特別取引部のマリアと切人チームを使い、ジブと香奈とマリアホープとして買った。同じ会社を買おうとしている事まではお互いに判らなかった。金曜日の最後は、この自動車会社の株価は諦めの終わりの成売を超える大きな成買があり、上がって取引を終えた。翌週以降は、何故か上がりだした。自動車会社の新車の計画が日曜日に報道された事に関係があるのかも知れなかった。

大元帥明王さんの教えてくれたイギリスの繊維会社とフランスの機械会社の株価は、本当に安かったし、聡美が膨大な買い板の効果もあって、いくらなんでも安すぎるといって上がりだしていた。聡美の出した買い板の半分程度は残った。食品会社の株はそんなに安くなかったのでほとんど食われ、買い板も少し残ったが、それでも過半数になってしまった。

聡美は、この時4社の株を大量にトラストとしても保有する事になった。総合口座はトラストとファイナンシャルの区別をせずに、総合口座のトラストとファイナンシャルと残高比例で株を割り振る事になった。コンピューターシステム改正で、ジブシステム外の証券会社を使う事は禁止されていた。使われなかった証券会社が動き、聡美の行動はバレて怒られたが、これらの証券会社もジブシステムの中に入る事になった。ジブシステム上、株式は口座残高の多いファイナンシャルとして多く保有する事になった。一応運用と見なされ、通常通り、先物取引を続けると、ジブシステムからは、トラスト運用枠以上だよと警告が出て、単なる比例配分ではなく、トラストのお金を優先させて使用した。聡美は、警告も出たし、株を保有し続けるために、ファイナンシャルやトラストで保有していたこの四社の株を運用枠から除外する手続きを取った。やたらと儲けていた時期なので、香奈もあっさり認めた。

聡美は忘れるといけないので、イタリアの食品会社を除いて、ジブフランスとジブイギリスの人には、平均購入価格の5倍になったら売ってねと言っていた。イタリアの食品会社の株は、大元帥明王さんがもう売れないと言っていたので頼まなかった。聡美は、その後もやたらと儲けて、この半年でカミカミ分も含めて五兆を超える儲けがあり、一時期トラストでの運用比率が多くなっていたので、トラストだけで三兆を超える程儲けていた。株価は上がっていたが、5倍なんかにはなっていなかったのでまだ保有していた。聡美としては、大暴落の時以上の儲けだった。

神元も一緒にハイパワー品を飲んだ事もあり、聡美に煽られるように商品相場と為替で阿修羅の如くやたらと儲けだし、トラストとファイナンシャル両方で、二兆儲けていた。ファイナンシャルの神元分の元手は、少なくなっていたので、トラスト分の利益が多かった。

加代子が受けた報い

加代子は、折角ほとんど治っていたが、聡美と知加子の色ボケ女に煽られ、パワーアップした神三朗の一発を貰い、又病気がぶり返した。今度は、前よりも根が深く、取引時間の青白い炎が、大きくなる時間が増えた。やたらと儲けて、神三朗の病院を作ると云って、ごっそり減ったファイナンシャルのお金も一挙に戻っていった。今度は子供たちが加代子を守ってくれて、あれこれと世話を焼いてくれたし、神三朗も忙しいのに、在宅時間は加代子の世話をしてくれた。元々そんなに出来なかったが、お金の管理とか料理とか家事とかは、まったく出来なくなった。高杉と奥さんが同居してあれこれと面倒してくれていた。加代子にとっては、取引と家族との一緒にいる時間とエロ友達との会話がすべてになった。運用成績は伸びたが、自分でお金の管理も自分の意志でお金を使う事が出来なくなった。運用指導料の管理は、トラストとファイナンシャルに任せ、給料としてくれる管理手数料やジブトラストからの配当も神三朗と子供たちが家計を管理してくれる敷地内で家族と一緒に暮らし、聡美や知加子とエロ話をする限りでは、日常生活をおくれた。加代子は、やがて又妊娠が判り、やがて今度は双子が生まれた。

取引は天性のような感覚が復活しただけでなく更にパワーアップしていた。ジブカヨコトラストとファイナンシャルは、ほぼ同額の運用を、一体として取引して儲けていたので、かすりを取られないファイナンシャルは、やたらと儲けた。しかし、運用できる金額は、トラストと同額で運用していた。又、加代子が日本に還流するとも言い出しかねないので、不動産を持とうと思い、新しく大きな超高層ビルも建て、その中の一階をトラストとファイナンシャルの事務所として使って、ファイナンシャルとして、前のビルも含めて貸しビル業なんかも始める事になった。それでもファナンシャルの金は、運用枠の数倍になる程、神も驚く儲け方をしていた。ディラーの数も増え、ディラーには、運用成績に応じた収入と運用枠の拡大が与えられていた。ファイナンシャルの利益の10%が、それぞれの役目に応じて、加代子以外のみんなの比例給になり、基本給はトラストとファイナンシャルの利益比例で分担した。株式ディラーの収入は含み資産や配当と売買差益を加味され、複雑な計算がされていた。もっとも加代子の運用成績が飛び抜けており、多くのディラーの収入とはなっていた。加代子の取引はこのトラストやファイナンシャルでは加速度をもって広がり、半年で急に十兆儲けた。ジブカヨコトラストは急に利益が出たので、配当準備金も積みました。比例給も次の半年に一部繰り延べした。それほど凄い利益だった。ジブトラストやカミカミファイナンシャルやジブアメリカも配当の激減を避けるために同意した。

神三郎も一緒にハイパワー品を飲んだので、やたらと頭が冴え、難しい手術も難なく進め、ゴットハンドの神三郎とか云われる異名を持つ医師になった。その神三郎の作ろうとしていたエンジェルホープジャパン病院だったので、やたらと有名になった。

知加子の受けた報い

知加子は、神一が朝に、敷地内の水を飲む習慣があるので、それをハイパワー品に替えた。そして、神一もギンギラの目になり、早朝の激しい神一の突きに知加子の絶頂感は3時間続き、色ボケ女に付き合いきれず、子供たちは、みどりと一緒に俊子たちの家でゆっくりご飯を食べていた。洋之助一族は、朝は一緒に食べる事が多く、夜勤の人もあり、もはや食堂はレストランと化していた。神一も知加子もお昼過ぎにおにぎりを食べたけだった。神一も発射できず、いつまでも元気一杯で堅かった。正午になって時計がなると同時に知加子の中にバケツをひっくり返すような暖かいものが噴射され、知加子も神一も精も根も使い果たして、繋がったまま、動けなかった。賞味期限切れのおにぎりを囓ってそのまま又眠ってしまった。子供たちが、げっそり痩せたが、恐ろしく綺麗になった知加子に会ったのは、日曜日の朝だった。知加子と神一は、お腹がすいたので、たっぷりドイツのチーズペーストを塗ったパンを食べ、牛乳がたっぷり入ったカフェオレを飲んだ。その後急に又目がギンギラになった二人は、晩まで寝室で休んだ。やたら、ギシギシと云う音とうなり声が暫く続き、子供たちは、晩に又痩せた知加子と神一と一緒に、晩御飯を俊子の家の食堂で食べた。神一と知加子は、厚いステーキを食べていた。知加子が、月曜日に大学に行った時には、しゃきとしていた。

神一も銀行では、報告を受けると直ぐに判った。一を聞いて十を知るのではなく、百ぐらい判った。神一は、行内の各部署から報告を求め、次々に素早く、神のように判断していた。一族の銀行は、大きな銀行だったが、神一は阿修羅の如く、次々と多くの事を素早く判断していき、一族の銀行では、神の如く、振舞った。あらゆる数字も担当役員よりも詳しく、担当課長が書類を見ながら、報告しても、神一は、その間違いを指摘する程だった。行内のちり箱の数まで知っていると云う噂も立った。そして知加子の国民福祉経済学の理論は更に精緻を極め、ノーベル賞クラスとの声が上がる程になったが、知加子は又妊娠し、神一の精液を堂々に飲んで、頭は冴え、出来ない辛さを振り切るように研究に専念し、益々理論は精緻になった。

色ボケ三人組以外にも当然影響はあった。

正子は、牛乳混合治療を受けた後、突然と若くなり、太朗も突然元気になり、あれも元気になり、正子は太朗の激しい突きを受け、太朗の精液も元気よく出て、正子も久しぶりの絶頂感を味わった。太朗も正子も生き生きして若くなった。快楽に引きずられた二人はその後もハイパワー品を飲み続け、太朗も元気よく正子を突き続け、正子も絶頂感の中で太朗の元気一杯の精液を貰い、生活も充実してきた。もうひ孫も出来た二人なので安心して、太朗は元気よく突き続け、正子も絶頂感を味わうことが出来た。太朗は和美や聖子たちと仕事に取り組み、正子も先物取引を熱心にして、又神懸かり的に、買えば上がり、売れば下がり、取引は急増し、取引単位も増え、オーバーナイトも大きく、それが全て大きな儲けになり、半年で一兆を超える儲けになった。

聖子は、2回も牛乳混合治療を受けたので、信じられないほど若く見え、綾子の娘と云われるようになり、二郎も復活して、ハエを落としたほどの勢いの精液の勢いが戻り、二人は又一緒の寝室で眠るようになり、二郎の突きも復活した。聖子も再び絶頂感を味わい、上機嫌で安いよに出かけ、妖怪と言われながら、みんなを指導して、安いよも快適も積極的な姿勢になっていった。
二郎も紡績で、イギリスからの人工毛織り物を入れた生地を作る事を清太郎と話し、洋太郎にも提案したりとほんやりの二郎には思えない動きもして、紡績の会社の幅も広がってきた。

俊子も真理も有希たちは益々元気になり、それぞれの仕事を積極的になって利益が上がっていった。徹や勝たちの頭は冴え、香奈年寄りハイテク企業は、斬新なアイディアや研究を行って、不死身のような超高齢者たちに引きずられて、高齢者が頑張り、若い人たちがこき使われて、活動が活発になっていった。

ジブトラストは再び、加代子と聡美が信じられないように儲けだし、正子も儲けだし、正子に釣られるように、神子は、先物を同一方向に協調的に動かし、沙織や国内の孫会社も倣ったので、日欧米の先物の利益が増え、先物の世界では、逆らうものもいなくなり、3人の動く方にマーケットが動くようになった。ほぼ半年以上、世界中の儲けをほぼ一人占めして、利益は、信じられない程上がった。為替がそんなに動かないのに、半年で30兆を超える運用利益が出た。

スイスカナコインも、チャが毎日取引するようになり、半年の間に年寄運用チームも引きずられ一気に五千億も儲けた。意気上がる運用チームの年寄りたちを頼って、ホラフキーと云う若い青年が相談に来た。株屋の世界で生きてきた年寄りなので、何を言っているのか判らないが、細菌で金を作ると言っていた。普通の石ころも金に変えると大昔の錬金術のような戯言を言う青年だった。金があったので、山っ気もあった年寄りたちは、面白がって、思い切り広く買った山間部の一角に微生物研究所を作る事を香奈に提案した。香奈も話を聞いて面白がってそれを認め、建設費用と運営費用から運用枠から切り離した。こうしてスイスカナコイン微生物研究所が出来た。たまたまあった古い廃鉱も近くにあった。ホラフキーは細菌屋ではあったが、根っからのほら吹きで、話はでっち上げで、手品のような簡単なトリックで年寄りたちを騙した。研究所建設費用の金を持って逃げるつもりであった。ところが、食わせものの年寄りたちは、ホラフキーに金を渡して研究所を作らすほど甘い事はなく、株を持っていた建設屋に思い切り立派な研究所を作らせた。進退窮まったホラフキーは、仕方なく研究して、計画を給料泥棒に変更する事にした。年寄り株屋の子供たちや孫たちは山師のような株屋を嫌い、カタギの暮らしをしている人が何故か多く、医学部や農学部で細菌の研究をしている人もいた。株屋たちは、お目付として何人かを口説いて、研究所に送くりこんだ。ホラフキーは、廃鉱に逃げ、廃鉱内に、ホラフキー研究室を作り、アダルトビデオを見て遊ぶ事にした。土壌から金を作るといって、大昔に金が取れなくなった廃鉱の土壌から細菌を集める振りをして、あちらこちらからサンプルを採った。それを培養して、後はネットでアダルトビデオを見て遊んでいた。幾つかの新種を発見したが、それをほったらかして、熱意のないホラフキーは、博打にはまった。そして博打で借金をして積み重なって大きくなり、事務所にあった金を持って逃げた。

香奈「スイスコインで、まんまと詐欺のような話に引っかかったらしいよ。細菌で金を作ると言ってきた人の話が面白いからと言って微生物研究所まで作ったのに、研究所の事務所から、金持って逃げたらしいよ。」
「そんな馬鹿な話に乗るのがいけないんだよ。何と云う人なの」
香奈 「ホラフキーと云う人らしいよ。」
「名前通りだったね。でどうするの。」
香奈 「折角作った研究所だし、運用チームの子供や孫の人も働いているから、何か出来る事がないか検討させているんだよ。瑠璃もレアメタルの採掘なんかに微生物を使う方法も聞いた事があるとか云うんだよ。それにしても大した事のない金を持って逃げても仕方ないのに、何を考えているのかね。」
「友貴の使い込みも端金だったよ。そんなものだよ。」

香奈「ジブははや科学を超えた世界になってきたよ。みんな凄く儲けるのよ。正子さんも又信じられないような儲け方をしているのよ。まさか妊娠しているなんて事はないと思うけどね。沙織さんと会長室と新宿も儲けてると思うけど、まだ人間らしい儲け方だね。みんなの取引は、もはや科学の世界を超えているよ。煽られて、神子ちゃんも神之助君も又取引が多いのよ。人間ではないような儲け方をするのよ。今はそんなに為替も動いていなのに、世界の金を根こそぎ取ると言われているよ。」
「そう言う香奈さんも取り引きして儲けているらしいね。もう儲けても仕方ない歳なのよ。」
香奈 「この間の牛乳混合療法以来、頭がすっきりして、はっきりするのよ。運用も面白いように儲かるのよ。ココもやたらと儲けるのよ。」
「確かに私も30才以上若くなった気がするよ。体調も良いし、頭もすっきりしているよ。年を取った気がしないわよ。」
香奈 「徹さんや勝もそういっているわよ。真理さんも元気になったわ。」
「ここの敷地が科学を超えた世界かもしれないね。」
香奈 「そうかもしれないね。」

しかしそれから、ジブの買いや売りだと言うと逆らう者がいなくなり、やがてはもうそんなに儲ける事は出来ず、利益は少しずつ落ちてきた。神子や神代は、この3人の流れを予測して、レポートを出し、株式売買で儲けだした。世界中のジブトラストでも同様だった。それも限度があり、大きな取引はやがて同様の傾向になり、利益も収束していった。損をする事は滅多にないものの、運用する金額も段々低下し、利益も段々低下していった。

為替は、神之助たちが動くように為替が動き、儲かる事は儲かったが、神之助の動かすお金は大きすぎて、大量に投資して、大きく回収する事も出来なくなった。気がつくと神之助は、日本、北米で二つ、ヨーロッパで三つ、アフリカ、シンガポールそしてサンパウロと云う大きな金融センターを率いていた。複数の通貨が各金融センターに貯まっていた。その半分の資産を為替用としていたが、為替用の資産も少しずつしか動かせず、神之助たちの仕掛けは成功するが、少し買っただけで上がり、少し売ると下がるので、もうそんなに儲けられず、細かく売買するものの、利益はそんなに上がらなくなった。商品相場も同様だった。資源や穀物は、アメリカとヨーロッパに大きな実需の会社があり、国内でも治部食品や安いよ食品も抱えており、関係会社も多く、色々な調整も必要だった。それに神之助も流石に為替で動かす資金が大きくなり、付き合いも多くなった。派手な事も出来なくなった。やがてそれなりの利益に収束していった。神之助は利益が下がってきたので、商品相場と為替以外でも儲けられそうな債券チームを作り、検討させていた。神子の調整売買も少しづつしか出来なくなっていった。

この大儲けを見ていた高杉は、ジブシティーを完全ジブトラスト所有にする事を提案した。

ジブシティーは、カミカミと香奈オフィスが所有していた土地に、ジブトラスト不動産グループが、工場用地を斡旋して、シブシティー内の都市計画や建設をするだけで、後はそれぞれのビルは進出する企業に斡旋したり、住宅を分譲する方向で建設が進んでいたが、高杉はこの大儲けしたお金でジブシティーを完全にジブトラストの所有として、ジブシティーの都心部は、ほとんど賃貸として、工場も賃貸契約として、自家発電装置の送電の取り扱いなんかも理由にして、ジブトラストが一括管理する都市にする事を提案し、気が大きくなっていた香奈もそれを認めた。しかしその後工場や研究所を希望する企業は尚も増加していき、ジブトラストの負担するお金は飛躍的に増加していくとは、香奈も考えていなかった。

チャとココに子猫が出来た。

チャやココはあんまり細かい取引には興味がなく、取引は控えめになった。それに歳のくせに庭からこっそり抜けだし夜遊びをする、不良高齢猫になった。ココは歳なのに、お腹が大きくなった。

香奈「ココは、お腹が大きくなったよ。ココは雌だったのね。家から出ないのに、どこで妊娠したのかね。」
「あの二匹、この頃一緒に夜出ていくらしいよ。」、
香奈 「本当なの。朝はいつも部屋にいてるよ。」
「見かけた奴がいるよ。朝早く帰ってくるらしいよ。洋治さんも朝の散歩の時に帰ってくるのをみたらしいよ。いい歳なのにね。」

ココは、又真っ白な猫を3匹産み、チャはそれを見ていた。チャは茶色と白色の子猫を2匹つれて帰り、猫の部屋は七匹の猫がいるようになった。香奈は、朝は水だけでなく、牛乳も用意するようになった。子猫たちは、みんなで牛乳を飲んだ。ココも猫としては高齢だったので、お乳は、出なかった。子猫は牛乳で大きくなり、水もやっぱり飲んだ。それからチャもココも家から出なくなった。庭を子猫を連れて散歩するだけだった。コシロのお墓に、チャとココは子猫たちを連れてお参りした。チャもココも取引は盛んになったが、細かい儲けが多くなった。子猫たちも一緒に新聞やチャートを一緒に見ていた。チャもココも教えてるような素振りだった。この子猫たちは、人嫌い猫嫌いのコシロやチャそしてココと違い、香奈の家のひ孫たちやその子供にも懐き、子供たちと一緒に、教科書まで読むようになった。猫の成長は早く、子猫は小さく、飲む牛乳や水は多かった。

香奈は子猫が一杯いたので、判りやすいように名前をつけた。ココの子猫は、二人いや二匹はメスだったので、ココハナコとココジュン、一匹は男の子だったので、ココタロウとした。チャの子猫は、白い猫をチャタロウと呼び、茶色の猫をリトルチャと名前をつけた。 ココハナコはココに似てハキハキとした勝気な女の子で、ココジュンはおっとりとした女の子だった。ココタロウはココの周りにいつもいる大人しい男の子だった。三匹の子猫は仲良かったが次第にそれぞれの性格が出てきた、ココはココタロウを可愛がった。交通事故で死んだココの旦那猫の面影に、どこか似ていた。ココハナコは、気が強く、ココタロウとじゃれあっていると大人しいココタロウは、苛められているような気がして、ココはココハナコに怒った。ココジュンは我関せずに一人、いや一匹で、のほほんとしていた。チャタロウとリトルチャは、チャの後に隠れているような男の子たちだったが、次第に性格が違い、チャタロウはみんなの子猫たちの気配り、喧嘩の仲裁までするような猫になったが、リトルチャは、やたら存在感のある子猫になり、いるだけで、どこか周囲の雰囲気が違っていた。

正人の息子の正一は日銀にやはり入り、正人と違い、化かし合いやはぐらかしの技も未熟だった事もあり、ドサ回りもしていたが、化かし合いやはぐらかしの技も身に付け、元々そこそこ実力もあり、ようやく東京に戻り、偉いさんになり、敷地内に住むようになった。政則や正人は今や民間企業で働いており、正一は、日銀の資料は、自分の部屋でこっそり読んだ。小猫たちは遊びにきたが、字が読めて経済に詳しい小猫がいると思う人はそんなにいず、正一もそう思った。子猫たちは、日銀資料も読めた。正智は、大学で計量経済学の先生をしていたが、ぱっとしない人だった。色ボケ女の知加子の後押しで漸く助教授になれた。しかし本だけはやたらと集める人で、読みもしない学会誌も崩れるほど積んでいた。知加子の代理のようになり、政府の経済関係の審議会の委員にもなっていた。やはりそんな資料は誤解を招かないように自室でしか読まなかった。正智も子猫が字が読めて経済に詳しいとは思わなかった。子猫たちがにゃーとなくとみせてあげた。子猫たちは正智の資料も読んだ。この二人の部屋にも子猫たちは度々現れ、本や学会誌なども見るようになった。子猫たちのする事なのでそのままにしておいた。子猫たちはきちんと本を読みたくなり、ある時、勝に、にゃーにゃーと本のページをめくってほしいと鳴いた。勝は、邪魔くさいので簡単に、猫の手で簡単に押してページをめくる機械を直ぐに作ってあげた。新聞と学会誌用と本用の2台作った。子猫たちはその機械を猫の部屋において貰い、正一や正智から、にゃと鳴いて、読みたい本や学会誌を借りるようになった。正一も正智も気軽に貸してあげた。子猫たちとチャやココは、一緒に暮らしており、話もした。チャやココの見識や情報は幅広くなった。

香奈「この頃、チャも細かい取引をするんだよ。前はそれなりに儲けがある時しかしないのに、大した儲けがなくても印をつけるんだよ。連絡が増えて大変だよ。為替も変に細かいのよ。ココも細かいさやを良く見つけるよ。感心するよ。」
「もう大儲けは出来ない事が判っているのかね。」
香奈 「そうかもしれないね。子猫たちもそれを横で見てるよ。」
「まさか教えているなんて事はないよね。」
香奈 「そういう気もするね。第一、あの子猫たちは、良く経済の本も読むのよ。コシロも経済学の事は詳しかったけど、やっぱり血筋かね。」
「猫は本を読めないよ。」
香奈 「勝がページをめくる機械を作って、猫の部屋においたら、子猫たちは、みんなで読んでいるよ。時々みんなで、にゃーにゃーと議論しているらしいよ。そんな時にお手伝いさんが、部屋の掃除やお便所の掃除をしようとするとみんなで睨んで早くしろと言うみたいな顔をするらしいよ。」
「生意気な子猫たちね。」

チャは、今まではそれなりの儲けがとれそうな局面で売りとか買いとかという表情をしたり、チャートに印を付けたりして香奈に知らせた。ココも突然上がりそうな株に印をつけ、一点買いが多かった。コシロは若い頃はパソコンの画面を香奈と見たが、チャもココもパソコンの画面を見るのが嫌いだった。チャートや注文を印刷して貰い、香奈に連絡して貰っていた。それが、小さい利益でも注文するようになった。ココの印も複数に印をつけたりするようになった。

子猫たちはパソコンが好き

香奈が来客と治部ホームレストランで御飯を食べて、家に帰ってみると、子猫たちがパソコンの前に座って、パソコンも電源が入って、チャとココがメールと印刷された紙を見ていた。パソコンはネットに繋がっていた。誰が電源を入れたのだろうと思いながら、子猫の横に座った。チャは今日も細かい注文を出した。ココも複数の国内株式に印をつけて、買えと言った。中にはジブトラストとしてかなりの株数を持っている会社もあった。

香奈「ココ、この株は、私たちは買えないのよ。ジブトラストが役員を出している会社なの。今期は成績が抜群に良いと報告があったのよ。発表前だから、上がるけど今は買えないのよ。」

ココは不服そうに、にゃと鳴いた。スイスにチャと確認しながら、注文を伝え、注文をプリントして、チャに渡した。翌日制約のない会社の株は、香奈ファイナンシャルのホーム香奈として買った。ココが残念そうな顔を思い出して、いつもより、多く売り板の3本分も買ってしまった。約定結果を印刷してココに渡すと大事そうにくわえて保管していた。

子猫がパソコンが好きそうなので、猫の部屋にもパソコンを置き、大きなタッチパネル式のキーボードをおいてみた。子猫たちは喜んで、取り合いし、盛んにチャート類を印刷するので、もう二台増やした。ジブトラストの取引ツールで、ジブトラスト関連の運用会社としての制約事項は、ごきげんソフトの手で日々更新されていた。ジブトラストではないが、香奈ファイナンシャルはジブトラストグループの重要な運用会社なので、情報料も利益の中から払い、制約も受けた。当然研究所などの資料や報告や神子や神之助のお告げも読めた。スイスカナコインは、ジブトラストとは別個だったので、情報は、コッソリートの作っていた証券会社から業界状況や色々な相場情報だけだった。社長は香奈なので、制約は受けた。制約の理由は当然読めた。取引画面などの取引ツールはごきげんソフトが提供していた。取引ツールはどんな取引でもできるようになっていた。香奈の家からは一般ネット回線なので、当初は、香奈ファイナンシャルもスイスカナコインも、ホーム香奈だけとして架空の存在となっていた。スイスカナコインも活発になり、香奈の家でもスイスカナコインの総合管理者用のブートメニューが立ち上がるように変更させた。同時に香奈ファイナンシャルもそうしておいた。香奈の指紋認証があれば、自宅のパソコンでは、スイスカナコインや香奈ファイナンシャルではパソコンのスイッチを入れれば総合管理者用に自動的には立ち上がるように、ごきげんソフトに頼んでいた。セキュリティにうるさいごきげんソフトであったが、ご自慢のセキュリティソフトを組み込み、香奈の部屋だけの特別仕様のパソコンとした。それ以外の香奈の家のパソコンはホーム香奈のパソコンになり、ホーム香奈では、複数ログインも香奈の家のパソコンの台数まで認めた。

香奈は、ジブトラストでは神様みたいになんでも特例となった。香奈は、猫たちがパソコンで取引できるとまでは思わなかったが、資料は読めるのではないかとは思っていた。そのため、猫たちも、ホーム香奈名義でパソコンを読めるようにしておいた。香奈自身は、香奈ファイナンシャルでは、この総合管理者用の画面から海外の各香奈ファイナンシャルの取引状況やホーム香奈を含む国内の香奈の資産状況そして香奈オーバーシーズの状況まで把握できるようにしていた。ジブトラストでは各地のジブ子会社、孫会社、金融センター、オーバーシーズそしてジブトラスト関係の運用会社の現在の状況、保有株の状況などが見る事ができた。ほとんどなんでも見る事が出来た。そうなると逆に、ほとんど見なくなった。ジブトラストの本体や直属の会社、子会社、孫会社などの収益を一覧にした、収益一覧表と香奈ファイナンシャルなどの同じく収益一覧表、新しい入った報告などを見るだけだった。

香奈ファイナンシャルでは、ココが稼いでいたが、香奈は、やっぱりココは猫なので、そんなに多くしても損すると、勿体ないので、ココが稼いだお金の一部の1000億を、ココの運用枠の限度として使えるようにしていた。ジブトラストでは、様々な相場をするので、あらゆる相場に取引担当者別の口座を持ち、担当者の総合口座からのお金を、先物、株式、為替、債券に至るまで、ジブ全体の総合口座の範囲内で、担当者にお金を回し、後精算するシステムになっていた。総合口座の範囲内であれば、自由に各相場にアクセスして取引できようになっていた。神太朗の証券会社がメインではあるが、ジブ本体や各子会社毎に出入りの証券屋や為替関係の銀行や為替専門会社にお金を預け、取引する媒体を意識する事になしに、自由に取引できるシステムになっていた。個々の取引口座のお金は、取引担当者の総合口座の範囲と連動して、お金は自由に移動して取引できるようにしていた。運用枠の何倍ものお金を、別にジブが用意していたので、それが可能だった。香奈ファイナンシャルもそのシステムを当然引き継いでいた。ジブトラストでは、運用枠制限があるが、香奈ファイナンシャルの国内は、取引担当者は香奈だけなので、この制限は特例として、システム上は設定せず、口座残はすべて使えた。ココ用の口座としても、まさかココ用とは出来ないので、ホーム香奈と云う口座になり、香奈の複数の口座の一つでしかなかった。香奈の家にはパソコンがやたらとあった。香奈の部屋の置いてあるパソコンは、香奈の指紋認証で、香奈ファイナンシャルとスイスカナコインの総合管理者用がブートメニューにして立ち上がるように設定された。それ以外の猫のパソコンは、指紋認証も当然出来ないので、香奈は猫たちが自由に見れるように、ごきげんソフトに命じて、指紋認証もパスワード設定も外しておいた。ごぎげんソフトはセキュリーティにうるさい会社だったので、パスワード設定程度はしたいと頑張ったが、香奈が全部のパソコンのパスワードなんて覚えられないでしょうと強引に押し切った。そのため、ごきげんソフトは、ホーム香奈の口座やスイスカナコインの猫の部屋から立ち上がる口座は、総合管理者用の口座とは、まったく別の口座になっていた。香奈はココ用におまけして、ココに言われて買った会社の株も、ホーム香奈口座に入れて、その株以外に、ホーム香奈の総合口座は1000億になるようにしておいた。ココは今まで、長期間株を保有する事はなく、上がれば、全て売ってしまう猫だった。買った株は、香奈はココが処理を頼んでいくると思っていたが、香奈は忙しく、それからの事は忘れてしまった。ココは、今度の株には何故か自信があった。倍程度では売らず、三倍になるのをじっと待っていた。その内に子猫たちがパソコンを動かせる事が判って、少しづつ売るように頼んだ事は、香奈は当然知らなかった。
 

スイスカナコインも当然ながらごきげんソフトによってシステム整備されており、猫用の総合口座には、香奈用として、とりあえず2000億相当でスタートしていた。口座残高のニ分の一までが、1日で使える事ができるようになっていた。一種のリスク制限をしていた。

猫用の総合口座全体として、資産が1000億を切れば、取引停止の扱いとなるようにもなっていた。スイスカナコインは、経緯もあって、コッソリートの作った証券会社だけを使ったので、資金の移動なんかもなかった。猫用だった先物や為替も、猫用と香奈が決めた総合口座から、運用チームは、五分の一は譲って貰っていたが、運用が一旦終わると利益が出れば、年寄り運用チームの運用手数料を取り、残りは、猫用の総合口座にもどり、再び口座残高の五分の一が、年寄り運用チームの総合口座に追加される事にしていた。運用中も現在の口座残高を計算して全ての運用資産が2000億を下回れば、すべての取引は精算されるようにしていた。香奈としてはなくなってもいいと覚悟したお金だったが、一応リスク制限もしいていた。年次決算で、利益が出ても、総合口座の期始めは、当初の枠に戻る事にしていたが、ただ株式保有を利益の四分の一までは特例として株式保有を認めたが、株式は調整売買もするので、ごきげんソフトは全体の運用枠を利益の四分の一ずつあげていく事にしていた。つまり、結局、運用の最終利益の四分の一は枠拡大する事にシステム的にはなっていた。香奈への報告は当然ながら猫用のパソコンでも読めた。香奈の家のパソコンは、香奈のパソコンであった。ごきげんソフトには猫の部屋のパソコンを猫用と思う人は当然いなかった。数が多いとは思ったが、どのパソコンを使ってもいいようにしていた。取引分野も増えたので、同時ログインも認めていた。コッソリートの証券会社もジブトラストが本格的に債券を取引しだしたので、債券も始めていた。スイスカナコインは、コッソリートの作った証券会社と同一歩調をとり、年寄り運用チームは、債券まで始めたので、猫用の総合口座からも当然アクセスもできた。

正子と聖子、妊娠

正子と聖子は、信じられない事に、二人とも妊娠が判り、早めに家でのんびりするようになった。神之助も大きく儲ける事も出来ず、細かい取引となり、多くは孫会社に任せて管理し、自分での取引は減った。ジブとカミカミそして香奈も含めた日本の金融センターの資産の通貨別のヘッジとしての為替も神之助の役目となっていた。細かい取引をするので、ジブトラストの管理セクションに為替の専門家を新しく数人雇い、一族の銀行、もう一つの大きな銀行、ジブ上海そして専門の為替業者を複数使い、神之助の為替専門部門を独立させた。各地の金融センターとも連絡を取り、それぞれ数人のスタッフを抱え、同じように細かく取引させる事にした。神之助の為替チームも細かい取引が多くなった。少しでも儲けようと思い、各国の債券も、債券チームに研究させ、一発勝負も検討する事になった。債券を叩き売るのが儲かると為替チームから報告があった。各国の国債の利率は為替とかなり密接な関係があった。神子も、株も先物も細かい取引となり孫会社を指示を出し、管理する事が増えた。研究センターや渋谷で経済予測をする時間が増えた。そのため、孫会社の管理はより細かく、広範囲の取引をする事にはなった。神子も神之助も、個々の取引の利益は少なくなり、結局利益は緩やかに落ちていった。

加代子は急に儲けた次の半年も前半は、同じような高水準の利益を続けていたが、少しづつ利益が落ちだし、途中で加代子が妊娠休暇してから、成績はガクッと落ち、結局五兆円相当になった。ジブカヨコトラストとファイナンシャルは、加代子だけでなく、多くのディラーが集まった巨大な加代子が取引している大きな運用会社となっていた。聡美のように特定の企業に集中的に投資し、過半数も保有する事もなく、広範囲に保有して、売買を繰り返していた。調整売買も増えていた。加代子は、人間とは思われない儲け方が続き、加代子の会社の報酬は、運用比例の利益給がやたらと高かった。それに加代子が妊娠休暇している間に、成績が急に落ちたので、危機感を持ったディラー達は神子や神代のレポートを良く読んだが、より広範囲に研究させるために、自前の調査スタッフも持つ事にした。より儲けられる機会を求めて、株式、先物に追加して債券チームも作り、少しでも報酬の急低下を防ごうとした。

