香奈スペシャル with コシロプラスNo.3-1

ジブトラストは、安定化して影のような存在に

影に隠れていくジブトラスト

財団は、エコノミーホテルを出した地方都市にも託児所や財団の相談室を作り、ジブトラストも地域の優良企業を探したり、調査する連絡事務所を置いたり、複合ビルや商業ビルを持った。そしていつしか駅や道路のように、あるのが当然のように思われるようになった。敷地内は森の中にかくれていた。木々は異様に大きくなり、枝も伸びた。敷地内に入る道路も分かり難くなった。大きな家も外部からは、見えず、大きな森のように見えた。

「この頃はタクシーで帰ってくると、みんな分からないのね。森の中に家があるなんて知らないのよ。」
香奈 「そうだね。私も苦労するよ。家から来て貰う事が多いのよ。だれか居るよ。」
「私もそうしよう。この頃財団もみんな気軽に相談に来てくれるよ。シングマザーでも十分に生きていけるし、生活や色んな相談にものっているよ。関係する企業も多いから、就職も斡旋できるようになったよ。でも今運用会社は何をしてるの。配当は変わらないけど、前みたいに、がんがん取引して儲けているのじゃないのでしょう。」
香奈 「私は、午前中は海外からの報告と海外担当からの連絡を見ているよ。正子さんは、静かに取引をしてるよ。ただ扱う金額も多いし、そんなに派手な動きはしないようになったの。ただ色々な所に出資したり、持っている株も多いでしょう。色々な会社にも関係があるのよ。世界中に出資しているし、結構その配当だけでも多いのよ。昔みたいな売買差益だけでもないのよ。小さかった時分に出資していた会社が大きくなって、その出資額以上の配当を貰っている事もあるのよ。今は今後大きく伸びそうな会社に投資したり、その相談にのっていく方が多いの。株式取引は、敷地内で、神子ちゃんが主に、少数の人と検討して指示を出しているわ。神太朗君は、企業の支援や相談なんかをして貰っているわ。正子さんの所には、離れを3軒作って、神太朗君の所は子供部屋が2つ、神子ちゃんの所も2つ、神之助君の所は3つ作ったらしいよ。子供の数までもう決まっているのよ。みんなあの3人には逆らえないから。」
「怖いのね。」

神太朗と神子がそれぞれ結婚

神子は、大学を出ると直ぐにジブトラストに入り、同時に結婚した。神子もやはり社長秘書として、株式売買を担当してジブもカミカミも大きく、利益を上げていた。上場株式は、四兆になり、非上場は二兆になった。非上場の会社が幾つか上場した。株式用の口座には三千億、商品と先物の口座には六千億はもう変わりなかった。一千億程度貸しており、現金としては、海外にも分散していたが四兆もあった。

神太朗は、大学を出て2年後、結婚した。神太朗と神子は結婚しても、敷地内に住むようになり、二人とも社長秘書として勤めていたが、神子は株式投資を担当していたが、神太朗は、香奈と相談して企業支援や企業相談を担当し、新宿のオフィスとも良く連絡を取るようになった。

神太朗の妻、みどり

神太朗は東大の法学部を出て、直ぐにジブトラストに入っていた。結婚相手の岡崎みどりは資産家の娘で、野心家で、スタイルも顔も頭も良かった。ただ一つ悪かったのは、根性と性格だけだった。それに直ぐに人を馬鹿にした。性格の悪さが顔に出た。男遊びも激しく、10人以上と遊んでいた。親が甘いので、贅沢に慣れた。男は初めはスタイルと顔に惹かれ、みどりの上で遊んだ。みどりは不感症で、ほとんど感じなかった。やった男をこき下ろした。小さいとか柔らかいとか役立たずとか言った。男たちは離れていった。又別の男が寄ってきた。そして離れた。成績はよかったので、法科大学院に行き、司法試験に通った。ただ大学時代、秀才と言われた神太朗にはなぜか怯えていた。離れて座っていた。ところが卒業間近に、神太朗が声をかけると夢遊病のように神太朗に近づき、そして黙ってホテルについていき、神太朗のものを受け入れた。そしてみどりの人生が狂った。

みどりは大学院にいる時も、神太朗の元を定期的に訪れ、神太朗のものを奥に入れ、頭が痺れるほど感じ、司法試験に受かると直ぐに結婚した。神太朗はみどりの中に入るとみどりは身体中が感じ、みどりの精神はすべて崩壊し、神太朗の意志のまま動く人形と化した。みどりの父の岡崎三悟は、治部一族との縁が出来て喜んだものの、治部ホテルではなく、敷地内のホールで結婚式を挙げる事に難色を示していたが、何故か最後には同意していた。そして結婚式を挙げ、新婚旅行にも行かず、三日間みどりは神太朗の精液で人格改造を受けた。そしてみどりは変わった。性格の悪さは消え去り、綺麗な顔になった。

新婚旅行にも行かなかった事を岡崎三悟は怪しんだが、遊びに来たみどりは別人の女に変わっていた。みどりはそれでも神太朗の指示に従い、乳幼児施設での補助に1年間働いた。キャピキャピの元不良上がりの保育士や普通の保育士らの指示の元、おしめを替えたり、子供たちと遊んだ。そして財団での相談を横で聞き、各地の財団事務所にもよく行った。その間、神太朗は、みどりの子宮に直撃弾を当て続けていた。しかしみどりはまだ妊娠しなかった。みどりの性格の悪さと根性の悪さは強烈だった。愛よりは打算を、そして誠意よりは計算を、熱情はなく、狡猾な性格は、神太朗にとっても予想を超えていた。みどりは子供の頃、両親からネグレクトされていた。みどりには愛なんかは与えられなかった。金と世間体と知恵そして美貌は与えられた。みどりをそれを元に、打算と計算と知恵で、大きくなり、美貌そして持って生まれたスタイルの良さで、男たちを手玉にとり生きていた。みどりは、自分の外壁を壊す可能性のある神太朗を直感的に恐れていた。神太朗の力で、みどりは神太朗に服従を誓ったが、それは一時的な麻酔でしかなかった。みどり自身が持っている本当の自分を厚い氷のように、打算や計算そして狡猾さが覆いつくしていた。神太朗には、とても熱い気持ちを持った、優しいみどりが見えていた。しかし、本当のみどりに帰るのは、神太朗の力をもっても、時間がかかった。神太朗はそれを知っていた。

みどりは、財団に相談に来た、若い女性の話を相談員と一緒に聞いていた。その若い女性は、自分勝手な言い分を述べ立てていた。子供の頃に、実の父に、性的な悪戯をされ、中学生から、父のものをしゃぶるようになり、そして高校生になると、色々な男のものをしゃぶり、高校を退学し、怪しげな店で働き、誰とも知らない男の子供を身ごもっていた。定職はなく、わずかな貯金でなんとか暮らしていた。堕胎する金もなく、財団のポスターで引き寄せられ、子供を産めば、生活ができると計算して、相談にやってきた。堕胎せずに、シングルマザーでも生きる決意を固めれば、財団は住居や生活そして子供の育児や学校の費用まで応援し、女性が自立して、子供を育てる事を手助けしていた。財団に相談にくる女性の多くは、自分で道を切り開こうと努力し、そして疲れ果てて相談にくる人だった。そして財団の支援の元に、休息して出産し、託児所に子供を預け、懸命に働こうとしている人だった。相談員はそれでも、関係する病院を手配して、一時的な住宅を提供して、一時的な生活費を受け取れるように手続きをする為に、席を外した。みどりはその女性と話していた。その若い女性は、みどりにネットは出来るの、パチンコにも行っていいでしょう。住まいは2LDKは欲しいとか言っていた。みどりはこんな奴に金やるのは、どぶに金を捨てるのも同じだと思っていた。ただその若い女性は、スタイルも顔もよかった、スタイルは妊娠して少し無様になっていたが。高校でも成績だけはよかったようだ。それでも神太朗の力が及んでいたみどりは大人しく、色々と話をしていた。この女性も父への嫌悪感を心の中で持っていた。

ふと話が切れて、その女性が横を向いた時に、みどりは鏡を見ているような気がした。自分勝手で我が儘で、愛を知らず、自分の美貌だけを売り物にしてきていた。みどりには、父も狡猾で、風呂場でのみどりの裸を見る程度であったし、金もくれた。みどりも狡猾で、いい子の振りをして育った。なぜかこの女性に嫌悪感と親近感を感じ、産婦人科病院まで付いていき、財団の用意した住居に連れて行った。お腹の子供は順調に育っていた。そして少しは働く事も出来るようであった。みどりには、お腹の子供がありがとうと言っているような気がした。みどりは、その女性を誘い、一緒に乳幼児施設で働くようになった。その女性は渋々だが、働くようになり、おしめの替え方などを慣れない手つきでやるようになった。

みどりの心の中で何か音を立てて、崩れ落ちるような気がした。そしてみどりは妊娠していた。みどりはまだ知らず、教団での相談を一緒に聞いたり、あの女性と話したりしていた。子供が産まれる前には、風俗にでも行って、働いてみようとその女性は言っていた。1ヶ月ほどたつと、保育士になってみようとか言い出した。みどりは財団の支援や協力体制を整えて、その女性に勉強も教えるようになった。元々頭もよかったその女性は、少しずつ勉強して、子供が産まれた後は、子供を託児所に預け、看護婦の学校に行きだしていた。みどりは、その頃は敷地内で大きなお腹を神太朗にさすって貰っていた。みどりは、ゴロゴロと音が出ているように感じていた。みどりはやがて、ジブトラストで、法律問題を扱うようになった。みどりの法律からのブランクは長く、とても回復できないような気がしたが、何故か直ぐに頭の中は整理できた。神太朗の霊力は強制する力は、比較的弱いが、会う人の善意や可能性を見抜き、育てる事には優れていた。みどりはやがて、財団や施設などの総合的な管理や運営にも強く関与する事になっていた。みどりは小さい時には、野良猫や子猫の行く末まで案じる程優しい子供であった。

父の岡崎三悟は、すれっからしの悪党で、悪徳弁護士と組み、人を騙して、先祖からの小さな問屋を貿易商社にまで大きくした。そして自分の性欲を満たすだめに、女を抱き、愛する事はなかった。みどりは綺麗な子供で、直ぐに胸は大きくなり、均整もとれた身体になった。娘のみどりにも邪な欲情を持った。みどりもそれを感じ、わざと乳房やお尻まで見える服装をして、金を貰った。ただ岡崎三悟は世知には長けていたので、その満たされない欲望は変なクラブで、金さえ出せば、鞭でもロウでも受ける女に向けられた。妻の祥江とは二人の子供が出来たが、次第に嘘ったらしたい喘ぎ声を出す祥江に厭きていた。鞭で叩いたり、ロウを垂らしたりした時の女の喘ぎ声が好きになった。そんな女は精液も平気で飲むし、おしっこも飲んだ。会費は高かったが、女もいい身体をしていた。時々ショーもやって、前の穴でも後の穴でもビール瓶やワインの瓶も入れていた。ペットボトルとは思っていたが、それでも興奮した。その後舐めて貰って、精液を出す快感が良かった。時々びっくりする程若い女もいた。みどりのような気がして、鞭にも力が入り、約束とは違うとか言われたが、追加の金を払うと喜んで、三悟のものを舐めた。今更賞味期限切れの腹のたるんだ女を抱く気にはなれなかった。でも世間体のため、離婚はしなかった。金さえやってくれば、よかった。いわば飾りに過ぎなかった。祥江は、ツバメか雀でも飼っているようだったが、気にしなかった。

みどりは父親を嫌悪しながらも、やがて、人を人とも思わない態度で、大きくなった。本当は熱情感や正義感が溢れる女性であった。ただ自分の行動が、損とか得とかの判断が、みどりの心の壁を厚くしていた。岡崎三悟は、結婚式の時には、敷地内に来た。神太朗は、特に神之助の霊力から守るバリヤーを三悟に与えていた。神太朗の力を持ってしても、三悟は直せなかった。三悟はみどりを可愛がっていたので、敷地内に遊びに行きたかったが、なぜか用事が出来て、いけなかった。

みどりの父、三悟死亡

三悟はみどりが結婚して、一年後、変なクラブで、プレイしている時に、鞭で叩いた女が興奮のあまり、跳ね返り、三悟の急所に足が当たり、三悟も興奮して心臓発作を起こして、病院に運ばれ、暫く入院していたが、亡くなった。亡くなった時に三悟の妻の祥江や長男の伍助は、思わず笑みを洩らし、そして直ぐに大きく嘘泣きをしたほど、みんなから慕われていた。みどりはその頃は陣痛で苦しんでいた。三悟の霊は、みどりに会いに来て、本当はみどりが好きだったと云いに来た。そしてわしにも夢はあった。医者になり、人を助けたかった。父に無理矢理商売の道に、ひきづりこまれた。お前の子が、わしの夢を果たしてくれる時を見たかった。仏壇と伊豆の別荘だけは、お前が見てくれと言って、去っていった。みどりは出産後、子供をつれて、三悟の位牌にお参りをした。ろうそくの火は大きく、上がり、仏壇の横の三悟の顔が笑っていた。三悟の遺産を巡って、祥江と伍助との間で揉めた。祥江は、若いツバメのエサ代が高くついた。、伍助は欲深い妻の園子がついていた。園子もホストクラブでの経費も要った。みどりはそんな二人を見て、仏壇と三悟が良く休みに行った海岸の見える古い伊豆の別荘を貰って、後は二人に任せた。三悟の貿易会社と少しの現金と色々な土地を伍助が貰い、祥江は高額の現金と屋敷と色々な土地を手に入れた。仏壇と仏事なんかはみどりの好きなようにやれと言って、喜んで渡した。相続税も膨大であったが、残された現金も膨大で、払う事ができた。三悟は金を貯めていた。祥江は屋敷で、ツバメを飼う事になり、ツバメもエサが良くなったので、飼い主にサービスした。園子もホスト遊びを楽しみ事が出来た。伍助も貿易会社の社長となり、下の世話もしてもらえるグラマーな秘書と共に、仕事に励んだ。秘書には高額の給料と豪華なマンションが社宅として与えられた。秘書は献身的に伍助のものを舐め、伍助はその働きぶりに満足して、夜もベッドの上で働いてもらった。

神子の結婚

神子は、国際経済学の若い助教授若林陽一を選んでいた。陽一は、在学中から、神子に魅入られていた。そして神子が卒業すると直ぐに結婚を申し込み、敷地内で結婚し、正子の家のの離れで暮らすようになり、神子の目線で陽一のものはそそり立ち、神子がしゃぶるとこれ以上大きくならないほど大きくなり、神子の中に入り、すべての精液を絞り出された。精液を神子の中に出せば出すほど、陽一の頭は冴え、経済的な予測は間違う事はなかった。陽一は3日か4日置きに、溜まっていた精液を絞りだされていた。陽一も神子の中に精液を絞りだされる度に、予測能力がいてきた。経済的な激変は事前に関知できるようになった。陽一は経済学では有名な若手ではあったが、神子と結婚すると大学は辞め、ジブトラストに入り、研究センターを作った。神子の霊力は強く、会う人の将来性を見抜き、社会を予測する力に優れていた。予測する力は、三人の中では一番強かった。

神子は、ジブトラストに入って、株式投資を担当していた。予測の力を利用して、上手く稼いでいた。神子も妊娠し、神太朗の妻のみどりも妊娠した。神子は、神子とみどりは二人同時に出産すると予言して、仕事の整理もしていた。神子とみどりは、同じ日に出産した。神子の予言は当たった。

パワーアップした霊力

「本当に二人同時に出産したね。同じ病院で数時間違いに出産するなんて、凄いね。偶然としても出来すぎだね。でもみどりさんはお父さんが亡くなって大変だったね。まだ若いのに。」
香奈「本当だね。神太朗君や正子さんたちも葬儀に行った。大きなお葬式だったらしいよ。」
「ここに越せば良かったのにね。ここではあんな若い歳では死なないよ。」
香奈「神之助君が言うのには、子供も出来たし、パワーも強くなった。今後は、敷地内では130才以下では死なないとか言っていたよ。」
「水もそのせいかね。」
香奈「よく判らないね。真一郎さんは、効果は少しずつ強くなっていると言っているよ。空気も関係するかもしれないと云っていたよ。ミネラルウオーターだけで、ここで育てたマウスも、3倍程度長生きするらしいよ。」
「うかうか敷地外には出かけられないね。」
香奈「瑠璃はこの間、海外に行ったら、疲れて大変だったと言っていたよ。奈美恵や良平君に海外出張を任せ、もう海外に行くのは減らすと言っていたよ。ネットもあるし、通信速度も早くなったからね。」

ジブトラスト、子会社システムを採用!

香奈は、ジブトラストをより安定するように、ジブトラストの組織を考えていた。香奈は、多くの取引を本体から切り離し、運用枠だけのリスクをジブトラストが負担して、もうジブトラストとしての配当や財団への寄付をほとんど賄えるようになっていたジブトラストの保有株式そして不動産に加えて保有している貴金属と現金をリスクから遠ざける事にした。香奈は、コシロの死以来、ジブトラストの今後を考えていた。香奈には、恭助と和子の事故死も大きな衝撃だった。恭助と和子は長い間、香奈を見守ってくれた。しかしそれはいわば順送りとも思い、諦めもついた。しかし、コシロは世話をあまりしなかったとは云え、香奈の飼い猫だった。長い間いつもいる存在がなくなり、香奈は自分の死についても考えるようになっていた。香奈は元気だったが、香奈も歳をとり、人はいずれは死ぬ。神懸かりの正子により、ジブトラストは大きくなった。しかし、株式先物や商品相場のような稼ぎでは、管理する人や感性の優れた人がいなくなると、いつか大損して、今までの蓄積が泡と消える可能性がある。香奈は相場で失敗して、大きな財産を失った人も見てきた。ジブトラストとして生き残る道を考えていた。神子が最初の子の神代を出産して、予測の力が強くなり、ジブトラストが順調になったのを機会に、組織改正を考えた。

神子「香奈おばさん、何かご用ですか?」
正子「重大な事ですか?」
神太朗「珍しいですね、こんな会議は。」
香奈「ジブトラストも大きくなって、保有株も増えたし、ビルなどの不動産もあるし、金もアメリカだけでなく、スイスにも保管しているし、現金も保有している。そこで、正子さんの先物と保有株の調整売買以外の取引を、子会社にして貰って、外部に出したいと思っているの。」
神太朗「会社支援や増資や出資は、そのままですか?」
神子「リスクの分散と資産の分散ですね。」
香奈「その通りよ。ジブトラストとしては、会社支援や増資や出資と正子さんの先物そして神子ちゃんの調整売買に限定するのよ。それ以外は、子会社を作り、子会社の売買にして、手数料を多く渡し、配当を貰うようにするの。本体としては、取引の指導はするけど、子会社の責任で取引するようにするのよ。スイスでは金の問題もあってそうしているけど、取引も組織的に独立させるのよ。海外での大きな損が出ても限定的なものにするのよ。海外にも資産があるから形だけは、管理するために、ジブの海外支店は残るけどね。」
正子 「それはいいかも知れませんね。取引担当の責任もはっきりします。」
香奈 「神子ちゃん、子会社の規模とか運用のやり方などをまとめてね。」

神子は国内と海外に分けて考えた。国内は初めは、取引毎に株式、先物、商品などに分けようと思ったが、取引チームの人と相談している時に、取引チーム毎に、子会社にする事を考えた。取引チームが個々に独立して、運用枠をそのまま資本金にした。海外では商品相場を取引する人は多かったが、国内では先物と株式が多かった。商品相場は香奈オフィスのヘッジ取引から派生したものなので、国内では少なかった。商品相場の人は、海外でも原油とか貴金属といった特定の分野に偏っていたし、ニューヨークとかロンドンとか云った市場毎に、得意とする分野毎に別れて、孫会社として独立していった。先物と株式を連動させる孫会社もあれば、先物専門の孫会社、そして株式投資専門の孫会社に別れ、子会社は、それを統括する全体的な管理を行う人が、利益の分配として株式投資をしていたので、それを担当していた古株が子会社として残っていった。同じ場所で活動している事がほとんどだった。いわば会社で言えば、部毎、課毎で独立したようなものであった。従来のその人たちの運用成績に応じた運用枠を与えられ、それを資本金として子会社や孫会社になった。ただ、この子会社システムには、運用会社としては、珍しい、香奈独特の考え方も反映された。各子会社や孫会社にも、総額として、大体、資本金10パーセント以下で、働いている人からの出資も受け入れる事にした。いくら高給のジブトラストでも、そんなに出資できないものの、利益水準や配当率の高さなどは自分が働いているので、良く知っていた。みんな、それなりに出資していった。しかし、その株式もジブトラストの許可なしに譲渡は出来ず、額面だけの返還に応じる事にした。コッソリートに任せていたジブスイスでそのようにしていた。これがジブトラストで働いている人の子供が引き継いで働くようになった切っ掛けとなった。

本体からの運用指針や情報の提供は、得られた利益の中で幾分かの指導料や情報料を取って行った。孫会社は成績によって淘汰されていった。保有株の含み損を除いて、三期連続して赤字になれば、取引は当分禁止となった。子会社や孫会社になれば、運用手数料が10パーセントになり、出資比率に応じていくらかの配当も貰えた。税務処理などの管理は、子会社の管理セクションが利益の中から管理費用をとって代行するようにしていた。海外の子会社は、地域毎に独立したが、取引毎に孫会社が出来ていった。管理セクションの人も、直属の会社の役員でもある事が多く、独立した組織では、業績に応じて、数パーセント以下での無償贈与する事にした。本体が得た子会社からの指導料や情報料運用利益に比例して貰い、本体内部での子会社や孫会社の利益に関与する比率に応じて分配し、比例給を与える事とし、本体内部に残り、管理したり、調査したりする人たちの処遇にも配慮した。香奈と神子が相談しながら、組織の再編成をしていった。リスクを分散させ、利益も分散させ、資金も分散させたので、ジブトラストの利益は、減少すると覚悟していた。国内では本体との兼任も多く、数年たつと子会社を止め、ジブで働く人、そして大きく成績を伸ばす人、ジブトラストから出資を貰い、支援している事業会社そのものに入る人などに別れていった。海外でも孫会社も淘汰され、大きく儲ける孫会社は、一部は更に細分化して、ひ孫会社を作った事もあったし、大きな孫会社として取引する事もあった。子会社や孫会社も利益が上がっていった。神子の取引指針や見通しは正確だったので、それなりに儲かり、成績に応じて、利益の中から一部を運用枠として、運用枠を上げ、より細かい本体からの取引指針も与えられた。本体への取引状況の報告や連絡も必要だったので、取引担当者の責任を明確して、運用手数料を上げたようなものであった。全体の動きは本体で管理していた。

海外でもジブトラストとしての株や資産もあり、ジブトラストの海外支店も、子会社の管理の人が兼任する形ではあったが残った。本体は、取引としては、正子の先物と神子の調整売買だけになり、取引チームから子会社や孫会社に、本体からの連絡そして神子や本体の調査室からの取引指針や情報を連絡していった。 本体としては、運用が減ったので、子会社での取引の監督や取引関係の調査などの人への報酬も検討して、関係する子会社や孫会社らの運用利益比例になった。香奈や正子たち、役員の報酬は、運用利益ではなく、ジブトラストの最終的な利益に比例して報酬として、利益比例をより明確にした。 

正子の先物はジブトラストの奇跡の成長の根元なので、正子だけの先物の口座も三千億程度を用意した。子会社で運用しているお金は、子会社への出資となり、非上場の株式は三兆五千億を超えた。純利益は少しずつ増えていった。現金も銀行以外にもジブトラスト本体にも置き、毎年一千億程度増えていった。そして非上場の株だけが増えていく事になった。ジブトラストが直接出資している海外の子会社の数は、海外の市場がある場所で作ったので、少し増えたが、その後そんなに増えなくなった。相場以外では、ジブトラストとして出資した海外の会社の資金の受け皿会社のような子会社が増える程度であった。

ジブトラストは、子会社が得た利益も、更に子会社として株や不動産の購入として運用させ、子会社の利益の一部は、子会社において、利益すべてを配当とはしなかった。配当準備金として、現金も保留させるようにした。指導料や情報料は取りながら、状況に応じて配当を出し、概ね利益の半分程度を本体に集めていった。孫会社も整理され、取引状況を見て、成績の優秀な会社や本体の指示に従い、暴走しない会社だけが残る事になった。本体の指示で購入した株や不動産についても、本体の指示で処分しても、その利益はやはり、子会社や孫会社の利益となった。何年か経つと、世界各地の子会社は、やがて大きくなり、子会社として株式を保有し、本体と同様にリスクの高い取引は、孫会社や運用を関連会社に任せるようになっていった。ジブの海外支店でも得られた配当に応じて、管理料が海外の子会社に支払われた。 聖子の快適には、ジブトラストとしても出資していったので、初めは快適からの配当は現地快適子会社から、本体に支払われたが、快適が大きくなり、出資も大きくなり、配当も増えてくると快適内部にジブトラストの現地事務所を作り、快適の人を兼任したり、最後には子会社となり、現地の経済状況を調査し、本体に報告するようになった。快適以外にもジブトラストが多く出資している企業がある国で、ジブトラストの子会社がない国では相場に関係のない子会社が出来る事があった。

もうジブトラストの恒常的な費用は、つまりジブトラストとしての配当や財団への寄付などは、出資している非上場の事業会社や直属の事業会社等からの配当そしてビルなどの利益だけで十分賄えていた。リスクの高い取引への依存度は減り、限定的なリスクを持って取引に臨むようになった。日本担当の取引チームの人は国内の子会社の社長兼任となった。海外担当の取引チームは、海外の子会社の株も少し持ち、連絡を取って、海外の子会社や孫会社の取引状況をみていた。渋谷の海外関係業務とも連絡していた。管理スタッフは、直属の会社の社長や役員を兼務していた。これで子会社が損を出しても、本体の取引で損を出しても、取引そのものを止めても、手元の現金を抱えて、ジブトラストは配当を貰いながら、数多くのビルを持つビル管理会社として存続し、相続時に一旦出資金を返還し、子供たちが相続後に又出資して貰い、ジブトラストとして配当も出し、財団にも寄付して、一族の経済的な補助も出来る筈だった。どんどん儲けていくために組織改正したのではなかった。香奈は、これまでのように異常な儲けがなくても、なんとかなると計算していた。

ジブトラストとしては、正子は、株式保有状況を見ながら、アメリカやヨーロッパの子会社や孫会社にも、先物市場の指示を出していた。正子は相変わらず日本の先物市場で取引していたが、子会社や孫会社にも、時々運用を指示していた。神子も株式投資で、自分でも運用しながら、指示を出すなどしていた。

チャとココの秘話

コシロと関係を持った茶色の猫は、三匹の子供が産まれていた。白い猫が二匹と茶色の猫が一匹生まれていた。白い猫の一匹はよちよち歩きの時にスイスからきた留学生に見つかり、引き取られていた。茶色の母猫は苦労して、二匹の子猫を育てて、厳しく躾ていた。コシロが死んだ時に、夢枕に立ち、茶色の猫に別れを告げ、子供たちには大きな使命があるので、宜しく頼むと言った。三匹の子猫が生まれ、一匹の猫はやがて多くの人を慰め、元気づけ、多くの猫たちをまとめるようになるので、幼くして別れても嘆かないように、そして残った二匹がその土台を作る猫になる。宜しく頼むと言っていた。茶色の母猫は、この二匹の猫には、よちよち歩きの時から、寒い窓の外から大学の授業を聞かせ、勉強させていた。コシロ譲りの頭の良さのある二匹の子猫は、賢くなった。大学食堂の残飯で食うや食わずの毎日だったが、気位の高い猫に育っていった。コシロは、又突然この茶色の母猫の夢枕に立ち、子猫たちを香奈に預けるように言った。 

コシロ「君の事が気になるのだよ。早いけど、こっちで一緒に住む時期になったようだ。」、
茶色の猫「この頃、胃が痛いの、やっぱり駄目なんですね。」、
コシロ「君には、迷惑をさせた。こっちで、のんびり二人で暮らそう。青不動さんの元でゆったり暮らしていけるよ。子猫達には、香奈の手元に預けよう。あの子猫達は、香奈を助けて、やるべき仕事があると青不動さんが言っていた。もう一匹の子猫は海外で人を慰め、元気づける筈だ。君の身体の後始末もしてくれる事になっている。いずれにしても魂は僕と一緒だよ。明日の夜中に君を迎えにくるよ。翌日のお昼頃に真っ赤な屋根のない車に子猫達が乗るように言ってくれ。美術館の前で暫く止まるから、降りるように言ってくれ。後は足が勝手に動く筈だ。」

茶色の猫は、子猫たちに別れを告げた。

茶色の猫「私ももう永くない。お前達に話しておきたい事がある。」、
白い子猫「そんな気の弱い事を言わないでよ。」、
茶色の子猫「そうだよ。」、
茶色の猫 「私はお前たちを厳しく躾てきた。お父さんから言われていたからね。今晩、お父さんが私を迎えにくるんだよ。私はお父さんとは一晩しか一緒にすごしていない。今度はゆっくりと二人で暮らそうと言ってくれたよ。猫は猫同士でゆっくりくらそうとも言ってくれたよ。私は喜んでいるよ。一夜だけだったけど楽しい夜を過ごしたからね。人間は知らないけど、一夜の逢瀬が一生の宝となるのが猫の生き方だよ。そう思われる猫になってね。エサなんかに惑われないでね。猫としての矜持を持ってね。お前達はお前達の使命があるとお父さんはいっていたよ。明日の昼頃、屋根のない真っ赤な車が大学に来る。それに隠れて、乗りなさい。私の身体は、もう一匹の子猫が、見つけてくれる事になっている。心配しないで、魂はお父さんと一緒なんだよ。お前達をお父さんと一緒に見守っているよ。頑張るんだよ。まだまだお前達の知識も経験も不足している事を忘れないでね。謙虚に知識を求め、経験を積むんだよ。それが猫の生き方なんだよ。」

真夜中、茶色の母猫は、足をしきりに動かして、死んでしまった。翌日、白い子猫を拾ったスイスからの猫好きの留学生が、スイスに帰ろうと準備していると、白い子猫がしきりに鳴くので、子猫を拾った付近を見て、なにげなく部室の裏を除くと、茶色の猫は冷たくなっていた。スイスからの留学生は、猫好きだったので、茶色の猫の死体を持って帰ると、白い子猫は茶色の猫の死体に泣き崩れ、感じ入ったその留学生は茶色の猫を火葬して、その骨をこっそり、部室の裏に埋め、やがて一部の骨を子猫と一緒にスイスに持って帰った。

茶色の子猫と白い子猫は、冷たくなった母猫と一晩過ごし、黙祷して部室裏から去り、母猫の言われた取り、屋根のない車で大学を後にしていた。涙を浮かべた二匹の子猫は、その車の中から、大学を見ながら、車は敷地内へと走りさっていた。二匹の子猫は、こっそり外を見て、道を心に刻んだ。車を運転していた良平は、一般道を最短距離を通って、美術館に着いた。奈津実との待ち合わせ時間より早く着いた。良平は暫く美術館前で止まり、少し美術館付近を散歩して、奈津実が来るのを待った。二匹の子猫は不安そうな顔をして車から降りた。二匹の子猫は敷地内に入っていった。知らない場所なのに、足は勝手に動いていた。

チャとココ、香奈の家に現れる!

ジブトラストとしての再編成が進んでいた時に、香奈がジブトラストから、帰ってくると、コシロに良く似た白い小さい猫と茶色の猫が二匹並んで香奈の家の玄関で待っていた。香奈は、もう歳だし、猫を飼うのは、嫌だった、しかし、その二匹の猫は、堂々として、当然のような顔をして香奈の家に入り、当然のように、コシロの部屋に入って、コシロのようにお不動さんの絵の裏で寝ていた。コシロが死んで3年程経っていたが、コシロの部屋はそのままにしてあった。片づける気にはならなかった。コシロは死んだ時に雄と判った。外に出歩かない猫だったが、白い猫はあまりにもコシロに似ていた。茶色の猫も、コシロと同じ顔をしていた。コシロが死んで急に部屋に火が消えたようになり、その悲しみも時間と共に薄らぐように思えたが、それでも忘れた頃に急に寂しくなり、絵の裏を覗いたりして、ため息をもらす香奈だったので、追い出す事も出来ず、そのまま猫を飼った。

二匹の猫は、仲がそんなに良くないものの、他人の事は知らないよと言った顔をして、お不動さんの絵の裏にいた。翌日、香奈はもう一枚の大きなお不動さんの絵を持ってきた。するとそれぞれ一匹ずつ、絵の裏を自分の寝床とした。二匹の猫は、コシロの部屋にじっとしていた。お手伝いさんはまた、コシロの部屋を掃除して、猫のエサと水を用意し、猫のお便所を掃除する仕事が増えた。香奈は水とエサを朝あげる事になっていたが、猫たちは若く、水は直ぐに飲んでしまい、エサも食べてしまう事も多かった。おかわりを用意しろと言った顔をして、漸くお便所の掃除を済ませた、お手伝いさんを、二匹の猫は見ていた。

「香奈さん、又猫を飼ったの。コシロが死んだ時、もう猫は飼わないと言っていたのに。お手伝いさんがぼやいていたよ、仕事が増えたと言って。」、
香奈「飼う積もりはなかったんだよ。堂々と一緒に家に入ってきて、コシロの部屋で寝るんだよ。コシロにどことなく似ているし、追い出す事も出来ないのよ。」、
「コシロは長生きした猫だけど、コシロの子孫かねえ。」、
香奈 「でもコシロは家からほとんど出なかった猫だよ。」
「香奈さんが海外に行ってる時には、コシロは夜遊びしていたみたいだよ。コシロが死ね間際に、友貴が帰ってきた時に敷地の外に出かけようとするコシロを見た事もあったらしいよ。翌日、健次郎さんが珍しく朝散歩していると、美術館の方角から帰ってくる所を見たらしい。」
香奈「本当かね。もう相当の歳だったのにね。コシロに良く似て水を良く飲むのよ。」
「友一が、大学に用事が出来て行った時に、コシロとよく似た子猫を見かけたといっていたよ。その猫かも知れないよ。白い子猫と茶色の子猫が、二匹並んで窓の外で授業を聞いているみたいに座っていたらしいよ。」
香奈「コシロは英語も読めるみたいだったけど、あの二匹も海外らのメールも印刷してくれと言うみたいに鳴くんだよ。コシロも画面見るのは苦手だったのよ。」、
「それは、気のせいだよ。猫は英語なんか読めないよ。」

香奈の隠し口座であるスイスカナコイン発足

香奈は、正子につられて同様に香奈ファイナンシャルを作ったが、コシロの死以来、香奈はほとんど取引はしなくなった。でもまだ香奈が作った香奈オフィス以外の自分の運用会社は、活動しないまま、残っていた。国内では自分の運用会社の一つを香奈ファイナンシャルと改名したものの、まだ香奈の運用会社は、国内にもそれ以外にもあった。ケイマンの運用会社や銀行口座やスイスの運用会社や銀行口座もそのままあった。ジブトラストも子会社システムにして、香奈も自分の運用会社を整理する気になった。国内の運用会社は香奈ファイナンシャルに吸収させた。コシロは、スイスでの海外先物をする事に、にゃーにゃーと良く鳴いて、スイスの香奈の運用会社の証券口座は盛んに動いていた時もあった。香奈は、香奈オフィスのみんなにも隠れて、こっそり一人で、スイスの運用会社を作り、スイスの某銀行にも口座を持ち、スイスで先物、株式や貴金属相場そして為替などをしていた。税務処理などは、親しかったコッソリートに任せていた。日本にも送金させず、日本から送金もしなかった。和子の追求を恐れ、長い間取引しないもののそのままになっていた。ジブトラストを作って、海外のオフィスも作った後も、短かい時間であったが、こっそりとコシロと一緒に相場をしていた。それは香奈とコシロだけの秘密だった。コシロに良く似た猫が来て、久しぶりに思い出して、口座をじっくり見てみた。思いがけず残っていた。香奈ももう歳になり、若かったコッソリートも相当の歳になっていた。整理しようと思った。コッソリートに頼んで、街外れの小さい古いビルを買って貰い、スイスの香奈の個人の運用会社に、残っていた香奈の海外の個人名義の運用会社も集め、スイスカナコインとなった。

コッソリートに相談して、秘密を守れる信頼できる人を選んで貰った。コッソリートは、自分の証券会社も経営し、ジブトラストスイスも担当し、ジブトラストスイス貴金属の面倒まで見ていて多忙だった。コッソリートは、自分の証券会社を引退した60才と若かったオタスケーを選び、スイスカナコインの担当とした。香奈の海外の個人資産は250億を超える現金があった。スイスカナコインは、全てを集めても、資本金は4億にも満たない会社になったが、250億を超える現金を持つ会社だった。ただコッソリートは、すべての香奈の海外の運用会社のお金をオタスケーに任せるのには、躊躇した。香奈は、海外の運用会社は作ってから、運用してもお金をほとんど引き出していなかった。香奈オフィスに間借りしているような運用会社は、香奈オフィスと一心同体だったので、資源関係の利権獲得の時に、お金が必要な時には、使う事もあったが、スイスやケイマンの運用会社はまったく引きだしていなかった。香奈オフィスは、ボッタクリの瑠璃が香奈オフィスを大きくして、もう香奈の個人会社からの資金の借り入れなぞはしていなかった。香奈は、瑠璃が頼んでくれば、資金の貸し出しに応じて来たが、香奈ファイナンャルからの表の金で十分だった。瑠璃は、存在そのものは知っていたようだったが、知らん振りしていた。税務処理だけしていたので運用会社の資産は膨らんでいた。そこでコッソリートは、現金を2つに分け、一つの口座に当座必要な資金を入れ、それ以外のお金は、コッソリートが預かる事にした。お金は人を変えるのを見てきたコッソリートだった。コッソリートも香奈に初めて会い、大金を貰い、香奈の運用会社を作る時に、そのまま何度も持ち逃げしようと思った事もあった。

ビルを買うのに5億円相当かかった。オタスケーは株屋なので、コインに詳しい人も集めた。4億円相当で金の購入資金とし、1億円相当で金貨の購入資金とした。大きな金庫も買った。香奈は、運用会社から証券会社の株式口座や先物口座、為替会社の口座を引き継ぎ、銀行口座も引き継いだ。こうして香奈が海外で持っていた個人資産や運用会社を集めて、隠し香奈ファイナンシャルがスイスカナコインとなった。幽霊会社のような今までの運用会社とは異なり、実体のある隠し会社にした。徹彦と瑠璃には、スイスで金と金貨を備蓄すると云う名目で、出資させる事にした。瑠璃と徹彦だけで2億ずつ出して、瑠璃には、香奈オフィスの子会社を作らせ、こっそりスイスカナコインに出資させた。香奈オフィスの現地オフィスに、香奈の運用会社がお金を貸していた事もあった。瑠璃は香奈の運用会社の存在を知っていた。瑠璃も、香奈と同様に情報のやり取りだけの会社を、幾つか自分だけの個人会社として持っていたので、それを使った。オタスケーは副社長として、スイスコインの実務を任せ、株式の情報も集める事にした。しかし、オタスケーは、情報だけ集めるのは詰まらないと言うので、10億円相当を株式投資としての運用枠も与え、株式の口座に入れた。報酬は利益の5%を付加する事とした。株式先物の口座には、別に10億円相当入れて貰った。香奈は、コシロが元気な時は、上がるとか下がるとか表情で示し、スイスで先物などの相場をしていたが、基本的には、香奈は、先物が苦手だった。二匹の猫は、コシロと同じような表情をしたので、コシロを思い出して、取りあえず先物を口座の五分の一程度で取引した。それはピタリと当たり、少し儲かった。二匹の猫には、スイスカナコインからのメールやスイスの先物チャートを印刷して渡し、二匹でこっそり相談して香奈に、にゃーと云う時があった。

子猫たちは、香奈の家にくるとコシロと同じように、大きなお不動さんの絵の裏にいた。

大きなお不動さん「君たちがコシロ君の子供たちか?仲間から連絡が会ったよ。宜しくね。」、
茶色の子猫「コシロと云うのはお父さんの事なの。僕は会った事もないんだよ。」、
白い色の子猫「私も会った事がないのよ。」、
大きなお不動さん「そうだろうね。君たちが生まれる頃には、こっちに来たからね。今は君達のお母さんとのんびり暮らしているよ。暫くは僕が教えていくよ、青不動君から頼まれているからね。でも勉強しなくてはいけないよ。君たちの知識は断片的過ぎるからね。香奈に言って本を良く読んで、新聞やネットからの情報もよく読みなさい。わしはコシロ君と同様にスイスの状況は知っているけど、もう一人日本の状況に詳しい仲間もここに来るから、一緒に教えてやるよ。」、
茶色の子猫「お願いしますね。よく判らない事ばかりなんです。」、
白色の子猫「私もお願いします。」、
大きなお不動さん「白色の女の子は、もう一人の仲間の絵の裏に行きなさい。彼が色々と教えてくれると思うよ」、
白色の子猫 「そうします。」

香奈が見て、買いとか売りとか判る時は、スイスカナコインに連絡して、取引させた。ココが国内の株に印を付ける時は、香奈が香奈ファイナンシャルとして国内の株を買った。香奈には、もう十分な収入があった。若い時のように金、金と云うつもりはなかった。コシロとの思い出の延長だった。コシロと同じように利益が出れば、カニを足一本分の身を取り出して、あげる事になった。オタスケーには、猫の取引で利益が上がれば、オタスケーの運用として、損が出てもオタスケーの利益から引かない事を約束した。オタスケーには取引の面倒を見て貰うが、損はない取り決めだった。オタスケー自身は10億円相当の運用が自由に出来た。香奈から取引指示があれば、先物は口座の残る残高の五分の一程度で取引して貰う事にした。これがなくなれば猫の取引は終わりにしようと思った。その管理もして貰った。コッソリートも当分の間スイスカナコインの副社長となって、使わなかった3億スイスフランを超える現金を自分が管理する事にした。当座のお金だけを集めた取引口座と運営費などを集めた銀行口座をオタスケーに管理させる事にした。 

お手伝いさんは、新聞やチャート類の整理もあって、大変になった。オタスケーの情報は、流石にこの世界で長く生きてきた人だけあって老練でジブトラストの研究センターからの報告には触れられていない情報もあった。オタスケーを含めて、二人だけの社員でのスタートだった。香奈は、子会社視察を兼ねて、こっそりスイスに行って調整した。オタスケーにも会った。コッソリートの腹心だっただけにオタスケーは信頼できる人のように思えたが、香奈も慎重だった。コッソリートも歳なので、コッソリートが保管していたお金は、コッソリートが薦める銀行に秘密口座を作り、そこに預ける事にした。コッソリートもそれで安心した。名義もスイスカナコインとなった。銀行口座は2つの銀行にそれぞれ用意して、一つは表の銀行口座として、一つは秘密の銀行口座となった。オタスケーには、表の銀行口座だけを管理させた。更に徹彦と瑠璃からの出資分で金を追加購入して貰う事にした。購入時期もオタスケーに管理して貰った。二人の報酬と経費が運用でカバーできるとも思えなかったが、表の口座にもお金は残っていた。秘密の銀行口座は、コッソリートを除いて、香奈だけが知る銀行口座となった。オタスケーには、金の購入や運用の結果なども、情報と一緒に逐一報告して貰う事にした。オタスケーの運用は上がりすぎを売り、出遅れを買い、先物でリスクを調整するタイプだった。そのため、チャ用だった先物も、枠の五分の一だけ運用していたので、オタスケーにも五分の一以下で使う事も認めた。香奈は、チャの示すサインを時々スイスカナコインに連絡し、スイスからの情報を参考資料とした。香奈はチャには甘かった。コシロと良く似たチャの云う通りに連絡していった。もう香奈には十分な資産もあった。スイスの秘密口座が無事で金が貯まれば、それで十分だった。

香奈は香奈ファイナンシャルにも、ココ用として、株式に10億入れて、ココ用の口座を作った。ココのにゃーと云う鳴き声で香奈は、香奈ファイナンシャルとして国内で取引した。スイスカナコインは、チャも時々にゃーと鳴き、先物も成績もよく、オタスケーの運用成績も好調だったので、報酬と経費をカバーする事が出来そうだった。コインのお店は形だけだったので、販売はあまり上がらなかったが、そのままで進める事になった。経費や税金等を除いた利益はそのまま運用に回してもいいとオタスケーと約束した。事情が判る瑠璃は、その後も徹彦と共に少しづつ、香奈オフィスの子会社から、こっそり出資を続けていったので、オタスケーには、その調整もして貰った。オタスケーは、老練な株屋だったので、黙って調整してくれた。

スイスカナコインは、コインの販売は隠れ蓑のつもりだったが、小さい店ながら、金貨専門のコインのお店にもなった。オタスケーから連絡があり、香奈はオタスケーには、コインショップの働く人に、コインの販売の利益の30%を付加給として渡す事を認めた。ビルは小さく古いビルだったが、空いていた所は、他の会社にもオフィスとして事務所を貸し、小さい貸しビルみたいにもなった。コッソリートの証券会社も借りてくれた。わずかだが、家賃も入ってきた。その管理もオタスケーに頼んだ。あくまでも香奈の金庫で金の保管場所の積もりであった。日本からの送金もなく、日本への送金を依頼する事もなかった。

香奈も歳なので、瑠璃と徹彦には、ちゃんとスイスの銀行の秘密口座の事を知らせておいた。スイスカナコインは、秘密口座を持つ、香奈の隠し香奈ファイナンシャルとなった。表として日本の香奈ファイナンシャルに香奈の個人名義資産を集めた。

二匹の猫は、茶色の猫はチャと名付け、白い猫はココと名付けていた。ココもチャも仲がいいのか悪いのか判らないものの、コシロの部屋で大人しく、スイスからのメールやチャート類を印刷したものと経済新聞を読んで、香奈の帰りを待っていた。香奈に、にゃーと鳴いて、経済学の本も貰い、二匹で、本がボロボロになるまで読んだ。コシロは天才猫であったが、チャとココはコシロ譲りの頭の良さはあったが、天才ではなかった。ただ真摯な努力をしていた茶色の母猫を見ていた。チャート類も何度も仮想してその結果を検証していた。ココもオタスケーのメールや新聞の株式欄や記事などを見て、仮想テストをした。お不動さんも教えてくれたが、基本的な事は勉強しなければならなかった。二匹の猫はそれこそ血のにじむような努力をした。大きなお不動さん達も応援してアドバイスを送ってくれた。天分に敵う努力はないものの、努力なき天分もまた脆い。二匹の猫は大きなお不動さんの応援も貰い、努力と研鑽を続けるしかなかった。香奈の部屋には、コシロ用の出入り口があった。猫たちは、香奈の部屋には行った。しかしコシロのようにジブトラストに一緒に来る事はなかった。二匹は本や新聞を熟読して、仮想テストを行い、自分たちの投資の方向性を確立しようと躍起になっていた。

先天性疾患のある胎児への薬が出来た

一方、製薬も癌の新薬の特許は切れそうだったが、肝心の物質はまだ特定できず、使っていた薬草も特殊なものであって、単なる模倣では、大した効果が出なかった。そして、心臓疾患などの循環器疾患、消化器疾患などと、薬を出し続けていた。薬草抽出液を使い、新薬が次々できた。遺伝子研究センターは、これらの薬でも基礎的な研究は続けていたが、応用研究は製薬に任せ、遺伝子研究センターを作った大きな理由であった、先天性疾患を持つ恐れのある胎児についての研究を進めていた。ついに遺伝子研究センターと製薬の合同特許で、ジブトラストの目指していた、先天性疾患のある胎児への薬が出来るようになった。これは、胎児の段階で、先天性疾患を初めとする多くの疾患を未然に防ぐ事ができる薬であった。様々な動物実験を繰り返していて、効果は確認されていた。ただ肝心の薬理物質の特定が出来ず、幾つかの漢方薬の抽出液と特殊な遺伝子修復酵素としか云えなかった。この点が問題点とされていた。慎重に毒性などを調査されていた。神野喜作はもう高齢となっていたが、製薬と遺伝子研究センターと話し合い、新しい薬も飲んで、その許可を国に強く求めた。許可はなかなかおりず、社会的な問題にもなった。神野喜作を初め、産婦人科小児科病院の多くの医師や看護婦たちが、自ら薬を服用して、毒性のない事を強く訴えた。とうとう治験薬として許可がおりた。不安で一杯の妊婦たちに、根気よく説得し、ついに産婦人科小児科病院で、事前の兆候のあった胎児から、その兆候がなくなり始めた。まだ完全にゼロにする所まではいかなかった。少ない比率だが、先天性疾患を持って生まれる赤ちゃんもいた。乳児の段階でも投与していく事ができるように求めた。遺伝子研究センターは、一人ずつの遺伝子の該当欠損部位を調べて、対処方法を検討して、病院と検討しながら治療を進めた。完治とまでは行かなかったが、ほとんどの症例では治った。そして結果を踏まえて、薬を改善して、やがて妊婦用の薬として許可がおりた。

「今度の薬は、画期的な薬だったね、胎児の段階で治すと云う発想は素晴らしいね。まだみんな使っていないのね。病院の回りは、妊婦で一杯らしいよ。」
香奈「まだ不安もあるとか云う人もいるんだよ。効果のない人も稀にいるし、何が効くかそんなに完全に説明されていないとか言ってるのよ。ここの水にも弱いけれども、少し含まれているらしいよ。でも時間が経ったり、この敷地から離れると効果は弱くなるらしいよ。これはまだ公表していないのよ。」
「そんな水を毎日、飲んでいたんだね。」
香奈「長い間、かなりの投資をしてきたけど、ついに目的の薬が出来たよ、神野先生も喜んでいたよ。」

少しずつ、この薬は普及していった。製薬も遺伝子研究センターも少しの利益しか設定しなかった。ジブトラストや製薬の一部には、普通の薬のように、開発費用にまかなう値段設定を言う人もいたが、ジブトラストでは香奈や正子に睨まれ、黙ってしまった。製薬でも、友恵が遺伝子研究センターの意向として、反対意見を押し切った。

原料の薬草は、製薬の薬草園で栽培されたのを十の効果があるとすると、日本の他の地域は七ぐらいで、試しにアジアで栽培したものは、五程度だった。世界各地で栽培されたもので、地下水や井戸水に細胞活性効果が少しでもある所では、製薬の薬草園で栽培されたに匹敵する薬草も採れた。製薬は、十分な量を確保する事が出来た。製薬と遺伝子研究センターは、なおも作用物質の特定に努めようとしていたが、それはまだよく判らなかった。

快適の成長は続いていた!

聖子の快適洋服は、工場を増やしていった。快適交易が衣料も含めて、世界相手の貿易を管理し、快適洋服の工場の新設や、農園や養殖場の運営まで、イチコプロダクツと岡崎交易と調整していった。聖子はそれほど海外には行かなかったので、和美がこまめに行くようになった。瑠璃の旧鉱山のくず拾いも、アメリカやブルガリアでは成功して、ウランや稀少金属も出たが、ポーランドやエジプトでも、瑠璃の依頼も受け、旧鉱山を含めて山間部まで含めて広く買ったものの、旧鉱山からは何も出ず、くずはくずだった。瑠璃も少しは責任を感じたし、聖子もうるさかったので、出なかった旧鉱山や出た鉱山も、新しく作った聖子ファイナンシャルと香奈オフィスとが等分に共同出資した快適鉱山が購入した。油田もブラジルでは出たが、そんなに他にもどんどん出る筈もなかった。それでも当たった時の利益は大きかった。懲りずにギニアやモーリタニアなどにも、広大な土地を買い、縫製工場や魚の養殖場などを計画していた。聖子の色ボケも年になり、少しは落ち着いてきたが、聖子はまだまだ元気で、二郎を脅す事は、続いていた。

香奈「聖子ちゃんの病気は、まだ治らないのよ。金額も大きくなって大変なのよ。聖子ちゃんが異常に若いからかもしれないけど、大変な手間なのよ。有村もいい年なので、二人掛かりで運ぶのよ。」
「孫も出来るらしいね。清太郎君も綺麗な奥さんも貰って妊娠したね。綾子ちゃんは、ヨーロッパに行って、相手を見つけてきて、結婚するらしいね。」
香奈「俊子さんも吃驚していたわよ。イギリスの高級ホテルに勉強に行ったら、お腹が大きくなり、帰ってきたのよ。」
「妊婦の結婚式も久しぶりだね。清太郎君の奥さんの亜紀さんも妊娠しているし、又子供が増えるね。でも綾子さんの相手の厨川君は、もうご両親は亡くなっているのね。」
香奈「幸夫君の高校時代に、交通事故で同時に亡くなったらしいよ。身につまされる話なの。幸夫君は、少し遺産も入ったし、イギリスで国際経済学を勉強していたらしいのよ。香奈オフィスで少し手伝っていたらしい。私は知らなかったけど、瑠璃は知っていたわ。」
「香奈オフィスを手伝うの。」
香奈「分からないわ。聖子ちゃんは、快適洋服を手伝って欲しいと思っているみたいだけど、綾子ちゃんは、聖子ちゃんにライバル心があるのよ。俊子さんは、ジブトラストのロンドンに話があったホテルチェーンを、ジブと一緒に、治部ホテルと聖子ファイナンシャルとが共同して買ったの。聖子ちゃんも綾子ちゃんも良く知らないけどね。」
「複雑ね。」

聖子の貢ぎ病、治る

綾子が妊娠して、厨川幸夫と日本に帰ってきて、聖子の貢ぎ病も、気勢が削がれ、そろそろ収束の色が強くなった。聖子の事業は、安いよは、結構大きな小売りチェーンとなり、子会社も抱えていたし、快適洋服は、世界に縫製工場と繊維まで手がける工場を持ち、安いよの子会社ではあったが、各地の快適洋服も多くは独立して、安いよの直接の子会社もあった。現地資本も入れていったので複雑だった。聖子は何でも儲けになる事はしたので、資源関係の会社も共同出資して、貿易窓口や軽工業や快適洋服の工場の建設を手がける快適交易には、和美にも少し出資さして、運営を任せていた。聖子の配当や資源などの不定期の収入を管理するために、聖子ファイナンシャルも作っていた。有村と話して、その場の流れで、簡単に作り過ぎ、会社も整理する時期だった。厨川幸夫は、綾子のこともあり、ホテルを手伝う積もりであったが、聖子の強引さに負けて、聖子を手伝う事になった。快適洋服グループを再編成して、快適ホールディングにして、快適洋服と快適農園そして軽工業や生活雑貨を抱える快適生活の三事業部門に分け、各地の工場や農園などの現地会社を統括する事にした。聖子の貢ぎ病で始まった事業は、安いよと快適洋服を中核とする快適ホールディング、工場建設や不動産や貿易も管理する快適交易そして資源会社である快適鉱山の利益も管理し、聖子のお金とグループの資金の流れを管理する聖子ファイナンシャルの三社体制に集約されていた。聖子は、貢ぐために、利益の5パーセントを聖子指導料とか給料とか名前は変わったが抜き取っていた。はじめは、聖子の配当や不定期の収入を調整するだけの会社であったが、結局貢いだ金は、ジブトラストに預けられ、聖子ファイナンシャルに流れる事になった。そしてついに聖子の儀式も終わることになった。聖子ファイナンシャルは、聖子自身の安いよと快適ホールディングなどへの、ほとんどの出資も引き継いでいた。安いよと全快適グループの経営指導料や相談料とか名前は変えたが、利益の5パーセントを取り、聖子の出資への配当と聖子ファイナンシャルとして出資した株への配当などを集めた財産会社であったが、聖子の全事業の収益も分かる会社であった。

俊子「これで最後と二郎も云っていたわ。もう毎月わざわざ現金をいちいち運んでくることもないわ。有村さんもご苦労だったわね。聖子ちゃんも孫が出来て治ったみたい。治るのに、30年以上かかったわね。」
有村「私もそろそろ60に近づいてますから、重い荷物を運ぶのは大変になりました。綾子さんの子供の羽朗君が可愛いと、聖子さんが、言ってました。変わった名前ですね。パウロ君と読むらしいですね。清太郎さんの誠一君は普通の名前なのに。厨川さんも治部の籍に入ったみたいですね。海外でも紹介が簡単になりました。」
俊子「聖子ちゃんが強引に進めたの。羽朗だけでもと言ってね。幸夫君もご両親が亡くなった時に、色々あったみたいなの。綾子も渋々従ったのよ。波朗は、自分で名前つけたと綾子がそう言うから仕方ないのよ。正子さんもそうだったしね。綾子も強情なのよ。快適洋服も、売り上げも利益もはっきりさせたのね。」
有村「治部洋服グループも利益が上がってきました。有希さんが、尚子さんを使って、海外の有名の有名ブランドを買って、益々高収益になってきたので、今は競争してます。貢ぎ病は治っても、今度は、快適洋服で治部洋服グループよりも利益を出すと言ってますよ。」
俊子「有希さんも負けず嫌いだしね。聖子ちゃんをまだ治部洋服の役員にしているわ。」
有村「聖子さんも忙しいのに、治部洋服の役員会にいってますよ。快適洋服の現地法人の役員会には、滅多に行かないのに。」
俊子「聖子ちゃんは、まだ副社長なの。」
有村「名前だけですけど、変えてません。でも、聖子ファイナンシャルが事実上の意志決定会社になりました。そこでは聖子さんが社長ですから、そんなに関係ないですしね。」
俊子「ホテルチェーンの株を買ったのは、本当に知らないの。」
有村「知ってますよ。金額も大きいし、知らない振りをしているだけです。」
俊子「あの親子もライバルだから、複雑よね。綾子も知らない振りをしているわ。聖子ちゃんの企業よりも利益を大きくすると言っているわよ。無理に大きくすると失敗するよ、ホテルは、利益よりも満足度が大事なのよ、借金して稼働率を高く設定すると失敗するよといってるの。」
有村「幸夫さんを、快適ホールディングの常務にして、後を任せる積もりで、聖子さんは、教育してます。幸夫さんも、これから、海外に視察するようになると思います。私も楽になると思います。株も貰いましたし、ジブの直属会社では一番大きいし、配当も楽に出資金の10パーセントは常にだしていますよ。」
俊子「有村さんも苦労したもの。当然よ。」

聖子も羽朗の笑顔を見て、漸く自分の特異なキャラで大きくした企業群を、後継に託す事を考えはじめていた。聖子の思いとは別に、工場を展開した所は、山間部や僻地が多く、単に港が近いとか手間賃が安いと云うだけの土地だったので、途中からインフラも作り、それを使って軽工業や農園などの金儲けを始めた。利益率は高くないものの、現地では貴重な企業になり、現地でも手っ取り早く売ろうして、低価格品も始めていた。幸運にも恵まれたとは云え、資源関係まで関係していた。安く作ろうとして、不便な土地でも広い土地を探し、安い広大な土地を買ってそれから考える姿勢は変わらなかった。工場が出来、インフラも少しずつ出来、仕事が増えていくやり方は、現地の社会からの評価を上げていた。後継を作り、企業を確かなものにする事は必要だった。幸夫は、高収益の高級ホテルを世界で展開するつもりであった。わざわざ発展途上国や未開発国で低収益の事業をするつもりもなかったが、羽朗に背中を押され、綾子に、貴方が相手なら、私が利益で直ぐに追いつくわと言われた事にも反発し、治部を名乗り、会社を安定的なものにするために努力し、出張で出会った子供の笑顔にも励まされていた。

香奈の孫の奈津美と正人の結婚

香奈や恵の孫たちは、みんな品行方正な子供たちに育ち、折り目正しい服装や丁寧な言葉使い、そして頭が良かった。不良達の持つ破壊力や魅力には欠けていた。あの瑠璃の子供の奈津実や正人でさえ、真面目な人になっていた。奈津実はスタイルも顔も良かったのに、援交もせずに、まして派手な格好で怪しげな店で働きトイレでしゃぶってお金を貰う事もなかったし、男と遊び歩く事もしなかった。真面目に国際関係学とか云う学問を勉強し、語学も勉強し、大学院にも行き、同じ大学院で、同じ学問を学ぶ青年河野良平と知り合い、お互いに夢を語り、仲が良くなり、良平は真っ赤なスポーツ車で奈津実を迎えに来て、一緒に大学に行き、帰ってくる日もあった。良平は資産家の息子で車が好きで、雨の日や冬の日以外はご自慢の真っ赤な4ドアータイプのスポーツ車に乗っていた。両方の親、香奈や徹に紹介し、そしてみんなに祝福され、治部ホテルで結婚し、二人で瑠璃の手伝いをするようになっていた。

