近未来編
香奈スペシャル with コシロプラスNo.2

ジブトラスト 秘話

ジブトラストの前身は、本来一族の財産管理会社だった。

香奈も気楽に、運用会社の運営を引き受けた。

運用会社を運営していた清美や良子も高齢になり、さすがに運用は辛くなっていた。運用もプログラムに近いものとは云え判断も必要だったので、最近低調になっていたので、香奈に相談していた。香奈も香奈オフィスの活動が活発になり、海外出張もあり、色々と忙しかった。そんなに時間を取る事が出来なかった。運用会社なのに、そんなに運用が出来ないのは、惜しい気もしていた。それにいくつか鉄平会や次平会にもお金を貸していた。清美は運用の結果、貯まってきたお金の五割相当程度は配当として返していたが、ほぼ30年間、運用を続けて、保有資産は貯っていた。ただお金を与えたいと言う目的で、洋之助や和子は運用会社を使い、そして真智子までが子供たちを参加させていた。清美は、それは大目に見ていた、元々この三家族の出資が多い運用会社だし、洋之助が株式会社組織にした事の理由もそれとなく、分かっていた。清美と良子のように実際に運用している人は、最初に出資した以外は、子供たちに出資させる事は、なぜかしなかった。運用手数料は利益に応じて貰えるが、出資はリスクが伴うのだ。それに運用額も膨らんで運用手数料は高額だった。なにも、リスクを伴う出資を増加させる気もなかった。その上、運用を担当していた二人には株式投資の怖さもよく知っていた。保有報告書を丁寧に見ていた和子と洋之助はもういなかった。今は、この三家族と清美と良子が出資者であった。

非上場が100億程度、上場が50億程度、現金も120億程度、次平会と鉄平会にも併せて、10億ものお金を貸していた。始めは真智子と美佳そして和子の三人組と洋之助と清美そして良子が、資本金が15億程度で始めていた。真智子が一番多く、洋之助と和子がそれに続いていた。清美と良子が、1億程度出した。美佳は2億、真智子は5億、洋之助と和子は3億出した。その後洋之助や和子は、利益配分の給料を子供たちの配偶者に渡し、その中から管理会社だけでなく、運用会社に少しずつ出資させていた。洋之助は俊子や有希に利益比例と称して、非上場の会社であった自分たちの冶部洋服やホテルから多大な給料を出し、和子に、真理にそのようにした。三人は稼ぎだし、その額が多くなり、洋太郎や洋治も妻たちに、比べると少ないものの少しは出資した。勝も同様だった。収入が少なかった和子の娘の小百合や洋之助の娘の清香や彩香にも、自分たちの配当の一部から少しお金を貸して出資させていた。香奈もそうして貰っていた。真智子もそれを見て、ビルを手伝わせ、収入があった由香や恵たちにも、ビルの管理会社だけでなく、運用会社にも同様に出資させ自分の配当の一部から、自分の娘の真美や宏美の名義も含めて子供たち名義で分散して出資させていた。香奈も、儲け出すと最初に借りた以外にも少しずつ出資させられていたが、香奈相場禁止令で和子は強制的に、特別に香奈に2億も増資させていた。洋之助と和子の死後、二人の株は、子供達に分散していた。その結果、出資者は分散し、真理、香奈、小百合、勝と云った和子の子供達と美佳、俊子、有希、清香、彩香、洋太郎、洋治と云った美佳とその子供たちと真智子、真美、由香、恵、宏美、健太郎そして健次郎と云った真智子とその子供たち、清美そして良子が、今の出資者であった。多くの子供たちは、少しづつ出資していたが、大きなお金を強制的に増資させられた香奈とは違い、大体当初から出資している人の1割程度の出資になり、稼ぎの多かった真理、俊子は洋之助や和子の5割程度出資していた。有希は少し出資時期が遅れた事やお金を管理していた洋治が株での運用に消極的で、香奈が強制的に出資とさせられた最後の子供たち増資の時に出資額を少なくした事もあり、3割程度であった。恵は、それほどの稼ぎでもなかったが、最後にはビルを一人で切り盛りし、ビルの保留していたお金を借りて、他の人が尻込みする最後の増資に応じたので、真智子の4割程度の出資になっていた。由香は3割ほどであった。更に真美や健太郎や健次郎や宏美は2割程度であった。香奈は和子とほぼ同額出資していた。三家族は更に和子の株は三人の子に分散し、洋之助の株は美佳が半分相続し、残りは四人の子供に等分に分散した。保有していたお金は増えていたが、資本金はまだ22億を少し超える程度だった。配当は高かった時もあるが、最近の配当は出資金の半分程度であった。運用総額に比較すると、5%であった。長期保有している株もあり、非上場の株も持っていた。清美と良子は運用手数料として、二人に対して併せて運用額と運用利益のそれぞれ5%バーセントを貰っていた。盛んに運用していた時は何億という運用手数料となっていたが、二人とも高齢になり、流石に運用する頻度は減っていた。運用益と云うよりは、保有株の配当が多くなっていた。洋之助や和子は、長期投資を中心にして、別財布的な感覚で、運用会社を見ていた。他の出資者は、もう最初の出資金は、既に配当として貰っているので、単に臨時収入として受け取っていた。

良子のプログラムは、上がり過ぎを売り、出遅れを買って、売り買いを両方行うもので、全体的な相場の流れを見ながら、全体の投資の売りベースや買いベースによって、先物も少しリスクヘッジに使い、2ヶ月以内で精算して2割程度儲けるプログラムで、損をしても1割程度になるような計算をしていた。ただ常時動かすのではなく、計算で有効と出た時に動かしていた。上手くいけば倍以上になるが、三勝二敗程度で運用額の四割儲けで、二勝二敗で二割の儲けの計算だった。コツコツと着実に儲けて、資産規模は拡大していた。ただ時々相場状況で、精算する判断も必要となった。非上場の株は、中小企業の出資や増資の形で支援していたが、大きく儲かる時もあった。利益が出れば最終利益の三分の一を配当として出して、もらっていた。これは、洋之助が亡くなり、相談や指導が出来ないので、中小企業への出資は出来ていなかった。今は、清美や有希のネットワークで支援に近い出資に応じる程度になっていた。

香奈はリスクを取ると、利益が下がるので、香奈プログラムはリスクを取る事もなく、単に今の状況では、どんな株が一番効率よく上がるかを研究していくものので、突然の下落には弱かったが、相場は上がり調子では無類の威力を発揮した。そのため香奈は、経済状況や株価の変動予測を計算して、香奈プログラムが有効かどうかを判断するような計算もしていた。清美は基本的に良子プログラムを使用し、少しだけ香奈プログラムも使用していた。長期保有は一族の会社や経緯があり、持っている株だった。紀子と共に、洋之助たちが出資した出版社やテレビ局もいつしか運用会社が買い取っていた。

香奈は相場にも詳しく、香奈が個人で相場取引を止めた時に和子に無理矢理大きく追加出資させられていたので、洋之助や和子が亡き後は、真智子に続く、2番目の出資者でもあった。香奈は、清美から基本的に堅実にと云われて頼まれた。実質100億の運用なので、香奈は説明を聞いた時にも、金儲けボケが出て、そんなに多いとも思わなくなっていた。香奈オフィスも大きくなりその程度の金を動かしていた。それに、ボロ儲けしていた時の香奈は、もっと大きな金も動かしていた。そしてみんな知っているものだとも思っていたので気楽に受けた。恭助と和子の急死の時は、香奈は、和子に強制的にさせられた自分の預金や真理の預金で対応する事ができた。それに和子も恭助の現金も相当あった。洋之助も、色々と対策も取っていたし、有希の収入も多く、それを洋治が貯めていたので、預金は想像以上に多く、俊子もホテルが順調で、ホテルへの再投資はしたものの、その後利益も上げ、利益も相当貯まっていた。洋之助は、資産の現金比率も多く、洋之助の相続税は、有希の預金と俊子の預金で、家族間の貸付をしながらも、なんとか処理できていた。

俊子と有希は、新しく悦子と聖子にいくらかのお金を貸して、出資させた。香奈は一応現在の運用会社の出資金総額を100億として今までの出資金を無償増資の形で調整した。みんなの出資金は一挙に5倍近くになり、更に20億を配当予定金とした。持っていた株の配当が4億近くあった。その上で悦子と聖子の出資を受け入れる事にした。俊子は香奈とは仲も良く、悦子と聖子にお金を渡す意味もあって、1億ずつお金を貸す事にして出資させた。有希も同意してくれた。俊子と有希には、悦子と聖子に貸すお金の倍以上の配当を出す事になっていた。悦子も聖子も知らなかった。2割配当の前提があった。保有株の配当や鉄平会や次平会から貸していたお金の返却予定もあり、その程度は十分出せていた。良子プログラムが常時稼働し、全勝なら、運用する金額は倍になるが、そんな事は考えてなかった。五割以上の勝率を目指した。保有していた株の配当も入るし、儲けがなくても、初めは配当を少なくとも2割出そうと香奈は考えていた。今後子供たちが大きくなればまた少しずつ出資させていくが、その出資のお金と今まで出資していた人とはお金の価値はちがっていた。その調整も必要だと思い、今の保留金状況を見て、最初に2割配当して、つまり20億程度の配当をして、今までの出資者には、出資額の返金の意味も込めた配当を出してその後は保有株の配当をベースに持株会社のような存在にして、後は相場状況を見ながら、堅実な良子プログラムを中心に、そんなに時間をとられない運用をしていくと清美に考え方を伝え、美佳や真智子にもそう言っていた。

株価情報サービスも、オンライン株価データなどの多くの情報サービスに入っており、プログラム本体を香奈は修正して聖子と悦子に説明していった。二人とも一応経済を出ており、不安ながらやってみる事になった。最初は、より安定な良子プログラムを香奈風に修正した、堅実といいながら買いが多いものにして取引した。悦子は安静が必要なので、香奈が言う通りにデータ解析や相場分析などを行っていた。それは香奈プログラムが有効かどうか、良子プログラムの利益の確定時期などを判断していった。それを見ながら香奈自身も自分の仕事の合間に来て、自分のお金で、香奈プログラムで取引していた。香奈は基本的にはリスクヘッジといいながら、損と分かる売り買いを相互にする良子プログラムにはなじめなかった。しかし悦子や聖子には、金額も大きく、二人とも疲れていた。抱いて眠るだけでも持つようになった。悦子も安定期に入ったが、慎重にしていた。聖子は、それでも激しく壊れる程突いてもらう事もあったが、間隔も開けられるようになった。

コシロは、もう20才を相当超え、30才に近づいてあり、香奈の家のコシロの部屋から出る事は少なくなり、ほとんど部屋で寝ており、香奈がパソコンの前に座ると、寄ってくる程度だった。

香奈は、頑張っている二人を見て、入る予定の配当を運用収益として想定して、その運用手数料の一部を、少しずつ聖子たちに月給と称して渡していた。資産家の奥様で優雅にくらす予定の聖子であったが、聖子はそっくり二郎に渡して、激しく逝かされた。貢いで犯されるような快感は、病みつきになっていた。

株価も揺れながらも、上昇していた。悦子に相場変動の可能性を計算させたが、問題となる数字もなかった。そこで、やはり若い時のように、自分でも自分のお金で香奈プログラムを使い取引してみると、香奈は大きく儲かった。そして香奈プログラムも併用して、使いだした。こんな上がり相場では、香奈プログラムは威力を発揮し、わずか約4ヶ月で、100億の現金は140億に増えていた。上場株の評価額も55億相当まで上がっていた。このままでいけば当初予定した20億の配当は倍増しそうな勢いだった。香奈はほくほくしていた。香奈自身にも相当のお金が入ってきていた。

「香奈さん、やっぱり相場からは離れられないね。」
香奈「仕方ないわよ。洋之助おじさんの血筋は、時々危険なものを持つ男が出来るのよ。恵みたいのが、相手ならいいのに。外観では、一見大人しい感じがするからね、みんな。洋太郎さんは、若い頃は危険な香りをしていたらしいけど、今は大人しいからね。甘く見るのよ。」
「それでどうなの、運用は。私たちの所も多いのよ。」
香奈「心配ないよ。良子プログラムは、元々リスクを取っているし、香奈プログラムも精巧になったよ。そんなに大儲けは出来ないけどね。それに内緒だけど、配当はちゃんと目途がついているのよ。上手く行けば増えるわよ。」
「運用会社からの配当も大分増えそうなの。」
香奈「そんなに儲かる時代じゃないから、大きくは無理よ。でもかなりの配当は出す予定なのよ。でも案外聖子さんって素質ある感じするよ。悦子さんは好きじゃないようね。好きじゃない人がうまく行くから分からないけどね。」
「お義姉さんたちも私も、子供が結婚しそうな世代になったの。香奈さんに脅されて、お義母さんの名義の株や土地を、買う為に、管理会社に貯めているのよ。だから私たちの所には、あまり現金がなくなっているのよ。万一の時は、お義母さんにお金を借りるけどね。でも生活費も出して貰っていて、お金も借りては、悲しいのよ。」
香奈 「仕方ないわよ。土地は真智子おばさん名義のものも結構あるんだろ。相続しても直ぐに売るよりましだよ。私の時は突然だったから、大変だったよ。私が儲けた金は大分消えたよ。諏訪や長府などの土地の税金は痛かったよ。東京にもあったのよ。処分できないのに、税金はかかるのよ。物納する人が多いのも分かるわ。それに小百合はまだ現金そんなにないしね。真理さんの蓄えと私の蓄えがあったから、乗り切れたのよ。洋之助おじさんの時もあれだけ工夫していても、凄かったらしいよ。有希さんが儲けていたから、なんとかなったらしいよ。俊子さんもある程度は貯めていたけど、ホテルを増設する時に大分増資していたらしいよ。あれでホテルは大分俊子さんの管理会社名義が増えていたので、助かったのよ。何もしなかったら、ホテルも大変だったよ。」
「お義父さんの時は、お義母さんがしてくれたので、私は動いていたけど、よく分からないの。」
香奈「元々真智子伯母さんの方が資産が多いからね。それに運用の配当もビル3軒の他はあまり使ってないから。ビルは大丈夫なの。」
「それはもう10年前に大体終わったの、ここの土地もほとんど終わった。それでも、お義母さんの名義の土地は多いのよ。いくら同居と言っても、まだ生活費を貰っているのは寂しいよ。私も健次郎さんも結構稼いでいるのに。由香さんもそう言ってるわ。」
香奈「遺産が多いのも大変よ。特に土地とか、不動産は大変よ。株も土地も売ればいいとは言うけど、そんなわけにも行かないよ。運用のお金を取り崩すと、配当も減るよ。今度は、配当をまとまって出すからね。一家なんだから、一緒でしょう。それ位は、我慢しなさいよ。」
「仕方ないね、まだ子供たちに買わせると云っても、あいつらは無理だしね。まだお義母さんから小遣いを貰っているのよ。少しは貯めなさいと言ってるけどね。」
香奈 「でも財団もなんとかやってるみたいだね。恵のインチキ宗教の信者もボランティアだけじゃなしにスタッフにもなってくれているらしいね。」
「一旦、不良と言われると大変な国だからね。いい子も多いのよ、でも単なるボランティアは気恥ずかしいというから、絶頂感味わうための修業とか云うと来るのよ。検診も出来るしね。実際そうよ、ちんたら生きていて、腰使った所で、そんな絶頂感なんて味わえないよ、懸命に働いて、体力も付けて、健康にならないとやって楽しい事は少ないわよ。無職や変なバイトやってる奴には、スタッフにして、安い月給でもいいから、社会福祉でおしめ洗ったり、掃除したり、子供と遊んでいると、本人も変わるし、社会の見る目も変わってくるのよ。飯もただにしているからね。清美さんの料理屋のバイトも斡旋しているのよ。それに都心や郊外の便利な所にあるのがいいよ。気負いなく入っていけるから。」
香奈 「財団の趣旨とは違う気もするけど、みんなが支えるのは悪くないわよ。」
「実際、これから子供を産んでいく奴らだよ、そんな奴らが支えていくのが自然だよ。保育や介護の勉強も支援しているのよ。でもこんな金よく集められるね。」
香奈 「洋之助おじさんやお父さんが口説いて、少しずつ色んな所から寄付を貰うようにしてくれた。それに俊子さんもビルの必要経費と少しの配当分を除いて、入れてくれているのが大きいのよ。寄付ではなく、貸しビル業への出資だからね。当初計画していたよりも大きくなったから、みんなも少しずつ寄付してくれるし、財団の基金もむしろ少し増えているのよ。」
「でも俊子さんや香奈さんたちが、いなくなった時は大変だよ。」
香奈 「そんな事は恵たちが考えるのよ。俊子さんは不動産会社を巧く運用して、利益を財団や乳幼児施設に分けているから、ある程度好きな事が出来ているよ。これがなくて寄付や財団だけなら窮屈だよ。恵もみんな若いの子たちを育てて行かないと続かないよ。」
「それはそうだね。まあ香奈さんも俊子さんもまだ元気だし、くよくよ考えない事にするよ。今を生きるが、私の生き方だからね。」

あんまり恵が寂しいと嘆いていたので、香奈は、自分の運用会社で真智子の土地を買う事を考えていた。偶々、パソコンでメールのやりとりをしていると、怪しげな情報が入ってきた。コシロに訊くと、コシロも珍しく、乗り気になってにゃーにゃーと元気良く鳴いた。香奈は、持ち前のハゲタカぶりを発揮して、二人に指導している最中に、自分の運用会社名義で、アメリカからの情報を元に半信半疑ながら、5億でボロ株を買った。香奈が忘れかけた頃、又コシロがにゃーにゃーと鳴き、見てみると、3倍を超えていた。香奈は、早速売りに出し、11億円近くの儲けになった。二人を指導している時に、自分の運用会社名義で香奈プログラムでも儲けていたので、遺産相続が終わり、利益も出ていた俊子の不動産会社から、2億出資して貰い、香奈の個人の運用会社からも10億円出資して、真智子と相談して、マチコジブ記念不動産を作り、真智子個人名義の名古屋の土地等を11億円で買った。一人で買うと、格安で買い取るみたいに思われるので俊子にも出資を頼んだ。恵たちには、今後少しずつマチコジブ記念不動産の株を恵たちが買い戻せと言った。

香奈「こんな事は滅多にないけど、コシロがやけに乗り気なんだったので、買ってみたら、急に株が上がり、金が入ってきたのよ。恵があんまり嘆くから、取りあえず、真智子おばさんの名義の土地は、真智子おばさんと相談して、俊子さんにも協力してもらって、不動産会社を作って、買ったよ。後は何年かかっても買い戻しなさい。」
「それは助かるよ、コシロにカニを持ってくるよ。まだ元気だね、あの猫も。やっとこれで人並みの感覚で生活ができるよ。税理士は10億以下では税金がかかると言うんだよ。いつもお義母さんに出して貰うのも気が引けるから。でもなんで名古屋なんかに広い土地があるのと聞いたら、お祖母さんの実家の跡らしい。」
香奈「今度は配当を多くするけど、そんなには多くないわよ。」
「4家族だから、大丈夫だよ。運用会社からだけじゃなしに管理会社からも配当もくるし、なんとか買い戻せるよ。それに健一や健太君も結婚しそうなんだよ。健二までつられてしそうなんだよ。あいつの彼女らはみんな活発な女の子たちばっかりだよ。健一の彼女の小夜さんなんて大変な子だよ、威勢がよくてね。挨拶にきた時も物怖じしないんだよ。」
香奈 「恵の若い時に良く似た子がいるとか真理さんが言っていたよ。あの子なの。」
「お義母さんもそう言ってるけど、私はあんまり似てないと思うけどね。」

健一たち、三人は次々結婚する事になった。健一たちは身体は立派だったが、それほど気性は立派とは言えず、むしろ弱かった。小夜や直美そして美津子はしっかりとした気性の女の子たちで、健一たちの頑丈そうな身体を見て、ものも大きそうと思い、粉をかけると健一たちはあっさりと落ち、女の子たちの言うままに結婚の約束までさせられた。特に小夜は綺麗でスタイルも良かったが、好き者でガッツもあった。治部家は資産家ではあったが、健一たちは普通の青年で特に光っているタイプでもなかった。小夜は特に健一の身体を見て、ものにしたいと思っていた。資産家と云う事も計算しないではなかったが、それよりも夜のお供として選んだつもりだった。健一たちは気が弱く、婚前交渉は誘ってもしなかった。それだけにやっきになって、結婚を急いだ。ただ小夜たちも資産家と云う事も頭にあり、それに家事なども得意ではなく、真智子や恵たちもお手伝いさんに頼り、由香がなんとか家事をしている程度だったので、自分たちもそんなに言われないと思う気持ちもあった。だから別居などは考えなかった。姑などに遠慮する人たちでもなく、夜を楽しもうとする連中だった。恵たちは、結局、費用は、真智子に大半を持って貰い、邪魔くさいと言って、三人を同じ日に結婚式を挙げた。治部ホテルもたまたまホールが開いていたので、少しずつ時間をずらして、料金も割り引いて貰って、結婚披露宴を上げた。恵たちは、出ていってもいいと言ったが、健一たちの月給は安く、三人の嫁たちは便利な敷地内に居座った。

香奈「恵の家は、離れを作らないの。」
「俊子さんに頼んで、隣の土地を借りる事になったの。真美さんが越してきた時には、お義母さんは喜んで、わざわざ離れつくったから、私たちがいた母屋も広いんだよ。彼奴らの部屋は大きいしね。お義母さんも寂しそうだし、まだ当分先だよ。出ていってもいいと言っているけど、ここが便利と言って出ていかないんだよ。小夜さんたちも家事はあんまり出来ないみたいだよ。小夜さんと直美さんには、店を見て貰おうと思っているの。私もあんまり行けないし、運用と云うタイプでもないよ。」
香奈「小夜さんや直美さんは、恵みたいなタイプね。格好も派手だね。でも健二君の奥さんの美津子さんは派手だけど、二人に比べると大人しそうね。」
「美津子さんには、由香さんの手伝いをして家事をみて貰うの。」
香奈「千恵ちゃんは結婚しないの。」
「銀行の中では、気にいった人はいないようだよ。千恵は、早く結婚したいようだけど、相手がなかなかみつからないのよ。見合いもしたくないとか言ってるよ。由香さんが言うには、信治君は相手いるみたいだけど、まだしないみたいなの。」
香奈「恵の子供は、みんな結婚遅いね。」
「私みたいに高校卒業した時に、お腹大きいのも大変だよ。真美さんの子供たちはみんな医学部に入って、勉強が難しく、それ所ではないみたいよ。真美さんは、子供たちを学校入れるのに、結構お金使ったみたいだよ。」

洋太郎の長男の太朗を騙して、資産家の奥様になろうとした、東大を出て、MBAも取ったやり手の住谷正子は、外資系の証券に勤めて、2年経ち先物のディラーにもなった。27才になっていた。給料はいいけど、派手な生活をしていたので、あんまり貯まらない。同じ年の太朗と友達の結婚式の披露宴で会った。その時正子は、有希の会社が売り出したばかりの紡績製の可愛いドレスを来ていた。有希は滅多に仕事の話を家でしないが、この時は新製品が気に入って、洋治に写真を見せていた。洋太郎はやはり日本の紡績製だからとか言っていた。太朗は、先に二郎が結婚したので、焦っていたし、聡明な上に可愛い感じの正子につい心安く話しかけた。太朗は可憐な女の子が好きなようだ。社長の息子だし、資産家でもある。正子は、贅沢な生活をしてお金を一杯使いたかった。そして、何匹もの猫をかぶり、可憐な女の子のふりをして、太朗に付き合いだし、可愛い女の子のふりをした。正子はプレガールで、アメリカでも何人の男とも遊んでいた。でかいといわれる黒人ともやった。ついに太朗は、MBAを取る賢い女の子でも、可憐な、世間も知らない純情な女もいると愚かにも思い、正子の罠にかかった。正子は、黒人並のものを持った太朗に驚いたが、プレイガールの経験でなんとか対応できた。まあこの程度なら経験もある、なんだ此奴も結構遊んでいる男と簡単に思った。まだ童貞だった太朗は真剣に受け止め、直ぐに結婚を申し込み、正子はこれで夢に近づいたと喜んだ。太朗と二人で、正子の思い出のアメリカ東部へ10日間、新婚旅行に行った。

太朗は大きいだけでは硬く、長かった。正子とは初体験で奥まで突いてなかった。経験を積む毎に段々突いている時間も長く、緩急をつけるようになり、正子は太朗の毒牙にかかって、突かれる毎に毒が回り、10日間突かれ続け、正子が日本に帰ってきたきた時は、知的な感じの美人ではなくなっていた。とても艶っぽく、呆けた感じの美人になり、太朗のものに服従を誓う女になり、聖子以上の腑抜けになっていた。朝起きると太朗のものに舐め、ほほずりし、妖しい目で眺めていた。表情の激変に驚いた俊子は、香奈に頼んで、また運用を手伝うようにした。正子も俊子からお金を借りて、出資して参加する事になった。

ジブトラスト急成長は正子のミスから始まった。

聖子は、金を儲ける快感で、変態手前から立ち直り、間隔をあけてやるようになり、妊娠して回数が減っても、持ちこたえていた。悦子は本当に安静が必要な時期だったので、休んでた。正子と聖子が運用することになった。聖子は立ち直りつつあり、良子プログラムも香奈プログラムでも儲けていた。もう現金は160億を超えていた。そこに正子が加わった。正子は元々証券の先物のプロなので、香奈も気が緩んだ。正子は、先物の売り買いを多用して、よく儲けて、増やしていた。正子は、先物を多用するので、お金も50億程度先物の口座にも入れていた。正子は先物系のディラーでもあったが、売り局面を見つけるのが、巧かった。上がるのは時間がかかるが、下げは短期間に大きく下がる事もあった。正子が先物に参加してから、いつしか先物の口座は、100億近くにもなっていた。株式投資担当の聖子は、丁度良子プログラムも区切りがつき、医者に行っていた。正子はただかなりの重症だったので、先物の売りを10枚にする所を100枚も売り、昨夜の余韻でぼーとしていた正子は、そして何回も売っていた。香奈も売り局面だと思って、先物は少しずつ売って、現物そのものは経緯のある株だったので、株も信用で売っていた。先物の口座は60億程度を限度として、それを超えると香奈が回収しておく筈だったが、香奈自身も香奈オフィスが忙しく、忘れていた。

コシロも元気になり、香奈も少しだけ、スイスなどの運用会社での運用を再開していた。コッソリートにも話して、もう一度面倒を見て貰う事になった。 コシロは、やけに先物を売れ売れと云う表情をしたので、香奈も国内でも海外でも自分の運用会社で、ある程度売っていた。

1億程度の売りの予定が、100億あった先物の口座の金は無くなってしまっていた。アメリカで記録的な暴落があった。香奈は、これで又儲かったと思って、早朝口座を見てみると、100億近く、売って、口座残はほとんどなくなっていた。日経平均も1000円に近づく記録的な大暴落になり、市場を閉じようという声まで挙がった。3日間、値下がりを続け、3日間で1500円も下がった。保有株でも信用で売っていた香奈ではあったが、この時点で信用も先物をすべて手じまいした。香奈も自分の運用会社でも手じまいをした。気が大きくなった香奈は、あまりの儲けに運用会社として臨時配当を出した。香奈は、あまりの大金が入り、海外と同じように考え、日本の税金の事を軽く考え、臨時配当を出しすぎてしまった。

「香奈さん、凄い。なんでこんなに臨時配当があるのよ。お義母さんも驚いているわよ。私たちの家だけでみんな合わせると40億もある。」
香奈「それを渡しても運用会社のお金は減らないのよ。だから今回は特別に臨時配当に出したのよ。みんなの所もそれ位になったわよ。」
「そんな凄い勝負してたの。」
香奈「今回は偶然よ。正子ちゃんは証券のプロだから私も気が緩んでいたのよ。それが太朗さんにすっかり腑抜けにされてね。10倍以上売っていたのよ。これほどまで下がるとも思っていなかったけど、リスク取りで、信用で売っていたのも手じまいしたの。もうこんな事はないわよ。正子ちゃんも翌日には青ざめていたよ。ほとんど全部売っているのと同じよ。一歩間違ったから、すべてなくなっていたわよ。」
「怖いね。」
香奈「怖いのよ。証券会社並の売りをしていたのよ。暫く正子ちゃんは反省してもらうわ。俊子さんの所も配当は40億を超えるのよ。私の所もそれぐらいになるわ。清美さんもびっくりしているわ。こうなったら、分割する予定だったけど分割じゃなしに、残り全部、真智子おばさんに土地代を払うわよ。恵たちもみんなで、マチコジブ記念不動産の株を私たちから、買い戻しなさいよ。」
「それくらいは払うよ。比率はみんなで相談するわ。」
香奈「あの名古屋の土地は恵の所で何か使い道があるの。」
「いや何にもないと思うわ。何故?」
香奈「俊子さんがよく見ると、例の名古屋の土地の隣は紡績の工場跡なのよ。合わせると一万坪を超えるらしい。ホテルと庭園を作っても、まだ余るから、複合の高層ビルも建てて、高層階は住宅にするらしいの。そこに乳幼児施設と医院を入れる計画なの。それとこれは真理さんの提案だけど、小さい命を育てる財団を作ろうと言ってるの。今回のボロ儲けは、そのまま懐に入れてはいけないとお地蔵さんが言っていたと言うのよ。私のお不動さんも言っていたわ。有希さんも悦子ちゃんの事があるから、今回の配当はなかった事にしてもいいと言ってるよ。小百合もそれでいいと言ってる。恵の所も説得してね。名古屋が巧くいったら、東京の郊外にも例の複合ビルを作るらしい。洋太郎さんも小林君にも話して、清香さんにお世話になった所もみんな新しく出資して貰う予定になっているの。」
「それはいいね。名古屋はまだからね。みんなにも話してみる。」