一方、エンジェルホープ病院は、ニューヨークとシカゴに病院を構えていたが、意外な事に寄付も集まり、思ったほど赤字が出ず、要請もあり、南部のフィラデルフィアまでにも病院を作り、全米に3つの病院を持ち、財団は、医療補助を支援をしながらも、ファイナンシャルの利益も高水準だったので、基金は増えていた。大きく儲かったジブカヨコファイナンシャルは、加代子が神三郎の病院建設にごそっと日本に送金すると言って、ごっそり現金を引いた事もあり、やたらと増えた寄付金の大部分を、保有する株式に変更してエンジェルホープ財団に寄付した。アメリカのエンジェルホープ財団でも、カヨコファイナンシャル以外からの寄付も予想外に集まり、病院も建てたのに、基金はむしろ増えていた。そのため、現金よりも配当が見込める株式の寄贈を喜んでいた。カヨコファイナンシャルもごそっと減った現金を補充しておきたいとの希望もあった。色々な思惑が絡んでいたが、結局、アメリカのエンジェルポープ財団としては保有する株式がどっと増え、貰う予定の配当も、増え、財団の運営費に近づいていった。

聡美は、次の4ヶ月間もやたらと儲け、忙しかった。二兆五千億儲け、トラストだけで一兆近く儲けた段階で、妊娠休暇に入った。管理の人に買った3社の株を5倍になったら、売ってねと再度連絡して、先物担当の人たちには、トラストとファイナンシャルから等分に併せて、運用枠を五千億を出し、この範囲でやってねと頼んでいた。半分損した人は取引は止めてね、儲けたら、ファイナンシャルから利益の10%は運用手数料を出すわよと言って妊娠休暇に入った。

妊娠した加代子、知加子そして聡美の3人の色ボケ女たちは、大きなお腹をさすりながら、色ボケ談義をして、旦那のものの舐め方の技術が上手くなり、旦那の精液を飲み、頭は冴え、仕事と旦那とやる事以外しか生き甲斐のない女になっていった。この色ボケトリオもエロ話しかしなかったわけでもなく、知加子は少しは、経済学の事を話して、加代子や聡美も経済学の事が少しは判ってきた。ヨーロッパやアメリカの話を聡美や加代子も少しは話をした。三流私大の文学部卒の聡美も元看護婦の加代子も段々成長し、象牙の塔の住人だった知加子も生の経済を少しは判ってきた。

神元は不本意ながら、組織的な対応をして、安定な収入も目指した。

神元も儲けていたが、二兆儲けた半年が過ぎると、大きく買うとやたら上がり、大きく売るとやたらと下がるようになった。細かい取引が必要になった。為替も少しの金額ぐらいで直ぐに動くようになり、細かい取引する必要が出てきた。それでも少しずつ我慢して取引していたが神元は、儲けられる場合には、全力で取り組み、大きく儲けたい相場師だった。細かい単位の取引になって、儲けるためにも広範囲に取引する必要もあり、流石に一人で出来ず、各地のジブトラストに人も頼み、ジブカミにも少しずつ取引担当者を増やし、管理しながら、債券も含む広範囲な相場で、細かく取引させるようになった。聡美を日本に残してヨーロッパにも行って今後の打ち合わせまでした。それなりに動き出したし、報告も貰い指示も出した。その後一兆儲けた時点で全面的に取引指針を示し、任せてみた。任せると途端に成績が落ちた。イマイチ思うほど儲からない。管理して、危なくなったら、損切りもさせたが、自分たちで勝手に時々小さく損切りもする。成績は伸びなかった。神元は唯我独尊タイプであったので、不安が残った。他の奴らに任せるとジブカミトラストとして利益が落ちると思った。もう赤字を出すと大変だった。他の方法でも少しは収入を得ようと思った。

穀物相場で大きな損を出したフランスの食品会社が出資相手を探していたので、神帥から聞いていたジブカミスイコーポレーションの話を思い出して、神元は、ジブカミトラストとして、少なくとも安定的な収益のある会社を持つ事を考えた。食品会社なら、地道にやっていれば、赤字になる事はあるまいと簡単に考え、資本参加しようと思った。ジブフランスに聞いてみた。この食品会社は、大きな牧場を持ち、乳製品を中心とする大きな総合食品会社ではあるが、スイスの薬品も扱う巨大な会社の子会社でもあった。フランスの子会社と交渉するより、スイスの本社と話した方がいいと言った。ジブスイスに頼んで交渉して貰った。ジブスイスはスイスコインの長老たちとも付き合いもあり、ヨーロッパ域内の情報を集めるのが得意だった。スイスの本社では、利益率の低いヨーロッパ食品部門そのものを一括で購入して欲しいと言われた。流石に高い値段だった。ヨーロッパ全域に広がる食品会社群の全てだった。稼いでいたジブカミの商品相場と為替部門でも、とても足りなかった。神元にとっては、薬品でも食品でも商品相場で稼いでいた事を考えると、どっちにしても低収益だった。食品会社なら、ドイツの食品会社の人も協力してくれると思った。出産休暇中の聡美に話すると、聡美はよくわからず、ジブカミトラストの聡美の運用枠の2倍程度残してくれればいいよと簡単に言った。出産休暇中も聡美のチームは稼いでいたし、買っていた株も売っていた。お金はたっぷりあった。トラストの利益にも絡むので、一応香奈にも了解を取った。香奈は一応ジブカミトラストの儲けを見てみた。二人とも、利益は運用枠の2倍近くあったので、利益を運用枠以上を確保してねと簡単に言った。個々のジブ子会社の運用にはタッチしないのが香奈の流儀だった。神元は、ジブカミトラストの商品相場と為替部門の運用枠相当の利益を残し、それ以外のお金をかき集め、聡美のトラストの先物株式部門からは、もっと多く集めた。聡美は、やたらと儲けていた。配当は、それぞれ比例して、ジブカミトラストの商品相場と為替部門にも多少の利益が入る目途もついた。運営はドイツの食品会社の役員になっていた人に任せ、原料購入する部門をジブカミの商品相場の直属のジブカミコーポレーションを作らせ、原料の輸出入は、快適交易に頼み、ジブカミスイコーポレーションからも応援して貰う事になった。神元は、実業の会社の運営などはは分からないし、いくら食品会社でも赤字になり、配当が入らなくなる事もあると思った。トラストの商品相場と為替部門の今後の利益が不安だったので、それ以降少しは儲けていたトラストの商品相場と為替部門の利益の半分程度を、ファイナンシャルのドイツジブ貴金属やドイツジブ鉱山の出資と置き換えて、トラストからの出資とした。この二つの会社はやたらと儲けて、大きな配当を出していた。ファイナンシャルで利益が出ても、トラストとしての利益に反映されず、ジブの組織としては評価されない。香奈に頼んで、運用枠除外の手続きを取った。香奈は運用枠除外が多すぎるような気もしたが、トラストとしても、利益も出ているし、安定的な収益になりそうな出資なので、認める事にした。 神元は思った。これで、トラストの商品相場と為替部門の報告を丹念にみて、管理をして、少し利益を出せば、赤字になる事はない。神元は大きく儲けられる機会をじっと待ち、その時に大きく儲けようと思っていた。ただ商品相場のチームも、少しは儲けるようになった。為替のチームは、神之助の管理下にあった金融センターと連絡を取りながら、取引した。やがてこれらの為替チームは、貯まっていたジブカミファイナンシャルの保有資産の三分の一程度のお金も経済的な効率を考える為替をするようになった。為替と連動して、債券市場も研究させ債券チームも作り、大きく儲けられそうな機会を待つ事にした。これらのチームへの報酬としては、儲けた利益10%の比例給をファイナンシャルから出し、基本給はファイナンシャルとトラストの比例配分で出した。

神元は相場師だったので、会社の運営なんかは出来なかった。後はみんなに任せた。ヨーロッパのこの食品会社群に、聡美の買った食品会社らも組み込まれ、あの脂肪酸の修飾技術がブラジルの羽朗たちの食品会社や神帥の食品会社にも供与され、世界的な食品会社になっていく事は分からなかった。ジブカミの穀物相場チームが儲けだした事は勿論知っていたが、大きな食品会社を抱え、ジブカミコーポレーションが原料手配をしながら、商品相場で取引している事はそれほど知らなかった。ジブカミコーポレーションはジブカミスイフードコーポレーションと協力して、各地の快適農園の農作物も使用しやすく儲けていたが、神元は、商品相場は商品相場だと思っていた。貴金属の相場も儲けている事は知っていたが、ドイツジブ貴金属が大きくなって、毛利貴金属の指導の元、ヨーロッパの各国に店を出し、貴金属の販売も増えており、その貴金属の購入する時には、毛利貴金属が、関係するジブスイス貴金属やスイスコイン、ジブカミスイ貴金属などと連絡を取りながら購入し、ジブ関係の貴金属先物は、これらの購入計画と連動しているので、儲けているとは、それほど思わなかった。貴金属相場は貴金属相場だと思っていた。神元は相場師だったので、みんなの報告を丹念に見て、一発で大きく儲けられる機会を待つ事にした。神元自身が取引して大儲けする機会は少なかったが、配当も入りだし神元のチームの成績は安定してきて、1年で出資金以上の利益を少し超える程度を維持する事になった。

突然起こった研究所と大学院大学計画

一族の銀行に行った陽一は、神一から、まだ銀行の役員を続けて欲しいとたのまれていたが、銀行の経済研究所から後任の人を見つけ、辞任してしまった。一族の銀行では、神一が神の如く、次々と適切な判断をしていったので、みんな神一の言った事をお告げのように聞くようになった。役員会でも討議なんぞはなく、神一の意見を拝聴する場になった。陽一はわざと神一の意見に反対して、自由な討議をしようとした。わざとらしい演出ではあったが、少しは討議らしきものも出てきた。陽一は神一にもみんなの意見をよく聞くように言った。神一は、トンチンカンな発言をすると明らかに馬鹿にしたような表情を見せたが、それが欠点だと自覚するようになり、自分の想定外ではあるが、何か得るものがあるのかもしれないと思うようになってきた。それを見て、辞任を申し出たのであった。ただ神一は、本当に役員会が討議の場になったとは思っていなかった。陽一のように、自由に意見を言ってくれ、みんなの討議を引き出す人は、貴重だと判っていたので、辞任を受理せずに香奈に頼みに来た。ジブトラストの経済センターを外部に出して、独立の研究所として欲しい。そうして陽一を所長にして、非常勤役員でもいいから役員に残って欲しい。辞任は認めない。と強く言った。その外部の研究所には、一族の銀行としても出資するともいった。神一は、一族の銀行の役員会でも、そんな話を少し、漏らした。聞いていた役員の一人は、ジブと一族の銀行が、外部の経済研究所を介在させて、本格的な提携を深めると思って、喜んだ。陽一をヘッドとして、研究所と言いながら、ジブと提携した、大きな頭脳集団が一族の銀行に出来、ジブの資本も利用できると考えた。ついつい、ぽろっと親しい人に漏らしてしまった。その話は銀行業界に広がり、一族の銀行とジブトラストが外部の研究所を共同で作り、本格的に日本を牛耳ろうとしていると云う噂まで流れた。正人は、もう一つの大きな銀行の依頼を受けて、やってきた。その研究所にはもう一つの大きな銀行からも出資して、役員を出したい、一族の銀行とジブトラストだけの研究所ではなく、もっとオープンな研究所にして欲しいといってきた。もう一つの大きな銀行は、ジブトラストと一族の銀行だけでなく、あっさり言えば、もう一つの大きな銀行も入れて欲しいと言ったようなものだった。経済センターは、ジブトラストの内部資料を保持し、ジブトラストの資産についても当然把握していた。対外的には、極秘である海外子会社の資産などは、ある程度は分かっていた。金融センターは、秘密主義の神之助直轄の組織なので、香奈以外には知りえない事も多かったが、少しは分かっていた。

ジブトラストの金融センターは、多大な資金を持つ組織であり、個々の金融センターは、独立した会社でもあった。ジブの海外子会社は、ジブ以外にも、カミカミの資本も入り、他の海外子会社、それぞれの子会社の責任者などにも、株を持たしている会社だった。独立した時に、香奈はそれぞれの立場の人にも、株を少しとは言え、持つ事ができるようにした。非上場ではあるが、それぞれの子会社の業績や資産は内部の人では、それぞれの立場で、ある程度知りえた。しかし金融センターは、ジブの財布なので、働いている人には、株なんぞは渡さず、報酬だけで対応した。カミカミの資本も一部入っている金融センターもあるが、ほとんどはジブ単独資本であった。しかも、それぞれ独立した組織にしていた。神之助の運用も、極秘に進める事も多かった。神之助は、ジブトラストの副社長とは言え、金融センターや商品相場などは独立したような組織だった。運営やその資産などは、神之助は、神子には簡単に しか言わず、香奈にだけ詳細に報告した。ジブトラストの幹部会議が出来たので、業績や運営方針などは報告したが、現有資産は、各金融センターで円換算でいくらとしか、言わなかった。

神子は、ぼんやりの人でもないので、それなりに察していたが、詳細には、聞かなかった。神子は合理主義の人なので、有能な人は活用したが、人を教えようとか育てる事はしなかった。新宿オフィスは、神太朗がみんなの可能性を引き出して大きくしていった。それを受け継いだ神二郎はそれぞれの自主性を重んじて、結果報告だけを受けていた。極めて自主性の強いグループではあったが、運用会社としては、珍しく、世襲的な雰囲気も強く、連帯意識も強かった。本体の管理セクションは、社長の神子が日業業務をみていたが、会長の香奈が、大きな決定事項が行って、香奈の直轄みたいな組織でもあった。香奈は、元々家族主義的な所もあり、社員は何代も続けて社員になる組織だった。当然連帯感と言うよりもジブ一家みたいな雰囲気だった。神之助の組織は、もっとそれが強く、親分、子分みたいな組織だった。結局、神子のグループは、ジブでは、例外的に人の出入りが比較的多いグループとなっており、外部に漏れる可能性はあった。そのため神子も知らない事は話しようもないので、詳細な事は聞かなかったのだ。どの通貨をどのように配分して、どの金融センターをどのように運用しているか、一つの金融センターが、別の金融センターに運用委託をしていたり、各金融センターと各子会社との資金の出し入れ等が、もっとも重要だった。それに運用委託を受けているオーバーシーズなどの組織についても詳細には報告しなかった。全体としての運用委託を受けている金額と運用成績だけを報告し、詳細な運用実態は依然として、香奈にしか報告しなかった。神子と神之助は、ある種の緊張関係は依然としてあった。神子も運用実態の細かい事は当然側近たちの間で協議して処理していた。幹部会議で何もかも報告するような人でもなかった。二人は、それぞれに独立王国みたいな自分の領域を持ちながら、お互いに不可侵の約束を暗黙の内に認めていた。香奈は神之助とも密かに大きな方針は、協議していたし、神子とも打ち合わせをしていた。正子は、あまりそんな事には立ち入らないようにしていた。知らないと言うよりも香奈に任せると言う意味だった。正子は天才的な先物トレーダーではあったが、ジブ創設以来のメンバーの正子は、香奈の凄さは身にしみて知っていた。正子は香奈と違って、香奈が重視した重工業やエネルギー関係ではなく、サービス部門や消費財関連の企業の援助をする事を進言し、香奈もそれを認めてきたし、時折正子の意見も聞いていた。正子は全体的な香奈の構想力に全面的に任せていた。それに正子はカミカミとして、善作を通して、自分の意見を反映して、投資をしていた。神太朗が証券会社に行き、神子や神之助が自分のグループの運営に力を入れだして、今やカミカミは、善作からの提案に基づき、正子の感覚で投資する正子のファンドみたいな組織に戻っていた。カミカミは、既に大きな配当を出資している会社から貰っていた。正子の血筋からの出資も受け入れていた。金は一杯あった。正子自身の感性に基づく先物取引も、副会長としてのジブでの取引以外にも、偶にはカミカミとしても行うようになった。誰に遠慮も要らず、自分の自己責任で投資できた。正子も今更、利益がドーダコーダとは思わないものの、なぜ多少の利益比例の報酬を貰うとは言え、責任の多い、冶部一族の資産運用を預かる会社であるジブトラストを率いる必要があるかとも思っていた。香奈も、大きな香奈ファイナンシャルを率いていた、それを正人と切人に任せ、ジブトラストの運営にほとんどの精力を使う香奈には敬意を持っていたが、正子が香奈の代わりになる自信もなかったし、その意欲もなかった。結局、ジブ全体の運営やジブ全体の全ては知るのは、依然として香奈だけであった。

ジブの秘密を完全に知るとはいえないものの、ジブの秘密のある程度を知っている研究センターを、簡単に外部には出せなかった。事情を知る神太朗は、香奈に言った。経済センターはそのままにして、別の研究所を作る事にしたらどうかと提案した。経済センターの基礎的な研究や社会学的な研究などは、外部の研究所に移籍させ、新しい人も採用した研究所を作り、大学院大学のような、教育機関を作り、次世代のジブや関連企業の明日を背負う人たちも育成してはどうかと提案した。新しい世代を育成すると云う神太朗の言葉には、香奈は心惹かれた。

取引も低調になっていた時なので、対象を各グループの幹部と主要海外の子会社まで拡大し、今回の突然の大儲けの結果報告を兼ねたお疲れさん連絡会議を緊急に開催した。運用成績や取引内容などは簡単でいいが、研究センターの今後についても相談したいので、研究センターについて思う所があれば、考えてきて欲しいとも付け加えた。

みんな大儲けをした後だったが、取引の単位は小さく、細かくなっていた時だった。今後は多方面の取引をする必要があった。それに債権を研究している所もあった。取引の結果報告は簡単に終わり、今後の取引を考えると、もっと多方面の研究が必要だし、株式に偏重した研究センターではなく、商品、為替、債権そして株式先物以外のデリバティブなど、新しい取引について、研究して欲しいとの声が多かった。商品相場関係からは商品相場の研究は簡単すぎるし、今後は多くの商品相場をする必要がある。もっと充実させて欲しい。為替の人も言った。色々な通貨ペアーもある、債権も絡んでくる。為替では今の研究センターは機能していない。なんだかんだと要望が出た。海外の子会社も言った。各国の経済状況や今後の展望なども欲しい。外部の研究所で基礎的な経済状況を研究してもらえれば、株を保有している企業にも連絡する事ができる。金を稼いだ株屋たちは、太っ腹だった。外部の研究所を作るための費用、大学院大学の費用なんて誰も気にしなかった。陽一は、まだ一族の銀行の役員の辞任も正式には受理されていないので、取引結果報告には、誤解を生まないように出なかったが、研究センターの討議には出た。香奈も研究センターへの不満が多い事に驚いた。もっと今後の取引内容に沿った実務的な研究を、取引に役立つ研究をしてほしいと云う要望はもっともだと思った。そのための研究センターなのだ。オブザーバーとして出席した陽一もそう思った。それに各グループでも独自に研究や調査している所も多かった。本体の研究センターを中心に研究センターネットワークを作り、実務的な取引の研究の拡充や重複せずに効率的な研究センターの充実が必要と痛感した。香奈は、内部に置く経済センターは、取引内容に沿った実務的な研究を行い、各グループの研究や調査などについても重複している部分もあり、効率的な研究を進められるように研究センターがコアとしてまとめ、みんなの役に立つようにネットワークも作って行きたいと言った。基礎的な研究や企業分析などは外部の研究所を作り、そこで分析してもらう。そうすれば株を多く保有している企業にも見せる事ができるし、回りまわって、ジブシラストの儲けにもつながると言った。大学院大学も明日のジブトラストを背負う人を育成する事ができると言って、みんな賛成して、会議は終わり、食事会となった。

ジブトラストの研究センターは神子の研究センターと化していた。それだけに神子の関心のある分野は深く、関心の低い分野は浅くなるなるのは、ある意味当然だった。

香奈は外部の研究所と大学院大学を作る事に決めたので、陽一の一族の銀行からの辞任を認めるように神一に言い、神太朗にも口添えを頼んだ。陽一が非常勤役員になるのは、外部の研究所と大学院大学を作ってからの事だとも言った。神一は非常勤役員なので、そんなに時間も取られない筈なのにと思ったが、一族の銀行では神か天皇かと言われ、完全に掌握していた神一ではあったが、神太朗は、父であり、一時は仕事の上でも上司だった。神太朗の口添えもあり、陽一は晴れて自由の身になった。陽一はこのままジブトラストに復帰する訳にもいかず、外部の研究所と大学院大学建設計画に専念し、忙しいと云う事が名目だったので、少しはそれもしたが、最初にジブトラストの研究センターの充実と研究センターネットワークの確立に時間を割く事になった。陽一はジブトラストでは、パートとかアルバイト扱いにしてもらったが、研究センターのセンター長を、アゴで使う程偉いパートさんになった。それでも大学院大学の構想は、外部にも漏れ、知加子も関心を示し、他の有名な先生も関心を示し、陽一はそんなに運動していないのに、構想だけは広がり、製薬は薬学も作ろうと言い出すし、遺伝子研究センターは遺伝子工学や農学も必要と言い出し、勝はロボットや機械も必要とか言いし、未来エネルギーシステムも近くの研究所があればとか言い出した。元々未来エネルギーシステムには、資源やエネルギーの偉い先生がゴロゴロしていたので、資源エネルギーの講座なら、簡単だよと徹までいった。恵まで、社会福祉に役立つ心理学の講座を作って欲しいと言い出して、構想は勝手に広がっていった。


香奈 「そんな総合的な大学なんて作る積もりはないわよ。ジブが新しく作るのは経済研究所だよ。その先生が教えられる範囲で、大学院大学を作り、明日のジブトラストを支える人を育成するだけだよ。今はジブシティ-も作っているのよ。」
「でも財団の今後には必要なんだよ。保育士さんや看護師さんの学校は作ったけど、社会福祉全体を調整できる人とか心理学の知識を持ってケアできる人とかが必要になってくるんだよ。折角、千恵美の学校で、社会福祉学部も作らせたのに、自由にやらせたら、スボーツばっかり有名になり、ちゃんとした研究が今一つなんだよ。今度は、心理ケアーも研究する、しっかりとした研究所を近くに作りたいんだよ。徹さんや勝さんの会社には偉い先生がゴロゴロしているよ。世の中は取引や経済だけで動いているわけではないわよ。新しい技術も必要だし、心理的なケアも財団の今後には必要なんだよ。ジブトラストは、一杯お金を儲けたと言っていたじゃない。これを作りなさいと言う事だったと思うよ。スイスカナコインだって微生物研究所まで作ったじゃない、まあ動機は不純だったけどね、お金は使えばなくなるけどね、知識は使えば増えるのよ。この敷地の近くに大きな研究所と大学院大学を作ろうよ。結局回りまわって、ジブトラストの役にも立つよ。」
香奈 「徹さんや勝の所には偉い先生は一杯いてるよ。でもみんな歳だし、ここからそんなに離れられないのよ。そんな都合のいい土地が手に入るかね。ジブの不動産チームが冶部東京にも相談して探しているけどね。」

ところが、香奈の予想とは違い、あっさり広大な土地が香奈ハイテクの工場や研究所ビルに隣接する広大な土地が手に入った。冶部東京不動産には、俊子がジブの里の近接する場所でいい物件がでれば、買っておくようにとの指示が以前からあり、冶部東京はいつも調査していた。たまたま広大な工場が閉鎖される事を聞き、早速交渉してあっさり入手する事が出来た。冶部東京はそれ以外にも色々とジブの里近くの土地を調査していた。俊子は増えていく子供たちの住まいを今後確保しようと思っていた。ジブの里の近くには大きな、それほど高くない山が連なった山脈があった。ジブの里にはふもとの山林が隣接していた。そこなら開発費用も少ないと思い、調べるとなんと香奈オフィスがこの大きな山脈をそっくり入手していた事も判った。それにその山脈の北の端では、レアメタルの鉱山まで持っていた。敷地内とこの山を挟んで、10キロ程離れた所にはポロい電車が走っている私鉄が駅も持っていた。冶部の里との間は山なので、その駅周辺は冶部東京は考えなかったが、山の端の山林に道路を作れば、ジブの里とは近い事も判ったので、色々調査を開始した。ポツポツと交渉も始めていた。折角入手した広大な土地を持つ工場であったが、ジブの不動産チームは、ジブの里に隣接していた土地なら、どんなに高くても買うと言ったので、早速転売する事にして、この転売益で、新しい土地を買おうとセコイ考えを持っていた。

そんな時に、この私鉄が大きな事故を起こした。運転士がネットゲームしながら、運転して脱線事故を起こしたものだった。死者は出なかったものの、多くの負傷者が出た。理由がわかるにつれて、内部管理がなっていないと非難され、運転免許取り上げまで噂された。その上賠償問題があった。元々、関東エリアでは、鉄道はそんなに並行して路線をもたない事が多いが、この私鉄は路線が短い上に、並行する他の私鉄やJRもあった。何故か沿線にやたらと土地は持っているが、有効利用もせずに、都心のデパートやビルの家賃のかすりを取っていた。何もこの私鉄を使わなくても、ちょっと歩けば、他の私鉄やJRを使用する事ができた。営業輸送人員は激減した。いくらかすりを取っても赤字はなると思われ、株価も当然、急降下していった。1週間たつと、元の3割程度まで落ちていった。神子は下値では、買い捲った。神子は、この私鉄が復活するとなぜか確信があった。以前の高値の倍にもなると思った。神子は株屋なので、倍になればドーンと売って、株価を冷やし、又下値で買うとかいった事もやった。そうしているうちにこの私鉄の保有株が増えていった。一応保有株報告書を出すので、なぜジブがこんな私鉄を買うのだろうと噂された。デパートやビルの含み資産があるので、それを狙っているのではないかとの憶測も出て、提灯買もあり、下がりにくくなった。神子は平均購入価格も安かったので、時々ドーンと売って、利益も確定して、冷やしにかかったが、下がってくると又買うので、更に保有株が増えてきた。

元々、この私鉄は狙われやすい会社だった、営業成績は、パッとしないので、株価は安く、その割に含み資産があり、株の保有も分散化している会社だった。何代か前の社長が株屋で、思わず買い占めて、売るつもりが売れず、社長になったような会社だった。やたらと沿線の土地や都心にも不動産を買っていた、都心ではデパートや商業ビルが、それなりに儲かったが、肝心の鉄道事業はほったらかしの会社だった。そのおっさんは、鉄道事業などはよく判らず、安いと思われた土地は、山も谷も買っていた。都心の不動産を除けば、含み資産などは、売ったら二束三文で、大した額ではないとか云う人やジブは元々、利益率が上がってきた「安いよスーパー」も系列だし、ジブトラスト自身も大量の不動産を都心に持っている、こんな山とか谷とかの土地が欲しい訳でもないだろうと解説記事も出た。

神子も売ったり、買ったりの繰り返しだった事もあり、やはり営業成績が良くないと云う当たり前の事実が重くのしかかり、神子の予測とは異なり、株価もそんなには上がらなかった。神子は、売ったり、買ったりして、程ほどの利益も得たし、平均購入価格よりまだ株価はそれなりに高かったので、売って処分しようかとも思ったが、そうなるとドーンと下がりそうな気もして、初めの神子の予測を信じて保有する事にした。しかしだらだらとした状態は尚も続き、時々大きく下がったので、その時は買い続け、少しづつ保有株も増えてきた。

一方、冶部東京の買収交渉に応じる人が増えてきた。向こうから買ってくれと言う人まで現れた。冶部東京もジブの里近くの土地なら、買っていった。冶部東京不動産は結局、駅周辺から定規で測ったようには買えないものの、この駅から山を挟んで多くの土地を買収する事が出来た。

敷地内と隣接するような山脈は、元々大同機械の創業者一族が持っていた。北の山の端にはご先祖様が作ったお城の城跡まであり、少し平らな盆地まであった。ただ山の中なので、荒れ果てていた。カミカミのアフリカの機械会社が、日本で販売し、窮地に陥った時に言葉巧みにこの山脈を売らないかと言ってきた人がいた。山なのでそんなに高くかえないけど、持っていても仕方ないでしょうとか言ってきた。提示された値段もそれこれ二束三文だったが、何しろ広大な山脈なので、総額では相当の金になった。仕方なしにこの山脈を売って大同機械の配当を出せるように、その金を大同機械に増資した。神太朗が売り圧力を強め、株価も上がらず、成績も悪かったが、油断して株価を下げると神太朗が突然に買いに転じ、買い占められる恐れもあった。この山脈を買ったのは、瑠璃鉱業と云う会社だった。あまりに安いので、城跡を含む盆地部分は腹が立ち、売らなかった。瑠璃鉱業も欲しいとは言わなかった。瑠璃は気まぐれで城跡を見に行き、転がっていた石を持って帰り、成分分析をした。あるレアメタルがそこそこあった。
本格的に調査しようと思い、自分の個人会社を使って、そんな事はおくびにも出さず、買い叩いて買っていた。金は香奈オフィスから借りた。お城近くの山を調べると、そのレアメタルは本当にあった。瑠璃はそこら中を堀り、採掘費用が少ない所、地表近くに集中的にある部分に鉱山を作った。鉱山と云っても露天掘りに近いものだった。採掘費用も安かった。そのレアメタルは電子機器に需要があった。突然と高くなり、瑠璃は一気に多量に掘りつくし、そこそこの値段で香奈オフィスに売り、香奈オフィスは高い値段で売り、瑠璃鉱業も香奈オフィスもやたらと儲けた。あまり価格が高いので、代替品の開発とか、使用量を抑える方法とかが開発され、値段は一気に下がった。瑠璃鉱業の鉱山からのレアメタルの純度も落ちてきた。精錬というか、純度を高める費用が飛躍的に増えていった。とりあえず鉱山を掘るのは止めて、様子を見る事にした。瑠璃は、なんとかいう動物と同じでしゃぶり尽くすと次の獲物を探す習性があった。鉱山もそれこそ掘ったらかしにした。瑠璃が大儲けした事は、悪事千里を走り、大同機械もその事は知った。大同機械はその後、アフリカカミカミの傘下に入り、その時の悔しさを神太朗にぼやいた。城跡からの風景も穴ぼこだらけになり、その小さい盆地も更に荒れ果てた。住んでいる人もいなくなり、地価はただ当然のように下がった。その後、香奈オフィスに組んで、旧大同機械がまだ持っている山の資源調査をする計画を、神太朗が立てた。ボッタクリの香奈オフィスと手を組むのは気に入らないと、旧大同機械側は、ゴネたので、神太朗は、ジブの里にも近いので、その盆地部分は、下がった価格ではなく、以前の通常の価格で、城跡を含む広大な盆地をカミカミとして買ってあげた。まだ、カミカミは、まだ神太郎が仕切っていて、やたらと儲けていた時なので、神子も神之助どころか正子も知らない事だった。神太朗は新宿の不動産チームにその手続きをさせ、ちゃんと経費もカミカミが負担した。城跡は、大同機械の創業者一族のご先祖様の作ったものなので、公園として保存する事まで約束していた。

瑠璃は、この山脈を今度は香奈オフィスにまだまだレアメタルは取れると理由をつけ、通常の市価、つまり瑠璃が買った値段の3倍で売却してさやを抜いた。瑠璃としては、相手が香奈オフィスだったので、おまけした値段だった。元々市価で売るのは正しい選択でもあった。瑠璃は香奈オフィスの社長でもあった。譲渡だの、財産隠しだのと言われる可能性もあった。それに、この山脈には、一つの鉱山があった以上、あのレアメタルが埋蔵している可能性も高いと思い、奈津美も黙って買う事を承諾した。単に、二束三文で買った瑠璃鉱業が、ズル賢かっただけであった。香奈オフィスの土地になったので、奈津美はこの山脈一帯の調査を資源探査ロボットにやらせた。本当にこの山脈全体に、このレアメタルはあった。多くはそんなに純度は高いとは言えなかった。数箇所、ジブの里近くの山の山頂付近、直ぐ隣の山など、いくつか、かなり高い所もあった。そのレアメタルの価格も下がり、奈津美は他の仕事も一杯抱えていた。奈津美は又このレアメタルの価格が上がったら、採掘を検討しようと思っていた。報告書を瑠璃に渡して他の仕事に専念した。瑠璃はいい歳なので、海外には行かなかったし、敷地内にいて、奈津美の報告を受ける事が多かった。要するに暇だった。瑠璃は報告書をよく読んだ。まさしく、意外な報告書だった、しゃぶり尽くした骨と思ったのに、思いがけず肉がついていたのを知らずに、捨てたような気になった。香奈オフィス名義になっても、香奈オフィスの瑠璃の報酬は利益比例だったので、更に調査する事にした。まず一番、行きやすい、ジブの里に近い山を調べる事にした。瑠璃もこの敷地から離れると疲れやすい歳であった。奈津美からの報告書を見ながら、瑠璃は直接指導して、その周辺をあっちこっちとボーリング調査させていった。瑠璃は、掘った後始末する気もなく、やたらと掘った。山は、穴ぼこだらけにはなったが、面白い事が判った。地面より段々深くなると、どんどん純度が高くなっていた。頂上付近を10メートル近く掘ると、ほとんど純品といってもいいほどだった。さすがロボットにも深い所は、良く判らなかった。山の端から麓一帯には山林があった。その山林を切り開いていった、そして採掘場まで道をつくる工事も計画していた。最後にジブの里の美術館の外周の道路に通じる計画だった。ところが、突然そのレアメタルの価格が上がりそうになった。何でも新しい電子機器の開発には必須とか言われ出した。携帯を超える携帯との前評判だった。瑠璃は採掘を急ぎ、道路の完成をまってはいられらなかった。コンベアみたいなもので山の麓まで、掘ったレアメタルを移動して、元々山林だった所に、木を切り倒して、山積にして、それをトラックで、処理場に運んでいた。面白いように儲かった。