正人は、経済学部に入り、面白くはない財政学と云うものに興味を持ち、父の政則と同じように日銀に入り、政則の部下だった人の紹介で、折り目正しい、名門女子大の英文科を出た地方の資産家の娘の嵯峨紀代と見合いし、治部ホテルで結婚した。徹彦の長男の徹志は、資源工学とか訳の判らない学問に興味を持ち、次世代資源の開発を進めるために、資源開発に入り、徹の部下だった青柳靖の娘で、同じ資源開発の経理につとめていた、綺麗でスタイルのいい周子と見合いし、治部ホテルで結婚した。次男の徹行はまだ不良の血を持っているのか、チンタラ遊んでいるようにも見えたが、突然パリに留学すると云って、大学を出るとパリに行って、分子生物学とか云う、この時代ではもう死語になりかけていた学問をし、パリで通信会社の記者をしていた日系2世の長谷川マリアと付き合ってた。

恵の孫も結婚

恵の子供は、身体だけが取り柄の男や男のくずを掴む娘であり、その孫たちは、キャバクラのような家庭で育ち、派手な格好で家の中をウロウロし、家事もしない母親に育てられたにも拘わらず、くそ真面目に育ち、恵の息子である健一の長男の健は金属を勉強して、望まれて鉄鋼に入り、研究センターに入り、モデルにもなりそうな、恭助の兄弟のひ孫であり、経済学部の才媛であった毛利菊子に見そめられ、結婚した。次男の健也は法学部に入り、恵や小夜が反対するのにも拘わらず、事もあろうに、検事になろうとしていた。健二の娘の由香里は医者になり、息子の孝助は経済学部を出て、治部レーヨンに入っていた。友貴と千恵の長男の友一は法学部を出て、安倍化学に入っていた。長女の千恵美は文学部に行き、心理学を勉強し、大学院で勉強していた。

香奈 「恵の家とも親戚になったね。菊子さんと云うのは、よく知らなかったけど、綺麗な人だね。健君だけなの、まだ他の孫は結婚しないの。」
「他の奴らはまだ結婚なんてしそうにないよ。みんなパワーが足りないのよ。健だって、菊子さんに声かけられ、ノコノコとついていって、声かけられると付き合って、結婚したいと云われたんだよ。菊子さんは大変な娘だよ。物怖じもしないし、あの小夜さんにも負けてないよ。」
香奈「私の孫は面白くないよ。真面目はいいけど、迫力がないよ。なにか造りだそうな気が感じられないよ。奈津実が結婚した良平君なんか絵に描いたような好青年だし、正人が結婚した紀代さんなんか本当のお嬢さんだよ。徹志のお嫁さんの周子さんも絵に描いたようなお嬢さんだよ。徹行は、まだましだね、大学出たら、突然パリに行って、勉強しているよ。真一郎さんと話して、遺伝子以外にも先天性の因子が細胞の中に存在するとか云いだして、分子細胞学なんて訳の判らない事をやっている先生がパリにいるとか言ってるよ。おまけにフランス人形みたいな日系2世のマリアさんと結婚するとか言って、連れてきたよ。」
「私の孫はいかにも優等生と云った奴ばかりだよ。健也なんて検事になってしまったよ。清香さんの娘の麗香ちゃんが弁護士になっているから聞いたけど、いかにも検事と云うタイプなんだって。」
香奈「清香さんは、麗香ちゃんは甘いと言ってるよ。人の裏が読めない、またまだ法律しか見えない、人の気持ちも分からないと、弁護なんか出来ないとぼやいていたよ。」
「法律が分かればいいのでしょう。」
香奈「清香さんは、法律は法律だけど、人は様々な生き方をしている。その人の気持ちを読めないと形だけの弁護になると言ってたよ。刑事では裁かれるのは人だし、民事でも相手は人や企業だよ。法律だけ分かってもまだまだ駄目と言っていたよ。」
「そんなものかね。」
香奈「品行方正の優等生ではいつか限界があるのよ。生の人間や生の社会が見えてこないのよ。恵のように、むき出しの人間と付き合い、努力しないとこれからが大変だよ。」
「私は、単に目の前にいる人に、少しでもなんとかしたいと思っていただけだよ。」
香奈「それでいいんだと思うよ。先なんて誰にも見えないよ。今の事しか分からないものだよ。」
「香奈さんや正子さんは先を読んで儲けてきたじゅないの。」
香奈「そんな事はないよ。必死に考えてやってきたけど、失敗も多いよ。でも終わった事をくよくよ思わず、修正できただけだよ。正子さんは少しは見えているのかもしれないけど、でも正子さんでも損している時もあるんだよ。」
「正子さんは無敗じゃないの。」
香奈「神懸かりの正子さんでもたまには損してるし、普通の時は慎重なんだよ、損もしてるよ。正子さんもいつも気持ちを静かにして、雑念を払って取引しないといけないと言ってるよ。」
「私は、香奈さんや正子さんは、簡単に儲けていたと思っていたよ。」
香奈「そんな人はいないよ。相場には魔物がいるんだよ。魔物の誘惑と戦い、冷静に判断出来ないと難しいんだよ。若い時は波に乗って金儲けと単純にやっていたけど、今は逆に段々怖くなっているんだよ。漸く怖さが本当に分かったよ。正子さんもそう言ってるよ。」
「香奈さんや正子さんでもそうなんだ。」
香奈「だから偶然の要素も除いてなんとかやっていこうと計算したり、考えているのよ。正子さんも神懸かりだけじゃないのよ。努力しているのよ。」
「ここの敷地では今は、霊力を除いても骨のありそうな男の子は、神太郎君と神之助君ぐらいだね。パリに行ったから、徹行君はよく分からないけど。みんななんか優等生すぎるのね。」
香奈「そうだね。徹行はまだガッツがあるよ。あの三人にはまだ強い気持ちがありそうだけど、でも優等生の感じはするよ。奈津実や菊子さんのような女の子たちはまだガッツがあるよ。悦子さんの娘の尚子ちゃんは、機能性は天然繊維に加工して、ファション性も大事だと云っているよ。有名ブランドの売却の話も聞いてきて、有希さんが手に入れたらしいよ。聖子ちゃんの娘の綾子ちゃんは、世界的ホテルチェーンを作りたいと云って、俊子さんもヨーロッパの高級ホテルチェーンを手に入れたのよ。ジブトラストのニューヨークはアメリカのホテルチェーンにも出資しているから、もっと大きく出来るかもしれないけど、俊子さんはもう少し様子を見ると言っているわ。でもまだ有希さんや俊子さんのようにはならないわ。やっぱり優等生の感じは拭えないね。もっと自分の気持ちを正直に表すような不良ぼっい奴がいなくなって寂しいね。」
「まあ、それも時代なんだろうね。敷地内は便利だし、みんな金も持っているし、もう今は何かを作りだそうとする事もないと考えるのかも知れないね。」
香奈「そんな事はないよ。まだまだ一杯あるよ。」
「これからは、奴らが考えていくのが、必要なんだろうね。」、
香奈「そうだろうね。」、
「猫は、もうジブトラストについてこないの。」、
香奈「あの二匹はそれこそ家から出ないよ。庭を散歩するぐらいらしいよ。コシロ以上だよ。私がパソコンの前に座った時には、私の横に座るけどね。うるさいのよ、印刷しろと。画面みるのが苦手なんだよ。猫用に経済新聞も一部取ったよ。爪でページをめくるから、汚すのよ。二匹で見てるよ。株式欄なんかも読んでるよ。」、
「見てるだけだよ。猫が読めるわけないよ。」、
香奈「そんな事もないよ。奈津実が使っていた経済学の教科書がもう要らないと言うから貰って、渡してたら、本もときどき見てるいるみたいに、ボロボロになったよ。」、
「変な猫だね。」

香奈の秘密口座計画とも云えたスイスカナコインは順調だった

スイスカナコインは、情報専門のつもりのオタスケーが株式投資で結構稼ぎだし、チャの先物の取引も面倒みてもらった。スイスコインも少し運用利益も上がりだした。コインショップの経費どころか表の口座のお金も少しづつ増えていった。オタスケーの付加給も少しはあるようになった。それでもそんなに信用していたわけでもなかった。瑠璃は、香奈も歳なので、自分の秘密口座にもしようとも思ったが、徹彦にも一応声をかけた。徹彦もそんな事は直ぐに分かる人だったので、二人で相談して、二人だけの個人会社を作り、その会社がスイスカナコインに少しずつ出資を続ける事にした。そこで香奈は、オタスケーに事務処理を調整して貰い、瑠璃と徹彦からの出資を金地金の購入費用に充てる事にして、オタスケーに任せていた。この時点では三人の秘密口座を持つ会社だった。オタスケーは、スイスコインのコインショップとしての利益の残りは、地金型金貨を中心とする金貨を購入していった。隠し香奈資産計画は、順調に進んでいた。流行らない、ひっそりとした金貨のお店でよかった。裏工作の瑠璃も、一癖ある徹彦も黙って少しずつ出資をしていた。

ジブタウン建設計画が進むも、恵の説得が難しく、難航

恵の孫の健の妻の菊子が、妊娠した。小夜は、大阪と福岡のビルは、なんとか恵を誤魔化して、高収益の商業ビルにしたが、肝心の東京のビルは低収益であった。とりわけ恵のビルは、低収益であった。恵が、真智子から任された時は、派手な格好で注目され、イケイケどんどんと派手な服を売り、派手な格好の女の子が出入りし、イケイケどんどんとビルも繁盛していた。時代は変わり、ビルも古ボケ、依然として派手な女の子用の服を売っていたが、恵教の聖地になり、恵教の信者が教団本部に出入りし、相談室もあり、安い古い怪しげな喫茶店もあり、二階以降が弁護士事務所や相談室などのお助けビルや相談ビルでは、高収益ビルとは程遠かった。小夜も単なる色ボケおばさんでもなかったのでなんとかしたかった。恵教の聖地でもあり、手が出せなかった。これに敢然と菊子が立ち向かった。ビルの管理会社の余剰金で、周囲の古びたビルも幾つか、こっそり買い、少し離れた所に、今のビルよりは新しいが、同じような代替ビルまで借りる工作をしていた。恵教の祟りか恩恵か、菊子は妊娠が分かった。

香奈「菊子さんも恵の東京のビルを再開発すると言って、計画しているわよ。神太朗君と話しているわよ。大きなビルを幾つか建て、小さな街にもなるみたいよ。」
「私も聞いたけど、複雑な計画なんだよ。代替のビルを借りて、今のビルの周りも買って大きなビルを幾つか作ると言ってた。お金も何とかなると言っていたけど。そんなお金を工面出来るのかね。借金はしないでねと言っているよ。」
香奈「恵がそう言うから、ややこしくなったのよ。ジブがお金を貸す事にしていたのに。大阪と福岡の利益で回りの古いビルは買ったけど、新しいビルの建築費までは足りないのよ。菊子さんのお金もあるみたいけどね。出産するまでに、もう一度検討しなおすらしいよ。少しはお金も入ってくるしね。」
「運用会社に、何でも借りたり、出資を頼むのは、駄目だよと言っているのよ。」

恵のビルの更新には、時間がかかった。恵は、ジブからと云えども借金もしたくなかった。それにジブトラストからの大きな出資にも難色を示した。恵はのんびりとビルを経営していきたかった。ビルの収益を上げる事に精力を使いたくなかった。そんな高い利益を維持するために時間を使うなら財団や施設の運営を見ていきたかった。出資を受けても配当を出さないといけないと考えていた。恵に挑み、説得出来るのは、菊子くらいしかいなかった。妊娠している間に、菊子は考えた。マチコジブ記念不動産は、治部ホテル名古屋に土地を貸していた。治部ホテル名古屋は、高い借り賃を払ってくれていた。恵たちはそれも使わず、子供達にもジブトラストに出資させていったが、その配当も会社の給料まで吸い上げ、やたらと管理会社に増資させていた。管理会社に金がじゃぶじゃぶあった。ビルの管理会社にも金があり、小夜は、それを使って大阪と福岡のビルを建てた。それでは少し足りなく、ジブトラストからの出資を20パーセントにして恵を誤魔化した。それからも時間が経ち、お金も貯まり、回りのビルも買っていた。他の管理会社には、手を付けられなかった。健たちの配当も給料も吸い取られていた。関係する管理会社の余剰金も多かった。菊子は考え、神太朗にも交渉した。古いビルの土地をマチコジブ記念不動産に売り、マチコジブ記念不動産の貯まっていた金を取り、つまり出資させ、他の関係する管理会社の金も使い、複数の大きなビルにして、再開発計画であるジブタウン計画の構想を練った。

なんとかなりそうだった。菊子もほっとしていた。健は、夢の金属を作れる新しい素材を見つけ、特許も出したと言って、同僚の甘辛理平と家で酒を飲んで、乾杯していた。大きな企業では、特許を出せばそれでご苦労さんとなり、忘れ去られる事もあった。又甘辛と今度は、残念会をする事になった。健は、新しい企業を創る程の気力もなく、菊子に、単に会社が取り上げてくれないとぼやくだけだった。自分一人でも夢を追いかけるといった甘辛と協力して、甘辛と一緒に、菊子金属を作り、新しい素材を使った金属を研究したいと思った。鉄鋼も大きくなり、世界のなんたらといわれだし、新しい素材の開発には情熱が無くなっていた。創業一族のボンボンの夢のような話につき合う気持ちがなかった。菊子は、結婚する時に親から資産家に嫁ぐのに肩身が狭くならないようにといって財産も分けて貰っていた。長府の山を含む土地とお金もあった。それに結婚した時にジブトラストに出資もしていた。出資したお金は恵が貸した形だったが、もう2年たち、菊子にもお金があった。

菊子金属、誕生

菊子は、資産家のお嬢様だったし、軽い気持ちで、菊子金属を作り、持っていた現金をすべて出して、菊子金属を作った。香奈も香奈ファイナンシャルから大分貸してくれた。資本金10億の会社になった。甘辛もお金をかき集めたが、大したお金ではなかった。甘辛も一億の出資をした事にして、菊子が立て替えた。

身重の菊子が走り回って、鉄鋼と交渉した。鉄鋼はまさかの事態、本当に新しい夢の金属が出来た時の言い訳も必要だったので、菊子金属にも一億の出資もした。しかし健は、鉄鋼を飛び出す程の勇気もなかった。健と違い、夢の金属を追いかける人たちもいた。甘辛は、大学の若い講師や若手の技術者たちを10人程度集め、朽ちて壊れかかったような鉄工所を買い、菊子金属とした。研究所と実験炉を作るために、お金が足りず、ジブタウン計画で話をしていた神太朗と相談して、ジブトラストから出資と借り入れを受ける事になった。

シブタウン誕生

ジブタウン計画も煮詰まり、管理会社からかき集めた金に、マチコジブ記念不動産の金も使ったが、やはり足りなかった。神太朗と交渉し、足りないお金は、借りるか出資の約束も取り付けた。そして菊子は菊太郎を出産した。菊子との話で出た代替ビルは、崩れかかっていた。元々残っていたテナントも少なく、ガラガラになった。神太朗も忙しく、あっさりジブトラストが買い、小さいビルを建て直す事にした。そんなに大きなビルでもなかったし、ジブタウンとも離れていた。そして体調の戻った菊子が、恵と交渉する事になった。

ジブトラストからの出資を20パーセントとし、土地をマチコジブ記念不動産の所有地にして、それを借りて大きなビルを建てる事で漸く、恵が納得した。長い交渉だった。代替ビルは、もう建ってしまった。恵のビルは、引っ越しをした。古いビルを壊し、大きなビルを建てるまで時間がかかった。その間に十分な時間をかけてテナントを集め、大きなビルが建った。商業ビルが稼働する時は、満室に近い状態になった。託児所も作り、施設にも貸したが、高収益のビルに変わっていた。代替ビルに入っていた店などは、声もかけたが、家賃も高くなるので、ほとんどそのまま動かなかった。やがて菊子はジブと協議し、先に代替ビルは、貯まってきたビルの管理会社の保留金で買う事ができた。

菊子「恵お祖母さんは、強情ですね。ジブトラストからの借金もいやなんですね。」
小夜「そうなのよ。大阪と福岡の時も大変だったのよ。ジブトラストからの出資を20パーセントにして、漸く押し切ったよ。お義母さんは、借金が嫌いなの。あの時は大阪や福岡だったからよかったけど、今度は聖地だからね。」
菊子「ジブタウンの中にも、ビルの事務所扱いにして、教団の本部を、作りました。神太朗さんからも、お金が貯まったら、出資しているお金も返してくれと言われているんです。恵お祖母さんの本部ビルになるから、ジブの出資は控えたいと言われました。」
小夜「早くそうした方がいいよ。お義母さんは元気だし、うるさいよ。」
菊子「ジブタウンや大阪も福岡も好調ですし、後の二つのビルも再開発をしてからと思っているのですが。」
小夜「それは後にしようよ。もう大きなビルは、止めた方がいいかもしれない。立て替える程度なら、直ぐに出来るよ。元々頑丈なビルだし、そんなに低収益でもないしね。」
菊子「そうですね。貸しビル業もそんなに面白くないですね。」
小夜「大阪もショッピング街を直営しているから、利益があるのよ。福岡もニコニコホテルを入れて、レストラン街も直営にして洋服店も持っているから、利益があるのよ。ビルは、単に入れ物よ。ファションビルもヤングビルもそんなに大きくしても入れるテナントもないし、ビルの個性も必要よ。ジブタウンは、企業も入り、ショッピング街やレストラン街も入ったし、幾つかは直営の店にしたわ。これから、直美さんとも相談して、内容の充実をしていくわ。菊子さんはジブタウンの役員にはしておくけど、菊子金属に力を入れた方がいいよ。」

聖子、孫の羽郎がお気に入り

幸夫と綾子の子供は、幸夫や綾子が、海外にウロウロと出歩くにも拘わらず、羽朗の他にも、二人も子供が出来ていた。男の子の辺朗と女の子の幸子だった。辺朗は、大人しい一族の子供の中でも、菊太郎と一緒で気性が荒く、やんちゃな男の子に育っていった。羽朗は聖子のお気に入りだったが、辺朗は、二郎や洋太郎が可愛がった。

香奈「聖子ちゃんも、孫が可愛いみたいだね。俊子さんが言っていたよ。清太郎君の時よりも可愛がるみたいだよ。」
「羽朗君が、お気に入りみたいだよ。賢そうだしね。テキパキしている子供だし、波長が合うんだろうね。」
香奈「辺朗君は、やんちゃだけど、洋太郎さんの側にいるよ。洋太郎さんは、愛は人も会社を救うといつも同じ話をするから、みんな逃げるけど、辺朗君は、じっと聞いているらしいよ。」
「紡績社内でも、同じ事ばっかり言うらしいね。間違ってはいないけど、もう宗教みたいだね。紡績教かね。」
香奈「恵教も同じじゃないの。」
「恵教はもっと臨機応変に、状況に応じて変化しているよ。」
香奈「清太郎君は黙っているけど、臨機応変らしいよ。有希さんとも話をしているらしい。時代にも対応していく事も大切と思っているらしいね。俊子さんは、清太郎君が社長になると少しは紡績も変わるかもしれないと言っていたよ。」
「二郎君では変わらないの?」
香奈「二郎君は、紡績の社風にどっぷりつかっているから、無理らしいよ。人を大切にしない会社に未来はないと言っているよ。利益で動くなら、会社じゃないと言うらしいよ。会社の目的は、人に雇用を約束し、人と共に成長し、社会に役立つ事で、利益は会社を維持するだけのものに過ぎない。利益を目的にするなんて、会社としては本末転倒だと洋太郎さんが言うので、何も言えないらしい。利益目標がない会社なんだよ、紡績は。」
「それでやっていけるの。」
香奈「純子さん以来の社風だからね。洋之助おじさんのお父さんが、愛の会社と云われる会社にしてしまったらしい。洋之助おじさんは、しっかり儲けていたからね。営業利益がなくてもやっていけるようにしているんだよ。それに有希さんが、営業赤字にならないように睨みを効かせてきたからね。洋太郎さんも二郎君も、有希さんには頭があがらないんだよ。株や不動産が一杯あるんだよ。適正利潤があればいいと云う会社なんだよ。言われなくても、製造原価が下がれば、売値を下げる会社なんだよ。」
「大したものだね。」
香奈「儲けすぎは、大損の始まりと言っているのよ。」
「運用会社とは違うね。」
香奈「そんな事はないわよ。私も儲ける事は好きだけど、そんなに、いつもいつも大儲け出来ないと思って考えていたのよ。今は、あくまでも結果よ。」
「そうかね。でも長い間続いているよ。財団も助かってきたよ。」
香奈「儲かる時には、しっかり儲けて、損を少なくしようとしてきただけなんだよ。」

香奈オフィスも新しい時代へ

奈津実と良平は、香奈オフィスに入り、海外のオフィスの飛び回っていた。瑠璃は資源関係の利権や販売権の一部に、独特の裏工作で入り込み、裏情報も入手し、裏の情報網も完備して、香奈オフィスは資源関係の仲買として、大きくなっていた。ただ鉱山や油田は、国営だったり、公社だっり、普通の商業鉱山だったりした。香奈のような経験とコネを生かしたり、瑠璃のように裏での情報収集が必要だった。奈津実のような正攻法だけでは、難しかった。そのため海外の状況を知るために、瑠璃と一緒によく出かけていた。瑠璃は、香奈の部屋におかれていた香奈オフィス日本を自分の部屋に移し、世界との連絡を取るようになった。香奈はもう香奈オフィスの経営には、ほとんど関与しなくなっていた。奈津実と良平の間には、珠美と良一そして良二が出来ていた。品行方正で絵に描いたような三人ではあったが、珠美は瑠璃になつき、活発な女の子になり、良一や良二は、利発な男の子になっていった。

正人は日銀に入り、ドサ回りもせず、なぜかうまく立ち回り、学者風の理論家でありながら、管理畑で働いていた。紀代はおとなしいそうなお嬢さんであったが、実はそんなに大人しくはなかった。嵯峨家も旧家で、立ち回りは上手かった。寝室では積極的であった。正一と正智と云う二人の男の子が出来ていた。

岡崎交易もジブトラストとカミカミファイナンシャル系列に

みどりは、岡崎家の仏壇まで持ってきてしまった。神太朗は居間の一つを岡崎家の仏間にしてしまった。三悟の霊は、ここによく遊びに来て、孫の顔を見ていた。みどりとも良く話していた。みどりも神太朗の子供の神一を産んでから、霊力がついた。

みどり「お父さん又来たの。お盆には早いわよ。」
三悟「時々許可が下りる。霊にも休暇があるんだよ。みどり、お墓にも神一をつれてきて。ご先祖たちも神一がみたいと言ってる。」
みどり「お盆には連れて行くわ。」
三悟「伍助の奴では、会社は潰れる。ご先祖たちも心配している。適当な時に、お前が見てやってくれ。伍助には、くされ金でもやっていればいい。」
みどり「でも兄さんも頑張っているらしいよ。」
三悟「あいつは、秘書と遊ぶだけしか頑張らない。いずれ秘書も、金できたら逃げる。手遅れにならないうちに、会社を買い取ってくれ。」
みどり「そんな事、強引には出来ないわよ。神太朗さんは強引な事はしない人なのよ。」
三悟「伊豆の別荘に、小判が一万両置いてある。その金で伍助から買い取ってくれ。」
みどり「そんなお金は、お母さんと兄さんにも分けないと。」
三悟「ツバメの餌代や秘書のホスト遊びの金に化けるような事は止めてくれ。あれはご先祖から預かっている小判なんだ。岡崎家が大変な時だけに使うように言われていた。岡崎家の秘密なんだよ。神太朗君だけには、話しておきたかった。くだらん事して儂が死んで、ご先祖様から散々怒られた。お前と話できるようになるとは思わなかった。」
みどり「蔵なんか、ガラクタしか、ないわよ。」
三悟「蔵に、鎧と兜が置いてあるだろう。その下には地下室があって、そこに置いてあるんだ。頼む、あの会社はご先祖から預かっている会社なんだ。江戸時代の海産物問屋から続いている会社なんだよ。神太朗君に頼もうと思っていたのに、馬鹿な事して死んでしまった、伍助の馬鹿なんぞに潰されては儂が怒られる。」

みどりは、神太朗と話をした。神太朗は何度も三悟にオーラを送っていたが、及ばなかった。神太朗は、人を強制的に浄化させる力はなかった。神太朗は自分の力の限界を悔やみ、三悟の思いを叶える事にした。三悟は性格は狡猾だったが、商売も狡猾に儲けていた。そして働いていた人も狡猾だった。色ボケの伍助は、秘書にしゃぶらせて、抜いている時には、会社の金も専務たちから抜かれていた。神太朗は調査結果を神子に見せた。神子の予知では、後数年で倒産するとお告げがでた。神太朗は自分の妻の実家なので、みどりとともに、その貿易会社に訪問した。邪気が渦巻く会社だったが、神太朗には救いがあると思った。鯛は頭から腐るが、ここの会社も専務以下の何人しか腐っていなかった。役員の何人かは、会社を良くしようとしていたし、部長以下も数人の汚物を掃除すればいいように思った。

神太朗は、伍助に商会と手を組み、会社を大きくしないかと言った。伍助は簡単に乗って、ジブトラストが大規模な増資に応じ、商会とジブトレーディングも少し出資して、伍助は大きな会社の社長となった。商会は食品は苦手だったので、食品関係の仕事を任された。ジブトレーディングも同様に北米からの食品の輸入の仕事を任せた。商会やジブトレーディングから人が来た。神之助も見学に来た。秘書も腐っていた人も座り小便をして、神之助の力を思い知った。商会やジブトレーディングから派遣されている人にも影響は出たが、秘書や腐っている人には強烈だった。伍助は仕事では元々役立たずであったが、別の意味でも役立たずになった。グラマーな秘書の抜群のテクニックでも立たなかった。秘書や腐っている人たちは、日に何回も座り小便をして、下着や洋服も濡らした。それに何人かも金縛りにあった。その後突然と退職金の優遇処置を出した、それに釣られて、腐っていた多くの人が去った。その後神太朗も来て、癒しの念を送った。救いようのある人は立ち直った。そして、又神之助が来ると云う連絡があった。秘書と腐りの元凶の専務は、ついに会社を去り、専務は、別の会社を抜いていた金で作った。秘書は貢いでいたホストと海外に逃げた。伍助は根から色ボケであったが、狡猾な性格のため、大金をはたいて、仏画を買い、社長の座にしがみつき、パンツや洋服を一杯社長室に持ち込んで徹底抗戦した。

そして神之助が又来た。神之助はこんな事に何日も拘わっていた事に腹が立ち、強制浄化の念を送った。建物の窓ガラスはすべて割れ、やましい心の残る人は金縛りに会い、強制浄化された。伍助の徹底抗戦も虚しく崩れ、伍助はお漏らしが続き、社長室は小便の臭いが立ちこもり、金縛り状態が続いた。神之助は社長室の隣にいた。窓ガラスが全部割れたので強化ガラスにやり替えた。神之助は数時間いるだけで、新宿のオフィスに寄った。神之助の念は暫く残存し、伍助はまだ動けなかった。新宿のオフィスも金縛りの被害を受けた。神之助は久しぶりに強制浄化の念を出したので、余念が残った。元々新宿のビルは強化ガラスで作っていた。そして神之助は敷地内の家に戻った。伍助は震え上がり、次ぎの日に来た神太朗に泣くようにすがり、持ち株すべてに売って、会社を去った。神太朗は義理の兄なので、香奈と正子に話をして、ジブトラストとカミカミファイナンシャルと共同で大金を出して買った。正子には特に許可を求め、カミカミ分の一部を、みどりの個人名義でも出資した事にして、お金を正子個人から借りた。神太朗は、癒しの念を送ったが、念のため敷地内の家に遊びにくるように勧めた。貿易会社や新宿のオフィスにも癒しの念を送っていた。その後神之助が怒りとともに強制浄化の念を使ったと聞いて、何度も岡崎交易や新宿のオフィスを訪れ、癒しの念を送った。神之助の強制浄化の念はとても危険であった。

岡崎交易は成績が急に上がった。新宿のオフィスも少し成績が上がった。ただビルの上部の賃貸で昼にも拘わらず、やっている男のものはより大きく、硬くなり、その瞬間多量に勢いよく、子宮に直撃弾が命中して、女は大きな声を出して、逝っていた。

伍助の悲劇

伍助は、家に帰ると、園子が派手な格好で、元気なツバメがいるホストクラブに行こうとしていた。伍助はグラマーな秘書にも逃げられ、溜まっていた。それに強制浄化されると、妻にはそそり立つ効果もあった。至近距離で浴びていたので、派手な格好の園子を見て、スボンの股間が膨れあがった。園子もあまりの事に立ち止まり、伍助のものを見た。恐ろしく大きくなっていた。園子は好き者だったので、直ぐにしゃぶってみた。口の中で益々膨れ上がり、園子は自分の中に入れた。伍助のものは夕方から翌朝まで、反り返って立ち、園子を突き続け、発射もしなかった。園子の膣は、湯気が出る程熱くなっていたが、濡れていた。園子は何回も逝って、ついには身体中が感じ、意識は薄らぎ、ただ身体だけが動いていた。ついに朝方に強烈な子宮直撃弾が多量に、勢いよく出て、園子の奥に当たり、園子はヒクヒクしながら、意識が完全に消えていた。伍助もそのまま園子と絡み合うように精も根も使い果たして眠った。伍助は、直ぐに神太朗の癒しの念を何回も受ければ、問題なかった。ただ園子とのセックスの快楽は強烈で、1週間の間、食事以外はやり続けた。不思議な事は精液は毎日溢れるように出た。園子はホストクラブの事も忘れ、完全に快楽の虜となり、入れられている間以外にも、動けなくなっても、口に突っ込まれる事を望み、舐め続けた。園子は裸にコートを着て、近くのコンビニでおにぎりを買い、伍助は突きながら、園子は突かれながら食べた。伍助のものは反り返り、立ち続け、園子も突かれ付け、意識も消え、涎を垂らしながら、喘ぎ声しか出ず、伍助が一日に一回発射するまで、絡み合うだけだった。二人とも、完全な色ボケの変態となった。そして痩せてきた。死ぬまでやり続ける事になっていた。神太朗は、伍助がいつまで経ってもこないので、みどりと共に、伍助の家に行き、伍助と園子を敷地内に連れてきた。

神太朗「お義兄さん、本当に来てないの。それは大変だよ。神之助の奴、強制浄化の念なんか出すから、何度も癒しの念を送らないといけない。」
みどり「浄化されるなら、いいことなんでしょう。」
神太朗「神之助は元々念も強く、いるだけで強制力もあるんだよ。僕たちがいる事を前提に強い霊力を持って生まれている。強制浄化すると、浄化する時間は早いけど、精神のバランスが急に変わるので、癒しの念が必要になる。みどりさんには時間かけて、自然に浄化するようにしたでしょう。あんまり使ってはいけないし、僕や神子が癒しの念も送らないと精神が不安定になってしまう。」
みどり「それは大変だわ。無理にでも連れてきましょう。」

神太朗とみどりが一緒に伍助の家につくと、園子の喘ぎ声が外まで聞こえてきた。神太朗は念で鍵を開け、駆けつけると、伍助は、意識が朦朧となりながらも、園子を突いていた。園子も、ほとんど意識はなく、全身を痙攣させながら、身体だけが動いて、喘ぎ声を出し続けていた。伍助のものは反り返り、園子の膣は濡れて、発火するほど熱くなっていた。神太朗は二人に休ませるために、癒しと眠りの念を送り、二人は繋がったまま、寝ていた。密かに寝台車を借り、つながったままの二人を敷地内の家に運び、二人は岡崎家の仏間で二日間眠り続けた。

みどり「お兄さんたち、大丈夫なの。」
神太朗「お義兄さんの精液で、お義姉さんも感染したから、多少力は分散している。でも危なかったよ。何日間もやり続けていたようだ。岡崎家のご先祖様の力も借りて、なんとかなると思うよ。」
三悟「伍助の馬鹿の取り扱いについて、ご先祖様の間で協議がまとまったよ。このまま、こっちに連れてこいと言う意見もあったけど、少しは世の中の為に働いた方が良いという意見が多かった。神太朗君たちの念には、長寿の念もあってね。まだ来るのは早いと言う事になった。ご苦労だが、みどり、伍助の馬鹿にビルを建ててやってくれ。園子の馬鹿も奉仕しないといけないと言われたよ、二人を託児所の下働きに使ってくれ。祥江は、もうこっちに来る事になった。ご先祖様も怒っている。岡崎家の恥だから、こっちで修業させる事に決まった。すぐにツバメから連絡がある。あんな奴でもお前の母だから、葬式を頼む。伍助も園子も腑抜けになっている。おしめでも替えていれば、戻るだろう。当分ここでエサでもやって、飼っていてくれ。なぜ伊豆の小判を使わない。」
みどり「神太朗さんは、兄さんと園子さんの子供が管理した方がいいと言ってるわ。もうすぐ出来るらしいよ。」
三悟「出来るけど、あいつはボンクラだ。ビルの管理程度がせいぜいだ。神太朗君、会社の面倒を見せてくれないか」
神太朗「でも名前は違いますよ。ご先祖様は怒りませんか?」
三悟「そんなものに拘っている人はいない。とりあえずあの小判は預けておく、頼む。今お腹にいる子供以外にも、もう一人子供を増やしてもらうように、今こっちで頼んでいる。」
みどり「まだ、神一が生まれたばかりなのよ。」
三悟「もう出来ているよ。今度も男の子だよ。その子はもうちゃんと役目が決まっている。わしはもう一人頼んでいるのだ。今度も男の子にしても貰う積もりだ。しっかり頼んだよ。」

香奈「みどりさんは、今度はお母さんのお葬式なの。お兄さんたちは具合が悪く、まだ神太朗さんの家で休んでいるわ。」
「夫婦は続く事も多いのね。でもお兄さんたちはビル建てるのね。大きなビルを作って、託児所も作るとか言ってたわよ。施設にも運営を頼むと言って、神太朗君が頼みに来たらしいよ。今度は横浜なのよ。近くだからみんな乗り気なのよ。」
香奈「お兄さんたちもその頃には治るだろうし、そのビルの最上階に住むらしいよ。」
「ここに住まないの。ここは便利なのに。由香さんの所の信治君もアメリカにもよく行くけど、ここに住んでいるわよ。」
香奈「岡崎家のご先祖様の意向らしいよ。みどりさんは言ってたよ。生きる事には意味があり、理由もある。ただなんとなく生きているようでも、それなりの意味がある。二人にはそれを見付ける事がまず必要だと云われたらしいよ。」
「それはそうだね。私たちも生かされているのかもしれないね。」

神太朗の提案で、俊子たちの家の庭に大きな建物を造る事になった。できると神太朗は一階の大きな部屋に仏間を移し、なぜか子供部屋は一つ増えた。そこに大きなトラックが来て、重たい荷物が仏間に運び込まれていた。どうも地下室があるようだった。岡崎交易は、食品関係の貿易を担当した。神太朗は商会とは違い、非上場に徹して、香奈や正子に頼んで、ジブやカミカミから少しずつ、株式の名義を譲って貰い、みどりの名義を多くしていった。みどりも又ジブトラストの配当を貰うようにしていたので、ジブやカミカミそして、正子個人からの借金を少しつづ返していった。それでもそんなには、みどり名義では株式の保有は増えなかった。みどりは又大きな借金を正子から借りたからであった。神太朗は税理士や弁護士を集めて検討させ、小判が見つかった年のみどりの税金はいやに高いものになり、正子から借りていた。

神之助の結婚

神之助は、上の二人とは違い理学部に入り、数学科に入り、確率論や多関数を勉強していた。当然大学院に入るものと思われていたが、卒業するとジブトラストに入り、すぐ結婚した。神之助の選んだ津田舞子は、文学部で語学の天才と呼ばれていた。十数カ国語を操り、各地の文学や歴史にも詳しかった。舞子は少し霊力に対して抵抗力もあり、恐ろしげもなく、自分から神之助に近づけ、愚かにも、資産家の奥様として贅沢に生きようとして、自分の美貌やスタイルの良さを武器に、神之助を誘惑して、自分の虜にしようとして、自分が神之助の虜になった。そして始めて神之助に精液を入れられた瞬間、出来たという確信があった。舞子は神之助の精液を受けてから1ヶ月間程は、精神のバランスが崩れ、大変な苦闘を強いられた。舞子は、このまま変態として生きるかもしれないと心の中で怯えた。膣はいつも濡れて、涎を出し、乳首は硬く敏感になり、下着が触れても感じていた。神之助のおしっこも甘い葡萄酒のように感じ、便器についている神之助のおしっこまで舐めた。神之助の大便も食べるようになりそうだった。神之助のものが入ると、舞子はすべての体力を絞りだし、快楽をむさぼり、全身が痙攣しても腰が動くのを止めなかった。精液が舞子の子宮を直撃して、舞子が膣から火が出て燃え上がり灰になっても、まだひくひくと身体は動いていた。舞子は、資産家の奥様どころか、私は、単なる変態になって、神之助の性処理用の玩具になり、神之助のおしっこを飲みや大便を食べ、便器を舐める生き物になるしかないと諦め、そして快楽に身を委ねて、快楽を貪っていた。神之助の精液が入り続ける内に、舞子にも霊力がつき、舞子は次第に、立ち直ってきた。神之助のものが入ると自然に身体が動き、精液が出されるまで、身体も腰も動かす事は変わらなかったが、精液を浴びたように身体の奥に吸い込まれると元気になり、頭は冴えてきた、前のように神之助がトイレに入った後、急いで入り、おしっこや大便が付いた便器を舐めるような事もしなくなった。

神之助と普通に話も出来るようになったし、下着も着けられるようになった。ただ舞子の心の中に、神之助は大きな顔をして座っていた。語学の天才も変態となって腑抜けになった事もあり、復帰は難しいかも知れないと思っていたが、多くの言語はそのまま頭に入り、前よりもずっと鮮明に判るようになった。そして言葉の裏側の心理まで判るようになっていた。知らない言語でも直ぐに覚えられるようになった。神之助の心の中も少しは見えるようになった。舞子の心の中は、神之助には丸見えではあった。舞子はそれはどうでも良かった。心も体もすべて、神之助のものである事には異存はなかった。舞子は、神之助が、舞子の事を性処理用の女でも、変態奴隷でもなく、一人の女として愛してくれている事が嬉しかった。そして舞子も心の底から神之助を愛するようになった。 そして直ぐに妊娠している事が判った。神之助の霊力も、舞子の愛を受けて、幾分穏やかに、破壊的な要素は少なくなっていった。ただ、舞子がいない時に、怒りとともに出す時には、依然として破壊的な強さは残っていた。

舞子の父である津田左右吉は経済学の、母である津田絵里子は、心理学の教授であった。そして舞子から既に妊娠しているらしいとほのめかされ、結婚に同意していた。舞子は、五年の間に、二人の男の子そして一人の女の子を産む事になっていた。舞子の心の中の邪推な部分は神之助の精液で浄化され、神之助よりは劣るが霊力も付与されていき、神之助の強すぎる霊力を破壊的なものにせず、幾分緩和し、広範囲に広げるフィルターのような変換機能を持つ霊力になる筈であった。その霊力が完全に身に付いた時には、神之助は舞子を連れて、世界各地の関係先を回る事になっていた。神之助の霊力はもっとも強く、他人の心を見抜き、そして弱さや醜さにはより強く反応した。予測よりは、強制的な霊力があった。三人で組めば、神太朗の影響を受けて、人や社会を良くしようとする力とも協調できた。

神之助、商品相場を始める

神之助がジブトラストに入ると、一見すると、何の変化もなかった。神之助は利益が高い商品相場を担当して、ジブトラストの利益は急に増大していった。非上場の株は四兆五千億を超え、翌年へ繰り越していくお金は、急に三千億を超えていった。結局運用資産はもう誰にも分からなくなった。10兆だ15兆だと言われていた。三人の子たちは、この敷地内から滅多に外に出なかった。時より大きな黒塗りの車が来る事はあったが、誰が来たのかは分からなかった。

「神之助君も結婚するらしいね。でもここからあんまり出ないのに、よく相手が見つかったね。」
香奈「相手が来ていたらしいよ。大学の時から出来ていたらしいよ。相手の舞子さんのお腹も大きいのよ。神太朗君の時だって、急に決まったからね。大学時代の同級生とか言っていたけどね。ここの敷地で結婚したろ。大きなホールを急に造って、新婚旅行も行かなかったし、神子ちゃんも経済学の若手の先生と突然だったし、やっばり新婚旅行も行かなかったしね。俊子さんに聞いてもよく分からないらしいよ。折角高級ホテルも持っているのにね。」
「妊婦の結婚式だね。」
香奈「神之助君は、商品相場が得意みたいなの。でも怖いんだよ。一晩で倍になる事もあるし、全部なくなる事もあるんだよ。私の知ってる範囲で少しずつ取引していたのよ。それが、神之助君が色々と研究して本体でも少し取引したいと言うから、少しだけ運用枠をつけていたら、凄く儲けるのよ。損してもいい程度の運用枠にして、儲けたお金で少しづつ運用枠を広げているのよ。でも孫会社とも話して凄く儲けているのよ。」
「そんなに怖いの。」
香奈「そうだよ。あっと云う間に何倍にもなる時もあるけど、運用しているお金がすぐになくなってしまう事もあるのよ。今までは私の知ってる範囲で慎重にしてたのよ。」

神之助の大儲け続く

神之助が学校を出てジブトラストに入って商品相場を担当した。商品相場は、海外の香奈オフィスから来た人が、香奈オフィスの貴金属や原油ビジネスのヘッジ目的の取引からはじめて、香奈が香奈オフィスから業界の動向をみながら、指導して国内の孫会社でも少し取引を始めていた。香奈は、商品相場で大きく儲けて香奈オフィスは大きくなったが、裏目と出た時の怖さも知っていた。それだけに業界動向の分かる範囲で限定的に運用していた。神之助は相場自体も生き物とする、経済学ではなく、いわば心理学や数学の応用として考えて、神之助独自の理論を作りあげていた。それを使って、神子を口説いて運用金を出させ、カミカミファイナンシャルで成功し、神之助は、香奈に少し運用枠を貰い、あっと云う間に、大きく儲け、香奈も仕方なく、儲けの範囲で少しづつ枠を広げていった。

海外や国内の孫会社と組み、神之助は、商品相場を研究して、その動きを見て、従来の貴金属や原油で儲けるだけでなく、穀物やゴムそして各分野の相場に広げて、取引を拡大して、大きく儲けだした。神之助は、神子と違って、予測して儲けるのではなく、狙いを定めて、相場を自由に操るようにして、お金を儲け始めた。海外と国内で商品相場を担当している孫会社と協調して、利益を拡大していき、ジブトラストは、今までの先物主体の株式相場から、多くの相場を展開する大きな運用会社に変貌を遂げていった。神之助は、神太朗と神子と同様にジブトラストから特別枠を貰い、商品相場を扱う孫会社からも指導料名目でお金も入り、本体からも利益に応じた報酬が支払われた。

三人の子の配当や報酬も多くなってきた。三人の子も管理会社等に出資したりしていたが、必要なお金を除いて、カミカミファイナンンシャルに出資していた。神子が運用していたので、カミカミファイナンンシャルは、資産を毎年倍々以上に大きく増やしていた。それでも神之助は、もっと増やせると言って、少しだけ運用金を貰い、商品相場で大きく増やした。神子はむっとして、神子と神之助は、三ヶ月間当番制で交代して、カミカミフィナンシャルの運用をするように変わっていた。商会の株は、それでも下値を拾っていた。神太朗は、あまり口を入れる事はなかった。神之助の当番の時は、商品相場をした。カミカミファイナンンシャルは、神子と神之助が、競い合って運用しているので、倍々どころかも急速に大きくなり、神子が三ヶ月で倍にすれば、神之助は、それを上回るペースで増やし、10倍以上に増えた。取引の神の子たちの競争が始まっていた。カミカミフィナンシャルは、配当なんかはしていないので益々大きくなっていった。

香奈は、商品相場の怖さも知っていたので、神之助の運用枠についても慎重だったが、神之助の稼ぎは多く、孫会社も加えて利益は急増した。しかし神之助や商品相場を取引する孫会社の運用枠は、儲けに比較すると少ない限定な枠を、香奈は設定していた。神之助は、そのためカミカミとして盛んに稼ぎ、神子がそれに対抗して稼ぎ出していた。

ジブタウン、好調

恵たちのジブタウンは、好調でテナントも埋まり、直営も繁盛して、東京の一つの名所にもなった。やがてジブトラストからの出資金は、恵たちの管理会社やビルの利益で返しはじめ、それが終わると大阪や福岡もジブトラストからの出資も少しずつ返し始めた。

香奈「ジブタウンも好調だね。出資も返してもらったよ。恵がうるさいといってたよ。儲かっているから、惜しい気もするけど、恵教の本部のビルに出資するのは、控えようと神太朗君も言うのよ。菊子金属には、協力していくよ。」
「出資も借金みたいなものだからね。利益を出さないといけないしね。ビルも借金がなければ目先の利益に惑わされず、じっくりやっていけるよ。福岡も大阪も返すように言っているのよ。福岡はニコニコホテルの関係もあるけどね。菊子金属は、菊子さんの会社だからね。私は、なんにも言わないよ。健一や健太君の意見では夢のような話だと言ってたよ。健次郎さんは、経理だし、良くわからないと言っていた。鉄鋼も少しは万一のために、出資したと言ってるよ。肝心の健は大人しく鉄鋼に行っているよ。自分で言い出しながら、大きな木の下にいて、飛び出すガッツなんかは、ない男なんだよ。」

菊子金属、苦戦続く

健の見つけた素材を入れた鉄材は、薄くとも堅く頑丈であった。ただ、加工しにくく、想定以上の力が加わると突然折れていた。健は複合金属に応用したり、別の新しい素材を見つければ無限に近い可能性もあると言っていたが、鉄鋼の会社は、単に特許を取り、研究を終わりにして、別のテーマを健に与えた。健は真面目な組織人であり、あっさりと会社の決定に従っていた。菊子や甘辛は、無限の可能を追いかけていた。

甘辛たちは、新しい素材を色々な金属に加えたり、別の新しい素材を探していた。なかなかうまくいかなかった。菊子も資産家の娘であるが、結婚した時に持ってきたお金や香奈から借りたお金も、菊子金属につぎ込み、その後のジブからの配当もビルの給料も、これにつぎ込んでいた。ジブから出資以外にも、借りているお金も増えてきた。香奈からも追加のお金を借り続けていた。遠縁とはいえ、香奈のご機嫌伺いも必要だった。菊子金属は、もう4年以上収入がなかった。何より、菊子と共に夢を追いかけている甘辛たちの今後が気になっていた。健は、研究所から、花形職場であった本社の薄板鋼板部の次長になり、出世コースに乗っていた。天才的な研究者と言われた甘辛や若い技術者たちへの責任も菊子は、感じ始めていた。

菊子金属の秘密

瑠璃は執念深い性格で、くず拾いした旧鉱山からの採れた鉱石も調べており、菊子が、香奈に、猫の好きな鯛のお刺身を持って、香奈のご機嫌伺いに行っている時に、瑠璃と話をして、ギニアの旧ウラン鉱山の鉱石に正体不明の物質があるといっていたのを聞き、瑠璃にその鉱石を貰って、甘辛たちに言って苦し紛れにそれを粉砕して、健の見つけた素材と共に鉄の溶解している所に加えてみた。冷却された鉄は、スーパー鉄に成っていた。一定温度では飴のように加工しやすく、冷却すると堅く、かつ弾力性があった。添加量や健たちの見つけていた素材との混合比率や添加する時の温度などを検討した。極微量で効果があった。鉱石も微粉末にした方が添加量も少なくてすんだ。

菊子たちは、研究を進めて、各種の特許を取る事を考え、神太朗や瑠璃にも説明した。ジブから思い切って大幅の借り入れも受けた。香奈も香奈ファイナンシャルとして更に貸してあげた。ジブだけの会社になるのは気の毒だった。菊子金属と快適鉱山と香奈オフィスとの三社で均等に、ギニアの鉱山を保有する事にして貰った。瑠璃は、快適交易に頼み、ギニアの鉱山から鉱石を採り、とりあえず、日本とロンドンに送って、精密な成分分析を進めた。やはり既存の資源ではなかった。ウランによく似た素材のようだが、まだ正確には判らなかった。そこで、鉱石自体をギニアンXと名付けられた。

健の見つけた新しい素材は、一種の珪素化合物であるが、ただそんなにどこにでもあるものでもなかった。菊子が、よく聞いてみると、菊子が長府に持っている山で見つけたお人形とも仏像とも見える鉱石を健にあげた。健は、菊子から貰った鉱石のお人形を職場に置いていたが、落としてから壊し、その破片が鉄の溶解している所に入ったのが、研究の発端だった。菊子の山にある石英に似た鉱物に多く含まれている事も判り、その鉱物自体を菊子アースと名付けた。

アルミでも試してみた。アルミの常識を変えるアルミになった。ギニアンXと菊子アースは、物理的に粉砕し、何回かの篩を通し、更に微細に粉砕させ、粒径を均一化させ、それぞれ極微量添加すればいい事もわかった。健は、純粋の珪素化合物で試験していたが、菊子アースだけで、もっと効果があった。ギニアンXや菊子アースの詳しい成分も必死になって調べ、ギニアンXや菊子アースの成分はついに詳しく判った。ギニアンXや菊子アースは、工程を更に検討して、安定なものになった。堅さや粘弾性も二つの成分のバランスを取るだけで、思いのままになった。

菊子金属、香奈ファミリーのハイテク企業との連携で成長

菊子金属は、ジブトラストからの出資や借り入れを受けていたので、ジブトラストの管理の赤川を兼任の副社長としていた。赤川は、目途も付き、資本や借り入れ関係の整理をして、色々とサンプルを作り、営業活動もした。会社毎に、必要とされる性質により、ギニアンXや菊子アースの混合比率を変えて製品とした。秘密保持契約をして、多くの技術情報を渡し、金属に添加するキクコミックスを売る事にした。鉄鋼も早速契約したが、特許との関連性も言い立てた。赤川は、特許を買って契約した。菊子が会社を作り、収入を得るまで、5年以上かかった。

菊子金属は、ギニアンXと菊子アースがどのように鉄や金属に作用しているか考え、新しい素材についても取り組んでいた。ギニアンXが採れるのは、ギニアの鉱山だけではなかったが、そんなに多くはなかった。それに、ギニアンX以外にもいくつかの微少元素が金属の性質に影響を与える事もわかってきた。これらの微少金属や鉱物を使って、菊子金属は、鉄や金属の性質を操れるようになった。菊子金属は、鉄を含む金属加工に必要な添加剤を売りだした。

菊子自身も菊子金属もお金が貯まり始めた。初めに、理論が鮮明に分かったのではなく、実験的な確認だったので、ギニアンXや菊子アースも神秘的な魔法の粉扱いされ、独占的に売っていた。その後理論的な解明も進み出した。菊子アースは珪素化合物が主成分で、類似物質は、見つかったし、豊富に存在するようだった。ギニアンXは、旧ウランが採れていた鉱山でしか見つからなかった。現在ウランが採れている鉱山では含有量が著しく少なかった。ウラン鉱脈とも関係はあるが、ウランが長期的に変容していったものではないかと云う説もあった。エジプトの旧銅の鉱山からも、ギニアンXに近い物質も見つかり、エジプシャンYと名付け、新しく研究が始まった。菊子は、別に科学者でもなかったが、菊子金属の運営をしていた。ジブと香奈から多大の借り入れを受けていた。菊子の出資分は、香奈から借りたお金と自分のお金だった。香奈は、神太朗とも協議して、菊子の出資分を調整した。何年もの間に菊子がつぎ込んだお金は、菊子の出資とした。ジブや香奈が貸したお金も相当部分を菊子の出資分として、菊子の出資比率が下がらないように調整して、長期的に返済して貰う事にした。菊子も創業以来に苦労したメンバーにも株を渡していた。ジブトラストや香奈ファイナンシャルも多くの株を持ったが、菊子自身が一番多くもつようにした。甘辛を含めて、従業員も株を持つ会社とした。菊子は、利益が出るとジブや香奈に返済していった。ジブの管理から兼任の形で来ていた赤川もジブから少し株を貰っていた。ジブは、サラ金や闇金のような取り立てなどはしなかったが、菊子は借金のプレッシャーを長い間感じていたし、甘辛たちの将来も案じていた。大きな利益が入っても、菊子金属は、慎重な企業姿勢になった。赤川は、積極的に国内外に関連子会社を作り、無利子のジブからも、更に金を借り大きくしようといったが、菊子は、アメリカとドイツの小さな拠点を作り、長府に菊子アース株式会社を作り、素材確保のためにギニアとエジプトに合弁会社を作ったが、それ以外は、菊子金属の財務を充実させていった。

ジブタウンや大阪や福岡のビルは好調で、直ぐとは云えないものの、大阪や福岡でのジブからの出資もやがて返した。第二ジブタウン構想もあったが、菊子も今度は積極的に動かず、入っていたテナントとも話をして、ファションビルとヤングビルを立て替える事にした。その程度の金はビルの管理会社に十分あった。代替用の空室探しに苦労し、ジブトラストや治部東京、赤ちゃんスキ不動産から照会を受けた。お金も余り、小夜たちは、付近に古い建物を探して、更新時期の違うビルを持つ事を考え、名古屋のビルの建て替えも検討し出した。

香奈「菊子さんの会社は、儲かっているのに、あんまり会社を大きくしないのよ。赤川が、躍起になって、販売拠点を持つ必要もあるし、テストラインも必要だからと言って、アメリカとドイツの小さい金属工場を買収したけど、それからは会社もつくらないのよ。ギニアとエジプトに、素材のための会社を、瑠璃や快適鉱山などと一緒に作っただけなのよ。」
「借金の怖さが判ったと菊子さんは、言っていたよ。何年間も、ただお金をつぎ込むだけだったからね。東京の二つのビルも少し大きくしただけで建て直したよ。第二ジブタウンも止めたよ。私の家は、これでいいんだよ。菊子さんも二人目も出来たし、忙しいからね。」
香奈「長府には、ビルを建て、ニコニコホテルも入れたよ。毛利不動産と香奈ファイナンシャルとが一緒に作った毛利ビルも、諏訪や長府それに東京にもあるのよ。菊子さんも、長府の土地を預けてくれ、毛利不動産に出資してくれたよ。事業に無関心とは思えないのに。」
「あれは、香奈さんや勝さんたちの毛利家の事業だからね。菊子さんは、自分の山からの素材を取るための菊子アースを作っただけみたいだよ。借金せずにのんびりしないと大変だよ。」
香奈「まあ、それも考え方の一つだろうね。小夜さんは、ファション第二ビルやヤング第二ビルを作ると言っているらしいよ。」
「大阪と福岡のジブからの出資も返して、お金も貯まってきたから、考えているらしいね。ビルの建て替えの時に、空室探しに苦労したらしい。まあ管理会社の余剰金の範囲ならいいよといっているよ。名古屋も古くなっているから、考えているらしいよ。」

向こう見ずの泥棒たちがたまにやってきたが、建物の近くどころか敷地内に入った時点で車は止まり、金縛りにあって動けず、朝になって、警察に聞かれて泣き出すような事も起こった。車の中はおしっこの匂いが強かった。

香奈の孫の徹行帰国、妻のマリアはジブトラストで働く

香奈の孫の徹行はマリアと結婚していたが、突然身重の妻のマリアを連れてパリから帰ってきた。フランスの大学に勤めていたが、徹行の意見が突飛で受け入れられなかった。敷地内に住み、遺伝子研究センターで、遺伝子以外の先天性因子の研究をする事になった。人の遺伝子以外の先天性因子の存在すら明確ではないが、徹行は遺伝子と先天性因子との共同で、人は遺伝子の何処の部分を読みとるかを決定すると言っていた。人は後天的に獲得した知見や習性が頭脳に蓄積されるだけでなく、細胞内に特別な因子が蓄積され、それが胎児に遺伝し、他の人とは違う、遺伝子の読みとりを制御すると云う訳の判らない説を唱えていた。赤ちゃんは、父親の精子と母親の卵子が結合し、受精卵となり、分裂を繰り返し、やがては胎児となるが、胎児の遺伝子は両方の遺伝子から影響を受けるが、遺伝子以外の細胞内の因子も胎児に移行する。それが遺伝子の読みとりを左右する、後天的に獲得した熟練や学習は遺伝しないと云うのは間違いで、遺伝される事があるとも考えていた。マリアの母親は、マリアが大学にいる時に、交通事故で亡くなった。父親の名前も言わなかった。フランスに留学に来て、恋に落ち、マリアを産んで、フランスで市民権も取り、働いた。フランスは、婚外子も多くいた。マリアは、幼い頃に父に抱かれた思い出はあるが、顔はまったく覚えていなかった。マリアは優秀だったので、奨学資金を貰い、大学を出て、通信社に勤めるようになった。元々経済に詳しく、通信社では経済関係の記事を担当していた。マリアは妊娠四ヶ月だったので、しばらくゆっくりする筈だったが、家にいても暇なので、ジブトラストでヨーロッパ担当のチームに入り、みんなの手伝いをする事になった。ただヨーロッパ担当は晩が遅いが、マリアは午後3時頃から10時頃までしか、ジブトラストにはいなかった。徹行も夜が遅く、その頃車で帰ってきて、ジブトラスト本社にマリアを迎えに行き、一緒に家に帰っていた。

もう運用会社の中の観葉植物は大きくなりすぎ、ほぼ半分程度は植物で占められていた。そして、会長室と社長室があり、社長室は拡張されて大きくなっていた。その他は管理スタッフが5人ほど隅にいた。管理スタッフはジブトラストが直接保有している会社の役員も兼ね、管理スタッフの長は常務となり、ジブトラスト全体の管理をしていた。直属の会社以外では、子会社や孫会社そして関連会社から役員を派遣して、報告を貰っているだけだった。応接室は二つあった。取引は、別の部屋で、数人が、4チーム体制で子会社へ指示をだしていた。静寂な空間が広がって、霊気は静かに充満していた。

「前みたいに張りつめた空気ではないね。本当にお寺の中みたいな感じだね。でも元気になった気がするよ。」
香奈「そうだろう。ここにくると私も元気になるのよ。もうここでは取引はそんなにしてないよ。正子さんと神子ちゃんや神之助君が時々するくらいだよ。別の所を動かしているよ。すべては正子さんの所が管理しているよ。色々な所から大きなお金が入ってくるよ。」
「徹行君も帰ってきたね。フランス人の奥さんつれて。綺麗な人だね。」
香奈 「マリアさんは日本人とフランス人とのハーフらしいよ。お母さんは日本人だったのよ。」
「でもフランス人みたいな顔をしているよ。」
香奈「お父さんがフランス人だったらしいのよ。お母さんは何も言わないで亡くなってしまったから、はっきりとは分からないけど。日本語もフランス語もドイツ語も英語も出来るのよ。」
「それは凄いね。でも運用会社では何をしているの。お腹も大きいのに夜遅いみたいだね。私は早く寝るからしらないけど。」
香奈「私も早く帰るけどね。3時頃にはジブトラストにきているよ。ヨーロッパの取引チームの手伝いしているらしいわよ。徹行が夜遅いから、迎えに来るらしいよ。一緒に家に帰って、二人だけで、ご飯食べているわよ。朝は、徹行も遅く研究センターに行っているの。」
「研究センターは自由勤務なの。」
香奈「そうだよ。研究の人はみんな朝遅いらしいよ。少し都心からも遠いしね。養豚場も近くにあるのよ。」
「真一郎さんはずっと敷地内の研究所にいてるよ。もう歳だから辞めたの。」
香奈「辞めてはいないよ。もう歳だから、ここが研究センターの分室みたいになって、ここで働いているのよ。徹行もいずれ真一郎さんの研究所で研究するらしいよ。でも研究センターでも、何やっているか知らないといけないのよ。」
「そうなの。ここで勤務出来れば、楽でいいよね。香奈さんは暇そうね。」
香奈「海外関係も、正子さん達にほとんど任せてしまったからね、正子さんはあまり海外に行かないので、私がたまに行っているよ。まだ海外総括ではあるんだよ。企業の支援や相談も、神太朗君がほとんどやっているよ。私は最後に聞くだけになったよ。来客と雑談する位だよ。」
「猫の世話は、又お手伝いさん任せだね、ぼやいているよ。お便所の掃除が大変らしいよ。よくおしっこするらしいね。新聞や印刷された紙も一杯あって掃除も大変らしいよ。」
香奈「お便所の世話は頼んでいるよ。毎朝、水とエサは、私が持っていくのよ。あの2匹も水を良く飲むのよ。毎朝、スイスからの報告やチャート類を印刷して、新聞を渡して、水はコップに入れて、持っていっているよ。」
「あの2匹もコップで水を飲むの。」
香奈「そうだよ、チャ用とココ用のコップがあるのよ。毎朝見ているうちに飲んでしまうよ。だから大きなボールにも入れているよ。」
「新聞やチャート類なんか猫は判らないわよ。」
香奈「そんな事ないわよ。ちゃんと言うのよ。買いとか売りとか、この株が買いとか。」
「香奈さんの思いこみだけだよ。」