名古屋は辺見織物の工場跡地、真智子名義だった土地も隣接していた。今は高速道路のインターチェンジにも近かった。紡績はいくつかの織物工場を統合して、工場跡地の利用を有希に迫られていた。紡績は単に簡単な倉庫を作っていたが、使用頻度は少なかった。ホテルは紡績とマチコジブ記念不動産から土地を借りて、名古屋のホテルを作る計画だった。複合ビルと同じ高さのホテルとした。小林建設には、それぞれの庭園を一体化させるように指示していたので、広大な庭園がある建物になった。運用会社から支払ったお金を貰った一族が主に出資して、スリースター中部不動産会社を作り、スリースター中部不動産が、この名古屋の複合ビルを買い取って所有する事にしていた。真智子は、ホテルに貸すのはいいけど、売らないでねと言った。マチコジブ記念不動産の株は、約束通り、真智子の子供たち、真美や恵たちが買い取っていたが、真智子の意向が絶対的であった。洋太郎は紡績の土地は、売っても、貸してもいいといった。

 俊子は、東京のホテルによく泊まりにくる中部財界人にも相談していた。もうお爺さんで、俊子のホテルでもニコニコしているお爺さんだった。このお爺さんは名古屋に最高級ホテルを作る事には喜んだが、それほど大きくしない方がいいとも言った。常に予約が取れにくい状況で最高級を維持した方がいいとも言った。そして住宅は広くして、ホテル並みの掃除や維持も可能なシステムも取れるようにして、賃貸ではなく、分譲にした方がいいとも言った。俊子は何故かこのお爺さんの意見を全面的に従った。当初住宅は賃貸のつもりであったし、15建てにして、ホテルも大きくして、ビルの住宅の数も増やそうとしていたが、計画の15階建ではなく、8階建てにした。ホテルとビルは3階までの下層部で連結して、ビルの店舗へホテルから買い物に行きやすいようにして、ホテルはマチコジブ記念不動産の保有と紡績の工場跡地の半分を使って、残り紡績の工場跡地には8階の複合ビルに修正した。そして洋太郎に敷地の半分を借りるのではなく、売ってくれるように頼んだ。洋太郎は、直ぐにいいよと言いそうになったが、わざわざ役員会を開いて、みんなの意見を聞いた。役員は洋太郎の提案に何も言わなかったが、有希が突然、売ってお金にするのではなく、売ったお金で、名古屋のホテルに出資していく方がいい。今は保留金も結構あるし、赤字でもない、今後の名古屋のホテルの配当を貰っていく事の方がメリットが大きいと言った。他の役員は、一族間の話には、そんな立ち入りするつもりはなかった。急遽紡績の土地はすべて、俊子の不動産会社に売却して、そのお金で治部ホテル名古屋に出資する事になった。治部ホテル名古屋は、紡績から土地の代金の20億に、そこにホテルの管理会社の保留金などで、まかなおうと俊子は計画していた。ホテルも最高級ではなく、程々の高級タイプで安くして部屋数を多くする積もりだった。ところが例のお爺さんが、中部の財界にも出資させて欲しい。そして東京のホテルと同等の最高級の品質を維持して欲しいと言った。俊子は、中級から高級程度のホテルにして、部屋の宿泊料も東京の価格より4割程度下げ、部屋数も増やすつもりだとお爺さんに言った。お爺さんは少し下げるのは、立地条件からして妥当だが、1割程度の差にして欲しい。部屋も豪華に、広くして欲しいと言った。お爺さんは忽ち15億をお金を自分の関係会社から集めてしまった。お爺さんは、私の所だけだと問題もあると言って、別の会社たちにも話をして又お金を集めて、15億集めた。紡績は20億の出資として、ホテルの管理会社は100億の出資とする事にした。治部ホテル名古屋は、150億の資本金で創立した。マチコジブ記念不動産には、相当の地代を払う事にした。工事費の途中の増額は、多少上がってもなんとか余裕資金内でやっていけると思った。建築会社に再度確認して、ビルとホテルも豪華で重厚なものとして最終見積もりを頼んだ。最終的な建設計画もまとまり、辺見織物の工場跡地と屋敷跡地には、自然の森のようなものもあり、出来るだけ自然を生かし、庭園を作る事になった。建設は幾つかの企業がジョンイントとして、中小企業も入れた。総工費は、250億になった。スリースター中部不動産には110億で複合ビルを持ってもらい、更にビルが建っていた土地も少し広めに買い取って貰う事になった。連結部分はホテルの負担として、ホテルは140億で、建設中の加算がなければ、何とかなると俊子は思い、建設は始まった。工事には、8カ月近くかかった。真理の貴金属会社にも頼み、やたら金箔や金の食器などを室内に置いた豪華な客室にした。俊子は工事費が増額された時には、有希にもお金を貸してねと頼み、一族の銀行にも、融資を頼んでいた。有希も銀行も、了承したが、銀行は取りあえず、低利で10億融資させて欲しいと言った。俊子は、ホテルは借金しないで、やっていくのが、原則だから、抵当なんぞ入れないし、今はなんとかなるとと言って断った。一族の娘婿の中村が頭取になっていて、俊子に会いに来て、定期が30億あるから、抵当なんかはいらないし、一族なんだからと言って、むりやり融資させてしまった。予定していた定期の取り崩しもできず、そしてビルの中の銀行の支店を入れる事まで承知させてしまった。有希も洋服と和服の店を出すと言った。

真智子と美佳は、それぞれ3億ずつお金を出し合って、小さな命を育てる財団を作り、前の財団と同じ事務所に置いた。香奈と真理たちも参加するつもりが、話を聞いた美佳は、年のせいか、気が短くなり、直ぐに清香に言って、真智子と一緒に、先に財団を作ってしまった。清香は有名な弁護士になっていて、その行動が注目されていた。清香は若い母親の子育てを支援して、教育したり、託児料などを援助して行きたいと説明した。小さい記事だが、新聞にも出た。小さい寄付も相次ぎ、基金の規模は、10億も超えてしまった。香奈と真理は、美佳と同額の寄付をする積もりだったが、一族の銀行の定期を取り崩す事が出来ず、俊子たちは20億をホテルの管理会社への増資をする事になり、スリースター中部への出資がまだ少なかった。真理は予定通り、財団へ寄付を3億したが、香奈は財団への寄付は2億にして、マチコジブ記念不動産の株を売った金も追加して、スリースター中部へ多く出資する事になった。

一方、香奈は、臨時配当を出した後、税理士とも相談すると、臨時配当は税金の事を考えると少し出しすぎだと言われた。香奈自身が増資する事も考えていたが、取りあえず運用を続け、税金分を稼げるかどうか様子を見る事にした。前回の冷や汗もの成功に反省した正子は、着実にコツコツと、大暴落後の回復基調の中で、堅実に資産を増やしていた。香奈は堅く取引しようと、プログラムも良子プログラムの一本として、リスクを取った株式投資も行った。聖子も回復しつつあり、大儲けではなく、少しずつ儲けだしていた。香奈もこの分なら税金も払えるから大丈夫と思い、気が緩んだ。資源開発や機械の仕事や自分の海外の会社からも報告があり、指図する必要があった。徹彦もついに智恵子と結婚しそうだった。だらだらと株価は上がっていた。香奈は利益をこまめに確定するために、買いは、もう利益を確定するべきだと思い、香奈も、信用買とか長期保有目的以外で買っていたものをすべて売ってとだけ言って、10時頃に慌てて家に帰った。海外からのメールをチェックしたかった。正子の病気は治っていなかった。昨夜の余韻が残って、頭の中にはまだ薄く白い霧が残っていた。アメリカ雇用統計の発表待ちではあったが、好調だと言われていたので、今日は株価はみんな上がっていた。正子は前場ですべて売って、買いは、すべて手じまい売りをした。ぼーとしながら、株価を見ていた。久しぶりに良子が来て、だらだらと話をしていた。良子はチャートだけを見て、もう山かもと言った。正子は、それに釣られて後場も上がっていた保有株までも、何故か、みんな同数信用で売った。

良子が帰って、先物で売ったり、買ったりして遊んでいた。そこそこ利益はあった。もう終わりと思って帰ろうと思った。頭の中に太朗のものがちらついてきた。帰り間際に利益の出ていた10枚の買いを手じまいするつもりが、新規に100枚も売っている事やそれを何回も繰り返していた事までは、気がつかなかった。すべて手じまいしたつもりで、少し早めに切り上げて帰った。聖子は、妊娠していて、気分が悪くお休みだったので、正子が株式までみていた。

雇用統計は予想より大分悪かった。その上、アメリカ大手証券の経営危機説が浮上し、ショックからアメリカの株価は大きく下がった。おまけにそれをきっかけにして、円高狙いの投機筋の仕掛けが成功して、2円以上の円高になった。海外、国内とも大きく株価は下がった。

 香奈は、自分だけの運用会社の国内や海外でも、コシロが売れ売れと云った表情をしていたので、程々の量を売っていた。コシロのお陰で利益が出ており、上機嫌だった。そんなに大きな金額での運用はしないものの、確実に利益は出ていた。香奈は、運用会社では買いは手じまっているし、先物の口座には50億以上は残していない筈だし、先物も正子は売りが多い人だしと確かめるのを忘れていた。スイスやアメリカでは早速手じまいし、直ぐに寝た。国内でも、自分だけの運用会社で早々と利益を確定させてから、香奈は、運用会社には出ずに、そのまま資源開発に珍しく午前中にでかけ、色々と話をして、午後は貴金属の銀座の店にも寄り、小百合と冗談を言い合い、智恵子とも話をしていた。

正子は昨夜も激しく突かれ、ますます、ぼーとして、運用会社でパソコンの電源を入れた。日本ではアメリカの倍以上、下がって始まった。そしてプログラムの損切りも始まって、下げは加速した。正子は冗談のような下限で、手じまいの指し値を出していた。それが次々と約定していった。正子はまだ先物は見なかった。みんな約定して、信用がなくなった時に先物を取引しようと思って、先物に画面を切り替えた。日経平均は500円を超える下げになっていた。先物の建玉を見て、驚いた。500枚の売と10枚の買があった。正子は慌てて、500枚の売りを成り行きで手じまいしようとした。その時猛烈な売り攻勢が始まり、あっと云う間に600円も下げた。まだ下げそうだったが、手じまいした。約定は平均して650円も低いその日の最安値に近いものだった。手じまいではなく、新規の買いではあったが、約定はしていた。昨夜の経営危機説は修正され、売りは一瞬になくなり、猛烈な勢いで上がりだした。あっとと云う間に300円も上がった。正子は、10枚の買を手じまいした。ほっとして、建て玉を見ると、売りは500枚、買いは、500枚になっていた。今度は慎重に買を、細かく本当に手じまいした。まだ利益が出ている売りを本当に手じまいしようとしていると、今度は本当にアメリカの大手証券の声明が出て、身売りされる事が決まったと報道され、買は一瞬にしてなくなり、最安値に近づいた。正子は今度は慎重に本当に成り行きで、売りを手じまいした。結局もう一度最安値に近づき、次々と約定した。再度建て玉で確認すると、建て玉には買が500枚になっていた。正子はなぜか新規と手じまいを夢の中で行っていた。しばらく呆然としていた。そして昼になり、詳しく報道されると身売りの条件は悪くなく、中国マーケットも上がっていた。又売りは一瞬にして消え、上がりだした、正子は気を取り直して、何回も慎重に確認して、次ぎ次ぎとこまめに手じまいをしていった。最高値は、前日比100円まで上がった。約定はその日の高値前後だった。結局、その日は前日比200円安程度で終わり、円も少し戻っていた。正子は、最後は何回も株の建て玉と先物の建て玉を確認して、良子プログラムの買いも手じまいして帰った。とても口座残高は確認する元気がなかった。

翌日、香奈と正子は朝あった。香奈は先物の口座残高が100億以上増えているのを見て驚いた。株式の口座残も増えていた。正子は、正直に話したつもりだったが、最安値で買い、高値で売ったと思われた。成功したからいいけど、先物はそんな数量ではしないでねと言われ、はい、そうしますと答えた。それでも香奈は用心のため、100億は、銀行の口座に移した。その日以降、正子は神のように、買えば、安値で直ぐに上がり、売れば直ぐに下がる状態で売り買いを連続していた。数量は10枚に固定していたが、後場の終わりになると、正子は何故か100枚も売にしたり、買にしたりしていた。現物分も突然信用で売ったりしていた。香奈は何故か忙しく、資源開発に行ったり、智恵子の両親と結婚式の相談に行ったりと忙しかった。そしてその日から2週間後、香奈は、聖子のしていた良子プログラムからリスク取りの先物を除いた正子用の修正良子プログラムを正子に説明するために、後場が終わる頃行った。正子は先物系の売りの多い人だった。リスク取りの先物を本プログラムで取る必要はないと香奈は思った。保有株や買いを考慮して、正子に売り主体で先物取引して貰うだけで、リスクは取れると香奈は思っていた。正子は、ボーとした表情で画面を見ていた。今日は遊んだだけで特に何もしなかった。先物の口座残は250億にもなっていた。株式にもお金を移して、修正良子プログラムをやって貰おうと思って、株式の口座も見た。口座残は130億あった。長期保有株はそのままだった。なんか怖くなった香奈だっだが、先物の口座残は50億にして、200億は銀行の口座に移した。そして修正良子プログラムを説明して、やり方を説明した。又三ヶ月間、正子は神のように、儲けだした。先物は恐ろしい程儲かった。修正良子プログラムも先物を入れないものだったで、直ぐ2割以上儲かり、手じまいすると次々に新しく動き出していた。

香奈は智恵子の父が急病で入院して、2週間ほどで退院したりしていたので、式場のキャンセルや再予約、打ち合わせなどがあり、資源開発も幾つかの資源の入札案件が入り、その調整に追われていた。財団関係の打ち合わせなども、何故か多かった。聖子は妊娠して、安定期に入れば出てくる筈だったのに、出てこなかった。お腹はやたら大きくなり、元々細身のモデル体型だったので、特に目立った。利益至上主義の有希は、綺麗になった聖子をモデルにして妊婦服のモデルに使う非情さも持っていた。俊子は、当初反対したが、聖子はやや怪しい表情になっていたので、慎重にして休憩させながらと頼んでいた。聖子も元々綺麗であったが、もはや妖艶で痴呆かがった表情になり、このボスターは大人気となり、盗まれる事もあった。そして聖子は、有希の見せ物用として、いや会社の宣伝に使われる事が多く、運用会社には出てこなかった。悦子は出産したが、産後の回復も遅れていた。そして、ぼーとした正子が一人で運用して、株式投資もやり、先物取引をしていた。正子は少しずつ、自分を取り戻しつつあったが、昨夜の余韻が残る朝一番と、今晩の夜を考える後場の終わり付近は、頭の中の白い霧があるようで、時々思い切った行動をしていた。それは頭で考えているのではなかった。なにか身体の中からの声に、動かされているようであった。いつしか、先物の口座残は再び100億を超え、そして株式の口座残も160億になっていた。香奈も時々くる筈だったのに、手を抜いていた。そして太朗は、時々悪かった時の洋太郎譲りの非情さが出て、正子を乱暴に扱って、突き続けいたので、正子の回復は少しずつしか進まなかった。そして正子は神のように儲ける事が続いた。一日中、身体の奥から声が出ているような日もあり、そしてその日は、正子は神になった。そしてその声は少しずつ少なくなり、正子の回復も進めだした。そして気分が悪くなり、産婦人科に行った時に、妊娠が判った。正子のつわりが酷く、もう運用会社には、そんなに出る事はできなかった、香奈の息子の徹彦の結婚式も終わり、徹彦と智恵子は暫く、敷地内の家ではなく、マンションを借りて、二人だけで暮らすことになった。香奈は暫くぶりで、運用会社に来て、残高の確認や建て玉の整理をしようと思った。

建て玉は以前からの長期保有だけだった。先物は、買が100枚も残っていた。香奈は又こんな多い数量でやって思って一応手じまいした。それは、今の値段よりも500円も下の値段で買っていた。すべて閉じて、残高を確認すると、先物は口座残は200億で、株式の口座残は180億にもなっていた。香奈は自分で銀行口座に、300億移した事も忘れていた。そして自分の会社の資源ビジネスの事を考えて、自分の家に帰り、色々と連絡を取っていた。お茶でも飲もうと、一家の共同の食堂に行った。真理が珍しく、お茶を飲んでいた。真理は、香奈さんの海外の会社が、又貴金属相場をやっていて、鬼のように儲けていると噂になっているわよ。これだけ貴金属が急に上がっているのも、関係あるかも知れないと、ロンドンの協力会社の人がいっていたわ。もう上がりすぎのような気がするわ。どれくらい儲けたのと聞いた。香奈は、全く知らなかった。有希の娘の慎子がアメリカで入院して大慌てで有希はアメリカに行っていた。香奈の娘の瑠璃も、ロンドンに留学していたが、徹彦の結婚式で何か言いたそうな顔をしていたが、香奈も忙しく、そのままロンドンに帰ってしまった事も思い出し、徹とも相談すると、徹もロンドンに用事もあるとか言って、ロンドンに、徹と一緒に行った。行く前に、コシロに話をすると、コシロも寄る年波で寂しそうだったが、お手伝いさんに、コシロの世話をよく頼んで、ロンドンに出かけた。自分のオフィスに行った。小さなオフィスだった筈が、いつの間にか、ビル毎買い取っていた。話を聞くと、すべて報告している筈です。承認も貰っていますと言っていた。確かに貴金属の鉱山の権利を獲得したので、それに伴い、少し貴金属の商品相場もやりますとは言っていた。オフィスも広げますとか云っていた。先物取引の結果も報告されていた。香奈は、ゼロの桁数を間違う癖があった。赤字ではないから、そんなに詳しくみなかった。そういえば、アメリカのオフィスでも同じだったと思い、アメリカにも電話して、詳しい報告をもう一度、ロンドンにメールして貰った。騒動の原因は、アメリカだった。10万ドル相当の規模で、ヘッジしている筈が、ロンドンでは一桁多く、アメリカでは二桁も多かく、頻度も高かった。とてもヘッジではなかった。利益比例の報酬も凄い額になっていた。香奈は、頭を冷やすために、ホテルに帰った。瑠璃が会いに来ていた。

瑠璃「お母さんは、ロンドンに、私に会いに来ると言ってのに、お父さんは来たのに、こないから来たわよ。」、
香奈「瑠璃は、のんびりやっていると思うから、後でゆっくりしてから行こうと思っていたのよ。お父さんは本当は中東の予定だったから、急いで会っただけだよ。妊娠でもしているの。」
瑠璃「実はそうなの。日本からの留学生とやっているうちに、出来たのよ。お父さんには言ってないわ。」
香奈「だれなの。女たらしの遊び人なの。病気持ちとか、妻子がいるとか、変態となって鞭で打たれて、喜ぶ女になって、奴隷になっているとか、中東あたりに売り飛ばされそうになっているとか言うの。」
瑠璃「よくそんな事が思いつくね、自分の娘に。日銀からの派遣留学生よ。独身よ。」
香奈「そんな男なら、無理ね。諦めなよ。お前は補導歴もある不良よ。よく出国できたものだと思っているのよ。高校時代から遊んでいただろう。援交もやっていただろう。成績だけはいいから、イギリスへ逃げた女のくせに。頭いいから、売春でも逮捕されなかった女だよ。シングルマザー決定ね。」
瑠璃「冷たい事言うのね。だから相談しているのよ。政則君の家は、中国地方の旧家でとても堅い家なのよ。」
香奈「そんな家の息子となぜやるのよ。やっぱり硬いから感じたの。」
瑠璃「確かに硬いけどね。そんな事ではなくて、やっていて、つい成り行きで生で出してもらって、結婚申し込まれたのよ。でもばれると大変だから、相談をしているでしょう。政則君は須坂と云う、長府の名門だって云うのよ。政則君には、遊んでいた女とは言ったよ。どうしたら良い。」
香奈「長府?、瑠璃、お前、お祖父さんの名前も知らないの。毛利なのよ。私たちも長府では名門の家の一統なのよ。政則君とか言ったね。年下なの?」
瑠璃「そうよ。一つ下なの。私、大学に通っていたけど、3年で中退して、イギリスに留学したでしょう。」
香奈香奈「あのままいれば、売春で大騒動だったからね。うまく逃げるよ。事情聴取くらいは受けていたわよ。あれから3年か。お前も24か。でも日銀って入ってすぐの人を留学させるの。」
瑠璃「政則君は優秀だし、特別処置とか言っていたわ。」
香奈「取りあえず、政則君を明日にも連れておいでよ。ところで妊娠何ヶ月なの。」
瑠璃「四ヶ月なの。」

香奈は、須坂政則と会って話をした。そして政則の家は東京にあり、両親も東京にいる事が分かった。瑠璃が遊んでいた事は大学でも噂になっていたので、知っていたと言った。両親には、結婚したい人とロンドンで会ったと連絡していると言った。香奈は安定期に入れば、日本に帰国し、出産させて、自分の家の近くには託児所から幼稚園まで揃っているから、自分の家に連れて帰る。空いている部屋もあるから、そこに住んでもいいかと確認して、政則はそれでいいと言って、ご両親はどんな人なのとか色々と話をしていた。長府の話も出て、香奈の両親の事も話した。政則は、大岩瑠璃としか知らなかったし、香奈が毛利恭助の娘である事も知らなかった。そして香奈は、東京に帰って、貴方のご両親とも会って、今後の事を相談したいと言った。政則は慌てて帰って、自分の両親に詳しく話した。

香奈は、時差もあり、日本に帰ってから政則の両親と話すつもりだった。夕方にはレバノンに行っていた徹とも話して、徹はすべて任せると言った。そして、もう相場なんかやっている場合ではないと改めて思っていた。やっぱり、ヘッジ以外で先物なんてやっている場合ではないと思いながら、寝た。

翌日ロンドンの自分のオフィスに行って、ヘッジ以外の先物はしない事を徹底すると言った。アメリカにもメールして同じ事を言った。昼にはアメリカから電話がかかり、儲かっているし、またまだ上がりそうなのにと言ってきた。もう止めるのよ。と強い口調で言った。やりたければ会社を変わったらとまで言った。アメリカも渋々従い、手じまいした。そして大きな取引は、責任者の承認を必要としするルールまで作った。すべて、手じまいをさせて、瑠璃の話もあるので、結果は纏めてから、私にメールしてねと言って、早々に日本に帰った。

俊子は、名古屋のプロジェクトが完成する半年前に、ホテルの開設準備室と新しい複合ビルの準備室を設置して、準備させていた。ホテルは東京のホテルと同等のサービスを目指すとの前提で進み、内装等を含めた最終判断をする事になっていた。複合ビルも、店舗や事務所などの折衝を始めていた。

アメリカに留学している慎子から、有希に、「お母さん、この頃ずっと、気分も悪いし、よく吐き気もするの。」と電話がかかってきた。病院にも行ってるけど分からないのと言っていた。有希は、ご主人様ごっこの気分が吹き飛び、商会のアメリカ支店に強引に日本人の医者のいる病院を探させ、禎子を連れて行くように命じた。有希は、商会がよく使い、株も持っていた航空会社も脅して、慌ててアメリカに行った。慎子は、妊娠していたが、気が付かなかった。慎子はアメリカの大学に留学して、勉強に集中して、他の事には無頓着で、大学院まで進み、アメリカ人と同様の生活をしていた。そして日本からの留学生とも、何回もやった。さらに感じが良くなった。以前にも少しアメリカ人と遊んでいたが、その留学生には、ただやたらと遊んでいると吹聴して、遊んでいる女だからと云って気楽な感じでやっていた。当然ピルも飲んでいたが、ビタミン剤も飲んでいて、ビルの積もりで、一定期間、ビタミン剤をピルと間違えて、飲んでいた。そして、その留学生は何事もなく、日本に帰ってしまっていた。病院では単なる腹痛の積もりだったが、偶々産婦人科の医者が遊びに来て、妊娠ではないかと言い出した時に、有希が到着した。原因不明の腹痛だったが、妊娠していると分かり、改めて、検査すると、妊娠五ヶ月にもなっていた。つわりの酷いものと分かったが暫く安静にしていないと、流産の可能性もあると言われた。有希は洋治に連絡を取った。洋治は取りあえず、日本に連れてくるしかないと言った。禎子はお腹の子の父親については、口を閉ざしていた。そして漸く2週間ほどして、慎子を連れて、日本に帰ってきた。

由香の次男の信治は、アメリカに転勤が決まり、付き合っていた彼女の悠子と結婚しようとしていた。健一の妻の小夜、健太の妻の直美そして健二の妻の美津子も相次いで妊娠しているのが分かった。恵の最後の娘の千恵が、大学を卒業して、普通の銀行に入り、真面目に働いていたが、30才前に焦り、町で出会った大学の下級生だった栗林友貴と関係が出来ていて、妊娠が判明した。もう妊娠六ヶ月にもなっていた。お腹はあんまり出ていなかったので、千恵も分からなかった。恵も慌てて、栗林友貴の両親と話をして、信治と一緒の日に慌ただしく結婚式を挙げ、千恵は家に引き取り、結婚させる事にしたが、千恵は銀行を辞める事になった。

そんな騒ぎの中、香奈がいない間に、正子はつわりも収まって、運用会社では、又身体の中からの声に従うように、取引を続けていた。正子は、ぼーとして、頭の霧もまだ晴れていなかったが、何故かしなければならないような気がして、続けていた。日本もアメリカも景気回復気運が強く好調だった。その日もみんな上げていた。そして身体の奥から、これで取りあえず終わりね。僕も頑張らないとと言ったような気がして、夢の中で先物の口座残のほとんどを売って、現物の保有株も信用で売って、家に帰った。翌日からつわりが酷くなり、数日間は出られなかった。

 そしてその晩のニューヨークから、アメリカの大手銀行と大手証券の突然の倒産がおき、アメリカで対策等が緊急的に作りられるまで、数日間、相場は荒れた。貴金属も一緒に大きく下げ、日経平均は、千円以上下げた。

正子はつわりも収まり、すべて手じまいして、現物の長期保有株だけにして、ほっとしていると、お腹からよくやったとお腹を蹴られ、正子は、暫く動けずぐったりしていた。真理が見付けて、家に連れて帰った。

香奈は日本に帰ってくると、歳だったコシロの様子を見たが、何故かコシロは元気で水を一杯のんで、若くなっているような気がした。香奈は安心して、直ぐに須坂の両親と連絡を取り、挨拶に言った。須坂の家では政則からの連絡に驚き、須坂の父は昔気質の日銀マンで、恭助を良く知っていた。話はあっと云う間にまとまり、政則は帰国すると、香奈の家の離れに住む事にも同意した。結婚は、直ぐにでも、イギリスでさせましょう、瑠璃を日本に連れて帰る前に、向こうで結婚した事にしておきましょう。政則が日本に帰ってから、ゆっくりとみんなに紹介しましょうとの作戦も練った。香奈は、瑠璃に電話したが、お母さんとお父さんは来てよと言ったので、須坂の両親や徹とも連絡を取り、次の日曜日に結婚式を挙げ、瑠璃には日本に帰る準備をしておきなさいと言った。コシロも元気になって行ってきなさいと言っているように、にゃーにゃーと鳴いた。須坂の両親とイギリスに渡り、結婚式を挙げ、瑠璃を連れて、日本に帰った。須坂の両親は、結婚前の子供を留学させると何をするか分かりませんね。双子の子供の雅也はアメリカに行ったけど、何もなかったのにとぼやいていた。徹はまだ、レバノンにいて、現地からロンドンに行って、一緒に香奈たちと日本に帰る事になっていた。