香奈オフィスの採掘には、ほとんど人手を使わない、ロボット主体の採掘だった。元々ロボットは瑠璃の注文で作られたのが発端なので、採掘用のロボットは進化していた。穴ボコだらけのハゲ山そしてボタ山みたいなレアメタルの山は、見苦しい限りだった。山の中ではいざ知らず、そこは、ジブの里から丸見えだった。時には雨も降った。ボタ山みたいなレアメタルも雨にあたり、レアメタルのボタ山からポトポトと汁みたいなものを落ちて、更に見苦しい風景だった。冶部の里は、暇で元気な高齢者や超高齢者がいて、みんなでそれを見ていた。とうとう香奈は、瑠璃を呼び、ちゃんと道路ができるまで待ちなさい。道路も自然と調和したものにしなさいと命令した。香奈は依然として香奈オフィスの会長だった。ボタ山みたいなレアメタルも処理場に全部運びこませた。コンベアみたいものも撤去させ、穴ボコだらけの山も植林させる事にした。辺りの山林だった所もちゃんと整地させた。一挙にジブの里には、広大な空き地ができた。一方、奈津美も大した女だった。鉱山も整備に時間がかかっているとか言って、香奈オフィスの世界的シェアの高い、このレアメタルの出荷を制限して、値段を高値安定させていた。

ジブの里には、広い空き地ができたが、しかしうまくいかないもので、その頃には、ジブシティーもそろそろ建築も一段落していたし、研究センターもほとんど基礎建設工事は終わりかけていた。しかしこれに目を付けたのは、牛乳好きな聖子だった。乳牛の牧場としては、美術館前の牧場は小さすぎた。そこで搾乳場や食品加工場などを、ここに移転する事にした。以前の牧場は肉牛専門とした。エンジェルスターやパワースターもやっばり植えた。これは、分岐状の水やリング状の水とか云った問題だけではなく、乳牛の大好物だったからでもあった。聖子は、押しが強く、瑠璃は、あっさり同意した。瑠璃は、同類のような人には、弱いハゲタカでもあった。この空き地対策には俊子も興味をもっていた。増えていく子供対策のために、マンション建設を考えた。陽太のためのマンションみたいな大きな家の建設に夢中になっていた神子ではなく、神之助にマンション建設を頼んだ。これがまずかった。何をするか判らない神之助であった。しかも神之助には金があった。そして強烈に大きく、豪華な高層マンションをなんと2棟も建て、一挙に150戸以上もあるマンションが出来た。このマンションは、各部屋は広かった。4LDKが普通サイズで5LDKやそれ以上の部屋もあった。冶部の里には、子供が多かったので、部屋は普通よりも多かった。その上、大きくなった子供用の部屋として、一つの部屋が大きい1LDKサイズの部屋も相当作っていた。それはホテルのジュニアスイートみたいな部屋だったが、ホテルのジュニアスイートとは違い、子供たちに万一の事故のないように、1階や2階の低層階に作り、しかも子供たちがみんな仲良くするように、そんな部屋を集めていた。そんな部屋は、部屋数に含んでいなかった。勝手に音楽ホールやそれに接続するように神香用の家まで建てた。神香がコンサートをしやすいように考えた。この家も強烈に大きい家で五階建ての50室もある家だった。神子が建てようとしていた家に対抗した。しかも山を背景に広大な庭があった。神之助はケチくさい事が嫌いだったので、この山林の跡地を全部売ってくれと瑠璃にいったが、もはや香奈オフィスの所有地だったし、香奈に説明するのも面倒と思って、香奈がうるさいとか言って、借地契約とした。神之助も香奈だけには頭が上がらなかったので、従った。

「神子ちゃんも漸く、大きな家を建てようと姫子ちゃんと相談しているわ。ジブシティーの建設も落ち着いたからね。でも神之助君も大きな建物を建てているわよ。あそこは、全部広い牧場になると思ったのに。」
香奈 「あれは俊子さんが、子供たち用の家がいると言って、神之助君に頼んだらしい。牧場だけでは勿体ないと言って、俊子さんが聖子ちゃんに言ったのよ。聖子ちゃんも案外俊子さんに弱いのよ。一応香奈オフィスの土地らしい。瑠璃も貸したよと言っていた。」
「それでも大きいわよ、何棟もあるわよ。そんなに人はいないよ。」
香奈 「まあ神之助君はチマチマ建てるより、大きい建物を建てれば、一回で済むと思っていると思っているんじゃないの。」
「私の家も子供が一杯いるから、助かるけどね。」

ジブトラストが冶部東京不動産を通して買った土地は元々、広大な工場だったので、それを取り壊して、造成工事が開始された。研究所の規模や大学院大学の規模は未定だったが、研究所の計画が決まるのを待たず、造成工事を行った。何しろ広くなったジブの里にそのまま隣接し、山脈まで続く広大な土地だった。陽一は、ジブ総合研究所及びジブ大学院大学基本構想委員会を計画し、その委員を選定する準備委員会まで更に作った。基本構想委員会は、未来のジブトラストの骨格を作る研究所と大学院なので、自由な視野で基本構想を練ってもらうと云う触れ込みだった。更に準備委員会は、その委員を選ぶ委員会だった。更にその準備委員会の委員を選ぶ委員会まで作ろうとしていたが、香奈に言われた。やめなよ、いつまで経ってもできないよ。陽一は研究センターの再編成とネットワーク作りに苦戦していた。株屋くずれの研究員は頑固だった。そのための時間稼ぎであった。実は陽一は、その作業は徹の未来エネルギーシステムにいた、なんとか大学の学長まで勤めた、夢野見蔵にとっくに、丸投げしていた。文部科学省に人脈もあり、学会にも顔が利いたとの理由だった。夢野見蔵は高齢だったが、新しいエネルギー技術には夢があり、本格的、最新式の研究所を作りたいと思っていた。そして夢野は、準備委員会に子分を選び、基本構想委員会のメンバーまで告げていた。別になんとか委員会などもなくても結論は決まっていたようなものだった。陽一は、ジブトラストの研究センターを取引に即した研究センターの再構築に専念するための時間が欲しかっただけであった。金儲けにつながる実務を構築するために、各グループとも調整し、必要な人を調整したり、各グループに蓄積されたノウハウなどをデータベースにしたりと大忙しだった。陽一は、ジブに長く、アカディミックな事よりも金儲けに繋がる研究に惹かれていた。夢野見蔵も初めは経済研究所の積もりだった事も知っていたし、ジブトラストが運用会社である事も知っていたので、経済関係については、もはや経済学の有名人だった知加子に、見栄えのいい学者を揃えるように頼み、知加子が知り合いに連絡を取り、人選をしていた。なんやかやといいながら、ジブトラストは、金儲けに繋がる事を優先する事は、知加子は肌で感じていたので、実務的な企業分析の専門家なども集める事にしていた。夢野見蔵は資源エネルギーの大家であったので、資源エネルギー関係の最新研究所の構想に没頭し、ロボットについてはロボット工学にいたおっさんに頼み、遺伝子工学については、遺伝子研究センターに頼み、うるさそうな恵の言っていた心理学は、知り合いの社会福祉や介護に詳しい財団の協力者に頼んでいた事は、陽一も知らなかった。いわばジブトラストに近い人たちが自分の理想に基づく、個々の研究所を作ろうとしていたようなものだった。それにジブには金があったし、金儲けには夢中になるが、判らない事には金だけ出す癖はあった。基本構想委員会の結論なんぞ出ずとも、建設計画も進み、研究所と大学院大学設立計画は、着々と進んでいたのが実情であった。

結局、総合研究所と総合的な大学院大学が、金に糸目をつけないジブと自分の理想に基づく研究所を作りたいと思う人たちによって、考えられる最新式、理想的な研究所を、金に糸目をつけず、建築されていった。ジブ総合研究所及びジブ大学院大学基本構想委員会の答申は、簡単にまとまった。みんな自分の夢を寄せ集め、実際に建設していたものに理屈をつけるためだけの答申だった。経済学研究所は二つに分かれ、基礎研究所と企業分析研究所の二つの研究所が出来た。経済学研究所は、ジブトラストが本当に計画していた研究所なので、そこには、一族の銀行やもう一つの銀行からもほんの少し資本を入れ、ジブ総合研究所の一部門ではあるが、独立したような研究所であった。経済学研究所と企業分析研究所の所長には陽一がなり、基礎研究所の所長には知加子がなった。その他の研究所は、ジブ総合研究所が大きな持株会社みたいな組織として、個々の研究所が子会社のような研究所となった。ジブ総合研究所は、赤字になって運営出来なくならないように、ジブが運営基金までドーンと出資する事になった。ジブ総合研究所とエネルギー研究所の所長には夢野がなった。それぞれの研究所には、自分の理想に基づいた研究所を作った人が当然なった。ジブトラストは、発足当時に作った遺伝子研究センターと違って、研究所といっても株式会社組織にして、ジブの完全子会社とした。今のジブはやたらと金を儲けていた。儲けなどは期待できないとは、知っていたが、子会社のジブ総合研究所の損失は、ジブ本体の税金を安くできる可能性もあった。そんな事を考えている税理士もいた。大学院大学も困らないように、大きな基金を積んだ。ジブトラストでは、莫大な金を支出する事になった。夢野見蔵は、香奈がこんなに高いのと吃驚すると思ったが、香奈はこんなもので済んだのと言ったので、吃驚した。

香奈 「ジブの里の北側に作っているよ。ジブ総合研究所及びジブ大学院大学基本構想委員会の答申に沿って建築されているよ。結局総合研究所と大学院になってしまったよ。高くついたよ。思い切り、最新式の研究所にするんだよ。まあチマチマ作るよりはましかもしれないね。徹さんや勝まで熱心になって、ロボット工学研究所とエネルギー研究所は、自分達の第二研究所と思っているよ。心理学や社会福祉関係の研究所や講座まであるんだよ。みんなこっそり研究室を作るんだよ。遺伝子研究センターまで第二研究センターを作るような気になってるよ、遺伝工学だけでなく、植物遺伝子研究室、食品科学研究室なんぞもあるし、製薬も生命科学研究室とか薬理研究室をこっそり入れているんだよ。陽一さんが手抜きして、みんなに丸投げしているのよ。経済学研究所は知加子さんが作ったようなものだよ。経済学基礎研究所以外に企業分析研究所まであるよ。知加子さんも理論経済学者と思ったけど、実務の人にも知り合いがあるのね。電気は未来エネルギーシステムが新型の発電所を用意するらしい。ごきげんソフトもコンビューター網を準備しているよ。でも水は今回は外から引かないと無理だろうね。その工事もしているよ。」
「そうだろうね。そんなに湧いてくる事はないわよ。でもよかったわ。財団も自分の研究所を作るみたいに張り切っているわよ。財団も助かるわ。」

突然の陽太の辞任表明

そんな建築工事が続いていた時に、突然と陽太が総理大臣を辞任し、議員もやめたいと言い出して大騒ぎになった。優花も一緒に辞める、財務大臣の竹花まで一緒に辞めると発表した。経済もそこそこ、特に問題もなかった。なんだかんだと難しかった無料診察制度や無料検診制度も定着していた。これを止めれば、一挙に財政健全化が達成できると言う根強い批判は続いていたが、一時は増えていた赤字国債も徐々にではあるが、減ってきて、そんなに問題でもなかった。それに陽太もまだ若い、陽太のなにかスキャンダルが発覚しそうになったのか、隠し子でも出てきたのか、覚せい剤でも吸っていたのか、汚職でもあったかと声が出て、記者会見が開かれた。陽太は言った。「私ができる事はやった。後は新しい人たちが、進めていくべきだと思った。10年も総理大臣が同じ人では水が澱むと思う。私は今後は自由な立場で、不動財団でつぶれた人や企業を再生するお手伝いをしていきたい。不動財団の理事長にならないかとお誘いをうけている」、優花も私もそれを手伝いたいといった。何も知らされていなかったごきげん党は大騒ぎになり、緊急議員総会を開いて、陽太の辞職を阻止する決議をした。国会でも、陽太の辞職理由に不自然さがあると集中審議が開かれる事になった。ごきげん党以外の政党は、陽太を丸裸にして、ごきげん党そのものを粉砕できるチャンスと考えたし、ごきげん党は、陽太に辞任を撤回してもらうチャンスと思った。全会一致で集中審議が決まった。不動財団はごく一部の人には知られた財団だったが、一般的には無名だった。不動財団ってなに?何をしている財団なのと云う話がでた。物知り顔のおっさんが昨日調べたくせに、詳しい振りをして、テレビで、フリップまで作って、創設した年、活動の内容、今までの実績などを説明した。

神子の予測では、これでごきげん党は解党してバラバラになり、議員はチリヂリになって、他の政党に入り込み、やがては無料診察制度もなんだかんだともっともらしい理由をつけて、縮小されて、廃止される事になっていた。総理が辞めると言えば、もう実質的には辞めたのも同じだった。ごきげん党みたいな政党は、陽太が辞めれば、求心力を失い、バラバラになるのは確実だと思った。陽太が辞めて、無料診察制度が廃止されれば、ジブトラストは、気兼ねなく節税対策ができた。運用会社が、わざわざ税率の高い国に利益を集める事はない。神子は敷地内で用意した大きなマンションのような家の設計に姫子の麻田エンジニアリングを呼んで、うれしそうに取り組んでいた。

陽太の辞職理由追求のための国会の集中審議が開かれる事になった。驚くことに陽太やめるなと云うデモまであった。総理大臣を無理やり辞めさせる事は難しいが、一旦辞めると言った総理は、もはや羽根も手足を取られた鳥みたいなものだった。元々無茶な無料診察制度も縮小され、やがて廃止されるだろうと云う観測記事もでた。そしてその集中審議が始まった。なんと視聴率がトップになった。ごきげん党の議員まで野党のような質問をした。外交日程はどうするのか?、内閣総辞職をするどんな理由があるのか?、何か隠していないの?、などなど厳しく追及された。陽太は、今、不動財団が手がけている事は大切な事だ、再チャレンジできる社会を作るのは必要な事だと思う。公的な制度で支援しているが、正直、資金も体制も人員も不足しているし、十分な対応は出来ていない、財政的なサポートが不足している事は明白だ。財政的には、又赤字国債を増発し、財政赤字を増やするのも無理だ。言葉を繕って、この問題に真剣に取り組んでいると言う事は出来ない。どうしても行政の力では、限界があると思う。民間として、自由な立場で何ができるか試してみたい。不動財団は活動しているが、総括的な責任者を探して、本格的な活動をしたいと言っているので、力を貸していきたいと思うと答弁した。無料診察制度程度でガタガタいっている今の状態では、再チャレンジ社会など言っても、所詮、美辞麗句のスローガンにすぎない今の現状を揶揄しているような言い方だった。野党も与党もこれには反発した。行政では出来ない事を民間で出来ると云う発想がおかしい。たしかに不動財団は基金も豊富だが、所詮民間団体に過ぎない、再チャレンジ社会の構想はわかるが、なぜそれを法案化しない。国会で審議して、それに対する意見の相違があり、国民の判断を求めるのが、民主主義ではないのか、公的制度の確立と充実が基本であるべきだ、行政ではできないと総理大臣が言うべき言葉ではない。資産家の息子として、のんびり暮らして、片手間に民間団体で時間をつぶすだけではないのか。優花のレストランも高級レストランチェーンとして大きくなっている、ゆったりと暮したいだけではないのかとまで言われた。陽太もそれに答えられず、再チャレンジできる社会を目指して、公的制度の見直しとその財政基盤をまとめた計画を作り、早急に法案化してみなさんのご審議をうけたいと答弁した。一応それまで辞職を撤回する事になった。

陽太の議員としての任期は後2年あり、そんなに早く辞める事はできなくなった。それでも不動財団の認知度は一挙に高まった。

「神子ちゃんの例の大きな家の建設は中断したらしいね、もう少し先になるといっていたよ。予測がずれたとぼやいていたわ。」、
香奈 「ジブとしても陽太が総理大臣を続けていると大変なんだよ。今は税金払うために、わざわざ日本に送金させているのよ。今のジブでは日本に送金させる必要はもうないのよ。現地で保留していた方が税金も安いのよ、中国くらいなの、現地で保留しているのは、中国は、約束があってね。中国国内に保留している時は人民元でいいと言う約束をしたのよ。今は人民元への為替はなかなか難しいのよ。それでもむりやりある程度は日本に送金しているだよ。ジブが払う税金は大変なんだよ。まあ少しは対策も取っているけどね。神子ちゃんはこれで、払う税金が大分少なくなる方法を色々と計画していたんだよ。」
「もうそんなにお金を貯めても仕方ないよ。再チャレンジできる社会を目指すのはいい事だよ、国会でも法案がでれば、各党は真剣に審議すると約束したのよ。不動財団でどんなに活動しても、やっぱり一部の人だけを支援していると思うよ。国として公的な制度を整備して、再チャレンジできる社会をつくるのが基本と思うよ。公的制度の整備や確立が先だという意見は正しいと私は思うよ。」
香奈 「それはそうだろうね。青不動さんは陽太もなかなかやるなと言っていたよ。神二郎君も不動財団には寄付も集まってきたと言っていたよ。不動財団や不動総合で働きたいと云う人も増えたらしい。弁護士だけでなく、心理学や経済学なんかに詳しい人も手伝ってくれるようになったらしい。不動総合の人は受け付けるのに忙しいとぼやいているらしい。でもこれで不動財団のスタッフは充実していけると神二郎君は喜んでいるよ。」
「辞任劇は、陽太君の芝居かね。」
香奈 「辞めるのは、本当に辞めるらしいけど、みんなに再チャレンジ社会の意味を考えてもらう事は大切だと思っている事は確かだろうね。それはやっぱり陽太君も政治家になったという事だろうね。」
「陽太君と神二郎君はそんなに仲が良かったかね。」
香奈 「そんな事はないと思うわ。陽太君は本当に再チャレンジ社会が大切だと思っているみたいだよ、何回か不動財団に行っていたみたいだし、ヤル気もなくした人を励まして、勇気づけて立て直すのは、民間でしか出来ないと思っているみたいなのよ。」
「それでも総理大臣が自ら、公的制度では出来ないと言うのはおかしいよ。民間の協力を求めるのはいい事だよ。でも基本は、公的な制度と社会的な認知度の徹底だよ。それをするのが総理大臣の役割だよ、陽太君の役割だと私は思うよ。」
香奈 「恵は民間団体の代表なのに、陽太君に厳しいね。陽太君は今後は経済や外交に精通した人が次期総理大臣になるのが、日本のためになると思っているじゃないの。成長と福祉は社会の両輪だよ。陽太君は、福祉の充実が国家の基本だと言って、福祉は充実させたけど、今度は経済に精通した、違う考えの人に替わり、日本経済も成長して、その両輪が相互に大きくなっていくのが、日本にとってはいいと思っているのじゃないの。日本の成長率は確かに少し低いからね。もっと成長していい筈なのよ、今は消費材関係が好調なんだけど、もっと多様な製造業が伸びる必要があると思うよ。ジブの立場からすると、少しは法人税率も下げて欲しいし、配当分離課税も復活して欲しいのよ、投資も活発になり、企業ももっと大きくなれると思うよ。それに陽太君も無料診察制度を軌道にのせるのに、結構疲れたみたいだしね。」
「無料診察制度で苦労したのは、判るよ。でもそれが陽太君の役割なんだよ。再チャレンジ社会の基礎を作るのも、陽太君の役割なんだよ、財団も大きくなってね。行政みたいな事を言う人もいるのよ。公平性とかなんとか、でも私たちは民間の団体なのよ。目の前の困っている人を一人でも助けるのが、私たちの役割だと思うのよ、行政は、ここまでやりますと云う線をつくり、それぞれの民間団体が色々な考え方でサポートしていくのがいいと私は思っているのよ。」
香奈 「それはそうだろうね。恵はこんな話はムキになるね。」
「これは私が今までやってきた事だからね。民間でやりやすい事もあるけど、基本的な公的制度を充実させる事も重要だよ。」
香奈 「それはそうだろうね。陽太君も色々と整理していくと思うよ。それを使って、モデルケースみたいな取り組みをみせるのもいい事だよ。」
「それはそうだわ。」

チャとココは突然、香奈に取引を頼まなくなった

香奈は超高齢だったが結構忙しく、来客も増えたし、付き合いも増えた。香奈がチャやココから注文の依頼を受ける事もなくなり、香奈が部屋に帰るといつものように、チャやココも寄ってきて、子猫たちも何匹かは、寄ってきて甘えていた。子猫たちもそこそこ大きくなった。香奈は、猫は猫だったとがっかりしながらもほっとしていた。猫と遊んだり、猫を横に置いて、メールを見たりして、テレビを見たりの平穏な日々が続いた。ココは子猫に呼ばれていく事もあったが、気にしなかった。香奈ファインシャルの国内は、ほとんど先物取引はしなかった。香奈ファインシャルの国内の保有している株は、香奈ハイテク、香奈オフィス、菊子金属、海外香奈などの株、機械、資源開発、毛利貴金属などの一族の会社の株のような経緯のある株に加えて、香奈が特に出資していった株だったので、先物取引も香奈は、コシロやココが一緒以外ではあまりしなかった。香奈ファイナンシャルとしても、税務処理はジブトラストの管理セクションに管理を頼んで、税理士に面倒を見て貰っていた。

香奈「この頃、チャもココもほとんど取引しないのよ。取引したいと鳴かないのよ。新聞にも印もつけないのよ、経済新聞は良く読むのに私と一緒に、のんびりしているだけなの。手間は省けたけど、なんとなく物足りないのよ。」
「猫が取引するなんて香奈さんの思いこみだったのよ。香奈さんが頭の中で考えていた通りに取引の指示を出してただけなのよ。」
香奈 「そんな事はないわよ。ちゃんと言っていたのよ。今でも遅くまでパソコンでネットしているわよ。子猫たちがパソコン好きなのよ。取り合いするから、もう二台増やしたのよ、子猫たちがせがむからね。良く印刷するから、お手伝いさんがぼやいているらしいよ。紙もインクもよく交換するらしいわよ。」
「単にボタンを押しているだけよ。大きなタッチパネル式のキーボードにしたと香奈さんが言っていたじゃない。」
香奈 「そうかなあ、確かにそんな素振りしていたのにね。今は、取引もしないくせに儲けているからと言ったような顔して、鯛やカニを大きな顔をして欲しいと言うのよ。」
「それは猫が前から、好きだからだよ。香奈さんが甘やかしているからだけだよ。」

香奈ファインシャルの国内は、出資している企業から配当も入るし、香奈の身内からも出資が続き、香奈は時々頼まれて、企業に出資したり、増資したりしており、資産も増えていっていたが、香奈自身は忙しく、取引なんかは出来なくなってきた。そのため、香奈はもう資産総額なんかはほとんど気にしなかった。それに香奈は、正人に香奈国内の面倒を見るようにさせていた。香奈は、大きな赤字が出たとか大きな融資とか当分、成功が見込めないけど重要な融資や出資などの判断に困るような案件でもなければ、報告される事は嫌った。正人が細々とした相談などすると、それ位自分で判断しなよ。大きな銀行の頭取までしたんだろ。と怒った。スイスカナコインは、テツダウーノが若いヤリマッサーノに取引を任せていた。ヤリマッサーノは盛んに取引しているようだったが、赤字でもなく、チャの取引の連絡を香奈がしなくなり、香奈自身の興味も薄らいでいた。結果の報告も受けていたが情報は読んだが、赤字でもなく、勿体ないが自由に運用してくれと言っていたお金だった。香奈は、ジブトラストから報酬のお金は膨大だったし、それに責任もあってジブトラストの動きには注意したが、香奈国内やスイスカナコインへの興味は薄らいでいた。香奈は赤字でなければ桁数を細かく確認しない癖は直らなかった。利益状況にはそんなに関心もなかった。儲けの中からの特例としての保有も、四分の一程度はもう恒例のようになって、プログラムとしても認めていた。特例が特例でなく、利益があがれば、運用枠は、株式保有の有無と関係なく、運用枠は、自然として拡大して、株式の保有は増えていった。どちらにしても猫と年寄り運用チームの稼いだ金の中から買ったものだった。

香奈と猫たちの平穏な生活が続いた。ジブトラストは、もう神業のような儲け方はしなくなった。カミカミも同様だった。直属の子会社も切人の子会社も落ち着いてきた。配当収入や事業収入は増えてきたが、取引収入は少しづつ減ってきた。債券は波乱がなければ低収益だった。商品相場のような仕掛け相場での利益は以前と比べると格段に低かった。それに大きなリスクを避けるように神之助にも言っていた。株式相場も時々大きく下落する事はあったが、全体として少しづつ上がっていた。なだらかな上がり調子が続いていた。大暴落などで、逆に今まで、ジブトラストは大儲けしてきたが、だらだらとあがっている相場では、ほどほどの儲けしか出来なかった。

チャとココは香奈に取引を頼むのではなく、パソコンが得意な子猫たちが取引していた。

ココは今までの株式投資のやり方を変えてきた。一発倍増だけではなく、複雑なさや取りを考え出した。色々な株式の中で業種に拘らず、上がりの早いグループと遅いグループとに区別して、そのグループ毎の間でさや取りをした。上がり過ぎを売り、出遅れを買うのではあるが、その対象を一つの業種ではなく、幾つのグループに分けた。それと先物を組み併せていた。改良型良子プログラムのココバージョンだったが、短期勝負と中期取引だった。神子や神之助のお告げも猫たちは検討した。子猫たちはそれなりに連携して、ココの子猫たちは、スイスからの情報も教えてもらった。一発倍増の一点買いも少しはあったが、そんなには頻度がなかった。それにココのチームも株式投資と連動する先物以外にも、チャのチームの影響を受けて、流れにのった単独の先物取引まで少しずつ初めていた。ココタロウはココの前では大人しい猫だったが、取引はそこそこ大胆だった。ココハナコは勝気な性格のくせに、取引では細心の注意を払い、リスク管理も取った。のほほんとしたココジュンは、自由な発想で取引した。ただココの監視は厳しく、全体としてのリスク管理は、ココハナコが担当していた。チャも先物や為替の波動性に注目して、その流れの中で細かく、売り買いの値段を設定した。儲ける事よりも損をしにくい取引になり、取引の頻度は上がり、取引も複雑になった。スイスカナコインの年寄りチームが債券まではじめ、その注意事項や情報も当然読めた。チャのチームもいつの間にか、債券までも運用するようになった。リトルチャは商品相場とかデリバティブを担当し、株式投資とそれに付随する先物はチャタロウが担当するようになっていた。子猫たちは、生まれて直ぐに、分岐状の水やリング状の一杯ある水や牛乳を飲んで、それぞれ英才ぞろいだったが、チャやココから取引の基本から教えてもらった事もあり、大きな意味では、チャやココの方針通りに運用していた。チャやココは天才と言うよりは、自分たちの努力で、それぞれに投資スタイルを確立していった猫たちなので、自分の経験を基本に事細かく、子猫たちに教えていた。子猫たちは、生まれた時からの英才揃いであったが、経験が不足していたので、チャやココが血がにじむように努力していた取引手法や経験は、乾いた大地に水が染み込むように吸収していった。この時期の子猫たちにとっては、チャやココは、取引での偉大なる師匠でもあった。実際の運用は、それぞれの子猫たちが担当していたので、それぞれに個性が出た運用にはなった。子猫たちが、実際に運用するようになって、運用成績はグンと上がっていた。香奈国内は神太朗の証券会社を使っていたので、ココのチームは、株式投資と株先物といくつかのデリバティブだけを取引していたが、スイスカナコインは総合証券会社のようになって、商品相場から為替、債券まで広がり、デリバティブも多様なデリバティブを行っていた。チャもココも子猫たちを使い、一匹ではなく、複数で取引していた。2匹と3匹のチームが、昼夜交代していた。香奈は子猫たちにせがまれて、パソコンを増やしていた。日中はココのチームが、夕方からはチャのチームが取引していた。情報は、ネットからも入っていた。

問題となった音楽ホール

神之助が建てていたマンションや家は完成した、初めはみんな家だと思っていたら、音楽ホールである事が判り、大問題になった。ジブトラスト担当の警備保障も止めて欲しいと言い出した。ジブ本体には莫大な現金が置いてあって、多量の金も真理の会社で保管していた。瑠璃でもトラックはジブの里には入れず山の麓からジブの里の外に道路に出ていた。

俊子と香奈が見に行った。やっぱり音楽ホールだった。美術館や銀行そしてホテルなどは、ジブの里の玄関だったが、ここは奥座敷に近すぎた。
香奈と俊子はジブシティーの大きな大きな池の側に音楽ホールを建てて、その上部を神香の住居にするように言った。神之助も諦めた。香奈は神香用の家も見た。広い家だった。5階建ての50室もある家だった。善作用の部屋は大きな書斎がついていた。神香用の部屋はそれだけでミニコンサートでもできるホールがある部屋だった。しかももっとひろい本当にミニコンサート用の広い部屋と続くドアもあった。しかも山に続く広い庭もあった。香奈は一目で気に入り、自分の家にしたいと神之助に言った。神之助は一瞬むっとしたが、了承した。庭にお不動さんの石仏を置こうとして、色々場所を探した。あまり家から遠すぎてもいけないし、近すぎてもいけなかった。やっと石仏を置く場所を山の麓から10メートル程離した所に置こうとした。その辺りから湧き水が出た。そしてどんどん広がっていった。仕方がないのでそこは池にした。まだまだ湧き水はつづき、小川を作って農園の小川に続けようとした。製薬も今度も連絡を受け調査した。今度の分岐状の水とリング状の水は冗談と思えるほど濃度が高かった。大きな貯水タンクに貯める事にした。幸い湧き水の水量はそんなに多くはなかった。元々水処理場から簡易水道を引こうとしていた。水道管はあった。この水道管を通して、敷地内のメインの貯水タンクにつなげようと考えていたが、この水をこの一帯の水道としようと云う意見が強くなった。浄水設備は2つあった方がよいとの意見も出て、ここでも水処理をして、飲料水にする事になった。その工事も必要だった。
音楽ホールは香奈のファミリーの食堂というかレストランに改装したり、2階は会議室などにする工事も必要となった。香奈の存在は大きかった。香奈の家のコックのようなレストランになった。レストランと云っても、普通のレストランでもなく、値段が決まっている訳でも、普通の人に出す訳でもなかった。香奈がすべての経費を持つレストランだった。ジブホームレストランは、ジブホームホテルのレストラン部門も担当していた。経費とか値段をどうするとかの問題もあった。今回は、単に、香奈の家の食堂となる予定だった。当然原価や経費などはまったく考えずに、香奈が気に入る料理を出していればよかった。単に限られた人だけのコックでもなく、香奈の家系も当然引っ越してくる。対象となる人もそこそこいそうだった。ジブホームレストランは、調理場を持ってくる計画だった。当然、料理する人も必要だった。腕自慢のコックが経費関係なく、作れるこの第二レストランを希望した。その調整も必要だった。徹や勝もなんだかんだと口をだし、最新型の発電機を入れ、敷地内2系列にしようと言い出した、インフラ設備にも、やたら最新設備を入れる事になった。真理や恵も見にきて、山と池そして小川のある風景が気に入り、まだまだ空き地もあったので、やっぱり家を建てる事になった。真理と神香は、お地蔵さんつながりで仲が良かった。庭にお地蔵さんの石仏をおいてね。庭に地蔵堂も建ててねなどと真理が嬉しそうに言うので、音楽ホールはジブシティーでいいけど、家はやっばり、ここにして欲しいと神香は、神之助に言った。音楽ホールがなければ誰も何にも言わないと思った神之助は、今度は前の神香の家よりもっと広い家を、真理の隣に建てる事にした。今度は、神之助、神帥、神元、神香の四家族が住む積もりで、6階建ての60室の家を建てた。庭も倍程広かった。結局恵や真理たちも勢いで同じように大きな家を作った。恵に釣られて由香も同じような家を建てたので、広大な家が、香奈、恵、真理、神之助そして由香と五軒も建てる事になった。聡美が新しい家が建つと言うので、喜んで、マンション住まいの加代子や知加子に得意そうに言った。二人もムキになって、同じように大きな家を建てた。結局七棟の家が並ぶ事予定だった。

真理の家にはお地蔵さんの石仏と地蔵堂が建つと聞いて、神元はウチも大元帥明王さんの石仏と大元帥明王堂を建てようと進言した。神之助も同意して、神元はわさわざ奈良まで行って、大元帥明王さんに報告した。大元帥明王さんもそれはいい事だよ。わしも遊びにいけるといってくれた。石仏と御祭りする木造の仏像の入手先まで紹介してくれた。
マリアはそんな騒動には無関心だったが、徹行があの水の貴重さを知っていたので、切人たちと一緒にやはり大きい家を建てる事になり、切人はマリアのために礼拝堂まで庭に建てる事になった。

ジブシティーや研究所や大学院大学の建設も一段落して、建築会社もうるさそうな人たちの家なので、あっという間に家を建てた。そんなこんなで建設ラッシュが続いていた。とっくに建っていた香奈の家であったが、うるさい人たちが集まってアーダコーダと文句をいい、結局入居はほとんどみんな一緒の時期になってしまった。

あっち、こっちと出てくる湧き水

研究所などの主要な建築も終わり、研究所の中庭に噴水でも作ろうと掘っていたら、突然湧き水が出た。小さい池を作っていたら、どんどん大きくなり大きな池を作る事になった。その水も念のため製薬が調べてみると、分岐状の水やリング状の水が敷地内と同程度含まれていた。これも勿体ないので、水処理をして飲料水にする計画だった。
ジブシティーはもっと凄い事になっていた。ジブ交通が駅に使用するつもりだった山の麓の広場から湧き水が出て、これは威勢が良かった。大きな大きな池を作る事になった。製薬はこれも調べた。これも同じように分岐状の水やリング状の水が敷地内と同程度含まれていた。しかもこれは流量が多かったので、製薬は「いつまでも元気で」の原料に使用しようと思い、今まで駅を立てる積もりの土地に無理を言って、工場を作る事になり、貯水槽に貯めていた。しかし、どんどん出るので、タンクローリーが何回も来て、製薬の工場まで運んだ、
どこにいっても家談議があったので、沙織は不安になり、青不動さんに相談した。青不動さんは、問題は心の中なんだよ、心配するなと言ってくれた。それでも沙織はジブシテイーに建てる予定の不動マンションの庭にお不動さんの像を置きたいと相談した。青不動さんはそれはそれでいい事だよ、わしの友達を紹介してやろうと言って、珍しい大理石のお不動さんを紹介してくれた。その石仏を置く予定の場所の前から湧き水が出て、小さな池を作り、大きな大きな池に流れ出るようにした。