チャとココの奮闘

香奈は、水をコップに入れると共に、スイスからの報告を二部印刷し、一部は自分用にして、一部は猫たちに渡し、チャートも印刷し、猫たちに渡した。香奈は忙しい時は読めなかったが、ココは熟読していた。チャは報告を読むと共にチャートが好きでよく眺めていた。香奈が家に帰ってくると、チャーが先物で、印を付けたり、ココが国内の株式欄で印を付る事もあった。段々印も綿密になり、買いや売りの値段や手じまいの値段なども猫たちは、付けるようになった。香奈には不思議とそれが判り、それを見て、チャやココに確認すると猫たちは表情で合図した。香奈は、スイスに売りや買いと手じまいの値段などを連絡したり、香奈ファイナンシャルとして、国内株式や国内先物を注文していた。猫たちの表情は複雑に変化していて、香奈には判った。猫たちは香奈がパソコンで連絡を取るのを見て、その連絡を印刷して貰い、満足そうに、にゃーと鳴き、猫たちは必要なものと不要になった資料を分けて、自分たちの部屋においていた。香奈は、猫との遊びの積もりで気楽にしていた。スイスへの連絡は、そんなに時間もかからなかった。オタスケーは細かい儲けを重ねる人だった。さや取りに近い、上がり過ぎを売り、出遅れを買い、尚かつ、先物で少しリスクを取った。先行きを見て、売りベースとか買いベースとか変わった。現物株もよほどの確信がなければ長期保有も避けた。老い先短い年寄りなので、細かく儲け、現金だけを増やし、調査、研究と情報収集に力を入れた。コインのお店も少しは売れるようになった。チャやココが稼いだ時は、カニの足やお刺身を香奈が、チャやココにあげた。チャもココも一発倍増とか大きく儲けられる時しか鳴かない猫だった。香奈とコシロがそうしてきた。熟慮に熟慮を重ねて、チャンスを待つ投資手法だった。

お手伝いさんは不要になった資料を片づける手間は増えた。秘密の資料なので疑いを招かないようにシュレッターまで買った。保管する資料の上に猫たちは、処理されないようにその上に座って、お手伝いさんを監視していた。チャはお手伝いさんがシュレッターにかけるまで監視していた。香奈は歳だったので、海外出張は減ったが、それでも偶に短期間、海外に出張したが、そんな時は猫たちは大人しく、新聞を読んでいた。猫は爪でページをめくるので、本はボロボロになり、辞書もボロボロになったが、香奈は、にゃーと欲しがる本を惜しげもなく、猫たちに渡してきた。洋書まであった。

マリア、不思議な取引手法

ジブトラストで働き始めたマリアは、正子と気が合い、話をするようになった。正子は4時頃家に帰るが、3時過ぎ頃から打ち合わせをしていた。正子も夜はゆっくりするようになっていた。神太郎、神子、そして神之助とも話をしていた。マリアは相場なんか出来ないと思い、単に社長室の指示をヨーロッパの取引チームに渡して、ヨーロッパの取引チームが、海外の子会社に指示したり、調整するのを見ていた。その内にマリアも相場に興味を持ち、香奈や正子に少し、先物をしたいと言うようになった。正子はあっさりと承諾し、香奈も釣られて、認めてしまった。海外の子会社の取引口座を一つ与え、1千万ユーロの資金で先物を取引し始めた。マリアはお腹が大きかったので、そんなには長時間出来なかった。始めは少し買って、上がったら直ぐに売り、少し売って下がったら、直ぐに買い戻していた。正子はもっと長期間保持し、売り買いも両方行っていた。初心者みたいな売り買いをしているマリアには関心もなかったし、もはや、ジブトラストでは1千万ユーロのお金程度ではそんなに影響もなかったので、みんなの関心は薄かった。損が出れば本体から、補填する約束もしていた。マリアのお腹は大きくなり、産月の1ヶ月前には休む必要があった。つわりが酷くて数日間休んで、夕方ようやくジブトラストに来て、自分で手じまいして、直ぐに帰った。

香奈「マリアさんが、少し先物を取引したいと言うのよ。私はお腹が大きいし、相場も初めてだし、止めた方がいいと言ったけど、正子さんがおばさん、少しくらいいいですよと言うから、ジブドイツにマリアさん用の口座を作らせて、取引していたのよ。一千万ユーロで始めて、損が出れば、本体から補填する事になっていたの。マリアさんは今は休んでいるけど、ジブドイツから連絡があってね。2億ユーロになっているから、どうしましょうとか言っているの。ジブドイツは、精々年間10億ユーロ程度にしか運用利益がないのよ。海外でも低い方なのよ。取引チームの人は、それが5分の1しかないのは、どこに問題があるか調べろとか言ったのよ。それが違うのよ。マリアさん一人で4ヶ月間程度で稼いだらしいのよ。ジブドイツはそんなに先物はしないのよ。株式と商品相場専門みたいな所なの。正子さんの指示で、先物を時々する程度なの。香奈オフィスの時も相場はそんなにしないの。年間の運用利益としては、今年も10億ユーロ程度になるけど、マリアさんの稼いだお金の処理について聞いてきたのよ。」
「ユーロと云うのは、いくら位なの。」
香奈「今は120円くらいかな。」
「じゃ、240億を一人で4ヶ月間程度で稼いだの。凄いね。」
香奈「それも12億から始めてね。」
「それは正子さん以上だね。」
香奈「そうなのよ。神子ちゃんも驚いているわ。そんなに大きな波乱もなかったのよ。しかも1日五時間も取引していないのよ。神懸かり的な運用よね。」
「でどうするの。」
香奈「一応、ジブドイツとしての取引だからね。利益はジブドイツになるけど、運用手数料に相当する二千万ユーロはマリアさんのものにすると、ジブドイツは言っているの。税金の処理とか色々ややこしいのよ。マリアさんは、まだジブトラストの株主や社員にもしてないのよ。ジブドイツでは税務処理して、マリアさんに、ジブドイツの会社の株を無償配布と現金を渡したいと言って、ジブトラストの了解を求めて来たの。」
「そうするの。」
香奈「その方向だけど、でもマリアさんの取り分をそのまま無償配布すると、ジブドイツの株を一杯渡さないといけないから、分散させて、ジブトラストの株も無償配布する予定なの。」
「直接お金は出さないの。」
香奈「今度はビキナーズラックかもしれないから、取りあえず社員にして、2億円のボーナスはつけるけど、無償配布だけで済ませるつもりなの。」
「それでいいの。マリアさんは文句言わないの。」
香奈「話をしたけど、彼女はあんまりお金には興味ないのよ。」

切人誕生、マリアの取引依然として好調

マリアは男の子の切人を産んだ。その時は、稲妻も鳴らず、流れ星も流れなかった。ただアフリカの砂漠で珍しく雨が降っただけだった。マリアはしばらく産後の回復に努めていた。香奈は検討したが、マリアの身分も不明確だったので、今後マリアの取引による利益の10パーセントをマリア指導料として本体に送金し、必要な処理をしてマリアに渡すが、今回は、マリアの手数料相当分は、本体とジブドイツが話し合い、本体のヨーロッパ担当の取引チーム預かりとしてマリアには、給料の形で2年間に分割して払い、損が出れば差し引く事にし、ジブヨーロッパのロンドン、フランクフルト、チューリッヒの子会社で、300万ユーロ相当の株を無償配布して、ジブトラストの株も3億無償配布する事になった。マリアとしては手取りは減ったが、ジブトラストのヨーロッパ取引の部長待遇とし、三つの子会社でも特別取引部長になり、マリアチームを作った。子会社には、取引も出来るが、孫会社を作り取引する気もなく、管理の仕事をしている人もいた。そんな人たちをマリアチームとして、管理も兼任しながら、マリアの取引の処理をして貰う事にした。大した仕事もないだろうと思っていた。マリアチームには、お世話料として、マリアの稼いだ利益の中から、少しは利益比例のボーナスも出る事にした。マリアが稼いだお金の中から、マリアの給料や特別取引部の経費を子会社が引く事にした。子会社は、マリアのために、それぞれ三千万ユーロ相当の資金を用意した。マリアは、ヨーロッパの市場でマリア独自の判断で取引してもいい事になった。フランクフルトは、資金をロンドンとチューリッヒに送金して、その分を各社へ貸す事になった。香奈はその範囲ならば、損が出ても、問題ないだろうと思っていたし、ジブドイツもマリアの運用で利益も入っていたので従った。マリアも特に文句は言わなかった。その後もマリアはヨーロッパの市場で取引をしていたが、徹行が迎えに来ると家に帰った。マリアの不思議な儲け方は続き、直ぐに用意された資金の何倍も稼ぎだしたので、ロンドンとチューリッヒは、フランクフルトにお金を返し、独自にマリアのために、倍額の資金を用意した。そしてその額はマリアが稼ぐ度に増えていったが、5億ユーロ相当になり、それ以上の枠の増額は、マリアが断った。結局マリアは、各子会社で5億ユーロ相当の資金で運用する事になった。マリアは、10時過ぎにはジブトラストから帰った。早い時は9時頃帰った。運用もそれぞれ5億ユーロ相当の資金内で取引をしていた。ヨーロッパの先物は正子も保有株を考慮して、時々指示を出していたが、マリアは別の視点で先物をするようになった。アメリカでも神子や研究所の報告を元に、正子は、時々先物の指示を出していた。正子は、売りから考える癖が身についており、買いは少なかった。マリアは、大体中立的なスタンスが多かった。買いをしておきながら、細かく手じまいして、新規の売りも入れ、短期、中期の両方で稼ぎ、各市場を万遍なく一巡して、動きそうな市場を中心に取引した。運用枠も余裕を見て、ゆったり取引した。神子のレポートも読んだが、参考にして囚われる事もなかった。どんな優れた取引指針でも、投資は自己責任だと思っていた。無理もしなかった。時間も限定してゆったりと取引した。実に安定感がある取引なのに、利益が出ていた。

ジブトラストでの運用手数料は、運用利益の10パーセントになっていた。子会社も保有株が増えて、会社支援や会社の相談、不動産の管理や売買などが主な仕事になり、株式の調整的な売買程度しかしなくなった。実際の運用は、相場に対して感覚の優れた人を中心にして作った孫会社や関連会社にさせるようになった。子会社は、本体からの指示を伝えたり、取引方針を連絡するだけになっていった。子会社とそれに関連する孫会社や関連会社の取引内容を審査し、本体の意向を連絡する本体の取引チームにも、子会社の運用利益に応じて配分があった。又、研究所の結果をまとめ、指示を出す神子たちへも配分があり、極めて複雑だった。本体としての積極的な取引は、もはや正子、神子そして神之助の三人になっていった。子会社は指示を守り、利益が出れば、利益の10パーセントを自分の裁量で使用できた。それは孫会社や関連会社も同様であった。利益は何段階もの運用手数料に相当する自己裁量分の利益を子会社や孫会社そして関連会社に残し、孫会社や関連会社が取引をしている形になっていった。いわば、ジブトラストの下に、またジブトラストがいるような形に整理されていった。

株式会社マリアの発足

マリアの場合は特殊だった。ヨーロッパではマリアの先物が追加され、マリアが自己裁量でしている事になり、管理への配分は少なかったが、ヨーロッパの子会社は、マリアの取引で得た運用利益の10パーセントは、マリア運用指導料として、本体に送金し、それ以外のマリアによる運用利益は、子会社の利益になっていた。本体では、管理やマリアの給料等に必要な部分を取り、マリアが子会社で得る配当も含めて税務処理して、マリアに渡すようにするつもりであったが、マリアは、子会社から入るお金は、子会社で保管するように望んでいたので、税理士と相談して、マリアの子会社からの給料も含めて、多くは各子会社が預かるようになった。マリアは、本体からの給料とジブトラストと各地の子会社の配当だけを受け取っていた。そしてマリアは、決められた枠を上手く使い、こまめに売り買いをバランスよく配分して、儲けていった。マリアの取引量も増え、マリアチームである特別取引部は専任の社員を抱える事になった。マリアチームもマリアの取引のサポートだけでなく、マリアと話して、マリアの枠の一部を少し分けて貰い、マリアの指示を受けて取引したり、マリアのために資料を集めたりしていた。マリアは早く帰るので、帰ると暇になったので考えた。マリアが稼ぐ金額に比べれば、マリアの得る金額は少なく、子会社に、マリアのお金が貯まっていったし、子会社にもお金も貯まっていった。子会社では、余分なお金が貯まっていた。各地の子会社は、社内にマリアと云う個人会社を作り、マリアの指導をマリア株式会社の指導と替える事にした。本体に送金する利益比率を新しく決めなおして、利益の2%をマリア管理料として本体に送金し、8%をマリアの運用指導料として、マリア株式会社に渡す事にした。今までのマリアの貯まっていたお金は、株式会社マリアに特別指導料として数年間に分けて支払い、株式会社マリアのお金の管理を、各子会社でする事になった。子会社の苦肉の策であった。神子や神之助のチームが、運用子会社や孫会社の運用利益に基づく管理料を貰っていたのを参考にした。

ジブトラストの体制はこう変わってきた!

企業支援のチームは、企業支援の結果、得る事が出来た配当や少しはする株式の売買差益などの利益をプールして、その利益の10バーセントをチームの運用手数料として受け取るようになった。ただ管理への配分もあり、複雑だった。それに本体の管理でも幾つかの直属の企業に、社長や役員を兼務しており、それぞれ企業からジブトラストが受け取る配当等の利益の2パーセントが加算配分されていた。遺伝子研究センターは利益を期待されていない組織だったので、定額の加算となっていた。香奈は全体の利益に対する配分もついていた。

ジブトラスト全体の利益についての責任は香奈が基本的に負っており、利益比例としては、会長から責任に応じて貰う事にしていた。運用利益比例は主に取引担当者だけで、管理や研究センターは最終のジブトラストの利益として計上されたお金が中心で、運用利益比例は少なかった。ジブトラストの利益計上は、子会社での準備金を高くとっていたので、利益をどのようにするかも香奈が最終的に決めていたので、本体内部を納得するために必要だった。正子や三人の子は、取引担当者でもあった。香奈はもう海外の運用比例の指導料とか管理料などは取らなかった。最後の利益計上の1%が香奈の報酬となった。ジブトラストは、香奈の運営する運用会社だった。香奈は正子や三人の子たちに相談しても、決定の責任は香奈が負った。

要するに子会社や孫会社を一つ介在すると手数料分として、運用利益の中で10パーセント減り、子会社や孫会社はその分の利益が増えていく事になった。そして子会社や孫会社は自己裁量できる資金内では、給料の加算もしてもよかったし、それを元に取引しても良かった。自己裁量分を元に運用すれば、それは自己裁量分の拡大になった。それに基本給も計上利益に応じて設定されていた。複雑な利益配分だったが、ジブトラストとして、みんなそれぞれ高給であった。

子会社や孫会社では、自己裁量以外の利益は、保有する株式等からの配当を加えたものから一般経費を引き、税務処理して、本体からの指示に従い、本体らの配当以外に、基本となる運用資金の増額、株式への投資や不動産投資、金などの貴金属の保有そして配当準備金に回していた。出資は本体以外にも少しはあるので、当初は、利益の半分程度は配当に回すようにしていた。

本体では、子会社や孫会社そして関連会社での利益動向を見て、それぞれの配当額を決定し、本体としての、基本となる運用資金の設定、税務処理、株式への投資や不動産投資、金などの貴金属の保有そして配当と寄付に配分していた。

これらの計算や枠の設定はすべて、神子が管理セクションに指示して原案を決め、香奈が決定していた。始めは香奈が、一人で行っていたが、神子が原案を作れるようになってきた。人事や取引内容の基本的方針、企業支援の確認そして出資金の調整、取引内容の最終確認はやはり、香奈が決めていた。まだ香奈の運営するトラストだった。ジブトラストの強みも弱みも、香奈の存在にあった。香奈以外に運営できるか、後継者の問題が弱みであった。一方、意志決定は香奈が長年しているので、安定感があった。香奈は正子に任せようと思っていた時もあり、正子も運営にも一部参加していたが、やはり正子は取引に専念したいようだったし、正子の売りで儲けてきたジプトラストであった。正子は、独自の感覚で静かに取引をしている事が多かった。香奈は、やがては神太郎が会社支援を中心にジブトラストを運営していけると思っていた。それまでの苦肉の策ではあった。相場取引には、適性と感性が必要で、リスクも考えて、香奈は、資産に比べて限定的な運用枠で少数の人が取引し、多くの取引をジブトラストから距離を置いて、切り離していた。そんなにリスクの多い取引を社内に多く抱える事の危険性を知っていた。

正子とマリアが、本体では直接的な取引を行っていた。神子と神之助は、国内の取引チームも使うものの、多くは、子会社に指示して、調整していた。

そしてマリアは、本体のメンバーでもあり、ヨーロッパの各子会社の取引担当者の一人でもあった。神子からのレポートは受けとるが、まったくの独自判断で行っていた。神太郎は企業支援に使える金額の枠の中で、どのような企業に支援していくかについて、原案を決め、香奈と正子に相談して承認を貰っていた。正子は基本的には、何にも言わなかったが、香奈は、自分が乗り気になれないときは、正子の意見も聞くようになった。

スイスカナコインは、そろりそろりと大きくなっていった。

香奈のスイスカナコインは、設立から5年経つと、資産は、10倍以上に膨れあがっていた。オタスケーも元気だったが、歳になり、運用も利益をそのまま運用していたので、運用額も増えていた。オタスケーは、お助けの為に、新しく証券会社を辞めた人に頼み、手伝う人も増えていった。チャは時々気まぐれのように、先物をするので、証券会社を歳で止めた年寄りを集めてきた。香奈も忙しく、ココやチャもディラーではなく、猫なので、毎日相場にしがみついてはいなかったし、香奈と同様にある程度の儲けが期待できる時ぐらいしか鳴かなかった。香奈はそのため、時々しか指示を出さず、報告を貰うだけの日が多かった。しかしオタスケーから手伝って貰う人を雇いたいと報告があったので、香奈は運用利益の10%を運用チームの取り分とした。その中でオタスケーがチームとして配分してくれればいい事にした。オタスケーには、コインショップとして利益が出れば、コインショップとして働いている人への報酬やコインの仕入れに充るように言って、後は全てオタスケーに任せるようになった。増資されたお金は、単純な金地金の購入にあてる事にして、購入時期もオタスケーに任せた。報告だけを詳細にして貰う事にした。運用で利益が出れば、経費や税金などを引いた残りは、更に運用に回してもいい事にした。オタスケーの運用は慎重だったが、チャは大きく儲け、スイスコイン名義の表の口座残高も増えていた。ケイマンの銀行からのお金は、まだスイスの銀行の秘密口座にあったが、オタスケーは知らない筈だった。スイスコインが保有する金も増え、金貨も増えていた。香奈は社長だったが、報酬は貰わなかった。資産が減らず、金の保管が出来れば、それで良かった。香奈の隠し香奈ファイナンシャルはまだ順調だった。

岡崎交易やイチコプロダクツから治部食品部が出来た

岡崎交易は海産物問屋から始まったので、食品関係の輸入も多かった。腐りの元凶だった専務も商売は巧く、世界各地に良質な食品や牛肉などの農場との契約も多かった。専務は、輸入する時に、自分の会社を介在させ、さやを抜いていた。さやは大きかった。三悟は、SM遊びにはまり、監視が不十分になっていた。専務がいなくなると、急に輸入品の価格は下がった。商会からの人は食品は不慣れだったが、貿易実務は詳しかった。元専務は自分の顔で繋がっているように思い、自分の会社を作れば、みんな自分の会社と取引してくれるものと思っていた。神太朗は岡崎交易の経営陣の中で見込みのありそうな人を社長にして、みどりを会長にした。神太朗自身は副会長となり、会社の再建に当たっていたが、輸入先の生産地には、もっと良質な食品や牛肉を手当してくれる事を依頼し、購入価格も上げた。それでも輸入品の価格は少し、下がった。さや抜きは酷かった。それで良好な品質で価格も維持したので、売上は上がった。不審に思った生産地の人が、元専務のさや抜きを知って、元専務との会社と取引する所は少なくなった。

岡崎交易やイチコプロダクツなどのジブトラスト直属の食品企業は、高品質がようやく評価され、好調だったが、高品質を要求する余り、やたらと廃棄費用が増えた、牛肉でも良い部位だけを要求して、かなりの部位が余り、酷いとき時には捨てていた。イチコプロダクツでも同様だった。この一族は基本的には、高品質に拘った。野菜も無農薬だの減農薬だの、生産者表示の野菜とか言って、それに少しでも形が変な物は売らなかった。いい物だけを売った。エビも大きく立派なものだけを選んでいた。豚肉も鶏肉も選別には手間をかけ、惜しげもなく、形が変だとか、脂が多すぎるとか云って、捨てていた。卵も大きな卵だけを売った。神太朗はなんか無駄なような気がした。腐ったり、変形したり、本当にどうしようもない部分は廃棄する事は必要だが、いい素材でも大根も曲がったり、キュウリも曲がるのだ。卵も小さいものも生まれる。牛や豚や鶏でも、スーパーや百貨店の売り場に並ぶために成長するわけでもない。十分食べられる所は工夫して食べるようにしようと思った。だが、もはや高品質のイメージの元、販売され、ブランドイメージもついてしまった。同じルートで別ブランドとして売っても、形が変だとか、肉の切れ端が入っているようなものを売ると、結局出荷元のイメージダウンになると、担当者たちは言った。いいものだけを売る。そして、やっとみんなに認められ、納得して貰っている。買う時は安いけど、食べたり、調理する時にも文句が出て、結局メージがダウンするとも言った。食品原料として販売したり、安売り料理屋で売ろうとしても、値段を考えると逆に手間ばっかりかかった。一族の料理屋では少しは使ってくれたが、限度があった。やっぱり厳選した素材を使っていると云いたかった。形が変な野菜とか、だしに使うとしても、肉の切れ端や脂身の多い肉は使うのは嫌がった。

そこで、それを使った食品を出そうと云う事なり、開発担当者は、肉が一杯入った豚丼、牛丼や小さいエビが一杯のエビ丼と野菜サラダを作った。担当者は思い切り安くしようと思って、海外で炊いた米飯にエビなんかを混ぜた冷凍品からエビなんかを取り除いて、米も安いものにした。神太朗は神の子だったが、米は新潟のコシヒカリか宮城のササニシキしか食べた事がなかった。神の子もある意味、所詮人の子でもあった。米がまずいと文句を言った。安い丼を作れと云ったくせにと思った担当者は腹が立って、宮城とは云わないもののササニシキを使って、どんぶりを作ってみた。やけのやんぱちで野菜サラダのドレッシングも思い切りいいものを使い、高級品のイタリア産のチーズや生ハムまでつけた。神太朗はこれには納得した。担当者は慌てた。供給も十分調べてなかった。イチコプロダクツは米の契約栽培にも関与していたので、ササニシキはなんとかなりそうだった。コシヒカリも使えば量が増えても大丈夫だった。チーズも国産品に変えて、生ハムも国産品を頼んで作って貰った。もう一度試食会を行い、なんとかこれでいいと言われた。野菜サラダ付きの丼物を専門とする店を作る事にした。

立ち食いやカウンターなんかで食べた事のない神太朗はテイクアウトしても一時間程度美味しく食べられるものと更に注文を付けた。そんなもの出来るか、容器代の方が高くつくぞと言いたかった担当者だったが、取りあえず化学に相談しますと言った。化学では熱を保持する発泡性の容器を、変な開発の兄ちゃんが作っていた。インスタントラーメンを放置してまずくなったので、考えたらしい。麺は少し伸びるが、それなりに食えたと言って、一人で喜んでいた。いくら自由な気風とは云え、個人の飯の為に、会社の金を使うなと言って怒られていた。ラーメンなどさっさと食えと言われた。怒った兄ちゃんは、もっと考えて、発熱性を少し持つような容器まで考えた。発泡性の容器の中空部分を鉄化合物が発熱しながら動く、使い捨てカイロのような容器を作った。そんなクソ高い容器など売れるかと云われ、量産化の方法まで考えていた。神太朗に無理を言われた担当者は化学に来て、ぼやいた。「安い丼の筈が、無茶言われて困ってます。諦めるように、思い切りクソ高い値段を言ってください。」と言った。化学は、あの兄ちゃんに手を焼いていたので、出来るもんならやってみなと言って、すべて任せた。兄ちゃんは色々考えて、容器に使い捨てカイロの小さい物をくっつけ、もみもみして容器の中空部分に発熱した鉄化合物が入り込むような容器を考え、乳房のような部分をもみもみすれば、熱くなる容器も作った。丼なので、出汁が洩れないように、上の蓋もつけた。「もみもみして温めて」容器と名付けた。

オスとメスタイプがあり、オスは長い棒のようなものを強くもみもみすると鉄化合物が反応しながら落ちてくる。メスは二つに分かれて、ふたつの部位があり、より持続性があった。コストも考え、それほどの発熱性もなかったが、中空部分を大きく取り、ブラスチックも、穴があきにくいように頑丈にした。こんな面倒くさい事を望む顧客は少なく、一般の企業は鉄化合物の部分を除いた容器を採用した。化学の変わった兄ちゃんは喜んだ。

原料は米やドレッシングを除けば、ほとんど費用はかからなかった。選別費用が増え、輸送費がかかる程度だった。それでもある程度の金を出して引き取った。選別は2段階になったものの、廃棄費用は減った。更に化学の肥料会社に依頼し、肥料にしていった。食品冷凍会社と交渉して、何日か設備を借りて、ここでエビ丼、牛丼、豚丼は、一族の調理店のコックが手間をかけ、だしも吟味して冷凍品を作った。飯だけは、現地で炊き、丼の冷凍品を電子レンジで解凍する程度だった。生野菜は中間地点を幾つか作り、カットして、サイコロ状のチーズと生ハムを入れて、ドレッシングの小袋をつけ、冷蔵車で店に送り込んだ。エコノミータイプのホテルの端でテイクアウト専用の店として、普通の丼よりは高かったが、一斉にオープンした。それでもホテルの客とかなりの客が利用してくれると調査結果は出たし、神子もそこそこ売れると言った。

「なんで野菜サラダなんているのよ。手間暇かけて、生ハムやチーズまでつけて。あれがなければもっと安く出来るのに。飯ももっと安いものを使って冷凍にすればいいのに、色々適当に野菜とかエビとか加えて、冷凍品にすれば、税金も安く、外米も使えるとか、担当の人は、言っていたわよ。」
香奈「それがここの限界だよ。ヨーグルトや牛乳も売ろうとしていたのよ。野菜スープも考えているらしいよ。健康重視が家訓みたいなものだよ。まずい飯もいやだからね。でもそれなりに売れているみたいだよ。」
「あんないい飯なら、おにぎりでも食えるよ。厚釜の最高品で炊くらしいね。生ハムやドレッシングがかかった所だけ食べて、残った野菜サラダなんか残す人も多いらしいよ。でも売り子は、時間当たりのバイトにしているらしい。恵教の女の子も働いている子もいるよ。売り場も少なくて済むらしいね。あの変な容器も人気あるよ。乳幼児施設の休憩場所ではオスタイプばっかりだよ。なでなですると熱くなるとか言って騒いでいるらしいよ。変な悪戯書きする奴までいるらしいよ。」

結局セット価格で安くしたのに、野菜サラダなんか食えるかと言って置いていく人もいて、丼単品を少し下げて売る事になって、神太朗の苦心も泡と消えるかと思っていたら、丼単体は大いに売れたが、セットものもそこそこ売れて、野菜サラダだけ買う客もいた。値段もスーパーより少し安かった。神太朗達は、幼い頃から洋治の健康食に馴染み、朝の野菜とフルーツは当然の事と思っていた。洋治の健康オタク病は、三家族では疫病のように広がっていた。神太朗達は、健康オタクの本家で育っていた。人数が増えた一家なのに、朝はみんなで食べ、野菜サラダやフルーツそして牛乳、ヨーグルトをみんなで食べる一家だった。神太朗は、野菜をきちんと取るのは重要だと思っていたので、丼は利益が少し高くし、野菜サラダは少し安くした。それなりに利益もあったし、衛生管理も徹底した。

災害や地震などの被害を受けた所にも行けるように、自家発電装置を乗せた車まで作った。神之助なんかは、利益の薄い商売なのに、何しているか訳が判らないとかこぼしていた。ただ神之助はエビ丼が好きで、こっそり冷凍品の原料を貰って、舞子に頼んで、エビ丼を作って貰い、舞子は、エビ丼を温めて、卵を上にふわっと乗せて、米も新潟のコシヒカリにして、手製のサラダとかフルーツなんかを追加するなど工夫して、二人で食べていた。

どんぶりチェーン、売れすぎて赤字に

元々は、イチコプロダクツと岡崎交易だけのいわば、切れ端や等外品の利用だけだったが、予想以上に、売上が増えてくると、原料が足らなくなった。商会にも聞いたが、元々物産問屋から始まった会社なので、食品にはそれ程強くなかった。そのため、養豚場や肉牛生産地とか加工業者などを担当者が走り回って、品質のいいものを丸ごと押さえる事にした。切れ端や等外品だけ頂戴とも云えず、次第に、全体の扱う量が増え、エビの養殖場も増えていった。品質には拘る家系なので、検査員とか管理スタッフも増えてしまった。そして品質も良く、全体のコストも下がったので、全体としても販売数量も増えていった。しかし丼チェーンでは一時的に、いい肉もわざわざ切れ端にしたり、大きなエビもカットしなければならなかった。その上に、原料が足りないのに、冷凍品の原料は敷地内の人が分けろと云って、持って帰る人までいた。それに野菜サラダは、そんなに売れなかったので、野菜サラダを作っている所は時間を持てあました。丼以外でも何か売れば、少しは丼の販売も少なくなると期待して、サンドイッチを作った。初めはパン屋に作られてみたが、パンが美味しくない。又高級パンにして、酵母も選んで、特別に作らせ、ハムも良い物にして、生ハムやチーズも良い物にして、野菜サラダを作っている所で作った。確かに売れたけれども、これも計画と違い、丼の売上はかえって上がった。

昼には、行列も出来、もっと売り場を増やせと云われたけれども、原料も足りず、原料手当ができる迄、到底無理だった。

「今度の丼チェーンで、又大分儲かったでしょう、昼には行列ができるとか言っていたよ。変な容器使う必要もなかったね。みんな直ぐ食べるらしいよ。」
香奈「そんな事は、ないよ。多分今売ってるのは赤字だと思うよ。岡崎交易やイチコプロダクツは儲かっているから、それを入れれば、利益はあるかもしれないけどね。初めの儲かった分を吐き出しているよ。単体では、年間で少しだけ利益が出る程度じゃないの。売れすぎたのよ。切れ端や等外品はもうほとんどなくなったよ。野菜はなんとかあるけどね。今は逆にわざわざ切れ端にしたり、カットしているよ。今原料手当しているのが間に合えば、もう少し利益が増えるかもしれないけどね。」
「値段上げればいいんじゃないの。今は安すぎるのよ。でもサンドイッチも売れているのでしょう。」
香奈「あれも計画とは違ったのよ。少しは丼の売上も減ると思って、利益も少なくして売ったら、逆に丼の売上も増えたのよ。牛乳もドリンクヨーグルトやジュースなども紙パック容器入りを売るようになったから、便利にもなって、お客も増えたのよ。野菜サラダも売れるようになってね。今度は作業所での人が足らなくなったの。」
「美味しいサンドイッチだから、売れるでしょうね。値段もそんなに変わらないしね。」
香奈「神太朗君はいい勉強したと言ってるよ。実際に客に触れる仕事してなかったので、実業の難しさがよく判ったと言っていたよ。値段は今の手当が済んでから、よく考えると言っていた。市販しろと言われるけど、今は無理だね。そう言えば恵も大分分けて貰っているらしいね。神之助君もエビ丼の冷凍品持って帰っているのよ。こんなせこい商売とか言っていたくせに。」
「私は牛丼が好きなの、千恵は豚丼がいいと言っているわよ。市販すれば少し高くても売れるわよ。ちょっとお腹空いている時にはいいよ。」
香奈「神太朗君は、食品関係の専門家を色々呼んで聞いているわ。気に入った人もいるらしい。その人に任せるみたいよ。やっぱりその道に詳しい、いい人を探すのが、自分の役割だと再認識したと言っているわ。何でも出来るわけでもないのよ。神子ちゃんもうまくいくとは思ったけど、ここまで売れるとは思わなかったと言っていたわ。いい勉強になったのよ。相場や出資などで、ただ儲けているよりも良かったと思うわ。正子さんもそう言っていわ。」
「そんなものかね。まあ相場や出資などは利益できたらそれで終わりだけど、実業なら人の問題や原材料の問題なども出てくるわね。」

食品関係や流通関係の人を入れて、神太朗は、ジブトラストの内部に治部食品部を作り、丼チェーンを吸収した。独立した会社とするにはまだ自信がなかった。赤字が出てもジブトラストが吸収するつもりだった。ただ食品部といっても独立した会社のような部門であった。開発に苦労した担当者も経営陣の中に入り、協議していた。テイクアウト専門の店は変わらないものの、おにぎりなども追加して、野菜サラダやサンドイッチを作っていた加工場は拡大して、そこで作らせた。肉やエビは大目に確保して、オフィス街にも小さい売り場を作った。変な容器も中空部分を少し大きくして、鉄化合物などは取って、容器のコストと輸送コストを下げた。そうして値段も下げた。それでも変な容器のファンもいて、望む人には少しお金を特別に出して貰った。自前で、冷凍設備を持つ食品工場を作り、味も少し季節に応じて微妙に変えた。工場の稼働率を考慮しながら、少しだけ通信販売をした。新しい調理品も考えていった。

安いよスーパーの成長 

聖子の「安いよ」スーパーは、独自路線で、バッタ屋のように、現金を豊富に持ち、換金目的で、商談にくる業者から叩き買うような事を行っていた。食品も、日付管理が簡単な缶詰や加工食品だけであったが、次第に、生鮮品の重要性に気づいて売り出した。生鮮食品を売っていれば、毎日客はくる。パンツやシャツを安く売っても、毎日パンツを買ってはくれない。客の入りが違った。問屋から適当に叩き買ってきて、そのまま売り場に並べて、放置していた。安ければいいんだろうと云う売り方であった。腐りかけていた食品を売りかけていたもあった。聖子は驚いて、独自の売り方に変えていった。

日持ちのする缶詰や加工食品を多くし、安値をつけた。生鮮品は、短時間で朝市のように売り切っていた。総菜や調理品も片っ端から閉店1時間前から割引シールを貼って、売り切っていた。鮮度管理のいる食材も、安くして売り切った。聖子は店の管理をそんなに信用していなかった。何しろいい加減な聖子が、いい加減と思う人たちだった。店に置いておくと何するか分からない。多少の人件費は要るが、短時間パートで、当日払いで乗り切っていた。

聖子は、利用出来るものは何でも利用して、儲けたい人だったので、治部食品部が出来ると早速、相談して、「安いよ」ブランドの生鮮食品やサンドイッチ、おにぎり、総菜そして炊いたご飯なども販売するようになった。聖子は、治部食品部と喧嘩腰で掛け合って、貧乏人は何も食わなくてもいいのかと脅して、「安いよ」食品株式会社をわざわざ作り、それを販売元にして、独自に安くした食品を作った。聖子は、二郎のものに取り憑かれていたとは云え、極めて強引な女だった。岡崎交易からも安い肉や食材を集めた。ご飯も、コシヒカリやササニシキに拘る神太郎が、渋い顔をするのを押し切って、安い米を使わしてお弁当やおにぎりとしたり、野菜も形が変だったり、曲がっているものを集め、安いよ食品の商品とした。岡崎交易も高品質に拘るようになっていたので、岡崎交易で売れない等外品や安い部分を強引に安値でかき集めて、売るように処理した。快適洋服と合弁の食品会社からも安いものをかき集めてきた。いわば等外品のような食材を、聖子は、強引な手段でかき集め、安いよ食品の商品としていた。

売り方も独自の売り方をするようになった。調理品や生鮮品は、すべて売りきってしまう事に差はなかったが、多少やり方を調整した。日に2回、治部食品部が、総菜などの調理品の配達をしていたが、配達予定時刻の2時間前には3割引、1時間前には、半額にした。生鮮品やその他の安いよ食品の商品までもその日の内に、割り引いて売り切ってしまった。スーパーの担当者は、発注数量はすべて売りきる数を出した。売り場に並べる時には、人が要った。そのため短時間パートを雇い、時間給を高くして、現金払いとした。一日数時間だけのパートだった。割引く時も値下げシールなどは使わなかった。何時からは3割引き、何時から5割引きと値段の所に書いてあった。その時間になると人が寄ってきて、売り場は戦場のようになり、閉店以前に食品売り場はガラガラになった。次第に5割引きの時間以前にガラガラになった。発注量も増やしていったが、治部食品部や岡崎交易も限界になり、「安いよ」食品に回す等外の食材はそんなに増えなかった。閉店1時間前に、駆け込んだのに、おにぎりひとつ買えない。ねぎ1本も買えない。始めはうちは安売りスーパーだからと言っていた。段々と文句が増えてきた。仕方なしに、高級品の治部食品部の食品や岡崎交易の食材の中でも安いものを探して、そのまま置いた。値段は元々高かった。担当者はおそるおそる置いた。なにしろ、高い。5割高とか倍以上の値段もあるのだ。

安いよも快適も、聖子は会社の方針や運営も一人で決めるのに、いつまで経っても副社長だった。この二つの社内では、副社長の命令は絶対だった。社長の有村は、聖子の決めた方針や運営のフォローをする役目だった。聖子は次々と儲けがある事に飛びつくので、実際の運営は有村に任せていたので、有村が社長の方が都合がいいと云う不思議な会社でもあった。

スーパーの担当者「副社長、遅くなって店に入るとガラガラだと云うクレームが増えてます。発注量も増やしたけれども、治部食品部もそんなには出来ないと言ってます。安い肉や魚は、岡崎交易などからも入れてますが、そんなになくて。相談窓口も閉口してますよ。」
聖子「仕方ないわね。普通の治部食品部の食品や岡崎交易の食材なども並べてみるしかないか。でも高いわよ。あんなものは高級スーパー用なのよ。治部食品部の製品は、仕入れ値も高いから、割り引くと損も大きいよ。それにうるさいのよ。肉や魚の売り場の温度管理とか、おにぎりの置く場所とか野菜売り場の衛生管理とか。」
スーパーの担当者「でも喧嘩腰で文句言ってくる人が多くて、肝心の衣料品まで影響が出ますよ。」
聖子「今となっては、生鮮や総菜を止めるわけにもいかないね。お店も少し綺麗にして、冷蔵庫や冷凍設備も整理して、食品の売り場も整備して、担当の人も増やして管理を徹底して、売ってみるか、少しは安いものを探して売値も下げてみよう。でも利益は減りそうな気がするよ。衣料品で取り戻してね。」
スーパーの担当者「私も文句言ってくる人の対応が減るから、衣料品の販売方法もゆっくり考えられますよ。」

売り切りスタイルは、貫いたものの、治部食品部の普通の製品も、定価から少し下げ、おそるおそる並べた。治部食品や岡崎交易は、売り場の衛生管理などにも口を入れたので、管理も徹底するようになった。驚く事に、高くとも高品質の製品を買う人が、安いよスーパーに来る客の中にもいた。閉店直前には、生鮮や調理品の売り場がガラガラになる事は変わりなかったが、入荷量も増えて、調整もできるようになった。安いよスーパーも店が増え、今までは入荷量が少なすぎたのだった。閉店1時間前ぐらいには少しは食品売り場に、商品があるようになった。

お客の家での話。

旦那「今日はステーキか、珍しいな。又安い肉買ってきたな。」
「お給料も入ったから、今日はみんなの下着を買いに言って、ついではたまにはと思って買ったのよ。」
旦那「この間の肉、固かったよ。」
子供「そんなに美味しくなかったね。」
「いいお肉は高いのよ。そんなに贅沢できないでしょう。」
旦那「又あの安売りの店か、下着もやっぱり、木綿がいいのに、汚れが付きにくいとかいう下着はどうも気に入らないな。」
「あんたは、あんまり風呂にもあんまり入らないし、汚れが取れにくいのよ。子供もあんたに似て、結構汚すのよ。この下着は洗濯すると直ぐ綺麗になるし、乾きも早いのよ。今日は特売だったから、人も多くて大変だったのよ。戦場みたいに凄い人だったのよ。始めにお肉と野菜を買って、必死でサイズを探したのよ。あんたのサイズは少なかったのよ。」
子供「このお肉、美味しいよ。いつもと違う。」
旦那「どれどれ、本当に美味しい肉だ。」
「忙しくて、よく値段見なかったのよ、高い肉を買ったのかな。この頃あの安売りの店も高いものも置いてあるのよ。本当に美味しいね。レシートを見てみよう。」
旦那「値段も見ずに買うのか。」
「安売りの店は、直ぐに食品はなくなるの。オタオタしていると何もなくなるのよ。この間なんか、ちょっと隣の奥さんと話し込んで、遅く行ったら、何もなかったのよ。それに値段も複雑なのよ。いけない、高いお肉だった。でも割引されているから、安かったのね。」
旦那「たまには、こういう肉もいいよ。お肉と云う感じするよ。」
「そうね。これは美味しいね。」
子供「こんなお肉を又買ってね。」

治部食品の製品や岡崎交易の食材を、割引時間に買おうと狙っている人は多かったが、先に売れて、割引時間に販売する量は多くなかった。割引時間まで待って精算しようとして、店内をウロウロする人もいたが、スーパーも衣料品の特売を定期的にして、他の商品の販売も増えて、売上も伸びた。聖子は利益が下がると危惧していたが、結局売上も増えて、利益も増えた。

「丼チェーンとも呼べないらしいね。おにぎりも好調らしいね。ビーフシチューもカレーも入った冷凍セットも通販しているよ。私の家にも置いてあるよ。」
香奈「何とか安定したみたいだね。やがてはコンビニみたいなものにしていきたいらしいよ。」
「安いよスーパーも治部食品のおにぎりやサンドイッチなども置いているらしいわよ。」
香奈「閉店前に売り場がガラガラになって、おにぎりも買えないと言われたらしいの。聖子ちゃんも文句が多いので、売り出したみたいなの。結構売ってるのよ。」
「安いよスーパーもかえって売上が伸びたらしいよ。単に安売りだけではないらしい。衣料品も快適洋服だけではなく、治部洋服の製品も置いているらしいよ。」
香奈「有村は、客層も少し幅が出てきたので、置いたと言っているよ。お店も綺麗になったと評判だよ。有村は大きなお店を出したいと云って、広い土地を探しているわよ。安いよスーパーも名前を変えないといけないかもしれないね。」、
「そうだね。もうバッタ屋みたいな商売は流行らないよ。安いんだから文句言うなみたいな商売は時代遅れだよ。」
香奈「丼チェーンもどうするか、検討しているよ。ご飯時以外には、新聞とか、雑誌とかは置いているらしいよ。売り場は小さいから、まだ検討中らしいけどね。神太朗はお酒を飲まないから、こっそり検討しているけど、おつまみなんかも考えているらしいよ。」
「でも純子会は、お酒を造っている会社の株を相当持っているのでしょう。香奈さんは関係ないか。」、
香奈「お純だろ。お母さんはよく飲んでいたよ。美佳おばさんから貰っていたよ。でもあんな吟醸酒は元々限定製造品だしね。商売にはならないよ。正子さんも神太朗君もお酒は飲まないからね。ただ神之助君は、時々舞子ちゃんとお純を飲んでいるらしいよ。神之助君は、神様に御神酒はつきものとか言ってるよ。神之助君に話をして貰おうとしてね。エビのおつまみの試作品を作って持ってきているよ。私も食べたら、結構美味しいかったよ。ホテルの売り場には置きたいらしいよ。」
「うちには、まだお純は届いているよ。そんなおつまみ欲しいね。私たちにも試食させてよ。」
香奈「今度言ってみるわ。私はブランデーだけだから、スモークサーモンとかナッツでいいんじゃないとか言っているけど。」

治部食品部は、利益が安定的に出るようになり、やがてジブトラストがほとんどを持つ治部食品株式会社として独立し、本体の管理セクションの人を役員として、丼チェーン以外にも冷凍食品や総菜や弁当などを製造販売する会社になった。働いている人にも希望があれば出資を認めた。経営している人達は少しずつ株を持った。業績が上がれば、無償贈与か現金かを選択して貰い、従業員にも少しずつ株を分けた。働いている人に株を持って貰い、利益配分するのが、治部一族の伝統だった。安いよ食品の総菜やおにぎりや弁当なども製造するようになった。低価格の食品を安いよ食品の製品として、本来の治部食品の製品とは区別した。

安いよスーパーは結局、普通のデパートのようになってきた。

安いよスーパーは、多くの大きな郊外店を持つようになった。安いよ食品は海外の安い、格安の食品を集めて、叩き売る事もあったが、安いよスーパーは、治部食品などの高級品も売り、普通のスーパーと云うかデパートのようになった。食品も売り切りと云う訳には、行かなくなったが、その気持ちで店頭に並べていた。割引はやたら多かった。快適洋服は、儲かる事は何でも手を出したが、世界各地で農園を持つ事は多く、農園直送の果実の叩き売りはスーパーの目玉となり、世界各地の快適の食品会社が作った世界から珍しい食品も並ぶようになった。バッタ屋のように始まった店を知る人も少なくなったが、時より、信じられないような値段でたたき売る事は、続いていたし、安いよブランドの食品や衣料品は、安かった。それでも世界各地からの食材が入り、安いよ食品の品質もそれなりに上がっていた。

敷地内の建設ラッシュ

いくら広い敷地でも、人が死なず、結婚して子供出来るとさすがに家が増えてきた。それに奥さんもここに住み、娘までも妊娠すると夫をつれてくる事が多かった。託児所や保育所そして幼稚園と病院が完備している敷地内に戻ってくる事が多かった。敷地内では、お手伝いさんもチームになって各家を回っていた。クリーニング設備もあり、定期的なハウスクリーニングそして料理店からのケータリングサービスもあった。敷地内は便利だった。みんな離れだらけの家になったしまった。

「ここも家が増えたよ。みんな離れだらけだよ。私の家もタコ足みたいな家になった。」
香奈「私の家はいっそ建て直す事にしたよ。俊子さんの所は大きな離れを作ったけどね。ゲストハウスに引っ越す準備をしているの。そこに一時的に住んで、今の家を大きく、5階建てぐらいの大きな家にするのよ。恵はまだ若いから少し待ってね。」
「80才超えて若いと言われるのは、ここぐらいだろうね。」
香奈「ここにも銀行の支店が出来るのよ。聖子ちゃんの病気も治ったけど、聖子ゃんと有希さんは、まだ現金に拘っているのよ。有希さんもあんまり会社には出ないけど、洋服会社では会長をつづけているのよ。給料や役員賞与は、利益比例だから、額も多いのよ。敷地の端を銀行に貸すの。恵もこの間2億も現金持ってこさせたでしょう。迷惑していたわよ。」
「だって面倒じゃないの。本人が来いとかうるさいのよ。有希さんが現金もってこいと言うのがよく判るわ。」
香奈「でも億超えると銀行も会社も大変なのよ、だから銀行の支店を作るのよ。」
「でも有希さんも良くやるね。まあ香奈さんや真理さんそして俊子さんも現役だけど。」

ジブトラストは、世界各地に資産を直接又は間接的に保有しており、敷地内の本社で持っている現金も多かった。大きな危機や至急時にお金がいる時には、貸す事もあった。利子などは取らず、企業の将来性や経営陣の資質などが判断材料のようだった。大きなお金になると、本体が判断した。

マリアは、切人以外には、子供が産まれなかった。徹行とは仲が良かったのに、男の子一人だった。マリアはジブトラストでは特異な存在となった。正子や三人の子は、そんなに遅くまで仕事はしなかった。正子は4時頃帰ってしまうし、三人の子も5時頃には帰ってしまった。香奈は、正子よりももっと早く帰っていた。マリアは、徹行が敷地内の真一郎の研究センター分室の研究所に行くようになっても、午後3時から10時頃までジブトラストにいた。マリア専用の部屋も作って貰い、その部屋には切人用のベッドまであった。切人と二人で取引をしていた。

「マリアさんは、子供が一人なのね。どうしてもっとできないの。仲もいいのに、夜が遅すぎるからじゃないの。10時頃まで働いているのは遅すぎるよ。」
香奈「でも朝は、徹行と切人と一緒にのんびりしているよ。徹行も敷地内の研究所には、昼前に行っているよ。私は、ジブトラストには10時頃行くけど、その頃に三人で朝ごはんを食べているよ。徹行も夜は遅いから丁度いいのよ。切人と一緒に帰ってくるよ。切人も子供のくせに夜は遅いのよ。マリアさんがずっと見てるよ。みんなとは、時間帯が少しずれるのよ。」
「マリアさんは今でも稼いでいるの。」
香奈「儲けているよ。でも正子さんとは少し違うのよ。正子さんは、売り買いもするけど、売り局面を巧く掴んで、儲けているけどね。マリアさんは、そんなに相場が動かない時でも、結構稼ぐのよ。危機とか波乱で儲けるスタイルとは違うのよ。全く別の感覚だね。そんなに数量も大きくなく、集中的に儲けると云うスタイルではなくて、売り、買いも混ぜて、自然な形の取引なんだけど、お金の運用効率もよくて、結構取引の頻度が高いの。マリアさんが儲かるように相場が少し動くと云う感覚だよ。運用枠は、子会社から何度も増額したいと言ってくるけどそんなに増やさないの。各子会社で5億ユーロ相当の枠になったら、もう増えなくなったよ。マリアさんは、稼いだ金は子会社で保管して欲しいと言うから、管理がややこしくて、マリアと云う会社まで作ったのよ。子会社の話では、ヨーロッパからアフリカへの進出企業にマリアさんの金を出資した事があったらしい。ジブトラストからの出資に加える形らしいよ。」
「アフリカに関心があるの。」
香奈「そうかもしれないね。でもアフリカが伸びるのには、まだ時間がかかると思うよ。トラストとしては、先行投資のつもりなんだよ。」
「独特の感性なんだろうね。」
香奈「そうだろうね。マリアさんの取引状況には、神子ちゃんは、感心してたよ。お母さんとタイプが違うと言っていたよ。ヨーロッパの現地法人自身にも、お金が貯まったよ。」

ジブトラストには、世界各地から来るので、基本的には英語で問題なかったが、語学はなんでもよかった。舞子がいれば、ほとんど何語でも判った。マリアは時間帯もずれて、そんなに人には会わなかった。ただしヨーロッパの人は会いがったので、約束を入れる事も多く、そんな時は、マリアも少し早めにジブトラストに行っていた。

ジブトラストの海外の子会社は、初めは香奈オフィスからの移行してきた人だった。いわば香奈の戦友であった。しかし時間が経ち、香奈もそんなに行かなくなると、人の管理も必要になり、取引に向く人、会社支援や管理に向く人等の見極めも必要になってきた。神太朗の霊力が役にたった。海外の子会社の人たちもたまには本体に呼んだ。香奈は神太郎と一緒に会い、神太朗の意見を参考にした。神太朗には、心の中はすべて丸見えだった。神太朗は、人の心の中の可能性や善意を見付けることができた。神太朗は、会社支援ではそれを育て、伸ばそうとしていた。神子は冷静に予測していた。神之助は、霊力は強く、人の悪意や弱さそして危険性も感知し、それを強制的に排除する事もできた。神太朗の霊力は弱いが、人の可能性を見つけ、育てる事は出来た。マリアは、霊力と云うより、希望を見つけ、希望を与える力だった。マリアは、いつも希望を、そして可能性を見つけていた。マリアに会うと何故か希望が持てた。マリアは微笑んでいるだけなのに、人間も捨てたものじゃない、私も何かできるかも知れないと思うようになった。

ジブトラストが貸したお金は、多くの場合何倍にもなって返ってきた。増資とか優先株とか配当とか色々な形で、返ってくるお金の名前は変わっていた。時間がかかる事もあったが、気にしなかった。企業の買収や合併に必要なお金も用意する事があったが、単に利益を上げたいとか云う理由では、断られる事が多かった。神太朗は断ったし、第一、正子が認めなかった。正子は神の子たちの意見は、ほとんど採り上げたが、単に利益だけで、強引な手段を取る事は認めなかった。先物市場では儲けていたのに、不思議な事だった。神太朗たちのチームはなんとか利益も出るように、運営方法までサポートするようにしていた。抵当やへったくれなどは、支援や援助には何の関係もないと思っていた。

香奈は企業支援や相談業務は神太朗が中心に行うようになり、海外関係の相場も神子や神之助が面倒をみるようになってから、香奈は、時々相談を受けたり、報告を聞いたり、来客と会ったりするだけで、暇になった。香奈オフィスも、ボッタクリの瑠璃と言われながら、瑠璃が格安の鉱山や資源の権利を獲得して、海外間での資源の販売を広げていた。大きなお金だったので、融通と云うか借金ではなく、香奈ファイナンシャルから出資して貰った事もあった。ドイツの機械会社の機械の販売会社と化していたドイツの香奈オフィスは、資源販売のチームを除いて、本当にカナ機械販売会社として、香奈ファイナンシャルからも出資して貰い独立し、今度はドイツの機械会社の製品以外でも、日本の機械会社も含めて、他の機械会社の製品を世界で売るようになっていた。

香奈再び、相場取引に復帰

香奈も90才になると海外への出張を止めた。海外に行っても一通りの報告を聞くだけだった。香奈が知っている人たちも、引退したり、死んだりしていた。子会社での問題も少なくなり、香奈も高齢になって、海外へ行くのが段々面倒になり、香奈の海外出張も止める事にした。最後にスイスに行ってコッソリートと会い、スイスカナコインにも寄ったが、小さい古いビルで、流行らないコイン屋の金庫に金が貯まり、二階で年寄り運用チームがのんびり運用していた。スイスカナコインはジブトラストに比べると小さい運用だった。

ジブトラストも、香奈オフィスも大きくなり、香奈自身が直接指導する事は少なくなった。総括や方針は香奈がまだ決めていたが、普通の日は、ジブトラストでは暇だった。香奈ファイナンシャルとしての取引はジブの社内ではせず、香奈は、香奈オフィスからの報告は家で受ける事にしていた習慣が身に付いていたので、家に早く帰り、自分の部屋でスイスなどに連絡していた。そこで香奈自身が再び、ジブトラストとして相場に復帰した。ジブトラストとしても、二千億程度、香奈のために用意した。

香奈「この間あんまり暇だから、私も久しぶりに香奈プログラムをやったの。神之助君に少し修正して貰ったけど、儲かったわよ。最初は少なくしたつもりが桁を間違えて、多くやりすぎたみたい。管理の人が飛んで来たわ。なんとか保有報告書を出さないといけない所がやたら多いのよ。まあなんとかしてくれたよ。管理の人も暇みたいだから、喜んでいたわよ。」
「元気だね。相場は好きだね。」

香奈はあんまり、暇だから、相場をやりだしたが、香奈は元々多量に、一気に買う人だった。株の取引も、買えばジブの買いとか言われて上がり、時期を逃さず売り抜けし、儲かった。ジブトラストは、長期保有が基本であったのに、香奈は、気が短くなっており、短期的な売買を行い、直ぐに手じまいを始めていった。管理の人も、多くの関係会社の保有状況も調べる必要もあった。雲の上の人なので、初めは何にも言わなかったが、ついには嫌な顔をした。それに子会社の人が役員になっている会社もあったり、相談を受けている会社もあり、制約も大きかった。香奈はごきげんソフトに依頼して、制約のある企業には警告と取引出来ないようにする取引ツールを作った。ごきげんソフトは、ジブトラスト関連用に、取引用の回線と取引ツールを独自に作り、支援や相談そして各企業からの報告、研究センターの報告などをデータベースに作り、それを更新する処理を請け負っていた。今ではジブトラストのコンピューターを介して文書を作成したり、取引するだけですべてのデータが見られるようになっていた。そうするとなんとか報告書の作成も容易だったし、取引できない会社も直ぐに判った。そうすると、香奈が面白いと思う会社には、既に子会社が投資していたり、役員を派遣していたりした。もはや小さい運用会社ではなかった。香奈も漸く判り、株よりは商品や為替などに変更した。原油や金は過去にも経験があり、外国為替にも経験があり、この3つを選んだ。香奈は桁数をよく間違えていた。真理は金相場が揺れるのは迷惑そうな顔をした。原油は瑠璃が本職だったので、瑠璃が会社の動向を見ながら、ヘッジして取引していた。お母さんの動きは邪魔なのよとか言われて、結局外国為替をやる事になった。ジブトラストでも、子会社からの配当を送金してもらう事もあり、少しは海外為替も間接的に行っていたので、神之助と神子が色々とサポートして、資料もくれたり、オーラも送ってくれた。ジブ上海銀行以外にも、いくつかの為替会社や銀行を選び、何カ所で取引をしていた。香奈は桁数を間違えて、あまり大規模な買をして、たまたま口先介入をしていた時だったので、本当の介入が入ったと思われて、思い切り上がり、やたら儲かった。味をしめた香奈は家でもやろうとしていたら、瑠璃にいい年なんだから、夜は寝るのよとか言われ、晩はゆっくり寝る事になった。結局、会社の中だけで取引する事になった。そのためオーラの強い職場でジブトラストの中でだけ、取引していたものだから、結構儲かっていた。

香奈の家、建てなおす

香奈たちの新しい家も建った。チャもココも香奈と一緒にゲストハウスに当然のように行き、新しい家でも当然のように一部屋貰った。真理のお地蔵さんのコレクションの部屋と香奈のお不動さんのコレクションの部屋も出来た。香奈は3つの部屋を持っていた。香奈の部屋とお不動さんの部屋そして猫の部屋であった。猫の部屋と香奈の部屋には出入り口が開いており、猫は勝手に行ったり、自分たちの部屋でお不動さんの絵の裏で休んでいた。コシロの骨もお不動さんの石像の近くに埋めた。チャもココも判るのか、時々庭に出て、お不動さんの石像の前で黙祷していた。マリアは、小さい庭が見える、小さい自分だけの部屋で静かにしている事が好きだった。真理も香奈も満足していた。お不動さんの石仏像も買っていた。庭にはお地蔵さんとお不動さんの石仏像が置いていた。

「やっばり新しい家はいいわね。ここはお不動さんの間なのね。ここの部屋からは庭のお不動さんも見えるのね。」
香奈「いいでしょう。真理さんのお地蔵さんの間からは庭のお地蔵さんが見えるのよ。ここにくると気か休まるのね。マリアさんは、小さい庭を作っているけど何も置かないの。」
「私たちも新しい家を考えよう、孫達も結婚したし、真美さんや由香さんたちとも相談しよう。俊子さんの所は離れに大きな建物を造ったわね。」
香奈「俊子さんの所は神太朗君が、離れに大きな建物を建てた方がいいと言ったの。今までの神太朗くんの家の後には、改築して紡績と洋服事業と商会とかの連絡事務所が出来たのよ。ごきげんソフトが回線を増強しているから、回線も早くなって、会議も出来るのよ。恵も、神太朗君たちにも聞いてみたら。引っ越しの手間もないよ。私も、ここにも機械、資源開発、香奈オフィスの連絡事務所も置くようにしたのよ。徹さんたちも一応相談役だし、暇そうだからね。」

チャ、母猫の遺骨を庭のコシロの墓に埋める!