洋治は、慎子の相手先の留学生について、調べていたが、よく判らなかった。有希は、慎子を連れて日本に帰り、取りあえず、病院に入れて、状態を見て貰う事になった。そして、家で安静にしていれば、問題ないと言われて、家につれて帰った。彩香と村井明は医師になり、三人の子供の後は出来そうでなかなかできず、子供たちが大きくなり、洋之助に離れを建てて貰い、彩香は小児科医になり、真世と一緒に、子供病院に勤め、明は治部病院に勤めていた。有希は、禎子が心配で彩香に様子を見てくれるように頼んだ。

真理の息子の勝彦は大人しく、機械会社に勤め、同僚の咲子と職場結婚して、咲子も妊娠している事が分かり、子供が産まれると敷地内の家に引っ越してくる事になっていた。美枝子は、真理を手伝っていたが、商会の前山駿夫と結婚して、妊娠して家に戻っていた。

有希は、慎子の様子が落ち着くと、安心した。相手の男は気がかりだったが、慎子の気が済むまで、黙って見守っておこうと洋治とも話をしていた。

名古屋のホテルもビルも工事は順調に進んでいた。恐れていた追加費用も要らなかった。建築会社は工期には、十分間に合うと言っていた。事務所やショップそしてレストラン、医院なども決まっていた。俊子が久しぶりに東京のホテルに行ってみると、名古屋のホテルのオープン前に、どこかの国の大統領が来日し、名古屋にも寄るので、泊まりたいと言っていた。俊子は出来てもいないホテルに泊まれないからと言って断った。そうして、中部財界人のあのお祖父さんが来て、俊子と話していて、複合ビルのマンションの最上階を買うとか言い出した。これから分譲を開始する日を決めようとしていた。いつも相談に乗ってもらっているので、簡単に俊子がありがとうごさいますと言ってしまった。そしてビルの準備室の人に説明に来てもらった。場所はどこになさいますかと聞いてたら、ワンフロワーを全部買うとか言って、みんな唖然となった。そしてお祖父さんはレイアウトにも注文をつけて、エレベーターの一つは、最上階専用のエレベーターとなった。そして翌日にも、色んな人から話が続き、気がつくと、財団と乳幼児施設用に残していた下層の地味な部屋しか残らなかった。そして建築会社から工期の一ヶ月前には完成すると返事があった。色々なルートから圧力がかかり、ホテルのオープンは予定より早まり、工事完成から余裕を持っていたオープンの日も早まり、俊子は、前日の大統領の宿泊も受ける事になった。ビルの開業はそのままの積もりだったが、結局早くなった。俊子は人の手配等が大変になり、大慌てになった。

香奈は、瑠璃の事も一段落し、ゆっくりと自分の海外会社の報告を、落ち着いて読んだ。その後の貴金属相場は大きく下げた後、乱高下しており、ヘッジだけでも売買をかなり繰り返していた。これじゃ売買も同じだわとも思いながらも、まあこれくらいの額なら仕方ないかとも思っていた。最後の現有現金を何度も読み返した。全部で八百億円にも相当する額になっていた。今度ばかりは儲かったとは思わず、怖くなった。もう一度海外の自分の会社にルールを守るように、勝手に相場をしてはいけないと繰り返した。まだ早朝の筈なのに、ロンドンから直ぐに返事が来て、今度の暴落と乱高下で、多くは大きな損を出した。鉱山の権利を安く手放すと言ってきているどうします?ボスは神様みたいに、なんで分かったのですかと聞いてきた。もっと詳しく鉱山の事を調べて、もう一度連絡してと返信した。徹がやってきて、ここは欲しいとか言いだした。直ぐに又返信が来て、相手は焦っているので、価格を下げた。お買い得よと言って、詳しい資料もつけてきた。徹が早速読んで、香奈は買ってもいいと承認を送った。あんまり、彼奴らに金持たすと又、何するか判らないと思い、取りあえずこの鉱山の権利の購入に必要な金と税金分や当座の金を除いて、シンガホールの香奈オフィスに送ってもらった。ポンドは何故かやたら高かったので、シンガホールの香奈オフィスは、香奈の海外での金融センターと云えば格好いいが、金庫番のようなオフィスでもあった。香奈は通常の情報料以外にも、香奈オフィスの各会社からの送られてくる利益を為替運用すると云って預かり、効率の高い通貨に替えていた。香奈オフィスの為替運用の一つであった。シンガポールは、送られてきたポンドを円に替えた。

直ぐに、ニューヨークからも同様の返事があり、今度は、油田の一部の権利が、安く手に入った。ボスの禁止が出て、自分で相場やった人はほとんど金が無くなったとか言ってきた。香奈は此奴らはもっと危ないと思い、同じく当座の金と税金分や油田の権利分を除いて、シンガホールへ、送ってもらった。ただ油田の権利は高かったし、当座の金も相当必要だった。

それでもシンガホールには、150億円程度の余裕資金も追加された。シンガポールは香奈オフィスの財布オフィスだった。香奈の別財布はケイマンとスイスに持っていた。ケイマンとスイスは、香奈オフィスの人でもほとんど知らない隠れた香奈だけの銀行口座だった。香奈は時々、コシロの助けを借りて密かにケイマンやスイスで運用して儲けていた。これで又再び、シンガポールにも、200億円、ケイマンには1億ドル程度にある。スイスにも1億フラン程度貯まっていた。香奈オフィスにあった香奈の個人の運用会社にもそこそこお金があった。香奈は、ほくほくして、徹の部屋に行き、室内スポーツをしてから、珍しく徹の部屋で休んだ。

翌日、運用会社に行って、ゆっくりと口座残や現物株の状況などを見ていた。現物株の保有株は同じだったが、市場の評価は35億程度まで下がっていた。一度大きく下げ、これでも戻ってきていた。先物の口座の現金は500億にもなっていた。株式の口座での現金残も200億になっていた。運用会社の銀行口座は、300億増えていた。

正子は、まだつわりもあったが、なんとかやってきた。
正子「今は止めた方がいいと思います。身体の奥から聞こえた声は、お腹から出ているようでした。そして僕のお手伝いはこれで終わりと言ってました。」
香奈「怖い事を言うのね。そんなオカルトみたいな事を言わないでよ。」
正子「最後に相場を仕掛けた時も、手が勝手に動きました。そして数日間気分が悪く、動けなくなり、最後に手じまった後、その晩夢を見ました。もうこれで終わりにしなさいと、何人もの赤ちゃんが言っていましたよ。お腹も蹴られましたよ。」
香奈「正子さんは疲れているのよ。少し休むといいわ。どちらにしても、運用は暫くお休みよね。私も時間がないから。」
正子「私は、禎子さんと一緒にゆっくりします。」

香奈は、暫く考えていたが、多くの資金を銀行の口座に移した。そして、美佳や真智子そして出資者たちと相談して、運用会社として、東京の郊外にビルを建てて、今までのビルでの経験を生かして、同様のビルを建てる事にした、今度は今までのビルから何人か選び、すべて任せる事にした。俊子も自分の不動産会社に任せて、少し大きい土地を確保させた。ビルの準備委員会が出来て、15階建てのビルにして、事務所の数や店舗の数そして、高層の住宅数や乳幼児施設の大きさや幼稚園の有無そして、老人施設とするか、寿クラブのような施設にするのかまで、みんなで討議しても貰った。土地も含めてすべて見積もって、赤ちゃんスキ不動産会社に増資した形になった。そして幾つかの企業も、赤ちゃんスキ不動産会社の増資に応じてくれた。

香奈は前回の臨時配当を出す時に、あまり税金の事を考えなかったので、税理士を呼んで、調べさせて、更に臨時配当を出した。臨時配当は、120億程度にもなった。

「今度も凄い臨時配当だよ。こんな事は始めてとお義母さんも言ってるよ。私たちだけで、又30億もあるよ。」
香奈「私も怖くなってね、運用は当分お休みだよ。なにか不自然よ。みんなに相談してね。税金の事もあるから、又必要な時に配当するよ。」
「この配当から、ビルの出資も集めるのね。早く集めてよ。」
香奈「説明したでしょう。今度は運用会社として、赤ちゃんスキ不動産に東京のビル分の増資をしたのよ。残りを配当したのよ。」
「えっ、そんな凄く儲けたの。」
香奈「今回はなんかおかしいのよ。正子さんは神技みたいな事を続けていたのよ。それに正子さんは怖い事も言うしね。みんな、多くの人が妊娠しているでしょう。その子たちのオーラが正子さんのお腹の子に集まり、正子さんを動かしたと言うのよ。私の会社でも、同じような事があって、怖くなって、相場は止めたよ。巧くいきすぎるのも怖いわ。真理さんも抑えているわよ。やっぱりお休みした方がいいよ、正子さんもつわりも酷いし、聖子ちゃんはもうすぐ出産だし、悦子さんは産後の調子がよくないし。その上、私も海外の会社も丁寧に管理しないと、何するかわからないので、忙しいのよ。瑠璃や咲子さんもお腹大きいのよ。」
「香奈さんの所も、三人もお腹が大きいのね。」
香奈「俊子さんは、息子の嫁たちの妊娠が続いているし、有希さんの所は、息子の嫁と娘が妊娠しているのよ。彩香さんがみんなの様子を見に来てくれるわ。」
「私の家でも4人もお腹が大きいよ。」
香奈「名古屋のホテルもビルも、うまく行き過ぎたと俊子さんも言ってるのよ、ビルの建設費の七割程度は、もう住宅の分譲で回収したらしいよ。それにビルも評判がいいらしい。寿クラブといいながら、財界人のクラブみたいになっているらしいよ。財団や施設への寄付も多いらしい。ホテルは好調らしいよ。最初にどこかの大統領が来たでしょう、今回は俊子さんも巧くいきすぎたと言ってるのよ。」
「みんなも怖がっていたよ、あの二つの財団に相当寄付が集まるよ。」
香奈「俊子さんもそう言ってるし、有希さんまで寄付するらしい。」
「救う財団で、堕胎するつもりの子が、シングルマザーでも産んで育てると気が変わったのが二人も出てね。みんなでバックアップしていく事になったよ。育てる財団も出来たし。今は財団の用意した部屋で、二人で暮らして貰っているよ。あの二人のお腹の子の力も加わったのかな。」
香奈「正子さんもそんな事言っていたから、真理さんの前では言わないでねと止めたのよ。真理さんは今でも気にしてるのよ。真理さんの前では、言わないでね」
「分かってますよ。」

名古屋のホテルは、人の手配に俊子は慌てて、東京と大阪のホテルの人から応援して貰い、なんとか乗り切った。ビルの住宅部分は、契約さえすれば、ホテル並みのルームクリーニングと普通のクリーニングも請け負った。そして多くの人が契約して、ホテルのサービスは忙しくなった。乳幼児施設は、名古屋の場合はビルの直営とした。保育士何人かと看護婦を集めたが、最初は暇だった。その人たちはホテルに来た人の子供の一時預かりも始めた。そしてビルの庭園の一部に小さな幼稚園も作りだした。そして、子供たちは少しずつ集まっていたが、東京の一族用の託児所や保育園などと似て、お金持ちたちの子供が多かった。

次第にホテルの客やこのビルの住人たちが利用するようになった。ビルの住人には、子守や乳母とコックもいるような住居となり、頼めば室内もホテル並みのルームクリーニングもして貰えた。

名古屋の寿クラブは、東京の同じ発想で、子供たちと触れあう老人施設を目指していたが、ホテルとビルを最高級品質にしてしまった事から、一種の財界人クラブになり、名前もゴールドクラブになった。内装も落ち着いた中にも贅沢な作りにして、高い年会費を取り、お金持ちたちのラウンジのようなものになってしまった。

乳幼児施設の人たちの中に、恵教の信者上がりの保育士がいて、元不良のくせに、なかなか頑固な原則主義だったので、恵が来た時に直訴した。本当の乳幼児施設を作るべきだ。これでは金持ちの乳母にしかすぎないと言った。恵も元不良の原則主義者ではあったが、遺産対策でお金の対応をして、その後高額配当を貰い、資産階級ボケもしていた。平手打ちをされたような衝撃を受けた。赤ちゃんスキ不動産は、ホテルやビルに来るお金持ちの人から、乳幼児施設などの限定的な場所を安く分譲して貰った。そして寿クラブはゴールドクラブになり、更にスリースター中部不動産は、一定の利益比率を財団や乳幼児施設に寄付する事にしていたので、財団や施設にもお金があった。ただ恵も恵教の信者たちも、情熱はあったが、組織だった対応や計画は苦手だった。俊子と相談して、東京から乳幼児施設の運営担当も来て貰い、ビル直営の郊外の駅近くや名古屋の繁華街の外れに幾つかの託児所を作った。恵も配当が入っていたので、繁華街の外れに小さなビルを買い、ド派手な女の子の服やグッズを売るお店と怪しげな喫茶店も作り、財団の連絡事務所と恵教の名古屋支部が出来て、名古屋に旦那が転勤していた、元不良のお姉さんたちが相談にのった。

東京の郊外でも、作り出したものは、順調に推移しても、住宅部分を増やした事もあり、赤ちゃんスキ不動産も当初から金を多量に持っていた。そのためビルを持たないまでも、他の駅でも幾つかのビルの一部を借りて、託児所も持つ事になり、託児所の運営は、すべて施設に一任した。

コシロは、30才を超えたが、一時はさすがに弱って、香奈もケイマンやスイスでの運用も長い間休み、何をする気もないようだったが、突然元気になり、自分の部屋だけでなく、又香奈がパソコンを使い出すと寄ってくるようになった。香奈も調子にのって少し取引をして少し儲けた。コシロに聞いて、スイスや国内の自分の運用会社で先物もしたが、正確に儲けていた。香奈オフィスは、まだ相場禁止令を出していたが、香奈自身はこっそりと相場をしていた。

香奈「コシロが元気になったよ。もう30才は、とっくに超えているけど、前よりも元気になったよ。一時はずっと寝ているだけだったけど、最近は私がパソコンの前に座ると横に座るようになったよ。時々目を休めるために、外を見るけどね。」
「あの猫は、香奈さんの大学生の時に拾った猫らしいね。私を見ても全然驚かないね。猫が、30年も生きるのは珍しいよ。毛並みもいいね。艶々しているよ。」
香奈「さすがに昔よりも老けたよ。前は毛なんか抜けなかったのに、この頃はコシロが座っていた所に毛が落ちているのよ」
「それでも凄い長生きだよ。」

恵の娘の千恵の旦那の友貴の使い込み発覚


恵は千恵の事で悩んでいた。恵の長男である健一と由香の長男の健太は、鉄鋼に行って、そして健二も化学に行って、結婚は遅かったが、由香の次男の信冶も商会に入って、結婚して大人しく働いていた。ただ末娘の千恵だけが結婚もせず、銀行に勤めていたものの、頼りない2つ年下の栗林友貴と子供まで作ってしまった。栗林友貴は、転々と会社が変わり、今はパットしない三流会社の経理課に勤めていた。そして千恵に甘えて、小遣いまで貰っていた。取りあえず結婚させ、千恵は家で安静にさせていたが、友貴は栗林家の三男だった。父の栗林元造とは喧嘩が絶えなかった。その上、友貴は、千恵からせびっていた小遣いも貰えず、溜まっていた欲求に負けて、風俗に通いだし、少額だったが、会社の金も使い込んだ。会社に発覚して、警察沙汰になるか単なる懲戒解雇になるか瀬戸際だった。栗林元造は、怒っていた。恵は千恵の夫だったので、間に入り、仲裁しようとして、かえって喧嘩になり、友貴は勘当になり、会社は首になり、使い込んだ金は恵が支払って、示談にした。恵は友貴も引き取って、婿養子にはしたが、くずのような男の友貴には手を焼いていた。学校はいい大学を出ていたが、次々と会社が変わり、ついには三流会社で使い込み、千恵から小遣いをせびり、風俗に行くような男だった。男の子の友一が出来ても、ぶらぶらしていた。恵は、怒って乳幼児施設の力仕事をやらせる事にした。千恵はそれでも友貴が心配で、出産して体調が戻り、友一が少し大きくなると、車で三人一緒に、友一を連れ、友一を乳幼児施設に預け、乳幼児施設の事務員になって働いていた。

香奈「千恵ちゃんは、大変な男と結婚したね。大丈夫なの。」
「あんな奴はいなくてもいいんだけど、千恵は好きなんだよ。仕方がないから、金を扱わない仕事をさせているのよ。千恵が妊娠している時に、風俗に行って、その金欲しさに使い込む奴だよ。あれじゃ未婚の母の方がましなんだけど、でも友一の父親だから、なんとか立ち直って欲しいと思っているのよ。」
香奈「恵も、不良少女の更生には積極的だけど、男は苦手だね。」
「まったくだよ。大学はそれなりの大学なんだけど、千恵も焦って、あんな男に手を出すなんて。千恵は優しい男だと言ってるけどね。」

悦子は女の子の尚子を産み、産後の回復が遅れていたが、少しずつ元に戻り、洋一郎の溜まっていた精液の猛爆にあい続けていた。託児所には預けて、禎子や正子たちと昼には休んでいたが、夜には、子宮が疼いて、喜んで洋一郎の猛爆の受けていた、そして悦子も完全な腑抜けになり、洋一郎のものにひれ伏す女に変わっていった。そして完全変態になる寸前で、又妊娠した。洋一郎は優しくなり、優しくお腹をさすってくれた。変態になる事は回避され、洋一郎にお腹を撫でて貰い、ゴロゴロと、喉をならしてして喜んでいた。禎子は流産の危険を回避して、順調にお腹の子は大きくなっていた。有希は禎子の事が心配で、かかりつけの産婦人科医神野喜助を強引に口説き落とし、自分がお金を出し、敷地内の小児科医院に産婦人科の設備と幾つかの入院設備まで増設して、禎子を定期的に見て貰った。禎子が出産したら、外部に産婦人科病院が完成する予定であった。敷地内の妊婦たちは、ここで見て貰うようになった。有希のご主人様ごっこは終わった。

正子が、子供の神太朗を産むと、頭の霧もほとんど、晴れたが、神のような事はもうできなかったし、前に自分がした事はあまり覚えていなかった。暫くは子供の世話と勉強だけに追われていた。太朗のバックからの過酷な突きと子宮への直撃弾の前に、お尻を突きだして、崩れ落ちていたが、神太朗は正子を励まし、正子を支えていた。聖子も、お腹が大きい時に、妊婦服のモデルに使われて、そのポスターが人気となり、人形のような可愛い清太郎と共に、綺麗なママさんとして、婦人服のモデルもやり、紡績や洋服事業でこき使われ、そして夜には、二郎のものにひれ伏し、あえぎ声の中で、二郎の精液の猛爆の前に、燃え尽きる毎日をおくっていた。

慶子や健介たちも洋之助が亡くなる前年に、慶子が、そして後を追うように健介が亡くなっていた。慶子や健介たちの資産は、それほど多いものではなく、概ね管理会社化されていたが、それでも相続時には、現金が少し必要となり、相続した株を、当時清美がしていた運用会社に売っていた。二人の子供の内、娘の真世は医者になり、夫の石川民弥と共に、慶子の小児病院を継いていた。息子の市川伸太朗は、ボンクラだったが、真面目な男で、おとなしい娘の伊藤伊智子と結婚していた。しかし伊智子は、決しておとなしい娘ではなかった。北陸の建設会社の社長の娘で、高校時代から遊びはじめ、大学は三流の私立に進ると、尚、一層、精を出して遊んだ。目線はいつも男の股間にあり、風船ガムのように、ゴムをいつも口に入れ、男のものを入れる娘だった。

いつも違う男が、甘い親が買った都心のマンションにいた。なまじスタイルも金もあり、好き者で、どうしようもない不良だった。父の伊藤作之助は、娘を案じて、女の不良はといって、躊躇していた洋之助に頼みこんで、人を教育すると定評のあった安倍紡績の総務に潜りこませた。伊藤作之助は、紡績から放りだされたら、東南アジアでも子会社を作り、そこに島流しすると脅し、本当にインドネシアの小島に訳の判らない会社をわざわざつくり、エビの養殖とかを始めた。洋之助にも伊智子のその会社の役員兼務を認めて貰った。伊智子は、田舎は大嫌いな娘だったので、それに怯えて、猫をかぶって紡績では静かに可愛い子のように振る舞った、そうするとスタイルや顔だけは良かったので、馬鹿な伸太朗は、ころっと騙され、伊智子の魔の手に掛かった。伊智子はコツコツ働くなんて嫌いだったので、直ぐに会社も辞め、家で遊び出す機会を待っていた。作之助は馬鹿な娘が改心したと親馬鹿にもそう思い、何かと小遣いを渡した。伸太朗はそんなに立派なものも持たず、テクニック豊富な伊智子に翻弄された。伊智子は欲求不満ではあったが、敷地内では、洋之助や和子が怖く、ホストクラブ遊びもこっそりやった。精液が入ってくると、それでも男の子の和也が出来た。和也は手が掛からない子供だった。

洋之助や和子が亡くなって、おばさんになっていったが、お金も、まだ甘い馬鹿な父にせびり、本格的に遊ぼうと思った時に、神太朗が生まれ、お義理でやっていたセックスで、伸太朗のものが突然大きく硬くなり、不覚にも逝って、絶頂感を味わってしまった。そして何回か絶頂感を味わうと病みつきになった。中年で盛りがついた好き者なので、傷は深く、変態手前まで症状が悪化した。ついには、膣から涎を出しながらオナニーをして、伸太朗の使った便器を舐めている所を真世に見つかった。真世は自分の経験から、さかりのついた伊智子を更に追いつめ、色ボケしていた伊智子は真世の言われるままに真世の前でオナニーまでした。写真を撮られた時は、ピースの合図までする変態になっていた。その後少し正気に戻った伊智子に、真世は反省しないと、子供の前でもオナニーさせ、みんなの笑い物にしてやると脅した。伊智子も少しは理性が残っていたので、あまりの事に泣き出し、託児所の下働きをして、反省すると言った。不思議な事に、託児所の保育士の元不良たちと話が合い、やがて託児所の運営にも参加するようになった。

「この頃、変なのよ。伊智子さんが、急に財団に来てね、施設で何でもいいから手伝いたいと言うのよ。前には見向きもしなかったのに。真世さんも何か仕事を探してやってよと言うの。社長のお嬢さんだった人なのに。でも施設の中では好評なの。みんなの相談役みたいになっているの。元不良たちとも仲良くやっているの。」
香奈 「よく分からないけど、いい事じゃない。伊智子さんも仕事をする事は良い事よ。」

やがて伊智子の父の伊藤作之助は亡くなり、伊智子にも少しは遺産が入り、訳の判らないエビの養殖業などをするインドネシアの会社などは伊智子に押しつけられた。伊智子は家族の中では、不良娘として通っていたので、あんな奴に渡すのは、どぶに金を捨てるのも同様だと考え、みんなが処分に困るような土地や会社を押しつけられた。伊藤作之助は、人に頼まれるといやと言いにくい性格で、養豚業や養鶏場や牛肉加工会社まで持っていた。伊智子の兄弟たちは、本体の建設業と関係のない事業はすべて伊智子に押しつけ、情けも容赦もなく、時価総額は高いからとか云って、現金はあまり渡さなかった。伊智子は反対したが、お前の正体を、伸太朗にばらすぞと脅かされ、伊智子は今では伸太朗にぞっこんになっていたので、渋々合意した。伊智子は高校の時は1日に5人、大学時代は8人の記録を持ち、1週間に30人の記録を達成し、伊智子は鼻高々に、アダルト女優の嘘っぽいインタビューのように、みんなに喋っていた。伸太朗がそれを知ったら、放り出されるぞと兄弟たちは脅し、伊智子はそれに屈した。伊智子は、相続税に困り、叩き売ろうとしても売れず、運用会社に相談した。香奈はこんな事業には関心もなかったが、正子は興味を持って、相続税分を伊智子に貸して、調子が良かった運用会社は大きく出資して、すべてを統合して食品原料を供給するイチコプロダクトを作って、偶々正子の大学院時代の友人に、食品会社を喧嘩して辞めた人がいて、その人に運営を任せた。その人は、いくつかの青果や野菜を集荷したりする会社も合併して、次第に会社は大きくなった。無農薬や健康とかを売り物に、契約栽培なんかも手がける会社にしていった。やがて、それなりに利益があがり、伊智子も、配当も得た。運用会社も少しずつ返済してもらい、運用会社自身も利益も入ってくるようになっていった。

香奈の娘の瑠璃も女の子の奈津実を産む前に、政則も日本に帰ってきて、一緒に住むようになった。コシロは子供が苦手なので、遠くから、眺めるだけだったが、徹彦や瑠璃の時とは違い、穏やかな顔をして眺めていた。禎子は政則を見て雅也さんと言った事から、相手の男が分かった。禎子は、雅也が結婚していると思いこんでいた。雅也は卑怯にも、禎子は遊んでいた女で、自分以外に男がいると言った。禎子は涙ながらに、有希に遊んでいた事も認めたものの、子供の父親は、雅也以外にはいないと訴えた。逆上した有希は、洋治が止めるのも振り切って、須坂の両親の所に怒鳴り込み、談判した。須坂の両親は雅也を問いつめると、雅也は関係を認めながら、禎子には、他にも男がいるとか、あれは遊び人とか言った。雅也の父親は、温厚な日銀マンではあったが、古武士の気風も持っていた。雅也の男らしくない対応に怒り、有希にこき使って、気性を叩き直してくださいと言って、雅也を治部家の婿養子にして、雅也は、将来を嘱望された日銀マンから、洋服店の店員にさせられた。有希は自分で監視すると言って、雅也を厳しく躾る事になった。有希は洋服事業では専制君主のように、強引だったので、みんな雅也の方を持つ事はなかった。孤立した雅也は、禎子との夜に乱暴に振る舞う事で発散しようとしたが、禎子もアメリカで自己主張の強い気性になっており、男の子供である雅彦が産まれると、その本来の姿に戻り、エリート日銀マンだった雅也は太刀打ちできず、雅也は搾り取られ、夜には禎子に従い、昼には有希にこき使われる毎日となり、雅也はあっさりと人が変わった。

有希は、禎子の事があって、小さい命を救う財団と育てる財団にも寄付をして、一族の人も税金対策もあって、それに釣られて、寄付をして、財団の基金の規模は拡大してしていった。それに加え、神野喜助だけでなく、何人かの産婦人医を加え、治部産婦人科病院を設立して、2つの財団に協力していった。

「何か嵐の様に進んだね。託児所も何か一杯できそうだよ。保育士の育成援助が効いて、近くの子が来てくれるし、バイトでも働いてくれる子もいてるよ。」
香奈 「なんとか、ここまでこれたね。有希さんが産婦人科病院を作ってくれて、財団も二つの病院との協力でしっかりとしてきたよ。基金の規模も増えたしね。」
「これで救うのも育てるのもすべて財団が中心となって支援していけるね。大きなビルの中には相談室を作っているし、電話相談もするようにしてるよ。」
香奈 「これからだね。」
「これから全国展開していくの。」
香奈 「いや、寄付や場所の提供も増えて、名古屋でも何カ所もの託児所ができたけどね、我々の世代でもここまではだよ。人の手配だって難しいらしいよ。東京では、病院の手配とか、保育士の確保とかみんなやってくれるし、関係者も多いから。手配とかは簡単だけどね。出来る事からやっていかないと言っていた。それに第一、私も俊子さんもそんなに若くないよ。恵が若い人を育てていかないといけないのよ。千恵ちゃんや友貴くんはどうなの。」
「友貴も少しは真面目に働いているよ。でも、あつらでは到底無理だよ。もっといい人が出てくるよ。」

香奈も俊子も、これで終わりの積もりだった。香奈は、もうスイスやケイマンでの運用もしなくなった。勿論香奈オフィスだけでなく、自分だけの運用会社でも運用は止めた。先物も金属相場も怖いのだ。一つ間違えばお金は無くなってしまう事もあるのだ。後は次世代が考えていくように、東京の最後のビルは、計画から運営まで、財団や赤ちゃんスキ不動産に任せて、なんとかやった。託児所と隣接する高齢者施設も出来そうだった。東京では、竹林のタケノコのように色々な託児所の施設が増えてきた。多くのビルが、資金的にサポートする体制も固まった。産婦人科病院も小児病院も赤字ながらも、財団からの検診費名目の協力費でなんとか運営していた。恵教も、教祖の恵がお婆さんになっても、絶頂感が魂の救済とする怪しげなスローガンの元に、息を吹き返し、以前のように哀れな不良少女たちを食い物にし、主婦と云う名の専用性処理女に変えて、更に低賃金で、保育士や介護士でこき使われて喜ぶ被虐性の強い女に洗脳していった。そしてその人たちが、乳幼児施設を支えていた。妊婦の定期的な検診や乳幼児の検診や幼児の預かり料などの補助などが増えてくる傾向があった。