香奈と恵はお隣さんにもなり、一層仲がよくなり、よく話すようになった。それでも香奈の家の引越しは大変だった。香奈はある時期から、まったく金を気にせず、お不動さんの絵を中心として美術品を購入するようになり、海外のオークションでも香奈が気に入ると、どーんと高値をつけた。そのためみんなお不動さんの美術品関係のせりにはせり勝てる相手ではないと思い、参加しないようになった、そのためオークションでは安値で落札されるので、まず香奈に、見せにくるようになった。香奈は出入りの美術商に任せて、本当にいいもので、香奈が気に入るものを、買った。古美術は不思議な世界で、作品の出来以前に、ナンタラと云う仏師が彫ったとか、カンタラと云う絵師が描いたと判るとやたら値段が上がった。偽物もあった。美術商も真贋のわかるおっさんだった。香奈も、初めはナンタラと云う仏師とか絵師の真偽に拘っていた時期もなかったとは言えないが、青不動さんは、自分から香奈に声をかけてきた。やっぱり、香奈は、自分が気に入るものを買う事にした。ナンタラと云う銘が嘘っぱちのような偽物はさすがに避けた。香奈出入りの美術商も、そんな事にはうるさいおっさんだった。しかし、無銘ではあるが、香奈がやたらと気に入った作品があった。あのおっさんも、いいものだと思った。香奈は、お不動さんからの声が、聞えてくるような作品は、買う事にした。不思議とそんな作品は高くはなかった。香奈は、やたらと気に入った美術品を購入していた。香奈のコレクションは、香奈が死んだら、そのほとんどは、美術館に遺贈する事になっていた。青不動さんと大きなお不動さんの絵ともう一つのお不動さんの絵は香奈が初期に買った絵だった。青不動さんは、香奈の守り本尊で、ジブトラストの守り本尊でもあった。大きなお不動さんともう一つのお不動さんは、猫たちの守り本尊でもあり、税金なんぞは別にして、ジブトラストや香奈ファイナンシャルへの寄贈にしようかとも香奈は考えていた。そんな絵も何点かあった。香奈の家に置けない美術品の管理などは美術館に任せた。無銘の美術品だった筈が、X線とかナンタラと云われる鑑定方法で、カンタラと云う仏師や絵師の作品くさいとわかったものもあった。香奈のコレクションは、国宝級の美術品もあったので、美術館にも保管してもらっていたが、やっぱり香奈の家には一杯あった。引越し屋も、そこからそこまでの短い距離なのに、気を使った。絵を展示する部屋もあったが、空調やなんやかやと気を使った。真理は石仏や木造の仏像のコレクションが多かったので、これ又気を使った。二人の引越しには、美術館の人が立ち会って、アーダコーダと指示していた。香奈のお不動さんの石仏も、やたら重かった。香奈はコシロの骨を埋めた土を持っていき、石仏の前に埋めた。チャとココがそれぞれ、ここの土も持っていってくれと鳴くので、やっぱりその土も持っていった。二匹がしんみりしているので、小さいお不動さんの石仏をそれぞれ購入し、小さい2つの石仏を、新しく置いた。香奈は石仏も持っていた。しかし、これには悲しい話があった。チャの奥さん猫は産後の状態が思わしくなく、子猫を置いて亡くなった。唖然としたチャではあったが、奈津美に必死の思いで訴え、その奥さん猫のお葬式をして、骨を庭に埋めた。ココの旦那猫も猫にしては子煩悩で、子猫たちに会いに来ていたが、見送りにでたココの目の前で車に引かれた。とおりかがった正人に、必死の思いで訴え、お医者さんにつれていったが、もう死んでいた。正人が黙ってお葬式を出し、火葬してくれた。チャとココには悲しい思い出だった。それだけに子猫たちにはむやみに外に出ないようにいい、自分たちも庭の散歩ぐらいしかしなかった。それ以来、ココは正人に思いを通じる猫チャンネルが出来、チャは奈津美に思いを通じる猫チャンネルが出来ていた。

神子は、あまり動きづらい時期なので、ジブの今後とか、自分たちの家族の事を考えるようになった。神子の予測では、「カミカミは、陽太と善作がカミカミファイナンシャルの事務局を作り、非取引の実業部門で持株会社のような組織となり、取引よりも出資している運用会社の配当が多くなる。ジブトラストは、沙織と神二郎がジブトラストを小さくまとめていく。渋谷の神子グループはほぼ独立する。神之助のグループも独立する。加代子、神帥などはほぼ独立しているようなものだし、神元や聡美も同じだった。海外のジブも切人グループが独立して、神代は今でも独立したようなものだ。以前の子会社はジブトラストに残る会社とか、それぞれのグループに吸収される。結局、ジブトラストは緩い連合体組織となるだろう。金融センターや経済センター、遺伝子研究センターなどはどうなるだろうなどと考えていた。ただそれがいつの事か神子にも判らなかった。香奈の存在が強すぎて先が見えにくい感じがしていた。もっと判らないのがスイスカナコインや香奈ファイナンシャルだった。香奈の存在が強いのと、スイスカナコインはもっと白い霧のようなものがかかっていた。
神子は陽太と優花のためといいながら、自分たちも一緒に住む大きな家をとうとう建設を開始した。一番早く計画していたのに、結局最後になってしまった。

敷地内大移動

更に香奈たちの前の家がそっくり空いたので、洋治と有希たちは香奈に了解を取って、引っ越す事にしたが、猫好きの人には臭わなくても猫好きでない人には臭いが気になった。そこで又香奈の了解を取って、思い切って建てなおす事にした。そうなると洋治と有希たちが抜けたので俊子たちの家はすっかりスペースが空き、マンションに行っていた神二郎たちが引越ししてきた。神子たちも新しい家を建てて引っ越す予定だった。恵たちの家も恵と由香のファミリーがごそっといなくなり、すっかり広くなった。大きな高層マンションも建てたので、プライベートスペースが欲しいと使う人も結構いたが、相当空室もあった。香奈はそれならといって、音楽ホールとして作ったつもりの会議場で会議して、ホテル代わりにマンションの部屋を、ゲストハウスとして相当数キープする事にした。子供用として神之助が作った、1LDKの部屋は、子供の教育上ふさわしくないと言う人もいて、ほとんど使われなかったので、それが、ゲストハウスのようなものになった。その他にも大きな部屋も相当空いていたので、それも一時的に香奈がキープする事にした。

これらの高層マンションとそれぞれの家は、香奈ファイナンシャル不動産の所有と言う形になり、香奈や恵たちの大きな家も、このマンションの一部屋みたいな扱いになり、それぞれの家を建てた人とか大きなマンションを建てた神之助などが、香奈ファイナンシャル不動産の株主になった。香奈オフィスとしては、これらの土地を出資した形となった。大きな家も含めて、一つの大きなマンションのような形だった。香奈用の食堂のように作ったレストランが、ジブホームレストランの第二レストランのようになった。以前の旧香奈の食堂は有希の食堂となり、俊子の食堂そして旧恵の食堂は、真美たちの食堂と代わり、ジブホームレストランが担当していた。香奈の家の隣の食堂は、こうして大きな家のいくつかを高層マンションの一つの部屋とみなした大きなマンション専用の第二レストランのようなものになった。

これには、訳があった。資産の分散化の意図もあった。しかし家を建てた人たちでも家の建築費等を、自分の財産管理会社等に分散させていたので、その対策は既に取っていた。しかし、自家発電をする事は認められていたが、他の家に送電する事は認められていなかった。そこで、一つの大きなマンションのようなものにして、自家発電で対応する事になった。住んでいる人が株主となる、不動産会社のような会社が、香奈ファイナンシャル不動産であった。

俊子は頭は冴えていたが、大きな豪華な高層マンションも建ち、行きたい人はそこに引っ越すなどの騒動が続いていたので、頼んだ事など、忘れていた。冶部東京不動産もいけなかった。年次報告書には、記載するものの、俊子に直接報告にはこなかった。俊子がゆっくり報告書を読んでいると、ジブの里とあの私鉄の駅との間で、保有する土地が増えていた。

俊子 「なぜ、こんな土地を一杯買っているの、何かあるの。」
冶部東京不動産の人 「ひどいですね、会長がジブの里の近くに土地が買えるのなら、買っておけと言ったでしょう。苦労して買っているのですよ。」
俊子 「それなら、もういいわ、高層マンションも建ったから、当分はいらないわ。」
冶部東京不動産の人 「もう遅いですよ、駅とジブの里との間の土地は大体買ってしまいました。この頃買ってくれと言う人が増えたのですよ。」
俊子 「そうなの、お金は大丈夫なの。」
冶部東京不動産の人 「それは大丈夫ですよ、この間の研究センターの買収で仲介料を沢山貰いました。その程度のお金は持ってますよ。でも使い道はなんとかしないといけませんね。私たちも考えてみます。」
俊子 「冶部の里にも近くし、変な建物建てるのもなんだし、十分検討してよ。」

ジブ交通

ジブシティー、研究所と大学院大学そして香奈たちの新しい家が相前後して出来た。ジブシティーは中心部と既に立っていた工場群が完成し、周辺部の工場建設はまだ続いていた。ジブシティーはまだ道路でしか外部に繋がっていなかった。ジブ交通は作ったものの、バスで最寄の私鉄やJRの駅に行くだけだった。ジブ交通としての鉄道計画は線路の用地買収が難しかった。
神二郎が、神太郎や神一に頭を下げて、鉄道に詳しい人を紹介してもらえれば、簡単だったのに、それはしなかった。神二郎は案外頑固だったし、神一や神太朗に頭を下げて頼みに行く事を嫌ったのだった。自分の同志みたいな不動グループだけで処理したかった。不動総合や不動財団から派遣して勤めていた素人連中が、町づくりが進んでいる時から考えていた。素人連中なので、計画は遅々として進まず、ジブシティーは拡大して、今はジブシティーからジブの里まで、そして例の私鉄の駅まで、土地が繋がっていた。用地買収なんぞなどしなくても今は線路も引ける状態だった。もっと考えみると遺伝子研究センターまで繋がっている。この近くにもジブ系列の食品会社の工場が建つので、駅も建てようと検討していた。モノレールスタイルで高架型の新しい電車で、鉄道を作ろうと思った。免許とかなんとか面倒な事もあった。

ジブ交通は、神二郎に相談して、神二郎はロボットや未来エネルギーの徹や勝と相談し、新しい電車はないでしょうかね。モノレールとか考えているですけど、ちょうど大介の未来テクノロジーの協力会社で、カミヨニンジニアリングが出資している会社で、新型機関車のようなものを考えていた。これは自走式の列車だった。昔の蒸気機関車のように電線などなくても走るタイプだった。エネルギー効率も高い。ソーラー、鉱石エネルギー、そして化石燃料をトリプルで発電させながら動かすと云うものだった。元々自動車用と考えていた。徹はこれは面白いかもしれないよと言った。勝は足りない気がすると言った。自走はいいけど遅いよ、これでは。高架にするなら、圧縮空気をジェットのように出して、車体を浮かせたらどうなのとか言い出してなんだかんだと色々な人が入り、ヨーロッパの会社の発明を入れて、リニアのような、飛行機のような、自走車のような電車のアイディアが出来た。ジブシティーのロボット工学の工場で作る事になり、菊子金属が車体を設計し、ソーラー金属を高架の上にして、モノレールのような訳のわからない電車が出来、なんだかんだの許可も取り、あの私鉄の駅に接続した。冶部東京不動産は駅付近に、ターミナルビルなどの周辺設備をする事になった。この駅の周辺は活気付いてきた。あの私鉄は、神子がかなり、株式保有を増やしていたので、この乗り入れには協力した。そうして、あの私鉄の駅に乗り入れてる事になった。ジブ交通が、近代的な電車なのに、あの私鉄はポロイ電車だった。あの私鉄は、設備増強して、鉄道事業も革新したいと思った。いっその事、マラソンより少し長い程度の線路なので、全線高架の工事をしたいとジブトラストに相談した。神二郎は、ジブ交通として、ドーンと割り当て増資に応じる事にした。既存の線路の上に新しい線路を付け加えるための資金を出した。その資金の中で効率的に設備を作るために、ジブ交通がその工事全体を請負い、実際は各企業に工事を振り分けた。この事がきっかけとなり、やがては、ジブ交通は鉄道建設工事も請け負う会社にもなった。海外では、アメリカとヨーロッパでは、未来テクノと共同して、鉄道建設工事を請け負った。アジアと南米では快適グループと組み、アフリカではカミカミの資本も入ったアフリカ快適グループと組んで、結構注文も取るようになるとは、この時は、まだ誰も判らなかった。とりあえず、この時はテストケースでもあり、未来テクノ傘下のヨーロッパの会社やアメリカの会社も寄ってきて、更に改良を加え、菊子金属も軽くて、丈夫とか云う電車を完成させた。結局透明チューブの中を圧縮空気で押し出して、ジェットのように走る電車が出来た。ジブスタイルトレーンの原型だった。都心から遺伝子研究センターまで30分から40分で走った。あの私鉄も一気に業績が好調になり、株価は、神子の予測通り、倍になったが、あの私鉄は、もうジブの傘下になってしまった。正確には、ジブトラストとジブ交通が過半数の株式を持った。神子のグループは、長期保有株なんぞは保有しない主義なので、香奈に相談した。香奈は、新しい会社、ジブトラスト交通を作り、その会社がこの私鉄とジブ交通の親会社となり、あの私鉄は今まで通り上場して、ジブ交通はいままで通り、非上場企業となった。ジブシティー内の土地を走る鉄道は、ジブ完全資本を維持した。ジブシティー内の土地に、ジブトラスト以外の関係者が入り込む事を防いだ。ジブトラスト交通は、ジブ交通の半分の株式を、ジブトラストの神二郎のグループから買い、あの私鉄のジブトラスト保有株の半分は市場外取引で、市場よりも安く、ジブトラストの神子のチームから買った。ナンダカンダと複雑な事をしたが、神子のグループと神二郎の新宿は、それぞれ独立採算だった。神子のグループの運用枠から、あの私鉄の保有分相当を外し、神二郎の新宿の運用枠からもジブ交通の保有分を外す事もした。神子のグループは大きく儲ける筈が、程ほどの利益になってしまった。しかし配当は、それぞれのチームの利益に加算された。経営統合のような、持株会社のようなジブトラスト交通であり、あの私鉄も今まで通り経営した。それが香奈采配だった。

ジブシティー内には、透明チューブのようなものを蜘蛛の巣のようなネットワークを作り、歩く歩道ではなく、動く部屋のようなものが、圧縮空気で少し浮かせながら、押し出させていくようにして、研究所まで通して、ジブシティー内の交通も便利にした。これはジブシティー株式会社のサービスラインだったが、運営や建設はジブ交通が受け持った。そして香奈の家の食堂から、ジブ本体、学術センター、ジブシティーへと向かう、香奈専用のプライベートラインも作った。これは高齢の香奈専用ラインであり、香奈の家の近くの食堂前から、ジブトラスト前、学術センターの理事長室、ジブシティー株式会社の会長室前の警備員詰め所の横に出るようになっていた。香奈は猫好きで猫でもつれてきたらと思い、意味もない猫ボタンが、出入り口付近の下に、猫でも押せるボタンを作った。猫ボタンと聞くと香奈は喜び、諂いのおっさんたちは面目が立った。あの私鉄沿線は、ジブトラストの不動産チームが開発する事になった。ジブシティーはなんだかんだと工場やオフィスが増え、研究所も、ジブトラスト総合研究所以外にも、神元と聡美の食品会社の日本研究所とか、神代と大介のカミヨエンジニアリングの統合研究所なども集まり、学術ゾーンとなっていた。結局、ジブシティーの中心部は、ジブ関係の企業で固めて、ジブシティー株式会社が直営する高層賃貸マンション群も建て、ジブシティー中心部には、オフィス街、恵の第二ジブシティー、大きなニコニコホテルなども置いた。神三郎は結局、エンジェルホープジャパン病院の院長になった。エンジェルホープジャパン財団がメインに出資し、マチコジブ記念病院、冶部産婦人科小児科病院、製薬、財団なども少しづつ出資した病院になった。恵たちの第二ジブタウンには、安いよスーパー、お元気レストランや新吾たちの料理店なども入ったレストラン街、有希のブランド品、冶部洋服などの入ったショッピング街、上層はオフィスゾーンとなっていた。まさしく大きな都市になった。それは全部ジブシティー株式会社の保有するビル群だった。

香奈の誤算

ただ香奈にとっては誤算だったのは、あれやこれやと土地を買収して、工場用地も一杯買収したが、ジブトラストの歴史的な大儲けに便乗して、途中で高杉は賃貸にしようとか言い出して、多くは賃貸や借地契約にしてしまった。ジブシティーの高層ビルは立派なビルにして、やたらと金をかけた。最初の香奈ハイテクや不動などの一部ジブ関係の会社に用地を売ったものはあったが、ほとんどはジブトラストが多く出資し、カミカミファイナンシャルそして香奈オフィスも土地を出資した事にして、香奈ファイナンシャルも少し出資したジブシティー株式会社の所有地にしてしまって、ジブにとっては、想定外の出費だった。ジブ交通もやたらとお金を使い、その上あの私鉄と経営統合のようになってしまい、鉄道整備のお金も出資するなどの大盤振る舞いをして、ジブトラスト交通なんぞの会社も作ってしまった。

カミカミは大同機械との約束を守って、城跡付近だけは、お城保存財団を作り、そこを公園にし、保存する事になった。ジブトラストにとっては、最新式のジブ総合研究所や大学院大学への出費も多く、大学院大学もほとんど、ジブ関係企業や財団からの推薦の学生が多く、授業料を安くし、少人数だったので、補填する金も言った。要するに運営費がかかり過ぎた。仕方がないので、ジブ大学院大学の運営のために、ジブトラストは、更に莫大な基金を作った。研究所も結局ジブトラストや香奈ハイテクからの依頼研究で研究費を貰いながら運営する事にしていたが、そんなに運営費をカバー出来る依頼研究があるとも予想されないので、ジブトラストは更にジブ総合研究所の為の基金もつくった。大学院大学や研究所で働く人のためのマンションも作った。それを見ていた香奈ハイテクで働く年寄りたちも家に帰ると疲れたり、家族が病気がちとか云って、ここに住みたいとか言い出して、大きな高層の社宅用マンションまで必要になり、住宅用のマンションがずらりと並んだ。香奈ファイナンシャルがそれを負担すると言ったが、例外を認めると後が厄介だと言う事になり、香奈ファイナンシャルは、ジブシティー株式会社にもう少し出資してもらう事にして、そのマンションは、ジブシティー株式会社が作って、香奈ハイテクなどに貸した。なんだかんだと折角歴史的な利益が出たのに、これらの出費や基金などにお金が必要だった。各地のジブ現地法人も次期会計年度以降への対策を取った事に加えて、やたらと出費が続き、各地の金融センターにごっそり貯めるつもりが、そんなには貯まらなかった。

香奈 「誤算だったね。ジブシテイーも想定外の金が要ったよ。高杉が土地を売らないで、借地や賃貸にしようと強く言うから、歴史的儲けもあったし、それもいい考えに思ったのが、間違いだったね、やたらと工場や研究所が進出してくるんだよ。おまけにビルも立派なビルにするんだよ。ジブ交通もあの私鉄の設備増強の金まで出資するんだよ。学校や研究所にも一杯お金が要ったし、これからの運営費も必要だから、基金を持たしておくく必要もあるんだよ。折角、歴史的な儲けがあったけど、結局日本に送金してもらうお金が増えて、税金もドーンと払うし、こっそり金融センターに多く備蓄しようと思っていたのに、ジブにはそんなに残らなかったよ。」
「いいじゃないの、これに使いなさいと言われていると思うよ。明日のジブトラストや財団そしてみんなの力になると思うよ。」、
香奈 「まあ、そう思う事にするよ。経済基礎研究所もなかなかいい事言うよ。企業分析研究所もしっかりしているよ。これで良かったかもしれないね。ジブの経済センターもみんなの取引に参考になっているみたいだよ。」
「財団も社会福祉研究所からのアドバイスが役にたっているみたいだよ。千恵美の学校の先生も、あの研究所によく来るよ。大学院大学も新しい世代を育てていくわよ。金だけ残すよりはずっと良いと思うよ。」

聡美が聖子事件で突然買った株のその後

聡美は、大儲けした後は自分が買った株の事などは、忘れてしまったが、ジブフランスには、いつまで経っても何も言ってこないジブカミにしびれを切らしたイタリアの食品会社から、ジブカミフランスの代理だったジブフランスに挨拶に来て、管理の人は大変になった。ジブカミはまだ間借りの身だった。買うのも程があるとぼやいたジブフランスの人だったが、とりあえず、ドイツの食品会社の人に役員になって貰い、協力して、事業を進めて貰う事にした。このイタリアの食品会社では、高級チーズとか高級ハムを作っており、養豚場などの広い土地も持っていたので、エンジェルスターも栽培して貰い、ドイツの食品会社とは、企業風土も合い、それなりに協力関係も出来、ジブフランスの人の心配も杞憂に終わり、ドイツやイタリアの会社も幅広い、食品の開発ができ、日本のイチコプロダクツやジブブラジル乳業などとの協力を進める事もできた。やがてみんな利益が増え、イタリアの食品会社は、元々配当率の高い会社だったので、配当も高く出してくれた。ただ株価は上がったものの、5倍なんかにはならなかった。

イタリアの自動車会社は、未来エネルギーシステムとガソリンとのハイブリッドタイプのエンジンの開発に多額の開発費用を使い、大赤字になっていた。翌週から新型スポーツ車の話題で上がりだしたが、5倍なんかなる筈がないと思っていたジブフランスの人だったので忘れていた。そのスポーツ車は話題だけでなく、本当に売れ出した。やがて株価はじりじりと上がってきた。切人は、きちんと2倍から3倍位の間に少しずつ売っていた。上がったり、下がったりと値動きはあったものの、ジブフランスの人が気がつくと、買った価格の6倍になったので、ジブフランスが、聡美から頼まれていた通り、少しづつジブカミとして売っていた。ジブフランスは株屋だったが、安倍製薬フランスの役員になっている人もいて、カタギの財界人風の気質もあり、余分な株を持つ気もなかった。しかし、売っている事がやがてばれ、自動車会社の人が挨拶にきて、ジブとして株を安定的に保有してくれますねと念を押され、未来エネルギーシステムとの関係もあり、売れなくなった。買った株の半分程度残っていた。

フランスの機械会社も本来、工作機械のメーカーであり、ドイツや日本やアフリカの機械会社との競争会社であった。医療器械や産業機械で新型機械を出し、未来テクノジーが売り出していた毛利ロボット工学研究所のロボットも使ってファクトリーオートメーションシステムを完成させ、株価も上がりだした。ジブフランスの人が自動車会社の株を見た時に、丁度5倍になった。今度は、ライバル企業なので、少しづつ売っていた。未来テクノジーが毛利ロボットのパテントを取って、ヨーロッパで改良したロボットを加え、より革新的なシステムになった。未来テクノジーや毛利ロボット工学研究所との関係も出来て、神代がうるさいと思い、やっぱり買った株の半分程度保有する事になった。

ジブイギリスは、根っからの株屋で、商品相場もする株ゴロ、相場ゴロの連中なので、5倍と言わず、3倍でも売りたかったが、聡美が5倍を超えたら売ってと言っていたので、5倍まで待ち、売っていった。イギリスの繊維会社は、古い格式を誇る会社で、化学繊維も研究製造もする会社だった。天然の毛織物の同じ肌触りの持ち、強度が優れた化学繊維を開発した。開発費が高くかかり、赤字を出したが、治部レーヨンと交渉して、機能性繊維との技術の相互使用の協議を始めた。ジブとして株を安定的に保有してくれますねと念を押され、治部レーヨンとの関係もあり、半分以上残して、やっばり売れなくなった。

聡美は、元々細かくとも平気で取引していた。ジブカミトラストやファイナンシャル、と云う、2つの財布からお金を出して、細かい取引をするようになった。幾つかの市場で阿修羅のように聡美は取引していたが、運用枠はやたらと余ってきた。お休み中に先物担当の人も結構頑張ったので、今度は運用枠を少し上げ、六千億の枠をみんなに分け、利益の10%は比例給としてファイナンシャル全部出し、基本給は、トラスト、ファイナンシャルで利益比例で振り分けた。トラストの利益を上げるようにし、香奈に文句を言われないようにした。各子会社の聡美のチームには、いつしか数人のディラーが、自分たちの運用枠を持ち、みんなでより細かい取引をするようになった。そんなに大きく儲ける事はできないものの、多くの人がそれぞれの市場で細かく取引するようになった。阿修羅のように聡美がするよりは、取引は増えた。流石に鬼のようには儲からなかったが、1年間で運用枠程度の利益があった。オーバーナイトする時だけは、みんなで神子や神代の報告を見て、協議して行った。売残や買残も慎重に、罫線屋的な聡美の発想と研究センターの報告や神子や神代の予測をよく検討して決めていた。まだ、聡美は思いだしたように、大元帥明王さんから教えて貰い、切人に有望な会社を聞き、集中的に株を買い、買い注文も出す事もあった。大元帥明王さんが教えてくれる会社は様々だったが、食生活や基本的な生活に繋がる会社もなぜか多かった。手口は、みんなに知られてきて、ジブカミの買いと言われ出した。偽物の釣り上げもあったが、聡美は単純だったので、同じ手口で買った。やはり自分で買いたかった。みんなに直ぐに判り、もう大量に保有する事はなくなった。

聡美は、自分では忘れてしまうので、売りだけは、売値を指示して現地法人に頼んでいた。珍しい事が起こった。大元帥明王さんが聡美の夢に出てきた。聡美が絶頂感の中、意識が別の世界に行ったわけでもないのに、大元帥明王さんが出てきて、あれを買えと薦め、しかも株数まで指定し、お金を他の証券会社の株式口座に入れているまで教えてくれた。会社名までちゃんと教えてくれた。ただファイナンシャルからの寄付は10%にしろと云われた。神元も同意して寄付を上げた。聡美は大元帥明王さんの言った通り、現地法人の人に頼み、買い時期と買値の幅や売値まで言った。それをお金が残っていた証券会社のファイナンシャルの株式口座でかってもらった。システム的には面倒だけど、それは証券会社を指定すれば出来た。香奈にも認めてもらった。各子会社もとくに異議は云わなかった。全体の資金からすれば小さいものだった。
ジブカミが保有する会社は増え、ジブカミファイナンシャルは大儲けし、寄付も増えた。ジブカミの手口はより複雑になった。普通は大元帥明王さんも買い方は、聡美に任せたが、大元帥明王さんは老獪だったので、その売値は、倍値だったり、3倍だったり、5倍だったり、変化した。
たまに大元帥明王さんは買値も指定したりした。それは、ジブカミの管理に買い方も依頼した。好材料がでれば直ぐに株価は、跳ね上がったので、買う株数は減ったが、回転期間は短くなった。それでもどういう訳か、全部売らず少し保有する事が多かった。安値で買うのであるが、買われた会社が挨拶に来たり、色々な経緯が出来た会社だった。聡美の色ボケは酷くなり、「いつまでも元気で限定品」をよく飲んで,絶頂感を味わい、意識が別の世界に行って、時々大元帥明王さんから声をかけられる機会が増えていた。頻度も増えて、大元帥明王さんも、ボロ儲けのネタも切れ気味で、不本意だが、5割とかの話もするようになった。そのため、回転期間はより短くなった。聡美は、パッパラパーだったので、トラストやファイナンシャルと云った資金先や証券会社を特に指定する事など複雑な操作はしなかった。支店時代の昔から元々保有していた株もあった。そのため、ジブカミトラストの株式と先物部門は、聡美が先物専門の筈なのに、保有株が多くなった。運用会社なので、普通は、高値では売り、安値で買い戻す等の調整売買をするのが普通であるが、聡美は株を保有していると云う意識もなかった。一度売れないと決めた株なんかは、聡美の頭から綺麗に消えていた。ジブカミには、株式担当はおらず、先物担当だけしかいなかった。ジブカミの先物と株式部門は、先物だけの特殊な組織だった。ただ時々聡美が集中的に買う株を、現地子会社の管理セクションに聡美の指定する売値以上での売却を頼んでいた。そんなに直ぐに上がるわけもなく、保有時間も当然ばらついたので、現地の管理セクションは、経緯がなく、売っても問題ない株は、聡美からの依頼を受けて、株を少しずつ売るようになった。でもこれは、所謂調整売買ではなかった。ジブカミのもう一人の神元も生粋の相場師で株とか会社経営は判らなかったので意識から消えていた。結局ジブカミは、トラストもファイナンシャルとしても、保有株も増え、配当収入や株式売買益もあり、1年間で運用枠程度の利益が上がるようになった。

金を作る細菌ではなく、金を食べる細菌が見つかった

ホラフキーは、博打で借金を作り、借金の返済を迫られ、研究所の事務所の金庫から運営費の金を持って逃げた。逃げられたスイスコインの年寄り運用チームはホラフキーの残した細菌を残った研究所の人たちに取りあえず調べて貰い研究を続けさせ、持ち逃げされた運営費を取り戻すために、運用で稼ぐ事になった。ホラフキーは逃げたが、幾つの新種の細菌は残っていた。研究所の人は、これらの菌について調べた。すると変わり種の細菌もいて、ごくわずかしか含まれない土壌の中の金を食べ、体内に金を蓄積する、金の好きな菌がいた。廃鉱の中の鉱石を粉砕して、この菌の培養液を振りかけると細菌が勝手に金を食べ、細胞内に金を蓄積して、細胞内に金を蓄積しすぎて死に、あちらこちらに金が出来た。人と同じように金に取り憑かれた、金の好きな菌は繁殖力が強く、そころ中の金を食べ、おまけに情け容赦もなく、死んだ仲間の細胞まで食べ、金はドンドン細胞内に蓄積し、食い過ぎて死に、又それをエサにして金に取り憑かれた菌が増えていくと云う循環を繰り返した。金の廃鉱は金の山に変わった。ホラフキーのほらは、現実に変わった。それを聞いた遺伝子研究センターは、この菌の遺伝子を調べた。するとこの金好きの菌の遺伝子を組み替えると、レアメタル好きの菌も出来る可能性もあり、レアメタルの採掘も画期的に革新する可能性があった。

スイスカナコイン微生物研究所が、ついに金を食べる菌を見つけたのは、まったくの偶然だった。執念の研究の結果と香奈には報告していたが、実は全くの偶然だった。ホラフキーの研究室を片付けているとunknownと書かれたシャーレーがあり、どんな細菌かと興味を持った人が培養するとうまくいかない。躍起になって条件を変えて培養していた。性質を調べようと大量培養し、そのフラスコを本研究所に持って帰ろうとしたら、フラスコを廃坑の壁に当てて、割ってしまった。仕方ないので、もう一度大量培養していた。次にホラフキーの研究室に来ると、廃坑が金色に光っていた。それだけの事を脚色して香奈に伝えていた。屑拾いの瑠璃は、金の旧鉱山で早速試してみた。すると枯れた筈の金の旧鉱山は、金がきらきら光る鉱山に変わっていた。瑠璃は、至る所の金の旧鉱山を快適を通して集めた。スイスカナコイン微生物研究所は、ワインや乳製品の研究をしたいと云う変人を残して、鉱山関係の有用微生物研究に特化してきた。変人は、研究チームの人数が少ないので、仕方なく、ワイン工場、牧場、乳業会社と連絡を取り、ブラジルの総合食品研究所、快適農作物研究所などとも連絡を取りながら、研究を進めた。金を作る細菌を探す事が、研究所の建前だったのに、それも知ろうとしない変人だった。それでも腐りかけたようなワイン工場のワインは美味しくなったし、ワイン用のブドウもいいものになっていった。それぞれ研究所と云っても指導料とか言って金を取り、少しずつ研究チームも増えてきた。

スイスカナコインは、金の保管所を買う時に思い切り広く買い、ワイン工場やぶどう畑まで買い、山間部にエンジェルスターを栽培し、小さい池の周りにパワースターを栽培していた。これらの薬草を製薬に売ろうとセコイ考えも持っていたが、その場しのぎの株屋の考えなので、すぐに忘れ、手入れもしなかった。エンジェルスターは、やたらと繁殖する薬草なのに、収穫しないと、やたらと繁殖する薬草でもあり、パワースターもそれこそ竹のように勝手に根を張る植物だった。結局、メッタヤタラと繁殖していた。分岐状の水が地下にしみ込み、葉からも空中に分岐状の水やリング状の水が放出され、そして、ぶどうの中に入り、ワインになった。牧場の乳牛も分岐状の水やリング状の水を飲み、牛乳にも当然あった。乳業会社の牛乳は美味しくなり、牧場も工場も大きくなり、乳製品も作り出した。イタリアの食品会社の牧場や養豚場にも、エンジェルスターもパワースターも栽培して、チーズも生ハムも美味しくなっていた。スイスコインの運用チームは年寄りだったが、ワインは好きで良く飲んだ。牧場で取れた牛乳もコーヒーに入れて飲んだ。イタリアのチーズや生ハムそしてドイツのチーズペーストはみんなの大好物だった。