ある日、香奈はスイスへの連絡もなく、チャとココと遊んで、幾つかの経済サイトなども覗き、猫たちに印刷して、比較的早く休んだ。チャとココは二匹で相談していた。

チャ「僕が、お母さんの骨を取ってくるよ。お不動さんはあの部室の裏に埋められていると言っていた。もう一人の子供と一緒にスイスにも持っていったらしいけど、多くの骨はあると思うよ。お父さんと一緒に埋めておこうよ。」
ココ「でも遠いわよ。大丈夫なの。」
チャ「あの時の道は心に刻んでいるから、大丈夫だよ。朝までに帰ってくるからね。骨をくわえて帰ってくるよ。」、
ココ「私も一緒に行こうか?」
チャ「僕一人の方が便利だよ。」
ココ「気をつけてね。」

チャはこっそり庭を抜け出した。猫はドアは開けられるのだ。チャは心に刻んだ夜の道を足早に歩き、大学の部室の裏に行き、茶色の猫が埋められると聞いた場所を見つけ、簡単に掘り出す事が出来た。一欠片の骨だったが、口にくわえて、もう明け方付近に敷地内に戻ってきた。コシロが埋められた所に、一緒に埋めた。チャありがとうと言うお母さんの声が聞こえたような気がした。雑巾で足を拭い、お不動さんの裏で寝ていたココに帰ってきたよと言った。

大きなお不動さん「チャ、お母さんも喜んでいるよ。二人がお前たちの事を見守ってくれているよ。」
チャ「思っていた程遠くなかったよ。」
大きなお不動さん「後はゆっくり休め、お前も為替をやってみるか、教えてやるから、勉強しろよ。」、
チャ「お願いします。」

お手伝いさんは猫の部屋から庭に出るドアーが少し開いている事に気付き、慌ててドアーを閉めた。猫たちは疲れて寝ていた。ココも心配してゆっくり寝ていなかった。

「香奈さん、もう歳なんだから、儲けるのは、神太朗君たちに任せたらどうなの。ゆっくりしないと、寿クラブでも行ったら。徹さんは来ているよ。」
香奈「無理しない程度にやっているだけなのよ。正子さんは二千億の枠の中でやってねと言ってくれたよ。」
「無理しないで、暇つぶし程度でやってね。香奈さんは、今頃儲けても仕方ないからね。」
香奈「そうしているわよ。成績もまあまあだよ。神之助君たちも直接でもやってみようとか言って、色々な所に資金も置いているし、便利だっていってたよ。」

そして香奈は、本当にのんびりやった。ただ単位は少し間違える事があった。正子は時々みて、こっそり資金を追加してくれる事もあった。新たに三千億も追加した事があった。香奈は海外ビジネスの経験は豊富で、大局観としては間違っていなかった。それにスイスカナコインからの情報も入った。チャも好きなようだった。香奈に色々なチャートを印刷させて、ボールの水でチャートの延長線を書いた事もあった。香奈は為替用として新しくスイスコインに10億入れて貰い、オタスケーに処理を頼んだ。香奈はそれも参考にしたが、それは、スイスカナコインで取引させた。まさか猫のいいなりに取引しているとは云えなかった。ココは株式が好きだった。チャは為替のチャート遊びでも印を付けだしたので、為替もオタスケーに面倒もみて貰った。ココもチャに影響され、国内先物のチャートでも印をつける事があった。香奈は香奈ファイナンシャルにココ用の先物口座に10億を入れ、口座残高の五分の一だけを運用する事にした。しかし先物はそんなに取引をしなかった。ココは少しだけ中期的に予想しているようだった。日本の株に関するメールが来たら、ココは反応した。日本の株は大抵とんでもない会社の株だった。香奈は、結構儲けていた。しかしもう香奈は、あまりそんなに利益に拘らなくなった。ジブトラストからの報酬も高く、配当も寄付以外には、生活費とお不動さんの絵以外しか使わなかったので、残りは、ほとんど国内の香奈ファイナンシャルに出資するようになっていた。時々、相場をやっているのも忘れ、美術商の人を呼んで、お不動さんの絵について話をして、真理もお地蔵さんの絵の事を聞き、話の中に入り、話に夢中になり、そのまま家に帰ってしまう事もあった。

「香奈さん、何見てるのよ、相場やってるのでしょう、お不動さんのオークションなんか見てて、大丈夫なの。」
香奈「そんなに、一々見てたら疲れるよ。指し値はちゃんと入れているよ。それよりこのお不動さんの絵、いいでしょう。本物かしらね。美術商にも聞いてみよう。」
「本当にのんびりやっているのね。それならば安心よね。」

香奈は、ほとんどお不動さんの絵とか掛け軸をゆっくり見ていた。1日何時間か、中期的なスタンスでやって、後は自分のコレクションについて、美術商に連絡したり、真理のお地蔵さんコレクションのついての情報を真理に言ったりしていた。実は真理も同じように1日の数時間だけ仕事をして、後は自分のコレクションについて、調べたり、オークション情報を見ていた。ネットオークションなんかも見ていた。

時間がくれば、真理と一緒に帰った。食事は、子供たちと普通の大人そして高齢者用の三種類があった。たまには別のメニューを注文したり、各家で作ったりしていた。香奈たちは、普通は高齢者用の食事も注文したが、大人用にしたり、好きなメニューにしたり、作って貰ったりしていた。やっぱり香奈も真理たちも肉は好きだった。時々、いいお肉があれば料理屋さんから、コックも呼んで焼いてもらった。チャとココはお肉が嫌いだったので、お刺身も頼んだ。

恵の家も神太朗たちのお告げでは新しい建物を横に建てた方がいいと言われた。そして今までの家も少し改築して、新しい建物を造った。子供部屋も広く、一人一部屋になった。
恵たちのビルの総合管理室などを作った。恵たちも少しは仕事ができた。財団や施設の連絡事務所も作った。

香奈、折角始めた為替を神之助に任せる

「香奈さんもそんなに相場も熱心にしないのね。香奈オフィスの事務所にいる事も多いね。ずっと多く財団に寄付してくれてありがとう。財団も喜んでいたわよ。」
香奈「やっぱり、香奈オフィスの仕事にしていた方がいいのよ。瑠璃は迷惑そうだけどね。結構儲かっていたけどね。神之助君たちは凄いのよ。私の倍ほど儲けるのよ。馬鹿らしくなって神之助君たちにして貰う事にしたの、それにジブトラストでも、現地子会社の人や保有している会社の人もよく来るのよ。私も最近行かないし、みんなも海外にあまり行かないから、向こうから来るのよ。そんなに暇でもないの。寄付なんて特別に増やしたかしら。そうだ、運用手数料をどうするとか云われた時のものかもしれないね。」
「何なの。運用手数料とか云うのは。」
香奈「投信なんかでも一緒なんだけど、利益のある程度は運用している人に入るのよ。役割によって、比率は違うのよ、ジブトラストは、会社としての投資だし、運用手数料は低いのよ。海外の人が入った時に少し上げて、利益の10パーセント程度なのよ。正子さんや三人の子供たちそしてマリアさんには、最初に特別な無償出資枠をつけたから、出資はもう増やさないの。それぞれの役割によって手数料とか報酬として払うのよ。いらないと言ったけど、みんなにも渡しているからと言って、私の税理士と相談して、財団に寄付するとか言っていた分かもしれないわね。」
「だったから、正子さんたちは多いでしょうね。だから寄付も多いんだ。最近マリアさんもくれるよ。」
香奈「ここまでジブトラストが大きくなったのは、正子さんたちの神懸かりの運用のお陰だよ。悦子ちゃんのエコノミーホテルや聖子ちゃんの会社にも正子さんがお金だしていたのよ。それに優秀な取引の人たちの給料は多くしないといけないの。だから正子さんたちにも多いのよ。でも色々な事をやってるから、計算も複雑でね。社員全部にも少しは、手数料は分散されていく事にしているの。取引チームの中には、普通の運用会社に移る人もいるのよ。運用手数料の比率はもっとずっと高いからね。しかし、神子ちゃんたちの予測とか取引指針もないし、運用金額も少ないし、コンスタントに儲けられないの。私の手数料は、私一人だけがやった事にしておまけしてくれたのよ。私も変わらず出来るだけジブトラストに行くのよ。来客もあるし、打ち合わせもあるのよ。散歩にもなるし、元気にもなるわよ。」
「財団ではね、この頃寄付も多く貯まるようになって、難病の子供を援助する人たちとも協力するようになったの。遺伝子研究センターと製薬もやってくれると言っていたよ。製薬の作った薬では効かないらしい。センターは遺伝子や細胞レベルでも調査すると云っていたらしいよ。友恵さんは、今までは、人数が少ないから、投資しても儲からないから、しなかったのだろうと言っていたよ。製薬にも利益を無視して開発進めるのは、無謀だと言う人もいるらしい。」
香奈「製薬には、利益重視派と薬の使命重視派がいるらしいわ。紡績にも、愛とか教育とかを重視する人たちと利益確保を重視する人たちがいるらしいよ。」
「どっちも必要なんだろうね。でも財団も色々やるから、又寄付がいるね。遺伝子研究センターも、まだまだ必要だね。」
香奈「大分、経費使っているよ。まだ人の遺伝子の働き方は、すべてわかっているのではないとか云って、凄い高く経費を要求したりするのよ。色々な技術指導料とか特許のお金なんかは入ってくるけど、大分持ち出しだよ。でもジブトラストでは、問題にしないよ。これからも、いつまでも続くだろうね。神子ちゃんも言ってたよ。これでもう十分とは、なかなかならない。もっと寄付を安定的に増やしていかないと。」
「そうかもしれない。香奈さんはなかなか死ねないね。」
香奈「私はもう十分やったつもりだけど、まだやりなさいと言われているだろうね。神子ちゃんも、おばさんはまだまだ必要とか言って脅すんだよ。」

香奈は外国為替もやり始めたものの、ジブトラストとしては、神之助に任せてしまった。神之助は、香奈がやりだして、外部任せよりずっと利回りが高い事に気付いた。神之助はかなり儲けた。やっぱりチャより儲けた。香奈も流石に神之助には、それは言わなかった。家でチャに言ったら、悔しそうな顔をしていた。チャはまだ勉強中だった。本体でも取引をして、世界各地で、見通しを立てて、直接的な形でも、本格的に取引を始めていた。各地での資産も増え、複数通貨を保有していた。香奈オフィスはシンガホールに、金融関係のオフィスを持っていたが、初めはそれを利用していた。瑠璃が香奈オフィスのシンガポールオフィスを引き継いだので、やがて、シンガポールにはアジアからの配当を元にジブトラストだけの金融オフィスを持ち、ヨーロッパには、リヒテンシュタインに、アメリカには、ニューヨークに、そしてサンパウロにも置いた。ブラジル資源開発が大きくなって、ブラジルにもおいたのだ。その金融センターでは、ジブトラストの100%子会社にして、海外子会社からのジブトラストの配当を、金融センターに預けて、為替の運用を引き受ける形にして、資金を保管して、為替処理を行った。

この金融センターでは少人数の人が神之助の指示でジブ上海銀行の各支店や為替専門会社も使い、為替取引をしていった。この人たちは、金融センターとしての利益の5%が付加給になった。元々各地域からの子会社からの配当を保管し、必要な時にジブトラストに送金するための組織であったので、基本給が決められていたが、神之助がジブ上海や各地の為替専門業者を選択して、為替を行うようになり、利益が出て、働いている人に分配するようになった。長期予測や中期予測も研究センターにも予測を出させた。神子はそれに基づいて、短期的な予測を出した。これに基づいて、世界各地で取引し、結果に基づき、修正していった。本体にお金が貯まり、送金する必要がほとんどなくなり、金融センターのお金が貯まりだし、神之助の仕事は増えた。商品相場関係の孫会社は少なかったが、商品相場も担当していたので、神之助も結構忙しかった。

聖子と有希の利益競争激化

聖子の安いよ、快適グループは、聖子の貢ぎ病が治ったものの、治部洋服グループとの競争になってきた。治部洋服グループは、海外の有名ブランドを手に入れだして利益率が上がっていた。有希は、商会の情報も入れ、孫の尚子や尚子の夫の柿崎孝も使い、洋服以外でもバックや財布などの皮革製品も売り出し、和服も売り、利益を上げだしていた。お酒の名前みたいなグループとブランド品の世界市場でも争っていた。快適洋服は売り上げ規模は高く、アメリカ、ヨーロッパはもとより、アジアや南米、インド、アフリカにも進出していた。しかし玩具や生活雑貨などを含めて低価格品が多く、利益率は低かった。機能性を特徴に利益率の高い製品も出して競争していた。何でも手を出す聖子の性格もあり、農園や養殖場まで手を広げ、いくつかの鉱山や偶然出た油田も香奈オフィスと共同出資し、貿易の窓口や工場建設などを受け持つ快適交易まで傘下に持っていた。聖子は、貢ぎ病の時にかすり採っていた利益の5パーセントを本体指導料と云う名前にして聖子ファイナンシャルに集め、資源関係の利益も加え、全体的な資金の流れも管理していた。

只、聖子は、資金回収は、急がず、配当も出資金の10パーセントにほぼ固定し、利益は現地に投資していた。企業を新しく出す時は、現地資本も加えていた。大きくなる毎にその成長は加速していた。各地の思惑もあり、もはや自動的に大きくなる体質ではあった。だだ利益率が低いだけに、利益コントロールが重要であった。娘婿の幸夫を各地の快適グループの視察に派遣し、管理も少し行き届いて、利益も上がってきた。有希は、利益比例の給料の給料ではあったが、比例率は低く、会社の保留金も重視し、配当も重視し、会社内部保留、配当、社員還元の三分配をぽぼ維持していた。ジブトラストからの出資もほとんどなかった。聖子は、社員還元は程々にしたものの、配当率は悪く、配当はどんなに利益が出ても、ジブトラストの求める最低ラインの出資金の1割に固定して、内部留保を重視する姿勢は変わらなかった。聖子は社員割引と言う制度を作り、社員に売れる製品を作るように言っていた。社員も客であるとして、社員に売れるような製品を製造していった。生産地周辺で消費できる製品を求めてきた。ジブトラストからの出資も多かったし、現地資本も積極的に導入した。多くの人と資金を集め、成長しようとしていた。

有希と聖子は、会社としても個人としても服飾関係の利益は競っていたが、その内容には差があった。治部洋服グループの配当は高く、有希の収入は、配当にも依存していたが、聖子は利益比例の収入に多く依存していた。有希は治部洋服グループの会長で、聖子が役員と云う関係も続いた。有村の息子も安いよ、快適洋服グループに入り、ジブトラストにも入り、ジブの管理も兼任していた。有希も聖子も現金主義ではあったが、もはや札束を家に運ぶ事はせず、ジブトラストに保管させていた。ジブトラストは、香奈や正子のお金だけでなく、有希や聖子のお金も預かっていた。ジブトラスト本体内に有村親子が管理する聖子ファイナンシャルの事務所が間借りする形となっており、有村親子によって、聖子のお金は、定期的に、聖子ファイナンシャルへ出資する手続きを取っていた。正子のお金も、多くはカミカミファイナンシャルに出資していた。有希のお金は、有希の個人会社ユキエンタープライズに出資され、治部洋服グループに直接出資したり、共同出資して、有名ブランドを買うお金に回っていた。そして香奈のお金は香奈ファイナンシャルに出資されていった。ジブトラストの管理は、色々な仕事を代行していた。

香奈は、恭助が遺産として受け継いだ長府や各地の土地や和子の諏訪の土地のように遺産として貰っていた不動産は、勝と小百合と一緒に出資した毛利不動産にまとめていた。菊子も少し持っていた土地を出資した。長府や諏訪以外にも、和子が祖母の静香や曾祖母の珠代からの受け継いだ土地もあった。土地だけでは有効利用が出来ないので、毛利不動産は、香奈ファイナンシャルからのお金を追加して、株式会社毛利ビルを作った、建ててしまったビルは、ジブトラストのビル管理業務に管理を委託していたが、土地の有効利用を考える専任のスタッフを持つようになった。その毛利ビルが、毛利不動産の土地の有効利用を進めていた。中には、ニコニコホテルを入れたビルも作った。

治部一族の不動産関係は、ビルの管理は、ジブトラストが主体であるが、昔からの商会の不動産を保有し、管理するスリースター不動産、名古屋の複合ビルを管理するスリスター中部不動産、名古屋のホテルの土地を管理するマチコジブ記念不動産であり、ジブタウンを中心とする各地の商業ビルを運営する冶部ビル会社とその子会社たちや香奈ファイナンシャルが出資する毛利ビルそして赤ちゃんスキ不動産などがあった。実際の不動産の売買は、主にしていたのは、洋之助が作っていた治部東京、治部大阪そして治部西日本であったが、ほぼ地域毎に担当していた。そして敷地内の土地や家を中心として、治部ホーム不動産があった。赤ちゃんスキ不動産は乳幼児施設や財団のサポートのための賃貸住宅ビルなども保有していた。 冶部ビルは不動産の管理と 云うよりは、商業ビルを運営して、直営店も持ち、ビルとしての不動産価値を高める工夫をしていた。

貿易関係も商会がメインではあるが、食品や農作物の貿易実務を行う岡崎交易と北米中心の衣料やグッズ中心のジブトレーディングそして聖子の快適関係の交易を管理する快適交易などがあった。資源やエネルギーは資源開発や香奈オフィスまで関係していた。そして安倍海運グループが実際の海運業務を担当していた。

香奈ファイナンシャルは、香奈の個人名義の資産をほとんど集めた会社だったので、香奈の子供の瑠璃や徹彦や孫たちにもお金が余れば、出資を受けいれていった。香奈はスイスからの情報を参考に、ココがにゃーと鳴いた時や香奈自身がひらめいた時に、とんでもない会社の株を香奈ファイナンシャルとして買ったりしていた。香奈ファイナンシャルは、一族の人に、無利子で貸すような事もしていた。しかし香奈ファイナンシャルのお金は増えていった。香奈がジブトラストから貰う報酬もジブトラストの利益比例だったし、香奈はジブトラストの一番多い出資者であった。元々土台となっていた香奈の運用会社にも相当お金は残っていた。保有していた一族の会社は配当も出していた。香奈は時には、一発倍増の勝負もした。ココもそれなりに、にゃーと鳴いて、香奈に儲けさせていた。

悦子はニコニコホテルを主導したが、ニコニコサービスが大きくなった。

悦子は、恐ろしい程の聖子の金に対する執着心はなく、エコノミーホテルも社員教育や財務バランスを重視していた。無理をせず、立地条件などを考慮しながら、進めていたので、そんなに大きくなる事はなかった。都市によっては中級ホテルや高層ホテルも作ったが、ホテルの数は、30にもいかなかった。長府の毛利ビルに出したホテルは、香奈の希望もあって中級の上になった。神太朗の丼チェーンにホテルの一角を貸した事もあり、レストランにも工夫した。ニコニコサービスも赤ちゃんスキ不動産と組んでサービス拠点を増やしていた。むしろ悦子自身はニコニコサービスに力を入れていった。悦子は、配当も重視し、会社内部保留そして配当、社員還元の三分配をぽぼ維持していた。もうジブトラストからの出資もほとんど貰わなかった。正子やジブトラストから借りたお金も増資としたが、悦子自身も増資していった。ニコニコホテルは、ジブトラストとカミカミそして悦子の会社になった。悦子自身は、ニコニコホテルやニコニコサービスへの悦子自身の株を出資してエツコオフィスを作り、旦那の洋一郎や子供たちも少し出資させていた。高杉もジブトラストから、一部の株を無償譲渡して貰っていた。

綾子は、エレガントホテルチェーンで奮闘

俊子が、資本参加したヨーロッパのホテルチェーンは、元々は高級ホテルであったが、大幅な増設やいきなり多くの場所でホテルを建て、小さい高級ホテル時代の客室稼働率を想定して、資金を借りて、幾つかあった景気後退期に稼働率を下げ、借金返済に困り、俊子の治部ホテルに資本参加を求めてきた。稼働率を上げるために、様々な割引を行い、それがホテルの評価を下げ、一方従業員の教育にも手を抜いていた。昔の名声に酔い、無理に大きくして、逆に苦しくなり、創業家も嫌気がさしていた。初めは借金返済の為の、資本参加であった。俊子はホテルの整備に努め、サービスの向上にも努力し、綾子を視察や管理に使い、少しずつ稼働率も上がっていた。ところが、創業家の相続問題がおき、俊子がジブトラストからの追加の出資と聖子フィナンシャルに追加の出資も求め、カミカミフィナンシャルにも出資を求め、全ての株を手に入れた。スーパーデラックスとデラックスとそしてスタンダードとに分け、ブランド名もスーパーデラックスには、ジブホテルの名前も付記し、ジブホテルが買い取り、スタンダードはニコニコホテルが買い取った。残った多くのデラックスホテルは、エレガントホテルチェーンとした。俊子は、無理な増設や高級ホテルの性急な膨張を戒める積もりで、綾子に視察や管理をさせ、監督していた。俊子は、スーパーデラックスは、治部ホテルの直営として、治部ホテルの完全な傘下に入れ、エレガントホテルチェーンから買い取り、治部ホテル並の客室の整備をしていた。悦子も、基本的なサービスだけを特化して、大幅に宿泊料を下げ、客室稼働率を飛躍的に向上させた。エレガントホテルチェーンはスーパーデラックスやスタンダードのホテルを売却した資金で財務に余裕を持たして上で、綾子に監督させ、様子を見ていた。少しずつ業績も上がり、ジブトラストが出資していたアメリカの高級ホテルチェーンも加えて、運営するようになり、エレガントホテルチェーンは、傘下に多くのホテルを持つホテルチェーンとなっていた。綾子は、寝具や内装もグレートアップして、デラックスアンドエレガントを旗印に、稼働率向上に努めていた。綾子の意気込みとは違い、一度下げた名声は簡単に戻らず、利益が伸びる聖子の事業には遠く及ばなかった。

綾子「もっと稼働率があれば、利益が上がるのに。ウィークエンドディスカウントをもっと大きくすれば、稼働率も上がるかもしれない。」
俊子「そんなことは、止めなさい。ウィークエンドディスカウントなんて高級ホテルでは邪道なのよ。自分から高級ホテルではないと言ってるようなものなのよ。サービスと満足度を上げていくのよ。時間がかかってもいいのよ。内容の充実を図るのよ。利益は結果よ。ホテルで借金して、稼働率を高くみるのが問題なのよ。治部ホテルは、自分の家のような気楽さと最高級の寝具、そしてゆったりとした空間を提供してきたのよ。私は、お義父さんからも稼働率を上げなさいなんて言われた事はないのよ。」
綾子「そうなんですか。利益を取ろうとして努力してきた訳ではないんでないんですか。」
俊子「客引きするホテルでもないでしょう。待つしかないのよ。顧客層と場所の調査が甘かったから、エレガントホテルチェーンの値段は少し下げたでしょう。サービスと満足度を上げて、焦らない事が肝心だと思うわ。聖子ちゃんの商売は、少しでも利益を取ろうと見えるけど品質の維持と向上には、努めていると思うわ。品質が上がっても何も言われないけど、下ると途端に大きな問題になるのよ。割引しているのは、単に客寄せではないと思うわ。いつも同じ品質を維持しようとするからなのよ。安売りを旗印にしてもそうなのよ。高級ホテルは、それこそ最高級のサービスと満足度を維持していかないと。客室が多いから、少しの割引はやむを得ないかも知れないけど、最高級のサービスと満足度を維持させ、向上させるのが、重要なのよ。それにそんなに簡単に聖子ちゃんの事業の利益に追いつく事なんてできないわよ。何人が働いていると思うの。現地では、それぞれの人が頑張って、利益を上げている組織になっているのよ。有希さんの全ブランド品の利益を入れても、聖子ちゃんの服飾事業の利益と競争するほどなのよ。無理な競争はいけないわ。」

菊子金属は、子会社も持った

菊子金属は、利益はもの凄く増えていた。利益率は80パーセントを超えていたが、売り上げ規模は、小さかった。金属加工の添加剤のようなものの販売が中心だった。影に隠れるような商売ではあったが、特殊技術で独占的なシェアを持っていた。菊子は、デザイナードメタルと云って、顧客からの無理とも思える要望に応える金属の開発を進めていた。テストラインを日本、アメリカそしてドイツで作り、販売拠点と研究センターを作っていた。個々の鉄鋼や金属会社毎に添加物を変えて販売していた。日本は、テストプラントを拡充させたものだったし、アメリカでも研究センターのテストプラントのようなラインで、販売拠点の為のものであったが、ドイツでは、偶々大きな金属会社が、親会社のリストラで買収の機会があり、ジブトラストやカミカミフィナンシャルと共同で買収して、今までの小さな金属会社と合弁して大きくなっていた。ここで菊子金属は、本格的な金属会社も傘下に入れた。今までとは異なり、顧客は、末端ユーザーまで広がった。素材センターをギニアとブラジルに作り、素材の管理や新しい素材の開発や発見に努めていた。香奈オフィスは、南米にも旧鉱山を多く持ち、その可能性を共同で探る事にしていた。

神太朗、神子、神之助の子供たち

神太朗には、三人の子供が出来ていた。神一と神二郎そして神三郎であった。神一は、神童と言われ、小学校に入る時には、日本語の新聞は、もとよりフィナンシャルタイムズやウォールストリートジャーナルまで読んでいた。神二郎は、大人しい子供で一人でいる事を好む子供だった。香奈のお不動さんの掛け軸が好きだった。神一のような才気ばしった子供ではなかったが、集中力は抜群で、教科書も一目で理解したと云われていた。神三郎は、棒きれを振り回し、やんちゃな子供だったが、彩香や明の家の医学書を判らないまま見るようになった。神子には、二人の子供が出来ていた。女の子の神代と男の子の陽太であった。神代は、隣の部屋まで壁を透視して見えた。野球の結果も直ぐに分かった。野球賭博でもやれば、大金持ちになれた。神二郎と仲良く、弟のように子分にして、ジブトラストの香奈の部屋に遊びに来ていた。陽太は明るい子でいつも朗らかだった。神之助には三人の子供が出来た。神元、神帥と云う男の子と神香と云う女の子であった。神元、神帥は、霊力は神之助以上で、舞子も手を焼いた。玩具も浮遊させて遊ぶ癖があった。舞子が片づけなさいと言うと、玩具箱に飛んで入った。壊れた玩具もあった。神香は、大人しい子であった。霊力はあったが、神元、神帥のように玩具も浮遊させる事なく、真理の横でお地蔵さんの像や絵をよく見ていた。

「気が付いたのだけど、正子さんの孫は、みんな神の字が付くのに、神子ちゃんの陽太君だけが、神の字がないのね。」
香奈「明るい子供だよ。一番子供らしいよ。神子ちゃんは、人を明るい気持ちにさせるのも大切だと言っていたよ。太陽のように人を明るくさせ、恩恵を与えて欲しいと云う気持ちでつけたみたいだよ。神一君は賢すぎるよ。子供と云う気がしないよ。正子さんの部屋に、幼稚園帰りに寄って、経済新聞読んでいるんだよ。英字新聞も読むのよ。」
「それは、凄いね。友貴は、スポーツ新聞しか読まないよ。」
香奈「神二郎君は、私の部屋に来るの。お不動さんが好きみたいなのね、大人しいから、一人でくると、いる事も判らなくなるのよ。掛け軸の中に入っているみたいなのよ。神代ちゃんと仲がいいから、二人でもくるのよ。神代ちゃんは、凄いわよ。予知能力もあるのよ。神子ちゃんより凄いかも知れない。明日の新聞が判るみたいよ。この間、久しぶりに香奈プログラムを検討していたら、明日の安値、高値、終値を言うのよ。試しに超短期の香奈神代プログラムを作ったら、ほとんど当たったよ。まだ株なんて判ってないみたいだし、明日以降はわからないらしい。」
「それなら儲かるね。」
香奈「多少はね。でも本当は、もっと先まで考えないと本当はそんなに儲からないのよ。」
「そうなの。まだ幼稚園だものね。神香ちゃんは真理さんが好きなの。真理さんの所で寝ているね。」
香奈「神香ちゃんは、お地蔵さんが好きなのよ。真理さんと二人で静かに眺めているわよ。」
「でも、神之助君の子供は、よく玩具を壊すらしいね。俊子さんがぼやいていたわよ。」
香奈「それは、神元君と神帥君だよ。神香ちゃんは大人しいらしいよ。神元君と神帥君は、玩具を浮遊させて、遊ぶから、よく壊すのよ。神之助君以上の霊力があるらしいよ。玩具は子供部屋で飛び回っているらしいよ。」
「それは怖い話だね。映画にも出てきそうな光景だね。」
香奈「神之助君には、この間大元帥明王の掛け軸を譲ったのよ。それを掛けたら、少し治まったらしいよ。」
「あまり聞いた事のない仏様の名前だね。お不動さんなの。」
香奈「お不動さんではないけど、珍しい掛け軸なのよ。」

神子と神之助の競争 

香奈神代プログラムは、香奈プログラムの2日単位バージョンで、香奈の選んだ銘柄を神代の予知で得た、2日間の安値、高値、終値を参考にして取引するものであった。香奈は神代の予知と香奈プログラムを併せて、香奈ファイナンシャルとして取引した。まさかジブトラストとして取引出来ず、香奈はジブトラストの会長室でも香奈ファイナンシャルとして取引するようになった。的中率は高かったが、そんなに多くは、動かさなかった。多くは1割程度の儲けだったし、神代も毎日香奈の部屋に遊びに来た訳でもなかったし、香奈も忙しかった。香奈は、もっと大きな儲けでないと取引したと云う感じはしなかった。それでも何回か動かしていると神代の予知の精度も範囲も広がっているようであった。神子がそれを知り、カミカミフィナンシャルで、神子が当番の時には、神子、神代の二人の予知を合わせて、神子神代プログラムを作り、先物も組み合わせて、短期取引をした。毎日のように資産が増え、カミカミフィナンシャルも、現金化比重は、5割を超えて運用していたにも拘わらず、神子の当番の時には、3ヶ月間で数倍になる事もあった。神之助も神元や神帥たちの霊力も借りて、競争して、カミカミフィナンシャルの当番の時は、荒っぽく稼いでいた。神太朗や神子も驚く程であった。

神二郎は青不動さんのお気に入りに

神二郎は、香奈の家のお不動さんの絵や掛け軸にも興味があり、絵や掛け軸を黙って眺めていた。お不動さんたちも神二郎を可愛がった。会長室の掛けていた青不動さんのお気に入りであった。神二郎が来ない日が続くと、香奈に催促する事もあった。

青不動さん「今日もこないのか、神二郎坊やは。お菓子でも用意して声かけなさい。」
香奈「今日は、遠足に行くと言ってましたよ。明日は、きますよ。お気に入りなんですね。」
青不動さん「孫みたいな気持ちになるんだよ。抱いていると可愛いよ。」
香奈「掛け軸の中に入っている感じでしたが、そうなんですか。」
青不動さん「わしも外に出ていけるような気もしてきたよ。」

神二郎は、掛け軸や絵に入ったりしていたが、やがてお不動さんが出てくるようになり、神二郎は、お不動さんと話したり、相談にのって貰うようになった。

神元と神帥は、大元帥明王さんに可愛がられる

神元と神帥も、大元帥明王さんに可愛がられた。大元帥明王さんと一緒によく遊んでいた。大元帥明王さんと神元と神帥は、仲良く、3人は、よく話をしていた。神之助も時々呼ばれ、大元帥明王さんから、耳打ちされる事もあった。

神香はお地蔵さんのお気に入りに

神香もお地蔵さんに気に入られていた。神之助は、真理から、神香のためにお地蔵さんの仏像を譲って貰った。お地蔵さんと神香は、歌をうたったり、話をしていた。神之助も一緒に話に加わる事もあった。

カミカミファイナンシャルは急成長していた

「菊子さんが、言っていたけど、カミカミファイナンシャルも出資するから、金属会社を全部買収しないかと言われらしいのよ。ドイツの金属会社は、運用会社だけでなく、カミカミファイナンシャルからも出資を受けたみたいなの。菊子金属の持ち分を一番にするためとか言っていたわ。カミカミファイナンシャルは、正子さんの管理会社なんでしょう。聖子ちゃんや悦子さんの会社にも出資しているのに、そんなにお金があるの。」
香奈「ジブトラストではないから、私もよく知らないけど、大きくなっているみたいよ。税処理なんかは、ジブトラストの管理が請け負っているけどね。税金も凄いらしいよ。正子さんや神太朗君たちの報酬も配当も多いし、そんなに使わないから、神子ちゃんと神之助君が二人で交代して運用しているの。それに聖子ちゃんや悦子さんの会社に出資したお金も配当で、もうほとんど戻っているわよ、ジブトラストもそうだもの。ジブトラストは、堅く取引するだけに、二人は自由にカミカミファイナンシャルで、競争して儲けているのよ。二人があまり儲けるから、神太朗君が、長期保有の株を増やしたいと思っているみたいね。商会の株やヨーロッパのホテルにも以外にも何か必要と思ったようね。ドイツの会社は、いい会社で大きいから、高くてね、折角買収できるチャンスなのに、ジブだけが出資すると菊子さんが少数になるから、考えたみたいよ。」
「あの二人が取引していると儲かるでしょうね。」
香奈「相当大胆にしているようよ。1年で十倍以上にもなったとか言っていたわ。それが続いているらしいわ。税金も多くて、神太朗君も時々見て押さえるようにしているらしいの。もう管理会社のレベルを超えたみたいよ。現金化比重も増やしているけど、長期保有の株も持ちたいのよ。だからドイツでも出資したと思うわ。」
「香奈さんも香奈ファイナンシャルを作らないの。」
香奈「作っているわよ。ジブトラストにそんなに預けるわけにもいかないしね。正子さんが作った時に、同じように作ったのよ。でも私も歳だし、長府や諏訪などでのビルや不動産の再開発に回したり、一族の若い人に貸したりしているわよ。瑠璃や徹彦たちにも少しづつ出資させているわ。マリアさんもヨーロッパの子会社を作ってくれたのよ。」
「菊子さんも借りたみたいだね。菊子金属の株も持って貰ったといっていたわ。取引はしないの。」
香奈「そんなにしないのけど、あまり暇になるとやっているわよ。」

香奈ファイナンシャルもそろりと成長

マリアも稼ぎ出して、マリア株式会社のお金も増えてきた。マリアは、日本で得られた収入の一部を国内の香奈ファイナンシャルにこれまでも少し出資していたが、単なる財産会社だったマリア株式会社のお金に国内の香奈ファイナンシャルがお金を同額以上追加して、香奈ファイナンシャルの海外子会社を作り、運用する事になった。マリアの運用している金額の三分の一程度の運用枠になるように、香奈ファイナンシャルが調整して、出資した。マリアの稼ぎも増え、子会社でのマリアの取引の処理をして貰っている人も増え、その人たちの運用枠も必要となった。香奈ファイナンシャルの海外子会社がジブトラストに運用を委託する形だった。その人たちは、香奈ファイナンシャル海外子会社のヨーロッパを作ってくれて、経費は各地のジブトラスト子会社でのマリアのチームの稼いだ運用利益と比例配分とし、税務などの管理もやってもらった。運用利益の10%はマリアチームの特別取引部で働いてくれる人に渡した。香奈の子供たちや孫まで、ジブトラストからの配当が入り、管理会社への出資も限界になってきて、ある程度の預金を持った後は、子供や孫たちも香奈ファイナンシャルに出資するようになった。配当なんかは、なかったが、香奈の個人名義の資産が香奈ファイナンシャルに集まっていた。カミカミファイナンシャルとは違い、マリアが、ジブとしてヨーロッパでの先物取引をする時に一緒に、香奈ファイナンシャルの運用を行い、香奈が思い出したように取引する程度で、取引では十倍になる事なんかはなかった。香奈ファイナンシャルは、一族の人への支援や長府や諏訪などの不動産の再開発もし、香奈オフィスが大きな鉱山や資源利権を取る時に、瑠璃の望みで増資したり、合弁会社を現地資本や現地の政府や国営企業などと作る時などにも増資していた。

香奈ファイナンシャルは、現金化の比重も高くしていたが、香奈個人が持つ株も移行していったので、長期保有の株もあった。香奈の個人会社で、金庫のような会社だったが、それでも、マリアの先物は、高水準だったし、香奈の株式投資も儲かる時は、時を逃さず、投資する手法は、変わらなかった。怪しげなボロ株を独特の情報と感覚を基に買って、売り飛ばす事も好きだった。ココも時々にゃーと鳴いて香奈に買わせた。信じられない安値になると買いを検討する癖は続いていた。香奈は、個人的には、余程気に入らないと株は保有しなかった。香奈とマリアだけで運用する運用会社なので、取引も自由にしていた。現金は、倍々ペース以上に増えていったし、配当による収入は、カミカミフィナンシャルよりも高かった。貸したお金も長期保有株のおまけ付きで返ってくる事もあった。資産そのものは、出資している企業が大きくなれば、急速に配当も増え、資産規模も急速に増えた。余裕の資金だけで運用していたので、配当などは、出さなかった。税務処理を税理士に頼んでいる程度であった。カミカミファイナンシャルも香奈ファイナンシャルも税務処理や資金の管理は、管理セクションが担当していた。

ジブトラスト本体そして子会社の内部保留が増えていった。

世界各地の子会社の人たちも、ジブトラストの本社によく、来るようになった。テレビ会議だけでなく、たまには、実際に顔を合わせて、打ち合わせする必要もあった。海外の人と会ってみると、香奈オフィスに働いていた人の子供や孫が多かった。神太朗は、その人の可能性を見れたし、色々と情報も入ったし、現地オフィスの人も、本体の考え方がよく判った。ゲストハウスで、一晩過ごすと元気になって帰っていった。財団や乳幼児施設まで、見学して帰る人もいた。現地での利益配分は、税引き後の利益の10%は、現地法人や子会社が自分たちの自己裁量で自由に使えた。利益の配分は、本体の指示で、株、不動産と貴金属特に金にわけて、配当準備金と配当にわけた。得られた利益も投資する事も増えていった。香奈オフィスからの人が元気で活躍している内は、香奈とは長年の付き合いもあり、簡単だったが、現地の子会社も人が変わっていった。海外との繋ぎ役の香奈もついに行かなくなった。しびれを切らして、向こうからやってくるようになった。海外の子会社も一つのジブトラストのようになっていた。ジブトラストは、良く言えば、人を信頼して、信頼された人は、自由にやれる会社だった。本体から人も来なかった。正確に報告していれば良かった。神太朗は信頼できる人と思えば、子細な事は云わなかったし、神子は海外には、大まかな指示は出すが、細かい指針は示さなかった。時々この会社の株を買えとか、指定した株を売れとか言う事はあったが、稀だった。正子は何にも理由は言わず、金額と数量と売り買いだけの先物の指示だけ出すし、神之助も同様だった。悪く言えば、報告さえ正確に出していれば、まったく放って置かれた。それに孫会社や関連会社に連絡したら、終わりと云うような事も増えてきた。それにヨーロッパの人は、幻のマリアに会いたがった。

ジブフランスもジブドイツから独立した。ジブでは珍しく、相場ではなく、製薬のフランス子会社に共同出資した時にできた子会社だった。ジブドイツは運用利益は少ないし、相場に強い人は、孫会社を作ったり、自分で会社を作っていた。ジブフランスは、尚更、相場関係は弱いジブの子会社だった。数人のディラーは、運用枠を貰い孫会社を作っていた。マリアには、ジブフランスにもマリアフランス株式会社を作り、専用の先物口座を持ち、特別取引部の部長となり、マリアは利益を出していた。やがて香奈ファイナンシャルフランスも同じように出来た。ジブフランスは、ジブ本体と共同で保有している製薬のフランス子会社の役員を出したり、企業相談や情報を集め、企業の株を長期的に保有しているジブの子会社となった。相場に強いニューヨークやロンドンでも、強い人ほど孫会社を作り、直接手数料を貰うようになったので、子会社は、そのものは、それほど忙しくもなかった。

ジブブラジルやジブチリは、聖子の快適が現地に会社を作った時に、ジブトラストも出資した時に、現地の快適社内に間借りするように作った。快適への出資からの配当に少し金を足して、ジブ100%の出資の会社になっていた。快適が成長し、企業を増やし、増資するにつれて、配当も貯まり、専任の人も出来た。やがて調査だけでなく、現地の企業にも少し出資するようになっていた。ジブブルガリアも同様だった。快適が大きくなるにつれて、このように市場外でのジブトラストも増えてきた。利益は出ていたが、香奈も高齢だったし、香奈に会い、香奈以外の次世代の人の考え方を聞くために、向こうからやってきた。香奈が元気だったし、神太朗は出来るだけ応対していたが、正子、神子、神之助は取引では凄い的確な指示を出すが、あんまり喋らないし、直ぐに自分の仕事をするために、引っ込んでしまう。マリアはひとりで黙って取引している。香奈はまたまだ好奇心も強く、色々な話を聞いて、時間が取られた。香奈オフィスで、働いていた人の子供や孫なら、話も弾んでいた。国に帰ると又違う人が来たり、孫会社の人も来たりした。ジブトラストが、長期に株を保有している会社の人も挨拶に来た。

ジブトラストは不気味に利益を上げていたが、本体としての利益は、1兆五千億程度を超えてから、少しずつ増えていっただけだった。子会社や孫会社からの配当は押さえていた。香奈や役員の報酬は、ジブトラストの最終利益に比例するようになっていった。香奈は基本的に、運用手数料を取らなくなり、報酬として、最終利益の1%を取り、その他の役員で2%を分け合う形だった。

正子は自分の運用手数料や指導料も入り、社長としての報酬は他の役員より、少し高い程度にしていた。ジブトラストの役員は、本体に多く、香奈と正子そして三人の子、管理セクションの部長が常務であり、新宿の事務所の所長と渋谷の海外統括部の部長が役員となった。研究センターは、陽一が常務兼センター長となっていた。三人の子も役員だったが、それぞれ、運用手数料や指導料などの名目で別にお金が入り、管理の常務が純粋な報酬としては、正子に次いで高かった。運用手数料や指導料などがあまり入らない為にそうしておいた。管理の人は、それぞれ、直属の会社の役員でもあったので、直属の会社からの報酬や配当も入った。管理セクションの常務は、ごきげんソフトの役員を兼務してジブトラストの取引システムやジブトラストのセキュリティ対策等も担っていた。

子会社システムにして、最終利益と直属の会社からの配当を含めた運用利益との差が大きくなり、管理セクション自身は運用利益に比例して管理料もとった。これは管理セクション全体として配分した。渋谷の研究センターと同様だった。結局、役員報酬だけが、実際の運用利益ではなく、全体としての最終利益計上に比例して決まっていた。香奈だけが、最終利益に比例した報酬を取り、子会社の運用利益をどの程度、配当にして、ジブとしての最終利益をどうするかは、香奈が決めていた。しかし最終利益をどのように計上するかで、みんなの基本給も決まっていたので、運用のように変動の多い仕事では準備金を取り、調整する事も必要だった。

財団への寄付は、最終的な利益の5%を最低ラインとしていたが、利益の10%を超えない範囲で、前年の財団の年間必要経費を負担するようになった。無償増資等の出資枠の拡大もあり、一千億程度に上がった配当の中から70億程度が寄付に回り、赤ちゃんスキ不動産は五十億程度寄付しており、財団の年間必要経費が約八百億程度だった。財団には、ジブトラストの関係する会社からの寄付も入り、財団の基金は増える一方だった。香奈、俊子、真理、恵などの子供世代は配当の1割を目途に寄付していたが、孫世代は、正子を除いては、まだ少なかった。正子は神懸かり的な運用で、ジブトラストの株を特別枠として無償配布して貰っていたが、やがて三人の子も特別枠として3億程度の無償増資の処置が取られた。その他にも通常枠として枠拡大の時に三人の子や正子は、ジブトラストに出資していた。正子と三人の子は、ジブトラストの株数も多かったので、受け取った配当から一割程度の寄付をしていた。有希は産婦人科小児科病院への寄付が中心だった。ジブトラストから財団への寄付は増える事もあった。

ジブトラストでも本体で保有する現金が三兆になるまでは、多くは、本体へ直接に資金を送金して貰っていたが、本体に保有する現金が三兆を超えると、子会社の利益の半分程度は、上場や非上場を含む株に出資させたり、不動産に投資させたり、子会社や孫会社の配当準備金としておいた。残りは、利益として計上して、配当としていたが、ジブトラスト本体が受けるべき配当の6割程度は金融センターに送金させ、一部はジブトラストの増資とした。金融センターで保有する現金は為替運用させていた。そしてその残りを日本に送金させていた。ただ送金の手続きも金融センターがタイミングを見て、為替処理していた。海外のジブ子会社には、ジブトラスト以外でも経営陣とか働いている人たちも少しは出資しており、ある程度は、配当をしていた。海外の子会社が配当準備金として持っている金額は増えていった。そして次には孫会社でも配当準備金は増えていった。

快適交易は、海外快適のコーディネーターとして成長

和美の息子たちも、大学を出て、快適交易に入り、和美の手伝いをするようになった。快適交易は、快適洋服の軽工業部門を発展させ、瑠璃とも協力して、未開の土地でも資源の可能性を見つけ、世界各地の快適洋服の工場付近は、発展するようになった。快適洋服の衣料も製造場所や周辺でも売れるようになり、快適洋服の農園や養殖場で採れた食材も、日本や欧米に輸入せずとも、現地で消費できるようになった。ヨハネルもマルトも世界各地の未開の土地や僻地を飛び回り、発展させ、快適洋服やその関連会社も大きく伸びた。何しろ元々消費が少ない所だったので、伸び方も大きかった。快適洋服がエジプトの子会社の周辺事業を整備している時に、現地資本の代表の娘、パトラッシュと知り合い、ヨハネルは結婚した。マルトも、ギニアに快適洋服の工場を作る時に、現地資本の代表の娘アルルと知り合い、結婚した。和美は、二人の娘が現地の上流階級の娘と知り、自分の事を思い出し反対したが、二人に押し切られた。パトラッシュもアルルも、実家は、現地で大きな家を持っていたが、ヨハネルとパトラッシュそしてマルトとアルルにも、敷地内の家に住むように言った。ヨハネルとパトラッシュそしてマルトとアルルは、海外には良く一緒に出かけていた。パトラッシュとアルルは、フランス語も英語も出来るマリアとは良く話をするようになった。

年間中絶件数は4割近く減った。出生率も少しずつ上がり始めた。この世に生まれたいと思う子供たちの思いが、神の子たちの背中を押した。ただ小児科病院で、短い生涯を難病で亡くなる子供たちもいて、その子供たちへの治療や病気の研究の支援も始めていた。製薬の作った、遺伝子修復酵素やまだ解明できていない物質の治癒能力でも、効果が及ばない病気もあった。敷地内の人が病気にならない事の原因もよく分かっていなかった。

敷地内の謎

製薬は、敷地内で徹底的な定期検診を行っていたが、みんな益々若く、老化現象もほとんど認められなかった。友恵自身も若くなっていった。ただ敷地外に出ると疲れやすくなる傾向があった。友恵が、90才になって、敷地外の製薬の病院で、精密検査のために、1週間入院していた。最初はほとんど老化もなかったのに、1週間後の細胞検査では、細胞が老化している事が判った。友恵自身も疲れ果てて、10日の予定を切り上げて、家に帰り、休んでいると、結果が示された。家で静養していると元気になった。真一郎の研究所で細胞検査すると、老化は消えていた。友恵は、敷地外に滅多に出ないようになった。敷地内の病院は設備を拡充して、病人もいないのに、病院は大きくなった。真一郎の研究所でもマウスの寿命が敷地内の水を与えるとどんどん伸び、通常マウスよりも5倍も伸びた。ミネラルウォーターだけでも2倍伸びた。効果は上がっていた。密かに癌の新薬も効かなかった末期患者を製薬の病院から転送して、敷地内の病院に転送すると、癌の新薬の治療効果は格段に上がり、完全に治癒した。たまたまこの患者は、女をよく騙して、金を貰って遊び回る男だったので、治癒していく過程で、よく金縛りにあった。そのため、直ぐに製薬の病院に再び転院し、再検査をした所、癌は治ったものの、風邪を引き、あっと云う間に死んでしまった。なぜ風邪を引いたのか、そんなに簡単に死んだのか原因は不明だったが、製薬の敷地内の病院への転院は、あまり行われなくなった。

敷地内の人へのアンケート調査を行うと、外出して疲れ易くなるのは、90才以上の人が多かった。中には80才でも疲れやすくなる人もたまにいた。みんな敷地内に帰ると元気になっていた。90才以上で3日以上、敷地外にいると、細胞自体が老化し始める事も判った。友恵は90才になっていたので、自ら実験台になった。友恵は、3日後に老化現象が起きはじめ、製薬の敷地外の病院から敷地内の病院に転院し、静養していると、敷地内に帰ってきてから3日後に、細胞は又活性化し始め、1週間後にも元に戻った。すべての結果は、香奈たちに報告された。ただ人によって差はあるかもしれないと言っていた。

その後、友恵は敷地内の病院を大きくして、設備も充実させ、まったくの自由診療にした。色々と自由が利いた。前回の失敗もあったが、慎重に患者を選び、密かに重症の患者を、新しい実験的な医療を行うと言って、同意を貰い、この敷地内の病院に転院させ、薬と言って敷地内の水を飲ませた。結果は治る人もいたし、治らない人もいた。水以外には薬は同じなのに、症状の似た患者でも異なっていた。理由は分からなかった。ただ時々、敷地内の病院には、患者が入院するようになった。製薬では治った人について詳しく調査していた。その後、やはり、風邪を引いた程度の軽い疾患で直ぐに死ぬ人も相当いたが、長期間生存している人も少しはいた。この事は製薬や病院の数人しか知らない極秘事項で、敷地内の人達にも伏せておいた。

友恵は、美佳と真智子の90才以上での行動も調べてみた。調べてみると、美佳と美智子は、95才と97才で東南アジアのリゾート地に7日間、5日間出かけていた事があった。二人は、100才を超えても、度々3日間ほどの国内旅行もしていた。

香奈「怖い話だよ。もう敷地の外には行けないね。」
「そうだね。お義母さんたちもここで静養していれば良かったのかもしれないね。」
香奈「友恵さんも、ここの病院をもっと大きくして、設備も充実させると言っていたよ。有希さんも年にも拘わらず、時たま会社に行っていたけど、疲れるとか言っていたよ。もう行かないようにすると言っていたよ。」
「でもお義母さんは、90才を超えてからも美佳おばさんと、よく旅行に行っていたよ。元気だったよ。」
香奈「それもいけなかったのもかもしれないよ。元々元気な人たちだけど。人によって差はあるのかもしれないと言っていたからね。友恵さんは、1週間入院していると老化していたらしいよ。変化がないのは、3日以内だって。」
「そんな事を聞くと本当に外に出かけられないわ。香奈さんも80才台では時々海外に行っていたけど、90才超えたら行かなくなったね。」
香奈「私は単に億劫になっただけだよ。疲れやすくなるのは、単に歳のせいだと思っていたよ。」

老人たちの暇つぶしから、三次元カメラが誕生

鉄鋼を辞めた、健太郎や健次郎は、暇を持てあましていた。経済研究所も作ったれども、やっぱり机上の空論に過ぎない気もして、気分が乗らない。化学を辞めた洋治、資源開発を辞めた徹や機械を辞めた勝たちも同様だった。洋治は、まだ敷地内を元気にランニングなどをしていた。ランニングの途中に見つけた大きなカブトムシに興味を引かれ、細かい観察をしていた。敷地内では、昆虫も大きくなっていた。観察日誌を寿クラブでまとめているとみんながやってきて、カブトムシの模様について、ああだこうだと言い始めた。時計製造の道之助はカメラも趣味だった。細かい物を拡大して見られるカメラも持っていた。道之助からカメラを借りて、カブトムシの拡大写真を撮り、観察日誌は充実してきた。道之助は現像室まで、持っていたので、カブトムシの写真を現像していた。ふと道之助は、立体的な写真を撮りたいと思い出した。変な眼鏡なんかを付けないでも、立体的な写真はできないものだろうかと思った。道之助のカズコウォッチは、非上場会社で息子の道太郎が社長でもあり、比較的無理が効いた。特殊な多層レンズを作り、立体的な写真を撮る事を思いつき、会社で特殊なレンズを作らせる事になった。勝はその話を聞き、ドイツの機械会社に連絡を取った。ドイツの機械会社には、勝は毎年のように足を運び、日本の機械よりは無理がきいた。日本の機械は産業機械が多かったし、ドイツではカメラも作っていた。三次元カメラの開発が始まった。みんな夢中になって、開発にああだこうだと言いながら、参加していった。寿クラブはいつの間にか、会社の開発室のようになった。そして三次元カメラが完成した。この写真のネガの中に従来とは異なる複数の写真が埋め込まれていた、複数の写真が調整され、一枚の写真になっていた。その写真は、カブトムシの子細な模様やツノの構造まで立体的に写しだす事に成功して、暇な老人たちは写真を撮りまくった。ドイツの機械会社は、日本の時計製造のカズコウォッチからレンズを供給して貰い、三次元カメラは、実際に市販されるようになった。

「健次郎さんたちは、この頃三次元カメラなんかに夢中になって取り組んでいるよ。」
香奈「勝や徹さんも一緒になっているよ。みんな素人のくせに、わざわざドイツの会社にも無理云って、やらせているよ。神太朗君まで、面白いとか言って、ジブトラストも、ドイツの機械会社に増資することになったよ。もうすぐ出来るらしいよ。」

カメラは、始めはヨーロッパで発売された。日本でも、商会が輸入して、販売しようとしたが、どうもデザインが野暮ったい。それにボディもゴツゴツしている。老人達の関心は、今やもっと細かい昆虫の器官まで写したいと思うようになっていた。勝はドイツの機械会社に許可を貰い、道之助と勝が工夫して、途中の薄い皮などを透視して、医療器械のレントゲン写真のように、マイクロヒントと呼ばれるもっと細かい器官まで写せるように改造してしまった。マイクロヒントは可視以外にも複数の波を出し、薄いものは透視できた。レンズを絞れば、細かい物でも見えた。そして最終的に、可視に波長変更すると云うカメラであった。

デジタル化したファイルの中には、様々なデータが含有され、一枚分のデータで細かい所まで、立体的に写真に再生できた。波長変換機能を付けると透視できるデータも付け加わった。試作機を作ると、町を歩いている女の子の裸まで見えた。あまりマイクロヒントを絞りすぎると内臓の器官の状態まで見えた。道之助は、医療機械に転換させ、内臓の表面や構造を、立体的に見えるカメラを作った。

健太郎がこんな時には出てきて、マイクロヒントは医療用だけにしようと言った。実は健太郎は、町でこっそり写真を撮って、興奮して、敷地に戻ってきた時に金縛りにあって、暫く動けなくなった。身に覚えのある老人たちもいて、普通の三次元カメラには、波長変換までの機能は付けない事にして、大きな建物などを取るようにズームアウト機能を逆につけた。目の前の大きな建物も全体的に、三次元的に把握できるように変えた。

医療用三次元デジタルカメラと普通の三次元デジタルカメラとして、寿カメラと云う会社を作り、販売しようと思った。名前が年寄りくさいと年寄りが言って、老い先短い年寄りなので、香奈と神太朗をくどき、カズコウォッチも出資し、相当部分をジブトラストと香奈ファイナンシャルの出資にして、スリーディビョンカメラと云う会社をカズコウォッチの近くに作り、ジブトラスト直属の会社にして、このカメラを売った。医療カメラは今までの医療機械を扱っている、機械、化学、製薬そしてカズコウォッチの合弁会社「スリースター医療器械」に、販売を任せた。カメラのボディは健太郎が軽量鋼板に変えて軽く、薄くした。小夜たちの意見を聞き、デザインも格好よいものに変えて売り出した。ドイツの会社はチャラチャラしたものにしやがってと思っていたが、勝との付き合いも深く、渋々変更を許可していた。

年寄りの執念と長年のコネを利かせて、若者をこき使い、このデジタルカメラは大ヒットした。売れてくると調子に乗って、CG機能なども付けて、高機能デジタルカメラとして売って、それも売れた。写真を撮れば、それのデータを使い、コンピューターで、その人の動きを自由に操る事が出来たし、アニメーションのように動かせた。年寄り達は、別の興味のものを探し始めた。カメラ会社は若者に押しつけた。道之助は頑張って、いいカメラを作り続けると言って、会長になった。道之助は、特殊レンズ研究所と云う会社を、道之助が少し出して、香奈ファイナンシャルが多く出資して、敷地内の自分の家の庭に小屋を造った。

「健次郎さんたちは、三次元カメラで成功したのに、もう別のものを探し始めているわ。今度は、ごきげんソフトで、会計ソフトでも作ろうとか言っているよ。」
香奈「道之助さんは、カメラが好きだから、会長になったのよ。香奈ファイナンシャルも出資したのよ。失敗した時に困ると思ったからね。でも健次郎さんたちは、あまり活躍出来なかったから、今度は自分たちが目立つ事をしたいのよ。勝も昔のカラクリ人形が洋也さんの蔵にあったのに興味があって。ロボット作るといって、小屋作ってなんかやってるよ。ロボット工学研究所とか云う大層な名前の研究所らしい。徹さんは未来資源研究所とか云う名前の会社を寿クラブの中に作ったよ。洋治さんは、健康食の本を作るとか言ってるらしいよ。(貴方も100才まで生きられる)と云う雑誌で(朝、野菜を食べると元気になる)との連載が好調なんだって。」
「みんな元気だものね。何かしないと退屈よね。でもカメラ会社は好調なんでしょう。」
香奈「調子いいらしいよ。大分儲かっているわ。ジブトラストや香奈ファイナンシャルも、もう大分元手は取り返したのよ。今は年寄りじゃなくて、若い人たちでやっているわよ。でも男心は秋の空だから、すぐに新しい事を追いかけたいのよ。」
「そうだよね。男はどうしようもないわね。友貴の馬鹿も、こっそりアダルトサイトみているから、健次郎さんたちの下働きをさしているわ。」

上場企業では、いくら元気でも、そんなに会長や役員の座にしがみついている訳にもいかず、敷地内では、高齢者たちが新しい企業や研究所を作り出した。敷地内ではみんな元気だった。洋太郎は、紡績に行く事は減ったが、愛や教育が大切と相変わらず強調していた。

ロボット工学研究所の誕生秘話 

勝は、デザイナードメタルや特殊レンズを組み合わせて、ロボットを作った。からくり人形は、極めて小さいエネルギーで簡単な仕事をしていた。初めは、普通の軽量鋼板で普通のロボットを作り、単に蓄電装置を付け、小屋の掃除をさせて喜んでいた。ところが、瑠璃が文句を言ってきた。電気代がかかりすぎる。年寄りの道楽なんだからもっと静かにしたらと言ってきた。勝は、大人しい性格だったが、当たっていただけに、頭にきた。せこい事を言うなと言った。瑠璃も負けずに言った。箒とちり取りが、あればできる事に大量の電気を使う事は、地球環境の為にも良くないと言い返した。

それが、勝の本格的なロボット研究に取り組む切っ掛けとなった。ソーラーと蓄電装置を組み立てようとも思ったが、デザイナードメタルの話を聞き、太陽熱で発熱したエネルギーを蓄電装置に貯める金属は出来ないかと菊子に言った。発熱する金属は出来るが、出来た熱を伝達する事を、金属に求める事は無理だと思ったが、一応研究に聞きますといった。菊子は、このおっさんも惚けたと思っていた。しかし、菊子金属で甘辛に云うと、甘辛は面白いと言って本気になった。太陽熱で発熱しやすい薄い金属の下に発熱しにくい金属を重ね、熱の移動を起こし、それを電気抵抗が低い金属で、メインの蓄電装置や各部門の蓄電装置にエネルギーを貯める特殊金属の板を作った。いわばソーラー機能と低エネルギーで動ける金属だった。ソーラーパネルではなしに、金属そのものが発電出来た。もっともやたらとコストはかかったが、あらゆる機械や自動車の歴史を変える可能性があった。余りにも簡単に出来た。新しいブラジルの鉱山の鉱石から発見した素材ブラジルA、Bで出来た。詳しい研究はこれからだった。一方勝も無茶な注文だけを言っていたわけでもなかった。大容量の蓄電装置やマイクロ蓄電装置そして低エネルギーシステムのロボットとなった。そして道之助に言って低エネルギーで考えられる元素に対応出来るレンズシステムを依頼した。道之助は、香奈オフィスや菊子金属で分かっていたり、可能性がある元素に対して、反射したり、吸収出来る波長を探し、その波長を出す装置を考えた。そして複合的なレンズシステムにして、資源探査ロボットとした。位置確認システムも搭載した。