治部病院は二代目次平が院長を務めた後、洋平が院長となり、心臓病センターを抱える大きな病院になったが、創立の理念は徐々に弱くなり、理事会では管理の力が強くなり、大病院特有の冷たさも見えるようになった。純子会は医療補助を続けていたが、治部病院は、他の患者との公平性が期すると言って所得制限を作り、何百円の間違いも、不正受給だと言って、手続きを煩雑にして、緊急の要請には応えられなくなった。治部病院の理事会には、美佳、真智子、香奈も入っていて、美佳たちは、純子の遺志の医療援助は、そんな事ではないと言ったが取り上げられず、一族の医師たちが勤めているものの、財団との関係には陰りも見えていた。

香奈が運用会社を続けたのは、税金対策の為だった。

香奈は、運用会社でも、瑠璃の一件もあり、相場を使っての運用は、もう避けようとしていた。招き猫のようなコシロも元気とは云え、もう歳になり、香奈自身も段々、相場の怖さも実感してきた。直接出資していたビルや出版社などの非上場の会社は既に多く、その配当や保有する上場企業の配当などを集め、運用会社としてみんなに配当していくつもりだった。しかし税金は、今度も予想よりも少し高かった。税理士に話が違うじゃないのと言ってはみたが、遅かった。そしてその他の経費もかかってきた。香奈は、まだ少しは稼ごうと思い、正子に頼みに行くと、意外にも正子は神太朗もいいと言っているので、神太朗も一緒ならいいといいと言った。今まで不明確な組織だった運用会社をジブトラストと名付け、香奈は代表取締役社長になり、正子を代表取締役副社長として、運用会社の定款を整備して、一族の子供たちへも配当できる環境を整備していった。それぞれの家の出資枠のバランスもとりながらも、子供たちからの出資も広く受け入れる事にした。

正子の前回の神のような運用による運用手数料をどうすべきか香奈は悩んでいた。正子には、特別にジブトラストの株を5億無償譲渡する事として、正子への現金の支払いを香奈と同じ3億とした。三家族はほぼ等分だったので、その比率を維持し、ほぼ1.5倍に出資枠を広げた。清美や良子も同様に1.5倍とした。今後の事を考えて、美佳、真智子、俊子、真理、有希そして香奈などの多くの出資者は、貰った臨時配当の半分程度を子供たちにお金を貸した事にして子供名義で、ジブトラストへ出資枠一杯の出資をした。恵は財団や乳幼児施設で頑張っていたので真智子は更にご褒美として、みんなより少し多めに出資したようにしておいた。各人の出資金も整理して億単位として、最低出資単位は1億とした。こうして前回の臨時配当を半分程度回収した形になった。正子は無償配布の特別枠としたが、香奈自身は、無償ではなく、特別枠でも20億の追加出資を行った。これで真智子を抜き、単独でも最も多い出資になった。香奈としては、一応の責任を取った積もりだった。香奈は、瑠璃や徹彦名義の出資も出していたので、自分の配当や運用手数料をほとんど吐き出した。資本金は180億程度となった。何とかこれで、利益を少し出していければ、税金や経費は払えそうだった。

相続税で苦労した香奈は、真智子や美佳たちと相談して、子供達の出資を増やし、出資者たちは、譲渡は出来ず、返却要請があったり、死亡すれば年度途中でも出資額だけの返却に応じ、子供たちは、出資者の枠内での再出資を認める方法に変更する事にした。正子の登場以来、臨時配当を出しすぎていた事もあって、従来通り、最後に残ったその年の余剰金の半分を定期的な配当として出す事にした。香奈は、自分のシンガホールのお金を念頭に、税金や経費の為には、万一の時は、香奈オフィスとして追加のお金を貸す準備もしていた。香奈は、資本金も増え、税金等の経費を払いながら、運用会社としては、増えた出資金の1割程度の配当を出していければ、一族の生活の支援もしていけるし、利益の5%を財団に寄付する事を目標としていく積もりだった。少しは配当も入るし、少し目標が高いかなとも思っていたが、取りあえず、香奈プログラムも組み入れて頑張ってみる事にした。

美佳、真智子、清美そして良子は高齢にも拘わらず、元気だった。うまく行けば、まさかの時には処分できない個人資産を買い取ったり、相続税などを貸す事もできると夢も見ていた。

香奈は念のため、先物の口座は60億として、株式の口座に120億程度おいて、香奈と正子二人で本格的な運用を再開した。正子には大きな勝負はしないでねと頼んでいた。株式投資は比較的安定な良子ブログラムの中に、香奈ブログラムを少しだけ組み込んだ、香奈プログラムがかなり有効になれば、香奈プログラムも動かせるようにし、不安な数字が少しでも出れば手じまいするように改良型良子プログラムに替えていた。今度は堅実に損しない程度に、損しても少ない段階で損切りできるようにしていくつもりだった。

神太朗は、午前の数時間は充電する必要があり、託児所で休んでいたが、昼からは一緒にいた。正子は又先物で遊びだした。いつしか少しずつ儲けていった。改良型良子ブログラムも又始めた。そして、正子は執拗な太朗の攻撃で、霧の中で、膣から炎が出て、完全に灰になり、死んだように寝ていたが、夢の中で頑張りなよと言う女の子の声を聞いた。その日から再び、正子は神になった。神のように儲けだし、先物の口座には再び100億になるのに、すぐだった。株式も改良型良子ブログラムを使用して、着実に儲けていた。先物は、日中は、10枚単位で頻繁に売り買いを行っていたが、買えば上がり、売れば下がった。それでも倍になるのは、時間がかかる筈だったが、後場の終わり頃にはかってに手が動き、100枚単位でオーバーナイトする事があり、それがすべて当たり、1週間単位で倍々に膨れあがっていた。異常な勢いで資産を増やしていた。香奈は時々見にいって、巨額の先物をしていないか確認しようとしていたが、何故か急用が出来ていけなかった。清美のように二ヶ月に数回来て確認する程度しか出来そうになかった。そして正子は一人で勝手に手が動いて、操作していた。異常な勢いで資産が増えて一ヶ月経った。香奈は、香奈オフィスも忙しくなり、資産の状況を知らなかった。

香奈は、前のようにいつも幸運がついて回る事はないと思い、海外の会社の監視のために、一ヶ月に一回程度、出張に行った。もうスイスやケイマンなどでこっそり運用している状況ではなかった。貴金属の商品相場は怖いのだ。1晩で倍にもなるが、なくなる事もある。瑠璃は、出産後しばらくして、又政則と激しい夜のゲームに夢中になり、香奈は自分の資源ビジネスの手伝いをさせていたが、又妊娠して動けず、家で資源ビジネスの勉強をして香奈と徹の連絡役になり、徹彦の妻の咲子と一家の主婦役も担っていた。咲子は家事に専念しだした。

香奈はあまりに安くなったので、ついつい資源利権だけでなく、株まで買ってしまった

香奈は、一番規模の大きいニューヨークの香奈オフィスにいた。その頃はアメリカは巨額の財政赤字が顕在化して、ドルはどんどん安くなっていた。しかし多くの資源はドルベースで取引されている実態に差はなかったし、アメリカに連動して株価が上下する傾向は依然として続いていた。香奈は前回の大儲けの後、アジアへの投資と称して、資金を円にしてシンガホールの香奈オフィスに移動させていた。依然として、アメリカにも多くの資金が残っていた。世界マーケットもアメリカが動かしていたためでもある。それでも、資金は徐々に、アジアやヨーロッパに逃げ、その金が出入りする度に、為替が動き、国際金融の枠組に安定性が欠けていた。少しの不安も増幅される傾向は強まっていた。再びアメリカの大銀行と大きな証券会社の信用不安説が勢いを持ち、FOMCも低利率にした。雇用不安も囁かれ、再び株価は大きく下げた。香奈はアメリカで勉強していた事もあって、アメリカの底力を信じていた。隠された資源は多い国と思っていた。

そして香奈には魅力的と思える価格の資源利権、不動産そして株があった。香奈もここまで安くなると長期保管を前提に少し買おうと思った。ドル安を利用して、シンガホールから、円をドルに替えて、アメリカに一部送金した。折角のチャンスなので、1週間の予定の滞在を1週間伸ばしていた。そして大きく下げた株を買った。不動産はいいものがなかった。鉱山の権利が安く手に入った。株は乱高下しながら、上がり始めた。香奈は長期保有する積もりだったが、予定の帰国日の前日に、夜中にふと目が覚め、もう一度底を打つような気がしてきて、又滞在を延ばし、まだ株は15%程度上がっただけだったが、全部売ってしまった。

香奈の予想では、もう一度大きく下げる事になっていた。でも依然として上げていた。もっと持っておくべきだったと思いながら、もう帰るかと思って寝た。翌日早朝、大銀行と大証券が破産を申請するというニュースが出て、本当に破産してしまった。政府や関係機関も大資本の優遇との批判を考慮して、何もせず、数日間、下げに下げた。香奈の計算では、もう上げる筈だと思っていたが、実際に反転するまで様子を見ていた。ドル安も激しくなり、もう少しお金をシンガボールからお金をドルに替えてアメリカに送らせた。あまりの下落に政府も対策を取るとの報道もあり、さすがに落ち着いてきた。少し打診買いして、少し上がり始めた時点で予定数量を買った。そうして滞在は2週間を超え、日本に帰った。ニューヨークのオフィスの金も使ったし、シンガホールの金も半分程度使ってしまった。でも少し不安もあったので、本当の内緒のケイマンの1億ドルは温存していた。

日本に帰り、当日はさすがにぐったりして、休んでいた。コシロも久しぶりに香奈の横でゆっくりしていた。コシロは不死身のような猫で、益々元気になり、お不動さんの絵の裏で休んでいたが、香奈の声を聞くと元気に寄ってきた。翌朝、乱高下していたらしい日本の相場に心配して、相場が始める前に、運用会社に行ってみた。貴金属の会社で真理に会うと、さっき正子ちゃんから電話があって、つわりが酷く、お医者さんに行くといって休んでいるわよと聞いていた。先物の口座は700億になっていた。香奈は、例によって、桁を間違えて、まあこんなものかと思った。株式の口座残は150億だった。先物の口座には、買が合計200枚も残っていた。プラスだった。まだ相場も開いておらず、そのままにしておいた。株式の建て玉は、現物でやたら数も数量も多かった。信用の建て玉はなかった。取りあえずすべて印刷して、後で読もうと思っていた。

なんで、こんなに買ったのかと不審に思っていると、俊子がやってきて、福岡、大阪そして東京でのビルの話をした。香奈はもう止めるといってなかったと言ったが、俊子は説明した。
俊子 「もう止めるつもりだったけど、お義母さんが、私の地元でも欲しいとか言ったの。それに大きな土地も出てきて、それを治部西日本不動産が買って、ホテルとビルを名古屋方式で建てるのよ。東京はね、有希さんが産婦人科病院を建てた土地と子供病院の土地が、道路をつくるのに必要だから売れって言われたの。だから代わりにビルを建てて、それに引っ越すの。小児科と産婦人科の病院にして、横に乳幼児施設も建てるの。ある建築会社が本社を建てようとして、危なくなり、治部東京が安く手に入れたの。今度は財団と乳幼児施設のオフィスと財団用の一時用の住宅スペースと乳幼児施設だけの小さなビルも横に立てるの。今度は土地と建物売ったお金も入るし、そんなに多くは要らないの。大阪は多くの企業が少しずつ出資してくれる約束なの。ホテルの増設用に治部大阪不動産が買っていた近くの土地にビルを立てるのよ。株価が大きく下げた時に、要請されて、正子さんが大量に買ったお礼みたいなものね。」
香奈「ものすごいお金がいるんじゃないの。」
俊子 「福岡はね、土地はお義母さん名義だから、治部西日本不動産会社が買うのよ。その程度のお金は、会社は持っているの。大きなホテルにはしないつもりだけど、やっぱりお金は掛かるのよ。東京のビルは病院がなんとかするけどね。やっぱり追加の資金もいるのよ。大阪でもそれなりのビルにするから、相当いるの。病院は有希さんが出してくれるというけど、運用の利益をある程度臨時配当に回してくれないかと相談に来たのよ。正子さんは、巧くいったから、相当あると言っていたわよ。なかなか帰ってこないから、既に進めているけどね。紡績と洋服事業なども会社として出資できるみたいだけどね。」
香奈 「じゃ、よく整理してみるね。」

恵も香奈がいる事を知って、話しかけてきた。
「遅いじゃないの。香奈さん。又儲けるのに夢中だったの。」
香奈 「そうでもないよ。市場が混乱していたから、落ち着くのをまっていたのよ。」
「今度のビルは、財団の中心部を作るのよ。色々と分散していたでしょう。ようやく纏まって仕事できるよ。寄付も集まっているよ。お義母さんたちは今度の臨時配当を多く寄付すると言ってくれているよ。」
香奈 「先ほど俊子さんからも話を聞いたわ。まだ頭が整理できていないのよ。少しまってね。」

香奈は、帰る時に、貴金属会社に寄って、真理にも聞いた。「大体話は、聞いているから、お金の都合はつくと思っているわ。でも正子ちゃんは相当あると言っていたよ。」と言った。香奈もそう言えばまだ残っているシンガポールでのお金を日本に回収すればなんとかなるかとも思って、家に帰り、印刷したものを良く読んで、運用会社の整理をしてみた。

銀行口座の金額は、思ったより多かった。退避させていた300億を忘れていた。先物には700億にもなっていた。それと株式の口座残が150億と計算すると、1100億を超えていた。上場株式の評価合計は200億を超えていた。その時清美から電話が入り、「新しく中小企業向けの増資の形で、3件分200億を出してもらっているからね。なかなか帰ってこないから、勝手にやったよ。今回は何か、みんな困っていたのよ。」と言った。香奈は「これから出すの。」と聞いたら、「もう出したわよ。」有希からも、「正子ちゃんには言ったけど、2件で100億出して貰ったよ。今回の混乱で、運転資金がショートした会社が出てきたのよ。ビル建設は、仕事もいるからね、安くしてくれたし、みんなで考えたのよ。」と言ってきた。香奈「まだ出してないのでしょう。正子ちゃんは銀行口座から出せないし。」有希「そんな事ないわよ。銀行から振り込んで貰ったよ。」

徹が帰っていて、言った。
「正子ちゃんに言って、100億で石油会社にお金貸してもらったよ。暫く運用会社で持っていてね。至急いるから、一度借りた事にしてすぐに増資すると言っていた。」
香奈「それももう出したの。」
「香奈がアメリカに行ってる間、恐ろしく株価が下がって、みんな混乱してね。銀行が軒並み融資をキャンセルして、運用会社が貸したり、増資して助けていたんだよ。株を買ってくれと頼みに来た会社も多く、夜間の市場外取引もあったみたいだよ。正子ちゃんに聞いた?」
香奈「まだ会ってないのよ、つわりと言っていたらしいの。」
「昨日は元気だったのに、資源開発に頼みに来たけど、100億なんて、直ぐに出さないから、正子ちゃんに頼んだ。直ぐに振り込んでくれたよ。安いとは思ったけど、こっちも大変だったから、昨日までは。今日は、突然緊急対策案が出て、空気がまったく代わったよ。正子ちゃんを運用会社の副社長にしていてよかったよ。お金も出せるしね。」
香奈は、副社長にしていた事を忘れていた。

直ぐにでも聞こうとも思ったが、どちらにしても終わった事だから、明日ゆっくり聞こうと思って、そのままに寝ようとすると、海外の香奈オフィスから、一杯連絡が入り、対応に追われた。フランクフルトのオフィスはあんまり相場はしないが、株価が信じられない程下げた時に、機械関係の株やエネルギー株を少し買ったよと言ってきた。シンガポールのオフィスも基本的には、保留しているお金の通貨の調整とアジアでのエネルギー関係の仕事の情報収集などを行っているオフィスだったが、やはり暴落時に少し株も買っていた。ロンドンは元々相場好きな連中だったので、やはり買っていた。香奈は、暴落時に価格が落ちた時には買って、儲けていたので、各オフィスも、暴落時には株を買いたい人が多く、香奈自身もニューヨークで株を買っていたので、相場禁止令も解除されたものと思い、買っていた。そしてその結果を報告してきた。香奈は対応に追われ、寝たのは1時過ぎになってしまった。時差の都合で2時間ほどしか寝られず、起きたら、山のようにメールが入っていて、アメリカでも緊急対策案が出て株もすべて上がりだしたと言うものであった。為替も、日本も久しぶりに介入して、急激に円安だから、一度売った方がいいですよとか言っていた。香奈は眠気も覚め、対応を指示していた。根性なしの中央銀行がやる事なんかメッキも剥げる、いずれ又円高と思っていたので、円に買えて保有するに指示した。各地でもそのように指示した。その後も直ぐに売れたとか、円に替えていくねとか返事が来ていた。なんだかんだと時間が取られた。すると朝になり、みんなで朝を食べると今度は眠くなり、一度スッキリ寝ようと思って寝たら、夕方だった。ぼーとしていたら、瑠璃が晩ご飯だよと言うから、みんなで食べた。真理は、「今日は大変だったよ。みんな恐ろしく上がったよ。正子ちゃんは探していたよ。昨日の昼から出てたのに、話したい事あるのに、寄ってくれないとぼやいていたよ。私も気が付かなかったけど、昨日も午後は少し出ていたみたい。」と言った。電話しようと思ったけど、又明日と思って、部屋に戻り、電源を入れると又メールの山。あいつら、寝てないのかと思い読むと、鉱山の権利を欲しがっている人が現れて、売れとうるさい。価格も上げてきているし、売ったらとか言っていた、折角安値で手に入れたのに、売れないよと返事したら、暫くすると、又メールが来て、相手はこれが最後とか言って、代わりに、ボスが欲しがっていたアメリカの油田の利権の一部とある程度の金をつけるとか言ってるけど、お買い時じゃないのとボブも言ってきた。それと交換ならいいよ。と言って、なんだかんだと時間が取られた。もう寝るよと言ったら、すべて終わったら、寝て頂戴とか、と云った、とぼけた返事も来た。

それでも1時をすぎていた。コシロはもう自分の部屋に戻っていった。香奈は、まだ寝付きが悪いので、徹の部屋に行き、徹を襲った。徹のものは、まだ十分大きくなり、久しぶりにバトルして、今度はすっきりして、寝た。いい歳なんだから、止めなよと言われながらも大変充実していた。

今度はぐっすり眠り、瑠璃が起こしに来た。片づかないよ。早く食べてよ。もう10時だよ、無理矢理食べると、又眠くなり、寝ていた。そんなこんなで、時差と用事が片づいたのが、5日後。今度は正子もすっきりとした表情だった。神太朗と一緒にいた。

結局すべて締めた結果を聞いた。色々と約束があって、少なくとも2年間は売らないよと言う約束をして時間外取引したものもちゃんと記載されていた。非上場の株も一杯買っていた。

上場株は結局300億を超えていた。株価は急激に上がっていた。非上場も700億にもなっていた。先物の口座残は800億、株式の口座残は150億、それに銀行口座にはやはり300億増えていた。それに貸している金額も500億ほどあった。

正子は、もう売りたいものもあるから、少し信用と先物で売ってますと言って、半分程度信用と100枚程度の先物の売りがあった。香奈もそうね、上がりすぎよねと言ってその場は終わった。今日は、午後にお医者さんに行くのといいながら神太朗と一緒に帰っていった。暫く調整下げが続き、いきなり大きく下げ、すべてを手じまいして、運用はそれで、又暫くお休みになった。

俊子はホテルの運営本部にいたので、話をして、既に建設契約でビルの管理会社が出していた3割程度は、運転資金として、ジブトラストが建築費全額を出資するとしたら、いくらになるのと聞いた。そんな事していいのと言われて、額にもよるけど可能と思うと返事した。大阪で150億、福岡で120億、東京の治部産婦人科小児科記念病院のビルにも、ジブトラストとして、30億の出資金を出し、財団にも20億寄付をした。そして、100億程度の臨時配当を出したいと言った。臨時株主総会と言っても、こんな時は簡単だった。運用手数料は3%として、香奈は、ほとんど正子のした事だから、正子を2%として、分けた。

そして正子が出産するまで、すべて順調に進み、福岡も又突然どこかの大統領が来日して、福岡に行く事になり、それに会わせて、すべて早めになり、対応は忙しくなったが、大きな庭園をもつ二つのビルは順調にスタートし、ビルの上層部の高級マンションもあっと云う間に売れた。東京、大阪そして福岡もみんな仕事が少ない時期でもあったので、あっと云う間に完成した。その後緊急対策案も漸く効果が出て、景気を上がり気味になっていった。

ニューヨーク以外の香奈の海外オフィスも、それなりに安い所を少し拾っていたので、香奈は商売に関係のない会社の株は、株価が買値より3割も上がれば売るように指示したりして、結構忙しかった。商品相場も結構動いていて、ヘッジとは云いながら、結構売買も多かった。みんな儲かっている訳でもないが、合計するとかなり利益になっていた。もうみんなやっばり相場好きな奴が多いと思って、少しは控えなさいよとか注意したりしていた。それでも各地の香奈オフィスの保有現金は増えていた。奴ら危ないと思い、余分な金はシンガポールに移していった。まだ円高だったので、シンガポールで多くは円にして置いた。ニューヨークでは、原油ビジネスも大きくなり、運転資金も大きく、現地代表のボブによく注意してそのままにしておいた。

大阪と福岡のビルの管理会社は、赤ちゃんスキ大阪不動産、赤ちゃんスキ福岡不動産になり、ジブトラストはここにほとんど60%近く出資した形となった。この二つの会社は住宅部分を売却したので、当初から余剰金をかなり抱え、原則主義の保育士たちも暗躍して、郊外の駅の近くに幾つかの託児所を作るようになった。

「もう止めたと言いながら、大阪や福岡まで、作ってしまったよ。大阪、福岡そして名古屋も、産婦人科と小児科の地域病院と地域本部をやがて作ると言ってるよ。ビルが好調の上に、寄付も順調でお金もあるので、みんな、えらく強気なんだよ。友貴がいつの間にか事務長みたいになっているのよ。使い込んで風俗なんかいったら、切るぞと脅しているけど。今度は真面目になっているみたいだよ。財団も千恵が事務長みたいになってる。」
香奈「大丈夫なの。」
「監査はさせているけど、問題ないみたいだよ。それに二人とも大分人が変わったよ。でもなんでこんなに儲かったの。」
香奈「私もよく分からないよ。税金も大変だから税理士が検討してるよ。今度はしっかり頼むよと言っておいたよ。私もほとんど知らない内に、儲けていたんだよ。正子ちゃんは、子供がお腹にいてる時は、神様みたいな凄い事していたんだよ。今度の混乱ではね、多くの企業の株を買ったり、緊急融資もしていたんだよ。それが今度は赤ちゃんスキ不動産に少し出資してくれたり、財団に寄付してくれる事になったのよ。今度は神子と名前を付けたのたよ。神太朗君もなんか怖い子よ。まだ二歳になったばかりなのに、正子さんのガードしているような子なの。運用会社も売ったり、買ったりではなくなって、相当の株を持つ会社になってね、企業との相談なんかをやるようになるみたいなのよ、そんな人を入れる事になりそうなの。正子ちゃんが、学校時代の友人や証券会社時代の知り合いを集めてくれるらしいの。正子ちゃんがやってくれるだろう。悦子ちゃんは俊子さんのホテルや治部サービスを勉強して、手伝うみたいなのよ。聖子ちゃんは、洋服事業を手伝うらしいわ。禎子ちゃんは、落ち着いたら、商会に入るらしいよ。瑠璃にも私の仕事を見て貰ってるのよ。千恵ちゃんや友貴くんはどうするの。」
「千恵は財団の仕事をしていくと思う。友貴もふらふらしていたけど、今は施設ではなんとかやっているよ。まだお金を扱わないようにさせているよ。真理さんの所は一番、まともな子供たちだね。みんな真面目そうだし。」
香奈「真理さんが、厳しく躾たからね。でも真理さんは、もっと本音を言って、格闘しながら進んでいくのがいいよと言ってるよ。」
「私たちはそうだったからね。」
香奈「俊子さんは、もうホテルはこれ以上作らないと言ってるよ。軽井沢、箱根の二カ所は、増設もしないらしいよ。増設予定で買った所は庭にするつもりだって。千葉の海岸のホテルは売るかもしれないと言ってたよ。」
「みんな好調と言ってたよ。予約も取りにくいほどなのに。」
香奈「東京と大阪は、洋之助さんが便利な様に、作ったホテルだった。そこが最高級になって、名古屋と福岡は最高級のホテルで作ってしまっただろう。伊豆は、家族用にも使えるホテルにしたけど、千葉は初め、洋之助さんの別荘の積もりで、海が見える場所に作ったのよ。それが都市部にもなったから、考え方が難しいらしいよ。空港にも近いし、それなりにお客さんは使用してくれているけどね。大きなホテルにして、価格も下げたいらしいけど、ホテルイメージが固まったから、それは出来ないと言っていた。今のお客さんが使ってくれている間は、今のままで行くけど、それからはどうするか検討させているらしい。それとも大きな資本に売る事まで考えているらしい。もうホテルを作りたくないらしい。箱根も軽井沢も静かな別荘気分の小さなホテルのままでいくみたいなの。」
「そんなものかね。私のビルも恵教の砦みたいなビルになってしまったよ。小夜さんたちもよくやってるよ。やっぱり誰かいると違うね。風俗やデリヘリなんかが入りたいとか言ってきたよ。お義母さんが駄目と言ったから断ってから、逆に弁護士や税理士らの事務所が増えてきたのよ。変でしょう。由香さんのビルは女の子ビルになって、可愛いものがよく売れるのよ。普通の事務所やファション関係のお店が多いよ。宏美さんと満くんのビルは、若者専用のビルになったのね。上の賃貸用の住宅も満室なのよ。名古屋は不良の巣ね。でも、やっばり弁護士なんかの事務所も増えてきたの、やっぱり東京と似てきた。大阪と福岡でも話はあるけど、借金してまでやる気はないの。」
香奈「まだ恵教は頑張っているの。」
「私はお婆さんだからね。そんな絶頂感なんて云えないけど、この頃は女の子が来やすく相談するためのものになったよ。ついでに、弁護士なんかも読んだりするから、弁護士の事務所もできるのかね。清香さんも小さい事務所を作ってくれたよ。中小企業の相談室も出来たよ。有希さんは経営指南塾なんかもやっているよ。一番儲からないビルになってしまった。ド派手な服をばんばん売っていたのに。」
香奈「それでいいんだよ。みんなの相談に乗っていくのが、恵でいいんだよ。」

正子は神太朗と神子に守られて、太朗の攻撃を跳ね返せるようになった。太朗は正子を執拗に責め、正子はお尻を付きだして、意識が薄くなり、崩れ落ちる事に変わりは代わりなかったが、霧の中で燃え尽きても、男の子と女の子がきて、正子は再生していった。そして朝には、頭が鮮明になった。身体の中からの声もほとんど聞こえなくなり、神のような荒技は出来なくなった。先物の取引も慎重になり、売り、買いも一方的にはしなくなった。正子は健康オタクの洋治の一番弟子になり、みんなの健康にも気を遣った。朝は早く起き、洋治の朝食の準備を手伝い、まだ小さい神太朗も正子をかばうように手伝っていた。正子は、お昼は多くは神太朗と神子と一緒に過ごしていた。神子は大人しく寝る子だったので、折角高い託児料や育児料も支払いながら、運用会社で三人でいる事も多かった。色々とうるさい所なので、新しいスタッフを入れた時に、社長室兼副社長室を作り、そこで仕事をするようになった。神太朗はいつも社長用の椅子に座り、正子を監視していた。たまに香奈が来ても、驚かなかった。香奈は応接用のソファで正子と話すだけだった。前回の混乱期にお金を貸したものは、非上場の株に変わったり、お金を返して貰ったり、優先株の発行を受けたりしていた。プログラムも複雑に修正され、保有株の調整も必要となった。それは、数人の新しいスタッフが行っていた。それ以外のスタッフは主に調査、研究を行っていた。正子は、先物取引を中心だった。神太朗と神子は、突然正子の手を動かして、大きな数量の取引をさせ、正子はそれに操られていた。正子が自分での取引は、七勝三敗だったのに、不思議な事にそれは失敗する事がなかった。プログラムの最終変更権は、香奈と正子が握っていた。香奈はあまり来なかったので、正子が時々一斉ストップさせたり、新しく数量の変更などをしていた。正子は神太朗と神子のオーラで、たまにはしていた。それがいつも成功して、スタッフはむしろ呆れていた。ジブトラストの運用も安定的に、利益が二千億ペースになってきた。やがて神太朗と神子はいつもいるようになり、スタッフもいつしか誰も変だと思わなくなった。スタッフは少しずつ増え、敷地内の治部ホーム不動産は俊子のホテル運営本部のオフィスに吸収されたので、ジブトラストの調査研究室に変わった。貴金属は都心にもオフィスを持ったが、真理はここにいて、大きな社長室のようになっていった。敷地内のジブトラストの入っていた建物は、ジブトラストと真理の貴金属会社と俊子のホテルの運営本部になった。敷地内の土地を管理していた治部ホーム不動産は、ホテルの運営本部の人が兼任する事になった。ほとんど管理業務だけだった。