コッソリート、ディラーに復活、年寄り運用チームのリーダーに

コッソリートは、しぶとく生きていて、金の廃坑が金色に光る金山になったと聞いて、子分だったオタスケーと一緒に見に行った。金は、ともかくこの辺りの風景が気に入った。そこで、二人はテツダウーノに頼んで、隠居場を牧場の近くに作る事にした。この辺りには水道なんて気の利いた設備はなく、井戸から水を汲んでいた。井戸水を汲みに行くのも大変なので、ポンプでくみ出すように工事したら、湧き水も泉のようになり、簡易水道の設備まで作って、コッソリートの隠居所だけでなく、牧場や学校などの周辺の家に給水できるようにした。発電装置は、徹の未来エネルギーシステムが、大介の未来テクノを通して、既にヨーロッパでも盛んに販売していた。未来テクノは、コバンザメ企業だったので、徹の未来エネルギーシステムからパテントを取り、キクコドイツメタルなどの協力を得て、少しは替えたコンバクトタイプも考えて、発売していた。その方が、ただの販社より、儲けが多かった。それが存外に好調だった。ヨーロッパの僻地でも、簡単に発電できた。スイスカナコインの土地は広く、大きな家を建てた。テツダウーノももうすぐ引退する積もりだったので、二人の家を参考に見に行った。その家が気に入り、テツダウーノも自分の隠居場をその隣に建てた。コッソリートはもう超高齢だったので、のんびりしていた。その水も美味しく、牛乳は美味しかった。段々元気になってきた。毎日若くなっていくような気がした。自分に良く似た顔を持つ猫が遊びにきた。なんとなく気持ちが通じた。コッソリートは益々元気になった。

テツダウーノはヤリマッサーノに実務を任せていたが、まだスイスカナコインの名目的には責任者だった。コッソリートの作った証券会社の若い連中がのさばりだして、年寄り連中は押され気味だった。ヤリマッサーノに命じて、年寄りたちの部屋と若い連中の部屋を分けた。年寄りたちはのんびりとした取引に戻った。成績は若い連中がいいようだった。訳の分からんデリバティブなんかを多用して儲けていると、コッソリートたちにこぼした。コッソリートは興味を持ってこの話を聞いた。元々山っ気があり、それで失敗して、かたい取引をしてきたが、もうこの年だ。後は好きなようにやろうと思い出した。証券研究所の若い兄ちゃんや姉ちゃんを呼んで、オタスケーと共に勉強した。オタスケーも堅い取引をしてきたが、最後は一発倍増の取引をしてみたいとコッソリートと同じように思った。テツダウーノに命じて、ここにスイスカナコイン別室を作らせた。コッソリートは実は金持ちだった。持っていた金を半分に分け、その半分がなくなったら、取引を止める事にして、そのデリバティブなるものに挑戦する事にした。テツダウーノは無謀と言ったが損したら補填するとまで言われ、結局認め、ここでの取引の損は、コッソリートが補填する条件にした。オタスケーも同様の条件を出して取引をする事になった。証券研究所の若い兄ちゃんや姉ちゃんにもバイト代を払い、実戦でも講師になってもらった。それが持っていたお金を一夜にして無くした訳ではなかった。そこは用心深く、なくしても良いお金を三分割し、その三分の一のお金で勝負していった。それが一夜にして倍になり、それが又倍になり、賭けるお金はどんどんと増えていった。テツダウーノはまだ若く、先も少し長い身だった。大先輩の二人だったが、思い切って言った。一定額になったら、又三分割し、その三分の一で勝負すればと長く楽しめますよと言った。コッソリートもオタスケーもどんどんと若くなり、まだまだ頑張れると思い出したので、その提案にのった。大きく賭けて失敗した経験のあるコッソリートは、若くなったと感じ出すと段々慎重になった。オタスケーももっと若いだけによりその気持ちは強かった。証券研究所の若い兄ちゃんや姉ちゃんにもっと詳しく聞いた。多彩な技を教えてくれた。結局反対方向にリスクを取るようなやり方も教わった。テツダウーノも引退して二人と一緒に、スイスカナコイン別室で働き出した。スイスカナコイン別室は偉いさんのご意見無用の別室だった。ただテツダウーノは、二人とは違い、株式投資をした。大きく下がった時に買った。バイト代を貰ってきていた若い兄ちゃんや姉ちゃんも、利益比例のバイトにして貰い、利益が出ると三人の手数料のかすりを貰う事にして、損がでれば知らない振りをする事で、三人を丸め込んだ。三人はそれほど甘い連中ではなかった。色々アーダコーダと質問した。若い連中も勉強して答えた。別室の稼ぎは飛躍的に増えた。スイスカナコインの若い年寄りも勉強にきた。

別室は人がどんどん増え、年寄り連中はむしろ別室に集まった。車でくれば大した時間はかからなかった。取引時間が終われば、宴会をした。飲んでかえれなくなったら、コッソリートの家やオタスケーの家に泊まった。何しろ広い家だった。コッソリートはいつも取引はしなかった。例の猫が時々遊びにきた。コッソリートも時々猫と遊んだ。年寄りたちは、デリバティブなるものに不慣れだったし、やっぱり連戦連勝で勝ち進む事は出来なかったが、リスクのとり方も勉強した。それでも成績は飛躍的に伸びていた。負けるとバイトの兄ちゃんや姉ちゃんに敗因を検討させた。バイトの兄ちゃんや姉ちゃんもバイトだけをしている訳ではなかったが、口もうまかったので、コッソリートに色々と教えてもらうと言っていた。証券研究所の偉いさんもきた。アーダコーダとの会議もあった。結局近くに証券研究所の別室も出来た。この証券研究所別室は、実際に投資しながら、研究する別室となり、儲かった時は、バイト代も特別に出た。実際に金になるので、研究にも身が入った。こうしてスイスカナコインも三人の年寄りも年寄り別室も儲かり、証券研究所別室も知識や経験を積んで、研究員もトレーダーみたいになっていった。証券会社から来た若い連中も刺激を受けた。

歴史的な大儲けがあったその後のジブ

海外のジブは、神代も孫会社と云うか神代の会社の管理する事が多くなった。ジブトラストの運用枠にカミヨファイナンシャルの資金を加えて、それで枠に余裕があればカミカミファイナンシャルの資金も加えていた。短期売買ならのでの細かい取引を繰り返しすようになった。元々孫会社と云っても規模は大きかった。神子系列は中長期的な取引スタンスで、スタンスで取引していた。

切人とジャンヌは海外の取引チームを株式、先物そして為替の3つのチームに分け、香奈、ジブ、マリアホープとして、細かく取引させていた。切人は細かく取引するタイプだったが、流石に株、先物そして為替と範囲が増え、完全に報告を貰いながら、指示を出し、管理するようになった。アメリカも入れて数兆程度の利益になっていた。もう切人は、実際に取引するよりは、自分たちの興味のある会社を研究している事が多くなっていった。それに聡美が多く保有している企業には、多くの場合切人たちも保有しており、実際の経営にも、ジブトラストから経営陣の中に入っており、その報告を受け、聡美たちが無関心だったので切人が代わりに会社の発展も考えるようになった。株式の保有は香奈ファイナンシャルやマリアホープ名義だったので、先物取引は売りを主体に、先物ヘッジの要素が強くなり、保有資産のヘッジとして為替取引の要素が強くなった。ヨーロッパでは、為替のチームは、切人たちの為替チームと神元の為替チームと神之助の金融センターとが統一して協議を行い、ジブトラスト関係の合同為替チームのようになり、協調して運用する事になった。アメリカでは、神帥の為替のチームが一番大きくスタッフも多いので、切人のチームや神之助の金融センターもほとんど運用を委託するようになった。神帥のチームが主体となって、ジブトラスト合同為替センターが出来、大きな為替専門センターが出来た。神之助もアメリカやヨーロッパでは二つの合同為替センターらの報告を受け、指示を出すだけになった。マリアは一人でマイペースで取引をしていたが、頻度は流石に少し減っていたし、取引する時間も短くなっていた。子会社では聡美が大量に買った株の売却もしており、管理の人も忙しかった。

加代子の会社は、加代子自身は短期を中心とした機関銃のように先物も株式も注文を出す取引ではあったが、変幻自在、融通無碍の取引手法で、傘下のディラーもそれぞれ異なった取引手法と云う会社だった。悪く言えば、儲かる事はなんでもするのが、カヨコファイナンシャルとトラストだった。取引の小天才たちが集まる会社でもあった。加代子の神がかり程度で利益が大きく変わり、給料も大きく変動するので、取引手法なんて綺麗事は言ってられず、儲かる事はなんでもしないと、加代子が妊娠休暇にでもなれば、給料はガックリ落ちる会社だった。それだけに調査グループも必死になって儲かる事を研究し、取引の小天才たちも必死になって、取引していた。

神帥も加代子に競争して為替を中心に儲けていたが、神帥は、意識的に実業への傾斜を進めていた。そのため加代子の特例処置を聞き、配当準備金の積み増しではなく、香奈と相談して、5兆儲けた後、トラストとして儲けた1兆のお金をジブカミスイコーポレーションへの大幅な増資に振り分けた。ファイナンシャル分も併せて、そのお金も加えてジブカミスイコーポレーションは、フードとエネルギーと二つに分けたが更に細かく事業会社を作り出した。ジブカミスイトラストも、ジブカミスイコーポレーションからの配当が入るようにした。神帥の為替チームは充実して、ディラーも増えてきた。神之助もそれは認め、ジブトラスト関係のアメリカの為替運用はほとんど神帥のチームを土台にして、南米も含めて、切人のジブアメリカも出資して、みんなが出資したジブトラストアメリカ為替センターを作った。為替関係のスタッフの効率的な運用を図った。為替運用はほぼ一本化された。金融センターは、為替運用を為替センターに依頼して、運用手数料を払う事にした。切人のジブアメリカも、カヨコのカヨコファイナンシャルもそして孫会社も本体に管理料などの日常経費の送金は、自分でしていた。中期的な円のトレンドを為替センターに聞き、管理セクションが為替をしていた。これはヨーロッパも同様だった。 ヨーロッパでもリヒテンシュタインの金融センターやスイスの金融センターそしてイギリスのジブアンドカミカミ金融センターの内にジブトラスト為替センターをジブトラストの現地子会社とジブカミとが出資して作ったが、各地の子会社などは、本体に管理料などの経費を送金する必要はあった。現地子会社の中に、管理セクションが為替処理をしていた。ジブトラストの総合取引メニューには為替取引があった。細かい取引などは無理でも節目節目では少しは運用した。

神帥は実業傾斜が激しく、商品相場は、実業のヘッジの側面が増え、個々の商品相場チームは孫会社も入れて、エネルギー、貴金属そして食品の3つのチームでそれぞれ実業をみながら、取引するようになった。ヨーロッパの神元の食品会社や聖子の快適農園などの食品会社と歩調を合わせ、商品相場に取り組み、貴金属も毛利貴金属、自分たちの貴金属会社、ジブカミの貴金属会社そしてスイスの貴金属会社、スイスカナコインまでのグループと協調して貴金属相場を行い、エネルギーは香奈オフィス、資源開発などのファミリー企業と連絡を取りながら、エネルギー関係の商品相場を行うように変わっていった。得意だった為替も神之助たちとの合弁会社になり、配当として利益を貰うようになった。 それに姫子の作った麻田エンジニアリングにジブカミスイファイナンシャルとトラストとが共同で大幅な増資をして、北アメリカのジブカミスイファイナンシャルやトラストが絡む建築の元請けにさせ、大きな建築会社にも大幅な出資をさせ、麻田エンジニアリングは大きな建設グループになった。南アメリカでも羽朗に頼み、快適や快適交易と組み、設計や建築にも絡みだしていた。麻田エンジニアリングは、世界的な大きな総合建築エンジエアリング会社になった。快適が基本として利益の5%をインフラ事業を行うので、それも設計段階から関与してかすりをとっていた。アジアでも辺朗に話をして、設計や建築の斡旋をして、日本ではジブシティーと研究所と大学院大学の建設を仕切り、アメリカでは、旦那の息がかかっていた企業の建設斡旋などをして飛躍的に大きくなっていた。

ジブカミスイトラストとファイナンシャルは、完全な脱相場とは云えないものの相場以外の実業傾斜が進み、配当収入が多くなり、ブカミスイトラストとしては、為替が動かないときでも年間で出資金の同程度程度の利益を確保できるようになった。

沙織の枠も増え、五千億になったが、一番小さい枠だった。会長室も1兆で運用枠の拡大は終わった。正子の副会長枠も1兆で運用枠の拡大は終わっていた。家族単位の会社では、運用枠の設定のあるのは、カミカミファイナンシャルだけだった。先物や商品相場で運用するのは、よほどの時でない限りは、ジブトラストの運用枠と同額以下で運用するようになっていた。沙織の株式投資は、小さい将来性のある企業を見付け、投資していく手法であり、神二郎たちの新宿もその傾向が強くでて、利益が上がっていった。大型株は先物取引がジブが支配しているので、動きづらく、中小株の商いが増え、そうなると青不動さんが、沙織に耳打ちし、沙織が儲けると云う事が増え、中小株も見直され、値動きが大きくなると、それで沙織が又儲けていた。沙織は、先物取引も細かく売買していた。もう半年で倍の利益にはなる事は出来なかったが、沙織や会長室そして新宿は、少しずつ伸びて、沙織枠や不動も先物は同額取引し、会長枠の十分の一ほども併せて、年間で沙織枠では運用枠と同程度儲け、不動枠も同額程度儲けるようになった。不動ファイナンシャルの保有株も少しは配当をくれるようになり、保有株が多い不動ファイナンシャルの利益は上がり、不動財団の基金が増えていった。香奈が出資していた会長室の株も配当をくれるようになり、会長室も香奈が取引しないでも、利益は上がるようになった。神二郎たちの新宿も、利益が少しずつ上がるようになった。青不動さんも時々沙織や香奈と話をしていたが、不動財団の運営の話が増え、取引の話は少なくなっていた。

香奈の家も猫ハウスに

香奈は引越して、徹と香奈は一階に住んだ。広い家だったので、猫の部屋も広い部屋にしていた。大きなお不動さんの絵やもう一つのお不動さんの絵は、今度はちゃんと架けた。猫たちの守り本尊だった。香奈は猫の世話はお手伝いさん任せではあったが、ある時覗くと、お腹が大きい猫や知らない猫が心配そうにお腹の大きな猫をみていた。色々な猫がいた。チャやココは日本猫だが、やっぱり雑種だった。コシロも尾っぽは長く、日本三毛猫では雑種だと思われた。それが、ロシアンブルー、メインクーン、ヒメラニン、アメリカンショートヘアーなどの特徴のある猫も混じっていた。猫は一挙に30匹を超えて、猫の展覧会みたいになった。

ここの事は、香奈の家の猫たちがも質的に変貌する切っ掛けとなった。香奈は、相場とか取引だけの人でもなかったが、チャやココにとっては、香奈は相場とか取引の人のように見えた、なんとか香奈の期待通りにしようと思い、努力に努力を重ねて、相場猫になった。子供たち、いや子猫たちもそういう風に育てた。いわば相場猫の集団が、香奈の家の猫たちだった。取引適性と言うよりは、生まれながらの相場猫が、香奈の家の猫たちだった。子猫たちの配偶猫は、色々な経歴や才能も持っていた。単に取引だけ、相場だけの猫ではなかった。敷地内の、分岐状の水やリング状の水を飲み、急速に賢くなったとしても、取引や相場だけに興味がある訳ではなかった。ただ、生まれた子猫の子猫たちは、株屋の猫みたいなものなので、取引に関心がある子猫たちもやはり出て来て、線は細いものの、取引には天才的と言える猫たちが出てきたが、それはもう少し先の話である。

ココの娘のココハナコが好きになったのは、どちらと言えば、引っ込み屋のラッセルだった。ラッセルは猫のくせに手先が器用だった。ココジュンは、賢そうなプレイボーイみたいなプーチンを好きになった。プーチンはなんでも知っているような賢い猫だった。ココタロウは、ハキハキとした賢い猫であるクリスが好きになった。チャタロウは家族的なステラが好きになり、リトルチャは賢いテレサが好きになった。配偶猫たちは、より賢くなったとは言え、相場猫ではなかった。それぞれに興味は違っていた。この時期にジブ総合研究所や大学院大学が出来たのは、まったくの偶然であったが、配偶猫たちにとっては、自分たちの興味を持つそれぞれの分野に才能や適性を伸ばす事が出来た。ただ、ステラとラッセルは違った。ステラは、チャタロウと子供たちに囲まれていれば、それで幸せだった。ラッセルは、引っ込み屋だったので、ジブ総合研究所や大学院大学には、行けなかった。香奈以外の人を見ても逃げるし、知らない猫を見ても逃げる猫だった。小百合と道之助が、香奈の家に遊びに来た、道之助には、何故か懐いた。道之助のレンズ研究所は、ジブ総合研究所にも入らず、依然として香奈工業団地にいる地味な研究所だったが、そこに遊びに行った。レンズには興味があり、色々な作業を興味深く見ていた。 ココハナコは、ラッセルの事が気がかりで、猫チャンネルがありそうでなかった小百合に、ラッセルの事をそれとなく頼んでいた。小百合もそれとなく分かり、道之助にも言った。道之助も、ラッセルには何故か親近感が出て、色々とレンズの事を話した。ラッセルも大人しく、聞いていた。レンズを研磨する作業には、強い関心をラッセルは示したが、猫の手は、レンズを研磨するのには、適性があるとは言えなかった。それでも、手振りで、レンズを研磨するような格好をしていた。道之助は、それを見て、益々ラッセルに親近感を抱いた。道之助とラッセルの間には、猫チャンネルが出来た。小百合とココハナコとの間には。猫チャンネルとは言えないももの、なんとなく相手の言う事が分かるような関係になっていた。小百合と道之助は、旧敷地内に家があったが、真理が新しい家に引越したので、高層マンションの大きな部屋に引っ越していた。真理も歳になり、家の中にも会長室みたいなものを作り、そにで仕事をする事も増えた。高層マンションに住む方が、毛利貴金属としての仕事にも便利だった。それに小百合も眺望が好きだったので、高層マンションの高層階に部屋を借りていた。今までの家は息子に譲っていた。こうして香奈の家の猫たちと毛利貴金属グループの真理や小百合ともそれなりの関係が出来ていた。

一階は香奈と徹の部屋があり、徹は自分の部屋で、森の香りとかナンダカンダの芳香剤を置き、本を読んでいれば何にも言わないが、猫で溢れる家になった。お手伝いさんの手間は大変になり、お手伝いさんも猫好きのお手伝いさんを増員する事になった。香奈の猫好きはみんなに知られており、誰も何にも言わなかった。子猫の子猫も水や牛乳を良く飲んだ。そしてどんどん大きくなっていた。ねずみ算ならぬ猫算で猫が増え、コシロのように長生きをするとどうなると思う人も出てきた。瑠璃もそう思った、何か言おうとしたが、猫の事になるとムキになる香奈の性格を知っていたので、黙っていた。そんな事を言えるのは恵しかいないと言う事でみんなで恵に頼みにいった。

「本当に猫だらけね、猫も手術しないと一杯増えるわよ。」
香奈 「猫も一杯いると楽しいわよ。瑠璃にも言ったんだよ。私は猫を飼うぐらいのお金は持っていると思うけど、お前はどう思う。瑠璃も奈津美も黙っていたよ。」
「まあ香奈さんにそう言われれば、誰もなんにも言えないよ。でもどんどん増えるよ。」
香奈 「いいわよ。いくら増えてもその程度のお金はあるわよ。庭も広いし、庭に猫はなれでもつくろうと思っているのよ。」
「それを言われると誰も反論できない事は事実だろうね。」

結局、恵でも駄目と判り、香奈ファミリーは豪華高層マンションにプライベートスペースも欲しいとか言って部屋を借りる人が増えた。子猫の子猫もパソコンが好きでパソコンはやたらと増え、小さいネットカフェよりもパソコンが増えた。大きな広い部屋を猫用にしたのに、もう一部屋 大きな部屋を、猫の部屋にしてそれぞれ10台以上パソコンが並んでいた。ごきげんソフトも香奈のご機嫌を損なうと怖いので、高性能のパソコンとタッチパネル式のキーボートにして、そのまま置いた。しかもそれぞれの部屋には、香奈ファイナンシャルのホーム香奈とスイスカナコインの社長用が起動すると、直ぐにブートメニューになるようにセットし、それぞれの部屋にプリンターも数台セットした。要するに、スイスカナコインの別室と香奈ファイナンシャルの別室が、香奈の家に出来たようなものだった。大きなお不動さんの絵はスイス組の部屋に架け、もう一つのお不動さんの絵は、ちゃんと国内組の部屋に架けた。猫たちは、にゃーにゃーと、右が上、もっと高くとか色々と言った。色々と注文が煩かった。香奈も猫たちが自分たちで、取引している事が漸く判って来た。ごきげんソフトに命じて、特別仕様のパソコンにしていた。猫たちが取引しやすいように、パソコンにも工夫された。メインのメモリーは大きく、ごきげんソフトのジブトラスト専用のソフトがサクサク動くようにした。マウスは、猫仕様の大きなマウスになった。タッチパネル式のキーボードも大きく、猫が押しやすいように改良された。ディスプレーも猫の目にも優しいディスプレーにした。一応リスク制限として、ココ用の口座残高が年度始めの半分になれば、一旦取引停止になるようにもした。運用はいつもいつも儲かる事はないと知っていた香奈でもあった。しかし猫たちには、自由に運用させて、国内香奈では、運用枠なんぞは決めなかった。元々猫たちが稼いだ金だった。スイスカナコインは年寄り運用チームも枠制限もあり、人間達と同様にしていた。

元々セキュリティーはうるさいごきげんソフトではあるが、香奈は怖く、何も言えなかった。ただ一応対策は取った。猫の部屋のパソコンは、それぞれIDを取り、同時ログインはできるが、香奈ファイナンシャルではホーム香奈は独立した口座として、取引ログや情報ページアクセスログも独立して保管させた。スイスカナコインでも実は猫の部屋のスイスカナコインのパソコンは社長用とは言うが、社長Bと言う架空の存在を作り、取引ログや情報ページアクセスログなども独立して保管させた。そして香奈ファイナンシャルの香奈用のパソコンでは全ての香奈ファイナンシャルの成績、出資している会社の情報などが見れるようにしていたが、それは香奈の指紋認証のある香奈の部屋のパソコンに限定していた。スイスカナコインも、情報だけの時は普通メールにして、スイスカナコイン全体の成績の報告や社長宛に判断を求めるメールは親展メールとするように求めた。進展メールは、香奈の指紋認証のある香奈の部屋のパソコンに限定していた。しかも猫の部屋から出すメールについては追跡プログラムとリンクするようにしていた。香奈は全く知らなかったし、猫たちも知らなかった。要するに猫の部屋のパソコンは取引は、運用枠内での運用は可能だし、情報もみれるが、外部へのアクセスはすべて監視され、組織全体の成績は判らないように設定していた。香奈が何か言ってくればその時考えようとしていた。スイスカナコインに、情報以外の判断を求めるメールは、トップシークレットの親展メールで出すように求めていた。香奈にもトップシークレットの親展メールは読んでくださいと言っていた。

そして香奈宛の親展メールが届いた。コッソリートの作った証券会社を買収したいと言うものだった。「これはコッソリートさんからの依頼に基づくもので、スイスカナコインからの提案ではない。買収はスイスカナコインの余剰金で行えるが、各方面への影響、今後のスイスカナコインの体制等については添付ファイルをご参照ください。」と云う内容だった。香奈は添付ファイルなんか見ずに、直ぐに返信した。「いいけどコッソリートは元気なの、なんか金が要る事があるの、必要なら金かすよ」と返事した。翌日、「コッソリートさんは元気で、牧場の近くに隠居しています。コッソリートさん自身、かなりの運用手数料を稼いでいます。何か相続問題が気がかりで、スイスカナコインに運営を見て欲しいとの事でした。」との返事があった。香奈は、「それならいいけどコッソリート一族にも株を持ってもらうようにしなさいよ、コッソリートの作った会社なんだからどの方法かいいか、弁護士や税理士もよんで検討しなさい。連中はそんな事を考えて、金取るプロだよ。」と返信し、暫く経って、スイスカナコインから、コッソリートさんのお子さんで現社長をつれて、日本に行ってご説明してサインをいただきますと連絡があった。そして参考資料として本にもなりそうなファイルが添付されていた。印刷したら、インク切れになりそうな厚い資料だった。香奈はとても読む気にならず、スイスカナコインはなんとかやってるのと聞いた。スイスカナコインからは順調です、詳しくはお会してご説明しますと言ってきた。

香奈はスイスカナコインからの情報だけは、神子に参考になればと渡していた。香奈は今度も本のような資料を印刷もせず、メモリースティックにファイルを取り、神子に渡した。

スイスカナコインは年寄り運用チームと証券会社からの若者チームとに分かれ、それに猫たちも加わり、ありとあらゆる運用をしていた。香奈は運用枠を一定にして運用している積もりだったが、運用利益の25%づつ運用枠が増えていく設定となり、運用利益の15%が運用手数料となり、運用利益の数%をシステム使用料としてごきげんソフトに支払い、運用利益の25%を運用枠拡大に使用して、税処理して、会社経費そして、寄付、少しの配当などを引いた残りを会社保留に回していた。運用部門だけでなく、ビル部門、実業部門も別に保留していた。香奈の猫たちの上げた利益は、最初のオタスケーの時には、年寄り運用チームの運用利益と見なしていたが、年寄り運用チームも個人別の成績がはっきりとして、若い連中も入るようになるにつれて、香奈の猫たちの運用手数料部分は別勘定の変動準備金としておき、必要な時に運用部門以外の部門が貸りる形で使用できる事にした。もう運用枠は利益の25%拡大していったので、猫用の運用枠から借りる事もなくなった。証券研究所、微生物研究所も指導料などで利益を貰い、スイスカナコインとしては特に運用費補填もしていなかった。計上利益の10%をスイス財団に寄付し、5%をマリア財団に寄付していたが、それ以外では、従来から金を中心として、貴金属を購入するために、計上利益の一部を貴金属準備金に回していた。この貴金属準備金は、保有する貴金属ヘッジと称して、商品相場チームが貴金属相場もしていた。商品相場チームは、この貴金属準備金も使っていた。本来の商品相場チームの利益から貴金属準備金にも繰り入れたので、準備金が利益を上げる変な準備金だった。従来のように全体の利益から貴金属準備金に入れるお金は、段々少なくなっていた。それ以外は、特に使用していなかった。配当は利益の5%程度しか出さず、資本準備金などの準備金も特段に大きな設定をせず、おまけに奈津美がひ孫たちから調整して出資を集め、出資金は増え、保留金は増え、運用枠は増え、色々な会社の株も保有し、売買差益以外の保有株からの配当を運用とはみなす事も止め、こっそりと運用部門で働く人の固定給を支えるように変更して、運用チームの報酬の安定化を図った。ビルも相当利益を稼いで、その金で色々と不動産投資までして、スイスカナコインのお店まで利益をだし、実業部門は税金や会社経費などを除いて、計上利益に入っていた。コッソリートたちの年寄りも、株式投資以外にも、証券研究所の兄ちゃんや姉ちゃんと共に株先物やデリバティブに取り組み、証券研究所は実務的な取引の研究に取り組み、運用利益から情報料を貰い、微生物研究所はかなり高い指導料を取り、資源問題も研究して、金を貯めていた。もはや小さいジブトラストになっていた。

各部門も運営していく上で、自然な形でリーダーを選び、自然に部門会議などを行い、運営していた。誰が統一して運営しているか判らない不思議な組織だった。もっとも香奈には詳細に報告していたが、香奈は無理せずにやれるなら、いいわよとか言ったので、それが承認と云う事になった。香奈の猫たちも高水準で利益を上げていたが、香奈つまり猫たちの運用手数料は、別個の勘定のままスイスカナコインの利益となり、それが変動準備金になり、各部門の新規事業に貸し出すようになっていた。なんやかやとこの変動準備金は使われ、香奈にも報告されたが、香奈は無理せずにやれるなら、いいわよとか言ったので、それが承認と云う事になった。各部門も好調になって、みんなの報酬も高くなり、社長の香奈が無報酬と云うのも、各部門のチーフ、つまり役員の報酬を上げる事もできないので、一番高い部門のチーフよりも高くように内部で調整して、それを香奈の報酬と考えて、変動準備金に上乗せする事にしていた。このようにすれば、各部門のチーフも利益に応じて、報酬も貰えた。香奈は実際には報酬なんぞは貰わなかったが、香奈の報酬や取引での香奈つまり猫たちはいくら稼いでいる筈だと云うのも明確になっていた。これが無言のプレッシャーを与えてはいたが、香奈はなんにも言わなかった。香奈つまり猫たちは盛んに取引していたし、スイスカナコインも詳細に報告していた。当然報告は綿密に読んでいると思っていた。取引はそれを参考にしているものだったし、時には更に改良された方法で取引している時もあった。香奈はスイスカナコインの情報は、ざっくり呼んで、参考にしてねと神子に渡しているだけだった。香奈も取引が赤字にもならない限り、真剣に見なかった。それに桁数については読み違う癖は若い時からだった。香奈はスイスカナコインは古い小さいビルで、年寄りたちがのんびり取引しているイメージに基づいて判断していた。

スイスカナコイン、コッソリートの証券会社を買収

コッソリートは牧場で隠居してから、急に元気になったが、コッソリートの子供も歳になり、コッソリートの子供の子供、つまり孫は証券に興味がなく、非上場であって株だけ持っても、失敗すればどうにもならないし、だれかに売ってしまう事もあった。それなら、証券会社を売って信託財産でもした方がいいと思った。香奈はコッソリート一族もできるだけ株を持ったらといってきたが、普通に持たせれば、結局売るかもしれない。そこで、議決権なしの株を持つ管理会社にして、死亡や脱退時は、管理会社又はスイスカナコインに額面金額で買取りを請求できる事にして、子孫たちが株を持ちたいなら、管理会社に申請を行う事にした規約を作った。それをスイスカナコインも承諾して出来る限りの便宜を行うとする確認書を交わした。コッソリートとその子供たちは、思い切った安値でスイスカナコインに、ほとんどの証券会社株を売り、その証券会社は、コッソリート一族の管理会社に30%程度の議決権なしの株を更に安値で割り当て増資を行う事になった。議決権なしの株には配当を少し上げていた。弁護士や税理士たちがなんだかんだと考えて、この方法を考えついた。最終的には、香奈とコッソリート一族を代表するコッソリートの子供が日本で正式な書類に署名する事になっていた。

コッソリートの証券会社も資本金は小さいけれども、保有株も相当あった。スイスカナコインとの結びつきも強く、自己売買と同様だったが一般顧客へのコンサルティングサービスも充実していた。顧客たちに損をさせないようにする対面販売を心がけていた。

歴史的な大儲けの後、体制を作り直す各地のジブ

アメリカのジブカヨコトラストは、ファイナンシャルの資金として株式比重を高めたが、トラストとしても株式の保有が増えていた。その上、配当準備金を増やした。トラストにも元々保有していた株もあり、管理は、本体に報告し、指図も受けていた。神帥の部門は、ファイナンシャルで多くの会社を作りだして、一部をトラストが保有する事にして、トラストの利益を底上げした。 ヨーロッパのジブカミも、儲けたお金の一部をトラストとしても株式を保有していった。ジブカミは、ヨーロッパでは貴金属や食品会社では大きな会社群を保有しており、資源関係の会社でも大量の株を保有していた。そうすると不思議な事に向こうから、市場外で出資を頼みにくる企業まで出てくるようになった。増資や出資の相談や判断は、本来海外子会社の仕事だったが、保有している会社の業務に関係する事なので、貴金属では、毛利貴金属に頼み、資源や鉱山会社では、香奈オフィスに頼んだが、食品会社にはジブトラストの現地法人の人が役員になっていた。大きな出資の判断は手に余ったので、切人に頼んで食品会社の役員になって貰った。切人も忙しかったが、取引は段々切人チーム任せ、食品会社を大きくして、ヨーロッパやアフリカの役に立てようと考えている事が多くなった。

他の孫会社も、儲けの一部は保有する社の株式を上積みしたり、配当準備金を本体に依頼して、従来の出資金の2倍でなく積み増した。そうした組織的な充実はあるものの、今回の歴史的な儲けは息切れし、取引利益も減少していく事になった。それにジブトラストもこの歴史的儲けによる利益は、ジブシティーや研究所の建設費用とか、基金用に別に置いておく必要もあったので日本に送金させて、更に税金も払い、これらの出費も必要になり、結局いつもの年より少し多い程度の金額しか、ジブ本体や金融センターに残らなかった。陽太が、再チャレンジ社会とか言い出して、再チャレンジ基金なども作ったので、無料診察制度も安定して、折角国債の発行残高が少し減っていっていたのに、国債発行残高が又増えてくると思っていた人たちが円を売って、円安傾向が高まっていた時だったので、神之助は、加代子からのお金とか、各地のジブ子会社からの配当を日本に送る必要だったので、この円安の流れの中で、円安が進めば、円に替えるなどの作業を長期間続けていく事になった。