電気代なんか問題ではない程、金は必要だったが出来た。暇と金と元気があった勝だから出来た。瑠璃は、又注文をつけた。瑠璃は注文の多い女であった。サンプルも採らないと確認出来ない。細いドリルや真空で吸い込む装置もつけた。勝は、もう面倒くさいので、出来上がったロボットの2台目以降は、機械に作らそうとした。コストとか面倒くさい事を言いだした。菊子金属の中にロボット工学研究所の作業場も作った。発展途上だった菊子金属にも、借り賃をはらった。真理に頼むのも恥ずかしく、香奈に頼んで、勝のお金を少し出して、ほとんど香奈ファイナンシャルが出して、毛利ロボット工学研究所と改名した会社とした。機械から出向の形で人も来て貰った。取りあえず三台作った。香奈の会社間での売買だったので、値段も適当だった。ブラジル、ギニアそしてエジプトの鉱山で試験的に探査し、幾つかのサンプルも採った。

ギニアンX、エジプシャンYそしてブラジルA、Bの所在や埋蔵量も分かった。3つの鉱山には、比率は違うがそれなり、分布している事も判ってきた。細かい研究は、これからだったが、一種の混合体で作用していた可能性も出てきた。菊子金属では、成分組成も分かり、精製微粒子から純品への切り替えも考えていたが、更に細かい研究が必要になった。発電する金属もこれから更に研究が必要だった。瑠璃が拾った鉱山はまだまだあり、作業を更に進める事になった。

ロボットの有用性も判り、機械も真剣になり、毛利ロボット工学研究所には、菊子金属、機械そして香奈オフィスも少し出資し、香奈ファイナンシャルがほとんど増資して、本格的なロボット製造ラインも機械の東京工場の中に作った。鉱山の探索用ロボットを作り出した。今までは鉱山の作業員で掘っていたが、堀尽くした旧鉱山なので、坑道が狭いとか、地下深いとか問題も発生してきた。安く、掘るために採掘作業用のロボットも作る事になった。完全自動化と言えないものも、かなり機械化された鉱山になり、作業性も上がった。香奈オフィスは、利権や堀上がったものだけの売買が中心だったが、少人数で鉱山の運営も出来るようになった。それを知った各鉱山も採掘作業用のロボットを欲しがるようになった。瑠璃は、高い値段で売ってねと注文をつけた。高くても売れるようになった。鉱山用のロボットだけでは、台数も限定されていた。しかし出資していた機械は出資していた分程度は、回収しようと多様な製造現場からの要望を聞いてきた。そんな複雑なロボットだけではなく、作業現場の要望に合わせて、若い技術者も参加して、作り出した。機械は、時がくれば機械に吸収する積もりだったが、香奈ファイナンシャルの投資しているお金も多く、鉱山探索ロボットは、企業秘密の固まりだった。営業も香奈オフィスや菊子金属以外では、機械が窓口だったので、そのままになっていた。それに高かったので、それほど売れないと思う気持ちもあった。売れないと思うものが売れ、毛利ロボット工学研究所のスタッフも増え、あっと云う間に、一つの機械会社になった。

快適農作物研究所の誕生秘話

遺伝子研究センターでは、人への応用研究がメインになっていったが、畜産類のチームも農作物のチームも細々と研究を進め、全遺伝子の意味を探ろうとしてた。これらのチームは、交配や遺伝子操作が出来た。美味しい肉の牛や豚の研究も進めたが、直ぐに丸々太る豚や牛も研究していた。悪条件でも病気にならない豚や牛も研究していた。米やトウモロコシそして麦についても研究は進み、美味しいものや収穫量の多いものそして悪条件でも育つ品種についても研究が進んでいた。聖子は農園を持ち、果実も栽培していたので、やいの、やいのと急かし、美味しく、収穫量のある品種を交配で作って貰い、既に栽培していた。

「この間、千恵が安いよスーパーに行って、オレンジを安売りしていたので、買ってきたの。安いのに美味しいのよ。快適農作物研究所の自然交配で快適農園で栽培しましたと書いてあったわ。遺伝子研究センターに頼んでいたのでしょう。いつの間に、快適農作物研究所なんてできたの。」
香奈「聖子ちゃんが農園作って、果実を栽培しているから、最初は、研究センターも協力していたのよ。でも注文も多いし、技術指導料も少ししかくれないし、研究センターも渋い顔をしたみたいなの。それに農園でも細かい技術や研究も必要になって作ったらしいよ。研究センターとも一応協力しているのよ。色々面白い事もしているらしいよ。おにぎりみたいに大きいお米とか大きなトウモロコシなんかも出来たらしいよ。研究センターでも遺伝子を調査したいといって貰ったらしいよ。」
「それは美味しいの。」
香奈「美味しくはないみたいだよ。聖子ちゃんもなんにも言わないよ。」

快適農作物研究所は、大きく美味しい農作物を研究

快適農作物研究所は、実用研究をしていた。水利条件や気象条件を調べ、もっとも経済的な品種を決めた。嗜好性も考えたが、比重は、大きくなかった。世界各地で叩き売って、少しでも日銭を稼ぐ。グダグダ理屈を捏ねているよりも、金を稼ぐ。それが聖子の考えだった。それでも研究所は、時々下らない研究をして遊んだ。種子に放射線を当てて、おにぎりほどの米粒の米や木のようなトウモロコシを作った。聖子は、食べられるの、美味しいのと聞いた。驚くだけと思っていた研究チームは、慌てた。ほんの遊びの積もりだった。それはこれからですといった。結局安定的に収穫量の多い農作物について研究する羽目になった。果樹の栽培条件や品種改良の研究だけをしていれば、アダルトサイトでもゆっくり見れたのに、忙しくなった。これを自業自得といった。それでも子供の腕程大きいバナナが、出来た。澱粉質が多く、不味かった。大きくても不味ければ、売れないと聖子は不機嫌だったが、転んでも金を掴む聖子は、食品工場を作り、乾燥バナナにしたり、バナナピュレーにして、糖類も入れ、バナナフレークにして、バナナ粥の原料とした。水を加えるのが面倒くさいと言う物ぐさもいて、2軸延伸して、そのまま食べられ、日持ちもするバナナ菓子を作った。バナナも少し小さくすれば、味もよくなった。それでも普通のバナナの倍程あった。一本でお腹が一杯になるバナナとして、本当にバナナの叩き売りを安いよの店頭でした。バナナ菓子も売った。日本より海外で売れた。聖子は、どこで売れても良かった。売れる場所で売って、嗜好も現地に合わせて替えていった。

聖子の欲ボケが、アフリカ快適農作物研究所を作り、香奈ハイテクが更に進歩する

味をしめた聖子は、ボーナスを珍しく研究チームに出し、二匹の鰌というか、バナナと云うか手間が要らない農作物を研究させた。研究チームは、とうもろこしを選んだ。木のように大きくなった。とうもろこしも子供のような大きさになった。ブラジルの山間部で栽培する事にしたが、聖子は、更に注文をつけた。ただのような値段で買ったアフリカの乾燥している土地でも、成長できるように出来ないかと注文を付けた。ブラジルでは高温多湿の条件で、研究していた。そこでアフリカの事は、アフリカでとか云って、アフリカの連中に押しつけた。押しつけられたアフリカは、ブラジルから研究員を誘い込み、遺伝子研究センターとも協議して、研究所を作り、アフリカの気象条件に併せて、研究が進んだ。乾燥した土地でも大きく育つとうもろこしを考えた。それでも多少の水は、必要だった。雨乞いダンスをするロボットの注文が、勝の研究所にあった。三日三晩踊ると雨が降るらしい。勝は、真面目な科学者なので断ろうと思った。それでも考えた。菊子金属と治部レーヨンに話をして、細い金属の針金と海水を淡水化する高分子膜をチューブ状にしたものを組み合わせて、海水に浸し、金属がスポンジのように水を吸収して、それをトラックで運び、水分を含んで太くなった針金だけをロボットが内陸部で巻き取りながら、その水分をロボットが踊るような格好で、水を含んだ金属を押し、畑に水を散水するようなシステムを考えだした。トラックの中には、チューブの外膜に粗塩が残った。チューブも針金も何度でも使えたし、ロボットもソーラーで発電していた。トラックまで、ソーラーと一部発電する金属を使い、少量の燃料で動ける究極のハイブリッド車を作った。思った程費用は、かからなかった。粗塩も、内陸部では貴重で、直ぐに乾燥して役にたった。調子にのってトラックも短時間なら空も飛べるようにした。海で海水を取り、内陸部で少量の水を散水する雨乞いロボットが踊るシステムが出来た。実地実験をすると本当に雨まで降った。効果を確認す為に何回も行う必要があった。少量の水で十分なようにしていたので、とうもろこし畑には、大きなとうもろこしができていた。

聖子「勝おじさん、雨乞いロボットでとうもろこし畑は出来たわ。ブラジルで栽培したものよりも美味しいのよ。大きなとうもろこしが実ったの。ダンスで雨が降るのね。」
「そんな事は、偶然だよ。降らなかった事もあったし、散水システムも作動したと報告が来ているよ。」
聖子「アフリカの研究所では、少量の水分があれば、育つようにしているから、どっちの効果かよく判らないと言っているわよ。来年は、もっと多くの場所で試験してみようね。」

苦心の散水システムよりも、雨乞いロボットのダンスの方が有名になったものの、散水システムと雨乞いロボットのお陰で、多くの場所で大きなとうもろこしが出来るようになっていった。雨乞いロボットは、三日三晩踊りながら少しずつ散水して、肥料も蒔いていた。天の恵みを得るシステムは何故か、現地にも好評だった。

高分子膜と水を保持する金属では、長時間海水に浸けて置けばよかった。治部レーヨンも少しは、勉強した。海水の淡水化用の高分子膜も複層にして、得られた水も最終的に濾過して、より純度の高い水も出来るようにした。簡単なソーラーの発電装置や蓄電装置も付けて、淡水化装置もできた。

菊子金属も水を吸収する金属を改良した。強度も付け、吸収と防水性を生かし、パイプ配管に使用されたりするようになった。パイプの中を通過するだけで、水分が吸収された。逆に軟らかくして、スポンジのような金属にして、タンクの中間層にいれ、防水性と破壊強度を高めたり、合成金属にして自由自在の形のパイプが出来るようになった。水ではなく、色々なものを吸収して、金属接着剤のようなものも出来た。

老人たちの暇つぶしが発端で、ついに可視化分子顕微鏡にまで進歩

製薬は、製薬自身が作った抽出液の成分を、取りあえず優先して調べていた。フランスの製薬の子会社の研究チームは、今までの組成中心の探索ではなく、分子レベルでの状態や結合構造に差があると考え、可視化分子顕微鏡を思いついた。医療用三次元カメラを製造した「スリーディビョンカメラ」に連絡も取ったが、道之助は正直にモデルはドイツの機械会社と答えた。そしてドイツの機械会社、日本のスリーディジョンカメラ、日本のカズコウオッチの三社に、協力を要請して、開発が始まった。巨額な開発費がかかり、ジブトラストにその開発のための資金を要請した。三社は、ジブトラストと合同して「可視化分子顕微鏡製造会社」と云う会社を作り、3社はほんの少し出資し、ジブトラストが大半を出資して、研究が開始された。

これには1000億の経費と、2年の歳月がかかり、可視化分子顕微鏡が完成した。量産化も難しく、最初の一台は、フランスの研究チームが買い取り、続いて日本の製薬に一台、遺伝子研究センターにも1台、そして後はアメリカの製薬の子会社の研究室に、日本の製薬と真一郎の研究所にもう一台納入される予定であった。製造と販売はドイツの機械会社に任せた。「可視化分子顕微鏡製造会社」は、利益の7割を貰う事になっていた。ドイツの機械会社は、年間5台しか出来ない顕微鏡と云う触れ込みだったが、さっさと3台も作った。そして原材料費に20億、人件費等の経費に15億かかると云って、一台100億で販売する予定とも云い、恩をきせて、製薬などに70億で売った。

これを使って調べると、意外な事が判った。フランスの山間部で栽培された薬草から作った抽出液は敷地内の水に似て、細胞活性化作用もあったが、アメリカの山間部で栽培された薬草からのものには弱かった。病気への治癒作用や遺伝子修復効果では両者では差がなかったので判らなかった。水の中の細かい分子の立体構造も少し違っていた。幾つかの水分子がリング状に輪を作り、その輪の長さと分岐構造が関係するらしいとも判った。分岐構造が長ければ、活性化作用が生じ、リング構造が治癒作用に関係するらしい。分岐構造はそれほど固い構造ではなく、切れやすくなるが、リング構造は比較的安定のようだった。漢方薬の抽出液で濃縮しないものが、効果が弱くなるのは、リング構造の内部に漢方薬の薬理物質が入るためだった。ただどうして、水分子がリング状や分岐状になるのか、なぜ治癒効果や活性効果があるのか、作る方法があるのか、まだまだ判らない事は多かった。

ついに難病1が治る

遺伝子研究センターでも、難病の子供の遺伝子解析を行うと、正体不明と言われていた部分に、遺伝子修復作用を阻害する物質を作る部位がある事が判った。生成するのは、通常の体内物質であるアミノ酸からなるペブチドであるが、立体構造が特殊な物を作っていた。

このペプチドを難病1ペプチドと名付けた。難病1ペプチドが遺伝子修復酵素の活性部位に吸着され、修復酵素が機能しなくなっていた。これが原因ではないかと考えられた。遺伝子修復作用を阻害する難病1ペプチドの遺伝子の中の生成部位の読みとりは、通常の子供では読みとらないようにブロック因子が入っているのに、細胞内に特殊な因子が出来て、ブロック因子と結合して、ブロック因子の機能を低下させていると健行は言った。このような因子が体内の細胞にはあると言った。実際、遺伝疾患の子供たちには、特殊な因子があるようだった。ただそれが何かは健行にも判らなかった。ただ遺伝子修復酵素がある程度存在すれば、これらのブロック因子と結合する特殊な因子も機能を低下させる事はわかった。

フランスの製薬の子会社と遺伝子研究センターが、協議し、研究結果を検討した。難病1ペプチドは、リング状の水分子の輪の中に入り、難病1ペプチドが欠乏して、難病1ペプチドの生成が促進させ、かえって難病1ペプチドが過剰に出来ていた。フランスで薬草から作った薬草抽出液の濃縮物に強力な磁場を与えると、分岐構造が促進させ、活性化の作用が上がった。リング状の水分子の量は変わらなかった。そして難病の子供にこの水を与えると症状が改善された。やがて問題の難病1ペプチドも量も減っていた。分岐構造の水分子は、難病1ペプチドがリング状の水分子に吸着する活性場所に絡みつくが、難病1ペプチドのその他の部位には差がなく、難病1ペプチドが減ったよとの信号は出なくなるので、その生成を促進されない。やがて、リング状の水分子が、じっくりと遺伝子修復を始めていた。分岐状の水分子は細胞内のブロック因子と結合する特殊な因子を不活性させるようだった。ただまだこの因子の特定は出来なかった。遺伝子修復酵素単独で、特殊因子を不活性化させるのではなく、分岐状の水との共同作用だと修正された。

製薬はフランスの薬草から作った抽出液を使った薬を協力な磁場においた。ここで手違いが生じた。研究員のマリアンが、夕べ、彼のヤリタイノに2時間も激しく突かれ、ボーとなって、一度濃縮された抽出液を使う予定を濃縮していない抽出液を使った薬に磁場をかけてしまった。それが効果を発揮した。難病の子供はみるみる治っていった。別の患者にも同じテストをした。今度は、始めの計画通り、一度濃縮された抽出液を使った薬に磁場をかけた。症状は緩和されたが、前の薬よりも効き目が弱かった。マリアンは、ボーとしない時は優秀な医学者なので、原因を考えた。可視化分子顕微鏡で見てみると、濃縮された抽出液を使った薬には、漢方の薬理物質が微量しかなかった。この微量成分も磁場に置かれると小分子化されて、リング状の水分子とは完全に乖離していた。これは予測された事であった。一方濃縮されていない抽出液を使った薬では、漢方の薬理物質は当然ながらあるが、前のように、リング状の水の中に入らず、細かい単分子に近い状態で遊離していた。そしてこの薬には分岐状の水もより多く発生していた。つまり濃縮させない方が効果が高い事がわかった。それに漢方の薬理物質の効果も期待できた。古来から云われていた細胞活性化の効果も出てきた。

薬を協力な磁場に置くと、薬理物質自身も電荷を帯びて、リング状の水分子から遊離して、細かく乖離していき、分岐状の水分子を増加させ、漢方の薬理物質の細胞活性の効果も期待できる事が分かった。漢方の薬理物質は、細かく乖離した状態では効果があるが、団子のように固まっていると効果もなく、逆にリング状の水分子を邪魔しているだけだった。濃縮せずに、強い磁場に置いた薬を使えば、従来の妊婦用の薬よりは、効果が増大して、難病の子供にも効果があると分かった。

ただ人の遺伝子のすべての意味が分かった訳でもなく、すべての病気に効くとは言えなかったが、薬理効果のメカニズムはすっきりと説明できた。

友恵の遺伝子を調べると、遺伝子の中に遺伝子修復酵素を阻害する物質の読みとり部位に分岐状の水分子が絡み付き、より強固にブロックされていた。すべては新しく開発された可視化分子顕微鏡の成果であった。そしてフランスの水以外でもチベットの薬草から作った抽出液でも同様の分岐状の水分子があり、協力な磁場におくと同様の結果が得られた。ただ数日で元に戻るため、今後安定的に、製造していく事が難しかったが、取りあえず磁場発生のボックスに薬を入れて、投与する事になった。

難病の子供の病室に、磁場を与えたチベットの薬草の抽出液を置くと、症状は著しく改善された。敷地内の状況と良く似ていた。その後探してみたが、分岐状の水分子は、フランスとチベットの薬草の抽出液そして敷地内の水が多かった。磁場の発生する容器に長時間おくと、分岐状の水は増え、漢方の薬理物質も効果を発揮して、難病の子供たちを治す事が出来た。

フランス、チベットの薬草の抽出液そして敷地内の水になぜ多いのかはまだ判らなかった。分岐状の水分子を新たに生成する事は出来なかった。ただ分岐状の水物質を増やす事は磁場を与える事以外でも可能ではないか思われた。こうして、研究の糸口が見つかった。

「難病1の子供たちも治ったよ。凄いね。製薬と遺伝子研究センターの力は大したものだよ。」
香奈「真一郎さんもこれでなんとか研究の糸口が見つかったと言っているよ。でも凄い経費がかかったよ。可視化分子顕微鏡の開発費用は高かったよ。製薬でも大分投資しているよ。まだ薬にして売れるわけではないらしい。でもなぜ薬が効くかは少しは分かったと言っていたよ。」
「いいじゃないの。お金で命は買えないよ。」
香奈「それはそうだね。色々と判ったらしいよ。これからは色々な分野で試していくと言っていたよ。あの可視化分子顕微鏡も売っていくらしいよ。製薬では、暫く秘密にして、独占して研究をしていこうと意見もあったらしい。でも我々以外でも、研究して薬を開発していった方がいいと神太朗君が言って、友恵さんも、製薬をその方向でまとめたみたいだよ。」

可視化分子顕微鏡の事は発表したし、製薬でもすべてを明らかにはしなかったが、幾つかの研究と治療結果を学会誌には発表した。可視化分子顕微鏡は、二十台の注文が来たし、製薬の作った薬草の抽出液そのものを薬として、売り出すように求められた。磁場発生装置は各国にあった。製薬の今までの薬に対する信頼性も上がった。機械会社も少しは量産化に成功と云って、更に10台を100億で、売った。人件費は5億もサバを読んでいたので、もう75億相当が、さやとして懐に入った。ドイツの会社はせいぜい20台売れればいいと思っていた。ただ注文が続き、年間10台と触れ込みだったので、ついに30台の注文がたまった。無理して頑張ったと云って、1年間以内に15台納めてしまった。そして翌年もさっさと15台売った。これでドイツの機械会社は大いに儲け、ジブトラストも含めて、みんな少しずつ儲かった。ただ製薬はまだ薬として販売しておらず、今は投資している段階だった。しかし薬理作用のメカニズムも少しは分かり、色々な新薬への信頼性も高まり、既に三千億近く利益が入っていた。ジブトラストも、遺伝研究センターには相当つぎ込んでいたが、アメリカやヨーロッパの製薬会社は、製薬との共同出資だったので、二千億近く利益が入っていた。

製薬の作った薬理物質の入った薬を、チベットの薬草から作ったものをアジアンミラクル、フランスの薬草から作ったものをフレンチミラクルとして売り出した。協力な磁場をかけた後、磁場が発生しているようにした強力な磁石の入った箱に入れて売り出した。これも画期的に売れ、薬草が足りなくなるかと思うほどであった。この抽出残査は、大きくなったイチコプロダクツが買い取り、飼料にして、世界各地で豚や牛を飼い、そしてエビなどの魚の養殖を始めていった。

難病は、難病1以外にも色々とあり、同様のメカニズムかどうかは分からなかった。ただある程度は、製薬の作った薬で症状は緩和された。詳しい研究が必要と思われた。色々な難病や治療が難しいとされた病気への解明が進められていった。真一郎の自宅兼研究所にも、可視化分子顕微鏡が一台納入され、敷地内の水や空気、そして敷地内の人の定期検診に活用されていく事になった。真一郎も歳を取り、遺伝子研究センターには出かけず、徹行と共に、自分の研究所で仕事をする事が多かった。製薬は完全に化学反応だけで作りたかったが、化学反応ではまだ出来ず、リング状の水が含まれる薬草も多くの場所では出来ず、日本の旧薬草園と世界各地の辺鄙な所で栽培された薬草の煎じた液から、強く出る程度だった。今までの漢方薬の効能は、このリング状の水分子に由来する所も多かったのかもしれなかった。一方分岐状の水は、チベット、フランスの一地方の薬草の抽出液、敷地内が目立って多く、その後ハンガリー、ポーランド、ブラジル、中東などの限られた地域の水からも、ある程度検出された。これは不思議に奇跡の水信仰がある所であった。ただすべてが解明されたとは云えず、敷地内の水などが、複雑な製造工程を経た製薬の薬草の抽出液と良く似た性質を持つのかなどは、まったく判らなかった。

徹行は又壮大な仮説を持つようになった。分岐状の水と遺伝子の読みとりとの因果関係を明らかにしたいと思っていた。人にそれぞれ持って生まれた可能性がある。ただその反面、遺伝子と共に、細胞内に遺伝子読みとりを制御する因子も遺伝される。その制御する因子を明確に出来れば、人が生まれついた可能性をフルに発揮できるのではないかと云うものであった。徹行は言っていた。これがうまく制御できれば、隠されている能力も自由に使えるようになり、親が後天的に獲得したいくつかの修正や経験も容易に子供は獲得でき、細胞が活性して人も若々しく生きられる。単に寿命が延びても、寝たきりになって生きていたり、体力、気力が衰えて生きているのではなく、その人の能力や親から受け継いだ能力も自由に発揮でき、若々しく、生きていけるようになるのではないかと考えていた。人の能力には限りはないし、親の因果は子供にも出るが、親が後天的に獲得した能力や知見も子供にも容易に獲得できるようになる。そうなれば、「過ちは二度とおこさない」ようになるのだ。人は進化し続ける事が出来る。それを起こす力が分岐状の水にはあると徹行はそう信じていた。

遺伝子研究センターは大きな技術料や特許料を取ったが、今までの出費も大きく、利益を上げている組織とは言えなかった。それの上、人の遺伝子は、まだまだ役割の不明な部位も残っていた。これからも研究は必要だった。ヒトの遺伝子の多くはその役割が解明されていない。そして遺伝子のかなりの部位は読みとられないようにされている。遺伝子が体内で複製されている時にも間違いは起きる。普通の人はそれが修復されていく。ただその制御が時々出来なくなる。ただそれがすべての病気の原因とも言えないが、先天性疾患の原因の一つかもしれなかった。まだまだ研究は続けて行かなければならなかった。

その後アジアンミラクル、フレンチミラクルは、色々な病気の治療に使用され、既存の薬と併用されて、治療効果が上がったと報告が続いた。

可視化分子顕微鏡も、神太朗がわざわざドイツまで行き、香奈たちとジブトラストを会わせるとかなりの株数であり、多くの株を持つ日本の機械とも話し合って、もっと安くして普及させるために、ドイツの機械会社とも話し合った。道之助は、レンズの開発をするために、敷地内に特殊レンズ研究所を作って、コツコツ改良していた。より解像度の高いレンズを作れるようになった。カズコウォッチのレンズ製造ラインも、改造させた。性能も少し上げ、値段を50億まで下げ、年に20台程度作れる体制にした。今までに、既に初期型モデルは35台も出ていた。その後も少しは注文は来ていたが、ドイツの機械会社は、そんなに出る訳がないと思い、年間5台の製造体制に戻していた。おまけに他の産業機械や三次元カメラも忙しかった。特殊レンズ等の在庫もなくなっていた。暫く製作は中断していた。そうしてニューモデルとして50億の可視化顕微鏡を発売した。既に注文を受けていた所にも説明し、了解を取って、ニューモデルに切り替えた。可視化分子顕微鏡の注文は増え、世界中に普及していった。そして色々な病気の原因や研究でも使用され、次々と研究報告が学会誌に記載されるようになった。

ジブトラストは、非営利目的だった遺伝子研究センターも抱えていた。もっとも今は、技術料や特許料も入り、製薬との共同出資による企業からの利益も考えると相当、利益にはなっていた。

ジブトラストは影に隠れながら、大きくなっていった

年間利益は、1兆5千億円を超えて、増えていった。元々ジブトラストは、商品相場や先物相場が中心で、最近為替でも利益を出していたが、子会社も含めて、実業への進出、特に低収益とされる低価格の服飾、食品や小売などに直接、直属の組織や会社として展開する事が続き、企業支援が増えてきた。利益には、管理された傾向もあるようだった。日本以外でも世界各地で子会社や関連会社にお金があり、必要な額だけをジブトラストは、配当として貰うようになっていた。もう今の総資産は不明だった、実際ジブトラストがどこで、どんな形で運用しているのかは、香奈にも全体像は、完全には掴んでいなかった。

本体としても、正子が日本の先物で、神之助が為替や商品相場で儲け、それだけで、運用利益は四千億程度になっていた。マリアはヨーロッパの各子会社で併せて二千億儲けていた。子会社、孫会社、そして関連会社なども、色々な場所で相場取引していた。株式相場は、本体保有分の調整売買をするだけでなく、日本でも世界でも子会社や孫会社に対しても、神子が調整的な売買指示を出していた。大きな下落が予想される時には、売ってはいけないランクの二番目以降の株は売っていたし、信用売りもあった。

海外の先物は、マリアは独自のスタンスだったので、保有株を考慮した正子が、依然として指示を出していたし、商品や為替は神之助が指示を出していた。子会社や孫会社での利益や配当準備金は、香奈には、報告されていた。それに実業への進出による利益や配当、上場益、成長益も相当高くなっていた。ジブトラストの表面活動は、主に神太朗であり、率いる人数も一番多かった。企業支援とビルの管理には多くの人が働いていた。ジブトラストは突然の下落とか暴落には、やたら強かった、危機がある度に膨れあがった。運用含み資産は低下する筈なのに、利益はその低下を補って余りあるものになる不思議な運用会社だった。売りの正子がそのチャンスを生かして、神子が逆に大きく儲けていた。神子は、世界各地に子会社を作り、その会社を使って、取引をしていたが、神之助が本格的に運用に参加すると、子会社は更に孫会社や世界各地のプライベートな個人会社に運用資金を出して、孫会社や個人会社が運用する形で取引していたので、実態は益々よく判らなくなった。正子、神子、神之助の利益も、本体での利益は運用手数料だったが、子会社、孫会社、関連会社では指導料として貰っていた。神子もそんなに活発な取引はしない代わりに、全体の調整も行っていた。

このような活動を支える機関として、渋谷に経済動向を研究し予測する研究センターを作っていた。神子の夫の陽一がセンター長になっていた。支援を受けていた会社は、媚びを売るために、どうでもいいような事も調査を依頼するようになった。あんまりくだらない事は断ったが、多様な情報が研究センターに蓄積した。世界中の高校生が、男では何人の女を抱いたか、女はどれだけの男のものをしゃぶっているかなんかもあった。社会調査らしきものも増えた。世界各地で幾つかの不動産も保有し、価値が上がれば、売っていた。いくつかの非上場の会社を合弁させたり、合併させたりする事も仲介していた。この頃には神太朗は新宿のオフィスにも時々行き、神子は渋谷のオフィスにある研究所と海外関係の統括事業部にも行っていた。神之助はまだそんなに外出しなかった。舞子の制御するパワーの充実が必要だった。正子はあまり外出もせず、ジブトラストにも、大体午後4時頃までしかいなかった。後は家の自室にいる事が多かった。香奈はまだ全体を監視していた。三人の子どもと正子とも、時々話し合いをしていた。マリアは口数が少なかった。神太郎の霊視もマリアの心は読めなかった。ただ暖かく見守る母のような気持ちと人は救われるものだと云う気持ちしか感じなかった。神子と正子は少し話ができた。予測とか予知を超えた、希望が二人には感じた。神之助は、マリアが苦手だった。神太郎に抱く気持ちと似ていた。神之助は人の弱さ、悪意、どん欲さそして危険性を関知し、それを計算する事はできたが、希望とか暖かく見守ると云う人は、苦手だった。そんな人は舞子だけで十分だった。

全体的な組織は、基本的には香奈が作っていたし、香奈の存在や信望による安定効果も多かった。子会社や孫会社そして関連会社と大きな組織となると、人を掌握する力がいった。正子は優秀な先物ディラーだったが、人を掌握していく自信もなかったし、そのつもりもなかった。神太朗が、その役目を担う予定であったが、まだ若かった。なんとかいう、人の財布を見るのが好きな雑誌も計測不能とか言い出した。

難病1も治り、次々と新しい難病に遺伝子研究センターは取り組んでいった。先天性でないものもあったし、製薬の抽出液も万能ではなかったが、少しは展望も開けてきた。

ジブトラスト、海外子会社網を整理する

「病気の子供を支援する事も少しは目途がついたけど、でも今度はアジアの子供たちにも広げていこうとか言いだしたよ。みどりさんが、岡崎交易のアジアの取引先を見て回った時に、子供たちを見ていて思ったらしいよ。日本もアジアなんだし、アジアでも運動して行こうとか言いだしているよ。財団では日本でも、まだすべての地域で活動していないし、まだ婚外子に対する偏見も根強い、国内での活動を充実させるべきだ、国外で活動するのは早いと云う人もいるし、もっと困っている人がアジアにいるのだから、アジアでも少しは活動していこうと言う人もいるよ。聖子ちゃんのアジアの会社の時も、そんなに活動できなかったから、私はまだ決めかねているんだよ。テレビ会議でもあんまり発言もしなかったよ。でも運用会社の海外オフィスが独立して、各地でよく似た運動を支援しているらしいね。」
香奈「私もよく知らなかったけどね。この前、来た現地オフィスの人に聞いたら、独立した後、子会社には、利益の10%を渡しているけど、少しは現地の運動に寄付しているらしいよ。みんな少し、ジブトラストと財団の関係に影響されているのよ。アメリカやヨーロッパでは教会とかによく似た運動もあるらしいよ。マリアさんはアフリカでもなんとか作って欲しいと云ってるのよ。むかしニューヨークにいたボブの孫のジョンから連絡が来て、中南米でも、子供たちを支援する組織を作りたいとか言っているよ。ボブも金出来て、国に帰って、若い女を囲って遊んでいたと思っていたら、自分で会社を作って、少しは真面目にやっていたみたいだよ。でも不定期に寄付するだけだったから、運動が安定しないので、日本の組織を見に来るとか言っていたよ。ジブトラストの中南米を作る事も相談しようと思っているのよ。イチコプロダクツや聖子ちゃんの現地法人も、関心があるみたいだよ。快適交易も社会基盤を作っているしね。聖子ちゃんの会社は南米や東欧にも合弁会社を持っているのよ。」
「又大変になるね。」
香奈「国によって、必要な事も違うからね。日本みたいな事は出来ないけど、取りあえずジブトラストが関係する会社のある国で少しずつ、運動を広げていこうと神太朗君は言ってるよ。寄付の比率も、支援している運動に応じて、新しく設定する事にしているの。金も要るけど、人も要るしね。」
「そうだね。みんなが動かないとこんな事は出来ないよね。本当に必要な事が何かを知る人やそれを行う人そしてそれを支える人たちが必要だね。できる事からやっていくしかないよね。」
香奈「神太朗君は、みどりさんを色々な国に行って貰って、組織を作っていく積もりらしいよ。金を現地に置いているのもそんな含みもあったかもしれないね。私は節税対策と資産分散のつもりだったけど。」

中国やベトナムは一応共産主義だから、財団のような組織は難しいと思っていたら、逆に向こうから、協力を求められ、都市部では日本と良く似た託児所が出来、農村部や山間部では、子供たちの家と云った、共同住宅ができた。財団ではなく、ジブトラストのジブチャイナ、ジブベトナムのオフィスが、中国政府やベトナム政府と話し合い、幾つかの企業に出資したり、現地法人と合弁で、又単独で作った。子供支援の仕事を政府から請け負い、進めていく形になっていった。

その他のアジアでも、快適と協力して、それぞれジブタイ、ジブインドネシア、と云った風に、独立した法人になり、ジブトラストの現地法人の利益の中から、子供たちの医療支援や食料援助を行えるように計画が進んでいた。製薬とも話し合い、ジブトラストの本体から、各国に医学奨学金を出して、拠点病院や地域病院を作る事も計画していた。ジブ本体も、各国に合致した企業を設立していく事も考えていた。

中南米や南米は元々資源が豊富にあった。来日したジョンと相談して、ジブ中南米を作り、ジョンの会社と合弁して、資源関係や食料関係の会社を作る事にして、その利益の中から10%を出し、ジブ中南米財団を作り、具体的な支援方法を考え、運動の進め方を検討する事になった。南米では、快適に出資した事もあり、ジブチリとジブブラジルで南米の状況を調べる事にした。

アメリカは、良く似た団体もあり、ジブアメリカが、その団体と協力して、ジブトラストアメリカが、セイブチルドレンファンドを設立して、自らも運動を進める形となった。

ジブノルウェーが香奈オフィスのノルウェーでの原油ビジネスをサポートする形でフィンランド以外の北欧を、ジブフィンランドがヘルシンキに置かれ、ロシアやバルト諸国を担当し、ジブドイツが機械会社とキクコドイツメタルをサポートすると共に、フランクフルトの市場を担当し、オーストリア、ギリシャなど国を担当していた。ジブフランスが製薬との合弁会社をサポートすると共に、パリの市場を担当し、イタリア、スペイン及びポルトガルもカバーしていた。ジブスイスは、貴金属会社も抱え、チューリッヒ市場を担当すると共に、ヨーロッパ全体をみる事にした。ジブイギリスは、北海油田関係とロンドン市場を担当し、そしてジブブルガリアを発展させ、ジブイーストヨーロッパとして、東欧諸国を担当する事とした。各国の状況を調べ、利益の一定比率を寄付する事で、各国の良く似た運動を推進していけるかを検討していく事になった。

中東は、資源開発と協力して、ジブトラストミドルイーストを作り、幾つかの資源関係企業を作り、食品会社なども現地法人と合弁して作った。別に、組織を作り、子供たちの医療支援や食料援助が中心に進めようとしていた。

アフリカは、相場中心のジブトラストとは無縁の大陸だったが、瑠璃は、アフリカでも鉱山をくず拾いし、更に南アフリカで鉱山の権利をボッタクリのように獲得していた。イチコプロダクツはモロッコで水産物や農産物の合弁会社を作り始めていた。快適洋服や快適交易もアフリカの幾つかの国に進出していた。ただ企業としてまだまだ小さかった。マリアは、ギニアに快適洋服の現地法人の中に、ジブギニアを作り、瑠璃の南アフリカのオフィスの中に、ジブ南アフリカそしてモロッコのイチコプロダクツのオフィスの中に、ジブモロッコを作り、エジプトの快適洋服のオフィスの中に、ジブエジプトを作ろうと提案した。ヨーロッパの子会社はアフリカでの事業も行っている会社にも出資していた。マリアの提案した所に、ジブトラスト本体とジブドイツ、ジブイギリス、ジブフランス、ジブスイスが出資し、株式会社マリアもお金を少し出資した。ヨーロッパの各子会社は、マリアの取引で利益が出ていた。ジブは利益を日本に還流させる比率は減っていたので、マリアの稼いだ事による子会社の利益は、子会社に配当準備金として貯まっていた。そのお金の一部を出しただけだった。ジブトラスト本体もそれほど大きなお金を出した訳でもなかった。快適洋服は、資源関係や縫製工場や農園の仕事をしていた。ケチな聖子も、出資金の1割の配当をジブトラストに出していて、もうとっくに元手も返し、配当は累積していた。実質的には、マリアと快適洋服が、各地のジブアフリカを作ったとも云えた。アフリカは遠く、神子もそんなに詳しく分からず、発展の可能性を感じていただけだったので、慎重に進めていた。

マリア財団発足

マリアは、アフリカの子供を救うためのマリア財団を、株式会社マリアからお金を出して作った。各ジブアフリカが財団の設立を準備してくれ、各地のジブアフリカは、アフリカでの事業の拡大の可能性を探り、マリア財団の事業を支援していく事にした。ヨハネルやマルトの妻も盛んに行動し、財団の基金も少しずつ集まり、人も集まりだした。マリア財団としては、まず今何をするか計画を立てて、少しずつ専任のスタッフを育てていった。マリアのお金もまだ限定的だったので、アルルのいるギニアとバトラッシュのいるエジプトに小さなオフィスを持ち、スタッフを雇い、個々の援助計画を考えていった。各地のジブアフリカにも、ジブトラストの社員を兼任にして連絡事務所をおいた。ただ対象の子供たちは多く、支える基金や活動する人はまだ少なかった。大海に一滴の水を垂らす感じもしていた。マリアはそれでも可能性を信じていた。希望はある。たとえ一握りの種も蒔かなければ、何も生えない。それを育て、少しずつ大きくしていこうと明るく言っていた。アフリカも成長し、新しい可能性が既に存在しているとみんなを励ましていた。

マリアは、遺伝子研究センターで干ばつや熱さに強い農作物を探し、快適交易に農園や工場を作って貰おうと考えていた。金、金の利益至上主義の聖子を説得しようと、親しくなったパトラッシュやアルルを通して、ヨハネルとマルトの意見を聞いた。意外な事に、幾つの農園や工場のための土地を買い、更に購入する準備をしているといった。快適農園の研究所で、アフリカに適合しそうな農作物についても調査研究しているとも言っていた。聖子に会って話をすると、「衣料も食料も話を進めているわよ、アフリカの現地資本と調査している段階で、まだ確定していないのよ。ジブアフリカの話は聞いているし、ジブアフリカとは、協力していくわよ。」と簡単に言った。聖子は、あくまで細かい利益を積みかねていくつもりで、別に気負っている訳でもなかった。聖子は、衣食の低価格品から考えていた。その意味ではアフリカには、関心があった。ブランド品がそんなに売れそうもないアフリカは、有希との差を広げられる市場だった。アジアやインド、南アメリカでもブランド品は売れ出し、有希のグループの利益が伸びて、競争は激化していた。資源関係や軽工業そして農園等の収入を入れる事は、服飾関係での負けを認める事だった。瑠璃もアフリカの資源には、魅力を感じていた。勝のロボットで、悪条件の中でも探索は進んでいた。原油でも原子力でもなく、新しいエネルギーが、太陽の力と金属のエネルギーで出来るかもしれなかった。

利益ベースで考えていた二人やそれに巻き込まれるようにイチコプロダクツやジブトレーディングも、動き出していた。岡崎交易も独自に動いていた。勿論それは、マリアのような子供を助けようと意図したものではなかったが、資源や農園、水産物は、大きな魅力があり、人が増えて行く国に魅力を感じていた。子供たちを育て、教育する親たちを援助していく体制を作り上げる事は、難しそうだった。可能性はもうとっくに存在していたが、組織や政情の問題など壁も厚かった。

マリアが、アフリカの子供たちの為のマリア財団を作ってから、マリアは、香奈ファイナンシャルの海外子会社でマリアチームが稼いでいたお金の一部をマリア財団に寄付したいと言った。香奈ファイナンシャルの海外子会社は、利益もそのまま運用していたが、ジブトラストと運用金額とほぼ同様の金額だけを運用するようになっていた。あまり運用が多いのは、マリアは好まなかった。国内の香奈ファイナンシャルと同様に配当を出していなかった。香奈とマリアは、話をして、香奈ファイナンシャルの海外子会社の利益の10%をマリア財団に寄付する事になった。国内の香奈ファイナンシャルは、日本の財団に5%パーセント寄付する事になった。財団も財政的にも安定してきたし、基金も増えたきたので、ジブトラストも寄付は5%パーセントに固定する事にした。

スイスカナコインは更に成長

香奈のスイスカナコインは、更に5年経つと、資産規模は、又10倍以上に膨れあがっていた。オタスケーも高齢になったが、益々元気だった。オタスケーは若い年寄りを社員として、テツダウーノを右腕としてして使い、細かい取引全般に任せていった。テツダウーノは、まだ若く60代だったので、香奈に了解を取って常務となった。もう一千億を超える運用をしていた。テツダウーノは、新しく証券会社を辞めた人に頼み、人数も増えていった。チャは、先物や為替をするので、先物に強い人も為替の強い人も増えてきた。チャもディラーではなく、猫なので、毎日相場にしがみついてはいなかった。1週間に数日しか鳴かなかった。香奈はそのため、時々しか指示を出さず、報告を貰うだけの日が多かった。為替も口座残高の五分の一は、運用チーム自身が取引できるようにした。運用チームは、自分の小遣い稼ぎのために、働いていた。それでも資産は年々倍々ペースに近い勢いで増えていっていた。もうコインショップの事はあまり関心もなかったが、スイスコインの全体の利益の10%を金地金の購入にあて、コインの購入は地金型金貨を半分以上にして、全体の利益の5%を充てた。マリア財団にも全体の利益の5%を寄付していた。ディラー達には、スイスコインの運用利益の10%に充てる事は変わらなかった。情報料も据え置いた。コインの店も人が増え、経費や運営費そして税金もかかった。残ったお金は更に運用に回した。元々猫や運用チームが稼いだものだった。徹彦や瑠璃も歳になり、もう増資は止めていた。資産が減らず、銀行口座のお金も金や金貨も少しずつ増えていた。何しろ隠れ香奈ファイナンシャルだった。

ロボット工学研究所や菊子金属も大きくなっていった

菊子金属の作った太陽熱で発熱し、蓄電装置に熱を貯めるシステムは、改良されていった。既存のソーラーシステムとの融合も進み、灼熱の大地も無限の発電所になるかもしれなかった。機械や自動車に使用する計画も進んでいた。アフリカや南米では、開拓や建設に使用しようとしていた。勝のロボットも鉱山探索だけでなく、人が困難な仕事をするように開発が進んだ。勝の息子の勝彦は、勝に替わって機械の海外担当になっていたが、海外に出る事も多かった。疲労し、息子の勝一を育てていたが、勝一も機械に慣れ、機械のヨーロッパ担当として働き出すと、早々と会社を辞め、敷地内の家で休息し、そして元気を取り戻し、勝を手伝いだした。ロボット工学研究所も、新しい海外情報とマンパワーが入る事になった。

財団も国際的に

神太朗は、今までの現地法人の首脳を日本に呼んで方針を決め、新しい現地法人を作る事を進めさせていた。現地法人は、企業への出資や新しい企業の設立については慣れており、比較的計画よりは簡単に進んでいった。子供支援や赤ちゃん支援そしてお母さん支援の組織作りや人の確保は、簡単には進まなかった。快適洋服が現地で生活基盤の整理や施設らしきものを作っていたが、それも工場周辺に限定され、あくまで快適洋服で働く人の福利厚生と地域に還元すると云う原則に沿ったものでしかなかった。運動とまでは云えなかった。金を出しても日本のように計画し、実施してくれる組織もなく、現地の事情もよく分からず、動いてくれる人も少なかった。それでも少しずつ興味を示す人や組織も出てきた。日本の財団に見学や勉強に来て貰い、それぞれの現地でどのように動き、予算や人を確保していくかを話をした。神太朗も、金さえ出せば簡単に進むとは考えなかったが、ここまで難しいとは思わなかった。俊子や恵たちが奨学資金や学校まで作り、手伝ってくれる人たちが作りやすい状況を築いてきた。それが一朝一夕に出来ない事を、神太朗は痛感した。みどりは、財団で見学に来た人たちと話し合い、個々の運動をどのように組織していくかを考えていった。

「色々な国で、違う事をやっているよ。財団には、色々な国の人が、見学に来ているらしいよ。みどりさんが、海外担当みたいになっているよ。千恵は、財団の各地の支部と話をしている事が多いよ。」
香奈「神太朗君は、そんなつもりでみどりさんと結婚したのかもしれないね。岡崎交易は、この頃、アフリカとの付き合いを増やしているよ。イチコプロダクツも水産物の会社をモロッコで作ったり、瑠璃も南アフリカで鉱山の権利をボッタクリみたいに取ったのよ。マリアさんが積極的なのよ、アフリカはまだ、ジブトラストとの関係が薄いからね。ヨーロッパの子会社は、アフリカでの事業を持っている会社にも出資しているらしい。今後、もっと内情を勉強していく予定なんだよ。水産物も資源もあるよ。でも何にもない国もあってね。政情も異なるし、大変みたいだよ。快適洋服は、農園も工場ももっと増やす事を考えているらしいね。ヨハネル君やマルト君も積極的なんだよ。ジブアフリカの役員にもなって貰おうと思っているよ。奥さんも元々向こうの人だしね。和美さんも、日本にも時々帰ってくればいいと言っているよ。ジブアフリカは、なんとかなりそうだよ。」
「運用会社は、まだ配当は3倍で続いているけど、寄付も増えたのに大丈夫なの。」
香奈「利益は変わっていないよ。正子さんは相変わらず先物中心で静かに取引しているよ。配当と財団への寄付程度は、直属の組織の利益や貰う配当程度で十分なんだよ。本体での正子さんと神之助君の稼ぎにそんなに依存している訳ではないんだよ。本体の保留は、少しずつ増えているだけなんだよ。海外の子会社は、ジブトラストの金融オフィスへの送金しても、自分の所でも現金を準備金にしているよ。マリアさんのお陰でヨーロッパの各現地法人もお金があってね、アフリカの話も進んでいるんだよ。ジブトラストも一杯会社を作っていったから、私は子会社の数でさえ、はっきり覚えていないよ。正子さんや神之助君は、先物や商品相場、為替の自分の取引先しかそんなに関心もないみたいだよ。神太朗君が考えていったけど、資金の流れや利益の調整など、詳しく知っているのは神子ちゃんぐらいだろう。子会社、孫会社、関連会社まであるんだよ。神子ちゃんは巧く調整しているよ。陽一さんは各国の経済状況も詳しいのよ。」
「この間、運用会社に来たジブフランスの人と香奈さんは知り合いだったの?家にまで連れて来ていたよ。」
香奈「彼のお祖父さんが香奈オフィスに勤めていたらしいの。話が盛り上がってね。家で一緒にご飯食べたのよ。道之助さんとは、可視化分子顕微鏡の話もあったし、瑠璃とも話をしていたわよ。マリアさんは、取引も止めて話していたわよ。彼は、ジブヨーロッパの人には、香奈オフィスに勤めていた人の子供や孫が多いとか言っていたわ。私はとっくに死んだと思っていたみたいなの。失礼だよね。ヨーロッパの子会社も増えたから、ヨーロッパの人も一度呼んで会合する事になったのよ。」
「それはそうだろうね。私でさえ、死んだ事になっているのよ。この間ホールもゲストハウスもあるから、ホールで、財団の理事会や施設の役員会をやったの。本当に生きているんだと言われたよ。テレビ会議の映像は録画したものを回していると思っていたらしいよ。」
香奈「あんな人たちが今の理事とか役員なの、バスで来ていたよね。キャピキャピの若い女の子が多かったよ。」
「あれは恵教の女の子たちよ。死んだ事になっているとか言われ、役員だけじゃなしに希望すれば、来てもいいと言ったら、50人も来たのよ。」
香奈「恵教はまだあるんだ。」
「今は信者も増えているんだよ。三万人を超えるのよ。宗教団体登録して、大本山を作ろうという意見もあるんだよ。恵教と云うホームページも持っているのよ。」
香奈「本当なの。でもよく金縛りにあわなかったね。この間来たジブトラスト現地法人の人の中に、金縛りにあった人いたの。変な雑誌持って来て、ゲストハウスで見ていたのよ。神太朗君が霊視して、別に悪い事はしてないとか云ってくれて、癒しの念を送って、動けるようになったの。雑誌の事を白状して破いたのよ。税関もいい加減よね。」
「信者はみんな真面目なのよ。好きな人としかしないのよ。金貰ってやらせる子は、信者にはならないよ。でも身体が強ばった子はいたみたい。」
香奈「この頃、ホールもよく使われているよ。大ホールだけではなく、中程度の会議室を作ったのは正解だったね。有希さんは洋服事業の役員会をホールで開く事にしたみたいだよ。俊子さんは、ホテルの会議とかに使っているしね。ジブトラストも時々海外の人を呼んで、会合する事にしているの。舞子ちゃんがいれば、大体分かるし、英語くらいなら、私も使えるよ。それに邪な考えを持っている奴は、直ぐに分かるしね。」

静かだった治部の里も時折、人が集まってきた。ただ、邪な事を考えていると、金縛りになった。時々、金縛りにあう人もいた。でも多くの人は元気になって帰っていった。

冶部の里は、段々独立したような隠れ里に

敷地内の住人も増え、お手伝いさんもチームが出来て、各家の調整をしながら、集中的に処理するようになった。ジブトラストサービス部門がジブトラストと敷地内の家の維持を担当していた。敷地内の家は、ジブトラストの株主なので、株主サービスも兼ねたサービス部門で、ジブトラストの配当から差し引かれていた。俊子の治部ホーム不動産に、ジブトラストは資本参加して、敷地内の基本的な設備の補修や整備にも努めていた。通信インフラも治部ホーム不動産がごきげんソフトに依頼して、敷地内にネットワークケーブルを張り巡らし、独自に幾つかの通信会社に出資して、通信会社ジブテレコムを作っていた。日本各地のジブトラストの子会社や孫会社そして各ビルなどのオフィスや一族の会社とは、大きな専用回戦で結ばれていた。ごきげんソフトがその中核になって情報整理とシステム整備を担当していた。ごきげんソフトは、今やジブトラストの直属会社のようになり、ジブトラストから多大な出資を出していた。敷地内には、ホールもゲストハウスもあった。製薬は、小さい病院までつくり、敷地内の人の定期的な検診をしていた。洗濯物も敷地内にクリーニング設備を作り、集中的に出来るようになった。ハウスクリーニングも定期的にしていた。食品も定期的に、各家に配達されるようになっていった。ソーラーシステムなども取り入れていたし、大きな自家発電機まで完備していた。水道設備も井戸水を主体に完備していた。近くの料理屋は、ジブトラストが買い取っており、敷地内の各家のセントラルキッチンの役目もしていた。各家のメニューに併せて、定期便のようにケータリングサービスをして配達していた。庭や林も治部ホーム不動産が管理していたが、林は自然の雰囲気を感じるものとなっていた。ジブトラストと敷地内の家は、段々独立した隠れ里のようになってきた。

洋服事業は、紡績と並んで、非上場企業となった。有希の個人会社だったユキエンタープライズもお金が貯まってきた。製薬も非上場で、貴金属やカズコウォッチも非上場でファミリービジネスに徹していた。運用会社に至っては、株主の名前も公開していなかった。一族の人たちだけが、誰を入れるか決めていた。

ジブトラストは、多くの企業に市場外でも支援する事があったが、個人の家族構成や仕事以外の事を非公式にも聞く事を禁止した。シングルマザーやシングルファザーたちの雇用機会を拡大させる事を条件としていた。一族の会社も同様の採用方針だったので、ある種の独立王国の色合いを強めてきた。財団の支援の元に出産し、そして子供を預け、運用会社の関連企業で働き、関連企業の店で関連企業の製品を買い、関連企業の住宅に住むようになってきた。

香奈や恵のような、洋之助や和子の子供世代どころか孫世代も60代前後になった。みんな元気だったが、上場会社では、孫世代でも役員を辞めたり、会社も定年前後になっていた。非上場では、子供世代でも、会長や相談役で頑張ってる人もいた。テレビ会議やネットなどで、会社から報告を受けていた。香奈、俊子、真理などは、会社もこの敷地内にあり、会社の運営に関与していた。俊子はホテルの会議もホールでした。有希は堂々と役員会をホールで開催するようになった。恵も財団や施設そしてビルには初期から関与していたので、多くは相談や報告を受けていた。恵は時々財団の理事会をホールで開催した。香奈もとぼけているが、ジブトラストの基礎から大きくなるまで仕切っていたので、会社の支援や増資などでは、最終的には、三人の子の意見を聞きながら、何人かの役員とともに、正子とともに判断していた。三人の子も役員ではあるが、まだ神太朗でも三十代であり、香奈の判断が必要だった。それに正子や三人の子に言えない相談も香奈には出来た。

太朗のセクハラ事件が発覚、ジブトラストが窮地に

起伏もあったが、まあ順調と云えたジブトラストを根底から揺り動かす大事件が起きた。正子の夫の治部太朗のセクハラ事件が、三流総会屋によって株主総会で追求され、セクハラ被害を受けたと言う秘書から損害賠償まで請求された。

有希をバックに社長になり、有希仕込みの収益重視で商会を高収益の商社にした雅也であったが、所詮、婿養子と云う陰口があった。雅也は、太朗を社長にして、実力会長として社内を牛耳ろうとしていた。太朗は、ボンクラではないが、商売では甘い所もあり、わざわざ儲かる所を、相手の立場を考えて譲るような事もあった。甘いと云う批判と良識的な国際感覚ある紳士と云う評価があり、海外での評価は高かった。洋之助直系の血筋と正子が始めは、太朗と正子の管理会社の名義で、やがて三人の子供達と共に作ったカミカミファイナンシャルの名義で、一度は社長になりたいと云う太朗の気持ちを汲んで、コツコツ株を買って、相当株を持っていた事もあり、太朗は、最後に短期間でも社長に昇進する事は既定路線と見られていた。

太朗は、潔癖とは言えない男だったが、これは嵌められた。トイレに行ってチャックを閉め忘れ、元々大きいものが顔を覗いていた所に、好き者と知られるグラマーな秘書が書類を落として、顔を上げた。格好悪い話ではあるが、それで終わっていた話であった。この秘書が太朗のものの大きさに感心して、携帯で写真を撮っていた。金に困っていたこの秘書の、ヒモのような彼に唆され、資産家と知られる太朗を脅した。太朗は、身に覚えもないのに、騒ぎになる事を恐れて、金で解決しようとした。その話もテープに取られ、もっと金を要求され、太朗がケチくさく値切ったりしているうちに、大騒動になった。金に汚い弁護士も絡んできた。商会には雅也も有希もいたが、話が話だけに納める事も出来ず、太朗の社長昇進は消え、役員も任期切れ退任が確定になった。

損害賠償は、清香や麗香が調整して、取り下げさした。相手方も話を大きくしすぎて金を取り損なった。ただ、この事件で正子は傷ついた。洋太郎や俊子も同席した、三人の子たちの査問も受けた太朗は、神太朗の取りなしで無罪放免となったが、神之助に、太朗の旧悪も指摘された。○○しゃぶしゃぶに、何回もいっていたり、おじさん遊ばないと言われ、ノコノコ行って立たず、役立たずと言われていた事まで指摘された。太朗は、心労のため、体調不良と云う理由で、役員も辞任した。正子はジブトラストにも出てこなくなり、突然太朗と一緒に四国巡礼の旅に出かけた。神子や神之助も心が乱れ、取引どころではなくなった。神太朗も家族間の問題でいつになく、疲れて心労の色が濃かった。ジブトラストを支えていた四人が、一斉に動きが止まる事になった。香奈は、慌てず、みんなに少し休むように言った。

「大変な事になったね。」
香奈「正子さんのショックは大きいよ。取引どころではないよ。太朗君とお遍路にいってしまったよ。二人でよく話をしてくるといっていたよ。」
「神子ちゃんもショックらしいね。」
香奈「神子ちゃんだけでなく、追求した神之助君もショックでね、暫く休むようにいったのよ。」
「運用会社も大変だね。」
香奈「大変ではあるけど、いい機会だよ。みんな正子さんたちに頼りすぎだからね。神太朗君にも言ったのよ。ゆっくり休むようにと。」
「そんな事して大丈夫なの。」
香奈「みんなで考えて行かないと、結局やっていけなくなるよ。研究センターも神子ちゃん抜きでも考える事も必要だよ。」
「香奈さんが全部見るの。」
香奈「相談にはのるけど、みんな自分でも考えないといけないよ。今は、取引もほとんど外に出しているから、いい機会だよ、自分で考えて利益を出す事が大切なんだよ。」

とは云え、マリア以外の取引は本体では、止まってしまった。子会社も孫会社も突然指示が来なくなり、みんな慌てた。研究センターは、神子抜きで、指針や報告を出した。神太朗は、直ぐに復帰し、神之助そして神子もやがて復帰した。子会社も孫会社も、自分で考えるようになった。香奈も報告を丹念に見て、指示もした。太朗と正子も、三ヶ月ほどして、日焼けした顔で帰ってきた。ジブトラストの危機もなんとか切り抜けた。香奈の云うような過剰な神頼み、正子頼み、三人の子頼みも緩和された。

「正子さんたちも帰ってきたね。すっかり日焼けしていたね。明るくなったよ。」
香奈「やっばり、二人だけで話して色々、分かったらしいよ。これでよかったのよ。」
「でも、運用会社の利益は減ったでしょう。」
香奈「正子さんがいない時に、神子ちゃんが先物をして、儲けたのよ、正子さん程ではないけれど。神子ちゃんも先物の素質あるわよ。子会社や孫会社の取引担当も自分で結構考えたようよ。いつまでも神頼みではいけないわよ。そんなに、ばんばん儲けられると思う方が危険なのよ。今までが異常なの。それが判って慎重になった方がずっといいと思うよ。」
「そんなもんかね。」
香奈「そうだよ。これでも、正子さん頼みだけにはならないようにと、色々と考えてきているのよ。」

太朗は、暇になった。大手の商社をセクハラ騒動のため、副社長で辞めた資産家の太朗に再就職の口もなかったし、太朗も心労が残った。正子とのお遍路の旅は、太朗の心も変えた。正子は、もう30年以上高額所得者であったが、決して贅沢してチャラチャラして暮らしていたのではなかった。先物相場に見続け、心の邪念と戦っていた。太朗は、正子が簡単に資産を増やしていると思っていた。太朗は、ボンボンではあったが、馬鹿ではなかった。三ヶ月間の正子とのお遍路の旅は、正子との対話と自分の心との対話の旅でもあった。太朗は、一人の男として何が出来るかを考えていた。

それに行き先も言っていないのに、振り向くと神太朗一家がいて、孫と一緒の夜を過ごした事もあった。神子も夫の陽一と子供たちを連れてきた。陽太の明るさで笑いの絶えない夜もあった。でも神之助一家は、来なかった。お遍路の旅も終わりに近づいていた。

四国の最後の札所をお参りする時に、ばつの悪そうな顔をした神之助が、神香に押し出されるようにして正子たちの後にいた。神之助一家との夕食は、ぎこちない雰囲気で始まったものの、舞子は大きな旅館の大きな部屋を予約していた。料理が運ばれてくると後は、私たちでやりますと言って、一家だけの夕食となった。神元と神帥が、料理のお皿を浮遊させ、神香の歌で、料理も踊り出す余興もあった。太朗も正子も心が和んだ。神之助と和解も出来た。神之助一家とともに高野山にお参りした、舞子は正子に、治部ホテル大阪の部屋を取っていると言って、正子と太朗の余分な荷物を持って、神之助一家は、帰ってしまった。太朗と正子は、治部ホテル大阪で、遅くまで語り明かした。

二郎の息子の清太郎が紡績のプリンスに

二郎は、紡績の社長となっていた。妻の聖子の事業が大きくなっている事は、知っていた。治部レーヨン経由だけでなく、聖子も隠さなくなっていた。紡績は、治部洋服グループと相互に株を持ち合い、一族の会社の株そして多くの会社の株も持ち、旧機織り場等の土地を各地で持ち、不動産収入も多く、外部の人からは、治部洋服グループや治部グループの管理会社と考えられていた。紡績は自分たちが親会社だとの意識が強かったが、化学、治部レーヨンそして治部洋服グループにも、とっくに売上げ、利益ともに、抜かれていた。利益の半分以上が配当と不動産収入の会社だった。自社の事業は、売上げは低迷していたが、利益率も低くなく、二郎は、売上げや利益を伸ばしていくよりも、今までの紡績の路線で生きる事を再確認していた。二郎と聖子の息子の清太郎は紡績に入り、自他共に認める、紡績のプリンスとして、育っていった。端正な顔立ち、品行方正な振る舞い、そして折り目正しい言葉使い、まさしく絵に描いたような老舗の貴公子であった。清太郎は、大胆な改革をするよりは、おかれている状況を分析して、紡績の社風の中で、治部洋服との協力を進める事で少しづつ、紡績として利益率を向上させていこうとしていた。治部洋服がブランド傾斜を進めている中、紡績それ自身を一つのブランドとして確立させようとしていた。その点は、従来通りの二郎とは少し異なっていたが、あくまでも自然な形で進めようとしていた。早寝早起きして洋治と共に、早朝のランニングをして身体も鍛えていた。