「運用は暫く休むと言っていたくせに。相場に取り憑かれた女だったんだ。香奈さんは。」
香奈 「私は、この頃あまり行ってないよ。ブログラムを少し修正しただけだよ。第一、私が行っても、座る所もないよ、神太朗君がいつも座っているよ。だから社長室は、別に作っているのよ。」
「保育所じゃないの。」
香奈 「神太朗君は昼まで、保育所にいるけど、午後は運用会社で正子さんを見てるよ。一緒に帰るのよ。スタッフも緊急の用事以外は入ってこないのよ。話は午前中にするようになったよ。私に電話かかってくる事もあるのよ。でも見てみると、正子さんが対策取っているのよ、不思議にも。」
「でもこの間、財団で、証券屋が寄付してくれるというので、話をしていたら、ここの運用会社は、もはや証券会社並みと言っていたよ。正子さんが付き合いする証券会社に財団の事を話してくれたみたいだよ。」
香奈 「そんなには、大きくないけどね。単なる投資会社や管理会社ではないよ。税金も凄いんだよ。税理士も頼んでいるよ、清香さんの所にも顧問契約しているわよ。」
「配当も高いよ。一族ならみんな受け入れるの。」
香奈「この頃は配当も抑えているのよ。税金に取られるだけだから。一応株主総会の了承がいるのよ。だれを受け入れるかは一族の出資者の推薦もいるよ。みんなのバランスも取ってるから。真理さんや私の子供は、もう少し出資させようとしているよ。もう一度みんなの出資枠を広げるよ。」
「由香さんや真美さんにも言ってみるよ。二十歳以上だったね。」
香奈 「そうだよ。そういう事にしてるよ。一族の会社の株も買っているよ。やっぱり税金が払えないと、分散するからね。各家の管理会社で買えない時は、買っているよ。」
「結構会社も持っているらしいね。ビル以外にも。」
香奈「持っているのではなくて、助けてくれと言った時に買うことはあるよ。経営相談もするけどね。経営には関与しないよ。そのために調査スタッフも置いたのよ。」
「石油会社は、徹さんの資源開発が買うとかいってなかった。」
香奈 「あれは騙されたのよ。うまく行きだしたら、子会社扱いするくせに、出資もしないのよ。」
「香奈さんも、資源開発の役員だよ。」
香奈 「私は、もう辞めたよ。私の会社と競合する事もあるしね。それに私も出かけるのが億劫になったの。機械ももうすぐ辞めようと思っているの。」
「海外にはよく行くのに。」
香奈 「海外も瑠璃に行って貰おうと思っているけどね。瑠璃は、又妊娠したのよ。当分は仕方ないのよ。」
「千恵もそうだよ。財団の仕事も人が増えて、何とかなるみたいだよ。」

香奈は社長室を作った。相談用の応接室も作った。今までの社長室兼副社長室を副社長室として、すべての取引状況は、この2つの部屋のコンピューターでは分かるようにした。香奈も、初めはよく来て、株式取引の状況や正子の先物の手口などをみていた。先物は、頻繁に取引していたが、そんなに大きく一方的に傾いたやり方はしていなかった。ただ香奈も忙しかった。香奈オフィスも忙しかった。香奈はもうケイマンの銀行口座やスイスでの運用などは忘れていた。ジブトラストも利益も上がり、運用資産も大きくなったので、出資枠を拡大して、和子や洋之助の孫世代まで入れるように調整していった。香奈も一族のために、和子の兄弟の子供たちや洋之助の兄弟の子供たちなどにも話をして、最低単位持って貰う事にもした。

健介の息子の伸太朗の妻の伊智子は、イチコプロダクツの多くを保有し、その配当で相続税の借金を少しつづ返済していたが、伊智子は、これらの事業にあまり興味もなく、香奈と話をして、伊智子分の株を相当程度運用会社に売り、特別に運用会社への出資も認めた。そして相続税分もジブトラストに返した形になった。伊智子は、イチコプロダクツの相当数を失ったが、ジブトラストに3億出資した事になった。イチコプロダクツではジブトラストが過半数の株式を保有する事になった。

製薬の友恵が登場

市橋知子の孫の垣原紀子は、一時、この敷地内に住んでいたが、紀子の子供たちが大きくなると出ていっていた。紀子は三人の不良達とも一時仲良くなり、創設直後のテレビ局には共同で出資もした。紀子の小さい出版社にも三人の不良達は個人で出資もしていた。紀子の娘の友恵は、活発で一本気な性格で、薬学部に入り、学生運動にも参加して、夫の相良直紀と知り合い、卒業前に妊娠したが、直紀は卒業直前だったので、堕胎しろと言うのに反発し、離婚して、残された敷地内の家に住み、子供を育てながら、製薬に入り、働いていた。友恵は再婚せず、製薬の経営管理室にも入るようになり、社長にもなっていた。知子の再来とも云われていた。友恵は、薬の使命を重視する人だったので、大病院となったが冷たい感じがしていた治部病院の姿勢には違和感を感じ、東京近辺にも、製薬の関係病院を持つようになった。友恵は、運用なんかは山師のやる事だと馬鹿にしていたが、紀子が亡くなり、兄の真一郎も地味な病理の医学者だったので、相続税に困った。製薬として紀子の資産を買い取る事も考えたが、ジブトラストへの出資の誘いにきた香奈に相談した。出版社は大きくなっていたが、非上場だった。しかし、テレビ局は上場していたので、評価額も膨れあがっていた。香奈は相続税分は、ジブトラストから貸す事にして、更に、真一郎と友恵にジブトラストに最低単位の出資をさせ、そのお金は香奈が個人的に貸そうとした。友恵も真一郎もお金を借りる事には抵抗があり、香奈は説得したが、二人とも、出版社は紀子の思い入れも知っているが、チャラチャラした雑誌や荒唐無稽のミステリー小説などを出している事も知らず、読んだ事もなかった。テレビ局には何の思い入れもなかった。結局、二人のテレビ局の株の多くを、ジブトラストが買い上げ、ジブトラストの最低単位の出資もつける事にした。真一郎と話をしている時に、真一郎は、これからは遺伝子治療が出てくるとか言っていた。香奈はほとんど分からなかったが、何となく記憶に残り、産科婦人科小児科病院の理事会で、神野喜作に話した。


香奈は気楽に、遺伝子研究センターを作った

神野は興味を持って、わざわざ真一郎を訪ね、詳しく話を聞いた。神野は胎児の先天性疾患が、原因で中絶さぜるを得ない事に心を痛めていた。香奈はよく分からないものの、神野の薦めもあり、ジブトラストは、社内に遺伝子研究センターを作り、ジブトラストの管理の建部をセンター長と云うの名のお世話係りにして、真一郎には自由に研究させるようにした。ジブトラストには金もあり、簡単に作ってしまった。高性能コンピューターが必要と言われたが、アメリカの友達の会社から安く譲って貰った。香奈の友達の中に、相場で金をボロ儲け、怪しげな金融センターをつくり、高性能のコンピューターをいくつか買い、更に儲けようとしていた人たちがいた。突然の暴落に対応できず、金融センターの計画は流れ、破綻寸前だった。香奈オフィスには、シンガホールから持ってきた100億円が200億円相当以上になり、アメリカの香奈オフィスにあった。破綻寸前なので、現金が直ぐに要るために、香奈オフィスが、高性能のコンピューターを市価よりも相当安く、肩代わりした。要するに叩き買った。為替を見ながら、ジブトラストは香奈オフィスにお金を送る事になった。真一郎は、真剣で色々な協力者を集め、遺伝子操作を、経験的に実際に行っている畜産関係の研究者まで集めた。真一郎は友恵にも話をして、製薬も遺伝子研究センターに協力する事になった。

ジブトラストは、資本金が200億近くになった。これで出資枠の拡大は一応終わった。敷地内に住むほとんどの家では最低単位の出資をしていた。最低単位でも1億だったので、香奈は、一時的に、立て替える事もあった。そんな調整も大変だった。企業の相談や支援の話は、正子と一緒にやるつもりだったが、正子は静かに取引したいようだったので、香奈が調査スタッフに指示したりして進めていた。ジブトラストは好調を持続していた。香奈は年間30億を超える報酬や運用手数料が入っていた。香奈オフィスは資源利権も増え、香奈も、香奈オフィスの仕事で忙しかった。自分の部屋でコシロと共に香奈オフィスからの報告を見て、それを考えている事が増えた。コシロはパソコンの画面を見るのは辛くなり、香奈は印刷する事が増えた。コシロは印刷されたものを読み、英語が分かるのか、にゃーにゃーと鳴いて、問題があれば香奈に連絡していた。次第に、香奈はジブトラストへ行く日も減ってきた。調査スタッフたちは、相手先とも相談しながら、調査を進めていた。香奈は最後だけ聞いて判断するだけだった。ジブトラストはもう二千億を超える運用利益があり、正子にも、40億を超える報酬や運用手数料が入ってきた。ジブトラストとしての最終の利益の一定比率で、香奈たちの役員の報酬となった。正子はまだ香奈に報酬や運用手数料を預けていた。香奈は税理士に、会社と香奈自身の税務そして正子の税務を任せていた。運用スタッフにも運用手数料の一部を払い、調査の人たちの給料も上げた。

香奈「これで敷地内の住んでいる一族には、ジブトラストの最低単位は出資して貰ったわ。敷地外でも良太郎さんや真一郎さん達にも持って貰ったわよ。」
「妙子さんの血筋の人はなぜ、運用会社に入らないの。妙子さんは、治部家の長老だったのに。」
香奈「みんな、敷地から出たのよ。それぞれ偉くなった。国会議員にもなった人もいるでしょう。アメリカに行って帰ってこない人もいる。今更一族でもないのでしょう。」
「銀行も一族の人なのに、みんなとあんまり付き合う事をしないね。鉄鋼は今でも関係は深いよ。健次郎さんは経理担当だから、よく会ってるよ。ホテルとも少ししか関係がないらしいね。折角低利融資したのに、みんな返済されたとぼやいていたとか言ってるよ。」
香奈「機械も少し、付き合っているけどね。ジブトラストは、一族の銀行以外にも、他の銀行とも付き合っているわ。正子さんが好きじゃないのよ、ヤミ金やサラ金の親玉みたいな銀行は。使っている銀行は、地銀や信用金庫まで、分散しているわよ。会社にも現金を置いているよ。私は元々海外のネットワーク持っている銀行を主に使っているし、私の海外の会社は、海外の銀行を使っているよ。もう一族と言っても、心理的には離れたね。」
「でも株は運用会社でも持っているでしょう。この間久しぶりに保有株報告書を見たら、載っていたわよ。」
香奈「恵もたまには見るのね。株は持っているわよ。けどね、そんなに売ってはいけない株にはしていないのよ。鉄鋼、機械、商会、化学そして資源開発は売ってはいけない株になっているけど、ランクはその下ね。たまには売っているよ。みんな少しずつ銀行の株も持っているから、ジブトラストも引き取るからね。」

聖子は、正子と違い、子供たちの救いもなかった。子供たちは、二郎になつき、聖子は友達になってしまった。聖子は、洋服事業で雅也とともに、働かせられ、競争させられた。聖子は子供服と婦人服を担当して、男性用の服の雅也と競争していた。聖子は夜に、二郎のものをしゃぶり、舐め、そして自分の中に入れて喘ぎ、激しく突かれる事だけが生き甲斐の女になっていた。利益比例配分で貰ってきたお金は、すべて二郎に貢いでいた。二郎は聖子の財布にお金を入れていた。聖子の貢いだお金は、二郎が管理していた。二郎は自分の給料も自分が勝手に使っていた。聖子には、子供たちと一緒におねだりして、着々と有希の道を進んでいた。ただ有希は仕事では強気な性格だったし、平気で、ご主人様を使ったが、聖子は子供たちがお風呂に入って洗って貰った後は、子供たちを寝かせた後、二郎を脅し、自分も洗って貰う程度の強引さしかなかった。可哀想な聖子は動けなくまで突かれ、口で綺麗にしてあと、冷たい水とかジュースとか言って、二郎に、飲ませる事ぐらいしか要求しなかった。

野菜とか魚が嫌いな聖子は、洋治たちに洗脳されていた健康オタクたちの手で、野菜や魚も食べさせられる悲惨な生活だった。残すとお仕置きされ、抱いても貰えなくなるので、食べないといけなかった。正子は早く起き、朝食の準備を手伝うのに、聖子は股を広げ、昨夜の快楽の余韻の中で眠ることしか出来なかった。二郎が子供の世話で忙しいのに、しゃぶりたいとか言って、わざわざ邪魔するほど程度しか出来なかった。二郎から「聖子、晩までお預け。」と言われ、渋々、洗面する悲惨な生活だった。悲惨な生活の聖子は、食事はエサのように与えられた。嫌いな人参もピーマンも野菜サラダも食べさせられた。カロリーコントロールしているからと表面的には繕われた。でもそんな生活は、聖子を若く綺麗にして、益々性的欲求は高まり、聖子の自由な意志を奪っていった。有希は、若い頃は元々気性が激しい女の子だったが、聖子は、ちやほやされて育ち、自分きままに生きてきた。それだけに二郎に突かれて支配されている云う意識はそれだけに刺激的だった。良家の娘だったので表面的な繕い方も巧かった。戯れにバックで突かれたのも悪かった。あまりに興奮して、何度も逝ってしまった。それだけに二郎に貢いで突かれる度に、聖子の精神を益々破壊し、性的欲求だけで生きているような女に変わった。有希よりも激しい変化だった。そして二郎に貢いだ後、激しくされた事が病みつきになり、自分ではほとんど使わず、ただ貢ぐために働く女に成り下がっていた。その上、二郎は洋治とは違い、洋太郎譲りの非情さもあり、聖子を壊す程、激しく突いた。二郎は、細かい事は気にせず、貢ぐお金は愛情の現れと考え、体力の続く限り、突いていた。段々、事態は悪化していき、抱いて貰う為に働き、働くと忙しくなり、抱いて貰う時間が減り、抱いて貰う時には激しく付かれ、溜まっていた二郎の精液の勢いが強くなり、それが聖子の自由意志を益々奪っていた。二郎は立派なモノを持っていたし、おまけに堅かった。その上、やたらと多量に勢いよく発射した。ハエも落とす程の勢いがあった。それが聖子の子宮に直撃した。聖子の頭の中には、もはや二郎に突かれる事とそのためにお金を儲ける事以外には考えられなくなっていた。

聖子には清太郎と綾子と云う二人の子供が出来たが、清太郎も綾子も可愛らしい子供だった。特に綾子は聖子に似て、どんどん可愛くなり、聖子は、綾子が二郎に甘えるのをライバル心を燃やしていた。聖子の財布には、二郎は、かなりのお金を入れて置いたが、聖子は会社以外ではまったく使わず、ただ稼ぐだけだった。正子や悦子はたまには、洋治や俊子たちを手伝って家事もする事はあったが、聖子は必死に稼いでいた。二郎に突かれる日には早く帰ったが、普段は稼ぐのに必死で、夜も遅く、朝も快楽の余韻にふけるか、二郎のものをしゃぶっていた。

悦子はそんな二人とは違っていた。妊娠すると、つわりも酷く、産後の回復も遅れがちであった。洋一郎も、悦子を優しく扱った。悦子は俊子のホテル事業の運営本部での手伝いをするようになった。洋一郎は慣れた鉄鋼から突然、化学への出向を命じられ、化学で働く事になった。不慣れな仕事をさせられ、慣れてくると、又地位は上がり、より難しくなった。そんな欲求不満は悦子に向けられ、悦子も次第に洋一郎の毒が回ってきていた。

洋治は忙しく、時々出張した。洗脳されていた筈の健康オタクたちは、こっそり料理屋に頼み、厚いステーキを焼いて貰った。一番弟子の正子も神太朗の許しが出ると喜んで食べていた。もう高齢なのに、美佳もお肉は好きであった。朝から料理店に頼み、わざわざコックさんまで派遣してもらう騒ぎの中で、平然と2枚食べてしまうほど、謙虚な聖子であった。料理店もこの家の謙虚さは知っていたので、頼まれた人数以上は持ってくるようになっていた。ご主人様を慕う有希や一番弟子の正子は、野菜を少し食べたが、他の人は肉が不味くなるとか言って野菜もそんなに食べなかった。毎朝いやになるほど食べているとも言っていた。そんな悲惨な聖子は、会社でも大人しかった。利益が上がらないと、怒鳴り散らす程度で、いつも原因と対策を考えろと怒る程度しか云えなかった。聖子自身も必死になって考えていた。聖子は若くして部長になったが、「社長の若い時にそっくりだ。」と言って馬鹿にされながらも頑張っていた。

雅也は、頭が切れたので、そんな事はしなかった。温厚な紳士なので、平気で利益が下がるのを見ている店長は、研修とかいって、掃除をさせる程度しかしなかった。雅也は一緒に朝から掃除していたので、残酷とは思われなかった。二人とも、みんなに馬鹿にされながらも、鵜飼の鵜のように懸命に働いていた。

有希はそんな二人を冷たい目で見て、なにかあるとこき下ろし、自分はそんな二人を見放して、商会や紡績へ行く事が多かった。有希は、紡績や商会では、借りてきた猫のように大人しかった。紡績では利益が上がらないと食っていけなくなるよと言って、利益確保を求めるだけだったし、商会では売れるものを探すのが、みんなの役目だとか言いながら、新規の商品や新規事業を言ったり、販売方法に注文をつけたりする程度であった。あまり大人しいので、役員会前にも、わざわざ有希のご意向を聞きにくる程、みんなに馬鹿にされた。特に商会では一族の人ではなく、優秀な人を社長にしていたので、その社長はなにかと有希に相談していた。有希は謙虚だったので、はっきり、自分の考えを言う程度だった。借りてきた猫のような有希ではあったが、洋之助の再来とか言う人もいた。洋之助も、商会では、社長にはならず、社長をアゴで動かした。

非情な有希は、数年で洋服事業に慣れた雅也を、商会へ島流しして、もっとこき使う事を考えついた。又、雅也は一から始めなければならなかった。洋服事業では数年で部長だったのに、又一介の社員になった。みんな雅也を馬鹿にして、難しい仕事を押しつけた。本来の姿に戻った禎子は気が向くまま、雅也の精液を絞り取り、会社でも知恵と努力を要求され、慣れるともっと難しい仕事を押しつけられ、頭もいいが反抗的な部下たちの面倒もみるように、地位が上がった。

非情な有希ではあったが、禎子の問題があり、小さい命を救う財団や育てる財団には、節税効果を計算しながら、協力して、産婦人科医の確保などについて、奨学資金までだした。産婦人科小児科病院の理事にもなり、関係する企業からも強引に財団への寄付を集めた。

ジブトレーディング 誕生!

禎子はやがて、有希を助けようと思って、有希がアジアで合弁した会社で製造した洋服を、由香の次男の信治が商会の仕事でアメリカにいたので、禎子は、信冶の助けも借り、アメリカで売ったのが始めだった。アメリカでも売れたので、ジブトレーディングと云う会社を、有希の個人会社だったユキエンタープライズに、禎子が少しジブトラストからの配当を加えた、ユキエンタープライズの子会社として、アメリカで作った。北米特にアメリカとアジアとの間の貿易をするようになった。母の有希とは違い、夫の雅也とは一種の緊張関係があり、雅也を気が向いたら、精液を絞り取る事が楽しみだった。由香の次男の信治はやがて、日本に帰ってきたが、アメリカが長くなって、日本の商会に馴染めず、禎子の会社を手伝い始めた、悠子も妊娠していたので、敷地内の家に住み始めた。信冶は、思わぬ配当が入っていた由香や恵たちと管理会社を作り、その管理会社がジブトレーディングに出資した。ジブトレーディングは、資金需要も増え、増資する事になった。今度は、有希は、禎子にユキエンタープライズに増資させ、そのユキエンタープライズが、由香と恵そして信治が出資した管理会社と一緒に新しい管理会社を作り、その管理会社とユキエンタープライズ、禎子、信治が出資して、又別の新しい管理会社を作り、その会社がジブトレーディングに出資するといった複雑な事をした。恵は、由香に香奈から聞いた対策を話していた。複数の会社で、出資比率を変えて、それぞれ使った方が後々便利などと訳の分からない事を言った。最後の新しい管理会社はやがて、信治の妻の悠子や子供たちにも出資をしていく予定であった。有希は禎子たちに、ユキエンタープライズに増資させていく予定であった。ジブトレーディングは、禎子が社長で信治が副社長となった。

恵たちは、やがて借りていた土地に離れを作り、母屋と繋がるように、家を建てた。真智子の希望もあり、出来るだけみんなで一緒にご飯を食べたので、食事の時間は、賑やかであった。

神子は大きくなり、オーラを強めてきた。神太朗と神子のオーラで正子のオーラも強くなった。神子が小学校に上がる前の年まで、正子は先物以外にも、株式投資が活発になり、ジブトラストは、修正された良子プログラムも動かし、幾つかの調整的売買も加え、中程度の証券会社並みの取引をするようになっていた。又支援を求めてくる会社には、香奈が商会などにも相談して、資金の援助以外にも、仕事の具体的な援助もするようになった。利益が出るようになれば、利益を一定の比率で配当に回すように約束して貰った。ジブトラストは治部一族の伝統からか、最終利益の三分の一を配当とするか、最低でも出資金の一割を配当に回す事を求めた。それに同意してもらってから、出資に応じていった。正子は保有状況を見ながら、先物取引を中心に行った。神子のオーラとともに、ジブトラストは、大きくなった。運用成績は、利益は三千億を超えてきた。香奈は、もう臨時配当なんかは出さず、定期的な配当を出していた。

香奈は用心深く、計算して、一定の現金をいつも持つようにしていた。先物は常に儲かる事はないと思っていた。運用利益が増えてくると、税金負担も増え、現金で保有する事も必要になっていた。税金等の経費の2年間分と出資金相当額を最低源として現金で保有していく事にした。遺伝子研究センターの経費や赤ちゃんスキ不動産への増資なども、ジブトラストとしての必須投資だった、一族の会社への支援、一族以外の非上場の会社へ支援が多く、上場株への長期的な投資は少し控えめであった。そうした投資以外にもそして税金等の経費、社員の給料、会社の維持費、運用手数料、財団への寄付、運用利益に比例した現金の保有等すべて引いた後を配当とするように独特の計算をして配当を渡すようにしたが、それでも配当は、出資額の50%にもなっていた。

香奈は、もはや実際の取引では口を入れる事はほとんどせず、取引の枠を決めたり、上がりそうな株を中長期的に選んでいったり、調査スタッフに調査させ、企業支援の決定をしていた。香奈は、赤ちゃんスキ不動産にも増資して、ビル経営の基礎を固めさせた。香奈は会長になり、正子を社長にした。香奈の部屋は会長室になった。

赤ちゃんスキ不動産は、資産の充実に努めていった。最初の2つのビルは、治部東京不動産から借りていた形だったので、赤ちゃんスキ不動産は、やがてビルを買い取った。治部東京不動産は余裕資金を相当持った。赤ちゃんスキ不動産は多くのビルを持つ不動産会社になった。その後もジブトラストは好調だったので、赤ちゃんスキ不動産も高層のビルも建てた。

高額の配当が続いていた香奈、俊子、真理そして恵たちは、財団には、配当の1割以上の寄付をした。高額の運用手数料も入っていた正子は、悦子の考えていたエコノミーホテルや聖子が考えていた低価格の洋服に理解を示していたが、運用手数料や報酬はまだ香奈に預けていた。正子は配当についても俊子に預け、俊子が、紡績、化学そして商会などの洋之助一家の管理会社たちへ出資していた。正子は特別枠で、配当も多かったが、俊子は子供たちの間で、バランスを取って、出資していたので、俊子はその余った分を正子名義の預金にしておいた。

ジブトラストが作った遺伝子研究センターは、ジブトラストが好調のため、あまりみんなの関心がなかった。ただジブトラストの管理スタップで兼任していたセンター長の建部健一は、治部東京不動産に斡旋して貰い、やたらと広い場所に遺伝子研究センターを作った。設備費もたっぷり取った。建部は、人の遺伝子の研究はよく判らなかったが、兎も角高い投資だったので、少しでも利益が出る事を優先したかった。準備会合で、遺伝子操作を経験的に行っている畜産技術者から、美味しい肉が出来るかもしれないと聞いたので、それを優先させるように、ジブトラストが出資しているイチコプロダクツの近くに、広い場所の遺伝子研究センターを作った。養豚場がもう一つ出来る程の広さだった。真一郎は人の遺伝子治療を目指していたが、人での遺伝子の操作は難しいので、遺伝子操作の研究やテストを牛や豚で取りあえず進めてようとしていた。畜産関係の関係者を集めたのには、そう云う理由もあった。違う思いの二人だったが、理想的な肉が取れる牛や豚を作る事を取りあえず進めた。建物や実験設備、試験動物の設備なども出来上がり、高性能のコンピューターもアメリカらから運び込まれる事になった。建部はこれで問題ないと思ったら、コンビューターはソフトなければ、ただの箱とか言われた。叩き買ったコンピューターなので、ソフトは自分たちで考える必要があった。建部も、管理とは云え、所詮株屋だったので、コンビューターソフトの会社を買えばいいと思い、ジブトラストに支援を要請している小さなソフト会社「ごきげんソフト」を使う事にした。ごきげんソフトは元々通信ソフトの会社だった。ジブトラストは金は支援できるが、仕事は特殊なので、仕事の斡旋も出来なかった。話は、それこそトントンと進み、ジブトラストが金を出して大幅な増資をして、遺伝子研究センターでのコンピューターのソフト設計や運用を、この会社にやって貰う事になった。「ごきげんソフト」は、研究者たちにも意見を聞き、使用するコンビューターも調べ、各端末のパソコンとも連動させ、かなり高性能のシステムを作った。元々優秀な人たちだったので、ジブトラストのコンピューターシステムも改良して、使用している証券会社と協議して、ジブトラスト用の取引ツールを独自に設計していった。ジブトラストは複数の証券会社を使うが、その画面を証券会社の口座残高に併せて、分配して取引できるように注文を出せた。いちいち各証券会社にアクセスするのでなく、ジブトラストのメインと各証券会社とを常時結び、ジブトラストの端末では証券会社を意識する事なしに取引できるようにした。各証券会社は、多量の株を即時に約定できるように、ジブトラスト専用回線を取引所と直接結んでいた。ジブトラストは、手数料とかシステムの条件とか調整して、個々の証券会社の先物口座と株式口座に予め、お金を振り分けておいた。ジブトラスト全体としてのポジションも明確になった。勿論ジブトラストとして意識的に証券会社を選択したい時には、各証券会社で取引できるようにしていった。香奈の家や正子の家を始めとして敷地内のネットワークも整えた。調査スタッフからの報告も全てデータベースとして取り出せるようにしていた。ごきげんソフトは、ジブトラストのシステム整備を行う一部門のような存在になった。やがてごきげんソフトは、そうしたジブトラストや遺伝子研究センターの仕事だけでなく、ジブトラストの直属の会社のシステムも整備して、研究開発関係のソフト、業務用ソフト、通信ソフトや独自の基本OSも手がける会社になっていった。

イチコブロダクツの養豚場とイチコプロダクツの肉の加工場と協力関係にある牛の牧場と連絡を取り、牛や豚で研究が進め始めた。建部はイチコプロダクツの役員にもしてもらった。遺伝子研究センターでは利益が上がりそうな組織ではなかったので、香奈も認めた。センターの牛や豚では巧くいっていた。建部は、病気にもならず、美味しい肉を作れる牛や豚を研究するように求めた。真一郎は、先天性と後天性の影響をみながら、遺伝子以外にも細胞質や細胞間物質の影響なども考え、検討していった。牛や豚の肉質改善のために、こんな膨大な金額を投資し、遺伝子まで考えている人は少なく、新しい知見が蓄積されていった。そして理想的な肉が取れる牛や豚を作る事には成功した。遺伝子操作までした。そしてこれらの成果を生かして、真一郎は、ついに、遺伝子欠損の牛や豚そしてマウスを作る事ができた。人での遺伝子欠損や遺伝子の修復を可能か、胎児の段階で修正できるかなどを念頭において研究を進めていった。建部は、肉が高く売れたり、肉が美味しい子牛や子豚を高く売ったりして、金が入れば良かった。やがて、養豚場や牛の牧場で大量に豚や牛を育て、販売した。肉質は好評だった。イチコプロダクツの豚や協力してくれた牧場の牛は、美味しいお肉として好評になり、牛肉や豚肉が高く売れ出し、美味しい肉の子牛や子豚も売れるようになった。技術指導料として、遺伝子研究センターとしても、始めての収入を得た。5年程の大がかりな投資金額にしては、極めて少ないものの、収入は得た。