「正子さんや聖子ちゃんまでもがお腹が大きくなったのに驚いたね。」、
香奈「流石に、あれには吃驚したね。驚くほど成績が上がったのでなんかあると思ったよ。どこまで儲けるかと思ったけど、あれが限界だったみたいだったよ。今はもう利益は減っているよ。子会社と孫会社から、配当準備金を積みましたいと言ってきたけど、正解だったね、株も相当保有しているよ。本体でも保有する会社の配当は多くなったけど、取引での儲けは減っているから、段々利益は減っていくよ。海外でも会社からの配当は増えているけど、取引の儲けよりは少ないからね。」、
「損したの。」、
香奈「もうマーケットがジブが動く方に動くので、滅多に損はしないけど、もうそんなに大きく儲けられないのよ。大きく買ったり売ったりする事が出来ないのよ。利益は売買差益だもの。ジブも大きくなりすぎたね。沙織さんや会長室は、元々小さい企業にも投資していたり、先物も細かく売買するからそんなに減らないと思うけどね。やがては年間で10兆近くまで落ちてきそうだよ。銀行なんて配当は低いのよ。」
「そんなもんかね。でも貰っている寄付は、凄い金額だよ。もうそんなに儲けても仕方ないよ。財団の基金も貯まる一方だよ。医療補助も減って、財団の基金も、貯まる一方なので、海外債券が利率高いから、海外債券なんかで運用しようと云う奴までいるのよ。神太朗君の証券会社ではなくて、変な証券会社がナントカ債が儲かると言ってきたらしい。年10%以上も利子がつくと言っているよ。運用は大変なんだ、損する事もあるのよと怒ってやった。香奈さんから聞いていたからね。アジアの関係する財団にも応援する事も増えたから、大切に使わないといけないと言っているんだよ。」
香奈「それは、止めておいたほうがいいよ。絶対確実なんて事はないのが運用だよ。債券と云っても利率の高い海外債券は、為替運用と同じなのよ。今はジブトラストで債券をしているのは、神之助君たちのように値動きの激しい市場を取り扱っている人たちだよ。怖いみたいだよ。結構値動きがあるのよ。神帥君は実業に力を入れだして、そんなリスクの高いものをしないのよ。神之助君、神元君そして加代子ちゃんのグループが今まで運用利益が高すぎたから、他で儲けようとして、研究している程なのよ。下落する時のカラ売りは鬼のようなのよ。株式より債券が安定と言うのは、長い間、日本の国債が安定していた時の名残なのよ。神太朗君が新宿にいた時には、慎重に運用していたみたいだけど、神二郎君は、社債程度しか関係していないわよ。激動期には凄く動くのよ。みんな気楽そうに稼いでいるみたいに見えるかもしれないけど、専門の人も入れて、細かく取引しているんだよ。神之助君たちでもそうなのよ。大変なんだよ。それぞれで現金を確保している以外にジブトラストもカミカミも香奈ファイナンシャルでもほとんど運用しないオーバーシーズファイナンシャルを作っているのよ。香奈オーバーシーズは少しお金を貸しているけどね、正人が債権なんかでも返すから、仕方ないのよ。ジブもカミカミも神太朗君が株なんかでも返すから、神子ちゃんが調整しているけど仕方ないのよ。オーバーシーズの金の半分程度は、神之助君が管理しているから、多少は為替ヘッジはしてもらっているけどね。」
「運用会社からドーンと寄付をくれる状況が続いているから、最近の奴らは、運用は簡単に儲かると考えているのよ。」
香奈「運用よりは実業が安定だけどそれでも簡単でもないよ。神帥君も、会社を幾つか作り、それの方が忙しくなってきたみたいだけど、そんなに大きく儲けている訳でもないのよ。儲けは、昔より減っているのよ。」
「でも結構姫子ちゃんとアメリカに行っているね。」、
香奈「あの二人はアメリカ大陸での仕事は、多いからね。それに税金もアメリカの低いのよ。アメリカに半分以上住んでいると、アメリカで税金を払えばいいみたいなのよ。加代子ちゃんはそんな事は気にしないみたいなのよ。」、
「神元君たちは相変わらずだろうね。」、
香奈「そうでもないのよ。結局大きな会社を持っているのは、神元君たちなのよ。みんな任せているけどね。今いつも自分で細かくても取引しているのは、沙織ちゃんと聡美ちゃんそして加代子ちゃんぐらいになったよ。マリアさんも取引は少し減っているのよ。神元君は会社を買ったけど、人を任せているくせに、そんなに自分では取引しないようになったよ。切人までそんなに取引しないのよ。神元君と聡美ちゃん達の食品会社の運営にも口を入れているのよ。切人たちも少しは株を持って、聡美ちゃんと管理会社を作っているんだよ。」、
「神元君たちは、真理さんや瑠璃さんたちにも任せているよね。」、
香奈「知らない事に口を出すよりも、信頼できる人に任せるのが賢いかもしれないね。」
「それが聡美ちゃんの戦略かね。あの格好からは想像できないけどね。」
香奈「そうかも知れないよ。格好も計算しているのかもしれないよ。」
「そうかね。それは考えすぎみたいな気もするよ。ところでこのワイン美味しいね。どこのワインなの。」
香奈「スイスコインが山間部を、思い切り広く買うから、ブドウ畑からワイン工場まで買ったのよ。快適にぶどうを選んで貰ったワインなのよ。限定品だよ。チーズと生ハムは、聡美さんが買ったイタリアの食品会社の製品なの。これも美味しいわよ。私は好きだよ。」
「本当に美味しいね。」
香奈「チャも生ハムは食べるんだよ。」
「変な猫だね。」
香奈「この間スイスから連絡があってね、金を作る細菌は、本当にいたんだよ。金を食べる菌だけどね。金の廃鉱が金がキラキラ光っているらしいよ。ホラフキーのほらは、本当になったよ。遺伝子研究センターは、レアメタルも食べる菌も作れると云ってるよ。毛利レアメタルのシステムも改良すると言ってるよ。分別した鉱石から直ぐにレアメタルが簡単に分離出来るらしいよ。」
「ほらから出た真だね。」

ジブトラストもカミカミファイナンシャルも海外の香奈ファイナンシャルも個人ではなく、多くのディラーが動き出して儲けるようになり、取引の頻度は増えたが、取引の利益は減り、配当収入も増えてきた。

ジブトラストでは、実際に運用する金額も減ってきた。取引するディラーは増えているのに、動いている金額や利益は減ってきた。多くのディラーは感応したとは云え、実際の取引は、人間がするので、もう人間ではないような儲け方はもう出来なくなった。損切りも増えてきた。ただ収入や利益は、事業会社からの配当による部分も増え、より安定度も高くなってきた。

ヨーロッパでは、日本とよく似た財団が、各国に出来ていた。アメリカではエンジェルホープ財団が医療援助して、ジブアメリカが支援するチルドレンファンドとの連携も深めて、活動していた。南米でもより大きくなった快適のインフラ整備とブラジルジブ財団が共同して、運動を進めていた。アフリカでは、マリア財団が、マリア記念病院を始め、カミカミの持つ二つの病院と快適が持つ病院も併せて、マリア財団の活動を支え、快適農園の農作物とヨーロッパの食品会社からの食品も安く入手でき、運動にも幅が出来た。アジアと中東では、快適のインフラ整備とジブ現地法人からの寄付では、そんなに十分な資金でもなかったが、みどりの組織したアジアの財団を辺朗の妻のケイが運営しながら、運動していた。養成したり、奨学資金を出したりして、活動してくれる人も増えてきた。そして資金力が豊かになった日本の財団が協力して、運動を進める事が出来た。不動財団は、倒産した会社やつぶれた筈の人たちを再生してきた。治部食品の一角に入ったり、ごきげんソフトでソフトを作ったり、麻田エンジニアリングや機械に部品を売ったりした。菊子金属に特殊な金属を作って貰って、不動総合団地で産業用の機械部品を作ってもらったりした。再生マンションも新しく潰れた人が入り、不動ファイナンシャルが新しく倒産した会社の面倒を見る事になった。不動財団は再生ファンドではなかったので、再生資金は不動ファイナンシャルが全額出した。成功して金が出来れば、ある時期まで、買戻しに応じる事にしていた。成功した人の報酬は利益比例にしてあげていた。それでもみんな慎重だった。一部だけの買戻しに応じて、後は利益からの報酬で納得した。配当は利益の三分の一、働いている人の報酬も三分の一、内部保留も三分の一と云うジブの原則に従っていたので、その方がリスクが少ないと思った。結果として、不動ファイナンシャルは多くの企業を保有するようになっていた。不動ファイナンシャルの利益は回りまわって不動財団に入っていた。不動財団の基金は増えていた。不動ファイナンシャルと香奈ファイナンシャルからの寄付も高水準だった。それだけでもなかった。寄付も増えてきた。すべて上手くいったわけではないが、つぶれた企業とつぶれた人も再生する事もできそうだった。もうすぐ陽太がジブの里に帰り、不動財団の責任者になる日も近づいてきた。神子は陽太のためと云うより、神子たちのファミリーの大きな家を建てて、準備していた。

明らかになるスイスカナコインの実態

神子は、香奈から参考になればと、渡されたメモリーの資料を軽い気持ちで、ファイルを開いた。大変な量の書類だった。プリンター用紙が足りるのかしらと思う程の量だった。そこには、スイスカナコインの現状とコッソリートの作った証券会社との合併計画、合併の方法、今後のスイスカナコインの運営方法、ヨーロッパと世界の動向そしてそれへの対応など事細かに説明され、スイスカナコインの証券研究所の詳細な報告まで添付されていた。神子は、吃驚して陽一を呼んで、二人でじっくり読んだ。陽一は研究所と大学院大学の創立や運営の確立で忙しいと言って、一族の銀行の非常勤役員にもならなかった。その忙しい筈の陽一もじっくり読んでいた。そして正子や神之助も呼んで、詳細に検討した。陽一はスイス証券研究所の報告書に驚いた。正子はスイスカナコインの先物取引の取引とその成績に、神之助は為替、商品相場、債権、デリバティブの取引内容とその成績に驚いた。陽一と神子は、証券研究所の報告でスイスカナコインの数字などは伏せながら、研究センターのセンター長と副センター長にだけ、秘密の書類だよと言ってみせた。こんな報告書がジブトラストも必要なんだよ。研究のための研究じゃなしに、取引のための研究が求められているんだよとも言った。二人も同感した。研究センターもその方向で再編していますが、参考なりますといった。

神子「この間の報告書、とても参考になりました。スイスカナコインの事もとても詳しく書いていました。お母さんも先物取引の成績には感心していました。神之助も為替、商品相場、債権、株先物以外のデリバティプなどの取引内容や成績に感心していました。極秘資料も多く、渋谷では漏れる事も危惧されるので、研究センターのセンター長と副センター長にだけ、スイスカナコインの数字などを伏せて、証券研究所の報告を読ませました。こんな報告書にするように、もっと研究センターも考えろといっておきました。それにしてもスイスカナコインは凄いですね。規模といい、取引内容といい、まさしく、コンパクトにまとまったジブトラストですね。この報告書は極秘情報があまりにも多いので、私と陽一さん、お母さんそして神之助しか読んでません。あの証券会社の内容と体制は、神太朗兄さんには参考になるでしょうが、今は違う証券会社なので、見せていません。これは極秘書類なので、コピーも取ってません。香奈おばさんにお返します。スイスカナコインはそれぞれ担当毎に分かれて、一人の人がコントロールするのではなく、一人一人の自主性を持った取引をしながら、チームとしてまとまっています。取引もチームとしての方針を持ちながらも、ティラーは自主性を持った取引をしているんですね。証券会社をスイスカナコインの中に取り込みながら、証券会社としての範囲と運用会社としての活動範囲をコントロールしようとしているんですね。今後のジブにも参考になります。」
香奈 「神太朗君にも見せてもいいわよ。でもスイスカナコインもコッソリートの証券会社も小さいから参考にならないかもしれないね。そんな事も書いてあったの。あまりにもグチャグチャ書いていたので、要するになんとかやっているのと聞いたら、順調ですと言っていたから詳しく読まなかったの。」
神子「スイスカナコインはそんなに小さくありません。ジブスイスの何倍もあります。たしかにジブトラストに比較すると小さいですが、優良な資産もあるし、保有株もヨーロッパを代表する会社の株を持っています。現金や金も保管しています。証券会社も優良な顧客を持ち、それぞれポートフォリオを相談して、じっくり取引してもらうようにしています。神太郎兄さんが喜びそうな内容です。取引も凄いですね。株式も凄いし、先物もお母さんが感心している程優秀ですし、為替や商品相場そして債権や他のデリバティブも神之助が感心するほど優秀です。香奈おばさん直接指導の成績がすば抜けています。よくそんな時間がありますね。」
香奈はあれは猫が取引しているのよといったが、神子は、アハハと笑って、では神太朗兄さんに極秘で見せます。今後のジブにも参考になりますと言って、会長室を出ていった。

コッソリートの子供とスイスカナコインの幹部たちが日本に来て、香奈と会った。改装が終わっていた香奈の家の隣の会議室で、会議を持った。正式な書類もやり取りもした。スイスカナコインの幹部たちは、それぞれスイスカナコインの現状と証券会社の現状、今後の体制などを詳しく説明した。今回来た、スイスカナコインの幹部たちは香奈に会うのは初めてだった。それだけに詳細に説明した。香奈は最初になんとかやっているのと聞いて、みんな順調ですと言って説明した。香奈は、順調ですと言われた後の事はそんなに真剣に聞いていなかった。あまりにも詳しい説明だったので、途中で飽きた。

香奈「コッソリートは、まだ元気らしいね、この間メールをもらったよ。取引もしているらしいね。無理するなよと言ったけど、牧場の横に隠居場を建てて、のんびりと取引していると言っていたよ。猫も遊びにくるらしい。」
コッソリートの子供「本当に元気ですよ。隠居場を作ってから益々元気になって、今回も一緒に行くと言ったから、それはいくらなんでも無理と言ったぐらいです。香奈さんによろしくと言ってました。証券研究所の若い人も入れて、取引まで再開したのですよ。結構成績もいいとお父さんは意気盛んです。」
スイスカナコインの幹部A「良いと云うレベルではありません、驚異的な成績ですよ。」
コッソリートの子供「遊びに来る猫は、高齢で、お父さんにどことなく似ていて、なんか気持ちが通じると言って、仲良くしています。」
香奈「そうなの、それはいい事だよ、コッソリートも一代で、ここまで会社を大きくしたのね。昔の事を思い出すと夢のようだね。」
コッソリートの息子「香奈さんにはとても敵いません。お父さんはウチはコツコツと大きな損をださないようにしていくしかないといつもいつも言ってました。途中からスイスカナコインに大きくしてもらいました。お父さんは、いまはもう歳だしとか言って、少し大胆な事をしているらしいです。なくなってもいい金で取引して、取引を楽しんでいると言ってました。証券研究所の若い人と話して、新しい事に挑戦しているので、気持ちも若くなったと言ってます。それにしても、ここの雰囲気はお父さんの隠居場とよく似ています。山の景色もいいし、牧場もあるし、猫も庭でのんびりしています。」
香奈「ここも私の隠居場みたいなものだからね。」
コッソリートの息子「私の子供たちは、証券なんかに興味がなくて、それならスイスカナコインの傘下に入った方がいいとお父さんが言ったのです。我々も株を持つようにして頂いて、感謝しています。」
香奈「元々コッソリートの作った会社なんだから、当然だよ。スイスカナコインもなんとかやっているようだね。」、
スイスカナコインの幹部A「ジブトラストとは比較になりませんが、証券会社から若い人も来て、昔のような年寄りたちだけの運用チームだけでもありません。コッソリートさんが年寄り運用チームのリーダーみたいになって、年寄り運用チームも成績が凄く上がりました。貴金属関係の商品相場もそれなりに儲けています。証券会社にも、その分野の免許を取ってもらおうと思っているのです。ジブスイス貴金属やジブスイス、そしてジブカミスイスも、スイスでも貴金属先物の取引は、そこをベースにしようと言ってくれてます。子会社と云う形になるかもしれません。神太郎さんのスイスの証券子会社も理解してくれています。」
スイスカナコインの幹部B「香奈さんはお若く見えます。取引のセンスも若いけど、本当にお若いですね。取引頻度も高いし、儲けも凄い。我々の取引結果を報告する時は、成績が悪いと言って怒られないか、いつもヒヤヒヤしていのすが、大目に見ていただいて感謝しています。」
香奈 「私の取引は、ウチの猫がしているのよ。又子猫たちも生まれたから、若いセンスも入っているんだろうね。」
みんな、アハハと笑い、それはそれで終わった。
スイスカナコインの幹部C「企業部門では、神元さんと聡美さんの食品会社と協力して、乳業関係を中心とした食品会社を作ろうと計画しています。香奈オフィスとは、研究所では協力していましたが、実際に資源開発会社を一緒に合弁で作る事になりました。この後瑠璃さんと奈津美さんにもお会いして、話を詰めていきます。広い意味では香奈さんの兄弟会社のようなものですからね。」
香奈「それはいい事だわ。研究ベースの開発を進めていくのも重要だわ。瑠璃や奈津美にも言って、ロボット工学からの人を出してもらって、新しいロボットの要望も出せばいいのよ、ロボットも研究所も工場も出来たのよ。実際に要望する事から新しい技術ができるのよ。」
スイスカナコインの幹部C「そこまでは思いつきませんでした。まず我々だけと思ったのですが、今の新しい技術を導入しながら開発を進めていくのはいい事です。ロボット工学も同じ兄弟会社ですし、カミヨエンジニアリング関係の会社も合同で研究所と工場を近くに作ったと聞きました。早速奈津美さんに連絡します。」
香奈「そうしなさいよ。みんなで協力できる所は協力していった方がいいわ。奈津美も家にいたから直ぐにここで電話しなさいよ。」、
スイスカナコインの幹部D「乳幼児施設をビルの中に入れた赤ちゃんスキ不動産が進めたビル開発を参考にしていきたいと考えています。ネコスキーノさんから、サテライト学校も考えてくれと言われています。日本の財団と新宿の不動産チームの人たちにもお会いして、我々のできる範囲で進めていきたいと考えいます。」
香奈「そうだね。我々は小さいから、無理はしないでね。すぐにやっていけなくなるようではかえって迷惑をかけるからね。」
スイスカナコインの幹部D「我々はスイスでは大手の不動産会社と云われているんですがね、ジブの不動産チームと比べると小さい事は確かです。不動産部部門も多少留保を持っていますので、その範囲で進めていきます。」
香奈 「無理しないでね。神二郎君には、私からもよろしくと言っていたと伝えてね。」
スイスカナコインの幹部D 「それは有難いです。一緒に来日したジブスイス財団も不動財団の活動には興味をもっています。神二郎さんにもお会いしたいと思っています。」
香奈 「今は神二郎君も忙しいのよ。ちょっと連絡してみるわ。」

神二郎は、今日は高杉と一緒に早く帰ってくると言った。それなら不動財団の人もよんで、ジブホームホテルで財団の運営状況を説明すると言った。

スイスカナコインの幹部C「我々は、不動総合企画に非常に興味があります。カミヨエンジニアリングは確かに成功しましたが、我々は不動総合の方法の方が、ビジネスとしても幅広い分野に進出していけるのではないかと思っています。スイスではその方法を知りたいと思っています。」
香奈「あれは大変だったのよ。軌道にのるまで、お金も時間も要ったのよ。無理はしないでね。」
カナコインの幹部C「それはわかっています。でもビジネスとしても結局、不動総合のやり方に魅力を感じています。目先は苦労しても成果は幅広いものです。まあ我々のできる範囲でしか、出来ないですけども、企業を再生し、育てていく事も必要です。我々は自分たちに近い分野でしか、活動できないと思いますが。」
香奈 「そうだね、それを十分、分かった上で、慎重に計画を立ててね。」

香奈はいくら説明を聞いても、スイスカナコインは小さいグループとしか実感はなかった。スイスカナコインの連中は、今やスイスを代表するグループと云う自負もあった。話は少しすれ違ったが、香奈は無理をしないで、進めてねと言ったので、各部門の留保金以内で進めていく事の了解を取ったと思った。各部門の留保金額もそんな馬鹿にする額ではないと香奈は実感していなかった。運用部門も、安くなったとは云え、コッソリートの証券会社には、大金を出資し、この際、色々な相場関係の会社も買収する計画だったので、他の各部門に出せと云われると大変と思っていた。とりあえず、下のレストランで食事も用意できていたので、みんなで飯食って、景色がいいですね。ここのステーキは美味しいですねとかいいながら終わりとなった。それぞれの部門は、関係する会社や興味のある人と話をして、スイスジブ財団も日本の財団、不動財団の人と会議して帰っていった。

神太朗は極秘書類を綿密に読んで、子会社であるスイスの神太朗の証券会社からも情報を取って、自分でも検討し、所々で自分の証券会社の連中とも会議して、この書類を参考にして、神太朗の証券会社でも参考になる事は早速活用していた。そして香奈の所にやってきた。

神太朗「香奈おばさん、報告書をみせてもらいました。スイスカナコインは凄いですね。証券会社は早速商品先物会社を手に入れたみたいです。スイスの子会社からの報告も聞きました。為替専門会社まで傘下に入れ、コッソリートさんの証券会社を総合証券会社にして、その証券会社をベースにして、取引分野を拡大させる計画らしいです。元々証券研究所も取引関係の情報が強い研究所と知られていました。今まで非公開だったので、コッソリートさんの証券会社も優良な資産を持っていると云われてはいましたが、ここまでとは思いませんでした、それに各分野の関係会社を入れ、証券研究所にも研究させながら、大きなグループにするらしいですね。デリバティブも得意なんですね。でもジブトラストの今後にも参考になります。みんな、独立しながらも、統合されているですね。これがうまくいったら、ジブトラストの今後もそうしたいと香奈おばさんは考えているんですか?そんな噂もあります。」
香奈 「そんな大層な、スイスカナコインは小さいのよ。年寄りたちと猫たちが細々と進めている会社だよ」
神太朗「またそんな冗談をいって、でもスイスの子会社に聞いても、香奈おばさんの指示は限定的で自由に運営しているようだと言ってました。恵おばさんは、初め香奈おばさんの秘密口座を管理している名目的な会社と言っていましたが、もはや全然違います。神二郎も後で、不動財団から説明を受けて、びっくりしていました。恵おばさんの財団と不動財団をコンバクトにまとめた財団なんですね、ジブスイス財団は。この報告書も良くまとまってます。」
香奈「あんな報告書が参考になれば、いい事だよ。」
神太朗「この報告書は経済分析もしっかりしているし、神子や陽一さんも吃驚していました。僕も早速、会議をして、色々参考にして、改善しました。ただこの報告書は極秘情報をあまりにも詳しく書かれているので、そのまま会社の連中には見せられません。」
香奈「そんなに詳しく書いているの。ゴチャゴチャ書いているから、私はじっくり読んでいないのよ。この間説明も受けたけど、一言でいって順調だと思うけど、違うの。コッソリートの証券会社もそこそこ大きくなったみたいね。」、
神太朗「そんな程度ではありません。ヨーロッパの財界では大騒ぎですよ。名だたる企業の株をスイスカナコインが相当保有する事になるんですよ。たしかにジブトラスト全体と比較すると小さいけど、みんな統合されているから、強いのです。」
香奈 「そんな大袈裟な事をいって。スイスカナコインの連中も大きな事をいうから、注意したのよ、無理をしないで、できる範囲でやってねと。」
神太朗「どうも話が食い違いますね。スイスカナコインは、銀行を保有しない、集中的に保有する企業は少ないと云う点では、ジブトラストとは違いますが、幅広く多様な企業の株を相当保有し、時価総額の計算は難しいですが、ジブトラスト全体の約八分の一程度の規模ではないですかと思います。集中的な保有が少ない事を理由に、保有株のリスク管理を徹底して行っています。保有する現金も多いし、多様な取引をしていて、スイスの市場を牛耳っていると云われているほどなんです。」
香奈 「そんなに大きくなっているの?」
神太朗 「香奈おばさんが管理して、運営しているのではないのですか?」
香奈「詳しい事は知らないわよ。こんな事をしますから、いいですか聞いてくるから、お金の手当てができるなら、無理しないでやってねと言っているだけだよ。元々金と現金を保有ための会社だったから、金と現金が少しずつ増えていけば、無理しない範囲で自由にやっていいよと言ってるだけだよ。猫牧場と猫ハウスはできるだけ叶えてやってねと私から言ったけどね。」
神太朗「香奈おばさんは猫好きですからね。スイスカナコインの牧場は確かに猫牧場と言われています。牛よりも猫が多いらしいですね。みてきた人の話では、日本の猫みたいな猫もいるといってました。それはそうとして、この報告書はお返しします。本当は私が見てはいけないものです。あの証券会社を手に入れたのは正解です。しかもあんな安値で、財務は優良だし、保有株を考慮すると、格安とも言えます。コッソリート一族も相当株を保有する事で折り合ったのでしょうが、大した交渉力です。」
香奈「この話は、コッソリートが言ったのよ。金額も大きいから、スイスカナコインは断っていたけど、コッソリートの孫たちは証券に興味ないし、スイスカナコインの連中なら、うまく運営してくれると思ったみたいなの。ほとんど売ると言ったけど、今後は証券会社も使って取引して、配当を出すようにするからと言って、コッソリート一族の管理会社を作って相当の株を持つようにしたの。それでも管理会社の株を売りたいと言う時には、スイスカナコインが優先的に額面価格で買う事ができる条項も入れたのよ、それもコッソリートが考えた事なの。孫たちが、勝手に処分できないようにしたいと考えたね、コッソリートは売るよりも配当貰っていた方が得と孫たちが考えるようにしたいと言うのよ。元々私から借りたお金で始めた会社だと言うのよ。」
神太朗「そうだったんですか、そういう考え方はありますね、ジブをはじめとして一族の管理会社はそうしています。でも今回の事はジブには非常に参考になります。本当にそうした方がいいのかもしれませんと神子たちとも話しています。でもこれが出来るのは香奈おばさんの存在があるかもしれませんね。今まで、みんな独立して勝手に取引していたけど、この頃は、よく話し合ってみたいですね。神子も今はジブは統合しながら、やっていけるかもしれないと思うようになったといってます。」
香奈「それはわからないけどね。でもみんなで協力してやっていくのは、いい事だよ。証券をジブに吸収するかしないかは別にして、神太郎君もジブに帰ってきてよ。陽一さんも帰ってきたのよ。」
神太朗「よく考えてみます。神一はぼやいてましたよ。単に研究所を外部に出すだけの話だったのに、総合研究所にまでして、大学院大学なんかをつけて、その運営が大変とかいって、陽一さんは非常勤の役員にもなってくれない。そのくせ、役員ではなく、アルバイトだと言って、神子と相談している、すごいアルバイトだと言ってました。」
香奈「それはそうだね。研究センターではセンター長よりも偉いアルバイトだよ。でもジブは助かったよ。みんなの役にたつ研究センターになったよ。株式や株先物は詳しいけど、商品相場や為替、債権、デリバティブはあっさりしすぎると不満だったみたいで、自分たちで、調査や研究していたんだよ。それを陽一さんが、みんなの研究チームと協力して、研究センターネットワークをまとめたの。研究センターを単に外部に出すことではないのよ。基礎と応用というか実務的な研究センターに分けたよ、それで、みんなの役に立っているのよ。基礎的な研究所も偉い先生が揃ったよ。企業分析研究所も知加子さんがうまく組織して、結構、実務的なのよ。今後は、株を保有している会社の分析をしてもらおうと思っているの。お金も無駄ではなかったみたいだよ。それに有望な人を育成もできるしね。」
神太朗「それはいい事です。証券会社も派遣しました。若い人たちを育ていく事は必要です、神一も自分で、銀行内で自由に考える雰囲気を作らないといけません。陽一さんに頼ってはいけませんよ。私からもそう言っておきました。みんなの意見を聞くよと云う雰囲気をもつようにしなさい。世間にも銀行にも異才はいるんだと思う気持ちが大切なんだと言いました。」
香奈 「たしかに神一君にそういう姿勢があれば、天下無敵になるだろうね。」
神太朗 「陽一さんもそれを考えたのでしょうね。この報告書はよくまとまっています。スイスカナコインの現状もよくわかります。本当に極秘書類ですから、香奈おばさんにお返しします。」

香奈もそういわれてじっくり読んでもみると、スイスカナコインは、金や現金だけでなく、運用部門をはじめとして、各部門はよく頑張っていた。それぞれの部門毎に保留金もつみ、各部門が運営しやすいようにしていた。でも香奈には、ジブの今後をどうするかと云う問題を抱えていたし、香奈ファイナンシャルをどのようにまとめていくか、香奈オフィスはどうするのか、等々、考えなければならない事が一杯あった。又香奈はスイスカナコインの事は記憶の片隅においやった。

スイスカナコインは、どんどん大きくなっていった。

神太朗たちも香奈も甘かった。報告書がいくら詳細に記述されていたとしても、それは結局書いた時点で過去になると云う事を理解していなかった。スイスカナコインは、コッソリートの証券会社を手に入れて、その保有株は膨らみ、その影響力を使い、企業部門は利益率の高い企業を起こし、資源開発の会社は、先進的な技術を持って、いくつかの資源を開発し、莫大な利益を上げていった事はみんな知らなかった。それにコッソリートを中心とした年寄り運用チームが、コッソリートを核にして、本格的に運用を開始して、証券研究所の英才をこき使い、デリバティブで驚異的な儲けを続けていった事を、そして何より猫運用チームは英才の猫が子猫の子猫に多く誕生し、信じられないような儲け方を続けていき、証券会社から来た若い連中がそれに刺激を受けて頑張っていき、運用枠は25%ずつ増え、残りは一部金や現金として保留された。年寄り運用チームや若いチームの運用利益は、運用手数料とシステム手数料、運用枠拡大などに使われ、残りは運用部門の準備金として保留されていた。しかし香奈の報酬や香奈の猫軍団の運用手数料は、変動準備金と云う別勘定にして、運用部門以外の部門が必要な時は、ここから借りていた。猫たちは稼ぎつづけ、その利益をプールしていた変動準備金は巨額になった。香奈はそのまま放置していたので、企業部門や不動産部門は、新規事業を展開していたので、スイスカナコインは、おずおずと回りくどい言い回しで 半分は運用部門以外に分配したいと香奈に申請した所、あっさりいいわよと承認された。猫軍団の儲けた金は、半分の7.5%は依然として変動準備金として置き、残り半分は運用部門以外へ分配する事に決めた。運用部門以外の各部門は、巨大な変動準備金の半分を配分され、その上、毎年猫軍団の稼いだ運用手数料の配分も受けた。そのお金を運用部門以外の部門が更に有効利用して、各部門も利益を上げ、あっと云う間に、スイスカナコインが大きくなっていく事を予想していなかった。香奈は、ちゃんと報告を受け、順調ならそれでいいよとか言って、それをよく読まず、以前として前の小さいスイスカナコインのつもりで自由にやらせていった事を知る人はいなかった。寄付が増えていったジブスイス財団は、もはや子供たちのための財団ではなく、総合調整型の財団に変化していった。変動準備金の分配も受けて設立したスイス総合企画が、不動総合の活動を参考にして、ネコスキーノの学校を出たり、大学院大学を出たりした英才を活用して、多くの会社や人を再生して、傘下の会社は増えていった。スイスカナコインのその他の部門も、この英才たちを活用した。そして各部門は急拡大していった事は香奈以外には知るすべもなかった。スイスカナコインはあくまでも香奈のプライベートな個人会社であり、香奈はその膨張を知る立場にありながら、スイスからの報告をほとんど読まず、自由に活動させていた。香奈は、依然の小さく、古いビルの運用会社のイメージが強く、それ以外の人は証券会社を吸収した時点でのスイスカナコインのイメージが固定していた。

転機を迎える兆しが見えるジブトラストと財団

「ジブスイス財団は、大したもんだと財団では言っていたよ。ジブスイス財団は病院も持っていないし、乳幼児施設も少ないけど、公的な制度や協力病院や協力施設を使いながら、総合的なサポートをしているんだよ。私たちの財団や不動財団の活動を調査にきたみたいだよ。私たちの財団とも意見交換をしたんだよ。不動財団のしているような事も少しはしているんだって。人によって悩みは違うから、総合的にサポートしていく事が大切だと彼らは言ったらしい。親たちの心配事にも相談しないと、結局子供たちを助ける事にはならないと言っているみたいだよ。役所みたいに、私たちはここまでとはいわないようにしているらしい。日本の財団でも刺激を受けたらしい。難病の子供たちを助けるグループから若いお母さんの相談にのるグループまで、色々細かく、日本の財団は対応していたけど、総合的なサポートをする姿勢がたりないと思い出したみたいだよ。私は昔は規模も小さいし、何でも相談にのっていたんだと話したの。今も少しはしているみたいだけど、専門的になりすぎる傾向が強すぎるとおもったみたいだよ。財団にとってもいい事だよ。」
香奈 「そうなの。色々と見学して意見交換したいと言っていたね。ジブスイス財団はそんなに大きくないから、なんでも相談にのるらしいね。無理しない程度に、出来る範囲で少しずつやっていきなさいと私は言ったんだよ。」
「そうだよ。私たちは最初はそうやって活動してきたんだよ。今の財団は色々な施設や病院をもって、専門的になりすぎているんだよ。それがわかっただけでもたいしたもんだ。日本の財団も定期的に協力財団の見学や研修にいくことにしたと報告を受けたよ。又まとまって活動していこうと雰囲気が出てきたよ。総合的な調整や心理的なサポート担当も育成するんだよ、大学院大学にも派遣しているのよ。」
香奈 「それはよかったね。ジブでもジブシティーを作った時に不動産チームだけでなく、新宿の他のチームも協力したし、他のグループも協力したんだよ。加代子ちゃんが張り切って、お金を一杯日本に送金して準備したのよ。みんなそれで触発されてね。不動も例のマンションを建てたのよ。赤ちゃんスキ不動産も同じようなビルも建てたよ。聖子ちゃんも安いよの大きな店を出したのよ。ニコニコホテルもホテルを開業したし、ジブシティー内の都市内のサービスを請け負うニコニコサービスも出来たよ、加代子ちゃんはお金があまり使わなかったから、知加子ちゃんの紹介で心理学の先生を集めて、エンジェルホープジャパン病院には心理ケアセンターも作ったらしい。みんなあまりに張り切るから、工場やオフィスも増えたよ。それを、みんな賃貸契約なんかするからジブの負担は増えたけどね。でも先々は大分儲かると高杉は言うんだよ。」
「さすがジブだわ。転んでも金を掴む元祖みたいだね。」
香奈 「自給自足できる町にするのが目的の1つでもあるらしい。イチコプロダクツも農園を広げるらしいよ。遺伝子研究センターと快適農作物研究所が協力すると言っていたよ。大きな町になったね。恵の所も第二ジブタウンが出来たらしいね。結構大きなビル群みたいだよ。ファションやショッビングそしてレストラン街、オフィスゾーンまであるんだよ。」
「そうなの。小夜さんは何にもいわないよ、今度聞いてみるよ。」
香奈 「小夜さんは拍子抜けしたみたいだね、エンジェルホープジャパン病院は、ほとんどが加代子ちゃんが出したし、その上賃借契約にし、建物の使用権だけの契約にしようとしたら、小夜さんがゴネて、恵がうるさいと言うから、ジブシティー株式会社は特例として、恵のビルの分だけ出資してもらう事にて、その代わりにビルを自由に使える事にしたのよ。それでも小夜さんは恵に説明しずらいとこぼしていたらしいよ。その程度は、余剰金で軽くまかなえたらしい。ファション街も冶部洋服やブランドショップなどであっと云う間に埋まって、レストランもお元気レストランや新吾さんたちの料理店が核になって、すぐに埋まったし、ショッピング街も安いよが大きな店をだしてね、オフィスは、ジブの不動産グループが集めてきたオフィスを割り振ったので、あまりする事もなかったみたいだね。」
「そうだったの。確かにビルを借りて、使用権だけもらうのは私は嫌だわ。少しでも出資すれば、少しはましだね。そんな事があったの。だから黙っているんだ。大掛かりな都市を作るんだとはしゃいでいたんだよ。菊子さんにも出資してねと言っていたのに、この頃おとなしいのよ。まあみんなで作ったからね。出資したなら、まあ仕方ないね。でもなんでなの。」