安いよと快適の体制はほぼ固まる

安いよは、ジブトラスト、聖子そして正子が、主に出資している会社で、紡績からの出資はなかった。有村もジブトラストから少し株を貰っていた。聖子の出資は、聖子ファイナンシャルにほとんど移り、正子の出資分は、三人の子供たちと作った会社であるカミカミファイナンシャルに移っていた。快適ホールディングは、安いよとジブトラストと聖子ファイナンシャルの出資となっていた。個々の快適洋服の事業会社は、現地資本や外部資本そして社員からの出資も入れ、快適ホールディングと安いよ本体からの出資に、ジブトラストと聖子ファイナンシャルが出資していた。快適交易は、ジブトラスト、聖子ファイナンシャル、快適ホールディング、ジブトレーディングそして和美の出資となっていた。快適鉱山は名前だけで、香奈オフィスと聖子ファイナンシャルそして快適交易が出資している会社で、香奈オフィスに運営を任せていた。聖子ファイナンシャルは、聖子と聖子一族の家族会社だった。他にも合弁会社をその場の雰囲気で作るので、複雑だった。ただ、聖子ファイナンシャルは、指導料として、快適関係会社や安いよから利益の5パーセントを貰っていた。利益などのすべての経営情報は、聖子ファイナンシャルに入り、いわば聖子が判断していた。といっても実際の経営は、ほとんど単体に任せていたし、交易関係の管理は、快適交易がしていた。聖子ファイナンシャルは、聖子以外に、二郎、清太郎、綾子そして幸夫、波朗や辺朗、幸子などの聖子ファミリーが出資していた。ジブトラストからも出資して貰い、有村もほんの少し出資し、実質的には有村がお世話をしていた。聖子ファイナンシャルは、少しだけ配当して報告書を出していた。この報告書が聖子の安いよ、快適グループを分析し、総括していた。二郎や清太郎や綾子たちに、教える積もりであった。幸夫は、快適ホールディングの運営をしながら、快適洋服単体の管理もしていた。ただ快適洋服は、洋服だけでなく、農園そして、軽工業まで手を広げ、快適交易は、工場の設計から、事業の調整までするようになっていた。

俊子「有村さんは、元気ね。お互いに年になったね。」
有村「僕も家では、若いと言われてますが、俊子さんは全然、年を取りませんね。」
俊子「有希さんと比べると年を感じるわよ。」
有村「有希さんも聖子さんも益々若くなってますから、別格ですよ。僕の息子も、ジブにも安いよにも慣れて来ました。」
俊子「相変わらず調子いいみたいね。太朗も暇になったから、和美さんに誘われて、快適交易の相談役になったの。太朗も吃驚していたわ。こんなに大きい組織とは思わなかったようね。」
有村「大きくなりました。各快適単体で、自分で計画し、成長しています。南アメリカは、もう北アメリカと差がなくなりました。聖子さんは、次はアフリカが伸びると言ってますよ。インドでは、日本の安いよスーパーで売る分の何十倍も売ってますよ。」
俊子「綾子もこの頃は、聖子ちゃんと無理に比較しなくなったわ。」
有村「聖子ファイナンシャルは、今まで秘密の資料も少し出すようになりました。二郎さんや清太郎さんや綾子さんにも判るようにしていますよ。ジブトラストも少しだけ出資しています。」
俊子「二郎も知ってるのね。知らない顔しているわ。」
有村「清太郎さんは、有希さんにも教えているようですよ。」
俊子「競争は、続いているのね。治部洋服グループもブランド品も一杯もったものね。あれで利益は伸びたらしい。」
有村「聖子さんは、まだ治部洋服の役員なんですよ。アジア、インドでの治部洋服の伸びが大きいです。服飾だけでは、利益総額は劣っていると言ってますよ。アフリカ市場を伸ばせば、抜けるかも知れないと言ってますよ。」
俊子「農園や食品以外にも軽工業もやっているから、もうそんなに拘らなくてもいいのに、化学や製鉄にも進出する事を計画しているらしいね。」
有村「現地資本から要望があり、調整しています。日本の化学や鉄鋼とも調整しないといけないし、ヨーロッパの資本とも調整があって、太朗さんにお願いしたらしいですよ。聖子さんは、指導料をとれば、株の保有率には、拘りません。」
俊子「太朗も、商会並だと言っていたわ。正子さんが、太朗も快適交易の株を持てるように、聖子ちゃんに頼んでいたわよ。」
有村「快適交易が大きくなって,快適ホールディングとの役割分担が不鮮明になっているので、快適交易も仕事の役割も整理して、増資する必要があります。和美さんや幸夫さんとも調整しています。」

快適ホールディングが、各地の快適洋服を総括していく事になっていた。しかし、各地の快適洋服は、各地の経済発展に合わせて、軽工業から始まって、仕事を増やし、色々の産業に進出していた。その調整をホールディングがする事になっていたが、各地でも、何でも利益になれば手を出していたし、成長も早かった。幸夫も膨張していく各地の快適の視察や運営で、手が一杯であった。交易は、和美の経験を生かし、各地の快適を貿易で調整していた。交易は、ヨネハルやマタイが入ってから、新工場の建設や工場整備もしていたので、益々分担も不明確になってきていた。元々快適洋服は、投下資本が少なく、利益をてっとり早く稼げる分野に進出していったが、資金が各地で増えてくるにつれて、投下資本の大きい産業にも手を出していた。アフリカ以外では、工場網も整備され、快適ホールディングの元に企業群も固まり、運営も軌道にのっていた。司令所がどこか不明確ではあったが、和美が、貿易で各地の製品の製造を調整し、幸夫が各地の快適を運営していた。それにそんな事には無頓着な聖子が、各地の快適にチョッカイを、いや直接指導し、利益を伸ばしている状態が続いていた。

聖子、カミカミを抱きこんで、アフリカ快適ホールディングを創立、重工業にも進出

聖子は、太朗、幸夫、和美そして有村たちと話し合い、アフリカ快適ホールディングを作り、すべてのアフリカの快適グループを統括させ、快適交易での和美の出資も増やし、貿易主体に戻し、資源関係は、すべて快適鉱山に任せ、聖子ファイナンシャルの元に置く事にした。

アフリカ快適ホールディングは、正子たちのカミカミファイナンシャルとジブトラストを中核にして、聖子ファイナンシャル、安いよ、快適ホールディングと快適交易も出資する会社となった。安いよ、快適ホールディングと快適交易は、アフリカにあった既存の組織を出資する形になった。多くの新しい資本は、カミカミファイナンシャルとジブトラストが出していた。快適ホールディングと快適交易とも協力を取りながらも、自由な立場で考えられる会社とした。そしてカミカミファイナンシャルが、アフリカ快適ホールディングでは、単独では筆頭株主になり、太朗を社長にして、ヨネハルやマタイも手伝い、聖子は会長として、報告だけを受ける事にした。太朗は、聖子の義理の兄でもあり、立ち上がりに協力してくれた正子の立場も考えた。正子と三人の子の配当や運用手数料は膨大で、それを積み立てて、運用していたカミカミファイナンシャルの資金力は大きかった。アフリカ快適ホールディングは、従来の快適ホールディングが進めていたギニアやエジブトの事業などは、それぞれ傘下の快適ギニアと快適エジプトなどにして、快適ホールディングや聖子ファイナンシャルも追加出資する事で、今までの路線も維持しながら、資金を増やしながら、快適ホールディングとしても今まで通りの仕事もできた。太朗は、カミカミの資金力も生かし、製鉄や化学工業などの自分が得意とする分野を取り組み、菊子金属や勝の毛利ロボット工学研究所や道之助の特殊レンズ研究所のハイテク技術も取り入れ、快適製鉄や快適化学を作り、ハイテク工場をアフリカに建てた。資本もジブアフリカや、日本とヨーローパなどの海外資本と現地資本も入れて、太朗のキャリアも生かし、広く資本も集め、販路も世界各地に広がった。世界をリードする設備と製品品質を誇り、快適交易だけでなく、商会も手の平を返したように、積極的に売上げに貢献した。

カミカミファイナンシャルは、気が付くと商会の筆頭株主になっていた。太朗の役員退職慰労金を、雅也が世間の手前ケチった議案を株主総会に出していた。規定より大分ケチっていた。一応太朗の申し出によるものとされた。太朗と正子の管理会社は賛成したが、カミカミファイナンシャルは、神之助がその月の当番だった。神之助は太朗の役員退職慰労金について、規定通り出すべきだといって、反対の意志表明をした。商会の首脳は震え上がった。カミカミファイナンシャルが独自路線に転換し、おまけに保有株も増やして、保有株報告書には、経営について関与したいと言った理由も付け加わった。商会は、単に世界各地からの要望によると言っていた。

アフリカだけでは、まだ鉄鋼や化学素材の需要は弱かったが、世界的な高品質と価格の安さが、それを支えた。一族の鉄鋼や化学も提携していた。そして快適製鉄や快適化学会社は利益をあげていた。アフリカ快適ホールディングも高収益の会社になり、太朗は、一躍アフリカをリードする財界人の一人となった。アフリカ快適ホールディングは、日本や海外外部資本の比重も大きく、カミカミファイナンシャルに運営を任せていた。ただ既存の快適農園や快適洋服などは、快適グループの資本もいれて独立していたので、既存の洋服や農園などは、アフリカ快適ホールディングと話をして、個々に国別の快適を作っていった。聖子は、アフリカ快適ホールディングでも、きっちり本体指導料として、5パーセント貰っていた。転んでも金を掴み、利用出来るものは利用し、名よりも金を掴む聖子の本性が発揮された。

香奈「聖子ちゃんも考えたわね。正子さんたちのお金も利用し、太朗君を社長にし、太朗君のコネと経験も生かし、大きな会社にしたわね。太朗君も張り切って働いているよ。」
「太朗君も若くないわよ。敷地内にも良くいるよ。」
香奈「現地で、ヨネハル君やマタイ君などの若い人が動くようにしているのよ。今までの洋服や農園などは、従来通りらしい。主に基盤産業などに、太朗君が取り組んでいるのよ。太朗君は、欧米にいったり、時々現地に行く程度らしいわ。アフリカの経済的な指導者とか云われだして、大局的な指導をしているらしいよ。正子さんも喜んでいるわよ。」
「そうなの。アフリカに行って直接指導している訳ではないのね。和美さんもここによくいてるわ。」
香奈「太朗君は、日本や海外の人たちに、説明したりしているのよ。ジブギニアも動きやすくなったらしい。和美も現場にいない方が冷静に考えられると言って、聖子ちゃんや有村と話しているよ。実際の貿易実務は禎子ちゃんや信治君の会社のジブトレーディングや岡崎交易に任せているからね。」

快適グループは、幅広い産業でアフリカに進出し、逆にアフリカ以外の地域でも、その企業を利用して、関係企業を増やし、快適グループは、更に伸びていく事ができた。

カミカミファイナンシャルにとっても、アフリカ快適ホールディングへの出資は大きかった。商会の株、ヨーロッパのホテルチェーンの株、ドイツの金属会社の株、アメリカのホテルチェーンの株そしてアフリカ快適ホールディングなどへの出資で、運用する金額の膨大化は押さえられた。元々聖子の安いよや悦子のホテルにも出資していた。それでも年々出資した会社からの配当も入っていた。正子や三人の子たちもジブトラストからの配当や運用手数料、報酬が入り、それをある程度カミカミファイナンシャルに出資していたので、カミカミファイナンシャルは大きくなっていた。運用する金額は、保有する現金よりも大きくしない事を守っていた。それでも神子と神之助の競争は、続いていた。

エレガントホテルチェーンは高級化路線に

綾子のホテルチェーンも、稼働率も上がったが、綾子は、聖子とは違い、逆に俊子のしてきた高級化路線を徹底して、設備の充実に心がけ、ホテルの財務体質も堅実になった。同じ路線よりも違う路線で戦う事を選んだ。有希が一時服飾関係でも利益で離されていたが、高級ブランド品を集め、服飾関係の利益では、快適グループを上回っている事にヒントを得た。相手の土俵で戦うよりは、自分の道を歩いていこうとおもった。アメリカのホテルチェーンは、ジブトラストも追加出資していたし、聖子ファイナンシャルやカミカミファイナンシャルも出資し、ジブトラスト、聖子ファイナンシャルそしてカミカミファイナンシャルのホテルチェーンにもなっていた事には、知らない顔をする事にした。綾子も、二郎の娘で聖子の娘であった。

ジブタウンは好調で、マチコジブ記念病院が出来た。

ジブタウンや大阪や福岡のビルは、好調だった。小夜たちは、ショッピング街や幾つかの店を直営にして、時代に合わせる街づくりを心がけた。内部留保が貯まり、医者になっていた真美の子供達や由香の子供のために、マチコジブ記念病院も近くに作った。恵も義母の名前を付けた病院をつくる事には積極的だった。名古屋は、そんなに大きくしないものの、ビルの管理会社の余剰金で、小さな名古屋ジブタウンを作る事が出来た。

冶部金属誕生

菊子金属は、鉄鋼への配慮もあって、日本では、独自の大きな金属会社を作らなかった。ドイツの菊子金属の子会社、キクコドイツメタルが好調だった。日本の会社も使い始めていた。菊子金属は、特殊なユーザーだけに対応し、製鉄や精錬時の添加剤の販売が主力だった。鉄鋼からの申し入れもあり、治部金属を、鉄鋼の子会社の金属会社を名称変更する形で、鉄鋼とジブトラストと共に作る計画だった。

ジブトラスト兼任の副社長の赤川は、菊子金属を筆頭株主にしながら、ある工作もした。鉄鋼の筆頭株主であった洋之助の持ち株は、洋太郎や洋治などの子供たちの管理会社などにも分散していたので、それらの管理会社が鉄鋼株を出資し、新しい管理会社である洋之助会を新しく作り、正子や聖子たちにも話して、洋之助会には、カミカミファイナンシャルや聖子ファイナンシャルも出資した。その上で洋之助会にも治部金属に出資して貰い、忙しい聖子も役員に担ぎ上げた。鉄鋼は、単なる子会社にして、営業権も握り、実質的子会社にする積もりであったが、目算が外れた。治部金属は、菊子金属、ジブトラスト、鉄鋼、洋之助会の4つの組織からなる合弁会社になり、鉄鋼の影響力は弱くなった。聖子も快適製鉄にも有利に働くので受けた。洋太郎も洋治も歳になり、鉄鋼株の散逸に恐れを持っていたので赤川の誘いに乗った。甘辛は技術担当副社長になった。営業も菊子金属の営業部隊と鉄鋼の営業部隊を別の営業部にし、鉄鋼からの営業担当副社長の下に、菊子金属の営業部長を常務にして、菊子金属の営業部隊の統括をさせた。

管理担当の副社長も赤川にした。鉄鋼は数人の役員になってしまい、健を社長候補にすれば、菊子も納得すると考えていたが、言い出せなくなり、菊子が社長になる事に同意した。夫婦間ではあるが、菊子金属の独立性を確保するために赤川が考えた事であった。治部金属は、鉄鋼からの営業力も利用しながらも、鉄鋼から影響を受けにくい独立性の高い会社になった。

香奈「赤川がこそこそ動いているから、何しているのかとおもったら、こんな事を考えていたのね。健一君や健太君は、怒っていなかった。」
「当ては、外れたみたいよ。でも洋之助会が出来て、株主の安定化にはなったと言っていたわよ。健が、一番当てが外れたみたいよ。治部金属の社長にもなれると思っていたみたいなの。いい薬だよ。苦労もしないで美味しい所だけ食べようとするからよ。菊子さんや甘辛さん、赤川さんたちが、苦労して大きくしたのにね。」
香奈「孫だのに、厳しいのね。」
「私は、小利口に生きる奴は、好きじゃないのよ。」
香奈「恵教の宗教法人化は、どうなったの。」
「話は、続いているけど、私は、乗り気じゃないの。別に寄付を貰う気もないし、小夜さんや菊子さんたちが、相談室の運営程度は、ビルの経費で処理できるようにしてくれたの。社会福祉法人にしても不良少女の社会更正とか云わなくてはならないみたいなの。そんな事も言いたくないの。みんなが自分で努力していくのを助けるだけでいいのよ。」
香奈「それが自然かもしれないね。」

治部金属は、鉄鋼の販売力も生かし、特殊金属に強い金属会社になっていった。菊子金属からの技術供与も受け、新しい鋼板も積極的に作っていった。キクコドイツメタルとも協力して2社で競い合って大きくなった。洋之助会は、洋之助の子供たちが、高齢になっていたので、鉄鋼株だけでなく、洋之助から相続した化学、機械、商会そして銀行の株をもった子供たちの管理会社が、その保有する上場株を出資する事で、より大きな管理会社になった。出資額は発足時の市場価格で換算し、カミカミファイナンシャルや聖子ファイナンシャルも増資した。分散化を避けるために洋之助会として買い入れできるようにしたかった。受け取る配当は、計算して、出資金に応じて、配当するが、受け取る金額は、半分にして、プールしておく事にした。
出資者が資金が必要になれば、洋之助会が時価で購入する事になり、その為の準備資金でもあった。

ジブトラストにとって、多くの一族の人にとっても、黄金の時代がやってきた。

アメリカが、世界を支配する状況から変化してヨーロッパ、アジアへ移行する気配をみせながらも、なかなか新しい世界秩序を構築出来ないでいた。しかし、アフリカが急速に伸びて、南アメリカも伸びてきた。通貨としては、依然として、ドルやユーロが使われていたが、国際単位としての意味でしかなかった。不兌換通貨にとっては、経済の収支バランスや金の保有量ではなく、通貨の信任が基本だった。アジア単位も、アフリカ単位も、南アメリカ単位もうまくいかなかった。人民元も強かったがドルとの相対比で上がるが、国際通貨としての信任はなかった。もう一つの国は、もっと信任はなかった。単なる消去法でドルやユーロが使われていた。アメリカもヨーロッパもしぶとかった。底力もあった。アジア、アメリカ、ヨーロッパの三極とか云われた事もあったがアフリカと南アメリカそしてインドや中東も加わり、多極時代の経済になっていた。

日本は、人口中絶も5割減り、合計特殊出生率も上がり出し、1.8まで戻した。婚外子に対する偏見も少なくなっていたが、長い間、出生数が低迷していた事もあり、国内の内需は低迷がつづいていた。生産人口も減少していた。しかし、外需に牽引される状況で株価も少しずつ上がり、外部要因で下落し、調整する状況だった。よその国の雇用状況や消費動向によって株価が大きく下がる事には、変わりはなかった。ただよく見てみると、外需は、昔のようにアメリカだけでなく、中国だったり、インドだったり、アジア全体だったりしていた。やがてそれは、ヨーロッパや南アメリカ、アフリカにまで広がっていた。売りの正子にとっては、取引環境はよかった。先物の正子は、大きな利益を上げていた。神子も信用も含めて、調整売買で利益を出した。商品相場も上がりながら、時々大きく下落する状況だった。神之助にとっても儲けやすい状況だった。外部要因とは云え、少しずつ成長しており、企業間の興亡も起き、神太朗も利益を出していた。

マリアは、バランスよく、売り買いするので、なだらかな上がり調子は、取引しやすかった。香奈ファイナンシャルとしてもあっさり儲けていた。こんな相場の時は、子会社も孫会社も問題もなく、香奈も暇なので、時々香奈プログラムを動かしていた。

カミカミファイナンシャルは、実業と取引などの運用の両面で成長

カミカミファイナンシャルの現金は、アフリカ快適ホールディングへの大きな出資で一挙に運用金額は、少なくなっていたが、神子と神之助の競争で、又大きく伸びていた。もう運用額も大きくなりすぎており、神太朗もついに五千億を限度額にした。アフリカ快適ホールディングなどにも追加出資もしていたが、運用しない現金は一兆を超えた。カミカミフィナンシャルが、受け取る配当だけでも一千億になっていた。アフリカ快適ホールディングは、利益の5%部分を聖子にかすめ取られていたが、税引き後利益の三分の一は、配当としていた。アフリカ快適ホールディングからカミカミが受け取る配当の5パーセントは、マリアの作ったマリア財団に寄付し、日本でも、カミカミフィナンシャルとして利益の5パーセントを日本の財団に寄付するようになった。神太朗は、カミカミファイナンシャルとしても出資を調整する時期になったと感じていた。正子、神子そして神之助と協議して、運用手数料に相当するものや今までの増資や出資による利益も調整して、新しい出資金とした。カミカミファイナンシャルは、正子の管理会社であり、正子の出資額を基本として計算した。現有資産よりは、遙かに小さくして、それを最大出資額とした。そして正子や神太朗たちも出資を止め、新しく出資者には、正子の出資額を出資上限とした。運用利益の5%を運用手数料とし、運用手数料は正子の出資額を超えない限り増資とする事は出来るが、それ以上は増資できず、出資金を出した株主は、運用枠が設定されれば、その範囲まで拡張して、それ以外では出資金の範囲で取引できるが、各々の出資金の半分を超える損失が出れば、カミカミとしての取引は禁止するとした。新しいメンバーを入れるかどうかは正子が決定する等の規則も決めた。各自で十分な、余裕資金を持つ事にした。カミカミファイナンシャルだけにお金を集める危険性も感じていた。カミカミファイナンシャルは、運用はしても配当を出さない運用会社だった。

聖子ファイナンシャルグループの成長

聖子ファイナンシャルは、聖子の全事業の利益の5パーセントと聖子ファイナンシャルとしての出資に対する配当が、収入であった。聖子ファイナンシャルは単なるかすりを取る名目的な経営指導料を貰っていたが、徐々に実際に経営分析や経営指導を行うようになり、グループの経営情報を握っていった。聖子は、自分の安いよと快適への出資金を自分の出資として、最初、二郎やジブトラストにも少し出資して貰った。その後は、清太郎や綾子そして幸夫などには、聖子からの借り入れも加えながら、毎年少しずつ出資させていた。聖子の出資額に相当するまで出資させる積もりだった。

幸夫には、給料を多く渡していたので、その子供たち名義、羽朗や辺朗そして幸子名義でも毎年少しずつ出資するようにさせていた。毎年利益の2%パーセントだけ配当と事業報告書を出していたので、聖子の事業の全体像は、分かる筈だった。アフリカでの快適グループの売上げと利益は、急成長していた。南アフリカがそれに続いていた。アジアやインドでは、機能性洋服が伸びて、従来の低価格品の売上げの伸びは低下していた。アメリカ、日本そしてヨーロッパでは、低価格品の売上げは減少し、機能性洋服だけが伸びていた。農園事業も、単に栽培だけの農園から、食品加工や食品製造業に進出しつつあった。軽工業も、生活用品の鍋、洗面器などから、加工度の高い製品に転換しようとしていた。快適交易が土地購入などを調整し、香奈オフィスが調査し、聖子ファイナンシャルと香奈オフィスとが共同出資した快適鉱山が、旧鉱山を購入し、運営そのものは、香奈オフィスに任せるようになっていた。何も出ない旧鉱山もあるが、何かみつかる確率も高かった。鉱山探索ロボットは、多数の資源を探索していた。資源関係も変動は激しいものの、利益は高かった。快適農作物研究所まで、特許料や指導料まで取り、利益を出すようになっていた。
聖子は、そんなに寄付するタイプでもなかったので、それぞれの地域で活動していた快適の子会社には、利益の5パーセントを目途として、儲けに繋がるように、各地で地域のインフラの充実のための支出をしてもいい事にした。

アフリカ快適ホールディングも快適製鉄や快適化学が大きく成長し、アフリカでの需要拡大に先立ち、ハイテク工場で、生産効率もよく、低コスト、高品質の素材を提供し、工場も増やし、アフリカ域外の需要拡大のメリットを受けて、売上げは伸び、利益は大きく伸びていた。

毛利ロボット工学研究所は、高収益企業に変身した。

毛利ロボット工学研究所も、鉱山探索ロボットから始まったものの、産業用ロボットまで広がった。東京の機械の工場の一角も借りた。機械は、製造拠点は諏訪に集約させ、東京本社や技術サービスもジブタウンに移った。機械を追い出すように、毛利ロボット工学研究所の研究所と工場が出来ていた。そして機械の諏訪工場でもロボット製作ラインが出来、産業用ロボットは飛躍的に伸び、機械はこのロボットも組み合わせて、工場設備更新を請け負った。勝は、歳のせいもあり、諏訪にはほとんど行かなかったので、機械自身が売りやすいようにロボットを変えていった。そのため、ライン上で必要なロボットテクノロジーが発達し、機械も儲けたものの、毛利ロボット工学研究所は、製品の利益率は高く、高収益企業になってしまっていた。香奈は出資したものの、暫く配当も出さず放置しており、機械に促される形で、貯まっていた利益を配当と会社留保等に分けていった。社員にも還元していった。益々会社の業績は伸び、いつの間にか、機械の利益は超えていた。道之助と組んで開発した、ロボット化した資源分別ラインは、破砕した鉱石を、稀少金属や微少金属を波長測定しながら、分別していくもので従来の資源分別、精錬とは、考え方も異なり、大きく成果を上げた。この選別ラインと稀少金属を保管する会社を、香奈オフィスや菊子金属と共同して立ち上げ、香奈ファイナンシャルから大きな出資を受け、毛利レアメタルとした。香奈オフィスから、毛利レアメタルが鉱石を買い取り、分別された稀少金属は、菊子金属と香奈オフィスに売り、菊子金属はそれを使い、金属加工に使用し、香奈オフィスが販売した。分別、精錬と保管のような会社が毛利レアメタルだった。今ははっきりとは判明しないが未知の物質の反応がでた鉱物も分別保管し、更に検討していた。毛利レアメタルの資源分別ラインは、ギニアとブラジルの菊子金属の素材センターに設置した。その後長府の菊子アースにも設置した所、菊子アース以外にも微少金属、稀少金属が見つかりだした。日本には、本来は鉱山の多い国で、かつては、金も産出していた。瑠璃は、日本の旧鉱山も買うようになった。香奈オフィスは、レアメタルの鉱山から始まり、原油、貴金属が多くなり、又レアメタルの比重が増えていった。

未来資源研究所がついに始動!

徹の未来資源研究所は、従来の資源とは別の視点でエネルギー源を長い間探していた。徹が少し出し、香奈ファイナンシャルが増資しながら、活動を支えていた。もう定年になって大学を辞めた研究者たちを集め、研究会も開いていた。ギニアの資源分別ラインから、見つかった鉱石に、可能性を感じていた。ウランに良く似ていたが、ウランではないものの、ウランに替わる可能性があった。この鉱石をエンジェルストーンと名付けた。この鉱石の中にエネルギーが秘められていた。ただこのエネルギーを引き出す方法が判らなかった。

菊子の治部金属は、技術水準が飛び抜け、特殊金属、特殊鋼材では、キクコドイツメタルと並び、世界をリードしていた。
エンジェルストーンは、アフリカの香奈オフィスの旧ウラン鉱山で見つかった。香奈オフィスのもっている他の鉱山にもあった。調べて見ると世界各地に、旧ウラン鉱山に程度の差はあるものも分布していた。発電システムの革新を秘めていた。長い間検討してきたが、そのエネルギーを導き出す方法が判らなかった。原子力は大幅な設備を必要とした。そうして設備を使わなくてもいい方法を考えていた。たまたま技術屋の人が、古い映画を見ていた。太陽光線を水晶のような石英に集め、高エネルギーの光線を出すSF映画だった。金属触媒を利用し、光のエネルギーで、エンジェルストーンから、エネルギーを引き出す事を考えた。菊子金属と道之助に光エネルギーを増幅させ、エンジェルストーンに当てて、緩やかにエネルギーを放出していく方法について共同研究を求めた。高温にならず、常温で爆発的なエネルギーではなく、徐々にエネルギーを引き出せれば、今までの原子力に替わるエネルギー源となる可能性があった。色々な金属を試してみたが、上手くいかなかった。菊子金属も試行錯誤で、発熱する金属を更に進めた人工金属を作り、太陽光線も特殊レンズで増幅し、エンジェルストーンと混合させているうちに突然できた。常温で緩やかにエネルギーを放出させていった。原子力は次々と連続した原子崩壊が発生して、爆発的なエネルギーをだすが、エンジェルストーンはそれ自体は安定で放射性もなかったが、特殊な人工金属と光エネルギーで、エンジェルストーンからのエネルギーの放出をコントロールする事が出来た。人工金属や特殊レンズも工夫して、研究が進んだ。高齢者の思いつきではあったが、自由な発想で、自由気ままに研究が進んだ。人工金属とエンジェルストーンを入れて、太陽光線を特殊レンズであてれば、エネルギーが発生した。この人工金属は、菊子金属と菊子金属のドイツの子会社の菊子ドイツメタルの合同特許として、世界各地で出され、キクコメタルと言われた。特許問題以前に、キクコメタルは、菊子金属とキクコドイツメタルでしか出来なかった。特殊レンズは、ミチレンズと言われ、道之助の特殊レンズ研究所でしか出来なかった。発電する金属と高容量の蓄電装置を組み合わせれば、機械も自動車も動く可能性があった。原油や原子力に代われる可能性もあった。更に菊子金属、毛利レアメタルそして特殊レンズ研究所と協力して、実用化研究が進められた。手始めにソーラー発電や従来の自家発電装置を設備している敷地内の発電装置に併設して、発電のサブユニットとして使えるかどうか検討していった。

快適農作物研究所もレベルアップ

食料事情も一変した。快適農作物研究所は、安定的に多量に収穫できる、米、麦、とうもろこしなどの品種を交配で作りだした。遺伝子研究所の遺伝子研究も加えられ、各地の気象条件に合わせて、品種登録もした。聖子は、独占して栽培していたかったが、ロイヤリティが入るよと言われ、完全なF1品種として売り出す事になった。製薬の薬草抽出残査をいれた肥料を与えると、米粒も以前の倍以上になり、実るほど頭の垂れる稲穂になった。もっと大きくする事も出来たが、味も落ち、稲の強度も足りなかった。小麦も三倍、とうもろこしは5倍以上になった。栽培可能耕地も品種改良で拡大した。

「いつまでも元気で」の開発秘話

徹行は、アジアンミラクルやフレンチミラクルの開発が一段落した後、アジアンミラクルやフレンチミラクルの普及版を考えていた。アジアンミラクルやフレンチミラクルは、地下水の条件のいい所に、特殊な栽培で育つ薬草から作っていた。切人とマリアとのんびりしている時に、厳しい奥地の修道院で修行している修行僧たちの番組があった。切人とマリアは熱心に見ていたが、切人がマリアに、「あんな厳しい所でなくても修行はできるよね。心の中でする事なんだから」と言った。マリアは、「そうよ。みんなの心には、無限の可能性があるのよ。」と言っていた。

徹行は、薬草も栽培しやすい品種で沢山採れる品種にすれば、もっと簡単に分岐状の水が採れると思った。徹行が、遺伝子研究センターの植物チームと協議すると、「栽培しやすく、沢山採れるようにする事は出来るよ。薬効は分からないけどね。快適の研究所と協議しているうちに、わかった。快適の連中は放射線をいじって遺伝子異常を起こし、有望な異常を見つけ、それを交配しながら、定着させるのが、好きなやり方なんだけど、遺伝子分析は依頼されるから、遺伝子異常を起こす場所と交配のやり方はある程度分かって来た。こつも分かったよ」と言って出来た交配だった。エンジェルスターと名付けた。この抽出液を作って、濾過すると、分岐状の水は多かったし、リング状の水もあった。それ以外には物質はなかった。エンジェルスターの抽出液は、分岐状の水やリング状の水を作り、そして濾過すると、それ以外の成分が綺麗に除去できていた。徹行は苦労して、安定的に分岐状の水を保持するような漢方薬、パワースターを探し出した。パワースターを煎じたものを濾過し、エンジェルスターの抽出液を混合すると、分岐状の水の周囲に、この漢方の薬理物質がリングのように周囲を取り囲んでいた。リング状の水分子は、遊離していた。パワースターは、強壮効果があると伝説のように云われているが、薬理効果もたいして確認されていない漢方薬だった。

動物実験では効果はあった。アジアンミラクルやフレンチミラクルのような効能だった。一応薬としての手順を踏んでいこうと言う事になった。急性毒性も調べたが、問題なかった。薬としての手順は長かった。徹行は、早く商品化したかった。栄養ドリンクでもいいといった。法務の連中も集めて検討した。エンジェルスターを品種登録して、医薬部外品にすれば、可能だと結論になった。徹行は苦労したが、製薬は、まだ薬効に納得していなかった。分岐状やリング状の水の説明はしてきた。しかし、なんか有り難みがない。奇跡の水と言われる水が出る山間部で、高い貴重な薬草を苦労して栽培して、製法にも苦心したのにとの思いもあった。徹行の熱い思いと冷めた周囲の思いの中、栄養ドリンクの製品化がはじまった。

強壮効果しか特徴が言えない。「元気ビンビン」と云う名前と「いつまでも元気で」と云う名前が候補に上がった。友恵は、下品と云う理由で「いつまでも元気で」として売り出す事になった。エンジェルスターは、やたらと簡単に生育した。乾燥した土地でも水田でも生育し、有り難みがなかった。分岐状の水やリング状の水もあったが、製薬でも半信半疑で、詳しい実験を始めた。雑草のようにやたらと生育する薬草だったので、テスト的に少しだけ栽培していた。とりあえず薄くして栄養ドリンクにした。値段も高くなった。本当は安くできたが、アジアンミラクルとそんなに大きな差はつけられなかった。大人しい名前と高い価格で、製薬は、こっそり売った。みんな売れる筈がないと思っていた。こっそり高いドリンクを買う人もいた。飲むとビンビンに立つと云うことで密かに有名になった。好き者のおじいさんが、若い女を金にものを云わせて囲っていた。毎日飲んで、女と楽しんでいた。三日もすると、若くなった気がした。「パパ、この頃大きく堅くなったわ。勢いもいいのよ。」と云われ、ご機嫌だった。頭の回転も早くなった。そんな人が沢山出て、宣伝もしないのに、売れ出した。塾通いの子供もこっそり飲みだした。成績が上がりだした。「頭のよくなる」ドリンクとしても密かに有名になった。ごっそり買う人まで現れて、いつも入荷待ちになった。クレームもきた。製薬は、栽培も五倍にした。直ぐに出来たが、又売り切れになると困るので、みんなごっそり買った。又、入荷待ちになりそうなので、栽培も十倍にした。ようやく騒ぎは、収まった。価格も安くないので、安定的に売れるようになった。愛好家や特殊な人達の間で広まっていたが、やがて、病気の人たちの中でも密かな広がりを持って使用されるようになっていった

一方、研究が進むにつれ、分岐状の水の効果は、アジアンミラクルやフレンチミラクルと変わらないことがわかった。アジアンミラクルなどにない効果もあった。若返り、病気になりにくい事までは、同じだが、違う事もあった。
記憶力も上がったし、判断力も上がっていた。痴呆症まで治っていた。脳細胞の活性化作用があった。脳細胞には、使われていない多くの部分があったが、パワースターが刺激し、活性化させていたのであった。ただ性衝動も刺激した。急性毒性はなく、濃度を高くして、慢性毒性まで実験した。この薬を飲ませたラットもマウスも元気で賢くなった。解剖しようとすると察知して、土下座して止めてと頼むものまで出た。懇々と言い聞かせると十字を切ったり、お念仏やお題目まであげるものもでた。泣く泣く解剖すると内臓は、やたら元気だった。第一ラットもマウスも死なくなった。癌細胞を無理矢理植え付けてもすぐに、病巣が消えてしまった。友恵は強壮効果があるパワースターが気に入らず、製薬の研究にパワースター以外にも、分岐状の水を保護できる薬草を探すように命じていたが、なかなか見つからなかった。製薬は、どのように、製品化しようかと考えていた。

「いつまでも元気で」は、問題になった。暇な国会議員まで質問した。効果がありすぎる、何か医薬品でも入っているのではないかと、云われ出した。事実万病に効いた。仕方なしに製薬は、研究結果を公表した。毒性実験の結果と濃度まで公表した。国の機関も調べた。

まだ財政再建中の国の機関は、高性能の液クロだけで分析した。強壮効果の薬理物質しか出なかった。そのうちに「いつまでも元気で」が薬になり、栄養ドリンクはなくなるとの噂も出て、買い占める人まででた。本当に病気の人も使い出していたので、売り切れや入荷待ちが続出し、使えなくなり、問題となった。アジアンミラクルやフレンチミラクルを代替品として使ってもらった。やはり「いつまでも元気で」がいいと言う医者もいて、世間に押し出される形で、疲労回復効果のある薬として、濃度を高めたものを「ジャパンドリーム」として売り出した。「いつまでも元気で」は、栄養ドリンクとして販売していく事を明確にして騒ぎもまた収まった。製薬は、薬とドリンクの利益の中から、技術指導料を遺伝子研究センターに支払い、徹行もボーナスを貰った。

「大変な騒ぎだったらしいよ。薬局の棚に並べようとする間にみんな売れるとか言っていた。信者の子では、100本も買った子もいるらしい。バイト代全部使ったと言って、泣きついてくる相談もあったたのよ。相談員が欲しがって、みんなで高く買って、半分も売ったら、使ったお金が返ってきて儲かったと言っていたけどね。」
香奈「増産して、騒ぎも収まったよ。友恵さんは、不思議がっていたよ。アジアンミラクルやフレンチミラクルの方が効能が強い筈なのに、薄い、いつまでも元気での方が何故いいんだろうかと言っていたよ。」
「飲んでいる子の話だと元気になるし、頭もすっきりして、記憶力も付くらしいよ。テストの前に飲むと全然違うといっていた。男に飲ませると本当にビンビンになるとも言っていたよ。そんな事は、効能評価は、出来にくいと思うよ。」
香奈「徹行から一杯貰ったから、飲んでみたけど、そんなに凄いかね。確かに頭はすっきりするけどね。トラストの中にも、空き瓶が転がっているよ。チャとココは好きみたいだよ。毎日飲んでいるよ。」
「あれは高いのよ。猫には勿体ないわよ。私はまだ飲んでないのよ。頂戴よ。」
香奈「ここにもあるから、持って帰ったら。」

恵が持って帰り、一本飲んで置いておくと、健が勝手に飲み、菊子にも評判のドリンクだだよと言って薦めた。治部金属が、特殊鋼を中心に成長し、世界のなんたらと云われていた鉄鋼と、利益では近づく所まで大きくなり、ついに上場までした。鉄鋼も治部金属が創業時に持っていた株も売らされ、鉄鋼の保有する株も少なくなっていた。菊子は大きな会社の経営で、忙しく、疲れていた。菊子は、つい飲んでしまった。健は、鉄鋼では役員になるかどうかの瀬戸際だったが、菊子はもう社長だった。その晩健は、ビンビンになり、菊子もいつになく燃え、健の突きも力強く、発射も元気一杯だった。

「いつまでも元気で」は、男では精液が増え、精子数も増加した。女では、子宮の中に受精卵が定着しやすくなる効果があった。「ジャパンドリーム」では分岐状の水が多くなり、分岐状の水やリング状の水の効果が相乗的に強くなるが、パワースターは分岐状の水の保護作用に使われていた。しかし、「いつまでも元気で」では、パワースターの強壮の効能も強く発揮できた。薬の「ジャパンドリーム」と、栄養ドリンクの「いつまでも元気で」とは、異なる機能だった。

菊子は、40代で妊娠する事になった。日本では、高齢出産が増えてきた。菊子は、妊娠を契機に、治部金属の社長から副会長になり、赤川に社長を譲った。菊子は、社長の激務で疲れ、菊子金属を技術中心の研究会社として、治部金属とは一線を持って維持し、治部金属は、甘辛らの処遇次第では、鉄鋼との合併も考えていた。赤川は、菊子金属時代から支えていた人たちの思いを知っていた。赤川は、聖子に相談しながら進め、快適製鉄とも協力し、利益で鉄鋼を抜くように努力して、売上げでは及ばないものの、利益では、鉄鋼を抜く事になった。治部金属は、大きくなった。支えてくれた人も多くなった。菊子金属、キクコドイツメタル、治部金属の保有する現金も多く、鉄鋼が吸収される事も恐れるようになった。

治部レーヨン、ついに上場へ

治部レーヨンは、工場数も増え、海外進出が多くなり、資金需要も増えて、ジブトラストや好調だった聖子ファイナンシャルにも増資して貰っていた。しかしこれ以上、ジブトラストや一族の会社に頼るのも嫌がった。広く資金を集める事を求めた。自由を求める気風が生きていた。今まで何度もあった上場の話は、筆頭大株主の紡績がつぶしてきた。二郎は、洋太郎とも相談し、治部レーヨンの上場に同意した。化学と紡績の合弁子会社ではあったが、ジブトラストや聖子ファイナンシャルまでも株を売らされた。聖子は、治部レーヨンとの海外の合弁会社での治部レーヨンの出資分の一部譲渡や技術センターを維持するなどの条件をつけた。合弁会社での快適の影響力を維持したいと粘り、お金の問題じゃないと言いながら、お金も相当入った。

スイスカナコインは順調に利益が伸びていた。コインのお店もコイン屋として、なんとか運営できていた。年寄り運用チームは、人の出入りはあったものの、益々高齢化、そのため少し若い年寄りも入ってきた。チャの取引の頻度も増えた。金も金貨も増えた。瑠璃や徹彦はもうとっくに増資は止めていたが、スイスの銀行口座の金も少しずつ増えていった。ココが香奈ファイナンシャルとして株式投資を薦めるように香奈に鳴くのも増えてきた。

超豪華ジブギニアホテル誕生秘話

ジブトラストと一族の会社にとっては、充実の時代でもあった。ジブトラストも新しい社員が増えてきていた。太朗もアフリカ快適ホールディングの社長を退く事も考えていた。太朗は、正子と相談していた。一方、それに先立ち、神太朗はカミカミフィナンシャルがギニアに近代的な医療センターを併設した高級ホテルを作ろうとしていた。太朗が時々ギニアに行っていたので、正子が太朗からギニアの話を聞いて、ギニアに行きたがっていたので、別荘の積もりで作っていた。商業的には、成り立ちにくいと思っていた。神太朗は、忙しかったので、建設や準備はヨハネルやマルトに協力を頼み、資金はカミカミファイナンシャルの当番だった神之助に任せた。神之助は、ケチくさい事が嫌いだったので、ヨハネルやマルトにも、金は気にせず、思い切り広大な土地にして、思い切り豪華なホテルを建てるように言った。五星どころや八星クラスのホテルになった。医療センターも正子のための医院のつもりが、研究所まで付属する病院を作ってしまった。へリポートまで作り、空港まで送迎するようにした。庭と云うよりも山もあり、広大な自然公園を持つホテルだった。エンジェルストーンによるエネルギー供給システムは、敷地内で人工光線でも成功しており、このホテルにも、自家発電やソーラー発電との併用で設備され、海水の淡水化装置も装備した。工事中には、井戸まで出てきた。大きな農園もあった。

客室も金をふんだんに使った本館と大きな離れのような外観は素朴だが、内部は現代的な、カッテージも複数点在するホテルだった。治部ホテルと名乗るからには豪華にしてねと俊子と言われ、ジブホテルのヨーロッパから、人も呼んで、内装も寝具も最高級だけを使った。レストランも何種類も用意した。神太朗も呆れるほど豪華なホテルだった。神之助は、カミカミファイナンシャルにお金が貯まり、神太朗が色々運用額が多いとか神経質に言ってきたので、この赤字を補填するために思い切り稼ぐつもりだった。神之助は、赤字を取り戻ために、鬼のように稼ぎ出した。しかし神之助の見通しは、少し狂った。建築中から話題になり、出来る前から、予約が入りだした。病院も腕のいい医師を集めた。神之助ルートは、商品相場での知り合いが多かった。腕はいいが・・・と云う医師は、金につられて寄ってきた。心意気や使命感はともかく、腕の良い医者は揃った。設備も最新鋭の設備を揃えた。死んだ人も生き返るとか云われ、アフリカどころか世界各地から、患者がきた。ホテルも一度は泊まりたいホテルと云われ、お客も増えた。流石に高いホテルだったので、満室とは、いわないものも赤字どころか相当の黒字になりそうだった。

正子、ジブトラスト引退?

正子「私も長い間、先物取引をしてきましたが、そろそろジブトラストから引退したいと思います。」
香奈「それは、私の方だよ。100才に近づいているんだよ。」
正子「太朗さんもアフリカ快適ホールディングの社長を引退するつもりらしく、元気なうちに二人でギニアに行って来ようと思います。神太朗さんたちもホテルも作ってくれました。」
香奈「正子さんも少し、お休みして、休憩を取らないといけないよ。暫くゆっくりしてきてから、もう一度考えてね。」

正子と太朗は、ギニアに一緒にいってしまった。

香奈「正子さんが、もうジブトラストから引退したいと云んだよ。今はギニアで、太朗君とのんびりしているよ。私も若ければ行ってみたいよ。」
「私も行ってみたいよ。ギニアジブホテルは、凄いホテルらしいよ。正子さんも40年以上稼いできたからね。」
香奈「それは、そうだよ。先物系は、若くないと大変だからね。先物は、既に神子ちゃんがカミカミファイナンシャルとして取引しているのよ。ジブとしても取引して貰って、正子さんには、ジブトラスト全体を見て貰って、私がゆっくりしたいのにね。」
「香奈さんは、ゆっくり出来ないよ。今でも時々取引しているらしいね。菊子さんが言っていたよ。」
香奈「たまにだよ。私も暇な時には、退屈だからね。それに怖くてそんなに外にも行けないし。恵は、ジブタウン見に行ったらしいけど、大丈夫だったの。」
「ちょっとだけだけど、何ともなかったよ。疲れなかったよ。恵教の本部も寄ったよ。大きなビルになっているので驚いたよ。」
香奈「恵は、元気そのものだからね。」
「徹行君のドリンクは、外で飲むと効いたと云う感じがするよ。」
香奈「そうなの。私も久しぶりに新宿のビルを見てくるかな。徹行のドリンクは、一杯あるから。」

「いつまでも元気で」ドリンクは、敷地内の老人たちの愛飲ドリンクに

香奈も、久しぶりに新宿のビルにいって、トラストの事務所に寄った。確かに「いつまでも元気で」は、外で飲むと疲れも吹き飛ぶような気がして、元気になった。菊子金属まで見に行った。菊子金属は、崩れかかったような鉄工所から、新しいビルになり、工場も新築し、毛利レアメタルもあり、資源分別ラインまで見学して帰った。それを聞いて元々元気な有希も、ドリンクを持って、治部洋服や直営店にも行きだした。ドリンクを外で飲むと疲れにくく、元気になったので、敷地内の年寄りも、ドリンクを手に、時々外に出かけるようになった。いくら元気でも敷地内の家に閉じ籠もっていると気分がすっきりしなかった。

神太朗は、栄養ドリンクなどは、馬鹿にしていたが、ギニアに行った正子には、念のため、大量に持たしていた。正子は、ギニアのアフリカ快適本社を見たり、太朗がヨハネルやマルトと、仕事の話をしている時は、ホテルでくつろいでいた。神太朗から、時々ドリンクを飲むようにとの連絡もあり、飲んでみると元気が湧いてくるようだった。太朗も一緒に飲んだ。太朗は、アフリカに行った時に、疲労し、判断力も鈍り、社長を辞める積もりだったが、ヨハネルやマルトも製鉄や化学などの単体の会社が忙しく、太朗に時々来る程度でいいので、もう少し、社長に留まって欲しいと言っていた。太朗も元気になり、その気になった。アフリカ快適ホールディングでの仕事が終わると、ロンドンやパリそしてフランクフルトに寄って、社長の引継の挨拶まで考えていたが、製鉄や化学の新商品の紹介や今後の協力を確認する場になった。太朗の引退説が流れていたが、太朗の元気な様子を見て、そんな観測は、飛んだ。若い会社なので太朗のような海外での経験は、まだまだ必要だった。正子もジブトラストの海外子会社に寄って話をした。新鮮な気持ちで聞く事が出来た。色々情報も聞いた。正子の考えも広くなった。正子が時々ドリンクを飲んでいるので、譲って欲しいと言ってくるジブトラストの子会社の人もいた。神太朗が山のように準備していたので、正子は、気前よく上げた。貰ったドリンクを飲むと、頭もすっきりし、疲れも吹き飛び、ビンビンになった。ジブトラストの子会社の首脳も金があり、早速個人で日本で買わせ、送らせた。ジブ本体の担当に頼む横着者もいた。

二人は、元気で日本に帰ってきた。神子が正子の代わりに先物もしていたが、株式や情報調査の仕事もあり、利益は、落ちていた。リフレッシュした正子は、又取引を始め、利益を上げだした。

ジブトラストの海外子会社の人が飲みだし、元気になっていったので、徹行のドリンクは、密かに海外でも有名になっていった。挨拶や支援を頼みにきた人が羨ましがって、その秘密を聞き、人から人に噂が広がり、偉いさんばかりが元気になり、不公平と云う声が広がりはじめ、製薬のヨーロッパの子会社が、それぞれの事情に合わせて製品化して、売り出した。エンジェルスターは、どんな所でも生育した。水が多い所では、特に繁殖した。ただ秘密保持のため、山間部が多かった。パワースターは、水田のような環境でないと難しかったが、少量で良かった。「ジャパンドリーム」も薬として、承認の準備を始めた。

未来エネルギーシステム誕生!

香奈「正子さんが元気になって、又働きだしたよ。前よりも儲けているよ。神子ちゃんも吃驚しているよ。」
「時々休むのもいいのよ。私もこの頃は、たまに財団にも行くようになったの。徹行君のドリンクは、大したもんだよ。疲れないよ、無理はしないけどね。敷地内でじっとしてるよりもずっといいよ。」
香奈「そうだね。徹さんもドリンク持って、時々毛利レアメタルにいっているよ。ロボット工学研究所の作業場に、エンジェルストーンを使ったエネルギー供給システムが完成したのよ。毛利レアメタルと菊子金属と特殊レンズ研究所からも少し出資して貰い、香奈ファイナンシャルが多く出資して、未来エネルギーシステムと云う会社を作ったの。機械と資源開発も少し出資したの。敷地内とギニアのホテルで成功したから、状況を整理して、営業方法やシステムを検討しているのよ。勝も、ロボット工学研究所でドリンク飲んでいるらしい。時々工場にも行くよ。」
「会社が一杯できたね。」
香奈「年寄りの道楽が多かったからね。失敗した時に迷惑かけないように、香奈ファイナンシャルが多く出資して別会社にしたのよ。」
「みんな長生きして、事業も成功したね。」
香奈「勝のロボットなんて、高い道楽だったのよ。どれくらい使ったのか分からないほどだったのよ。香奈オフィスのためのロボットだったし、仕方なかったのよ。上手く行きだして、機械よりも利益が出て、人も増えたし、もう機械に吸収する事もできないの。」
「菊子さんもそういってたわ。治部金属は、赤川さんが、大きくして、鉄鋼より利益があるようになったらしいの。キクコドイツメタルも現地の人が頑張って大きくしたらしい。もうみんなが考えて動いていると言っていたわ。菊子さん自身は、鉄鋼に吸収して貰う事も考えていた時もあったけど、もう出来ないと言っていたわ。」

聖子の気まぐれで快適農作物研究所日本の構想持ち上がる!