製薬も幾つかの先天性疾患への研究の糸口が見つかり、成果を本体に持ち帰る事が出来た。そのため製薬からの研究員の派遣も増えた。ジブトラストでは、みんな判らなかった。正子がやたらと金を儲けており、ヒトでの研究が本格的に始めようとし、研究費や設備費は膨らんでいたが、ジブトラストでも誰も話題にさえしなかった。

神子が小学校に行く直前には、業績は落ち着き、運用利益も少しずつ上がっていった。以前のような神懸かりの運用ではなしに、正子の先物も慎重になった。株式投資も、一方的な売りや買いは避け、より安定した良子のプログラムの要素を強くして、堅実に儲けていた。

投資金額も増え、複数のディラー達が、売買するようになった。しかし先物だけは、株式の保有状況を眺めながら、正子が独特の感性で行っていた。香奈や正子の端末は会社として全ての取引が把握でき、かつ二人にはジブトラストとしての取引の変更が出来るようになっていた。

香奈は、実際には、個々の取引には、口を入れる事はなく、全体的なジブトラストの状況や企業支援や出資の相談を受けるだけであった。香奈は運用金額に比べると運用利益が高水準の利益であると自覚していたので、投資の配分も正子の先物に大きく傾ける事もなく、ビルなどの不動産投資も、乳幼児施設の拠点確保の意味もあり、財団と相談し、全体としてのビル管理も考え、可能な範囲で進めていった。現金としての保留は最優先にするように努めていた。ジブトラストも安定期に入ったと香奈は思っていた。

ジブトラストは、正子の妊娠する度に拡大し、ついに巨大化への道を進みはじめた。

しかし又突然、正子の運用も神懸かりの様相を強め、先物の取引は活発に、大きな数量になり、運用利益も急拡大していくようになった。株式投資も、修正良子プログラムを、時々正子が変更して、それが恐ろしい程儲けだした。

「この頃の運用会社は凄いね。出資者も増えたのに配当も増えているよ、どうなってるの。」
香奈「今までは安定して利益が増えていたので、少しずつ配当を増やしていたのよ。でも今は凄いペースで利益が増えているよ。時々とても怖い事やって、すべて当たるのよ。社長も正子さんにしたよ。私は会長になったよ。あれはもはや科学を超えた世界だよ。スタッフも増えたけど、みんな社長室には行かないよ、怖くて。何か異様な空間だよ。神子ちゃんは神太朗君以上の存在感があるよ。二人が帰るとみんなほっとしているよ。空気が和む感じがするとか言ってるよ。夏でも社長室のクーラーなんか入れた事がないそうだよ。神子ちゃん連れて正子さんが昼頃にやってくると、会社の空気が変わるのよ。私は時々行っていても、来客の予定や相談の予定がなければ、香奈オフィスの仕事もあるから、午後早く帰るけどね。それでも打ち合わせなどの用事があって、私がいくだろう。社長室の中は異次元みたいな空気になっているよ。まさしく神懸かりだよ。治部ウォチャーという人もいるぐらいだよ。正子さんがどう動いたのか知りたい人が多いよ。正子さんは複数の証券会社を使うから確かではないけど、知ったかぶりに喋る奴がいるよ、社員に聞きにくるらしいよ。喋る奴もたまにはいるらしい。すると高熱が出てくるらしい。みんな触らぬ神に祟りなしになったよ。」
「凄い事になっているんだ。今度行ってみよう。」
香奈「止めなよ。これは多分正子さんが妊娠しているからだよ。妊娠が判るまではこれが続くよ。段々凄くなるから。」

それでも好奇心が強い恵は、運用会社に行った。運用会社に入った瞬間に凄い霊気を感じた。高い山の古い名刹の寺の静寂感と似ていた。正子さんといいながら、社長室に入った。正子は帰ろうしている時で、霊気は弱まっていたが、恵は身体が動かなくなるような感覚と更に強い霊気を感じた。財団への寄付の増額を頼み、少し話して、一緒に帰った。運用会社から出る時にみんなのため息が聞こえるような気がした。

「運用会社に行ってみたよ。財団への寄付の増額を頼んできた。配当のお金は俊子さんに預けているけど、いつもより多く渡すように話してみると言っていた。でも凄いね。静寂というか高い山のお寺みたいな雰囲気だね。神子ちゃんの目は怖いね。」
香奈「正子さんの報酬や運用手数料は、まだ私が預かっているよ。もう大変な額になっているよ。まだお金の管理は出来ないと言ってね。でもよく行ったね。何時頃なの。」
「3時半頃だったと思う。」
香奈「それは弱い時だね、2時から3時頃が一番強いらしいよ。身体が動かなくなる人もいるらしいよ。」
「一緒に帰った時に、ドア締めた時にため息が出ていたよ。」
香奈「空気が変わるからね。みんなほっとするのよ。」

今度はヨーロッパでの大きな証券会社が破綻した。保有株式を投げ売りし、先物関係の買いもすべて手じまった。アメリカや日本にも大きな関連会社があり、身売りの話も出ていた。悪い事にアメリカで、ビルに車が突っ込んでビルも火災になった。テロではないかとの噂も流れた。油田でも火災が起きたとのニュースも報道された。相場はガタガタになった。そして今度も記録的な値下がりをした。

さすがに、運用資産も増えていたので、そんなにすべて売りではないと思ったら、正子は信じられないほど売っていた。修正良子プログラムの買は手じまいして、保有株についても信用で売れるものは、ほとんど売っていたし、それ以外でも保有約束のない株なども売っていた。正子は気分が悪く、神子に伴われ、医者に行っていた。そして妊娠が判った。今度のつわりは酷く二日ほど休んだ。相場は下げに下げた。そして3日後、今度は、正子が心配で幼稚園も休んだ神子と一緒に会社に出て、先物も信用も、売りはすべて手じまいして、何かをして昼前に帰った。そしてその事が経済ニュースでも報道された。そしてその何かについては報道されなかった。

破綻した証券会社に異例処置で、救済案が出た。保有株式の投げ売りも収まった。日本とアメリカの子会社は問題ないと声明をだした。いくつかの打診買いも入ってきた。治部の売りも手じまったという話も聞こえてきた。アメリカでのビル火災もテロではなく酔っぱらったおっさんの仕業と分かった。油田の火災もデマと言う声明がコーポーレート石油会社から出た。株価問題対策協議会も出来た。株価も先物も少し上がった。治部は株も買ったのではないかとも言われた。大量保有報告書が出ていないが、信用で買ったとか、いや買いは現物しかしない筈だという人もいた。香奈には、正子からつわりが酷くて数日間休みますと連絡があった。すべての取引状況は、運用会社の会長室と社長室のコンピューターしか分からないようになっていた。 そしてその鍵を持っているのは、香奈と正子だけだった。

ジブがヨーロッパの大証券の日本の子会社に資本参加するらしいとの報道が夜の経済ニュースで出た。アメリカでは、油田火災を起こしたコーポーレート石油会社が危ないと言う噂が出て、株価が大きく値を下げた。会社は業績も問題ないし、火災はデマと否定し、写真もつけて会見で説明すると言っていたが、みんな信用しなかった。香奈は、もう運用会社の事は正子は任していたが、コーポーレート石油会社は前から少し取引もあり調査もし、資本参加の打診もしていた。コーポーレート石油会社はアメリカ以外でも油田の権利を持っている。今の価格は、魅力的な値段ではあったが、信用不安説は気になっていた。その晩、もう真夜中に近い頃、アメリカから電話があった。コシロは、まだ自分の部屋に帰らず、香奈の部屋で、うとうとしていた。

ボブ 「ボス、コーポーレート石油会社から、株買ってくれと言ってきました。」
香奈 「電話なんか高いのよ。でもどれだけ買うの。」
ボブ 「マーケットへのインパクトのある量、2億ドル程度。」
香奈 「大丈夫なの。信用不安説も出ているわよ。火災の後始末にお金が掛かるとかいっているわ。」
ボブ 「あの火災は、ガセとか言ってます。写真もつけて説明すると言ってます。それに、これを機会に、香奈オフィスと協力したいと言ってます。話がでかいので、電話にしました。」
香奈 「今の時間外の価格はいくらなの。」
ボブ 「10ドル50セントです。」

コシロが買えと言うように、にゃーと一鳴きした。
香奈 「そこまで下がったの。いいわ、9ドル50セントと9ドルで買を入れておいて。倒産しても大丈夫な価格だしね。別の油田の埋蔵量も多いから。」
ボブ 「さすがボスですね。それで、一千万株ずつ入れておきます。」
香奈 「なんかあったらメール入れといてね。」

信用不安説も飛び交う中、香奈の出した指し値の量には、一瞬驚いたが、直ぐに食われた。 翌朝、石油会社は、写真を元に油田火災はないと説明して、マーケットは下げすぎとの声も聞かれ、今度は、値段は一緒に3倍まで跳ね上がった。又、香奈に電話があった。コシロは珍しく、香奈の部屋の隅で寝ていた。


香奈 「日本では、今何時だと思っているの。」
ボブ「大変ですよ。どうもあつら嘘を言っていたみたいです。今近くを通った奴が帰ってきて、やっぱり火災はあったようですが、でも大きくはなく、直ぐに消火したそうです。嘘ついたら、マーケットの信頼がなくなります。直ぐに売りましょう。」
コシロも怒って、にゃーと強く鳴いた。
香奈 「そうよね、みんな売りましょう。成り行きでぶつけましょう。私たちにも嘘ついたお礼よ。」
ボブ 「そんな事したら、利益減りますよ。」
香奈 「そんな問題ではないわよ。直ぐに売って。」
ボブ 「分かりました。」

まだ安すぎるとして、成り行き買がどっと膨らみ、32ドルでの売りが食われ、33ドルの壁を食っている時に、香奈の成り行きの売りが出た。そしてすべて33ドルで約定した。こんなに短期に売買する積もりはなかったが、シンガポールから持ってきた100億円は、倍々どころか7億ドル程度の現金と資源利権に代わった。

翌日の新聞に付近を通っている人が写真に撮っていたので、それとともに、うそつきといって、報道された。小さい火事で既に鎮火しているといっても、信頼感が低下して、一挙に値段が下がった。財務諸表についても疑いがもたれた。

夕べは夜中に色々と話があって、興奮して寝るのが明け方になった。そんな時でも瑠璃は、朝飯を食えと言ってしつこく言った。洋治の健康オタクもある程度感染していた。コシロに水とエサをやって、香奈も、むりやりエサのように食べた。野菜やヨーグルトも食べろと言われた。一挙に眠たくなり、少し寝るかと思って寝た。起きたら、もう夕方だった。この頃なんだかんだと夜に眠れないからとこんなに寝たのかと思って、ぼーとしていた。瑠璃が晩飯だよ。昼も食わなかったから、きっちり食べないと言って香奈に言った。徹は又中東に行っている。ハーレムでもつくったとも思ったが、そんなアザラシみたいな精力はなかった筈だとも思っていた。政則は、早く帰ってくる。円高は困ったものですね。適正にバランスを持ってみて欲しいものですねと言いながら、ゆっくりご飯を食べている。勝はドイツに行っていた。真理は規則正しく生活していて、そんなにバタバタしない。金は、やっばり、堅実に上がっている。他の子供達も早く帰ってくる。小百合は、お店の終わりも遅いので、都心にマンションを借りて道之助と子供と住んでいた。7時過ぎには、みんなで晩ご飯を食べだした。コシロも自分の椅子に座り、少しお刺身を食べた。


真理 「今日は、運用会社に新聞記者が来ていたわよ。警備員のおじさんと、ここは私道です。関係者以外出入り出来ません。いや社長か会長に会いたいとか言ってやりあっていたわよ。正子さんは休んでいるし、香奈さんは来ていません。そう言って帰って貰ったみたいよ。社員にも何か聞いていたよ。」
香奈 「何の話だろう。」
真理 「買収とか資本参加とか言っていたみたいよ。証券会社なんかに手を出すの。」
香奈 「そんな話、聞いてないよ。正子さんが、金貸す程度の話をしているのかもしれないけど私は知らないよ。」
夕方まで寝ていたので、晩ご飯を食べた後、コシロと一緒にメールを読んでいた。又10時過ぎに、電話が入った。
ボブ 「ボス、又コーポーレート石油会社から株買ってくれと言ってきました。詫びも入れて来ました。」
香奈「詫びで済む問題じゃないよ。」
ボブ 「いや火災は小さい事故で、現地が嘘ついていたと言ってます。一億株買ってくれたら、いくらなんでも売りは止まるだろう。役員も受け入れるとまで言ってます。何でも見せますと言ってますよ。」
香奈 「それは額が大きいよ。そんな金おいていたかしら。」
ボブ 「前にもボスが来た時に儲けているから、今は手元に9億ドルもありますよ。税金はこのオフィスは年間1億ドル程度儲けているし、コーポーレート石油会社との取引が巧くいけば、すぐに払えますよ、シンガポールにも持っているでしょう。運営も問題ないですよ。今の価格は7ドルまで下がってます。」
コシロもにゃーと鳴いた。
香奈 「そんなに下がっているの。仕方ないね。6ドル50セントで五千万株、6ドルで五千万株買ってよ。」
ボブ 「それで手を打ちましょう。」

狂気の様な売りの中で、香奈の出した厚い壁も忽ち食われていった。精算価格の半分の5ドルまで下がった。そこから、いくらなんでも下げすぎとの感じが強くなり、上がりだした。定時の終わる頃には12ドルになっていった。

メールを読んだり、返信している内に、又電話が入った。
ボブ 「すべて買えました。今は価格は上がっています。広報と現地の工場長の首は飛びました。二人の仕業と言う事になりました。連中はボスに役員になって欲しいと言ってます。」
香奈「やだよ。ボブがなりなよ。私は日本でゆっくりしたいよ。」
ボブ「1ヶ月に1回ですよ。それにボスでないとみんなが納得しないと言ってますよ。日本の資源開発の役員も辞めたでしょう。香奈オフィスとの取引も始めると言ってますよ。」
香奈「仕方ないね。それでいいわよ。もう寝るわよ。後はメールでも入れておいてね。」
ボブ 「分かりました。」

香奈は結局寝たのは、2時過ぎだったが、昼に一度寝ていたので、朝は普通に起きた。朝飯を食べて、運用会社に行った。正子は一人でやってきた。神子は幼稚園に行っていた。正子のオーラはそれでも強かった。
香奈 「大丈夫なの、身体は。」
正子 「今日は大分いいんです。神太朗さんや神子さんも大丈夫だよと言ってくれました。三番目は男の子だそうです。」
香奈「お医者さんに言われたの。」
正子 「神太朗さんも神子さんも弟ができたと言ってます。私も夢で会いました。僕は元気と言ってました。それはそうと証券会社の株を少し持ってくれと言われてます。」
香奈は、オカルトっぼい正子の話にはもう慣れていたが、証券会社に資本参加すると、厄介な事になるのではないかと思っていた。正子は通常の株の感覚で話をしていた。

正子
「資本参加という大層な話ではありませんよ。例の会社は、株を持ってくれと言う事なんですよ。今付き合ってる証券会社の株も、みんな少しずつ買います。だからみんなと付き合っていくだけの事なんですよ。取引システムの統一性を守るためにも、付き合いのある証券会社との連絡を密にしたいとごきげんソフトからも言われているんです。」
香奈 「それなら問題ないわよ。手数料はまけてくれるの。」
正子 「それはこれからの交渉ですけど。それといくつかの会社は上場をしたいと言ってます。石油会社も自分で独立したいと言ってます。独自のガソリンの販売ルートも持っているし、販売先の拡大も目途が付きそうだけれども、独自に販売していくには、上場する方がいいと考えているみたいです。もう少し市場が安定してからになると思います。 それと数社から株を買ってくれと言われていました。一応下値で注文出していたら、約定していました。先物でも少し買ってました。もう少し上がれば、売をしますが。」
香奈 「それは、正子さんに任せているわよ。いつ生まれるの。」
正子 「後、4カ月後です。暫く出たり、休んだりが続くと思います、」
香奈 「それは無理をしないでね。上場問題で対応する事があればやっとくわよ。」

ジブトラスト巨大化の基礎を作ったのは、香奈とコシロだった。

神太朗や神子が生まれる時には、出産直前は、正子は通常の正子ペースに戻ったが、今度は神と云うより、鬼のように儲けだした。しかも大きく下落した後、上がったり、下がったりを繰り返して、少しずつ、上げていった。株式も先物も異常な勢いで儲けだし、増えていた現金が益々増えて、運用成績は良く、異常に儲けていた。正子はつわりが酷くなり、産月の1ヶ月前から休んでいたが、正子が休んでいる時に、香奈が調べると、もう運用利益は昨年の3倍近く、八千億を超えていた。金は儲かったが、税金も凄く増える。正子が休んでいると、株式投資は人並みとなり、ぱっとしなくなった。株価はだらだら上がっていた。先物も正子の成績が驚異的だった。正子の代わりに先物を担当した先物担当は、おどおどと細かく投資し、ぱっとしない成績だった。香奈は、株式投資を見ていたが、それほど利益の取れる状況でもなく、運用資産は増えたのに、年間八千億ペースどころか、このままでは、年間一千億ペース程度に激減しそうだった。それに正子も産後の回復が遅れていた。

香奈の娘の瑠璃は、二人の子供、長女の奈津実と長男の正人を産んで、香奈の仕事を手伝いだしていた。香奈は瑠璃に金を貸し、香奈オフィスの株も持たせ、香奈オフィスの手伝いをさせていた。瑠璃は組織の運営には強く、それなりにやっていて、実業面ではなんとかこなしていた。徹彦名義でも香奈オフィスの株も持たせた。ただ瑠璃は、香奈のような相場関係はほとんどしなかった。香奈オフィスには、株式相場や商品相場関係に強い人もいた。アメリカの香奈オフィスでは、金を保有している貴金属会社も持っていた。コーポレイト石油会社などの香奈オフィスの業務に近い業種の株も持っていた。安値で買ったが、直前に株の売り買いで大きな利益も出していたので、日本ほどではないが、税金も大変だった。色々と考えて、香奈は、香奈オフィスの現地オフィスにジブトラストの支店を作り、香奈オフィスとの兼任の形でジブトラストの社員としても雇い、持っていた株も含めて、ジブトラストに引き取り、手堅く海外でも株式相場の仕事も慎重に再開する事にした。香奈オフィスには、証券会社や各種相場への口座や経験もあり、ジブトラストの各支店が直ぐに出来た。香奈オフィスの一つの運用会社が、ジブトラストの各支店と云う感覚だった。海外の取引チームが増えたので、運用手数料は、運用利益の5%に上げた。貴金属会社も保有していた金も含めて、ジブトラストに引き取る事にした。買い取りの形を取った。コーポーレート石油会社の株は、香奈オフィスの商売も絡むので、一部だけ香奈オフィスが保有し、時価の13ドルで、大半をジブトラストが引き取った。コーポーレート石油会社は、ジブトラストを香奈の別会社のように思い、名義書換も簡単に済んだ。そして引き取った貴金属の会社に、更に金を買わせた。ジブトラストと香奈オフィスが暫く並立するような形で、協力と云うより、一体となって仕事を進めていく事になった。香奈オフィスの相場部門がジブトラストの支店になったようなものだった。そして、日本でも価格が上がっていない出遅れた上場会社の株を買っておいた。遺伝子研究センターでも牛や豚から、ヒトの遺伝子に本格的に研究対象が代わっていた。今後はそんなに経費も負担出来なくなると思い、思い切って、大きく設備投資して、後は人件費や少しの研究費だけで済むようにした。見込みのありそうな非上場の会社にも少し支援した、ある程度の現金も置き、財団への寄付も増やした。もうこれで、みんな、損はないよと云う思いで、配当を、出資金と同額にした。

「正子さんは本当に男の子を産んだね。神之助とは古い名前だね。太朗君って感覚古いね。」
香奈「名前は、すべて正子さんが決めるのよ。本人の意向と言われると、みんな反論できないでしょう。神太朗君も神子ちゃんも自分で決めたと言ってるわよ。怖いのよ、正子さんの子供は。俊子さんも黙っているわよ。神之助君なんてお腹の中にいる時から正子さんと話していたと言ってるわよ。」
「それは怖いね。今でも社長室は凄い雰囲気なの。」
香奈「今は正子さんはお休みよ。会社の中は和やかな雰囲気よ。成績はぱっとしないけど、まあこんなもんよ。正子さんの通常レベルの7勝3敗でも凄いのよ。神かがりの正子さんはほとんど10割なのよ。人間の感覚ではないわよ。」
「そんなものかね。でも大きくなったね。運用会社からの配当だけで、億を超えるのが普通になった。みんなの金銭感覚も狂うよね。」、
香奈 「それはいけないことだよ。みんな自分で働かないと。正子さんはちょっと次元が違う人なのよ。今回も大変なのよ。記録的な利益が出たの。」
「それは結構だよ。配当も上がるしね。」
香奈 「税金は、何度も痛い目にあっているけど、突然儲けると、後大変なのよ。色々と全部上がるのよ。今回も財団へも大分寄付もしたし、投資もしたけど、来年は大変だよ。配当は一応出資金と同額にするよ。これで本当にチャラだよ。来年は知らないよ。貯めておいた方がいいよ。香奈オフィスの一部を引き取って、海外でも取引をしているけど、こんな利益は持続できないよ。」
「それは凄い額だよ。みんなにもそう言うよ。でも財団も施設も病院も凄く安定してきたよ。一族の寄付も安定しているしね。保育士や介護士、医師や看護婦まで奨学資金で、確保しているよ。名古屋や大阪そして福岡まで、寄付を沢山貰ったので、ついに地域本部や地域病院も作り始めているよ。こんな大きい組織になるとは思わなかったよ。」
香奈 「正子さんの神技が続いたからね。でも神風期待は止めにしないと。正子さんは妊娠しないと、神技はそんなに出ないし、今みたいに凄い事はしなくなるよ。」
「後は堅実にやっていくしかないね。」
香奈 「そうだよ。私は、元々運用の配当は、出資金の1割を目標にしていたんだよ。これでも高い目標値なんだよ。今は異常なんだよ。来年からはもう一度見直して、手堅くやっていくよ。」
「そんなものかね。まあ、お義母さんも昔はそんな時もあったと言っていたよ。」

正子が、神之助を出産して、会社に出てくるまでに、4ヶ月程も時間がかかった。正子も35才になり産後の回復も遅れていた。
香奈オフィスの海外を入れたものの、香奈は、今度は株式相場を中心に、慎重に取引していた。短期に上がりそうな出遅れた上場株を買っていた。ジブトラストには、税金分といいながら、お金もあった。香奈は、正子から頼まれて今までの運用手数料も預かり、正子の税金の管理までしていた。配当分は俊子に頼んでいた。香奈は、香奈オフィスの分割に伴い、色々と忙しかった。香奈は、税金は税理士に任せて、頼むよと言っていた。

ジブトラストは、香奈の海外オフィスの一部を引き取ったので、取引規模は拡大していた。香奈は、海外で取引している人たちを、今度は完全に監視するために、少数ずつ海外の相場に詳しい専門家たちを雇い、各取引チームも人数は少ないが、アジア、日本、ヨーロッパ、アメリカと、24時間市場を見るようになった。取引の詳細を把握する事にした。ごきげんソフトは国内だけでなく、海外のジブトラストの支店の取引システムのシステム整備もするようになった。国内のジブトラストのメインコンピューターと各支店のコンピューターを結び、国内と同様に取引する海外の証券会社とのシステムを整備して、ジブトラストサイドでの取引状況の記録を本体に転送する事から初め、やがて国内と同様に、複数の証券会社の取引会社を一つの画面で一度に取引できるようにしていった。それぞれのクラスで見られるレベルには差があった。香奈と正子はすべて見れた。各取引チームは、それぞれの担当する支店の取引状況を確認する事ができた。付き合う証券会社の選択は、香奈と正子が話し合い、預けるお金も決めていた。

香奈はジブトラストに毎日行き、結果や報告を丹念に見た。海外オフィスにも足を運んだ。運用の取引規模は拡大して、利益は増えていった。香奈は手堅く運用していく積もりだったが、引き取った香奈オフィスの海外は、少しずつ貴金属相場や原油相場もしていくようになった。元々商品相場に強い人が多かった。香奈も少しだけならと思い、監視しながら、慎重に取引していた。ごきげんソフトは商品相場についても、株式や先物取引ほど取引量が多くはないものの、支店での取引を取引相手の取引システム画面で取引するのではなく、各取引相手とシステムと協調して、ジブトラストの各支店のコンピューターシステムと取引相手のシステムと結び、取引状況をジブトラスト側のコンピューターでも記録させる事にした。これで各支店の商品相場での取引状況もジブトラスト本体のコンピューターですぺて判る事になった。ヨーロッパでも、貴金属の先物だけではなく、ジブトラストとしても真理の協力も貰い、スイスに貴金属会社を10億で作り、金の備蓄もしていった。スイスのコッソリートにも、資本金100億程度のジブトラストスイスを作って貰い、ジブトラストスイスの社長にして、自分の運用会社やジブトラストスイス貴金属会社の面倒を見て貰った。コッソリートは、十分なリスクを取って、慎重に儲ける人になっていた。大きく儲ける事はないが、慎重だった。それにそんなに株式も多量に保有せずに、現金比重を高くして運用していた。売り、買いを同時にして、先物でリスクを調整して運用する良子プログラムのような運用だった。香奈はコッソリートの慎重さを評価していたので、スイスの運営を任せていた。それにコッソリートは、多くのヨーロッパの情報を良く知っていた。香奈オフィスとは違う立場での意見を聞く事にした。コッソリートは自分の証券会社の自己売買のようにして運用した。コッソリート自身もジブトラストスイスに少し出資した。ジブトラストスイスは、その他の海外の支店とは異なり、独立した組織であった。コッソリートの作った証券会社の中に間借りするようにつくられた。あっさり云えば、コッソリートの証券会社に運用を委託したようなものだった。 お金だけじっと持っていて、ごっそりと税金に取られるのを待つよりは、税金分程度は稼ごうと思った。株が上がれば株を売り、貴金属が上がれば貴金属を売り、それでも駄目なら、ジブトラストに、株を売って、お金を持っている香奈オフィスがお金を貸すつもりだった。

香奈現地オフィスにおいてある自分の運用会社のお金も計算していた。香奈としては考えられるだけの手を打った。

しばらくすると、株も貴金属も上がりだした。税金分もこれを売れば、なんとかなりそうだった。遺伝子研究センターへの大幅な投資や色々な投資も効いたのか、税金は恐れていた程高くなかったし、税金支払い程度は、ジブトラストは稼いでいきそうだった。税金や経費程度を稼いで、後は慎重に運営していこうと香奈は思っていた。

そして神之助が、正子と一緒に会社に来るようになった。神之助は午前中は託児所に行っていたが、午後は大体正子の側にいた。神之助の霊力は凄く、神之助がおぎゃと鳴くと、ジブトラストの入っている建物の窓ガラスが割れ、強化ガラスに交換した。そして社長室の前には室内ではあったが、室内庭園のようなものを作り、観葉植物を幾つか置いた。それが異様に大きくなっていった。正子は、株や先物で利益を上げだした。海外のオフィスの株式相場や商品相場まで好調になり、運用利益も再び、八千億ペースに戻っていった。配当も出資金の同額を続けていった。ジブトラストでも国内や海外で、現金の保留が増えていった。それに非上場で支援していた会社からも利益が上がるようになってきた。香奈は、それでもまだ怖く、株は長期保有のものを除き、利益が大きく出ている株は少しずつ処分し、ビルなどの不動産、換金性の強い金などの貴金属も買い、そして現金比重を高めていこうとしていた。香奈は余程の理由がないと上場株の保有はしない人だった。保有株式や商品相場そして先物相場への投入額はそんなに増やさなかった。株は暴落する事もあるし、保有する株は、経緯のある株や一族の株などが中心だった。いつまでも、こんなに好調に推移する事はないと、思っていた。

ジブトラストの総合展開は、神之助対策から始まった。

しかし神之助の霊力は強く、ジブトラストの運用はうまく行っていたが、被害もあった。香奈自身も実感して、ジブトラストとしても都心のビルを持ちたいとのみんなの要求にも応える事にした。それに都心のビルなら、そんなに大きな損もしないだろうとの思いもあった。