これには訳があった。確かに高杉はジブトラストとして賃貸にして、町自体を自由にレイアウトしたいとも考えていた。ただそれ以前には、この付近には、ほとんど電気も通っていなかった。徹の未来エネルギーで発電システムを用意して、電気を供給する事は出来た。未来エネルギーシステムの補助発電、つまり小型自家発電機の普及で、電力会社の営業成績が低下してきた。電力事業者は独占して、勝手に計算して電気代を決めてきた。これが崩れ出したので、政府に泣きつき、より規制が厳しくなった。そのため一時、限定的に、電気を送電し、配電する事には寛容だったのが、にわかに難しくなった。企業とか個人でも自家発電は可能だったが、しかし、それぞれ名義の違う建物に送電するのは、難しかった。そのためジブシティーは巨大なビルを持つ会社として、自家発電を持つビル群としたのだった。徹は安全のためタイプの違う発電機を複数、ジブシティーに設置していた。

「そんな理由もあったのね。でも敷地内は、ほとんど自家発電でも、電気も通っているよ。」
香奈 「ここは徹さんが発電機作る前から、ソーラーなんか置いていたし、元々電気も通っていた。今はすべて、ジブホーム不動産の家になっているのよ。規制が煩くなった時に、みんなが出資してそういう形にしたのよ。この辺りはすべて、香奈ファイナンシャル不動産の所有にして、ここらの家はあの高層ビルの中の1つの部屋扱いなのよ。家やマンションの建築費用がそのまま、出資金になっているのよ。領収書見なかった。説明するように言っておいたけど。」
「そんな事は知らないよ、ややこしいのね。あの山もそうなの。」
香奈 「鉱山は、瑠璃も奈津美も絶対手離さないと云うから、山頂付近の鉱山から山の中腹まで、香奈オフィスの所有にして、中腹から下は香奈ファイナンシャル不動産の所有地にしたのよ。」
「じゃ自家発電であの山の中腹に保養所作る事はできるの?」
香奈 「それは出来るよ。そんなもの建てるの。」
「ジプシティーもいい町になったし、公園もあるけど、高層ビルが多いでしょう。産後の若いお母さん用の保養所も作りたいのよ。保育所もつけて。」
香奈 「いいわよ、計画が出来たら、ジブサービスに連絡してよ。水道管なんかも引かないといけないしね。」

中腹部分には、コンベアーの中継部分を置いていた所もあり、恵はうるさく、あっと云う間に保養所が建った。ただこの保養所から、家の様子が見られると云うので、大きな木を保養所近くの崖の上に植えようとしていた。今度はその下から小さい滝がいくつも流れ、小川に注ぎ込んだ。製薬は早速この水も検査した。この水には、分岐状の水やリング状の水の濃度が冗談のように、更に高くなっていた。こうして分岐状の水やリング状の水が一杯入った水がこの周辺の家と保養所に供給される事になった。保養所には徹がコンパクトな発電機を設置した。いざとなったら、この辺りの電気も供給できるような予備の発電機を山の中腹に置いた。蓄電装置も開発していたので、そんなに心配する事はなかった。それになにより、この付近には、分岐状の水やリング状の水が霧のように漂う一帯となった。その上目隠しのための木はやたらと太く大きくなり、目隠しどころか森に囲まれた保養施設になり、香奈たちの家も庭に山と森と滝があるような家になった。

加代子は張り切ってお金をアメリカから送金してもらったけれども、無料診察制度も維持され、エンジェルホープジャパン財団でもそんなに使わず、多くは基金になった。カヨコファナンシャルジャパンは、エンジェルホープジャパン財団への援助を、保有する株式の配当で対応しようと2兆円で日本株での運用を神子に委託し、保有する現金の6兆円を神之助に預かってもらい、つまり運用委託をした。二人に運用委託したのは、間違っていた。神子はそれをどんどん増やし、運用委託料を取られたれけど、ほぼ3年で神子は4兆円にし、神之助は、半分程度を運用したが、為替と債権そしてデリバティプなんかで9兆円にしてしまった。おまけに少しずつ円高になり、円は2割程度強くなった。カヨコファイナンシャルがアメリカの金融センターに融資した10兆相当のドル資産も、アメリカの金融センターもドルは弱くなると考え、当然、為替運用や債権、デリバティブなどで運用して増え、神之助もオーバーシーズの現金分を予定の半分より多めに為替運用して増えていた。カヨコファイナンシャルの実務責任者と神之助グループの実務責任者とが調整して、お互い同額ずつ返済して、運用委託と賃借関係を整理していくようになった。加代子はさっぱりわからず、神之助にすべて任せた。カヨコファイナンシャルジャパンからのオーバーシーズへの返済をお互いに利益が出た分を調整して、相互に借り入れ金額を減らしていく事にして、アメリカの金融センターも返済した事にして、返済したつもりのお金は運用委託に変更するスキームを作りあげていた。帳簿上のトリックみたいな話ではあるが、賃貸そのものを減らしていけた。神之助は、加代子の金だけでなく、各金融センターの間でも、こんな手口を使って、資金移動させていた。各金融センターは、それぞれ、為替取引のしやすい国と法人税率つまり取引による利益の税率の低い国に設立されていた。神之助は当然、金の移動をこんな賃借関係や運用委託の形を使い、それぞれ各国の諸法の規制を考えて、そんな事を職業とする人の意見も参考にして、ジブネットワーク内での資金移動を行っていた。それはとも角、結局、カヨコファイナンシャルアメリカの保留しているお金は一時、大きく減少したけども、アメリカでの金融センターへの運用委託に変わり、おまけに保有株と各種通貨の現金、債権を持ったカヨコファイナンシャルジャパンと病院を持ったエンジェルホープジャパン財団が追加されるようになっていっただけの事だった。

結局、神之助は、3つのオーバーシーズとカヨコジャパンの現金の約半分の通貨の選択をする事になった。その上チャンスになれば、債権やデリバティブでも運用した。
これが日本での神之助直属の金融センターのようなものだった。世界各地の金融センターはそれぞれ現地通貨建での決算をしていた。金融センターもそれぞれ運用利益から運用手数料を取り、それが報酬にも比例されていた。神之助も、ジブがジブシティーや研究所や大学院大学だと金を湯水のように使い、高杉が土地も売らず、工場進出を希望する会社のための土地買収を続けるので、円に替えて行った。再生チャレンジ社会のお金は又赤字国債の増加につながると思う人たちが円を売っていった円安の中で、神之助は加代子分以外にも記録的な大儲けのお金を円に替えて、つまり円を買っていった。その上各地の当分の配当分も研究所や大学院子会社の運営費にいるとも予想され、しばらくは円に替えざるを得なかった。節目節目での円買い圧力は3年間続いた。売り筋も尚も売りつづけたが、神之助は調子にのって各地の金融センターの資産まで、円資産の比率を高めたので、これで円相場はほぼ制圧され、円安は徐々に勢いが弱くなった。

その内、陽太の無料診察制度、健康保険分の減税効果が徐々に効き、円安誘導みたいな国債発行残も次第に減ってきたのに、陽太は、半年考えて、2年間の税収見込みより増えた税収の増加分を、特別法を作り、再チャレンジ社会の基金とする、更に政府支出を増やそうとする政策を出していた。本当は予算での税収より増えた税収は赤字国債を減らすために使うべきであったが、再チャレンジ資金にした。国債発行残高の減少は緩やかになった。ジブはこの間に湯水のように公共投資みたいにつかっていたジブシティーの建設や研究所や大学院大学のような支出をし、各国のジブから配当をジブの収入として計上した。需要は刺激され、景気も上がってきた。つまり企業収益は予想外に伸びた、その上法人税率も高いので、基金はたまり、更に政府支出も増え、人を雇用しないと減税にならないので、企業は雇用も増やした。益々景気が良くなり、今度は円高になっていった。

陽太、不動財団の理事長へ

陽太は再チャレンジ社会の基金が終わるまでは逃げるなと云われ、次の選挙にも立候補せざるを得なかった。そして公的制度の基礎も作る羽目になり、結局、はじめに退陣発表してから、4年後ようやく総理大臣を辞められる事になった。陽太や優花は辞める予定だったので、比例区から出た。この選挙でも少し増えて、ごきげん党はやっぱり比較第一党だった。ごきげん党も約束なので、次期党首選挙をして、福祉を大切にしながらも、成長していく再チャレンジ社会、少し辻褄合わないスローガンを掲げた人を次期党首にした。ごきげん党だけでは過半数ではなかった。それでも無料診察制度の見直しを考えていた与党連合の一角は、自分で不人気政策をする危険性もあり、ごきげん党との連立を維持した。ごきげん党の党首が次の総理になったが、与党連合も主要閣僚を貰った。そうして陽太と優花は、議員も辞め、12人の子供を連れてジブの里に帰ってきた。竹花も漸く大臣も議員もやめた。しかし福祉第一主義の陽太が辞めたし、国債発行残高も減ったし、成長戦略を言う人が総理になって、益々円高が続いていた。神之助は、もう日本に送金するのをとりあえず中断し、余った手元の円を少しずつ他の通貨に換えていた。陽太が総理を辞めたし、ジブシティーや研究所そして大学院大学への出費も終わった。もうジブも税金は払うために、わざわざ日本にそんなに送金する必要もない、金融センターに海外の利益がプールする方法について神子と神之助は話し合っていた。

「又、ごきげん党は第一党になったね。無料診察制度も陽太君がいなくなると縮小され、廃止されるだろうと言われていたから、医療補助の基金もやっぱり必要と思って復活して、積み増していたんだよ。まだ持続するといっているよ。」、
香奈 「分からないよ。基金はもっていた方がいいよ。政治家は口先だけなんだけよ。福祉を大事にして、成長する再チャレンジ社会なんて意味不明だよ。陽太君のように福祉なければ、国家ではないと言い切れたから、成立した無料診察制度だよ。あれもこれもなんて無理に決まっているだろう。陽太君はしたい事をして、総理の座には拘らなかったが、したい事もせず、総理の座にいる事だけを目指すだけの人かも知れないよ。陽太君は、十分なセーフィティーネットを作ってから、成長社会を目指して欲しかったと思うけどね。どうなるのかねえ。」
「私も、医療補助のための基金は積み増ししておくようにいっているよ。」

しかし、陽太はまだ若く、ごきげん党の陽太親衛隊のグループは、数が増えて、健在だった。若手議員と年寄りたちの二極化が進んでいたので、閣僚になる程の人は多くはなかったが、このグループは無料診察制度に固執していた。陽太もこれを廃止されると、又政界に復帰するかもしれないとも取れる発言をして、ナンダカンダとマスコミにも露出頻度も高く、人気もあった。よくある話ではあるが、カリスマ的な指導者の跡はそのまま継げる人はいず、今は親衛隊のサブリーダーたちがそれぞれ、研究会とか政策集団を作って、分裂気味ではあったが、陽太の動向しだいでは、また大きな集団に統合するかもしれなかった。陽太は金がなくてもそれなりに影響力のあったカリスマであった。総理とかごきげん党党首と云う権力の座には、言われなくても金がついて回っていた。官房機密費とか党の工作費とか名目は色々とあった。今度は陽太は、権力はなくなり、そんな金も自由も出来なくなった。権力の切れ目は、金の切れ目だった。あっと云う間に過去の人になる予定だった。神子の予知では抜けていたが、やっぱり、陽太は神子の息子ではあった。神子はやたらと金を持っていた。総理と云う立場を離れた陽太のために、神子は、色々と小細工をして、陽太の生活のために、陽太に金を持つようにした。ジブトラストやカミカミの株主に返り咲いたし、名目的とは云え、カミカミの事務局長になった。カミカミはもう大きな資産を持つ組織でもあった。神子としては端金のつもりだったが、陽太は、金が出来ると、色々と資金援助も親衛隊の連中にした。意外な事に、陽太の影響力は決して衰えなかった。権力から離れた権力者の影響力は、途端にガタンと落ちると神子は考えていた。一般的には、正しくても、今回は少し外れた。人間は権力にすがり、そして金にもすがるが、やっぱり権力の影響が強いと神子は思っていた。金は権力を作れるが、色々と工夫もいる。しかし、権力は、簡単に金を作る。神子は、人と人との間の人情なんかは軽視する傾向はあった。権力の切れ目は、金の切れ目に繋がり、金の切れ目が縁の切れ目と思っていた。人情なんて、紙切れより薄いと思っていた。神子は、親馬鹿であったので、陽太に少しは、金を持たすように色々と小細工をしたが、所詮、資産家の神子にとってはまだまだ端金であった。そんな金程度では、陽太は過去の人になる筈だった。しかし、それも少し違っていた。人と人との関係は、完全に、権力や金だけで左右されるものでもなかった。陽太は過去の人でもなかった。元々陽太は、資産家のボンではあったし、誤解を招かないように、ジブトラストやカミカミへの出資も返上していた。金がないまま、福祉命の陽太の親衛隊が出来ていた、しかし陽太は、巨額とは云えないものの、少しの金が出来た。陽太は少ない金ではあったが、親衛隊の連中のために、政治資金を出し、応援演説もした。金があっても、選挙には簡単には当選しないが、陽太の応援演説は効果があった。陽太はまだまだ人気があった。陽太の応援演説には人が集まってきた。未だに総理にしたい人のナンバーワンであった。親衛隊はかえって増えていた。自由な陽太は、不動財団で活動していたが、あっちこっちで盛んに、再チャレンジ社会と福祉第一主義をぶち上げた。不動財団には、新しくカミカミも寄付するようになり、不動財団には、金が入ったきた。活動も活発になり、人手も要った。新しく入ってきた人は陽太の親しい人が入ってきた。陽太の親しい人は、言葉を替えれば、陽太親衛隊の予備軍でもあった。陽太親衛隊は、予備軍も抱え、活発だった。それは、成長社会を唱える、今のごぎけん党主流派と与党連合からなる現内閣には脅威ではあった。ごきげん党主流派と云っても温度差があった。無料診察制度なんか気にせず、権力に近づこうとごきげん党に入った人も当然いたが、やっぱり無料診察制度を維持しながら、成長社会を目指すべきだと考える人もいた。無料診察制度の廃止や縮小は、ごきげん党の分裂を招く危険性があった。陽太が権力から離れた今、福祉命の陽太親衛隊は少人数になると思われていた。それがそうとも思えなくなった。竹花の爺さんは、財務省上がりの頭の切れた、計算高いごきげん党の新人を、次期財務大臣に推薦した。そいつは、新人といえども財務省の高級官僚上がりで、無料診察制度には、そんなに熱心とは思えなかった。単に国会議員になりたいために、急膨張して人手が少なくなったごきげん党から立候補しただけの奴と思われていた。陽太親衛隊は、爺さんは裏切ったと怒った。こきげん党主流派は喜んで、財務大臣にした。しかしこいつは曲者だった。就任会見で、無料診察制度は、今の税収を確保すれば、十分維持できる、私は無料診察制度を廃止したり、縮小する意見を言う積もりはない。それは私が大臣を辞める時だと言い切った。中間派や主流派にも、やはり党是とも云えた無料診察制度の維持派がいた。陽太は一内閣一大臣を維持して、内閣改造などはしなかった。病気とかやむを得ない時に変わっただけだった。それが当然とみんな思うようになった。海外は、多くの国がそうだった。厚生労働大臣は陽太親衛隊のサブリーダーが頑張っていた。大臣の首を、二人も切って、ごきげん党の分裂を招き、陽太の復活と福祉命の陽太親衛隊が大同団結して大きな勢力になるのを避けるためには、廃止や縮小は難しかった。それに大幅ではなく、少しずつではあるが、赤字国債の発行残高は減っていた。こうして、無料診察制度は続いていた。

竹花は、次期財務大臣もつれて、神子と神之助に紹介した。まだごきげん党が政権を取っているし、無料診察制度も維持されている。これからがこの制度の正念場なので、税収確保には、今後とも協力してくださいと言われた。竹花は陽太の不動財団や優花のお元気レストランの顧問にもなって、ジブシティーに引越してきていた。
神之助には、ひそかに日銀からも連絡があり、これ以上の円高は、経済へのダメージが大きい、為替安定にはご協力をと言って来た。

日銀の幹部A「神之助さん、これ以上円高になると、ダメージが多いのですよ。なんとかなりませんか。」
神之助「内需も増えたし、輸入品の価格も下がるし、そんなに悪い事ばかりではないですよ。」、
日銀の幹部A「それでもこれ以上の円高は避けたいのです。市場介入はしたくないので自然な形で円安にしてもらえば、助かるのですが。」
神之助「1日に1円前後ずつ上げ、5円程度あげればいいですか」、
日銀の幹部A「それでお願いします。」

神之助は協力する事にした。神之助の善意でもなかった。今やジブは海外資産の方が多くなっていた。円安になれば、ジブの円換算の資産は増える。手持ちの円を少しずつ売って、5円ほど円安方向にずらしていく事にした。それに円資産が少ないと思ったので、円資産を増やしすぎた。それにそんなにもう出費も増えそうでもなかった。円を海外通貨に替える事も必要だった。神子も海外子会社の配当率を大胆に下げ、ジブが払う税金を安くする事を考えており、既にジブシティーや研究所、大学院大学の建設は終わり、研究所と大学院大学の基金も積んだ。配当率は90%としても、金融センターが、海外ジブ関係のジブトラストの出資を肩代わりしていく考え方も持っていた、金融センターからの配当は、配当率は90%ではなかった。もっと低かった。ジブ本体の計上利益をみながら、配当率は相当調整していた。実は、ジブの払う税金は莫大だったが、それでも、それなりに計算もしていた。そして、多くの金融センターは、税率の低い国に作られていた。金融センターの利益は、運用委託などの方法で、税率の低い国の金融センターに利益を集めるようにうまく工夫されていた。そんな事を考えて、生活している職業の人もいた。海外ジブからの配当率は高くしても、そこは香奈も計算していた。金融センターは、元々単なる財布の積もりだったが、神之助が、為替や債権で、驚異的に稼ぐようにしてしまっていた。金融センターに、少しつづ海外ジブの株式を集めるとジブの払う税金は、ガタンと少なくなる予定だった。配当率と出資を切り替えていく事を計画していた。もう陽太と云う人質はいなくなった。神子と神之助の関係は微妙だったが、香奈を介在して、金融センターで金を貯めていく事を神子も考えていた。今は、神之助が金融センターでの配当率を香奈と相談して、調整していただけだった。しかし、いかな神子も一族の悲願を盾に取られると弱かったので、金融センターが海外のジブ子会社の出資を肩代わりする計画は提案する事を止めた。神之助と香奈との間での金融センターの配当率の調整に任せる事にした。神之助は、円を少しずつ上げていくつもりだったが、神之助が円を売っている事がばれ、あっと云う間に、5円円安になり、どららにしても海外からの配当分は、円に替えないといけないので、又円を買うと又どっと円高になり、又今度は円を売ってという事が続いて、神之助は少しずつ円に替えていった。不思議と金も出来、税金分は確保出来た。それでもこれは各オーバーシーズと金融センターの利益だったが、ジブトラストとしては円もいるので、やっぱり円に少しは替えて行っていた。ジブトラストネットワークでの資金の動かし方は神之助が担当していた。円は不思議と一定の範囲に収まって変動するだけだった。

陽太はそんな事とは関係なしに、不動財団の理事長に就任した。神子は早速陽太と優花をジブとカミカミに復帰させる工作をして、神子から借りた形で、二人は出資する事になった。神子は陽太を実業比重の高くなったカミカミファイナンシャルの事務局長にもした。事務局長は結構高給にしていた。不動財団の給料をそんなに高くできないでしょうと言う殺し文句も使った。陽太はそんな仕事は出来ないと言ったら、ちゃんと事務局長代理には既に善作が就任していて、実務は善作が行っていた。陽太は単に名目だけの事務局長だった。神二郎も今までの不動総合の中の財団は、神二郎直系で固めていたので、ジブシティーに不動財団本部を用意し、今までの不動財団は独立性の高い第二本部に名称を変え、やっぱり神二郎の支配下とした。神二郎は信念の人なので、融通無碍の人ではなかった。神子はちゃんとその程度は見抜いていたので、カミカミからも収益の5%を不動財団に寄付する事になり、陽太はそのお金とカミカミ傘下の企業や神子グループの会社などの協力を得て、しぶとく残る、ごきげん党の陽太シンパなどの人を採用して、不動財団本部を運営した。と云っても実務は、竹花の爺さんが処理する、陽太の内閣とそんなに変わらなかった。再チャレンジ基金にも竹花の爺さんは詳しかった。作った本人でもあった。爺さんはジブシティーに住むようになって、益々元気に、爺さんの頭も冴えてきた。陽太自身の給料を抑えたが、みんなの給料はちゃんとそこそこ出した。なんの事はない、陽太親衛隊の本部みたいな不動財団本部だった。国会議員や大臣がチェロチェロ出入りする場所だった。国会議員になりたい奴も、こっそり集まっていた。陽太は、そんな奴らも不動財団の職員にした。不動財団の仕事もしたが、そいつらは、当然自分の選挙区と思う所の活動をした。海外の偉いさんも時々来た。陽太親衛隊の連中も自分の選挙区で、不動財団の活動を支えた。陽太は、不動財団の仕事と言って、そんな奴らの選挙区に行き、福祉主義と再チャレンジ社会の必要性をぶちあげた。不動財団の活動はやたらと活発になって、不思議な事に、陽太は、総理を辞めたのに、陽太親衛隊は、まったく減らなかった。不動マンションや不動財団のビルは従来通り、不動財団として一本化して建設していたが、運営そのものについては、それぞれ自主的に運営し、運営経費も各自で調達した。

陽太と神二郎は仲が悪いわけでも良い訳でもなかった。ただ二人の考えには差があった。神二郎は、所謂プアービジネスの連中とは一切手を組まなかったし、話もしなかった。陽太は、なんだかんだと連中とも話をして、悪質な連中でなければ、それとなく経費を払い、便宜的に、連中のマンションやアパートを、不動財団本部として借りたりして、連中を逆に取り込んだりした。陽太には、結果がすべてだった。不動財団本部として一日でも早く、そして多くの人の再生を図る事が目標だった。多少の事は問わなかった。神二郎は無理はせずに、公明正大な方法で前進していく事が基本だと信じて、自前の不動マンションを少しつづ確保し、人の手配もしながら、自分の原則に沿って、少しずつ進めていた。変な連中を使う事なんかは、考えもつかなかった。

不動財団は急速に大きくなり、面倒をみる人たちは増えていった。不動マンションの建設も進んでいった。神二郎はそれを認めながらも、陽太のようには出来なかったし、陽太も神二郎のようには振舞えなかった。どちらが、どららに従う事はできなかった。微妙な関係で、不動財団が2つ出来たようなものだった。実際にヤル気を起こした人や企業が、実際に再生していく時には不動総合が支援した。これには陽太も神二郎に前面的に任せた。2つの不動財団は、少しずつ、活動にその違いが出てきた。当初、従来の不動マンションの維持や運営は第二本部が担当し、新設の不動マンションは、不動財団本部が担当する事にした。しかし、不動マンションを中心として、やる気もなくした人たちを勇気づけ、再生のための道筋をつけるまでは、主に、陽太たちの不動財団本部が行うようになっていった。神二郎の第二本部は、第二段階として、実際の再生する時に、色々な財政的な援助や相談を行い、不動総合も使いながら、完全に再生させる事に主眼を置くようになった。ただ、実際の活動は、そんなに簡単に割り切れるものでもなく、微妙なものがある事は否めなかった。それだけに、相互に干渉せず、時々連絡を取る程度で、二つの不動財団が活動していた。陽太は、自分の人脈を活用して、不動財団本部は多様な人や協力する組織を増やして、寄付も集め、日本各地で、不動マンションを作るつもりだった。

優花は、お元気レストランの会長になった。しかし、お元気レストランでは優花のような素人ではもう経営できなくなっていた。時々、優花は、コンサートもしたが、する事も少なく暇だった。あのおっさんは、言葉巧みに、神子に言った。優花さんの出資比率を上げるために、優花さん名義で増資しませんか、神子さんが貸す形にすれば、いいのではないでしょうか、優花さんもジブやカミカミなどから配当を貰うようになるので、直ぐに返せますよ。神子ももっともだと思い、ドーンと高額の出資をして、優花だけではなく、陽太名義でも出資した。陽太も、金を持たすと、政治献金に使ったり、神子からの借金には目をつぶり、陽太親衛隊の連中に貸してしまっていた。これで二人の予想されるジブやカミカミなどの配当の相当程度は、当分の間、借金返済として取り上げるように調整した。このおっさんは、少しは貯まっていた自分の金でもこっそり増資して調整し、更にジブトラストの不動産チームにも口説いた。あの私鉄沿線にレジャーランド、アミューズメント施設を建てませんか。たまには遊びも必要ですよ。そうして山や谷を含む広い土地を、私鉄から借りる事にも成功した。優花のお元気レストランは私鉄沿線に、レジャーランドを持つ事になった。優花は、陽太の不動マンションに、お元気レストランからお弁当を届けたかった。それぐらいは、あのおっさんも了解した。元気の出るランチボックス、ディナーボックスを料理長に頼んで作って貰い、必要な免許まで取った。安いよの弁当よりはずっと美味しかった。でも変わり種もいて、安いよの弁当を食べる人もいた。不動マンションでの弁当の注文が激減した。聖子にしては、仲が良かった沙織との関係もあり、聖子としては珍しく、清水の舞台から飛び降りる積もりで、割引価格にして、そんなに利益も取っていなかった。儲けがほとんどない弁当なんかは、安いよは気にしなかった。でも聖子は不審に思って調査するように言った。こうして、聖子がお元気レストランのランチボックスとディナーボックスの存在を知った。転んで金を掴む聖子は、お元気レストランのあのおっさんに話した。このランチボックスとディナーボックスを市販しないかと口説いた。調理場を拡張したりとナンダカンダと金も要った。レジャーランド施設建設には、莫大な金をつぎ込んでいた。レジャーランド施設は、結構大掛かりな施設だった。今まで貯めこんだ大きな内部保留とか増資分を全部つぎ込んでいた。あのおっさんはレシピを提供するなら、いいと言った。それで口銭が入れば上等と踏んだ。聖子は冶部食品に掛け合い、安いよ食品を販売元にして、安いよスーパーで、お元気レストラン監修の「お元気ランチパック」、「お元気ディナーパック」の冷凍食品を全店で売った。電子レンジでチンすれば、お元気レストランと同じ味とは云えないものの、美味しかったし、お元気レストランは高級レストランになり、知名度も高かった。それが売れた。聖子の感覚は鋭かった。あのおっさんは甘かった。監修口銭だけの商売は利が薄かった。聖子は、お元気レストラン監修の冷凍食品シリーズを出していく事になった。レジャーランドもそこそこ当り、お元気レストランはレストランチェーン、ビル経営、レジャーランドが会社の3本柱とか云う訳の分からない会社になった。

「陽太君もついにジブの里に帰ってきたね。さすがに12人の子供は迫力あるね。子供は宝と言っても凄いね。でもジブシティーにも、財団はサテライトオフィスを作ったら、あそこは不動財団も入る財団ビルなんだけど、陽太君はあそこにいてるよ、この間は、大臣が会いに来てたよ。私にも挨拶に来たよ。不動財団は不動総合の中になかったの。」
香奈「ジブシティーの不動財団は財団本部で、今までの不動財団は第二本部とかになったよ。財団本部にはカミカミも寄付しているらしい。その金とか陽太君が集めた寄付で活動するらしいよ。」
「どうして二人は仲が悪いの、本家と元祖の戦いみたいなの。」、
香奈「仲は悪いとも良いともいえないよ、普通に話もするし、協力もするらしい。でも神子ちゃんが心配して、神二郎君と話したのよ。どちらが上とか下でもなしに、ジブシティーの本部と第二本部で時々話し合いしながら、不干渉の形で活動していったらどうかと言ったみたいなの。神二郎君は信念の人だから、自分の意見はそんなに引っ込めないのよ。あれでもまだ、少しは協調性も出来てきたけど、会長室の時はもっと凄かったのよ。神子ちゃんもその事は知っているのよ。陽太君は政治家だから融通無碍の所があるでしょう。再チャレンジといってもやっばり活動の仕方も違うのよ。その代わり財団本部は多くの協力組織ができたよ、活動する人も増えたよ。財団本部の金は、竹花さんが管理しているらしい。あの人もいつまでも元気だね。寄付も本部と第ニ本部とで分けて、それぞれ自由に使うらしいのよ。」、
「まあ、2つ出来て協力していっていると考えた方がいいのかもしれないね。」
香奈「若い時から、今まで自分の判断で動いていた二人だからね。今更だれかに従う事はできないのかもしれないね。」
「でもやっぱり大変だね。」
香奈 「そうだね。私もつくづく思ったわ。」

香奈は、これを見ていて、むりやり、ジブトラストの後継者を決め、その人に任せる事は出来ないと感じた。それが分裂の原因なのだと考えた。香奈はスイスカナコインではなく、コッソリートにメールを送って、スイスカナコインはうまくいっているかと聞いた。別にそんなに儲けているかとは聞かなかった。成績は報告されていた。赤字がでれば、赤字で色をつけて報告するように言っていたが、赤で表示は、されていなかった。そうでなければ、みんなで話し合っていけていれば、良かった。香奈はコッソリートを信頼していた。コッソリートは、うまくいってますよ。元々一緒に仕事してきた仲ですから、しかし若い連中と年寄り連中とは仕事の進め方が違うので、年寄りたちは私の家に別室を作り、そこで運用してますよ、証券研究所の別室も出来たし、用があったら、呼んで説明を聞いてます。スイスカナコインも順調です。責任者も私に相談にきます。証券研究所に聞いても、みんな、それぞれ独立しているようだけど、香奈さんに送る報告書を作成する時は相談してまとめているようです。それでみんな他のグループの状況が判るといってました。私たちも証券研究所に相談もするし、運用で失敗すれば敗因も分析してもらってます。大きなゲストハウスも作りました。みんなの隠居場になりました。子供や猫たちも近くにいるし、みんな元気になって、取引を楽しんでいます。無理に一緒に働くよりは少し離れて、協力していく方がいいですよと返事してきた。

ジブは緩やかな統合体になろうとした。

香奈はこれを見て、独立性を堅持しつつ協力していく体制を作った方が良いと確信した。それをするにも神太朗の協力もいる。神子や神之助は取引の神様みたいな存在だけど、やっぱり仲がいいとは言えない。神太朗を呼んで、話をした。

香奈「私も考えたのだけど、ジブトラストも体制を変えようと思うのよ。証券会社をジブトラストの中に取り込む事にするわ。証券会社は今は、ジブとカミカミの資本だけど、みんなの運用会社でも出資するのよ。そうすれば、みんなの運用会社も証券会社の株主になるわ。証券会社は、みんなの長期保存株の保管をするようにするの。世界中でそうするの。運用は今までと変わらないけど、長期保有株として、保有したい時には、神太朗君の証券会社を通すようにするの。勿論それ以外の証券会社も使うけど、長期保有になる時は証券会社保管にするのよ。手口を判りやすくなるデメリットもあるけど、今はどちらにしても業界には判るでしょう。それ以外も使うから、逆にこっそりと堂々とも区別できるしね。それで、正子さんにも副会長をそのまましてもらって、陽一さんと神太朗君に副会長に新しくなってもらうのよ。神太朗君には長期保有している株や役員を出している会社の総括をしてもらって、会社の価値を高める仕事をして貰いたいのよ。その企業分析は、陽一さんが総括する企業分析研究所にしてもらうのよ。海外でも子会社のもそうするのよ。結局ジブ全体の利益をあげる事になると思うのよ。取引は神子ちゃんや神之助君やみんなに任せるのよ。取引には、みんなの自己責任だけど、ジブとして長期的に保有する株は、客観的に外部に評価して貰って、それを神太朗君のチームが総括するの。ジブは各チーム、各グループの連合体組織にするの。役員会もそうしたいと思うのよ。別にジブ、カミカミ、香奈そしてみんなのグループ連絡会議も非公式役員懇談会として開催するのよ。」
神太朗「それはいい考えかもしれません。私も証券会社を間接的な形で意見もいえますね。やっぱりスイスカナコインスタイルになりましたね。スイスカナコインも、うまく言ってるみたいですよ。証券会社も体制を整えます。」

香奈は、神子、正子、神之助そして、陽一などとも話をして、体制の相談をした。
新しく副会長には、陽一と神太郎を加えて、神帥、神元、聡美、加代子、切人そして沙織を新しく役員に加えた。
これはグループ会議と今までの役員会議を合体して、ジブ全体会議とでも言えるものだった。海外子会社もジブアメリカそしてジブスイスの社長を、ジブトラストの役員に入れた。