聖子は、日本でも実験農園を運営したいと思いだした。ブラジルやアフリカでの農園で、試験的に出来上がった農作物を見ていると、日本でも何か出来るのではないかと思うようになった。ブラジルは調子にのって次々とブラジルの国に会う農作物を改良していき、ブラジルの至る所で農園を作っていった。利用できるものは、何でも利用してきた聖子であったが、快適農園の農作物を取り扱うようには、治部食品やイチコプロダクツは、動いてくれない。たまたま敷地の隣に広い田園があった。治部東京不動産に依頼して折衝して貰うと売ってもいいといった。安くはなかったが、ケチな聖子も治部レーヨンの上場益も入っていたので、気が大きくなり、聖子ファイナンシャルで買う事になった。

香奈ハイテク工業団地出来る

その隣には、もっと大きなトラック工場があったが、リストラで閉鎖になった。ジブトラストには、自動車会社から、多額の資金提供の依頼があった。数千億に及ぶ資金を、転換社債とするか単なる貸し付けとするなど銀行も含めて話し合っていた。香奈はまだ知らなかったが、話は、実務ベースで進んでいた。香奈は、勝から近くの閉鎖になったトラック工場は買えないだろうかと言われていた。諏訪に機械がロボット製造ラインを作ったが、手狭になったし、勝も諏訪は遠すぎて怖くてそんなに見に行けないので、近くの工場を買いたいと頼んだ。香奈は、神太朗に頼んだ。香奈は、儲けていた香奈ファイナンシャルの資金で対応するつもりだった。神太朗は、交渉して安く、ほとんど居抜きで買うことにした。古い工場なのでそんなに秘密もなかった。ジブから融資の話も進み、古いトラック工場を香奈ファイナンシャルが購入する事になった。

トラック工場には、広い空き地があった。毛利ロボット工学研究所は、ロボット製造工場を空き地に建て、今までの建物は補強して倉庫として使うことにした。エンジェルストーンを使ったエネルギー供給システムも使用して、ついでに未来エネルギーシステムの工場も作った。毛利レアメタルも資源分別ラインの工場も作った。敷地内に点在していたみんなの研究所も広くして集合させて、大きな研究所ビルも建てた。まだ空いていたので、菊子金属もテスト工場と研究所を作った。今までの菊子金属の所は、事務所と工場を拡張した。香奈ファイナンシャルが出資している企業は、関連している事が多く、集約すると便利だった。香奈ファイナンシャルも大きく資産を伸ばしていたが、この総合工業団地は、香奈ファイナンシャル単独で作り、香奈ハクテクの各社に賃貸で貸す形にした。香奈ファイナンシャルの現金は、相当使ってしまった。

聖子の気まぐれのため、快適農作物研究所日本の構想が難航

農園は、快適農作物研究所日本が建ち、農園に新しい品種が云いたい所が、日本にはまだ遺伝子研究センターしかなかった。気まぐれの聖子の決断に慌てて、快適農作物研究所と遺伝子研究センターとが、泥縄式に、何を栽培するか検討していた。快適農作物研究所の日本は、本部となるので、人選も重要だった。ブラジルから呼ぶか、アフリカから呼ぶか、遺伝子研究センターの植物スタッフの兼任とするから始まった。検討は、長引いていた。徹行の薬草が足りなくなりそうだったので、エンジェルスター、パワースターを、取りあえず栽培する事になった。

「敷地も広くなったね。香奈さんが買った工場は広かったね。菊子さんも今までの所は工場を拡張して、テスト工場と研究所は、みんなの近くが便利と云って越してきたけど、まだ空き地があるね。」
香奈「工場を4つも建てて、みんなの研究所が入れるビルを建ててもまだ空いているんだよ。発電は、未来エネルギーシステムにしたけど、井戸水は、枯れているらしいよ。地下水も掘れないし、公共水道の水を使う事にしようとして調べたら、敷地と聖子ちゃんの農園は同じ岩盤の上だけど、工場は、半分位逸れるらしい。農園には、湧き水が出てきているのよ。今調べているよ。」
「私も見たよ、結構湧いていたよ。敷地内の井戸水も水位が上がっているらしいよ。」

敷地内が広がり、水も湧いてきた

敷地と農園の境界線当たりから、水が湧きだし、栽培には便利とため池を作っていたが、流れ出すのも芸がないと云って、敷地と農園の境界付近に大きな貯水タンクを設置し、タンクの外側には、岩のように見えるようにして一定の高さになれば、滝のように農園のため池に流れるようにしていた。農園の溜め池から、新しく作った工場の貯水タンクに回り、水処理をして処理後の水の貯水プールを作った。この湧き水は、とても綺麗だった、飲用のための処理をして新しく高純度の高分子膜濾過装置もつけた。従来の井戸水の水位が上がっていたので、一定以上の水位になれば、貯水タンクに回すようにした。湧き水も敷地内の井戸水の水位上昇も安定してきた。真一郎や徹行が、調べてみると井戸水の中の分岐状の水も増えていたが、湧き水は、分岐状の水だけでなく、リング状の水もあった。敷地の井戸水も別の貯水タンクに取り、一定の混合比になるようにバランスを取り、バランスタンクも作った。

香奈「この頃、お水美味しくなったと思わない。チャもココも喜んでいるよ。ジブトラストが、湧き水も飲めるようにしたんだよ。金もかけたよ。」
「美味しくなったよ。それにしてもあの農園は、滝のようにため池に流れるし、溜め池には、鯉までいるし、工場に水を流す水路が小川のようになり、農園と云う感じではないよ。庭園みたいだよ。薬草を栽培しているとか言っていたけど。あんな竹のようになるの。」
香奈「確かにいい感じになったね。私も朝散歩しているよ。あの薬草がドリンクの原料なんだよ。元々大きくなる薬草だけど大きくなりすぎと徹行も言っていたよ。」

「いつまでも元気で限定品」誕生

敷地内は広くなり、滝のように時々流れる水の飛沫も立ちこめ、不思議な霊力の里になった。ここで栽培したエンジェルスターの抽出液からは、分岐状の水もリング状の水も溢れるほど出ていた。強壮効果のあるパワースターも大きく、背も高くなり、草ではなく、竹のようになった。葉の薬効も上がり、分岐状の水もリング状の水もより活性化されるようであった。遺伝子研究センターが交配したエンジェルスターも茂みのように繁殖した。ここの実験農場で採れたエンジェルスターから採った抽出液は、あまり薬効が強いので、濃縮液として真一郎の研究所に置いて、研究しようとしたら、又濃縮液を少しこぼしてしまった。今回は、少しだった。濃縮品も一杯残り、今後の研究に使用するつもりだった。足りなくなりそうだった薬草もどんどん大きくなり、量の確保もできた。「ジャパンドリーム」は、薬だったし、製法を変える訳もいかず、「いつまでも元気で」に、極微量混ぜ、「いつまでも元気で限定品」として特殊品として販売するつもりだった。日本快適農作物研究所も体制が固まり、実験農場として返すために、農園に植えた薬草は全部回収しようとしたが、ため池の近くのパワースターは、竹のように根を張り、下の茂みのように繁殖したエンジェルスターだけを採って、農園を聖子に返した。借地料は、これから話する事になっていた。聖子にも「いつまでも元気で限定品」を、お礼として相当渡した。日本快適農作物研究所も、体制がきまり、ブラジルとアフリカから、同数の人を派遣し、遺伝子研究センターが兼任の植物スタッフが常駐し、所長や副所長を交代制とする事になった。竹のようになっていたパワースターは、ため池の雰囲気にあまりにもあっていたので残した。ため池付近には水田が出来たので、お米の栽培をして、ため池から離れるほど、水が要らない野菜や果実を栽培するようにした。聖子の希望で大きく美味しい野菜や果実を栽培する事になった。研究所近くには、ビニールハウスも造り、快適農作物研究所の日本も動き出した。ここで上手く行けば、イチコプロダクツにも、実際に日本で採れた農作物としての話が出来るのだ。

魔法のような実験農場

この実験農場は、成功したとも失敗したとも分からなかった。この実験農場では、何でも上手くいった。お米も倒れる程実り、美味しかった。研究としては、多くの可能性が分かった。大きくて美味しいいイチゴやトマトなども沢山採れた。イチコプロダクツや関係先の農場では、それほど大きく生育しなかったり、収穫も悪かったりする事もあった。それでも新しい品種のストックは増えていったし、研究成果は、ブラジルとアフリカにも影響を与えた。

聖子は「いつまでも元気で限定品」の効果を身をもって体感した。二郎も聖子も年になっていたが、若いときの快感が蘇ってきた。太朗も正子も体感した。神太朗たちも綾子達も体感した。「いつまでも元気で限定品」を飲んだ人もみんな体感した。農園の竹のようなパワースターの下には、又茂みのようにエンジェルスターが繁殖し、竹のようになっていたパワースターの葉も良く茂った。聖子はこの実験農場でのエンジェルスターとパワースターの栽培を続ける事にした。「いつまでも元気で限定品」は、生産数量限定品となった。聖子は、借地料も貰ったが、「いつまでも元気で限定品」を相当貰う事になった。この実験農場でのパワースターもエンジェルスターもやたらと葉が茂り、生産量は伸びていった。実験農場で栽培した農作物は、あわよくば世界で栽培して売る積もりだった。そうなるものもあったが、実験農場ほど大きくならず、美味しくはなかった。

ブラジルやアフリカとはその点は違ったが、それでも沢山出来たので、限定品として近くの安いよスーパーでは、売る事が出来た。子供の頭ほど大きくなった苺やトマトは、有名になった。イチコプロダクツや関係先の農場では、半分程度の大きさだった。聖子実験農場としてそこで作った農作物は、安くなかったが、飛ぶように売れた。お米は、イチコプロダクツで契約栽培している農家で試験したが、収穫量は多かったが、実験農場で出来たものと比べると、それほど美味しくなかった。それに大きな米粒のお米を、おいものように食べるにも抵抗があった。実験農場でも一部をモニター販売すると、農園も狭くなり、敷地の周囲を取り囲むように、広げていった。治部東京に買収を頼むと、あっさり買えた。ただ敷地内の美術館や銀行の前の道の反対方向の広い土地は、一族の機械会社と競争関係にある機械会社が所有し、倉庫としてしか使っていなかったのに、売ってくれなかった。それでも農園は、敷地を取り囲むように大きくなり、ため池からの水路は、小川のように拡張していった。水路を作っていると、今までの農園とは反対側に敷地との境界線から、湧き水がチェロチェロ出ていた。そんなに勢いもなく、小さい別のため池を作るにした。それでも実験農場の水は、全て賄えるようになった。香奈ファイナンシャルが作った香奈ハイテク工業団地の奥の大きな工場も閉鎖になり、今度は、カミカミファイナンシャルが買い取ってしまった。

「この間の苺は、みんなで切って食べたよ。出来ている所は、凄かったよ。スイカみたいな苺が一面になるのは、壮観だったね。」
香奈「あれは、高いらしいよ、料亭が直ぐに買ってしまうのよ。治部ホテルでも買うらしいよ。苺の回りにショートケーキが並ぶと吃驚だよ。切人も喜んでいたよ。大きくても美味しいね。ここでないとあんなに大きいのは、出来ないらしい。」
「りんごほどの苺は、イチコプロダクツでは、出来るらしいね。快適農作物研究所も凄いね。バナナも大きい物も作ったし、とうもろこしも大きいね。」
香奈「遺伝子研究センターも大きくて収穫量のある農作物を作るのは、快適が世界で一番と言っていたよ。しかし、お米をお芋のように食べるのには抵抗があるね。」
「お米は、大きくしても今イチだったね。」
香奈「お米は、大きくするよりは、美味しく、沢山とれるようにするらしい。薬草の近くなので、少しは水田もいるらしいよ。農園も拡張して敷地を取り囲むように大きくするらしい。実験農園も農作物を売ったりするから、安いよの全店分程度の販売量は収穫しないといけないといっていたわ。」
「香奈さんの工業団地の奥も買い取ったの。まだ空き地もあるのに。」
香奈「あれは、カミカミファイナンシャルが買い取ったの。今は、要らないけど、売ってもいいと言ってくれたし、今後必要になるかもしれないと神子ちゃんが言ったらしいよ。」
「美術館の前の倉庫の方が近くて、もの凄く広いよ。」
香奈「あそこは、機械のライバル会社が持っているから売ってくれないのよ。治部東京不動産がまだ交渉しているわよ。」
「あのドリンクの限定品には、実験農場の薬草が入っているらしいね。あれは、効くと評判だよ。菊子さんは、怖がって飲まないよ。50超えても妊娠しそうだといっていたよ。私は、もう妊娠は無理だけど、元気がもりもり出てくるよ。」
香奈「あれは、元気は出るけど、女は60才以上でないとすぐに妊娠する可能性があるらしいよ。男は、ビンビンが1時間も続き、勢いも凄いらしいよ。マリアさんも凄いと言っていたよ。正子さんも元気になったよ。聖子ちゃんは、薬草を渡して、山のように貰うらしいよ。」

聖子の農園も広くなり、安いよスーパーでの野菜や果実の一部は、聖子実験農場で栽培して、モニター販売とし、有名になった。農園の外側には、秘密保持の為木を植えた所、あっという間に大きな木になった。

敷地内の前の広大な工場跡地を倉庫として、持ってた機械会社は、大同機械会社と言い、細かい工作機から、大きな工作機械まで作り、職人肌の精密な機械を作る会社でありながら、営業活動が下手で、利益は低くかった。ただ昔からの名門だったので、豊富な不動産を日本各地に持つ会社であった。一族の機械とは長年の競争関係にあった。経営計画も保守的で発展せず、和子が大きくした一族の機械会社との差は、広がるばかりであった。不動産収入に依存し、営業利益も低く、株価も精算価格付近で上下していた。外資に狙われやすい会社であった。何回かの外資の買収工作は、一族が団結して、退けていた。

カミカミファイナンシャルは、外資が買収に失敗し、大同機械の株価も急激に下がりだしたので、カミカミファイナンシャルが安値を拾う形で買いだしていた。それほど話題にもならなかった。買収に失敗した外資は、大同機械に買い取りを要求したが、大同機械は応じず、困った外資は安値で、全株をカミカミフィナンシャルに市場外で売った。一躍カミカミファイナンシャルが筆頭株主に躍り出た。事実が明らかになると、カミカミの買いと言われ、株価は急に2倍に上がった。しかし上がれば、カミカミファイナンシャルは売った。利益は低迷していたので、落ち着くと株価は下がり、あまりに下がると、カミカミフィナンシャルが買い、上がれば、カミカミが売り、大きく下がると云う状態が続いた。

アフリカ快適ホールディングの傘下に、大きな機械会社を作る計画があった。神太朗は、基本的な工作機器の要素が欲しかった。けっして吸収したい訳でも合併したい訳でもなかった。密かに合併ではなく新天地でみんなと協力して新しい機械会社を作ろう、大同機械の役にも立つよと呼びかけたが、長年一族の機械会社に競争心をもっている事でもあり、買収され事を恐れ、株を無断で買われたので敵対的と云って断った。

神太朗は素直な性格だったので、カミカミの平均購入価格以上に株価が上がれば売っていった。カミカミは、平均購入価格まで売っていった。大体カミカミとして元本は回収したが、大同機械は、株価が上がらない株になった。一方アフリカ快適ホールディングの傘下に、ジブや聖子ファイナンシャルに、毛利ロボット工学研究所、日本の機械、ドイツの機械、菊子金属そして現地の資本まで出資して、快適機械ができた。あらゆる機械を扱う大きな機械会社だった。大同機械の工作機器は最初の技術目標として、徹底的に調査して、高品質の金属そしてロボットの精度の目標になった。大同機械の機械は高品質だったので時間はかかったが、自動化ラインで安く出来るようになった。アフリカで売っていった。アジアにも輸出したし、日本にも世界にも売っていった。値段は、大同機械よりずっと安かった。一族の機械会社やドイツの機械会社は、地域や機械の種類などを調整していったし、いい機械は、代わりに売っていった。

カミカミは、会社精算価格以下の安値で拾っていたにも拘わらず、すべての保有株を売れなかった。まだ発行残高の1割も残っていた。だが株価は下がり続き、カミカミの平均購入価格よりも下がった。カミカミの平均購入価格より、少し高い価格にカミカミの全持株の売りが並んでいた。それで話題になった。大同機械の株は安く買えるチャンスなのに、多くの人は売っていった。一方、倉庫の売却交渉は、別問題で治部東京が担当していた。

大同機械の工作機械は高品質で、根強いファンはいた。同じタイプの製品で3割低い快適機械の製品をぶつけられただけだったなのに、不思議な事に売上げは落ち、赤字になった。内部保留も高かったが、配当も減り、株価は、もっと下がった。会社精算価格の半分程度になった。するとハゲタカのような外資が、含み資産を狙って、買いだした。漸く大同機械も事態の深刻さに気付き、密かに神太朗と話をして、一定の経営自主権を確保し、創業者一族も相当の株を保有する事を条件に、一族の機械会社ではなく、アフリカの快適機械の子会社になった。安くなった市場価格より1割程度安い価格で、快適機械への増資を割り振った。快適機械は、ディスカウントTOBもして、大同機械の創業者一族の保有も認め、非上場の会社になった。ハゲタカも諦めて、ディスカウントTOBに応じた。流通できない株になるので、それを嫌がる人も応じた。アフリカの快適機械の製品で、大同機械と同じようなタイプの機械製品の輸入販売も受け持つようになった。大同機械の技術は、優秀だったので、快適機械も、ロボットだけでなく、優秀な技術ノウハウを、安い価格で手に入れる事が出来た。大同機械は、快適機械、大同機械の創業者一族そしてカミカミファイナンシャルの会社になり、大同機械が北日本中心に持っていた不動産も利用しやすくなった。山間部を資源探索ロボットが探索して、幾つかの資源をみつけ、快適大同鉱山と云う別会社を作り、そこに香奈オフィスも出資して運営して、大同機械は、その配当も入り、高収益の企業になった。

ただ大同機械が窮地の時に、なんとか云う動物のような瑠璃は、瑠璃の個人会社が二束三文でジブの里近くの山脈を買い叩いて、鉱山を作り、大儲けしていた事が分かり、大同機械側は快適大同鉱山の設立案に難色を示し、神太朗は、この山脈の残りの盆地をカミカミが高く買い、大同機械の創業者一族のご先祖様が作った城跡を公園として残すなどの条件を付け、快適大同鉱山はアフリカ快適が筆頭株主とし、香奈オフィスは大同機械と同じ出資比率に減らすなどの条件を付けるなどの苦労もした。

敷地内の前の広大な工場跡地は、シブトラスト不動産グループは、治部東京不動産を仲介させて買収して、大きな工場跡地の倉庫は、ジブトラストが買い取っていた。そうすると湧き水が盛んに出て、大きな池と小さな池を作り、小さい池の周りにパワースターを栽培し、その下にエンジェルスターも栽培して池の雰囲気を作った。大きな池は、人工海水の池にした。普通の池にすると勿体ないので、快適農園とイチコプロダクツの実験養殖場とした。処理加工場付きの小さな実験牧場も作り、肉牛の飼育をした。香奈のハイテク工場群の小さい流通倉庫も作った。

「敷地も広くなったね。敷地の前の大きい池には、何故大きな鯛がいるの。海にいるものでしょう。」
香奈「海のような条件にして、養殖の研究をしているのよ。波も起こすらしいよ。湧き水だけの小さい池では大きな鯉がいるでしょう。快適とイチコプロダクツは養殖場もしているから、研究していると言ってたわ。鯛は、レストランでは料理にもしているのよ。鯛の活け作りを配達しても貰ったら、チャもココも喜んでいたよ。あんな嬉しそうな顔は初めてだよ。」
「猫には勿体ないわよ。由香さんも、美味しいと言っていたわ。でも私は、お肉がいいわ。ステーキは、美味しかったわ。」
香奈「私も食べたわ。美味しいかったね。あれも実験牧場で肉質改善した牛肉らしい。聖子ちゃんがお肉好きだから無理矢理小さい牧場も作ったの。ここの牛肉が一番美味しいらしいわ。」
「もう敷地といっても広いね。敷地内を全部歩くのも大変になったよ。洋治さんでも池の手前までしかランニングしないと言っていたわ。ホールもゲストハウスも立て直すらしいね。大きなマンションにするらしいね。」
香奈「ひ孫たちも結婚するような年になったからね。ホテルも造ったし、会議場も増設したから、ホールもゲストハウスもいらなくなったの。聖子ちゃんが、ホテル代も高いといって、快適農園は宿舎も作ったのよ。」
「ひ孫が結婚するような年まで生きるとは、思わなかったよ。それにしても香奈さんは若いね。瑠璃さんどころか奈津実ちゃんとも姉妹でも通るよ。」
香奈「有希さんが一番若く見えるらしいよ。尚子ちゃんの妹と云われたと言って喜んでいたよ。」
「孫よりも若く見えるのも凄いね。」

香奈ハイテク企業の躍進

ロボット工学研究所は、旧機械の東京工場と第二工場が稼働し、効率化したラインになり、諏訪で借りていたロボットの製造ラインは、機械自身がロボット工学研究所から一部の技術を借り受け、機械としてロボットも使用した自動化機械を作るようになった。香奈も勝も機械の大株主でもあり、孫も働いていた。合併は無理でも産業用のロボットの多くは、機械に技術供与し、若干のパテント代も貰った。しかし、ロボットの受注も増え、カミカミファイナンシャルの買った土地に新しく、広い第三工場を作った。

未来エネルギーシステムが、急速に伸びた。機械の発電機のノウハウも生かし、大きなシステムから、家庭用のシステムまで作り、従来の電気やエネルギー供給のサブシステムとしても使えるようにした。エンジェルストーンと人工金属のキクコメタルを入れて、太陽光の当たる場所に置いて、従来の供給システムに繋げば、電気の使用料は、激減した。雨降りや曇の日にも充填機能で人工光線も出した。エンジェルストーンと人工金属のキクコメタルのセットもそれほど高くなかった。急速に普及し、未来エネルギーシステムも大きな工場が必要になったし、エンジェルストーンの資源分別ラインを持つ毛利レアメタルやレンズを作る特殊レンズ研究所、キクコメタルを作る菊子金属も忙しくなり、大きな第二工場を作った。香奈オフィスもギニアやブラジルそして日本の毛利レアメタルの資源分別ラインで分別したエンジェルストーンを世界各地に売っていった。

治部ホームホテルと冶部ホームレストランも出来ていた

  カミカミファイナンシャルが追加して買った土地は、広くてまだ空いていたので、ジブトラストがお金を出して、治部ホテルの協力を受け、中層の治部ホームホテルを建て、隣接して治部ホームレストランも建てた。ジブトラストや敷地内の人や工場で働く人や訪問する人のための施設だった。ホテルは、客室そのものは、それほど多くないものの、様々な設備も用意した。様々な広さの会議室もあり、理髪店や美容院までもあった。

聖子の実験農場で栽培した農作物もレストランでは使えた。治部ホームレストランは、ジブトラストが所有していた料理屋が移転してきた。今までの料理屋は、閉鎖しようとしたが、ファンもそれなりにいて、小さくそのまま残す事になった。配達は治部ホームレストランがする事になった。ホテルもレストランもジブトラストの内部機関に入れ、ジブトラストサービス部門が拡張された。営利目的ではなかった。

治部ホーム不動産には、香奈ファイナンシャルとカミカミファイナンシャル、聖子ファイナンシャルそしてジブトラストが敷地周辺の土地の一部を出し合って、新しい治部ホーム不動産を作った。大きな敷地は、治部ホーム不動産が一体的に活用する事になった。それぞれの土地の一部は依然として前の所有者の名義も残り、敷地内の家も個々の所有者と治部ホーム不動産との共同所有になっており、複数の名義が混然となっていた。分割して処分できないようにしていた。今や治部ホーム不動産は、運営はジブトラストの管理セクションの中のジブサービス部門が管理していた。美術館は特別に、財団法人となっていた。

「ここも益々便利になったね。なんでもあるホテルやレストランまで出来たね。配達だけでなく、レストランにも行けるようになったよ。」
香奈「工場で働いている人のお昼のお弁当も配達しているんだよ。ジブトラストでもお昼のお弁当や夜食のお弁当も注文しているよ。」
「ご飯も美味しいよ。あれは、聖子ちゃんの農場で作ったものらしいね。お米の粒も大きいよ。でもよくやっていけるね。」
香奈「赤字になると思ったから直営にしたけど、外部からの注文も多くて、飯時は、大変なんだよ。配達の人も調理の人も増やしたのよ。ホテルも、ジブトラスト直営にしたのよ。俊子さんの治部ホテルズには協力して貰ったけど、赤字になると思ったのよ。でも工場にくる人だけでなく、ジブトラストにくる人も泊まるようになったよ。ゲストハウスよりは、便利らしいよ。」
「財団の理事会も、ホテルでしたいといっても、予約がなかなか取りにくんだよ。」
香奈「ホテルも増設するよ。空き地もあるしね。紡績も洋服も役員会は、ホテルでするようになったみたいだよ。香奈オフィスも会議をしているよ。」

治部ホームレストランは、治部ホームホテルの食事を受け持ったが、敷地内の家のためのレストランであった。敷地内の家を香奈たち、恵たちそして俊子たちの家には、大きな食堂を作り、それぞれ関係する家の人の食堂と喫茶室となった。3カ所に限定して、朝や昼には、フルーツ、パン、ハムそしてローストビーフなどの食材を配達して、配達の簡便性を図った。治部ホームレストランも忙しくなり、配達の簡便性も必要になってきた。大きな電子ジャー、電子レンジや大型冷蔵庫なども置き、一族の人はいつでも、そこに来ればご飯が食べられるようにした。後片づけも簡単になり、お手伝いさんも楽になった。夕方は各家にも配達もしたが、3カ所への配達は多かった。泥棒などはいなかったが、プライバシーの問題もあり、食堂と各個人の部屋との間仕切りやドアは厳重にした。それでも気分転換にホテルやレストランで、コーヒーを飲んだり、ご飯を食べたりする人もいた。この3カ所での食事代や維持費は、ジブトラストの出資額がそれぞれの家で多かった香奈、恵そして俊子の三人が支払って、それぞれのジブトラストの配当から引く形になった。一応この三人が、上位出資額の三人であった。ホテルやレストランは、一応ジブトラストのジブサービス部門にして、内部に付属している組織でもあった。ジブトラストの出資額に比例して優待割引券も出した。レストランや食堂の残飯は、有機肥料とする設備もあった。レストランは聖子の実験農場と契約して、農作物や牛肉や養殖の魚も供給して貰う事になっていた。簡単な精米所や小さな食品工場の設備も備えていた。

ジブギニアホテルとジブモロッコホテル

ジブギニアホテルは、好調に推移していた。病院は研究所の経費も高く、赤字ではあったが、ホテルはそれを上回って大幅な利益があった。流石に高額の出資だったので、資金力のあったカミカミファイナンシャルではあったが、神之助が、鬼のように儲けだしても、現金が、元どおりになるには、2年かかった。今度は、神子が負けずに、モロッコで大きく、豪華なホテルを、建てたいと言って、ヨハネルやマルトに頼んで作り出していた。

今度は、大きな砂漠も持つホテルだった。大きな豪華な最高級ホテルを海岸近くに作り、砂漠の中に、一見するとテントのような小屋が幾つか点在するホテルだった。エンジェルストーンのエネルギー供給システムと自家発電と海水の淡水化システムを有効に使っていた。小屋の下には、数室の近代的な設備がある小さなホテルがあった。海岸から砂漠まで含む広大な敷地を持つホテルだった。ジブホテルモロッコもジブモロッコ医療センターとアフリカ砂漠研究センターを併設した。聖子のアフリカの快適農作物研究所からも人を派遣して貰い、農作物の研究と砂漠の有効利用を研究する研究所だった。神子は、神之助と違い、金、金の商品相場の知り合いはいなかった。由緒正しい株ゴロの連中だったので、落ちぶれ医師とか株で身を持ち崩した科学者しか集まらなかった。それで金に困っていても折り目は正しかったし、教育も高かった。アフリカの未来に貢献すると云う名目を口にしていた。砂漠をジープで突っ走って、点在する小屋のようなホテルでゆっくり過ごすと云うものだった。いやな人は、海岸近くに、ジブホテルギニアに負けないほど豪華なホテル本館でゆっくりして、砂漠の端のアフリカ砂漠研究センターで砂漠を体験する。もっと無精な人は、砂漠の端に行って、砂漠を少し走り、帰ってくると云う酷い内容だった。神太朗は、金を砂漠に捨てるようなものだと思った。神子は、アフリカの未来に貢献すると云う名目をタテに取って、無理矢理進めた。神子が砂漠が好きだった。神太朗は、建前に弱かった。神子も儲かるとは、思わなかったが、砂漠はそれほど高くなかったし、本館は、海岸近くのホテルなので、そんなに損はしないと思っていた。赤字の分まで稼ごうと神子も、神代と一緒に砂漠ツァーにいこうといって、神のように儲けだした。神子も神代も読みは甘かった。海岸の本館のホテルは満室に近く、砂漠の中の小屋のホテルは、ほとんど満室になった。ジブモロッコ医療センターは、赤字にはなったが、アフリカ砂漠研究センターは、なんと砂漠でも生育できる農作物を探し出した。ロボット工学研究所のロボットが頑張って栽培した。おまけに砂漠の下の資源まで探してしまった。高額の出資も、今度も数年で神子たちは稼ぎだし、ホテルも病院の赤字以上稼ぎ、金を捨てるつもりの砂漠から、逆に金を稼いだ。神子たちは、稼ぐのに忙しく、砂漠ツァーはまだいけなかった。それでもジブモロッコ医療センターは、周辺の医療には貢献して、マリアの財団にも協力したし、アフリカ砂漠研究センターでも砂漠研究は進められ、アフリカの砂漠も買いだしていた。

ギニアやモロッコの病院に集まった医師たちは、腕はいいが、心意気は低い連中だった。金に困り、アフリカに流れてきた医師たちは、マリアの財団が、金をちらつかせると、付近の巡回診療にも、つき合ってくれた。アルルたちのギニアのチームは、ギニアでジブギニア医療センターを中心に巡回診療も始めていた。マリアの財団は、医師や看護婦の奨学金も出していた。マリアは、財団としてもいずれは自分たちの病院や医療スタッフを持ちたかった。腕も心意気も良い人たちは、直ぐには出来なかった。エジプトでは、バトラッシュが、アルルを羨ましがって、大きな病院を探し、ヨハネルを口説き、快適鉄鋼の付属病院として、マリアの財団でも中心の医療センターとして活動するようになった。

ジブトラストや冶部一族は安定化しつつあった。

マリアの子供の切人も、正子の孫で神太朗の子供である神一たち、神子の娘の神代たち、聖子の孫の羽朗や辺朗たち、菊子の菊太郎なども大きくなってきた。

ジブトラストは、正子が基本的に先物取引は止め、神子が先物と株式を統合して取引し、神之助が、商品相場や為替をしていた。カミカミファイナンシャルの当番制も二人の競争心をあおると言う事で止めていた。それぞれの運用上限を五千億と決めた。その上神太朗もカミカミの利益の一部の長期的運用も担当していた。カミカミファイナンシャルは、各地のジブトラストの子会社の社員を兼任にし、世界のマーケットのある場所に子会社を作り、独自の口座を持ち、カミカミファイナンシャルの出資者が、出資金の範囲でそして運用上限が設定されたら、その範囲で自由に取引出来るようにした。三人とも二つの財布をもって、運用していった。それでも誰が儲けが多いかと云う事で競争するのは、やむを得なかった。逆に三人で競争して儲けだした。神太朗ですら、長期的運用と云いながら、短期間で売ったりする事もあった。又異常な勢いで資産が増えていった。カミカミファイナンシャルは、運用するお金としては、ジブトラストに近づいていった。いつしかジブトラストのように、制約のある株式投資は控え目になり、長期的な投資と企業支援や起業の神太朗、先物と調整売買の神子と商品相場と為替の神之助と云うようになり、ジブトラストと同じようになった。もう一つのジブトラストへの道を進んでいた。神太朗は、香奈の運営の方向性が優れていた事を再確認していた。カミカミファイナンシャルは、当初、正子が支援していた低価格な軽工業や食品とサービスから、アフリカ快適ホールディングに出資してから、基盤産業やホテル、病院などへの傾斜を強めていた。先物や商品相場への比重が多いファイナンシャルでもあった。

ジブトラストの運営は、まだ香奈が最終決定していた。ジブトラストは、現金の保有額、貴金属の保有そして、上場や非上場を問わず、株の保有は遙かに多かったが、先物を含めた株式取引や商品相場や為替で運用する金額は、全体としても、カミカミファイナンシャルとの差はあまりなくなっていた。ジブの子会社でも会社としての運用は、ヨーロッパのマリアチームを除き、なくなっていた。会社としての取引はあまりなく、子会社の取引担当がそれぞれ孫会社として取引し、その利益を貰っていた。子会社は、情報や長期保有について本体と連絡しながら調整しているだけだった。ただみんな高給だったので、金があり、情報が入るし、株屋の業からか、それぞれ自分の個人会社を作り、個人会社としての取引はしていた。それは自由だった。株式投資は、ジブトラストとして保有株式が増え、役員も出している子会社もあり、それなりの制約もあったが、それに触れない限り、ジブトラストとしては自由だった。ジブトラストは、香奈が好む基盤産業、金を含む貴金属そして不動産とから、正子が好む食品やサービス業まで幅広い産業に出資していた。

香奈ファイナンシャルは、そんな取り決めもなく、香奈は、ジブトラストで得たお金の相当部分を香奈ファイナンシャルに出資し、自分でも投資し、香奈ファイナンシャルの年寄りハイテク工業団地まで作っていた。一族の若い人や高齢者の起業段階から、援助していっていた。ただ出資した企業が利益を上げ、配当も多く、資産規模は膨んでいった。香奈も暇になると色々と制約もあったが、株式投資もしていた。ボロ株を買い、売り飛ばし、一発倍増の機会があれば取引したくなる香奈だった。ココも益々元気になり、時々香奈に、にゃーと鳴いた。マリアも、海外の香奈ファイナンシャルで先物を中心に積極的に運用していた。利益が増えればマリア財団への寄付も増えた。瑠璃や徹彦などの子供たちも、徹行などの孫たちもジブトラストからの配当も入り、余裕があれば、配当は貰えないものの香奈の事業継承の意味もあり、出資していった。自由気ままなファイナンシャルではあったが、香奈が次々と出資していったので、ハイテクと資源中心に保有株式も多かった。香奈は、長府や諏訪では、自分たちの管理会社も協力して、香奈ファイナンシャルも金を出して、不動産の再開発も進めていた。運用手数料も配当もない運用会社だった。出資額の調整もせず、国内では香奈が、海外では、マリアが自由に投資できた。

聖子ファイナンシャルは、その収入の多くは聖子の事業の利益に依存した収入と出資している企業からの配当からなるファイナンシャルであった。聖子の事業が急拡大していくにつれ、聖子ファイナンシャル自身も拡大していった。聖子は、海外中心に服飾から、農園、養殖、食品企業そして軽工業が主体であったが、カミカミフィナンシャルと共に重工業に、香奈オフィスと共に資源へと、快適グループは拡大していった。このファイナンシャルだけは、少しの配当と事業報告書を出した。

俊子は、ホテルと治部サービスと不動産を運営していたが、洋治と共に洋之助一族の各管理会社も管理していた。俊子は考えて、洋太郎や洋治などに別れていた上場株を洋之助会に集め、暇な洋治がお世話係になり、紡績や治部洋服、ホテルなどの非上場の会社の管理会社でもそれぞれが保有する非上場を相当程度出資して、新しく洋之助と美佳の会を作り、管理会社を統合する管理会社を作った。洋之助と美佳の会は、個々の管理会社を統轄する管理会社となった。まだしぶとく紡績の会長に居座っていた洋太郎がお世話係になった。配当の分配などの雑務は、それぞれ尚子や綾子たちに管理の手伝いをさせていた。洋之助の血筋は、二つの大きな管理会社に集約されていった。洋之助の血筋はこれらの大きな管理会社に出資していくだけで、少しは事業を継承するようにした。しかし、カミカミは正子と洋太郎の血筋だけの管理会社で、聖子ファイナンシャルは、二郎と聖子の血筋であり、ユキエンタープライズは洋治と有希の血筋の会社であった。悦子にはエツコオフィス、有希や彩香には治部産婦人科小児病院もあり、和美には快適交易があり、禎子にはジブトレーディングなどがあった。これらは洋之助と美佳由来の非上場の会社とは異なり、それぞれの血筋が出資していっていた。際限なく広がる洋之助の身内の関係会社に細かく出資する事は大変になり、そのための管理会社の整理でもあった。

治部ホテルは海外も含め、数も増え、治部ホテル、エレガントホテルそしてニコニコホテルの3つのブランドも、ブランドイメージも固まり、治部ホテルズインターナショナルと云う運営統合会社を作り、俊子、悦子そして綾子が協議して、運営していった。各ホテルも、ジブトラスト、カミカミファイナンシャルそして聖子ファイナンシャルなどの資本も入っていたので、統合して運営料を貰う事にしていた。治部サービスとニコニコサービスも、治部総合サービスと云う統合会社を作り、その二つの調整をして、そこには海外のホテル用の治部インターナショナルサービスにも入り、治部海外サービスとエレガントサービス、ニコニコ海外サービスに別れ、ブランドイメージに沿った備品の開発や運営をしていた。治部サービスは治部ホテルと付属する複合ビルのサービスに特化して、国内のニコニコサービスは、ホテル外部のサービス部門を全て引き継ぎ、乳幼児施設や協力する病院、赤ちゃんスキ不動産の賃貸住宅などのハウスクリーニングも含めて取り扱い、一番大きくなった。敷地内のジブトラストサービスは、ホテルやレストランも抱え、ジブトラスト付属の独自のサービス部門であった。海外ではそれぞれのホテルの中でサービス部門を抱える程度だった。

有希は、利益比例で有希個人に入り、洋治が有希名義で管理会社に出資したり、ジブトラストの前身の運用会社に出資したり、有希名義の預金としていたが、貢ぎ病が治った後は、有希個人名義で増資して、保有していた治部洋服の株も出資して、有希の貰う各種の配当や報酬を貯めて、有希の会社、ユキエンタープライズを作り、治部産婦人科小児病院に出資したり、寄付しながら、それ以降の配当や報酬もユキエンタープライズに出資していた。聖子が稼ぎだすと、貯めていたユキエンタープライズのお金も有効に使い、競争して有名ブランドハンターとなり、治部洋服への増資や治部洋服やジブトラストなどと共同出資して、ブランドを買い取る事に、お金を使っていった。そして収入が増えていった。子供の禎子、洋一郎と孫の尚子たちにも、少しずつ自分の個人会社であるユキエンタープライズに出資させていった。有希も流石に90才になると自分名義で貯めていくようになった。

治部洋服は、洋服事業を行い、直営店を持ち、そしてグッズや小物を扱っていたが、それ以外にも有名ブランドを数多く持つようになり、それぞれのブランド毎に独立していった。治部洋服と治部洋服の管理会社そして、各ブランドの事業会社と有希の個人会社であるユキエンタープライズが絡む複雑な企業体になっていた。中級品から高級品を揃え、経済が発展し、所得が増えてくると利益が上がる傾向もあった。治部洋服や治部洋服の管理会社そしてユキエンタープライズは、それぞれの小物やグッズを製造する中小企業にも、ジブトラストと共同で、或いは独自に出資もしていた。発展し、拡大を続ける聖子の事業に対抗して紡績との協調を進めていた。尚子や夫の柿崎孝も、複数の企業に入り、管理していた。有希自身は、商会に入り、娘婿の雅也まで商会のトップに押し上げていたが、自前としての貿易網も禎子や信治のジブトレーディングも使っていた。ジブトレーディングは、北米中心の貿易ネットワークを作り上げ、商会と調整しながら、治部洋服や快適洋服などの実際的な輸出入を行う会社になって、貿易実務を中心にその業務を特化しつつあった。

恵は、真智子から預かったお店やビルを繁盛させ、若い時はお金も稼いだが、次第に財団や恵教としての活動に時間が取られた。それに真智子の財産の相続対策でお金が必要だった。香奈から借りたお金も、恵は実は気にしていた。夫の健次郎は次男だったが、いつの間にか、真智子の世話をして、ビルの管理も引き受けていた。真智子も、財団で頑張っている恵を援助しようと恵にはジブトラストへの出資も少しは多くしていた。それに香奈の強制的な増資の時にも恵は増資に応じていた。そのため、恵は、真美や由香と相談しながらも、一家を取り仕切るようになっていた。ジブトラストの高額の配当も貯め、子供たちにもジブに出資させたが、それも管理会社に貯めさしていた。真智子の遺産の土地もマチコジブ記念不動産として集約して有効利用していたが、そのお金も貯めていた。息子の嫁の小夜は、ビルの管理会社に貯まっていた金を使い、ジブの助けも借り、大阪と福岡に商業ビルを作り、利益を上げだした。孫の嫁の菊子が、小夜たちと相談して、マチコジブ不動産のお金や各管理会社のお金も使い、ジブの助けも受け、複数のビルからなるジブタウンを作った。東京で高収益のビルを持つ事で、やがてはジブからの出資も返し、借金もせずに、ビルを整備する事が出来た。菊子は、自分の事業を始め、主に小夜たちが、貸しビルだけでなく、ビル全体の運営をしていった。恵の考え方は浸透し、借金をせずに、ジブの配当も加え、手堅く運営していった。真智子と清彦の一家は、鉄鋼の管理会社と化していた真智子と清彦の管理会社以外に、健太郎と由香、そして健次郎と恵などの家族単位の管理会社を作り、マチコジブ記念不動産も含めて、それらの管理会社が出資しあって、ジブタウンを作っていた。ジブタウンを含め、多くのビルは、個々に独立しながらも、ビルの運営は、統合して運営するビルの総合運営会社である冶部ビル株式会社を作っていた。

恵自身は、娘の千恵夫婦と財団の運営にほぼ専念していった。千恵と友貴の子供の友一は安倍化学に入り、会社の金をチョロまかす事もなく、気が強い絵里と結婚して、敷地内に住んでいた。娘の千恵美は行き遅れにもならず、信じられない事に学者になり、教育心理学の先生になり、同じく心理学者の真部学と結婚して、暇があれば財団の相談室でカウンセリングをしていた。

菊子は、結果的に治部金属と云う大きな会社まで作ってしまったが、上場して、直ぐに妊娠した事もあって、副会長にはなったが、ジブトラストとの兼任の赤川に運営も任せてしまった。菊子金属は、冶部金属の上場益も手にして、配当を出したものの、菊子金属にも相当お金を置き、菊子金属は、技術中心の会社となり、財務も楽になり、自由に研究して、香奈年寄りハイテク技術企業群の一角に入り、更に発展していった。

太朗もアフリカ快適ホールディングの社長を退き、ヨハネルを社長に、マルトを副社長にして、後を頼み副会長になり、名経営者として、惜しまれつつ社長を退いた。快適製鉄も世界のなんとかと云われる程大きくした。快適化学も傘下に多くの化学会社を抱える大きな会社にした。経営の実務は、ヨハネルが快適製鉄の社長になり、マルトが快適化学の社長になって、社内も握り、海外でも認められるようになっていた。ヨハネルやマルトは、農園や縫製工場を持った快適ギニアや快適エジプトの単体快適もそれぞれ率いながら、ジブギニアやジブエジプトの役員も兼ね、重工業を主体として、成長するアフリカを牽引していた。アフリカでは、快適とカミカミそしてジブトラストが一体となって多くの企業をネットワークを作っていた。アフリカの快適機械は現地の人を社長にして、日本の機械からも役員を出した。

商会、化学は、それぞれ大きくなり、一族の雅也や洋一郎が社長になったが、一族だからといって社長になれる会社ではなかった。 鉄鋼も真智子の夫の信彦は社長になったが、それ以来役員にはなるが、社長にはならなかった。会社として時代に沿った優秀な人を社長にしてきた。それだけに、曲折はあるものの、発展していた。

資源開発は、徹は中東依存を高め、それが利益率を高め、高収益な企業になったが、それが企業の足かせになり、徹自身も危惧して、資源の多角化を研究していた。徹彦は徹とは違い、そこまでの指導性はなかった。

機械は大きくなり、上場してからも合併や吸収をしていったが、基本的にはファミリー企業であり、功一郎の血筋を中心に一族の人を育て、外部の優秀な人を入れる事で企業を守っていた。和子以降の国際担当も技術屋の勝や勝彦そして勝彦の子供の勝一と続いていた。

貴金属やカズコウォッチは、完全な家族企業として、和子の血筋で固めていた。紡績は、洋之助の血筋が引き継ぎ、老舗として高品質の製品で、人や社会を愛し、人を育てる方針には、揺るぎようもなかった。子会社である化学や孫会社の治部レーヨンは、大きくなり上場していったが、発展する分野には、子会社や孫会社とともに出資し、紡績は大きな、一つの財産管理会社でもあった。

製薬は違っていた。大きな会社になり、一族の人を中心に引き継いでいきたい気持ちはあるが、それなりの人でないと難しく、友恵の後は、やはり、一族以外の人となった。ただ友恵は、高齢ではあったが、元気で影響力のある会長であった。

ジブトラストでは、正子は神子に先物も任せ、太朗とゆっくりして、時々香奈と一緒に、神太朗から提案のあるジブトラストとしての支援や出資などに決定していくようになっていた。神一や神代も、法学部や経済学部に通いだしていた。

香奈もついに引退か?

香奈も100才を超え、運営も安定してきたジブトラストを退き、正子を会長に、神太朗を社長にして、相談役になろうとして、神太朗と相談していた。

神太朗「香奈おばさんには、まだ最低20年間は指導して貰わないと、ジブトラストも安定しません。アジアだけでもそれくらいかかりそうですね。」
香奈「もう神太朗君がやっていけるわよ。正子さんは天才的な先物ディラーだったから、全体の流れも見られるわよ。神子ちゃんも相場の流れを巧く読めて、先物も利益が出ているわ。神之助君は、神様みたいに商品相場や為替で儲けているわよ。それをまとめていけるのが神太朗君でしょう。」
神太朗「お母さんは先物では天才かもしれないけど、トラストを運営するのは無理と言ってます。神之助は、取引の天才で、危険性や人の悪意を読みとるのに優れているから、取引に向いているのです。神子は予測だけです、先物ディラーでもやっていけるでしょう。自分だけで、取引で儲けるだけなら、3人で十分です。でもそれだけでなく、企業も育てる必要があるから、僕がいるんです。僕は、人の善意や可能性を引き出して、企業を大きく、役に立つように、人を支援し、会社を支援していく役割なんです。最初に僕が生まれたのは、そう言う方向で投資して行きたいと思ったからだと思います。そのためには予測も必要で神子が生まれ、企業を育てるお金をもっと稼ぐために神之助が生まれた。ただ僕は、実際にみんなをまとめ、人の心を掴め、組織として動かす事は出来ていません。その役目は神一たちなんですが、神一たちがそれをできるようになるには、早くても20年後なんです。遅ければ30年後かもしれません。マリアさんは何にもいわないけど、神子もその頃にはアフリカも発展するといってます。お父さんも快適製鉄や快適化学の基礎を固め、ヨハネル君やマルト君に任せました。ヨハネル君やマルト君がそれを育て、切人君たちが大きくして、活躍できるのもそのくらいなんですよ。神子も、その役目は香奈おばさんがいるから、まだ必要ないと言ってます。羽朗君たちが快適グループもまとめていくのは、時間も必要です。財団や施設をみどりたちがまとめ、パトラッシュさんやアルルさんたちが組織を作り、世界の組織との協力関係を築き始めるのにも、それくらいかかります。今は恵おばさんがまとめている組織を動かし始めているだけで、自分でまとめているわけではありません。それにアジアを始め、各国での組織を作っていく必要もあります。」
香奈「恵も私もそんなには生きられないわよ。もう十分やったと思うけど。」
神太朗「みんな自分の役目を果たすために、生まれてきたのです。長くても短くても、それぞれ、自分の役目を果たすために生きなくてはならないと思います。不幸にしてこの世に生まれてくるべき子供たちが、生まれない事を嘆いて、財団が出来た。財団の活動で、少しずつ、子供たちが生まれてきた。そしてその子供たちが暮らしていけるように、お母さんたちが働きやすいように、施設を拡充してきた。生まれ、育てるのを援助するために病院ができた。もっと生きたい、元気になりたい子供たちを援助するために、遺伝子研究センターができた。そしてもっと多くの人に役に立つために、各国にこれから運動を広げていこうとしている。これらの運動をサポートしていくために、トラストが大きくなった。少なくとも後20年間は維持して、トラストも財団も安定して、人もお金も供給していく必要があると思います。それには、香奈おばさんや恵おばさんそして財団や病院を援助し続ける人たちが必要なんです。」
香奈「そんなには生きられないけど、元気な内は、みんな頑張っていくよ。」

二人とも、100才は超えていたが、財団やジブトラストにとってもまだまだ必要だった。正子は神懸かりのようにお金を儲けてきた、神太郎も可能性のある企業を増やした、神子も神之助も儲けた。マリアも突然儲けだし、アフリカへも進出した。しかし香奈がジブトラストの発展のために努力し、その基礎を築いていた。単に株屋の成金さんではなくなっていた。ホストクラブで遊ばず、ツバメを飼わなかった。香奈は、お不動さんの絵や掛け軸を集める以外には、ほとんど金を使わなかった。一族の保護と言いながらも、世界に目を向け、世界中で企業を育ててきた。まだまだ分からないが、神一や切人たちがトラストを、羽朗たちが、聖子の快適洋服の各種の工場を発展させ、各種の複合産業体にまで大きくしたものを、更に地域に貢献できる産業にしたり、みどりたちが財団を率いるまでには時間がかかりそうだった。香奈や恵の孫たちは優等生で、一族を維持は出来そうだったが、新しい可能性を見つけ切り開くパワーはそれほどないようだった。尚子や綾子は、自分の夢や一族の夢に、協力してくれる男を旦那にし、自分の夢を追いかけていた。優等生の孫たちにも時には菊子たちのような新しく、元気な人の血が入り、徹行の言うように、みんなが後天的に獲得していった知見までも受け継がれ易いのであれば、次の世代は、孫の子の世代は、もっと可能性に満ちたものかもしれなかった。

香奈や恵たちはやっぱり現役!

香奈は90才までは、海外に出る事も多かった。それに若い頃には無茶な事をしていたし、元々身体も剛健とは言えなかった。美佳や真智子よりは身体は弱いと思われていたので、製薬は、香奈には徹底的な検診をしていたが、全く老化もなく元気そのものだった。恵はパワフルだったし、多くの人を動員して、情熱を持って、財団や施設をもり立てていった。金さえあれば、出来る仕事ではなかった。

「やっぱり、仕事している方がいいよ、財団や施設そしてビルなんかもよく分かるよ。のんびりだけどね。」
香奈「そんなにバタバタしないでやっていければいいよね。真理さんなんか、1日に数時間しか仕事の事は考えないと言ってるよ。神太朗君ものんびりでもいいから、会長としてやって欲しいと言うんだよ。でも来客があると結構忙しいのよ。徹さんもあんまり長くはしないみたいだよ。」
「私も財団から結構相談もあるのよ。理事会もここでやる事も増えてきたの。健次郎さんも会計ソフトをネットで相談にのったりしているよ。いつまでやれるかは、分からないけどね。」
香奈「徹さんは、未来エネルギーシステムには、時々いっているよ。これから大きく普及していくといっているよ。ジブのビルや関係する会社では、採用していくらしいよ。勝も、勝彦と一緒にロボット工学研究所にいっているよ。道之助さんの研究所も毛利レアメタルや菊子金属の第二研究所も一緒のビルで研究しているよ。」
「元気な内は、少しは何かしないとね。」
香奈「徹行の薬も世界で承認されるらしいよ。徹行だけでなく、洋也さんや村井君たちも、真一郎さんの研究所に行ってるみたいだよ。ここの病院は、検診の時以外は、暇だからね。ここの研究所も結構人が多くなっているよ、又新しい事が見つかるかもしれないね。ここの研究所で飼っていて、敷地内の水を飲んでいるマウスでは、もはや死ななくなったらしい。計測不能とか言っていたよ。チャもココも元気だよ。」
「でも実際には永遠に生きる事なんては、出来ないだろうね。」
香奈「それはそうだよ。永遠には生きないよ。でも元気な内は、頑張らないといけないよ。無理は出来ないけどね。」
「そうするために、生きてるのかもしれないね。言われなくても、そうさせられているけどね。」
香奈「本当にそうだね。いまだに難しい事を平気で相談に来るのよ。」

冶部の里の不思議

大きな森の端の敷地内の美術館の隣に小さい一族の銀行の支店があった。敷地外に出ないで、お金の出し入れをするために作った支店だった。有希や聖子のお金は、現金主義が治らず、金額も膨らみ、一族の銀行が取り扱いをするために、作っていた。預かり預金は大きいのに、静かだったが、工場やホテルも出来て、人も増えてきた。

銀行の隣には美術館があった。不定期だが、時々開館していた。香奈の不動明王のコレクションは、絵や掛け軸が中心だったが、真理のお地蔵菩薩のコレクションは石像や仏像が中心だった。二人ともコレクションが増え、多くは美術館が保管していた。そして時々美術館で、特別展も開いていた。なぜか、ここに来るとみんな元気になっていた。

美術館の客A「ここは、滅多に開館しないね。色々と面白い絵もあるのに。今回は不動明王の特別展だけか、地蔵菩薩の特別展は今回はなしか。」
美術館の客B「でも、ここも便利になったね。近くにホテルもレストランも出来た。池まであるよ。」
美術館の客A「治部の里の奥は、何も見えないよ。こんなに大きな木が一杯あって。」
美術館の客B「ここの奥には、ジブトラストの本社もあるんだよ。うちの社長はたまに、挨拶に行ってるよ。大変なんだ。資料も一杯要るから、準備に時間がかかって。」
美術館の客A「でも君の会社は、治部とは関係ないのじゅないの。僕の会社は、治部の息がかかっているけどね。新宿に連絡すればいいらしいよ。社長は、株主総会前には、説明には行ってるけど。」
美術館の客B「君の会社には役員が入っているだろう、治部の関連会社から。だから説明も簡単なんだよ。僕の会社は、断られたんだよ、人もいないし、安倍化学とは競合する部分もあるとか言って。説明も大変なんだよ。それに治部は大きい会社には、みんな関係しているらしいよ。海外でも相当関係しているらしいよ。」
美術館の客A「訳が判らないね。ジブトラストっていうのは、だれがやっているの。」
美術館の客B「それは判らないよ。うちの社長も知らないらしいよ。だって、うちの社長は、ジブトラストの常務とか言う人に説明するらしいけど、ジブトラストの社長とは会った事がないらしいよ。常務は社長秘書ととか云う人と一緒に聞くらしいよ。うちの社長は緊張しているよ。車は言われた時間の30分前に、美術館の前で待ってるらしい。運転手はぼやいていたよ、いつも定刻の3分前に会社に入らないといけないから。嘘ついて、見放された会社もあるらしいよ。社長室がすべて決めているとも言われるよ。ジブトラスト本社は古い小さいビルの中で、2つのフロワーしかなく、社長は、女の人らしいよ。でも秘密だよ。」
美術館の客A「それくらいは、僕も知ってるよ。うちの社長のお祖父さんが、ジブトラストの会長に頼んで、会社を支援して貰って、大きくしたらしい。まだ会長は元気だけど、僕の会社は三代も変わった。年一回株主総会前に、会長に挨拶に行ってるよ。気さくな人らしいよ。簡単な会社の状況を説明して、財団に寄付しましたとか、財団からの紹介で何人か雇いましたとか言ってるだけらしいけど、実務はあまりしていないような口振りらしい。社長は、あの人は昔からそんな口調だ、でもどんな人でもあんな調子で話するとか言ってるよ。若く見えるらしいけど、もう100才も超えているらしい。会長は、不動明王のコレクターで、今日の不動明王の絵もほとんど会長のものだよ、何もなければ、会長がお不動さんの絵の事を話して雑談に終止して終わりだけど、大切な事があると社長秘書を呼んで、大きな事が突然決まる事もあるらしい。突然、会社の買収や合併なんか打診される事もあるらしい。」
美術館の客B「社長秘書は怖いらしいよ。言ってない事でも知ってるらしい。うちの社長も知らない事もあって慌てるらしい。調査や研究センターも凄いらしいね。」
美術館の客A「でも社長秘書は何人もいるらしいよ。女の人が出てきた事もあるらしいよ。」

神の子たちや切人たちが、やはり神の子か普通の人間かはまだ判らなかった。しかしまだ敷地内に住む人では、美佳や真智子の世代が亡くなってから、まだ亡くなった人は出ていなかった。霊力は益々強くなっていた。泥棒すら怖がって来なかった。例え来ても、治部の里の中心部の森の中に来る事すら、出来なかった。工場や倉庫から金縛りになり、農園では、動けなくなった。朝まで長時間金縛りになって、飢え死にしそう泥棒がいて、記憶が朦朧となって、お題目やお念仏を唱えたり、ご先祖様に頼み、漸く脱出して、必死に手を動かして救急車を呼んだり、ホテルの前で倒れた事もあった。そのため警察は池や森の中も大勢で探索した。ただ警察官の中でも金縛りにあった人が、数人出た。調べてみると横領している人がいた。他の人は、非番だったので風俗で遊んだ人だった。

「森の中なんで探索していたの、救急車も来ていたわよ。」

香奈「俊子さんにね、依頼があったの。ホテルの前で倒れていた人がいてね、工場の塀で金縛りになって動けなくなったらしい。もう駄目だと言う時にご先祖様が出てきてね、謝りなさいとか言って、何とか脱出して、ホテルの前で安心して倒れたらしいのよ。森の中や池に死体でもあったら大変とか云って、探索したのよ。神子ちゃんはね、やましい心があれば治部の森や池まで来れないし、反省すれば金縛りは解けるし、帰る事は出来ると言っていたわ。でも警察の人も金縛りになる人が出て、大騒ぎになったのよ。」
「警察の人がどうしてなの。」
香奈「風俗で遊ぶと大変らしいよ。中には横領していた人もいたらしいよ。」
「怖いのね。友貴の馬鹿も風俗で遊んで、敷地内に入った時に金縛りにあって、千恵に携帯で謝って、ようやく動けるようになったと言っていた事が有ったわ。もう昔の事だけどね。あの時言っていれば、切っていたと思うわ。」

そんな噂も流れ、ジブトラストに時折来る来客者たちは前もって身を清め、襟を正して入った。

未来エネルギーシステムは、普及していった。ついに自動車のエンジンとしての研究も進んでいた。健康食の本が好調な洋治までかり出され、鉄鋼の営業だった健太郎と共に、自動車会社と折衝する事になった。「いつまでも元気で限定品」は敷地内の年寄りたちに愛飲され、みんなの元気の源になった。買収した倉庫を利用した流通倉庫ではあったが、未来エネルギーシステムのエンジン工場に代わった。日銀を退職して、健次郎の会計ソフトを手伝っていた政則も、香奈ハイテク企業の未来エネルギーシステムで働き出していた。アフリカ快適ホールディングの副会長になっていた太朗は、暫くはゆっくりしていたが、ヨハネルとマルトたちと連絡を取ったり、聖子や和美と相談したりと忙しくなった。

神代と陽太

マリアと徹行の間の切人も結婚しそうな年頃になった。切人は、フランスの大学院に行き、国際経済学を勉強していた。神代は、念願の砂漠ツァーに、陽一、神子夫婦と一緒に行った。砂漠研究センターが、砂漠開発を進め、砂漠が小さくなりそうだったので慌てていった。砂漠にもエンジェルスターは、生育し、淡水化プロジェットも進み、砂漠の中に点在していた筈の分館もリゾートホテルに替わりつつあった。

神代「もっと砂漠の真ん中にあった筈なのに、砂漠は小さくなったのね。」、
神子「だから急いできたのよ。奥の分館は、まだ砂漠の中なのよ。明日行くからね。砂漠研究センターは、砂漠の中の資源も見付けて、砂漠の開発が進んでいるのよ。もっと奥にも分館を造ることにしているけどね。」
神代「こんなに早く、開発が進むとは、思わなかったわ。もっと遅いと思っていたわ。でもこれはこれで、素敵よ。オアシスみたい。」
神子「動く時は、早く動くものだからね。帰りには、ギニアにも寄りましょう。陽一さんは、アフリカ快適本社と話もあるのよ。」
神代「そんなにお休みしていいの。」
神子「お母さんも元気になって暇そうなのよ。替わりに先物もしておくと言っていたわ。それに少しのんびりしたら、久しぶりにヨーロッパのマーケットもゆっくり見たいのよ。カミカミでも、ヨーロッパの証券会社に口座持っているからね。陽太は、何故一緒に来ないの。」
神代「陽太には、彼女がいて、あんまり日本を離れられないのよ。三日に一度は、逢わないと寂しがるといっていたわ。」
神子「まだ大学2年生よ。まさかもう赤ちゃん出来ていると云う事はないよね。」
神代「まだ大丈夫みたいだよ。相手は、アイドル歌手なの。出来ていたら大騒ぎになるわよ。可愛い子だよ。」
陽一「あの子は、可愛いよね。渋谷にも連れてきたよ。」
神子「なぜ私に言わないのよ。」
陽一「神子は、みんな知っていると思っていたよ。」
神子「陽太は、いつも朗らかだし、分かり難い子なの。神代は、大学出る時には、妊娠しているとは、分かっているけどね。」
神代「まだ誰ともつき合ってもいないのに、それは違うと思うわ。私は来年卒業なのよ。」
陽一「来年二人とも結婚だね。妊婦の結婚も一族の伝統だよ。」

陽太のつき合っていた喜多川優花は、人気のある清純派タイプのアイドルだった。高校時代にスカウトされ、テレビ番組に出て可愛いと評判になり、歌も下手なりに一生懸命に歌う所から人気が出た。今は、人気絶頂だった。陽太は、明るく元気な青年で高校時代からファンクラブもあったと云うほどモテた。大学でも女の子に人気があったし、喜多川優花のファンでもなかった。たまたま仲間とお酒を飲みに行き、帰りに、走って転んで蹲っていた優花に会い、持っていた救急セットで怪我を手当をして、ハンカチで包帯としてあげた。陽太は、小学生のように、若林陽太と名前を書いていた。仲間は盛んに東大を強調する格好をする嫌味な学生もいた。それはそれで終わっていた、優花の心の中以外は。やがて優花は、陽太を探しだし、ハンカチにお礼を言って、つき合うようになった。優花は、有名人だったので、陽太が、優花をこっそり訪ねるようになった。優花は清純派ではあったが、清純ではなかった。何人も男を知っていたし、少し変な癖もあった。少し乱暴にされたいと云うタイプであった。陽太は、優しかったし、紳士的に礼儀正しかった。優花は、逆に不安になり、陽一や神代に紹介して貰っていた。神子は、予測能力があると云われ、本当の優花の正体が判明しそうで後回しになった。優花は、ゴムをつけて一杯ついて欲しかったが言い出せず、ついに決心して、ピルを飲み、陽太に結婚するからと云ってやって貰う事にした。妊娠したら、芸能界も止めると云った。ピルの替わりにビタミン剤を飲んできた事は気が付かなかった。陽太には、水と云って「いつまでも元気で限定版」を二本分飲ませ、自分は、二本も飲んだ。「いつまでも元気で限定版」は、一日に一本にしてくださいと書いていた。優花は、それでなくても陽太としたかった。二本も飲んで燃えあがってしまい、陽太もビンビンになり、釘でも打てるほど堅くなり、元々大きかったものが、より大きくなり、2時間も突いた。陽太は始めてだから2時間で済んだが、4時間突き続き、女の子が、呼吸困難になった事があり、注意書きが出来た。優花は、30分突かれて絶頂感を感じ、一時間半感じ続け、最後の発射時には、訳が分からなくなっていた。水に浸かったほど汗をかき、優花は、陽太のものにひれ伏す女になっていた。色気は溢れるほど出た。陽太は、熱いシャワーを浴び、腰が抜けた優花を洗い、体を拭き、ベットに寝かせて、漸く家に帰って寝た。神子たちが旅行中の事であった。

ギニアでのんびりした神子と神代は、少しだけ先物もし、オーバーナイトまでした。神代と神子もそろそろ上がると思った。翌日大きく上がり、手じまいし、アフリカ快適から、帰ってきた陽一と自然公園をジープに乗って、ギニアの自然を満喫し、最後の夜も豪華な食事をして、神子と陽一も充実した夜を過ごした。そして日本に帰ってきた。神代は、4年で単位も取り、何もする事がなかった。カミカミファイナンシャルで神子の替わりにヨーロッパのマーケットを担当していたので、お昼前に起き、いつものように、治部ホームホテルに行き、コーヒーを飲んでいた。大学の2年先輩の頼りないと評判の香川大介が、走り込んできた。大きな世界のなんたらと云われる自動車会社に入っていた。未来エネルギーシステムの営業担当は、鉄鋼の専務まで務めた治部健太郎と化学の副社長まで務めた治部洋治であった。それに新型エンジンは、世界を区分けして、複数の会社で一斉に発売する事で話が進んでいた。新しい工場を作り、エンジン仕様の打ち合わせや値段交渉をする事になっていた。相手は、100才前後の大先輩であり、世界のなんたらと云われてた自動車会社の役員や技術担当も緊張し、東京本社に書類を忘れ、会社や工場見学の間にぺーぺーの香川が使い走りをさせられていた。洋治に健康食談義を語らせ、時間を稼ぎ、食事の後で詳細に詰めると云う事になり、ようやく香川が間に合った。ぺーぺーの仕事は終わり、飯食って帰るだけであった。急がされた香川は、財布ももってこなかった。そこで神代に気付き、言葉巧みに、偉いさんが食べていた美味しそうなステーキランチを神代に奢って貰う事になった。香川は頼りないが、言葉使いは巧みであったし、東大の経済も出ているし、馬鹿でもなかった。それにステーキランチを食べたいと云う純粋な気持ちで、神代に声をかけた。二人でステーキランチを食べ、香川は帰った。それだけの話であった。

世界のなんたらと云われる自動車会社と未来エネルギーシステムとの話はまとまり、香川が使い走りと云うか連絡係りになり、未来エネルギーシステムによく来た。香川が来た時には、前日の神代は不思議に大儲け、機嫌がよく、香川に奢っていた。土曜日の夕方、今度は、香川が奢ると言って、神代と一緒に都心に出た。そしてお酒による間違いと錯覚が重なり、頼りない香川が、神代にとってラッキー○○と感じ、「いつまでも元気も限定版」も飲み、神代も絶頂感を感じ、元気な一発を貰った。神代は、香川大介なんかそんなに好きではなかったが、香川の一発は、神代の運用成績を上げたので、その後も成績が落ちてくると、大介の一発を一月に一回ペースで、体の奥に受けた。偶には、学校にも顔を出した。単位はとっていたが、講義もまだ受けていた。

優花は、1週間に一回ペースで、陽太の突きと精液爆弾を貰った。陽太の精液は、優花の働く元気の素だった。ピルは忘れず飲んだ。清純派のアイドルだった優花は、慎重だった。ピルとビタミン剤を間違ったのは、最初の日程度だった。でも一回でも子供は出来るのだ。優花は、卑猥なほど綺麗になり、犯したい女ランキングの上位に入った。しゃぶるようにマイクを持っていた。

目出度いお正月がやってきた。優花も神代もおめでとうと言われた。優花の電撃的な結婚引退も伝えられた。

春になる前に、二組の結婚式が、治部ホームホテルであった。優花もサヨナラツァーもあったし、神代も卒業式を待っていた。

「久しぶりだね。妊婦の結婚式で学生のおまけ付きまであるよ。」
香奈「昔の雰囲気だね。優花ちゃんは、雰囲気は、聖子ちゃんに似ているよね。読みは同じだけど、良子さんの娘の優香さんとは、違うね。」
「さすがに、神子ちゃんも分からなかったでしょうね。」
香奈「それが、神代ちゃんの事は、分かっていたのよ。陽一さんも今年は、二人が一気に片づくと言っていたのよ。」
「それなら、わざわざ妊婦にしなくてもいいのに。」
香奈「神代ちゃんは、卒業を待っていたし、優花ちゃんは、サヨナラツァーの約束もしたのよ。今は、ここにホテルもあるし、便利だよ」
「それはそうだね。子供が落ち着くまで、ここでゆっくりするしかないね。健太郎さんの話では、流通倉庫だけをエンジン工場にするのね。牧場もつぶして、美味しいお肉も食べられないと思って心配していたのよ。」
香奈「ここでないとあのお肉が出来ないのよ。イチコプロダクツの牧場では味が落ちるらしいよ。それに小さい牧場でしょう。健太郎さんや洋治さんたちが、相手と交渉して、ある程度エンジンも固まれば、パテント代をとって、各社で独自に変更して製造していく事になったのよ。ほっといてもやがてはそうなる。そうなら、むしろ、パテント代なんかを貰う事にした方がいいと言う事になったの。ここでは、新しいシステムやブロトタイプを考えていく事になったの。パテント代なども少しずつ下げていく事でも合意したのよ。最初は、各自動車会社からも人も派遣して貰うのよ。工場の建設費は直ぐに回収する程度の工場にして大きな工場にはしないの。当座の量だけ作るのよ。ここでは人も育てて新しいシステムや資源を考えていく事になったの。」
「そう言われれば、そうかもしれないね。みんな歳だしね。」
香奈「若い人も、入れているけど、みんな元気なのよ。健次郎さんも菊子金属の経理をみて、治部金属にも助言しているのよ。」
「健次郎さんも元気になったよ。会計ソフトは好調といっていたけど、やっぱり本当の経理がいいのね。友貴まで、元気になって、ドリンク持って財団や施設にいっているわ。」