神之助の霊力が強すぎて、やましい心がある人間は、金縛りに会うようになった。ジブトラストでは、牧師や坊さんのように心が静寂な人は少なく、みんな動けなくなると困り、もっともらしい理屈を付けて、ジブトラストが資金を出して、複合ビルを都心に作り、やましい心の持っている人間は飛び出す事を考えた。香奈に直訴すると香奈は仕方ないと同意し、みんなに任せると言った。計画もヘッタクレもなく、どんどん進めた。金額的にも大きかったが、兎も角も金はあった。俊子の不動産会社にも無理矢理頼んで、土地を探すと簡単に新宿のど真ん中に大きな空き地が出ていた。改築しようとしている間に、ある不動産会社が業務縮小の嵐の中、密かに買い主を探していた。現金なら安くすると言った。地価と建物の高さとか、建物の利用方法とかを慎重に検討すべきだったが、午後に金縛りに会う恐怖から、ジブトラストの不良達は、これに食いつき、すべて無理矢理急いで建てた。ただ変に見栄を張り、高層にしようと思った。関係の深い建築会社に設計させ、格好いい高層ビルと言った。教科書にあるような高層ビルの設計図を持って来た。そこに色々注文が出てやり直すつもりだった。簡単にそれでいいと言って、ただ託児所、医療スペースそして寿クラブだけを作ってくれと頼んだ。事務所や店舗、高層階の住宅など、どこにでもあるようなビルにした。ただ頑丈な建物にして、ガラスも防弾ガラス並みの強度にしてくれと言った。建築費は上がった。そんな事は気にしなかった。兎も角早く建てろと云う事しか言わなかった。新宿のど真ん中に、広い託児所なんかいるのかと言う声にも、耳を閉ざした。そして産婦人科や小児科、内科まで、金に物を云わせ、医師に説得した。寿クラブまで作って、従来の路線ですよと云った素振りをした。大きな事務所を運用会社が使う事にした。のんびりゆったりとしようと思った。かなり、高層のビルを作ってしまったので、事務所の引き合いなども事前に交渉すべきであったが、そんな事により、取りあえず無理矢理急いでつくった。上層はチャラチャラとした、いかにも株屋が金を儲けたと云う事が分かるような豪華な賃貸住宅にしてしまった。ジブトラストの不良たちの発想はまだその程度だった。取りあえず大急ぎで進めた。神之助が小学校に上がるまで続くと、何年も金縛りにあう事になり、みんな慌てた。金縛りになり、ついに座ったまま、おしっこを漏らす人まで出たので、建設会社も脅して信じられない程早く作った。

「なんで、新宿の繁華街で、託児所なの。しかも広いのよ。財団や施設でも呆れているわよ。赤字丸見えよ。」
香奈 「みんな金縛りになるんだよ。やましい心があれば、今はジブトラストでは、動けなくなるよ。やましい奴は理屈つけて、外出するけど、限度があるだろう。おしっこ漏らす奴まで出ているよ。家賃は安くするし、赤字が出たら補填するから、使ってやってよ。今回は、ジブトラストがすべて持つ直属のビルにするよ。みんなに泣きつかれて、仕方ないのよ。今回のビル建設で赤字が出たら、みんなで頑張って稼ぐと言っているのよ。正子さんには、従来のビルと言わないといけないからね。ジブトラストでは、静寂な心を持っている奴は少ないのよ。ホテルの運営本部や貴金属でも影響が出てきたよ。仕方がないから、私と真理さんは、コレクションも一部飾っているけどね。ジブトラストでは神之助君の力が強すぎて、あまり効果ないのよ。恵も行ってみなよ、大体、昼から午後3時半頃までは、神之助君は居るよ。やましい心があるかないか直ぐにわかるよ。風俗なんかで遊んだ翌日は、大体お漏らしだよ。大変らしいよ。」
「やだよ。おしっこ漏らすと大変だよ。香奈さんは大丈夫なの。」
香奈 「会長室の中には、青不動さんの掛け軸かけているのよ。コシロも一緒にジブトラストに来るのよ。青不動さんと友達みたいなの。それにその時間は、滅多にいないよ。家に帰っているよ。コシロと一緒に家に帰るよ。午前中は、コシロと一緒に海外オフィスや担当チームの報告を見て、仕事してるよ、昼には家で飯食って、午後は、家で香奈オフィスのオフィスの報告を見てるよ。急用や来客の時は会社に行くけど、金縛りにはあわないよ。少し身体は強ばるけどね。会長室では大丈夫だよ。成績は驚くほどいいけどね。」
「コシロは、まだ元気なの。」
香奈「元気だよ。足腰もしっかりしているよ。私より、先に歩くのよ。コシロも神之助君の影響からか元気になったよ。」
「神之助君って凄いのね。」
香奈「神子ちゃんも一睨みで花瓶割る子だったけどね。今度は窓ガラスが割れたよ。今は防弾ガラス並みの強化ガラスにやり替えたよ。コップもみんなガラスものは使わないよ、金属物に替えたよ。」

香奈が自分の部屋に掛けてあった青不動さんの掛け軸をジブトラストの会長室に掛けたので、コシロは寂しくなり香奈と二人で会長室に来て、青不動さんの掛け軸の下で、香奈を見ていた。そして香奈と一緒に家に帰った。香奈は、普通のお客さんと会うのは応接室で会ったが、それでも部屋に来る人や社内の人も相談にくる事もあった。コシロは香奈以外の人が来ると面白くない顔をして睨むので、香奈は、お不動さんの絵も持ってきて、コシロが隠れる場所を作り、コシロは、その絵の裏で寝れるようにした。コシロは誰もいないと香奈の横に来て、メールやチャートなどを、香奈に印刷して貰い、不審に思ったり、変なポジションを持っていると香奈に知らせた。コシロは、誰かくると、絵の裏に隠れた。香奈が連れてきた香奈オフィスからの海外のオフィスは、香奈と同じように情報を集め、一発倍増とか大きな利益が取れる時に絞って取引する傾向があった。いつもそんなに細かく取引しなかった。コシロの判断も正確だったし、取引量は、時期により、大きな変動があった。香奈の部屋が、ジブトラストに来たようなものだった。香奈は午前中程度しかジブトラストにいない事が多いが、念のため猫のお便所も置いていた。

新しいビルが建つと、多くの人は、新しいビルに行った。ただ数人は、平気な人も居て、直属の少数の国内やアジアの取引チームに残った。海外担当は時間がずれ、神之助の余念は残るものの、被害は少なかった。管理チームは影響の少ない人を無理矢理残し、午後には都心のオフィスによく打ち合わせと言って逃げた。

新宿のビルは何の計画もなく突然と建てたビルだった。ビルが完成間近になって、漸く慌てだして動き出した。ただジブトラストには金があり、しかもその金で企業を支援したりしていた。蜜にたかる蟻のように、事務所もやがて一杯になり、店舗も金目当てにやがて満室になった。賃貸まで高額の家賃だったが、見栄を張るジブトラストの不良はやたら豪華にして、成金も居て、やがて埋まった。ジブトラストの不良たちは、女を連れ込むための部屋を残しておいた。緊急の時に泊まり込むための部屋と名目はつけた。完成すると、正子が珍しく外出し、神之助をつれて完成したビルを見に来た、神之助は広い建物を見て喜び、いきなり念を送っていた。ジブトラストの不良たちはある程度予測もしていたので、建物は頑丈にし、ガラスも防弾ガラスに近い程の強化ガラスを使っていた。神之助が来ると噂があり、案内した社員は、比較的被害が少ない人を選んでおいた。そして、このビルにもオーラは及んだ。この頃の神之助の念は強力であった。神太朗と神子も、日曜日に見学に行った。二人は、神之助の念の強さに驚いて、癒しの念を神太朗は送り、神子は予知の念を送った。ジブトラストの不良たちも少しは改心して真面目になり、予測の力も少しついた。この賃貸を借りた好き者のおっさんが、浮気で女を連れ込むと立たなくなったが、賃貸で借りた夫婦は、夜には旦那のものはそそり立ち、女は絶頂感を味わった、いい加減な奴らの事務所は段々悪くなり、熱心な人たちの会社は繁盛した。そして数年が過ぎると、家賃も高いので、いい加減な奴らは去り、みんな、繁盛するビルになり、賃貸でも子供がよく産まれた。託児所も利用されるようになり、ビルの医院まで客が増えた。寿クラブもネットカフェとか一時的な事務所みたいな使われ方もされたが、都心でもウロウロする爺さんや婆さんもいて、いつしか老人割引も効いて、老人が集まり、子供たちを見ているようになった。中には、色々な事をああでもない、こうでもないとほざく年寄りと、不良上がりの保育士との間でバトルが起き、婆さん、やってみなと言う事になり、婆さんの知恵が再発見されたり、キャピキャピの姉ちゃんが正しかったと爺さんと婆さんたちが認める事もあった。このビルでは自然と本音がでた。みんな本音をぶつけ合う内に、それなりの不思議な雰囲気のビルになった。それにここの寿クラブには若返る力もあり、爺さんでも立った。爺さんと婆さんのラブロマンスまで起こっていた。そしてここの医院では、病気もよく治った。ジブトラストに相談に来た会社は運用会社の出資を受けると成長する事が多かった。

都心に移ったチームは取引はあまりしなかった。やれば本体との差は歴然だった。それでもビルは当分赤字だと思って、仕方なしに、将来性のある会社を必死になって探した。有希にも聞いたし、恵のビルにも企業相談所まで作った。合併や合弁そして増資などの仕事も探した。そうして支援した会社を本当に発展させ、利益を出させるためにも経営相談も行っていた。ジブトラストの不良達は、神之助に対抗する事の無意味さを知り、自分たちの取り柄は経験でしかないと思い、それを元に懸命に努力した。上場企業でも、将来性のある企業には、10年先に何倍にもなる事を目指して、自らの判断で単独に買う事もあった。このような株は普通扱いの長期保有株扱いとなった。保有するのは何倍にもなると思う株しか保有してはいけないと香奈は、言っていた。時間が必要でも、将来性を見て、非上場や上場を問わず、未来を買うための調査をしろと言っていた。暴落や少し下がってオタオタする株や世間の噂や評判を鵜呑みにせず、自分たちで納得できる株しか保有してはいけないと言っていた。

しかし株価は変化する事があるので、いいと思った株でも下がる事もあった。先物でヘッジしているとは云え、売った方がいいと思う時もあるのだ。ジブトラストには、保有株でランク付けがしてあった。一族の会社は、大体売ってはいけない株だった。信用でリスクヘッジする事はあっても、現物は売らなかった。普通の長期株は、信用でも売るし、現物でも売っていた。そして又状況次第では、又買い戻していた。それ以外の株は、目標株価を決め、全量売っていた。

本体の取引は、神之助の影響を素直に受けた人たちと神懸かりの正子がしているので、連戦連勝だった。あれよあれよと云う間に儲かった。正子は日本の先物相場で儲けていたが、多くの人の生活を改善したり、役にたつ企業を応援する事にも目が向いてきた。頭の良い子がおだてられ、いい学校にも入り、資産家に嫁ぎ、贅沢にチャラチャラ暮らそうと考えていた正子であったが、いつしか神太朗に教育され、そんな思いも強くなった。

快適やニコニコホテルは、正子の出資で出発した。

そして正子も立ち直り、香奈から今までの運用手数料と報酬を受け取り、俊子から配当分の残りも受け取り、自分でお金の管理も出来るようになり、低価格路線を考えていた悦子や聖子を応援していった、出資したり、貸したりした。ジブトラストからの出資もしていった。香奈は元々、鉄鋼や機械そしてエネルギーや貴金属を重視する傾向があったが、正子は先物系の意識も強く、その他の食品や小売やサービス業などの香奈が興味の少ない分野についても、香奈と話しながら、企業支援や出資を広げていきたかった。正子は企業支援や企業への中長期的な投資は、原則的には香奈に任せていたが、香奈も相談していたので、正子の希望もある程度聞いていった。香奈も運用利益は増えていく一方だったので、保有する現金の比重も高めながらも、少しずつ財団への寄付やジブトラストの配当も増やしていった。

ジブトラストが支援し、出資している石油会社は、挨拶に来て、神之助を連れた正子と香奈と会った。正子は挨拶を受けると直ぐに取引があると言って、神之助ともに下がった。神之助の霊力に当てられて、その石油会社の社長は本音を漏らしてしまった。石油会社は、日本では資源開発に、いいようにピンハネされている現状を憂慮して、独立したがっていた。ただ独立すると、資源開発からの原油もカットされるし、原油入手の安定的な確保が難しくなると言ってしまった。香奈は、予定数量を聞いた。そんなに多い量ではなかった。資源開発は香奈の夫である徹が経営しているし、香奈も元役員で大株主でもあった。それも知りながら、本音を言ってしまった。香奈が聞いたピンハネの額も多く、ピンハネを貰っていない香奈は義憤を持った。ここは精製設備は持っている会社だった。私のアメリカの会社では原油は扱ってますよと言ったものの、よく調べて連絡しますと言った。

そして、ボブにこんな話もあったけど、コーポーレート石油会社との共同購入は出来ないのと聞いた。日本に香奈オフィスが直接入れるのはさすがにまずいと思っていた。アメリカのコーポーレート石油会社は、インパクトのある材料を欲しがっていた。この話に飛びついた。合弁会社として、上場 できないかと聞いていた。原油は2社で一括購入すればいいと言ってきた。タンカーとか色々な問題もあった。それに上場だけで一挙に販売ルートも出来る訳でもない、すったもんだの問題もあった。ただ各地のローカルルートも纏めて大きな販売ルートを持つ合弁会社、「仲良し石油」をジブトラストが更に出資して日本で作る事になった。その上で、アメリカのコーポーレート石油会社と合弁会社を作り、新たな石油会社、「共同仲良し石油」を作る事になった。

瑠璃が日本で、アメリカではボブが、ウロチョロして工作していた。瑠璃は香奈と違い、組織的な工作が得意だった。香奈は個人的には名プレイヤーで、香奈の海外オフィスにも、商売の感覚的にも優れたいわゆる商売人や相場に強いプレイヤーたちがいた。香奈はジブトラストにそんな人たちを連れて行った。まだ一体的な活動を香奈オフィスとジブトラストがしていたので、瑠璃は名プレイヤーの意見も経験も聞きながら、組織も再編し、香奈オフィスも継承できた。

瑠璃は組織的な工作が得意で、秘密工作も得意だった。瑠璃は日本での工作が済むと、アメリカへ行ったし、ボブも日本に来たりしていた。工作は思いがけず短期間にほぼ終了した。中東が、突然日本向けの原油供給を停止した。中東依存が高すぎた資源開発は原油の確保が難しく、供給量をカットし始めた。香奈は中東以外にもルートを持っていたので、資源開発に原油を斡旋した。単なるピンハネ対象は率先してカットされはじめた。上場時期を検討していた日本の合弁会社と資源開発との間に、運用会社として香奈が仲介してアメリカのコーポレート石油と合弁した「共同仲良し石油」を作り、資源開発もお情け程度の出資もする事に決まった。合弁会社を作る前だったが、中東依存度が少ないアメリカのコーポーレート石油会社は当座の必要量を、香奈の脅しもあり、中東からのんびりきていたタンカーを、日本の「仲良し石油」に回してくれた。香奈オフィスは、中東以外でも色々と原油に関与していた。ボブは中南米出身で、中南米の原油の利権も、香奈オフィスは持っていた。ただ販売量は少なくボブは折角取った利権をあまり使えないとこぼしていた。香奈オフィスは、アメリカでは中南米産も使用できたので、アメリカのコーポーレート石油会社に売る事もできた。

そして「共同仲良し石油」が出来て、上場した。株式は公募の形を取り、ジブトラストも相当株を売らされる事になった。香奈オフィスも儲かったし、ボブも臨時ボーナスが出た。瑠璃も名前も売った。原油、原油とお題目を唱えていた時代だったので、株を売らされたジブトラストはもっと儲かった。会社支援チームとしては快挙を達成して、利益も上がった。

その後「共同仲良し石油」は業績が好調で、精製設備を更新する計画があった。だれかが、最新設備を作った方が安いとか、ほざいた。調べてみるとそんなに差はなかったが、うるさいおっさんが言ったので、後生大事の人は従った。しかし解体費用は省いていた。香奈は、このおっさんの頭の中がみたいとも思ったが、じゃ新しい精製設備を別の土地に造って、古いのを売ったらと言ってみた。そんなもの買う人も会社もないとそのおっさんがぼざいたので、安くすれば売れるよと香奈は言った。おっさんは新しい会社では西日本系の販売ルートをもつ会社群のまとめ役で高い地位を得ていた。香奈は日本での合併工作を瑠璃に任せていた。このおっさんは、香奈をアメリカのコーポーレート石油会社の役員で、アメリカ資本からの推薦の若い姉ちゃんと思い、少し敵意も持っていた。おっさんは、商売を知らない香奈に恥をかかせるつもりで、じゃ売ってなと言って思い切り安値を言った。香奈は、腹が立って、ジブトラストの配当や運用手数料を貯めていた金の一部を瑠璃に貸し、ジブトラストとしてもお金を出資して、「瑠璃石油」を作らせて、思い切り安い値段で精製設備を買ってしまった。

それだけでは、安く買い叩いたようで後味も悪いので、俊子に頼んで、新しい精製設備用の土地を見付けてきた。別のおっさんがくそたかい土地が見つかったと言った。俊子は地価が下がった時に、千葉のホテルの事も考えて、海岸付近に広い土地を買っていた。ただ近くに大きな工場が建ち、ホテルには向かなくなっていた。香奈はさやを抜いて儲けようとも思ったが、それはまずいと思って、俊子の言った値段を言い、その場所も言った。別のおっさんはそんな馬鹿なと言って、二つの場所を詳細に調べて、検討する事にした。結局調べば、調べるほど差が出た。そのおっさんの面子もあって、「共同仲良し石油」は、俊子とこっそり会って、俊子が隣接してもっていた少しの土地もくっつけて、おっさんの面子を尊重して、おっさんの言った価格の1割安程度で買う事になった。

精製設備ができるまでは、「瑠璃石油」は、「共同仲良し石油」にレンタルして使用させる契約になっていた。この間に瑠璃は親しくなったボブに中南米産の原油を回して貰う約束や原油品質にあった精製設備の更新の計画を進めていた。中南米にもボブの力で「瑠璃石油」の現地支店を作った。タンカーも良子の息子たちが運営している安倍海運と話していた。「瑠璃石油」は、原油の多角的な確保を目指して、日本でも中南米産の原油を精製する事にしていた。「瑠璃石油」は、ジブトラストからの出資も貰い、精製設備は更新された。中南米産の原油を使用としたガソリンなどの関連物資を販売する事になった。予め化学とは話もしてあったので、関連物質は化学が使いやすい用に分別していた。化学でも手間が省けたと喜んでいた。独立系のガソリンや石油として安く売る積もりだった。またまた中東は日本向けの原油を止めた。中東の誰かが日本に来た時に、すりにすられたとか、銀座で女の胸を掴んだら殴られたからだと言う人もいたが、表面的には日本とイスラエルとの貿易の拡大に抗議するとか言う事になっていた。

取りあえず、中東の原油が一時止まった。中南米産のガソリンや石油を、他の石油会社に売っていった。精製設備の周辺には、他の石油会社からのタンクローリーで一杯になった。値段は中東産よりは、少し安くした。いつも他の石油会社が買ってくれるとは限らないので、瑠璃は、又ジブトラストからもお金を借りて、関東の周辺の地価の安い国道筋を治部東京不動産に依頼して、完全自動化のガソリンスタンドを少しずつ、増やしていったが、他の石油会社への販売が安定的になったので、ガソリンスタンドの数は限定的なものとなった。やがてジブトラストから借りたお金は増資の形を取った。香奈はそうして、瑠璃石油の一定部分をジブトラストが持つ事にした。しかし瑠璃も瑠璃石油の報酬を利益比例にして、香奈から借りたお金も返しはじめて、意見も通すようにしていった。

香奈オフィスは、幾つかの鉱山の利権と油田の利権を持ち、アメリカのコーポーレート石油会社との取引もあった。そして、鉱山からの鉄鉱石や貴金属原石の販売、資源用機械の販売や斡旋、原油関係の販売と仲買などの業務はあった。原油の先物ヘッジは、少しは、行っていた。香奈オフィスは、日本とアメリカに関係の深い石油会社を三社持ちながら、原油販売もするようになった。資源開発とも関係していた。香奈は相場関係に注意を払いながらも、実業としての香奈オフィスにも同様の注意を払い、自分が動けない時は瑠璃を派遣して、直接指導を取っていた。実業としての貴金属や原油などの動向を見ながら、貴金属相場や原油相場を慎重に手がけ、儲けが取れそうな株があれば買うようにしていた。香奈にとっては、香奈オフィスでの海外の相場取引がそのまま、ジブトラストとして取引になったようなものだった。

「新宿のビルは少し時間はかかったが、結局、成功したよ。小遣い銭程度のバイトも一杯くるよ。第一、不良たちも爺さんや婆さんと本音の話が出来て、みんなの意識も変わったよ。あんな所でも子供預ける人も多いのに吃驚したよ。」
香奈 「あそこの賃貸は、子供がよく出来るのよ。それに勢いもよく、子宮直撃弾が良く出るのよ。子供が出来るビルとして有名になったよ。結婚して10年間出来なかった人も子供が出来たと云う噂も出ているよ。今は、空席待ちだよ。ジブトラストが押さえた部屋も貸し出したよ。奴ら、変な下心もあったのよ。新宿オフィスでの支援や増資は先行投資をしたつもりだったけど、配当も思ったより早くくれるようになって、そこそこ儲かっているわよ。」

正子は自分の家でもディーリングルームを作った。三人の子は家では増幅したパワーを正子に送った。香奈の家にも元々ディーリングルームがあったが、ジブトラストでは、ごきげんソフトが優秀なため、セキュリティー対策が優れており、外部ログインするには、何桁ものパスワードが複雑な周期で次々と変わり、香奈はあっさり諦めた。スイスの運用会社は香奈だけのものだったので、コッソリートとの連絡を取って、色々な情報も貰い、ジブトラストとしても参考にして、自分だけの運用会社でも活用していた。コッソリートはジブトラストスイスとしても香奈とよく連絡を取って手堅く十分なリスクを取って細かく儲けていた。コッソリートは若い頃の経験を生かし、損をしない運用を心がけていた。年間数割程度の儲けを取る事を目標にして、十分なリスク取りを心がけていた。香奈には色々なヨーロッパの情報を教えてくれた。香奈はスイスの運用会社でも少しは運用をしていたが、ただもうそんなに遅くまで取引はしなかった。コシロも香奈もそんなに若くなかった。アメリカ時間まで起きているつもりもなかった。コシロものんびりしていた。香奈とコシロは、規則正しい生活をするようになった。香奈はそれでも時々徹の部屋に襲いに行く事はあり、コシロは呆れて自分の部屋で寝ていた。

香奈オフィスからの香奈子飼いの人たちは、香奈オフィスの業務と関係する業界の株式相場や資源や貴金属の相場には強かった。ただ時折、香奈と話をするうちに正子は、ヨーロッパの先物にも関心を持ち、支店やジブスイスに株式先物担当もおき、ヨーロッパの先物取引も始め、ここでも無類の強さで勝ちまくった。

影響はホテルの運営本部や貴金属まで及んだ。エコノミーホテルも、運営本部は同じ場所においてあり、システムも良く似たものを使用していたので、影響を受けた。客室稼働率は90%はいつも満室に近い事を意味するが、本当に満室が続いた。貴金属では真理は元々慎重だったが、上がれば真理が少し売りを出す。売りを出すと、下がり、手じまうと又上がった。連戦連勝で進んでいた。

一応出資枠の拡大は一巡していて、出資者はもうそんなに増えなかった。香奈は配当を少しずつ増えしていったが、配当が出資金の倍になった時点で、香奈は配当ふやさなくなった。毎年、年間二千億以上も現金が増えていった。支援していた企業からの配当も増えていった。

ジブトラストが安定して、配当を出せるように香奈は考えていった。

香奈は、コッソリートからの情報を貰い、コシロと一緒に検討しながら、短い時間ではあるが、こっそりとスイスでの運用を続けていた。数時間だけしか取引しなかったが、コシロも香奈を助けてくれた。コシロの先物は、まだまだ正確だったが、それほど先物でオーバーナイトはしなかった。そんなリスクをおく必要もなかったし、コシロもそんな表情を見せる事もそうなかった。大きく儲ける事もなかったが、少しづつ儲けるだけで香奈はよかった。香奈には、コシロとのんびりしている時間だった。取引に気分が乗らないと、コシロとお不動さんの絵を見ている時もあった。コシロも歳だったが、元気だった。

香奈は、ジブトラストとしても長期的な投資もしていった。ジブは正子がやたらと稼ぐが、いつまでも先物に頼っている訳にもいかなかった。儲けたお金はリスクの高い先物や商品相場にどんどん投入するのも危険だったし、じっと現金だけを抱いているのも効率が悪かった。そして儲けたお金の三文の一程度は長期的な視点で株を保有する事にしていた。その株の選択は香奈とコシロが話して決めていた。

香奈は、仕手集団とも云えた、相場ゴロのような香奈オフィスのグループをジブトラストに移し、取引をさせたが、その元金というか投資のお金は儲けてもそんなに増やさなかった。いつもいつも儲かる儲けられる事はない。欲をかくと大損すると思っていた。そうして儲けたお金は、土地や金、現金、そして長期的な展望に基づく投資に振り分けていた。香奈は長期的な投資をしながらも一方で株を保有するリスクも考えていた。ジブトラストと云うべきか香奈と云うべきかは分からないが、2つの側面を持っていた。一族の会社や気に入った会社は、じっと長期的に保有したが、リスク低減のため情け容赦なく、売る事もあった。それは香奈の相場師の直感の一面とコシロとの会話による長期的な視点を併せ持つ複雑な一面でもあった。コシロは香奈以外の人間は嫌いだったが、それでも顔なじみになってくると恭助とかジブトラストの管理の部長とかになるとイチイチ逃げるのも邪魔くさくなり、香奈と一緒にいた。正子がやたらと儲け出し、海外のジブも好調だった時に、ジブトラストは国内や海外で長期的な視点に基づく株投資を、香奈とコシロが相談しながら、進めていた。ただ管理の部長の斎藤は、コシロを横においた香奈が色々と検討しながら進めていると思っていた。コシロは時々にゃーにゃーと言っているだけのように見えた。時々斎藤の心にコシロの声が響く時もあった。そんな時は斎藤の出した書類に間違いがあったり、未調査のまま提出したりしていた。香奈は柔らかくもう一度検討してみてよと言うだけだった。

香奈とコシロが話し合って、今後の成長する分野に投資したりしていた企業は上場だけでなく、非上場の企業もあった。神之助の霊力に恐れ逃げるためにつくった新宿オフィスであったが、逃げ出した連中もそれなりに成長していく企業を探し、将来性のある企業に出資し、応援したいと言ってきた。そしてその調査結果を香奈とコシロが話し合って判断していた。勿論香奈は相場師でもあったので、もう下がると直感した時は売り飛ばし、又の機会を待つと云う事は当然あった。香奈は元々チャンスとみれば大儲けをしたい性格なので、コッソリートの情報で儲かると思った時は、自分の管理会社でも、海外のオフィスでも、新宿でも連絡して果敢に買った。それは海外のオフィスも同様だったが、それは香奈と相談しながら進める事にしていた。

香奈はいつもいつも儲ける事はできないと思っていた。休むのも相場なのだ、儲けられない時に焦って相場に手を出しても損するだけと海外オフィスや新宿の連中にもいつも言っていた。こうした香奈の直接指導は神太郎が新宿を手伝い出すまで続いていた。

香奈は正子が神がかりで儲けたお金を三分の一は現金で、三分の一は不動産や金そしてもう三分の一は長期視点の株として更に大きくするようにしていった。香奈はそんなに株をじっと保有するタイプでもなかったが、なぜか気に入った会社はじっと保有していた会社もあったのも不思議だった。ただやがて大きくなった神子はこうした長期保有の株も神がかり的に高いと思うとさり気なく売り、安くなるとさり気なく買い戻して、元のように保有するといった神業をみせたので、調整売買は神子に任せていった。神ならぬ香奈は、なかなかそんな事は出来ないので、香奈は直感的に閃かない時はじっと我慢して保有していた。この時の香奈やジブトラストもそうだった。

禎子も忙しくなり、アメリカによく行くようになった。夫の雅也は商会で頭角を現していた。有希に虐められ、禎子には搾り取られたが、それでも本来の頭の良さで乗り切ってきた。禎子のジブトレーディングは、由香の長男の信治からも出資して貰っていたが、業務の拡大に備えて、ジブトラストからも出資して貰った。有希の会社の製品を少しずつ売っている段階だった。日本ベースの考え方ではなく、アメリカでの考え方が中心だった。アメリカとアジアの間での貿易が中心で、日本とアメリカとの貿易は、付随する仕事の一つのつもりだった。信治は紡績製の洋服を着ていて、それが注目され、紡績製の生地で紡績で縫製された治部洋服の服も少量だが、高級店からの引き合いもあり、少しずつアメリカにも売っていた。ジブトレーディングは、まだまだ小さい会社だった。