しかし、聡美と加代子はゴネた。役員なんかなりたくない。二人は自分たちのグループに連絡するのが、邪魔くさかった。香奈も仕方がないので、神帥、神元、切人たちにも現地の責任者とかまとめ役とかを推薦して貰い、役員にした。神之助や神子のグループからの役員も当然増えた。こうして役員会は膨張した。役員報酬も微妙に変えた。今までの役員報酬は、それぞれの部門の利益に連動していた。その考え方は、維持したが、全体としてのジブトラストの利益にも連動させる事にした。会長そして副会長は、それぞれジブの利益に連動した報酬である事は変わらないものの、それ以外の役員の報酬も全体の利益に連動する部分と個別の部門の利益に連動する部分とに分けた。沙織を除いて新しく役員になった人たちは、元々独立した会社での報酬を貰っていたためでもあった。ジブトラスト全体の利益に連動する報酬体系は、役員以外にも一部採用され、利益比例給では、その要素も加味される事になった。独立性を維持しながらも、ジブ全体の利益の反映される事になった。

今まで運用金額はジブの運用金額に連動していたが、神太朗の証券会社に出資した金額分は、ジブトラストが認めた長期保有株扱いにして、運用枠から除外した。そしてこの除外された運用枠以外は、すべて自動的に、従来のジブ運用枠と同額とした。証券会社はこれらの出資金を別勘定として、保管した。要するに株式投資に対する運用枠を撤廃したようなものだった。その出資金の半分は証券会社として取引すると云うものだった。過大なリスク投資は避ける事にした。つまりキャッシュホジュションを50%取って投資をしなさいと言う事になった。香奈は、株式投資だけが念頭にあったが、商品相場や為替などをしている人たちから、不公平だとの意見が出た。株式相場の偏重だと言う意見が出て、神太朗の証券会社も商品相場や為替相場の会社も、整える事にした。神帥の為替チームも為替専門会社のようになっていたし、神之助が出資している会社などを整理統合して、ジブトラストや神太朗の証券会社なども出資し、各運用会社も出資して、ジブトラストのグローバル取引ネットワークと云うものになった。

もう1つ大きな改正は、ジブトラストの運用枠以外の運用は、証券会社系列云々とは関係なしに、ジブトラストの運用枠以外での利益の10%をジブトラストに情報料、取引システム料、企業分析料などの名目でジブトラストに支払う事になった。ジブトラストは、ジブトラスト全体の長期保有株は、企業分析研究所に依頼研究して、それを神太郎が総括して、アドバイスする事になった。為替や先物や債権などの運用指針も、研究所や研究センターからも出した。保有している株は、名目上は、証券会社名義なので、業績が上がり、配当が増えれば、証券会社の収入になった。ジブトラスト又は海外のジブトラスト子会社が役員を派遣している会社は、当然企業分析所に、分析を依頼する事をほぼ義務付けた。これは企業分析研究所への一種の資金援助でもあった。更にジブトラストとしては、一般的そして各国や地域別の基礎的な経済研究は、基礎研究所に依頼する事にしていた。

ごきげんソフトのシステムも変更した。従来通りの運用枠の自動連動も修正して残し、それに追加した形で、神太朗ルートの出資枠連動による枠拡大が追加される事になった。各運用会社にしてみれば、従来のルートは、各運用会社の資金で運用する時の負担は、ごきげんソフトへのシステム手数料だけであったのに、今度は手数料が高かった。しかし独自の運用枠が下げられたし、その上神太朗ルートでは、利益の分散化も出来た。各運用会社での社内の運用手数料計算は同一だった。以後の運用枠除外の申請も神太朗ルートでの特例が設定されたので、事実上廃止のようなものになった。そのため少しずつ神太朗ルートの取引会社への出資が進んでいった。これは、ジブトラストの急激な手口変更を避ける事にも繋がった。

各運用会社はそれぞれ、各地の証券会社や取引会社に思い思いのお金を出資し、各地の証券会社などはやたらと大きくなり、証券会社の自己売買のように見えて、各運用会社のダミー運用のようにもなった。各地の運用会社は出資額の半分を運用し、運用利益の10%はジブトラストがシステム手数料とかいって、集めた。どの程度の配当とするかは、各地の運用会社と証券会社との話合いで決まった、
従来の海外ジブ子会社、ジブアメリカとかジブスイスなどの各国のジブ子会社は、長期保有株を持ち、その会社からの配当や出資している運用孫会社などの配当を得て、それを更に出資していた。これらの海外ジブは、ジブ中国を除き、神太郎が管理する事になった。ジブ中国やジブトラスト中国は神子扱いだった。ジブ中国は、中国が勝手に運営し、利益だけくれるが、それもほとんどジブ上海の口座に入り、中国株式の運用は神子がしているが、どちらも利益の7割は中国国内に留保される特例だった。

切人たちの取引チームは、会社としては独立させた。ジブトラスト本体や切人たちの海外香奈ファイナンシャル、マリアホープ、少しは各国ジブ、各地の金融センターも出資した。これは単に運用枠を出資に替えただけだったし、ジブトラストは60%の出資にした。運用枠はジブトラストの出資金であったので、従来の海外香奈などの運用金は余り、それが神太朗ルートの取引会社の出資に回った。切人チームは、海外香奈とマリアホープが証券会社に出資する形となった。
各国の管理グループも独立した会社になった。これはジブトラスト本体が全額出資し、関係する会社から、管理業務や税務処理を行い、管理手数料を取る会社になった。この管理グループは、海外ジブトラストの管理部門から出来ていたが、神太朗の管轄とはせずに神子の管轄とした。海外ジブが、神太朗の管轄になると、本体としての海外での取引が、神子の手から離れてしまう事になった。神子が神太朗傘下の海外ジブに頼むのは、神子の性格から無理と香奈は思った。この管理グループは、取引なんかをする事を想定していないものの、取引には神子チームの運用子会社を使う事を認めた。ところがヨーロッパでは、この管理グループは、聡美から頼まれた株式の売買もするグループだった。この管理会社のような会社は、管理業務もするが、神子の運用子会社と協力し、運用委託をする事になり、名目的には長期保有目的とは違い資産の保有効率を考えた株式投資、先物取引もしていく会社に変わっていった。

香奈は、神太朗を副会長にして、ジブの実業分野を任せ、ジブの海外法人まで、総括させた。中国は取引中心だからと言って神子に任せた。取引は、神子そして神之助に任せようと香奈は思い、神太朗も同意していた。神子は、取引関係を総括するが、神之助の商品相場、為替そして債権には口を出さないと云うルールが暗黙の内に、出来ていた。香奈は、神子と神之助が取引を安心して出来るように、それぞれの取引には、口を出さないようにしてきた、香奈でさえ、神子と神之助から報告を受けるが、余程の事でない限り、口は出さなかった。当然香奈以外の人は、それを守った。

香奈は化け物みたいな長生きで、頭も冴えているが、やはり人間なので、いつか死ぬ。その場合は、やはり神太朗が、やがてジブの全てを総括していく事になると、みんな思った。神子も神之助も当然そう思った。その時は、神子や神之助は、神太朗の部下になってしまう。神之助は、神子の部下にさえ、なってしまう。取引の天才だった二人には、面白い事ではなかった。今は、香奈がいるので、役職は別にして、三人はいわば、並列みたいな関係ではあるが、香奈がいないと役職通りの指揮系統が出来ると考えるのが普通だった。
香奈は、神子と神之助のそうした不安もやはり知っていた。そのため、二人のグループには、それぞれの運用子会社を作り、その運用子会社に、神子や神之助の個人的な財産管理会社を出資させる事にしていた。勿論ジブトラストも相応の出資もして、ジブトラストの運用子会社とはするが、そうした運用子会社では、神子や神之助たちの個人的な財産管理会社の出資比率を大きくする事を認めてきた。運用手数料も少しはこっそりと上げていたが、実はそれよりも運用子会社に運用委託みたいな形での運用を黙認した事が大きかった。何回かの運用委託を繰り返せば、かなりの利益移転もできた。これは、ジブトラストにとっては利益の圧縮を意味するが、二人にそこそこの利益を維持するならば、少なくともジブトラストの資産を減らさない形なら、ある程度は神子や神之助たちの運行子会社への利益移転を黙認するよと神子と神之助に言ったのと同じだった。香奈は、ジブトラストがバラバラになる事を恐れてはいたが、それぞれに独立しながらも協力していくには、この方法しかないのではないかと思っていた。つまり今のジブトラストの資産は、ジブトラストのものとしてそのまま残す。それを、神太朗、神子そして神之助たちに分割するような事を避け、つまりバラバラにする事は避けるが、取引をしていた神子と神之助たちには、取引による運用利益の相当部分をそれぞれの二人の個人的な財産管理会社が出資した運用子会社の利益にもするから、ジブトラストにもそれなりに利益を出して、ジブトラストとして協調してやろうねと言ったような処置でもあった。

そのため、神之助の商品相場、為替そして債権関係の取引は、ジブトラスト内の神之助チームと神之助の個人会社が出資した運用子会社群が一体のようになって、取引していたのが実情だった。 神子の取引も似たようなものだった。神太朗も薄々は知っていたが、黙っていた。そうする事でジブトラストとして、柔らかい共同体として、運営していきたいと思っていた。神太朗は、ジブ本流、カミカミ本流とも言える立場だったので、神太朗や妻のみどりとの財産管理会社は勿論あったが、この会社は、カミカミやジブトラストの出資そして、神太朗と経緯のある、冶部食品、岡崎交易そして証券会社などの神太朗自身の直轄の旗本みたいな企業の株式を持っているだけだった。ジブの出資も香奈や恵、俊子と云った創設期の大量に保有していたメンバーは別として、特別出資の形を取って、ジブを大きくしたメンバーの中では正子に次いで多かった。香奈もジブの跡目を継ぐのは神太朗と思っていた。正子もカミカミの跡目はやはり神太朗と思っていたので、やはり神太朗の出資を少し多くしていた。いわば、ジブもカミカミも基本的には、やがては神太朗が継ぐとみんなが思い、神太朗もそう感じていた。だから、神太朗グループみたいな会社群を作る必要もなかった。ジブもカミカミも、香奈のような超超高齢者やもはや超高齢者の正子が死ぬと、そっくり自分が引き継ぐ事になるからであった。ジブやカミカミの次世代はやはり、神太朗が総括するのが、自然であった。

神子や正子と協議していると、カミカミや香奈国内の存在が問題となった。
神子や神之助の二人も、ジブトラストとしての取引と自分たち傘下のグループの取引が主になり、カミカミファイナンシャルの資金を使う事は減って、カミカミは、正子の財産管理会社の様相が強くなっていた。そして香奈ファイナンシャルの国内は、一種の持株会社であり、実質的には正人が仕切っていた事務局が運営していた。カミカミの事務局を仕切っていた善作を加えた非公式役員懇談会も作った。この二つは、もう直接的な取引もそんなにしないと思われていたので、運用枠除外などを特典とは考えていなかったが、それでも従来証券会社に出資していなかった香奈ファイナンシャルは、正人が、本体の神太朗の証券会社に、ドーンと多額の出資をした。この時にココたちや偶にする香奈の運用も十分出来るように、ココたちのチームが運用していた額の三倍以上出資した。ココたちの運用枠も一気に増えた。香奈にも報告もした。カミカミは既に多額の出資をしていたので、追加出資は行わず、善作は自分の支配下になったカミカミを通して、正子に相談して、夢のある企業に出資していっていた。香奈国内やカミカミも、ジブ総合研究所に対して、企業分析や依頼研究の形で、資金を提供する事になった。これは研究所の維持のためのサポートでもあり、保有する長期保有株の対象企業の分析をするためでもあった。

スイスカナコインや香奈ファイナンシャル国内で猫たちが取引している事は香奈、正人そして奈津美が知っていたが、香奈は冗談のように言うが、人は信じなかった。正人と奈津美は、頭も良かったし、計算もできたので、誰にも話さなかった。香奈ファイナンシャルの国内は、香奈しか取引しない事になっており、ごきげんソフトは数字は知っていたが、取引云々は、口が裂けても言えない立場だった。非公式役員懇談会には、各グループの役員以外の幹部、不動ファイナンシャルやジブカミなどの家族単位の会社、海外のジブ子会社の代表や幹部たちも必要な時は呼んだり、参加を希望すれば、出席を認める事にした。この非公式役員懇談会で各グループの取引結果やクループの取組みを報告する事にした。この非公式懇談会は各グループの取引内容や成果を報告する場所になり、実質的には、この非公式役員懇談会が、ジブトラストグープの幹部会議になった。こうしてジブトラストは、各グループは独立しながらも、緩やかな連合体として維持していけると香奈は考えていた。各グループ間での取引内容や連絡もスムーズに進むようになり、香奈も安心していた。

香奈「ジブトラストの体制も漸くまとめたよ。いくらなんでも、私はそんなに生きないわ。これで各グループの独立性を認めながらも、ジブトラストが緩くてもまとまっていけると思うわ。香奈オフィスも瑠璃がまだまだ、うるさいけど、奈津美がうまくまとめているしね。香奈ハイテクも組織ができてきたわ。」
「財団も総合調整グループも出来て、一人一人を総合的にサポートしていく事ができるようになったわ。それに介護サービスを担当するチームもできたよ。ジブシティーではそんなサービスをする必要があるみたいなの。まったく新しい町になったから、ジブシティーで働いている人も親を呼んだりしているのよ。」

猫軍団も自立へ

チャやココも自分亡き後の猫軍団の今後を考えていた。チャやココも元気であったが、自分たちが猫としては信じられないほど高齢である事を知っていた。猫の寿命は20年もあれば、記録的な長生きだそうだ。ネットでもそう言っていた。子猫たちは自分の子供も出来、取引だと言って盛んに儲けているし、子猫の子猫はやたらと英才揃いでチャやココにはよく判らない複雑なデリパティブにも取組み、やたらと儲けていた。それに大学院大学や研究所にも行って、新しい知識を得ようとする猫たちもいた。取引担当や研究担当まで作っていた。

香奈の家の猫はそんなに増えなかった。一時、子猫が配偶猫までつれてきて、子猫の子猫が生まれ、どっと増えたが、その後はそんなに増えなかった。これはチャやココが子猫たちに自分の悲しい経験を話して、配偶猫を連れてくるように言ったので、配偶猫は増えたが、子猫の子猫はやたらと賢く、勉強にいそしみ、異性関係には淡白だった。パワースターは脳細胞の活性化と性衝動の刺激を行うが、猫にはまず脳細胞の活性化作用として、ほとんど使われ、脳細胞の活性が一定のレベルにならないと、性衝動の刺激には繋がらず、むしろ脳細胞が活性化していく時には性衝動は抑制されるもののようだった。これは、子猫たちが連れてきた配偶猫でもそうだった。賢くなり、今まで勉強していなかったので、子猫たちに追いつくように、更に勉強した。香奈の家の猫は、勉強したり、取引したりと忙しかった。猫の世界でも高学歴化し、晩婚で少子化の傾向まであった。生まれてくる猫の数も減ってきた。ただみんな長生きだったので、高齢化もしてきた。チャやココは、香奈は化け物みたいな人だと知っていたが、自分たちはやはり普通の猫の血も引いていると感じていた。きっと香奈より早く死ぬだろう。子猫の子猫は勉強や取引だと騒いでいるが、それは香奈あっての事であった。自分たちが先に死に、いくら化け物の香奈でもいつかは死ぬだろう。そうなると猫軍団の今後はどうなると思うと寝られない夜もあった。

チャは、思いを伝えられる奈津美に相談した。ココも同様に正人に相談していた。香奈ファイナンシャルも事務局は香奈の家に設置され、香奈オーバーシーズも実質的に正人が仕切っていたので、この家の中にも事務所を作った。冶部ホームホテルの部屋は、外部の人との応接室に変わった。奈津美も香奈オフィスの日本とスイスカナコインの日本連絡事務所を作り、奈津美が出資の調整をして、スイスコインと連絡を取っていた。やたら猫算式には増えないものの、やっばり増えてくる猫との緩衝地帯とのいえるゾーンにこれらの事務所をおいていた。更に部屋が減った事を理由に豪華な高層マンションに住む人もいた。

正人 「ココが心配しているよ。香奈おばあさんも不死身じゃない。自分たちは、きっともっと早く死ぬだろう。その後の猫軍団はどうなると心配していたよ。」
奈津美「チャも同じよ。子猫たちは取引だ、勉強だ、研究だといって頑張っているけど、やっぱり香奈おばあさんあっての猫軍団でしかない。夜も眠れない時があると言っていたわ。心配性なのね。私たちがバックアップしていくわよといっているけどね。」
正人「しかし、お母さんやお父さんたちは、猫には冷たいだろうとココも言っていた。ココは冷静に見ているよ。」
奈津美「それはそうだろうね。」
正人「ココはチャとも相談して、猫軍団の口座を組織的なものに変更して、その口座の利益から一部を基金として貯めて、猫軍団の面倒を見るようにしてくれないかと言っていた。」
奈津美「それはいい考えだわ。お父さんは、前例を作るとそれに拘る人なのよ。お母さんも結構影響を受けているのよ。」
正人「香奈ファイナンシャルは、猫軍団の口座名を事務局名義に替えるよ。それにホーム香奈と言うより、事務局名義にした方が、組織としてはいいよ。事務局内に香奈特別基金を作り、そこが猫の経費を持つようにするよ。」
奈津美「スイスカナコインも、スイスカナコイン日本連絡事務所を会社組織にして、スイスカナコインの社長室も兼ねて日本連絡事務所名義の口座に変更するわ。そこで、香奈特別基金を同様に作るようにするわ。元々猫たちの取引の累計は判るようになっているのよ。運用手数料なんかは取っていなかったけどね。いままでの累計の一部は、余剰金の中でスイスに別勘定としておいて、今後は運用手数料のような扱いにして、経費として日本に送金してもらってスイスカナコインの日本での香奈特別基金にしようと思うのよ。」
正人 「それはいい考えだよ。香奈ファイナンシャルも今まで稼いだ金も少しづつ事務局の基金に入れるようにするよ。そんな経理操作は、得意なんだよ。」
奈津美「でも香奈おばあさんになんて言うのよ。言い方は難しいよ。」、
正人 「そんな事は僕がするよ。スイスカナコインの体制変更案も用意してよね。」
奈津美 「正人はそんな事はうまいから、頼んだよ。」

さすが、正人は、香奈が見込んだタヌキであり、はぐらかし、言い逃れ、詭弁の技も使い、香奈を説得した。香奈はもっと大きなタヌキであったが、結局、猫たちの今後をそこで面倒を看ると云う事は判った。知らん振りしていい考えだねと言った。表面的には、スイスカナコインや香奈ファイナンシャルの財政的な安定を図るものと定義され、香奈の意思で自由につかえる交際費、機密費扱いになった。

奈津美と正人がコンピューターシステム変更のためにごきげんソフトをよんで、協議したが、実際にはその扱いになっていると判った。単にどのような比率で基金に貯めていくかを決めてもらえれば簡単だと言った。
奈津美と正人とごきげんソフトは、協議して、運用利益の5%を基金に宛てる事にした。チャとココの希望もいれて少し、システムも少し、いじった。正人は余剰金なども考慮して、100億を当初の基金としたし、奈津美もほぼ同額をスイスカナコインに積ませた。こうしてチャとココは一安心した。心も軽くなった。後は堅実な運用を心がける事が必要だと思い、子猫や子猫の子猫たちを集めて訓示した。十分なリスクを取った取引を心がけるように、猫軍団の将来がかかっていると言った。
しかし、チャとココは判っていた。正人も奈津美も悪い人ではない。瑠璃のようにぼったくりでもないし、徹彦のようなくわせ者でもないし、政則のような前例主義の権化でもない。ただ二人は頭が良すぎた、損にならない事程度では、正直に約束を守る人だった。香奈の家ではそんな人が多かった。猫たちの取引で利益が出ている間は、約束を守ってくれるだろう。しかし損をしたりすれば、どうなるか判ったものではないと知っていた。基金は積んでくれたものの、これからが正念場なのだと思い、リスク管理を厳命していた。
ところですべての猫が取引をした訳でもなかった。子猫の配偶猫は取引はしなかった。しかし、子猫の子猫はやっぱり取引が好きな猫もいた。

コシロの再来? リトルホワイト

しかし変わり種もいた。真っ白な猫でリトルホワイトと云った。この猫は噂に聞くコシロのように賢かった。生まれながらの天才猫だったので、香奈に、自分はコシロの再来なので、リトルホワイトと言って貰いたいと念を送った。本当にコシロに似ていたので、香奈もリトルホワイトと言った。その上、「分岐状の水、リング状の水」が高濃度な水を飲み、「分岐状の水、リング状の水」が一杯入った牛乳を飲んで育った。唯我独尊タイプの嫌味な猫で、兄弟やいとこたちを馬鹿にする癖があった。信じられない程賢かったが、その天才を鼻にかけ、猫を猫とも思わない態度を取った。そんな猫だったので、脳細胞の活性化も直ぐに高レベルに達し、信じられないような可愛いペルシャ猫の女の子ナターシャを引っ掛けた。ナターシャは、いい所のお嬢さん猫でチヤホヤされて育ったが、飼っていた人が株で大損し、破産して夜逃げして、捨てられ、野良猫と云うか、地域猫になった。
リトルホワイトは、堂々と香奈に、ナターシャを紹介した。リトルホワイトは、香奈の家の猫のくせに、1歳たらずで結婚して、子供が出来た。3匹の子猫が生まれた。この子猫も頭が良かった。ただ、リトルホワイトと比べると天分は雲泥の差だった。ナターシャはこの家で「分岐状の水、リング状の水」が高濃度な水を飲んで、急速に賢くなった。猫では最初に脳細胞の活性化にリング状の水が作用した。つまり性衝動はどんどん減っていった。リトルホワイトは、既に脳細胞の活性化が高レベルになっていたが、いやがる相手にむりやり性交するような猫ではなかった。相手かまわず、抜いてもらえればいいと思う猫ではなかった。悶々としたリトルホワイトは大学院大学に遊びにいった。そこで心理学の講義をしていた天野才造にあった。天野は日本で最高と言われた大学でも優秀さは際立っていた精神科医で、心理学の若手のホープと云うより権威とまで言われた天才だった。リトルホワイトは聴くともなしにこの講義を聴き、天野も何故か拒まず、リトルホワイトはこの講義を聴き、持っていた才能を刺激され、脳細胞がフルに刺激され、更に高レベルになった。心理学が好きになり、天野の研究室まで行くようになった。天野も人を人とも思わない態度を取る傲慢な天才だったが、この二人、正しくは一人と一匹は心が通じ、心の中で会話するようになった。更にこの二人はお互いに刺激し合い、天野はやがてリトルホワイトの天才にきづき、二人は師弟と云うより学友になった。リトルホワイトは賢すぎ、直ぐに天野を追い越した。ところが事件が起きた。天野が講義で詰まらぬ間違いを言った。リトルホワイトは、偉そうに、間違いを指摘した。天野は、思わず、猫のくせにと言ってしまった。リトルホワイトは、この言葉に深く傷ついた。もう研究所にも、大学院大学にもいかなくなった。山の中腹に出来た保養所に行った。そこは産後の母親用の療養をするために、恵が考えた保養所だったが、ジブシティーで働いていた人の月給は高く、シングルマザーは少なかった。要するに利用客がいず、恵は、仕方なく、高齢者の保養施設にも使った。不動財団も保養施設に使い出した。人生に疲れた人や諦めた人の保養施設にもなった。リトルホワイトは、勉強してきた心理学を実践してみる事にした。学問と実践の差は大きく、リトルホワイトは経験の少ない、思い上がりの猫だったと思い知った。そこで、この施設の高齢者や人生に諦めた人の心を和らげる事に力を尽くす事にした。リトルホワイトは、人の心を読めるようになっていった。そのやり方も判ってきた。猫チャンネルを持たない人には、猫の言葉は通じないが、それでも何故か心が和らぎ、高齢者は元気に、人生に諦めた人は勇気が出た。リトルホワイトは、自分の子猫や香奈の家の猫に、心理学のケアの初歩を教え一緒に実践する事にした。傲慢な猫のリトルホワイトも角がとれ、暇を持て余していた、子猫の子猫、そしてその配偶猫たちにも研修を行い、保養施設での奉仕を行うようになった。いつしかこの保養施設は、有名になった。当初の目的だった産後の若いお母さんの産後の保養にも使われ、保育士さんや看護婦さんも常駐し、恵も勢いに乗って、施設を増設した。リトルホワイトは、ここでの猫ドクターになり、猫グループのチーフになっていった。
一方、リトルホワイトの子猫は普通の賢い猫だったので、脳細胞の活性化が進み、性衝動は低下し、晩婚型、少子化猫のようになった。その中の一匹はやや賢かった。ただこの猫はやたらと人なつこく、香奈の横に座り、香奈に甘えた。香奈も可愛がった。香奈は、もう猫が増えすぎ、そんなに名前も付けなくなったが、コシロに似た猫は、三歩歩いて、天上天下唯我独尊とは云わないものの、生まれて直ぐに、我はコシロの再来なりと香奈にいい、香奈も調子にのって、リトルホワイトと名づけていた。なついているこの猫はチビ助と香奈が名づけた。チビ助は賢かったが、取引はしなかった、香奈のご機嫌を取った。チビ助は、香奈あっての猫軍団だと云う事を知っていた。ナターシャはチビ助に、悲惨な野良猫時代の苦労を言い聞かせていた。チビ助は、チャとココの工作も聞いていたが、やはりどうなるか判らないと思っていた。香奈が元気な時はいいが、他の人間は所詮、勝手な生き物だと思っていた。香奈が疲れている時は心配そうにしたし、無理をしないようにもした。父のリトルホワイトから、心理学や心理ケアの話も聞いた。チビ助は香奈のホームドクターのような気になった。リトルホワイトは、チビ助を香奈専用にして、保養所にはつれていかなかった。リトルホワイトもチビ助の言った通りだと思っていた。香奈あっての猫軍団であるとの指摘は正しいと思っていた。

猫基金創設の話の時に、チャとココは奈津美と正人に頼み、チャとココ用のパソコンだけは特別仕様にしてもらい、チーフパソコンとして追加してもらい、このパソコンからは、子猫たちの取引もみる事ができ、子猫たちからは見えないようにしてもらい、チャとココがリスク管理をするようにしていた。最初に猫運用枠の五分の一を取り、運用利益の五分の一はチーフの運用枠に追加され、適時チャとココが子猫たちの成績に応じて、保有株を見ながら、運用枠の割り振りをしていた。

ココはリスクを取っていないと子猫に直ぐに注意したので、管理は徹底し、最後にココに取引結果を見せて終わり、チーフ運用枠は運用しない予備費としたが、チャは温厚だったので、子猫たちの面子をつぶすような事はしなかった。子猫や子猫の子猫に自由に取引させ、最後の30分間に、自分でリスク管理をこっそりとした。子猫の中でチャそっくりのリトルチャと呼ばれる茶色の猫は、取引の天才とも呼べる猫だったし、人に注意される事も嫌った事も原因だった。チャは、基本的に先物でリスクを取ったが、リトルチャが多用するオブションも、少し勉強していた。

スイスカナコインの猫軍団、巨額損失?

チャの配下の子猫たちは、盛んに取引した。儲けは儲けをよび、リスクの高いディリバティブまでして、失敗なんて知らない猫たちだった。チャが盛んにリスク管理と言うのに、閉口していた。その油断が失敗を招いた。ある時株価が上がりに上がっていた、調子に乗って、全て同一方向の買いにした。まだまだ上がる。ここは大儲けと思っていた。上がっている保有株も更に買い足し、おまけに先物も買った。この子猫の運用枠一杯の勝負をした。チャはチーフだったので、チーフ運用枠もたまっていた。最後の30分で子猫の取引のポジションをチェックした。つまり、子猫たちのオーバーナイト注文などをチェックしていた。一匹の子猫グループがやたらと買方向にしているのに、気がついた。この子猫は、チャの子供だったが、真っ白な子猫で、チャタロウと呼ばれていた。チャに似て温厚な性格で、みんなに慕われていた。ただチャと同様に、取引では一気呵成に取引し、イケイケドンドンと儲けるが、脇の甘い所もあった。同じ時に産まれた兄弟でもあったリトルチャは、性格も悪く、取引も複雑で、訳の変わらないポジョンを持つのとは、違っていた。株価はどんどん上がっていた。成り行き信用で保有株の半分程度売った。そろそろ天井感をチャは感じていた。チャとして更にリスクをとる事にした。先物も二割程度売った。おまけに漸く知ったオプションも一割程度つけた。ただチャは年寄り猫だったし、老眼にもなって、ゼロの桁数は、ぼやけていたし、生来の欠点も出て、オブションの単位も先物の単位も桁が間違っていた事までは判らなかった。チャの取引枠は大量で簡単に出来た。

突然スイスで珍しく大地震がおき、株価は信じられない程下がった。債権チームも損を出し、為替チームは少し儲け、デリバティブチームは大いに儲け、商品相場チームは損をして、リスクも取っていたので、トータルでは少し損の結果だった。株・株先物チームの子猫グループは、青くなった。チャタロウは、白い猫だけにより青く見えた。どうしようもなく損だった。先物はどんどん急降下していた。現物は、いずれ回復するかもしれないが、先物はチャタロウたちのチームの運用枠の半分程度の損に膨れ上がっていた。意を決したチャタロウは、チャに打ち明けた。チャは香奈の横にいて、香奈はテレビを見ていた。香奈の世話をチビ助に頼み、そのチャタロウたちの取引をみた。リスクを取っていたチャは、平然として、後は僕が面倒をみると言って、一縷の望みを持って眺めていた、チャタロウたちのチームに謹慎を命じた。うなだれたチャタロウたちのチームは、部屋の隅で小さくなって謹慎した。損は400億相当になっていた。それにしても下がりすぎると思ったチャは、先に自分のパソコンで損を回避しようとした。やたらと儲けていた時期だったので、仕方ないかと思いながら、損する事もあるさとおもいながら、モニターをみた。先物もオプションもどんどん下がり、当然株価も下がっていた。ここで一気に全決済した。勢いを持って下がっていた相場は多量の買で一瞬上がった。何か好材料が出たと思った人たちもいて、それがきっかけとなり、ショックから立ち直った。元々上げすぎていた事の反動で一気に下がっていたので、冷静になった。そしてある程度の所まで戻した。そこでチャタロウたちのチームが買っていた先物と保有株を、一気呵成に全量成行きで売った。当然損は拡大した。100億相当程度まで戻っていた損失が成行きなどで決済したので、損は150億にもなった。しかし損切は早く方がいいのだとチャは思っていた。その後は反動もあり、思わず上がりすぎた。チャも相場猫だったので、まさかと思う程の価格で、思わず売りの指値を出した。チャはここでも一桁違いの売りの注文を先物で出してしまった。勢いを持っていた相場は、それでもチャの指値を食っていった。しかしその指値を食い終わった段階で、地震の被害は段々予想を上回る規模である事が判り、それを契機に、又急速に下がりだした。どんどん下がりだした。チャは、終り成行決済をした。チャは、一気呵成の取引を多用する猫だった。ただ一桁違うとは思っていなかった。しかし、諦めの成行き売りが大量に出て、チャの大量の決済買いを上回った。後は落ち着くまで、様子をみる事にした。スイス組猫軍団の保有株の含み損は大きいと思われた。チャは、ディリバテイブグループのリーダー猫だったリトルチャに、翌日以降の現物株の押し目買いの指示を出した。こいつはリトルホワイトの親父猫で、性格は悪いが、天才的な取引をする猫だったし、株や先物にも強いが、よりリスクの高く、利益率も高いデリバティブに惹かれ、デリバティブを中心に取引していたし、配下の猫たちも優秀だった。チャも取引については全幅の信頼を置いていた。リトルチャに、節目節目で、現物の買いを入れていくように指示していた。大波乱のマーケットだったが、株・先物グループ以外はなんとか乗り切り、むしろ上がり下がりを波乗りみたいに動いて、相当儲けていた。デリバティブチームの儲けは驚異的だった。リトルチャはどちらに転んでも、利益を取れるようにしていた、損もしたが、それ以上に儲けた。荒れる相場はリトルチャの得意技が炸裂し、両建てはどちらも多くは儲けた。それでも株・先物グループの損失をカバー出来ないと思われた。チャは落ち着いてから、猫軍団の成績を見る事にした。結構儲けていた時期だったので、100億相当程度以内の損なら、仕方ないとチャは考え、突発の事故は買い、事件は売りだが、今回は事故扱いで、いずれ値を戻すだろう。現物を安く買えたと思う事にしようと自分に言い聞かせてながら、成績を見た。なんと1500億相当の利益になっていた。チャは信じられない思いで取引ログを確認した。チャ自身の取引で大きな利益が出て、取引単位も一桁違っている事が原因だった。チャは高値、安値で思い切った大きな、成行き勝負をした事になっていた。チャは暫く動けなかった。一歩間違えれば危なかった。チャはみんなを集め、訓示した。
チャの訓示「世の中は何があるか判らない。そのためにリスクを取るのだ、細かく稼いで、大きな回復不可能な損失を出すのは素人だ。我々はプロなのだ。今回は私の発注ミスで返って助かった。しかし、もう二度目はない。再々リスク管理に気をつけろと言っているのに、チャタロウたちの株・株先物グループはそれを怠った。我々の取引には猫軍団の将来がかかっているのだ。株先物グループは取引禁止1週間の処分と社会奉仕を命じる。リトルホワイトの指示の元、保養施設での奉仕活動をするようにその間は、デリバティブグループのリトルチャが株・株先物を代行する。私が取引指針を出すので、それに従って欲しい。」
普段は、温厚なチャだったので、チャの子猫たちは、みんな厳しい処分に震え上がった。



 香奈スペシャルNo.5(最終章)  に続く
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