神一は、他を圧倒するほどの頭の良さで、開学以来の天才と言われていた。女どころか、男も先生も圧倒していた。印刷されたとも思えような字で書かれた解答用紙は、そのまま模範解答になった。人間とは思われていなかった。黙って座れば、心を読まれ、模範解答する神一には、流石にどんな女の子も、声がかけられなかった。法学部を卒業すると、直ぐにジブトラストに入り、神太朗の手伝いをする事になった。

神代は、妊娠出産もあり、経済学部を卒業して半年程遅れて、ジブトラストで働く事になった。名前も香川に変わり、女の子の神千代を産んでいた。

陽太は、優花が男の子の神彦を産んで、パパさんになったが、変わらず法学部で政治学の勉強をしていた。神子や陽一の丸掛かりであったが、明るく学校に行っていた。優花は、所詮アイドルだったので、本当はそんなにお金を貰っていた訳ではなかったが、強欲なプロダクションがスケベ心で、資産家の神子から違約金を取ろうとしたのが、裏目にでて、優花は、大きなお金を貰っていた。しかし優花の金は、優花の金なので、神子は陽太の学校のお金や陽太夫婦の生活費も出していた。優花は、元アイドルといっても単なる高卒の二十歳すぎの女の子になった。神子は、優花には神彦を午前中託児所に預け、ゆっくり体を休めるようにいった。今はゆっくりしている事が仕事なのよ。もう少しすれば、ゆっくりしたいと思っても出来なくなるわよ。私も陽一さんもお金はあるのよといった。神子は、正子に言って、みんなの子供をカミカミファイナンシャルに入れるようにして貰った。神子は、香奈にもいってジブトラストにも入れて貰うように頼んだ。

カミカミファイナンシャルは、神太朗や神子たちも、もう自分名義では出資せず、少しずつ子供たちにお金を貸して、子供たち名義で出資した。出資させるかどうかは、正子が判断していた。運営自体は、ほぼ神太朗に任せていたが、やはり正子の管理会社であった。正子は、それに先立ち、配当や報酬をカミカミファイナンシャルに出資する事をとっくに止め、ジブトラストに預けていたが、一部のお金は、孫に均等に割っておいた。香奈が、ジブトラストもひ孫枠を作り、各家に割り振っていった。

ジブトラスト、大幅増資

香奈「陽太君や神代ちゃんも子供ができたので、ひ孫枠を作ったのよ、まさかひ孫枠までつくるとは、思わなかったわよ。もう年齢も制限しないわよ。私が枠の割り振りするのも、もう最後と思うから、枠は大きくしたわよ。」
「香奈さんでないと出来ないよ。みんなが納得させるのは、特別枠もあるし、みんなの事も知ってるしね。」

最後と思って、一挙に出資金総額は、700億程度になった。配当は出資金の3倍も出していたので、各家では配当で対応できた。ジブトラストの資産や運用利益は安定して大きく、財団の寄付を1000億としても、3100億程度のお金は事業収入や保有している会社からの配当で賄える程、ジブトラストは大きくなっていた。

三家族以外は、ほとんど最低単位であったので、最低単位の出資が増えた。元々の基礎となっていた三家族の比重も崩れていたのでそれを調整するために、三家族に通常枠として各100億ずつ追加割り当てを行い、大幅な増資になった。特別枠は枠拡大の対象から省いた。香奈や正子、マリアそして三人の子は特別枠もあった。和子の家は、香奈の指図で瑠璃が動き、真智子の家は、恵の指図で小夜が調整した。洋之助の家は、正子が俊子と相談して、調整した。

今回の枠拡大ではほほ倍になったが、主に香奈や恵、そして俊子などは十分高齢であったので、出資枠を香奈や恵そして俊子への生活費負担の現状も考慮して、親よりは子供が少ない出資となるようにしながら、曾孫たちに分散させていった。奈津実の子供たち、神太朗の子供たち名義で枠を取り、孫の配偶者のための枠は、祖母たちが分散して余分な枠を取っていた。その祖母たちは孫のために配当を貯めておく事になった。三家族の枠は大きく、夫婦別々に十分出資できた。三家族とも体質は異なるが大体同様に考えていた。ジブ一族は基本的に母系社会の要素が強く、女中心に考える傾向があった。

優花は、陽太と結婚して、芸能界を突然辞めると言った時に、プロダクションと揉め、違約金とか言われたので、清香の事務所に頼んだ。清香は、法曹界でも化け物と言われだしていた。優花は、鵜飼いの鵜のようにプロダクションに搾取されていた。相手側の弁護士が震え上がり、引退サヨナラツァーをしてくれたら、そのツァーの収益の多くの部分を優花に渡して幾分かの退職金を出すと云う事で折り割った。優花サヨナラツァーは、涙、涙の連続で、優花の「又みなさんと笑顔で会える日がきっと来る。それまでのお別れです。」と言った言葉は、流行語になった。空前のお客が入り、最後に武道をする筈のホールで、1日だけする予定だったのに、1週間もサヨナラを言った。優花は多額のお金を貰っていた。

優花は、神彦が出来て又陽太に突いて貰い、ドリンクなしでも、絶頂感を感じ続けていた。元々変な癖のあった優花は、犬のように陽太の犬と書いた首輪をされ、手足も縛られて、陽太に突いて貰いたかった。そんな事は言えなかった。優花は、自分のお金でSMクラブのようなレストランを作り、奴隷コスチュームで歌い、露出や恥辱を味わうつもりだった。神子がそれを察知し、自分のお金も貸して、洋治にも頼み、健康食の本を元に、レストランを作り、都心の中のホテルを改築し、複数の飲食店も入れたり、寿クラブも入れ、ホールも作り、催し物もできるようにし、都心の中のレストランとレジャービルにした。不健康な優花の目論見を阻止した。優花はそれでも自分の欲望を満たすめに考えて、洋治の健康食に「いつまでも元気で限定品」を入れ、優花のお元気レストランを作り、優花も時折歌った。奴隷コスチュームも少しまともに代えて、目がギンギラになった男たちに視姦されながら、アソコも濡らし、陶酔しながら、歌う事になった。

優花の目論見は成功したとも失敗したとも言えた。目がギンギラになった男たちに優花は、視姦され、優花のアソコは濡れた。しかし、若い男ばかりではなく、年寄りもきた。それでなくても洋治の健康食は、栄養バランスに優れていた。元気の出る食事は有名になり、多くの年齢層が来るビルになった。優花のSMクラブ構想は、レストランとレジャービルになり、優花は、SMクラブのM嬢ではなく、寿クラブで徹行のドリンクを飲んだ年寄りの人気者にもなり、優花の被虐性は、寿クラブの身勝手な年寄りをお世話し、年寄りのくだくだした話も我慢してきくことに使われた。優花のお元気レストランは、神子から出資もして貰い、数が増えていき、ビルも増やし、寿クラブも増えた。

優花は、直ぐに又子供が出来た。変な趣味の優花には、つわりも快楽に換わり、陽太のものも舐め、精液も堂々と飲める時期でもあった。眉間に皺を寄せて、ビルにも行った。優花には苦痛も快楽になっていた。子持ち魚は美味しく、子持ち優花は、もっと美味しく、優花も感じていた。優花のビルも健康食のお元気レストランも好評で、更に神子のお金も借りて、レストランや寿クラブの入ったビルを、もっと増やしていった。

陽太は、政治家になりたかった。官僚になるのが一般的で、公務員の試験にも通った。チンタラ市民運動家の振りをして、政治家になった人もいた。長い間苦労して、チンピラ議員になっても、案山子のように、言われた通りに動くだけと思った。まずは、優花の手伝いをしてお店を増やし、優花とともに相談にのり、名前を売る事にした。優花は、色ボケの変態女になり、陽太が言えば、ノーパンでも裸にでもなる女になっていた。陽太の思いのままだった。陽太は、元気の出る食事を出すお元気レストランを増やし、優花を見せ物に、いや優花と共に、年寄りや多くの人に名前と顔を売って、いや、みんなの為に働く事にした。優花のレストランやビルでは、年寄りは元気になり、優花は犯されるような視線を感じた。優花は、陽太の隣で視姦されると云う背徳感の中で濡れ、晩は激しい陽太の突きで絶頂を迎えていた。優花は、陽太にバックで入れてとやっと言えるようになり、陽太は思い切り突いてあげる優しさと30分以上つける体力もあった。陽太も優花もお昼は、「いつまでも元気で限定品」の入った料理を食べ元気になり、陽太のモノは、やたら大きく堅くなり、勢いも強く、多量に発射し、精子もビンビン勢いが強く、受精卵の定着率は高く、優花の子宮の稼働率は高かった。予約は10年以上入っているようであった。幻の良子の記録を目指す二人であった。敷地内のマンションは、まだ空室も多いのに、神子は大きな部屋数のある家を敷地に建てようとしていた。優花は、20から子供を産み始めていた。神子にもどこまで増えるか、そこまでは分からなかった。

「神子ちゃんが、大きな家を建てようと敷地の空いてる場所を探しているらしいね。」
香奈「優花ちゃんが、良子さんの記録更新すると言っているよ。どこまで更新するか神子ちゃんでも分からないらしいよ。」
「優花ちゃんは、まだ三人目がお腹にいる程度でしょう。そんなに増えるの。」
香奈「神子ちゃんも20年先になると、予測もぼんやりとすると言っているよ。」
「まさか20人超えると言うの。」
香奈「二人とも若いからね。分からないよ。」
「ここも子供が又増えるね。」

神二郎は、お不動さんに可愛がられていたが、静かな大人しい男の子だった。特に会長室の青不動さんには、可愛がられていた。二人でよく話をしていた。経済学部にも拘わらず、相場には、興味は薄かった。経済史に興味があり、しかも産業や企業の栄枯盛衰があり、それをどのように乗り切ってきたかに関心があった。なぜか年上の女の子に人気があった。

神三郎は医学部に行って、勉強していた。神元と神帥は、経済学部に行き、神香は、音楽が好きで芸術学部に行くと言って勉強していた。

羽朗と辺朗は、法学部と経済学部を卒業して、快適ホールディングに入り、幸夫のお手伝いをしていた。幸子は、心理学を勉強して、安いよに入り、聖子の秘書になっていた。

菊子と健の子供の菊太郎は、治部金属に入り、次男の菊二郎は、菊子金属に入っていた。最後の娘である菊香は、まだ小さかった。

香奈の隠し会社構想の破綻が進行。

不死身のような香奈は、まだ元気で、ジブトラストに行っていた。以前は、午後早く帰っていたが、「いつまでも元気で限定品」を飲むようになり、もっと元気になり、最近は3時頃近くまで会長室にいるようになった。ジブトラストも安定し、香奈は、ジブトラストの会長室で、ゆっくり香奈ファイナンシャルとして投資する機会も増え、ココは益々元気になり、香奈に新聞の株式欄でボールの水で印をつけたりして、香奈に、にゃーと鳴いて連絡し、香奈がそれを検討する事も増えていた。チャもスイスの先物の細かい取引は当然無理だが、オーバーナイト専門で香奈にチャートで印をつけ、香奈がスイスに連絡して取引し、為替もよく取引するようになった。チャもココも香奈と一緒に「いつまでも元気で限定品」を飲んでいた。もう約束通りにチャとココが、利益が出た時にカニを食べるのは、健康にも良くないので、鯛のお刺身に置き換わる事が増えた。レストランの鯛の活け作りは二匹の大好物だった。まだまだ歯も丈夫で元気一杯の二匹だった。

オタスケーも不死身のように元気だったが、オタスケーはスイスコイン全体を見て、金や金貨そして稀少コインまで手を広げていた。テツダウーノが代わりに取引を仕切るようになった。スイスコインでもみんな香奈の紹介もあり、「いつまでも元気で」を飲んでいた。スイスカナコインは好調になり、普通の人間である年寄り社員は、若い年寄りを応援に呼び、社員も増えていった。香奈の取引と云うかチャの取引による運用手数料は、最初は、年寄り連中の運用手数料に併せて、みんなに分配されていたが、取引する人も増えて、スイスカナコインの中に別勘定として置き、変動準備金のような扱いになった。コインショップの販売は、大きくは伸びなかったが、それ以外の株式や先物や為替の取引は増え、利益の比例で金や金貨などを買っていたので、販売よりも仕入れが多いお店であった。金や金貨の備蓄も増えてきた。香奈は、初めは徹彦と瑠璃だけに、こっそり出資させていたが、徹彦や瑠璃も歳になり、出資も止めていたが、徹彦や瑠璃の子供達にも出資させるようになった。マリア財団にも利益の5%を寄付するようになっていたので、マリアは率先して徹行名義も含めて、スイスカナコインに出資するようになった。するとみんなも出資しだした。奈津実は堂々と出資した。その上、奈津実は、海外出張の時に、スイスカナコインを訪問し、金庫の中の金や金貨を確認して、みんなに話した。

奈津実「スイスカナコインに、出張の時に寄ってみたの。本当に金や金貨があるか確認しようと思ったのよ。小さい古いビルなんだけど、大きな金庫があって、金も金貨も一杯おいていたのよ。警備員さんもいるのよ。」
正人「本当だったんだね。お母さんや徹彦伯父さんが出資しているんだね。」
奈津実「お母さん達はもう歳だから、出資を止めたみいよ。」
紀代「私たちも少し出資しておいた方がいいですね。香奈ファイナンシャルだけでなく、スイスカナコインにも。」
マリア「スイスカナコインは、マリア財団にも寄付してくれているんです。徹行さんと一緒に出資しています。」、
徹志「僕たちも出資して行こう。みんなの収入に差もあるから、奈津実さん、みんなのバランスを取って調整していってね。」
奈津実「機械とか資源開発などは、運営している人や働いている人にも配慮がいるし、香奈ファイナンシャルは色々と関係する企業もあり、複雑だけど、スイスカナコインは、孫たちみんなが均等に出資していくように調整していきますね。」

香奈は、もうそんなにお金を個人で持っても仕方のない歳になり、孫やひ孫たちに援助していく歳になった。瑠璃や徹彦も歳になり、香奈と同時に、表の香奈ファイナンシャルにも出資は止める事になった。今は孫たち以降の世代が少しずつ出資する時代になった。香奈のスイスカナコインは敷地内では公然となり、香奈の大きな管理会社になった。隠し会社ではなくなった。やたらと金も金貨も増え、スイスカナコインも警備の会社と契約する事になった。香奈の隠し会社構想は崩れ初めていたが、今は、秘密口座をオタスケーがこっそり守っていた。

神一の提案で、ジブトラストの体制変更

運用枠拡大と財産管理会社のような直属の子会社を海外に創立

神一に続いて、神二郎がジブトラストに入る時に、青不動さんは香奈の夢に出て、香奈の手元で働かせるように言った。青不動さんに云われて、香奈は、神二郎を会長秘書にした。会長室に机が一つ増えた。香奈も若くなったような気がしていた。

神一がジブトラストに入ってから、ジブトラストも少し体制が変わってきた。ジブトラストとしては、本体での商品相場の運用枠は、三千億としていた。本体での先物の枠も同程度であった。マリアは、ヨーロッパの子会社のマリアチームの枠の中で取引していた。株式は子会社にも分散していた。前年の利益配分として、株を長期的に保有していた。子会社の得た前年度利益の三分の一程度を、時期を見て、子会社に指示して購入させる形で株式を購入し、本体でも同様にしていた。そして購入した株は、神子が調整売買して、利益を出し、更に資産を増やしていた。

神一は、単なる調整売買ではなく、ジブトラスト本体と子会社、孫会社等に分散して保有している株式の経済的合理性に基づく、効率の良い再配置を考えるべきだと神太朗に提案した。現金や貴金属への比率も見直しを提案した。資産効率を全体的に考えるべきだとも言った。神太朗は、カミカミファイナンシャルでの運用を考えても、ジブトラストでの現金への比重は高すぎるとは、感じていた。子会社や孫会社にも現金を留保しすぎていると感じていた。株式の経済的合理性に基づく再配置は必要とは思っていた。産業や企業の栄枯盛衰はあり、成長分野を考慮しながら、整理した方が利益が高いとも考えた。香奈や正子に説明して、ジブトラストの役員会で提案した。管理や渋谷そして新宿からの役員は基本的な運営についての話なので黙っていた。

香奈は、香奈、俊子、有希などの子供世代の資産分散を防ぐために、買い取りするための現金は、必要と思っていた。

香奈「みんな長生きしてるけど、やっぱりいつかは死ぬのよ。それぞれの家で考えているけど、やっぱりジブトラストで買い取る可能性も出てくるのよ。一族への配当や財団への寄付も長期的に持っていないといけないと思うのよ。出資返還金もいるのよ。あまりリスクの高い分野に大きなお金を置く事はジブでは出来ないのよ。単なる資産効率だけではないのよ。でも確かに少ないかも知れないね。」
神太朗「一族の資産を買い取る準備などは、深く考えてません。」
神子「香奈おばさんたちは、まだまだ必要ですよ。ジブでの取引はみんな慎重にしてますよ。少しだけ運用枠を上げる程度でいいと思いますよ。」
正子「神太朗さんの言うのも分かるけど大きなお金になってもそんなに利益も増えないのよ。少しだけ枠を上げましょう。でも株式の資産効率を上げるための再配置は必要かもしれませんね。」
香奈「それは、良いことかも知れないわね。」
神之助「枠を上げて貰えればやりやすいけどね。株式の効率化といっても、やっぱり人によって感性が違うと思いますよ。神太朗兄さんだけの感性よりも、兄さんが主体でもいいけど、香奈おばさんやお母さんの感性も加えた方がいいと思いますよ。」
正子「そうね、神二郎は香奈おばさんの所に行ってるし、会長枠は作った方が云いと思いますよ。」
香奈「私は、歳だけど、神二郎君に相談や調査をしてもらうわ。正子さんの所には、神子ちゃんと神代ちゃんがいるから、相談とか支援を別に資産価値だけの観点で社長枠を作ったらどうなの。まずは神太朗君の所が本体なんだから、考え方を整理して貰いましょう。」
神太朗「そう思って考えてました。新宿開設以来の株や出資は、僕の所で整理していきます。資産効率が悪いものは、配当や業績そして将来などを考えて再配置していきます。昔から保有している株で、一族以外の会社の株などをほとんどを会長扱いとしたいと思います。枠としては、商品相場を五千億、先物に五千億と枠を上げます。そして新しい運用枠として会長を二千億として、社長に一千億つけます。新しく五千億を企業支援グループに入れたいと思います。ニューヨークとチューリッヒの貴金属の会社も神之助の管理下に置き、貴金属先物と連動させます。各地の金融センターに保管しているお金の半分を為替の対象として神之助の管理で保有通貨を選択していきたいと思います。それぞれのグループの利益が出した利益の3割を自分たちのグループの中に保留していきたいと思います。」
香奈「それで本体としての現金はどうなるの。」
神太朗「それは5兆で変わりありませんよ。海外や国内の子会社や孫会社の準備金を配当して貰いますよ。準備金が残りすぎて配当率も落ちてますから、調整も必要なんです。」
神子「今後はどうするの。」
神太朗「子会社や孫会社の利益も一定の比率のお金を準備すれば、出資や支援のお金を除いて、ほとんどを配当に回して、本体管理下の現金にして、各子会社内に、支店を本体直属の100%子会社として作り直し、従来の子会社への出資の株と本体所有の現地の会社の株を持たし、直属の子会社にプールして、金融センターと連絡を取って為替運用を委託していきたいと思います。神子や神之助たちのグループの取引口座も持たしてもいいかも知れません。」
香奈「各グループの中で保留して、管理していくのね。本体と子会社の責任も明確にしていくのね。」
正子「それはいいかもしれませんね。」

こうして会長枠、社長枠ができていた。ジブトラストも運用会社だったので、含み損とか含み益とか云う事も重要だった。その後神一が経済合理性に従い、保有株の合理的な再配置処理を提案し、多くは神太朗の判断で処理した。それでも幾つかの株は、神太朗は香奈や正子に相談した。そしてそのような多くの株は、香奈が会長室扱いとして、保有する事になった。古いつき合い株や経済合理性では保有するメリットが少ない株とか資産効率の悪い株が会長室に集まる事になった。

為替は、ジブの金庫会社と云えた各金融センターとジブ上海銀行の中国以外の各支店に置いているお金の中で半分程度の保有通貨を変更できる事にしていた。カミカミファイナンシャルでは、神之助が粘り、株式運用枠と同じ額である五千億の枠を、商品相場に貰っていた。カミカミファイナンシャルも、ジブギニア、ジブモロッコ、ジブイギリス、ジブドイツ、ジブフランス、ジブスイスそしてジブアメリカに財産管理会社のような形だけの子会社を作り、現地ジブトラストの管理スタッフを兼任のお世話係として経費も少し負担して、地域で関係する企業からの配当等を保管していた。そのお金も寄付とか経費を除いて、多くはジブの各金融センターの中にカミカミ分として保管されていた。その保有通貨も為替の対象となった。それも1兆円ほど貯まり、年々増えていった。

子会社への運用指導料を撤廃し、情報料だけになり、完全な独立採算制に!

ジブトラストは、各地で子会社に運用枠を出資金として出し、複雑に運用していた。しかしあまり指導や管理を徹底していたので、責任が微妙に薄れていた。本体としての取引指針は出すものの、指導料も撤廃して、各子会社や孫会社が完全に独立して取引するようになった。本体としても直属の子会社が先物や株式そして商品相場などの取引口座を持ったり、各グループの直属の窓口となった。本体の今までの取引管理チームは、神子や神之助の取引チームに入ったり、渋谷で研究センターに入る事にした。そして渋谷から子会社や孫会社へ取引指針、神子からのレポートを渡し、連絡をして、運用利益に比例して、情報料は貰うが、子会社や孫会社は、完全に自らの自己責任で取引する事にした。本体の中でも、香奈の会長室、正子の社長枠、神太朗の新宿のチーム、神子のチームそして神之助のチームと五つのグループと研究センターが区分された。マリアのチームは、各ヨーロッパの子会社の中にあった。正子と神子のグループは良く似ていたが、正子も元気だったので、又自分の社長枠の中で、時々一人で取引をするようになった。

ごきげんソフトは、ジブトラストのシステム整備とシステムを一括で供給する会社と位置づけられた。名目的ではあったが、ジブトラストの管理セクションの部長で常務が社長となり、全取引のシステムを管理する事になった。ジブトラスト以外にも、香奈ファイナンシャルやカミカミファイナンシャルの取引もジブトラストのメインを通して、取引する事が求められた。保有株を多く持っていたり、役員を派遣している会社を派遣している上場会社もあり、売買の公平性に疑念をもたれないための制約もあった。ジブトラストはほとんどあらゆる相場取引をしていたので、ジブトラスト本体や子会社、孫会社に至るまで統一したコンピューターを使い、取引する会社ともシステムの協調性を求められた。先物や株式のみならず、あらゆる相場が一つの統一した取引画面で取引できた。各取引会社はジブトラストのメインと直接常時結び、関連する会社とも常時専用回線で結んでいた。各取引会社にはジブトラスト、カミカミそして香奈ファイナンシャルから、年度始めに運用金額と決めた金額が、取引会社毎に一旦振り込まれ、総合口座を作り、各担当グループ毎に個々の総合口座を作り、それが融通しあって、各取引担当は取引会社を意識せずに、自由に取引できた。取引会社毎の資金の配分は、本体では香奈と正子が決め、海外の子会社では社長が香奈に連絡して、香奈が了承して決定となった。ただ制約があったり、ジブトラストとしての取引を禁止している銘柄は警告表示と取引できないようにした。役員会で決算や業績を事前に知っている場合は、直ぐにごきげんソフトに連絡して、ごきげんソフトが処理した。外部からのログインは基本的に難しく、バスワードも不定期に変更されていた。香奈やカミカミも情報料を払い、情報サービスを受け、統一した取引画面で処理した。この時点では、個人としての取引は、個人の自己責任とされていた。ネットは外部のサイトにも繋がっていたので、その点は仕方なかった。ジブトラストのメインにはセキュリティ対策がされていた。

人を介在しないシステムではあったが、各取引は、やはり人による確認作業も必要であった。カミカミファイナンシャルは、今まで各マーケットにカミカミの現地法人の子会社を作り、現地子会社の管理セクションから兼任の人に、取引口座等の取引補助や管理業務を任せていた。ジブ本体の各チームの意向を受けて、ジブとカミカミが一本化して、直属の子会社で取引を行う事になり、若干増員してこの人たちに直属の子会社の管理や直属子会社の取引口座の管理も依頼する事にした。本体保有の株式の管理も直属の子会社の仕事であった。日々確認してその結果を本体の管理に報告していた。月次や年次報告も出していた

この時は単なる本体の海外における財産管理会社の色合いが強かった。為替は金融センターが神之助直轄として、金融センターでカミカミ分も併せて、行う事にした。こうしてジブとカミカミそして香奈ファイナンシャルは一体となって取引をしていく事になった。

カミカミファイナンシャルでは、個人資産の買い取りを考慮する必要もなかったので、神之助と神子たちが、それぞれ五千億の枠内で運用し、貯まってくる利益を集めて、寄付したり、税務処理した後、神太朗が利益を現金で確保して、長期投資の機会があれば投資したり、そのまま現金で保管していく事になった。
運用枠もジブトラストと同様に、利益の3割は、神子たちや神之助の運用枠の拡大に使われた。

ひっそりしていたジブトラストも若い神一たちが入り、机も増えた。しかし、神一たちは、神太朗たちと違い、関係する企業によく出かけていた。

「今日も神二郎君は、出かけているの。」
香奈「朝は、青不動さんの前でぶつぶつ言っていたけど、共同仲良し石油と協議するといって出かけたよ。事業転換の話をするらしいわ。」
「あのエンジンにすると、ガソリン代も要らないし、安上がりになるらしいね。健太郎さんは、やがては、置き換わると言っていたわ。」
香奈「加速度が違うし、全面的に直ぐに切り替わるとは、思わないけどね。ガソリンの需要は減っていくのは、確実よね。瑠璃の精製設備もどうしようかといっているのよ。ガソリンスタンドも減らしていくらしいわ。聖子ちゃんの安いよスーパーと話をしているわ。」
「エンジェルストーンもキクコメタルも香奈オフィスと資源開発が売っているのでしょう。儲けているから、いいじゃない。」
香奈「今までの産業の事もあるのよ。ジブアメリカもアメリカのコーポレイト石油とも話しているよ。化学工業の会社も買っているから、その方向に転換していくと思うわ。神太朗君も安倍化学と治部レーヨンとも話をしているのよ。神一君は、新しい化学の需要を引き出す何かが出てくるといってるわ。」

徹は、発電やエネルギー供給システムまでは、今までの自分の顔や経験は生かして運営した。一族の会社を中心にサブシステムとして売り込んでいった。そしてそれを一族の会社以外に広げる時に健太郎の助けを借り、地域代理店網を作り、成功した。そして健康食の本を書いていた洋治も巻き込んで、エンジンを研究しながら、世界の複数の自動車会社と交渉していった。洋治は化学時代に数多くの共同開発をしてきた。興味がなく、共存の姿勢もなければ、結局美味しい所だけ取り合うつもりが上手くいかず、両者共繁栄しないと思っていた。発電やエネルギー供給システムに興味がないとまず難しい、工場見学に誘ってもこない企業を相手にしても仕方ない。いくらなら売るとか言う会社も止めた。そうして会社を絞り、共同で開発して、共通の基礎型を作り、車種や地域を会社毎に分け、世界で同時発売するように考えていった。エンジンの基本構造は未来エネルギーシステムと共同で考えていくが、その後の応用は、各社を任せる事になった。未来エネルギーシステムは、エンジンの会社ではなく、新しいエネルギー供給システムを考えていく会社であった。徹は、未来エネルギーシステムの新しい力となった年寄りの徹彦やもう少し若いがやはり年寄りの人たちには、今後の新しいエネルギー供給システムを考えて貰う事にした。

徹行の「いつまでも元気で限定品」は、密かな流行になっていた。不妊症に効果がある事も密かに囁かれていた。初めは飲めば、ビンビンに立ち、1時間も持続し、発射も勢いがいいと云われていたが、40どころか50代でも妊娠する事が知られてきた。若い世代では飲めば、ゴムも穴を突き破るほど勢いがあった。絶頂ドリンクと言う噂もあった。頭はすっきりし、記憶力も判断力もついた。アルツハイマー型の痴呆症も治ったという報告もあった。

日本の合計特殊出生率は、ついに、2.2を越してきた。なにより、婚外子が増え、自立した女性が子供を育てていた。託児所は至る所にあり、料金も安かった。それでも長い間出生数が低迷していたので、出生数の上昇は、そんなに直ぐには進まなかった。

平均余命も伸びてきたが、「いつまでも元気で限定品」は、60才を超えると多くの人が飲んだ。飲んだ老人は、元気になり、頭が冴えた。50、60は、はな垂れ小僧だった。元気で頭の冴えた年寄りたちは、企業を興したり、又働き始めた。労働人口が減少していた日本では、元気な年寄りは、貴重な労働力となった。「いつまでも元気で限定品」は、「いつまでも元気で」とともに、価格も下げていき、売上げも数倍増えた。

「勝さんは、まだ頑張って研究しているの。」
香奈「元気に働いているわよ。工場も研究所も近いし。頭は今の方が冴えていると言っていたわ。政則君も事務所で働いているわよ。」
「健次郎さんも菊子金属の経理を手伝っているのよ。会計ソフトも好調だけど、家にいるよりもいいと言ってるのよ。友貴も経理が少し分かるようになったみたいなの、財団や施設にも時々いっているわ。」
香奈「徹行の限定品のドリンクは、飲んでいると頭が冴えてくるのね。私も前よりも運用も調子いいのよ。徹さんの未来エネルギーシステムは、自動車のエンジン工場が動きだしたわよ。営業活動があって健太郎さんが加わってくれていたけど、洋治さんも手伝ってくれているのよ。」
「洋治さんは、健康食の本が好調なのに、やっぱり営業が好きだね。健太郎さんも生き生きしているわよ。財団も最近忙しいのよ。相談も増えて、援助も増えたのよ。年齢も上がっているの。この間は、60才の人も来たのよ。孫より、若い子供が出来たので迷っていたらしいの。でも産む事になって、財団も新しい支援方法を考えているのよ。」

神一と神二郎の結婚

神二郎は、栄枯盛衰の企業や産業の中でも衰退産業の活性化を中心に活動していった。神太朗は、全体を見ていたが、神一は伸びていく企業と手を組み、収益を上げる事に専念していった。神太朗もジブ全体の利益確保を図るためには、伸びていく企業に軸足を置いていた。ジブトラストが株を持ち、支援している企業の中で、不振になったり、赤字の企業は、会長室が引き取り、神二郎の担当になってしまった。

神二郎は、物静かな青年になった。会長室の中で時々香奈と一緒に取引もし、そこそこ利益も上げているのに、儲からない衰退産業の活性化をお不動さんに相談していた。共同仲良し石油の数多いガソリンスタンドも半分に減らし、聖子の安いよスーパーと共同でスーパーに転換したり、安売りの飲食店に転換する事が決まり、その資金調達にも一息ついた共同仲良し石油の人たちとご苦労さん会を開き、最後にうらぶれたスナックで、酔っぱらいの下手な歌を聴いて、もう帰ろうとしていた。酔っぱらった女の人に絡まれた。共同仲良し石油も上場し、イケイケどんどんとお金が入った時は銀座の店にも出入りしていたが、利益が低迷して、行く飲み屋のランクも下がっていた。女の人は中西沙織という名前で、悪い男に引っかかり、大学も中退して風俗で働き、男の借金を一緒に返し、それが終わると男は若い女に乗り換えて捨てられ、風俗でも盛りを過ぎ、30に近づいていた。アダルトビデオにも何本か出た。それも売りにして、多くの男たちの精液を膣の中に出され、精液も飲み、男に貢いでいた。それでも病気や妊娠もしなかった。汚いものでも見られるような視線の中、男に貢いだのに、やがて貢いだ男も汚いのを見るような視線で沙織を見て、捨てられ、肌も荒れ、栄養もろくすっぽ取らず、体もガタガタになった三十女になっていた。店でも客は若いピチピチとした女の子に取られ、今日も早々に店を終わり、場末のスナックで憂さを晴らしていた。神二郎は、場末に紛れ込んだエリートのように見えた。共同仲良し石油の連中も若い神二郎を神二郎さんと煽てていた。沙織は、そんな男に敵意を持った。沙織は、悪酔いし、神二郎にからみ、神二郎はある程度つき合っていたが、共同仲良し石油の連中も帰り、神二郎も帰ろうとしていた。そんな時、沙織が突然血を吐いた。沙織は、結核になっていたようだ。不健康な暮らし、栄養不良そして多量の飲酒と条件は揃っていた。治部病院に連絡すると結核くさいから、連れてくるなと言われた。マチコジブ記念病院は、取りあえず診察して、緊急処置しようと言ってくれた。神二郎は元気が出るようにと持っていた「いつまでも元気で限定品」を飲ませ、沙織をジブタウン近くのマチコジブ記念病院に連れていった。一目で結核くさかったので個室を用意し、緊急処置し、ゆっくり寝かせ、取りあえずのサンプルも採り、明日診察する事になった。神二郎もその晩は、近くに泊まった。朝起きて、神太朗と香奈に連絡して、診断の結果を待った。やっぱり結核くさかったが、そんなに明確ではなかった。なぜかレントゲンもぼやけていたし、明らかな結核を示す結果は出なかった。敷地内にマンションもあり、敷地内に連れてきて、敷地内の病院で詳しく診察する事になった。敷地内の病院は、その時は、入院患者も居ず、暇だった。

「神二郎君も変な女の人を連れてきたわね。風俗で10年近く働いてる人なんでしょう。血も吐いたといっていたわ。結核じゃないの。マチコジブ記念病院も怪しいから注意するように言っていたわ。友貴がアダルトで見たような気がすると言ってたわ。」
香奈「治部病院も結核専門ではないからと言って、断ったのよ。神二郎君は、お店にも連絡したのよ。暫く休むと言って、もう来るなと言われたらしいのよ。」
「もう風俗でも旬は過ぎたものね。病気持ちじゃ尚更よね。敷地内の病院で精密検査しているらしいね。」

沙織は、見る見る間に元気になった。いつもレントゲンもぼやけていた、結核菌も出なかった。敷地内の病院は、「ジャパンドリーム」と「いつまでも元気でパワーアップ品」に洋治考案の元気が出て体に力がつく食事をレストランで作らせ、沙織に与えていた。「いつまでも元気でパワーアップ品」は「いつまでも元気で限定品」に敷地内のエンジェルスターの抽出液を追加したものだった。一ヶ月後、レントゲンも鮮明に写り、結核の兆候はなかった。沙織も若く見え、もう風俗でも働けるようになり、元々綺麗でスタイルも良かった、巨美乳の淫乱女としてアダルトに出た時の雰囲気に戻っていた。敷地内の病院は自由診療で敷地内対象なので、入院代も嵩んでいた。神二郎が全て立て替えていた。沙織は、どこかに売り飛ばされると思っていた。あの時は、一発30万も貰っていた。犬相手の時は、100万だった。「いつまでも元気でパワーアップ品」は、病後の回復の為に考えられていた。ここで危険なミスをした。敷地内のエンジェルスターの抽出液ではなく、敷地内のパワースターの抽出液を増量した「いつまでも元気でハイパワー品」を沙織に飲ませてしまった。「いつまでも元気でハイパワー品」は、不妊症の人用に開発した。子宮の状態も改善し、脳細胞も活性化、判断力も上がり、生きる力も引き出すが、性欲が溢れるように出るのが、欠点だった。若く元気な人では、どの程度の効果があるか予測出来なかった。沙織には効果が強すぎた。目はギンギンになり、雄犬でも襲いそうだった。雄犬ではなく、神二郎が見舞いに来た。病院はまだ間違いに気づかず、「いつまでも元気でハイパワー品」を3日間も与え、神二郎も見舞いに来て飲んでしまった。惨劇が病室で起きた。神二郎もお不動さんのパワーがあり、元々大きく、魔人のように元気になった。沙織は回復していたが、元気な神二郎の敵ではなかった。沙織は、2時間突かれ続き、声も出なくなった。それでも神二郎はまだ突き続けた。沙織は絶頂感が続き、天国か地獄かにでも行って、死んでしまったと思った。最後に強力な爆弾が体の中で破裂した。たらたらとか、ドクドクではなく、噴水のように神二郎は出していた。沙織の意識は消えた。沙織は、夢の中で、青い顔のお不動さんと話していた。

青不動さん「お前も好き勝手に生きてきたが、もうやり直す時期になった。神二郎は、いい青年だ。一緒にやり直していけ。もっといい女にしたかったが、お前もそれなりに見込みがある。縁もあるし、頑張れよ。」
沙織「私は、死んだの。」
青不動さん「今までの沙織は死んだ。新しい沙織として蘇るのだ。」
沙織「神二郎さんは、資産家の息子なんでしょう。東大も出てるし、若いですよ。私は又風俗に売り飛ばされるだけですよ。」
青不動さん「お前には、もう既に神二郎の血が入った。神二郎の子供たちを産み続け、世の中の困っている人に、神二郎と一緒に協力していくのだ。」
沙織「そんな事にはなりませんよ。アダルトでビデオも出たし、風俗に勤めていた30女ですよ。妊娠もしなかった女ですよ。みんなに反対されますよ。」
青不動さん「じき分かる。逃げずに頑張れ。お前もこれからが大変だよ。これからが本当の修行なんだよ。」

青不動さんは香奈と神太朗にも連絡し、応援してやってくれと伝えた。沙織は、取引の素質はいい女だとも言った。

神一には、日本を代表する企業の創業一族の娘、岩下知加子との見合いの話があった。美人でイギリスの大学院を出て経済学のphdと博士号まで取り、二十歳代で日本の大学に助教授として向かいれられた才媛であった。神一より年上であった。知加子も優秀ではあったが、人間ばなれした賢さがあり、周囲の人を幼稚園児のように感じ、相手がいなかった。神一とは、話も合い、とんとんと話が進んでいた。

岩下家は日本を代表する旧家で、治部家との話には乗り気だったが、神二郎の結婚相手には、難色を示したが、もう遅かった。神一も知加子も同類は少なく、既にいくともまでいっていた。神一も聖子から、「いつまでも元気でハイパワー品」のサンプルを貰い、凄い絶頂感を味ったと聞いた。聖子は、もう年なのでその程度で済んだ。若い人用ではなかった。神一も知加子も、健康な男と女で、押さえ続けた欲望が吹き出し、凄い絶頂感程度ではなかった。神も驚く修羅場になり、神一も知加子も、絶頂感を感じ続け、絶頂感の中で果てた。知加子は、本当に逝って、天国に行ったと思っていた。

神一は治部ホテルで結婚式を挙げ、神二郎は治部ホームホテルで結婚式を挙げた。

香奈「兄弟なのに、別のホテルでする事もないのに。俊子さんもぼやいていたよ。」
「いくらドリンクを飲んでも、やっぱり、敷地外で長い間は辛かったよ。やっぱり歳だね。」
香奈「私はハイパワー品を飲んでいたから、疲れなかったよ。恵も飲めば、不妊症の人と100才以上の限定品にするといってたよ。ひ孫の結婚もあるからね。徹行に届けさせるよ。若い人には、危険らしいよ。」
「それは助かるよ。でも危険と言うのはなんなの。」
香奈「若い人では、惨劇になるらしいよ。なにしろ一本飲めば2時間ビンビンになり、突き続けて呼吸困難になるらしいよ。釘打てるほど堅くなるらしいよ。聖子ちゃんに渡したら、神一君に上げて、大変だったらしいよ。知加子さんも絶頂感が2時間続いて死ぬかと思ったらしいよ。妊娠したのは、そのせいらしいよ。」
「私たち専用だね。友貴に見つからないようにするよ。優花ちゃんのお店は、好調らしいね。有名だよ。」
香奈「ゆっくりするように神子ちゃんが言ってたのに、自分のお金でレストランを開業して、自分も歌いたいと言ったらしいの。神子ちゃんがどうせするならと言って、大きなビルを買ってレストランや各種の料理店を入れたのよ。寿クラブまで入れたのよ。」
「優花ちゃんは可愛いのに、年寄りの話も黙って聞いてくれると評判だよ。」
香奈「年寄りのアイドルにもなったね。献身的な表情が魅力的と言われているらしいよ。」
「切人君も結婚するの。綺麗な人を連れてきていたね。」
香奈「ジャンヌさんね。モロッコとフランスのハーフとか言っていたわ。家は良かったけど、破産したらしいの。お父さんは、モロッコの国王の遠縁なのにね。ご両親も亡くなったと言っていたわ。今は新聞社に勤めているのよ。切人ももうすぐ学位も取るから、ここに住むの。ジャンヌさんは日本語の勉強もしているけど、難しいと言っていたわ。」

羽郎と辺郎

幸夫と綾子の子供も結婚し、羽朗は、南アメリカ担当となり、ブラジルで働くようになり、ハナと云う日系三世の娘と仲良くなり、結婚してブラジルに住んでいた。羽朗はブラジルの快適で働くうちに、頭が良くて、活発だった快適グループで働いていたハナの行動力に惹かれて結婚した。ハナも元々勝ち気な娘だったので、頭が良く快適グループを継ぐと思われていた羽朗の求めに応じて結婚していた。ハナの家もブラジルでは、大きな会社を経営していたので、みんなに喜ばれて結婚していた。

辺朗は、快適グループの古くからの企業が多い、タイで仕事しているうちに、中国とタイの混血である現地資本の代表の娘であるケイと仲良くなり、結婚してバンコックに住んでいた。幼い時は、兄の羽朗はテキパキとした賢い子供だったが、辺朗は少し愚図でやんちゃな子供だった。羽朗が聖子に可愛がられて育ったが、一方、辺朗は二郎や洋太郎に可愛がられていた。洋太郎から「愛は人も会社も変える」と云う話や純子が洋次郎に言った「会社は利益を目的とする組織ではない、人に雇用機会を与え、人に役立つものを作るための組織である。利益は会社が存続するための条件に過ぎない」、洋太郎が洋之助に言った「会社は人を愛し、人を育てる事も一つの使命である」といった話をいつも聞かされていた。純子も洋之助も、善良な人だから言った言葉ではなく、色々な背景や葛藤の中でたどり着いた言葉だったが、幼い辺朗はそのまま受け止めて、やがて愛の人に変わっていった。

辺朗の妻となったケイは微笑みを絶やさない女の子だった。偶々のった飛行機で、フライトアテンダントとして働いていたケイと出会い、職業的な微笑みとは思えない微笑みに心惹かれていたが、仕事の話でケイの両親だった現地資本代表の家を訪問して、そこでケイに正式に紹介され、付き合いだし、結婚していた。ケイは苦労しらずに育ち、職業的な微笑みをする癖がつき、最後に本当の微笑みの人になっていた。愛の人と微笑みの人が夫婦になっていた。

それぞれまだ若いが、快適ホールディングの子会社の南アメリカ快適ホールディングとアジア快適ホールディングの社長になっていた。社長と云っても本体や父親の幸夫や聖子の意向が決定的ではあり、良くハナやケイを連れて敷地内にきた。快適グループの総会や重要な会議は、治部ホームホテルでした。幸子は、中側伊知郎と云う安いよに勤める青年と結婚した。安いよは、完全にスーパーになり、衣料品も売らない中規模の食品スーパーも共同仲良し石油のガソリンスタンドの跡に、国道沿いに出していた。

菊子の息子たちも結婚し、治部金属や菊子金属に勤めていた。恵たちの孫も健を除いて、鉄鋼に勤める人は、いなくなり、健一や健太も香奈年寄りハイテク企業群に勤めていた。香奈年寄りハイテク企業群は、一族の会社だけでなく、上場企業の退職者を集め、平均年齢は、高いものの、斬新なアイディアそして豊富なキャリアを生かし、成長していた。

沙織は、青不動さんから特訓を受ける!

沙織は、辛い日が続いた。神太朗もみどりも理解があったが、周りは、高学歴の資産家出身だった。優花は、サラリーマンの娘で、高卒ではあったが、元々アイドルだったし、直ぐに起業し、レストランビルを経営し、増やそうとしていた。時折、ショーもする人気者だった。地方のサラリーマンの家に育ち、三流大学の経済を中退し、風俗に10年近く勤めた沙織にとって、東大ゴロゴロの家は辛かった。特に一緒に結婚した知加子は、人間離れした秀才で小難しい英語の本を読んでいた。香奈に頼み、会長秘書のアシスタントとして、会長室にきていた。会長室には、頼みの青不動さんもいた。香奈も香奈年寄りハイテク企業群も近くにあって、よく外出する、ウロウロする年寄りだったし、神二郎も良く外出していた。一人になる事の多い沙織は、香奈に頼み、口座も持ち、少しずつ相場の勉強をした。香奈は、青不動さんに頼まれていたこともあり、ジブの香奈用の口座を新しい証券会社に作らし、沙織に練習用として与えた。沙織はまったくの素人であったが、ジブの会長としての口座なので、株式と先物に10億ずつ入れておいた。

香奈の言う事はさっぱり分からず、頼みの神二郎も言う事は難しかった。それでも少しづつは分かってきた。気がつくと見かねた青不動さんが口を出した。沙織は、よく訳が分からないまま、取引もしていた。株式投資は、数ページに及ぶ注意事項があった。相談や話があった企業の売買には、制約もあった。それが日々更新され、見るだけで疲れた。それでも青不動さんは、制約なんか関係もないボロ株を買えとか言った。沙織は先物をしたが、青不動さんは、横でうるさかった。

青不動さん「違う、ここは売りに建てるの。もう上がったから今度は下がるの。こんな所の買いは、後追いだから駄目。神子のレポート見てないの。」
沙織「でも急に上がったよ。もっと上がりそうだよ。」
青不動さん「相場には流れがあるの。一直線に上がるのも下がるのもまれなんだよ。売りが出来たから、50円下に手じまいの買いを入れなさい。」
沙織「入れました。ああ出来ました。今度は買いなんですか。」
青不動さん「少し分かってきたね。でも今度はグダグダしそうだから、成り行きで買って、出来た額の30円上に新規の売りを入れなさい。」
沙織 「両方できました。」
青不動さん「それぞれ50円刻みで手じまいをいれて置きなさい。」
沙織「あれ、二つとも入れたら、直ぐに出来ましたよ。」
青不動さん「まあ、今日は、これ位にしておこう。神子のレポートも少しは読みなさいよ。それとあの株は、100円高い所に今週期限の指し値を入れて置きなさい。分かるね。そうそう。もうすぐ神二郎が帰ってくるから、一緒に帰りなさい。」
沙織「香奈さんがまだですよ。」
青不動さん「ロボット見て、菊子の所に寄って帰ると言っていただろう。ちゃんと戸締まりしてね。」

それでも、先物は、オーバーナイトしないと、利益は、出ないし、損切りも重要だった。青不動さんは、沙織に丁寧に教えていった。その日もそこそこ儲けて、後場の終わり頃だった。

青不動さん「しまったなあ。その買い処理できないのか。もう成り行きで売りなさい。明日は下げそうだ。」
沙織「そんな事したら損ですよ。今日の儲けが半分になります。」
青不動さん「いつも儲かる事はないの。ここは、損切りしておくの。今日の晩次第だけど、むしろ売っておくか。一つだけ新規で売って見よう。」
沙織「もう、青不動さんの言う通りにしているのに。手じまいして新規の売り入れました。あれ、すごく下がってます。もうさっきの損を回収できますよ。」
青不動さん「これは、香奈のパソコンだったな。今日は正子も先物しているから、手口見てみよう。画面を切り替え、ジブ全体にしてごらん。」
沙織「売残が101で買残が20です。あれ10になりました。」
青不動さん「画面を切り替えて、30円高い所に新規の売りを3つ入れて、30円低い所に手じまいの買いを入れなさい。」
沙織「しました。」
青不動さん「あの株はどうなった。」
沙織「売れてました。」
青不動さん「今はどうなっている。」
沙織「売った値段より上がってます。」
青不動さん「馬鹿な奴が多い。信用で同量を今より10円高で売りを入れなさい。そして先物に切れ替えて」
沙織「手じまいできてました。新規の売りも今出来ました。」
青不動さん「株式に替えて」
沙織「約定しています。」
青不動さん「80円安で手じまいの指し値を入れなさい。今日は、これで終わりにしよう。」

その日のアメリカは雇用時計も予定通りだったが、過熱感警戒で結構下がった。翌日の日本は、まだアメリカに引きずられて、200円下げて始まり、沙織は成り行きの買いで始まり、その後は失敗もしながら、それなりに儲けた。青不動さんも少しずつ出なくなり、沙織は主に先物取引をして、一人で売ったり、買ったりしていた。青不動さんは、沙織の取引の感性を見極めようとしていた。

青不動さん「少しはわかったか?」
沙織「一人では不安ですよ。もっと教えて貰わないと。」
青不動さん「みんな不安の中でしている。簡単には儲からない。だからよく見通しを読んで取引しなさい。」

沙織は、妊娠して敷地内の病院で神芳を産んだ。知加子は、実家の近くの病院で神幸を産んだ。

香奈「沙織さんも相場したいと言うのよ。青不動さんにも言われたから、慎重にしなさいと言って、株と先物で10億ずつで始めたのよ。先物は100億になっているし、株式は、30億になっているのよ。結構損もしているけど直ぐに損切りするのね。正子さんも時々先物するから、手口も見ているけど、センスはあるといっていたわ。」
「沙織さんは、誰から、習ったの。」
香奈「私も神二郎君もいない時に、ぶつぶつ言っていたらしいよ。青不動さんに教えて貰ったと言ってるわ。」
「青不動さんと話ができるのね。それは凄いね。それでどうするの。」
香奈「この間の枠拡大で正子さんが孫用に枠を取っているのよ。みんなも孫用に枠を取ったみたいなの。瑠璃でも孫用に枠を取っているのよ。出資者が一部の出資を返還して、新たに子供や孫とその配偶者を出資者になるように申請すれば、株主総会ではなく、役員会で承認すれば、その人の出資を認める事にしたいと思うの。いずれ、みんなに相談するわ。」
「それはみんな喜ぶよ。もう私たちが多く持っていても仕方ないしね。でもそれだけでいいの。」
香奈「沙織さんも会長秘書にするの。沙織さんも自分の責任で投資枠を作るのよ。100億程度利益もでたから、最初は100億にして、運用手数料相当分は、神二郎君と合わせて割るのよ。利益が出れば、みんなのように3割だけ枠を広げていくようにしたの。神二郎君は、あまり儲からない企業の活性化とかしているから、あまり利益が上がらないのよ。今回の手数料相当分もそうするの。今も映画館なんかの再生とかしているけど、儲かりそうでもないでしょう。神一君なんかは成長企業を見付けるのが上手だし、岩下家の関係企業とも話をして、直ぐに儲かる出資もしているのよ。」
「でも神二郎君のしている事も大切だよ。単に儲けているだけよりもいいかも知れないよ。」
香奈「正子さんや神太朗君もそう言ってるわ。でもトラストも儲けないといけないのよ。」
「それはそうだね。ところで知加子さんは学校に戻るの。」
香奈「戻ると思うわ。陽一さんの話だと直ぐに教授になると言われているらしいわ。」
「香奈さんより凄いね。」

正子は、最後の枠拡大時に、孫の配偶者用の出資枠を取って、その配当を孫たちの為に貯めていた。そのお金を、親の神太朗たちとは別に、孫と配偶者たちに貸して、ジブトラストやカミカミファイナンシャルへ出資させた。ジブトラストの出資枠を、正子以外にも聖子や悦子たちも孫の配偶者用の出資枠を自分たちの名義で確保していた。知加子と沙織は、ジブトラストに出資が認められた。正子が、その分の出資金を返上し、知加子と沙織が出資を申請した。香奈はあっさり承諾した。二人は、正子からお金を借りて、ジブトラストと、同額をカミカミファイナンシャルにも出資した。ジブトラストからの配当で、正子から借りたジブトラストとカミカミファイナンシャルへの出資金は、知加子はジブからの配当がでれば直ぐに返済した。沙織は、神二郎と同様に五年間で返済する事で正子の了解を取った。神二郎もそのようにしていた。正子は今更お金には拘らないが、自己責任を明確にしたいタイプの人だった。カミカミの出資上限はまだまだ大きかったが、それは孫たち次第だった。正子は、そこからは孫たちに任せていた。

沙織は、神芳が落ち着くと会長でコツコツと取引をした。香奈もいつも外出している訳でもなく、来客もあった。神二郎も部屋で仕事もした。衰退産業の会社は、神二郎を頼って会長室に相談に来る事もあった。成長産業でもなく、成長を感じさせない企業には、当然ながら、ジブの新宿や神一たちは、冷たかった。香奈は、大きなお金でなければ、会長枠の中で、香奈一人の判断でお金を貸してあげたり、企業再生として出資する事もできた。運用手数料などは、もう香奈には大した事ではなかった。香奈は、ジブ全体の利益について責任もあり、そんなに甘い人ではなかったが、神二郎が少しでも利益がでるようにと前もって相談し、清香の事務所とも相談し、企業再生の手続きや方法を調整している事が多かった。少しでも黒字になるなら、香奈も大抵貸したり、出資した。

沙織も香奈の用事で管理と打ち合わせる事もあった。沙織もそんなに取引に専念していた訳でもなかったが、沙織は何故か、段々勝負感もつき、青不動さんも時々応援し、年間で五百億程度儲けていた。そして沙織の運用枠も少し増えた。沙織は又妊娠したが、不思議と頭は段々と明瞭になっていった。神二郎は会長枠の企業から得られる配当の5%と沙織の取引による利益の5%を運用手数料を併せて、会長室の利益となり、管理経費を引いて、会長室として二人に均等に分けていた。

神三郎は、医者になり、大学病院に残り、研究と診察をしていた。「いつまでも元気で」の各製品や「ジャパンドリーム」などの薬は、効能はあったが、摩訶不思議な分岐状の水とかリング状の水の理論が、完全に受け入れられた訳でもなかった。神三郎は、「ジャパンドリーム」を外科の薬として化膿止めや患部に直接触れる薬を開発するように製薬に進言していた。製薬もその薬を作る事にしていた。エンジェルスターの抽出液は、濾過すれば化学的には、水であった。

香奈のひ孫、切人がジブトラストへ

切人もフランスから帰ってきてマリアを手伝い出した。切人は、相場など無縁と思っていたら、そうではなかった。ジャンヌの家の破産も相場が原因だった。ジャンヌの父は、破産してもコツコツ研究していた。無念の思いで亡くなった両親の思いも胸に持ち、生活を切りつめ、少しずつ株を買っていた。切人と仲良くなり、切人も相場も勉強した。マリアは切人が不自由しないように、ジブフランスから貰う、株式会社マリアフランスの保有資産から、切人が受け取れるようにジブフランスに頼んでいた。切人はかなり高額のお金を貰い、その上切人はジャンヌと同棲し、生活費も安く済んだ。株の保有が増えると先物も始めていた。切人プログラムまで作り、儲けだしていた。そしてかなり儲け、日本に帰る前にジャンヌは妊娠していた。

マリアは、別に気にせず、マリアと徹行がフランスに行き、結婚式を教会で挙げ、日本に帰ってきた。ジャンヌ名義でフランスの証券会社に口座も株も持っていた。切人はジブトラストで働き、マリアのアシスタントになった。マリアが取引するのを見て、まずはジャンヌの名義や自由の利く香奈ファイナンシャルで運用し、それが儲けだし、次第に完全にヨーロッパ時間で取引して、利益も上がりだした。ジブトラストの運用額は、それぞれ5億ユーロと変わらなかったが、マリアが帰った後ジブトラストとしては切人が細かく運用し、香奈ファイナンシャルやジャンヌの名義ではオーバーナイトまでして大きく儲けだしていた。ジブトラストとしての利益が増えるにつれ、マリア指導料も増え、日本への送金額も増えた。しかしそれとは、比較にならない程、香奈ファイナンシャルの運用やジャンヌの名義での運用は増え、利益が増えた。運用資産が膨らむにつれて、切人も入って、ジャンヌの個人会社も作り、ジャンヌの個人会社としても運用するようになった。それをジブフランスが手配した事もあり、ジブトラストの子会社もジブとしての運用額を増やして欲しいと云われだした。

海外香奈ファイナンシャル飛躍的に成績が上がる!

切人は、マリアと同じように、本体でのヨーロッパ担当の部長待遇となり、ヨーロッパの子会社での特別取引部の部長待遇となり、切人も個人としてそれぞれ5億ユーロの枠を貰った。そしてマリアと同じように、運用管理料を貰った。各ヨーロッパには、マリアのチームを増員してマリアと切人のチームとなった。マリア株式会社は、ジャンヌの個人会社と合併して、マリアホープとなり、切人の運用管理料もマリアホープに集める事になった。切人は、マリアと同様に、国内で貰う収入の一部を香奈ファイナンシャルにも出資した。そして運用上限を決めていない香奈ファイナンシャルやマリアホープでは、取引が増えていった。マリアは4つの市場で、二つの財布からお金を出し、取引していたが、切人は、3つの財布からのお金で取引していた。マリアは、香奈ファイナンシャルとしての取引の運用枠は、ジブトラストでの運用金額と同額を運用していたが、切人は、そこにマリアホープも加えて運用するようになった。マリアは先物しかしなかったが、切人はマリアホープでは株式投資もしていたので、マリアと切人の部屋は、パソコンが並び壮観だった。そして切人は、マリアホープとしても利益の10%をマリア財団に、同じく10%を切人とマリアチームに分配し、経費の負担も3つで利益比例する事にした。そのため、特別取引部では、単なる取引補助と云うよりも、ディラーが増えていった。そして多くの市場で株式、先物と別れて、神子たちからの取引指針に加えて、切人の指示による売買もするようになった。切人はマリアの個人的な先物をより組織的にした。マリアは静かに先物をして、多くの市場を阿修羅のように同時に取引はせず、各マーケットのマリアチームの人に、マリアの指示の範囲で、少しの運用枠を分け、動きそうな複数のマーケットで自分の取引をしていた。切人は、各子会社のディラーたちと話し、協議し、指針を決め、いわば何人もの切人を作っていった。切人自身も取引したが、どの取引が切人のものか判然としない程、ディラーたちを指導していた。株式投資では、より細かい売買をしていた。これでマリアは、自分の思うように一人で自分だけの先物取引に専念し、切人が全ての市場で、各ディラーを指導して、大きくなった運用枠を使い、主にマリアホープと香奈ファイナンシャルの半分の枠の中で株式投資をさせ、資料を集め、指示して、組織的な運用をするようになり、成績はここで飛躍的に上がった。大学院での勉強は国際経済学ではなく、ディラー関係学と相場関係学であったかもしれなかった。

香奈「切人の奴、何を勉強していたのか、もの凄い勢いで儲けているよ。3つの財布で運用しているよ。マリア財団への寄付も増えたよ。ジブの子会社でも切人の運用枠が出来たよ。ジブの為にも稼げと言われたのよ。」
「香奈さん譲りだね。でもマリア財団もお金も要るよ。活動していくと、大変だよ。アフリカは広いよ。日本でも高齢出産の人が増え、財団の支援も増え、相談員も増え、住居費の支援や病院の援助なども増えてきたんだよ。運用会社だけでなく、カミカミや香奈ファイナンシャルからの寄付が増えてきて助かっているよ。活動をしていけばいく程、お金が要るようになっていくよ。」
香奈「それもあるから、香奈ファイナンシャルの海外法人は、利益の10%をマリア財団に寄付してきたのよ。スイスコインも利益は少ないけど、利益の5%を寄付しているよ。切人とマリアさんがジャンヌさんと一緒になってマリアホープを作って、利益の10%を寄付するらしいよ。」

マリアと切人は、本体からの報酬とジブトラストからの配当等を貰うだけとした。マリアホープも、香奈ファイナンシャルと同様に、配当も運用手数料もない運用会社であり、税務処理と寄付だけする会社であった。


香奈スペシャルNo.3-2 に続く
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