正子は酷かった。救いようがない状態だった。洋太郎は女に対して執拗な責めをする気質は、洋之助や美佳によって、隠されたが、太朗には引き継がれていた。そしてその被害者になった正子は完全な腑抜けになった。アメリカの新婚旅行の間には、一時は下着も連れられない状況に追い込まれた、いつも感じしていたので、乳首は立ち、膣は濡れて、涎を垂らしていた。ブラジャーするだけで擦れて逝く事もあり、パンティーは直ぐに染みが出来た。表情は虚ろになっていた。膣は濡れだし、部屋に入ると直ぐにしゃぶり、裸になり、冷たい床の上でバックから突かれ、身体中をひくひくしながら、床の上に倒れていた。その後、働く事で緩和されたが、非情な太朗は責め続け、それを神太朗が、救ってくれた。しかし被害は正子の神経まで及んで回復に時間がかかった。あまりの惨状に、神太朗は応援を呼んで、神子が生まれ、神子のオーラも強く、長く正子を庇護していた。ただ正子はまだすこし不安定だったので、応援するために神之助が生まれた。3人の神の子たちは、正子と一体になっている時には、正子は神に近づいた。神の子も正子の身体の中で、成長しなければならない。妊娠5ヶ月頃から、正子は神技はあまり使えなくなった。

神之助の霊力は凄まじく、別だった。子供たちは成長し、小学校に上がるまでは、それぞれ正子をガードして、時折オーラを正子に与えた。運用会社の奇跡の成長の影にはそれがあった。正子は子供たちのガードにより、太朗の執拗な責めにも耐え、単に夜の快楽だけに収まった。次男の神之助の霊力は凄まじく、正子は完全に立ち直った。正子が資産家の奥様と云う甘いエサと大人しそうな太朗の外見に騙されて、立ち直るまでには、3人の神の子の応援と庇護を必要とした。まさに正子の人生は狂った。精神にも及ぶ被害から立ち直るまでには苦闘の日々であった。運用会社は奇跡の成長を続け、正子はオカルト風にはなったが、立ち直るまで8年近くかかった。この間は正子は自分のお金の管理もできず、配当は俊子に、運用手数料は香奈に管理を任せていた。香奈は、ジブトラストの税理士に、自分自身も正子についても税務処理を任せ、貯まっていた正子のお金も管理していた。そして正子は資産家の奥様ではなく、正子自身が資産家になっていた。神童も二十歳すぎればただの人になる予定だが、神太朗たちはまだまだオーラが強かった。神子は睨みつけると花瓶が壊れたとも言われていた。三人の子はまだテレパシーで正子と話していた。ただ正子の神のような運用はあまり出なくなった。順調に経済は発展していた。ただ学校に行っている筈の神太朗たちの姿はよく社長室に移り、みんな怖くて、社長室には入らなかった。運用会社は飛躍的ではないが、少しずつ大きくなり、治部ウォチャーと言う肩書きも出来ていた。

正子は涙ながら、語っていた。「もう大変な日々でした。資産家の奥様という甘いエサと大人しい外見に騙されて、人生が狂いました。神太朗さんたちが助けてくれなければ、廃人になっていたかもしれません。懸命に努力しましたが、よく覚えていない事もあるんです。お金なんてあまり興味がなくなってしまいました。気がつくと、大きな運用会社にはなりましたが、神太朗さんや神子さんのお陰です。香奈さんがうまく処理してくれ、会社も私もお金もなんとか貯まっているようようですが、私が管理していく迄には、まだもう少し時間がかかると思います。今は香奈さんにすべて任せています。神太朗さんたちも応援してやると言ってくれています。太朗さんとも夜は漸く楽しめるようになりました。前は責められ続けて意識がなくなっていたのですが、この頃はやっと一滴残らず絞り出す事も出来るようになりました。良かったです。」

聖子は、被害は正子ほどではなかったが、子供たちは聖子を守っては呉れなかった。聖子にとっては、二郎の愛と手間を奪い合うライバルだった。聖子は手間がかかる女だった。子供たちを二郎をお風呂に入れた後、大きな聖子も身体を洗う事を求めた。朝、二郎が子供たちの世話をしようとしても、いつまでも二郎のものをしゅぶって邪魔をしていた。「聖子、お預け。」と云われるまで、しゃぶったり、舐めたり、ほほずりしていた。聖子はママではなく、子供たちにとって、友達であり、二郎の愛を奪い合うライバルだった。貢ぐ金欲しさに必死に働いていた。聖子は、二郎のものに支配されていたので、自分が稼いだ金もどれだけか分からなかった。ただ有希の洋服事業は大きくなって、収益も高く、それを維持し、発展させるのは、大変だった。しかし、二郎のものに取り憑かれ、支配されていた聖子は、恐れを感じず、必死に働き、利益比例の給料を、二郎に貢ぐだけだった。そして聖子は、有希と同じように、年を取らなくなった。悪いことに神太朗が生まれる後、二郎のものはより大きく硬くなり、聖子は益々感じ方が強くなり、症状は悪化した。有希は冷たく、見放して、商会を中心に紡績にも行くようになり、聖子は孤立無援の中、戦っていた。有希は冷酷にも、聖子に時折詳しく質問もして、聖子を追いつめた。二郎のものに取り憑かれていた聖子は、更に努力をして、働く事を余儀なくされた。聖子も涙ながら語っていた。聖子「もう私の人生は変わってしまいました。お嬢様で大きくなり、アイドルとか云われて、みんなにちやぼやされていたのに、甘いエサに釣られたばっかりに、今は夜に激しく突かれる事しか頭にない女になってしましました。貢がないと突いてくれなくなる恐怖心から、必死で働いています。有希伯母さんは非情なんですよ。慣れる度に、より大きく担当する分野を増やしてくるんです。そして貢ぐ金を減らすと、独り寝になるよと言って、脅かすんです。聖子殺すのは刃物は要らない、独り寝させればいい状態にしておいて、残酷な事だと思いませんか。ただ懸命に働いてやっと楽になると、段々、任せられる分野が多くなり、又努力しないといけない。お金も多く呉れるのですが、大変なんです。それに食事は、健康的とか言って、嫌いな野菜やお魚も食べないといけないんですよ。」

悦子は、そんなに被害はないように見えた。洋一郎の毒はゆっくりと悦子の精神を犯し始めた。そのため、回復にも時間がかかり、ホテルの運営本部でゆっくり勉強して、少しずつ回復していった。そして高級ホテル展開の中で、その高級ホテルのサービスも勉強して、低価格ホテルについて、考えるようになっていった。そしてオフィスサービスやホテルや会社での備品調達を行う治部サービスを任せられ、馬車馬のように働き、考える事で少しずつ、回復していくのであった。

治部ホテルは、高級ホテルとして、俊子が堅調に運営していた。治部サービスは、いわばみんなの小間使いのような仕事であった。ホテルの数も少なく、備品も一族中心の限定的な会社相手に行っていた。悦子は仕事にも慣れ、ホテルの仕事もある程度判ってきた。それに俊子は元気で、あまりする事がなかった。俊子は、ホテルの備品としては、最高級の備品しか取り扱わなかったが、それほど最高級に拘らなければ、寝具も備品も相当安く済む事も判ってきた。悦子は、低価格ホテルも必要ではないかと俊子に提案してみた。お金持ちではない人もいる、余分なサービスを無くし、今までのような広い部屋でもなく、小さい部屋にして、寝具や備品も最高級ではなく、建物も5階や6階のホテルにすれば、建築費も安く済む。宿泊料も低価格で押さえる事が出来ると言った。俊子は、本来普通のサラリーマンの家で生まれていたので、悦子の考え方は判っていた。ただ治部ホテルは、もうブランドイメージが固まっていた。治部ホテルとして、そんなホテルを持つ事は出来なかった。

俊子「悦子さんの考えは分かるけど、治部ホテルとして、そんなホテルは作る事は出来ないわ。別の会社を作って、独自のホテルを作っていくしかない。治部ホテルにも、高級ホテルには向かない人もいるみたいだから、そんな人を集めて新しいホテルを作る事も出来るけど、安いホテルと云っても、お金は掛かるわ。治部ホテルから出資は出来ないわよ。それじゃ結局、治部ホテルが安いホテル作ったと言われるわ。」
悦子 「正子さんに話したら、理解して貰って、お金の面倒はみてくれると云ってます。」
俊子 「それでは、治部ホテルとは、まったく別の会社でやってみなさい。しばらく悦子さんの運用会社からの配当は、その会社に使いなさい。正子さんだけの出資になると悦子さんも面白くないから、私がお給料の一部を預かっていたと言う事にしてお金も貸すから悦子ちゃんの出資としなさい。悦子ちゃんの方が多いように、一部は借りて置きなさいよ。くれぐれも治部の名前は出さないでね。単に安いだけのホテルでは駄目よ。寝具にも気をつけなさいよ。ホテルには、休みにくるのだから。治部ホテルの専務にしておくからね。時々はホテルの運営本部や東京のホテルには行きなさいよ。治部サービスも副社長として続けなさいよ。色々と便利だと思うわ。それにそのお給料で私から貸したお金は少しずつ返して頂戴。その安いホテルに、直接、治部サービスの人が立ち入らないようにしてね。」

悦子は、「ニコニコホテル」として、今まで俊子が育ててきたホテルマンやホテルウーマンの中で、高級ホテルには向かない人たちを中心に人を集めた。悦子は新しいホテルの副社長になった。正子の出資も貰い、一部は、正子からお金を借りた形にした。そして俊子からもお金を借りて、自分の出資として、ジブトラストからもお金を借り、出資もして貰い、新しい会社が出来た。そして名目的な社長にジブトラストの管理スタッフの高杉一作の名前を借りた。宿泊料は治部ホテルより遙かに安いけども、寝具には出来るだけ良いものを使った。シーツなども綺麗にした。部屋も清潔にした。テレビの裏やベッドの下も綺麗にした。それほど大きく始めるつもりではなかったが、人が思ったよりも多く集まった。高杉も名目的社長と云っても、大きく展開したかった。ジブトラストの情報も使い、いきなり3つの中規模のホテルを都心はずれの比較的安い所に、古いビルを改造して、開業する事になった。これらのホテルの備品や室内の掃除や維持を請け負う会社として「ニコニコサービス」も作り、「治部サービス」よりは、安くして、外部の仕事も請け負うようにしていった。

聖子は、有希の仕事を手伝っていたが、有希の洋服事業も大きくなっていたが、やがて慣れてきた、それに有希のかすりを取っている形だったので、入ってくるお金も限界があった。聖子モデルの妊婦服は楽な婦人服として流行になり、聖子には特別ボーナスが入った。聖子はいつもより多いお金を二郎に貢いで、壊れる程激しく突いてと頼んだ。二郎は素直な性格だったので、聖子のお願いと云うよりは脅しに近い言い方に怯えて、身体の力を振り絞って、30分も突き続けた。聖子は意識も薄くなり、ほとんど身体だけが反応していた。何度も逝った。火がつくようなに熱くなった時に、二郎は耐えきれず発射し、聖子は子宮が直撃され、声を出し、泡をふいて、腰のあたりの筋肉はひくひく動いていた。聖子はやがて気がついたが、直ぐに二郎のものをしゃぶりたいと言って、動けなくなった聖子の口に二郎は自分のものを入れなくてはならなかった。そして満足して聖子は眠った。その時の満足感に聖子は取り憑かれていた。もっと稼ぎたいと云う欲求に聖子は取り憑かれていた。有希は別に洋太郎の高級路線にも同調せずに、中級程度の洋服まで手がけていたが、そんなに安い服は作らなかった。聖子は過激にもっと安い洋服まで作り、安売りの店も作ろうと言った。

有希「聖子ちゃんの考えは分かるわ。もっと売れるかもしれないわ。でもそんな事して、二郎君に怒られないの。私でも洋治さんがいい顔をしないから、あんまり安い服は作らなかったのよ。二郎君は、紡績の役員になったのよ。」
聖子 「二郎さんは、有希さんに頭が上がりませんよ。有希さんの影に隠れるように売っていきます。」
有希 「あんまり私の名前も出さないでね。私も洋治さんに、そんなに安い服を作って売っているとは思われたくないわ。」
聖子 「正子さんも理解してくれて、お金も援助してくれると言ってくれています。ジブトラストの管理の人を名目的な社長にして、やってみます。二郎さんは、あれは大きいけど、細かい事は分からない人です。私が稼いで貢ぐと素直に突いてくれるんです。」
有希 「それでは、治部洋服とは、まったく別の会社でやってみなさい。しばらく運用会社の配当は、その会社に使いなさい。俊子さんに言ってみるわ。正子さんだけの出資になると聖子ちゃんも面白くないから、私がお給料の一部を預かっていたと言う事にしてお金も貸すから聖子ちゃんの出資としなさい。正子さんとは同額以上の出資になるように、一部は借りて置きなさいよ。くれぐれも治部の名前は出さないでね。治部洋服にも少しは顔を出しなさいよ。役にも立つわよ。単に安いだけでは駄目よ。値段に比べていいと思われないとね。デザインも重要よ。子供服と婦人服ではもう慣れているから、担当の常務にしておくからね。そのお金で私からの借金は少しづつ返して頂戴。」

聖子は、正子からも出資して貰い、お金も借りて、有希からもお金を借り、自分の名義で出資し、ジブトラストからお金も借り、出資もして貰い、おまけに、ジブトラストの管理スタッフの有村敏夫を名目的な社長にして、「安いよ」会社を立ち上げ、有希の治部洋服で、使っているアジアの工場を借り、デザインだけは凝り、有希さえも使わなかった安い生地を更に叩き買って使い、徹底的に低価格の服を作った。安売りの店を郊外に3店舗立ち上げた。こっそり有希の「治部洋服」の人の中から、考え方に同調してくれる人を集め、安いよのスタッフとした。あまりに安いので、禎子や信治は、その服をアメリカに持っていくと、関心を呼んだ。試験的に売ってみると、凄く売れ、アジアから直接アメリカへ輸出するようになった。安売りの店で、せこせこ売っている量よりも凄く売れた。

聖子や悦子も、給料も運用会社からの配当も貰っていたが、今までは、それは俊子や有希がすべて、聖子や悦子名義で管理会社の株を購入していた。二人とも無一文でみんなから借りたり、出資して貰って仕事を始めていた。しかしジブトラストからの配当は使えるようになった。聖子は、強引な女だったので、借りているお金には目をつぶり、安いよにジブトラストからの配当も投資していった。悦子は少しづつ借りているお金は返し始めた。聖子は、そんな事はしなかった。そのお金は更に安いよに増資して、毎月の利益が増えるようにしていった。毎月、二郎を脅して突いて貰いたかった。悦子も聖子も、順調すぎる立ち上がりであった。悦子もすべて返済するのではなく、少しはニコニコホテルに増資もしていった。

一族の女であった清香は弁護士となり、悪徳弁護士としてお金を儲ける夢を持っていたが、不倫騒動の後、夢破れて、知らない内に社会派弁護士になり、財団にも協力して、女たちの社会的自立や子供を産み、育てる事について、法律的にサポートする事までやるようになった。清香は社会的弱者と言う言葉は嫌いで、弱ければ更に痛めつけ、絞り上げて、弁護士と云う隠れ蓑で、濡れ手で泡のようなボッタクリをしようと思い、その方法まで検討していたのに、逆にそんな連中に戦う事になり、いつしか自分が嫌っていた社会派弁護士と云われるようになってしまった。年を取らず、若くなっていく美佳を魔女と怪しみ、その秘密を探るために、夫の秀明を言葉巧みに騙し、子供と一緒に、敷地内に移り、その秘密を調査するうちに、清香も魔女になり、年を取らなくなった。やがて、清香の子供たちは、家では淫乱な清香が社会派弁護士として通っている事に反発し、清香の仮面を剥がそうと法律を勉強するようにになった。

彩香は医師となり、小児科医として財団にも協力していった。夫の村井明は治部病院で、先代治部次平の夢を追いかけていた。ただ高給ではあったが、洋之助の遺産を貰い、売れない土地や株を抱え、かえって家族間借金が増え、生活費が節約できる敷地内にいた。その借金もジブトラストの配当で、少しずつ返していっていたが、今度は便利な敷地内に居座っていた。

和子の家は、異なっていた。勝は、機械に入って、和子の残した信頼関係を維持するために、機械の国際担当になり、ヨーロッパに多く出かける事になった。そしてその息子の勝彦も機械に入れていた。功一郎の息子である一郎も息子の良太郎を機械に入れた。君子の子供も結局、機械に入っていた。機械は合併もしてきたので、多くの合併先から人も入っていたが、完全に治部一族だけとは言えなかったが、ファミリービジネスの色が濃かった。それに機械は、和子は才覚があり、計画や統制力に優れており、それに感応されて、経営管理室もスタッフは充実していたが、基本的にいい機械を作り、適正な利潤を貰うと云う考え方も強かった。大きくなっても技術重視の考えが主流だった。香奈は自分のオフィスで営業して要望が強かった資源を取る時に、必要な悪天候下でも問題なく稼働する産業用機械もドイツの機械会社で開発され、やがて国内にもそれが取り入れられ、技術力は強くなっていた。

勝の妻の真理は貴金属会社を大きくしたが、和子の娘の小百合と共に、貴金属会社の会社と店を分け合う形で運営していた。そして勝と真理の娘の美枝子は商会の前山駿夫と結婚したが、やがて、真理を助けて、貴金属会社を手伝うようになった。息子の勝彦は同僚の咲子と結婚して、一度は家を出たものの、咲子が妊娠すると、咲子とともに家に帰り、咲子は、瑠璃と一緒に家事を見ていたが、瑠璃は香奈の仕事を手伝うようになり、海外に出かける事も増え、人数の増えた一家の家事を背負う事になった。

徹と香奈の息子である徹彦は、香奈に似て気配りも言葉使いも知らない身勝手な青年だったが、妻の智恵子の尽力で矯正され、資源開発に入り、徹の跡を追いかけていた。智恵子は、そのまま貴金属の銀座の店を手伝っていた。瑠璃の夫の須坂政則は、やっぱり日銀で働いていた。政則は家族間の緊張には平気で、みんなが騒いでいても平然と憂慮ですませる事ができる体質になり、知らない顔をして日銀で勤めて、体質があったのか、やがては、理事にもなった。政則は極めて優れた頭脳の持主だった。あらゆる前例が頭の中にデータベースとして入り、日々更新され、その適応や解釈をして、自分は何も責任を取る事がなく、自分が判断したかのように見せる事が出来た。その能力は、日銀では高く評価されていた。想像力や独創性などはそんなに求められる職場ではなかった。

和子の最後の娘の小百合も色々あって、道之助と一緒になり、貴金属の全体の店を任せられるようになっていった。道之助は、時計製造の会社を高品質の時計を作る会社にし、やがて医療器械のタイマー部分や特殊レンズなどの技術性の高い精密機器も作るようになっていった。

真理は貴金属で堅実に儲けていた、ただ真理は小百合を副社長にすると、ますます敷地内から出なくなった。海外関係も美枝子を使い、連絡や調整をさせていた。勝は機械では、国際担当の副社長にもなり、真理も時々、一緒に行って、ロンドンには顔を出す事もあったが、稀であり、マダムマリは神秘的な存在となり、かえって支配力は上がった。金保有量も少しずつ上がっていった。勝と真理は仲良く、勝は、海外担当にも拘わらず、敷地内に住み、海外への往復の頻度が増していた。勝はそろそろ海外往復に疲れてきたが、勝彦を自分の代理にするまでは、なかなか辞められなかった。美枝子が妊娠し、出産して、この家に戻ってから、前山も商会の経営管理室の室長にされ、うるさ型の有希との折衝役を押しつけられ、敷地内から出られなくなった。

真智子の長女の真美はやはり医師になり、同じ医師の内海と結婚していたが、高給とは云え、真智子の資産を買う事には時間がかかっていた。運用会社での真智子の出資額は積み重なって多くなっており、設立当時の運用会社の資本金の約三分の一は、真智子の出資だった。ジブトラストの出資枠の拡大は、最初の無償増資以外は、初めは真智子の子供たち名義になり、次は真智子の孫名義となっていた。子供達や孫達の出資枠は多くなった。そして子供たちは、真智子のお金を借りて、出資枠一杯の出資をしていた。孫たちは、子供達からお金を借りて出資していたので、孫たちの配当は、怖い恵が真美や由香たちを説得して、ほとんどすべて取り上げて、自分たちの管理会社に出資させていた。神懸かりの正子の登場により、運用会社からの配当は増え、恵たち、子供たちの真智子の管理会社への出資も順調に進めはじめていた。宏美とその夫の満は、お店を広げ、幾つかのお店も展開していった。宏美と満は自分たちの店だけの運営が中心で、ビルの運営は恵に一任するようになっていた。

バイタリティ溢れる恵も、女の子の相談や財団活動に大きな時間が取られていた。真美、由香、恵そして宏美の子供たちは、ボンクラというか平凡の子であった。ただ男の子には、気の強い女の子に見そめられ、結婚した。真美の子供はそこそこ成績が良くて、大金の寄付金は要ったものの、私立の医学部にも潜り込んだ。ただ金を使いすぎ、真智子も清彦が亡くなって寂しくなり、真美に引っ越すように求めた事もあり、離れを作って貰い、敷地内の家に引っ越してきた。そうすれば生活費は真智子がほとんど見ていたので、生活費はほとんど要らなかった。恵や由香たちの男の子供たちは一族の会社にこねを効かして、押し込んだ。資本の力はそこそこ強く、みんな少しは出世した。

ただ恵たちは、管理会社を多く作り、その管理会社に真智子名義の株や資産を移行してもらった。息子達や娘は、みんな大した収入がなかった。恵たちが、真智子の遺産相続を考えて、大変な苦労をしたので、恵達の子供たちの給料やジブトラストからの配当はみんなほとんど巻き上げ、管理会社への出資にした。真美や由香たちとも話しあい、真美や由香たちも恵に任せた。由香の息子の信治は、禎子の会社であるジブトレーディングに、由香や恵たちと一緒に新しい管理会社を作って出資していた。恵は由香や真美たちを説き伏せ、子供たちのジブトラストからの配当は、みんな取り上げ、自分たちの管理会社に出資として出させ、小遣いを与え、飼い慣らし、家から出られなくした。家にいれば、生活費は、もう管理会社の出資もそれほど必要なくなった恵たちが、共同して生活費を出していた。それでも血気が残り、やる事しか頭にない由香の長男の嫁 直美と恵の長男の嫁の小夜には、ビルの手伝いと称して、高い給料を約束して、働かせた。現金はビルの管理会社の株を買うと言う名目で、金を巻き上げられていた。二人の嫁は、お金があればホストクラブでも遊べると思い、金に釣られて働いた。恵は、直美と小夜をこき使い、へとへとにさせて、体力自慢の由香の長男の健太や恵の長男の健一に精力剤まで与え、直美と小夜を襲わせた。

直美と小夜は元々好き者だったので、この罠にはまり、健一や健太の前に屈し、ホスト遊びどころか、夜は精液のパーム爆弾で子宮は燃え上がり、霧の中で燃え尽き、健一や健太に忠誠を誓うようになった。恵は尚もこき使い、二人は忙しくなり、もっとへとへとになり、夜にも突かれ、死んだように眠るだけの日々が続いた。約束の高給もほとんど、ビルの管理会社の株に変わり、小遣い銭程度しか残らなかった。恵はたまに配当と称して、自分たちだけ金を取り、更に小夜と直美にはその分を更に増資させる血も涙もない事もやった。小夜も直美も、ただ健一や健太のものに忠誠を誓うように洗脳されていたので、それでも反抗できなくなった。そして妊娠して、出来なくなると、欲求不満から格好は派手になり、みんなの見せ物になり、更に見物衆も増え、忙しくなり、もっと働いていた。小夜は特に好き者でスタイルも良く、屈むとほとんど乳首まで見えるような服装をしていた。子供たちが出来ると、もっと派手になり、ハデハデ姉ちゃんとして、評判になった。やがて恵のように、不良少女たちの相談役にもなった。直美は小夜のようなハデハデ姉ちゃんではなく、見えそうで見えない服が好きで、変な色気を感じさせるような服を並べ出した。健二の妻の美津子は派手好きだったが、二人に比べるとまだ大人しく、由香以外では家事をする人もいない家の現状を案じて、家事をするようになった。信治の妻の悠子は、アメリカ暮らしも長く、国内でのジブトレーディングの仕事を敷地内の家で手伝い始めた。恵の家は、ジブトレーディングの日本のオフィスにもなった。

家では子供は溢れ、女たちは、よく妊娠し、乳房の谷間どころやお尻の割れ目も見えるほど派手な格好で、ウロウロしていた。家はいつもキャパクラの雰囲気だった。敷地内は不思議な霊力に満ち、男たちのものは、そそり立ち、女は強く感じ、精液は勢いよく飛び出し、子宮を直撃していた。男たちのものは、70才どころ80才でもそそり立っていた。オールドミスの恐怖から、男のくずを掴んだ千恵であったが、そのくずの友貴も勘当されて、治部の婿養子として家に来た。もともと、いちもつだけが取り柄の男の友貴は、この敷地では、反り返るように立ち、千恵は益々、男のくずの友貴に、益々はまった。友貴は、好き者で風俗好きは変わらなかったが、乳幼児施設の下働きになり、キャピキャピ姉ちゃんが、奉仕や再生のためのパイトに来ても、立たなくなった。若い母親が授乳している所を見ても立たなくなった。時々風俗にいっても、おじさんは施設の人なのとか云われ、益々立たなくなった。風俗遊びの帰りに、敷地内に入った所で、金縛りにあい、噂を思い出し、どうにか手を必死になって動かし、携帯で千恵に風俗遊びを謝り、漸く救出される不名誉な事件が起き、千恵にボロカスに怒鳴られ、恵に言って切ってもらうと脅され、泣きながら土下座して内緒にして貰った。その後、精液をすべて搾り取られ、漸く風俗遊びとは、縁が切れ、いつしか真面目に働くようになった。千恵も友貴も、ジブトラストの出資は恵がしていたが、恵は完全に信用せず、すべて管理会社に出資させた。お情け程度のお小遣いと財団や施設の給料が支払われていた。男のくずで、信用のなくなった友貴は乳幼児施設の下働きからスタートして、乳幼児施設の運営にも関与する事になった。多少の給料は出たので、時たま風俗に行く癖は残っていたが、ボランティアに来ていた女の子が風俗に勤めて、見つかって恥を書いたと言う事はあった、千恵は財団の理事兼事務長になって、友貴を監視する役目ももっていた。真智子が関係する管理会社は、恵たちのお金も半分程度入り、恵たちの子供達のジブトラストからの配当はほとんど吸い取っていた。真智子の家の管理会社には、お金が貯まっていった。

財団は、子供を育てる環境の整備に努めていた。まだ日本では、いつまでも婚姻による出生だけを当然視する姿勢に変化はなく、出生数は着実に減少していった。男と女がセックスすれば、子供は出来る。婚姻の有無は関係ない。合法的な殺人行為にも等しい堕胎には目をつぶり、特殊な母胎保持を理由に挙げる。この世に生まれたかった子供の思いを背中に受け、財団は活動していった。そうして婚姻に関係なく、女性が望めば子供を産め、子供を産んだ女性の子育てや生活を応援し、支援するために財団は活動し、乳幼児施設は、実際の子育てを支援していた。そして多く子供たちが生まれ、育っていった。

三人の神の子たちができると、正子の手に掛かると太朗のものはそそり立ち、正子に快楽を与え、精液もあふれ出るほど出た。正子はお尻を付きだして、ベッドの中で崩れ落ちる日々であったが、太朗はそれ以外では立たなくなった。太朗は商会で高い地位につき、なんとかしゃぶしゃぶや怪しげな店にも、接待と称して行っていたが、役立たずに終わっていた。おじさん遊ばないと云われ、ついてもいっても縮こまって立たず、インポの役立たずと云われる事もあった。太朗は、神の子の父親であり、さすがに金縛りに合う事もなかったが、やがて神太朗が大きくなるにつれ、その習性は矯正されていった。二郎や洋一郎は真面目であり、聖子や悦子の奉仕に満足していた。雅也は禎子に完全に絞り取られ、外で出す事なんか考える事もできなかった。

神之助が正子と一緒に、ジブトラスト通いだしてから、正子は、勝ち続け、海外のオフィスも好調だった。ついには年間利益は、一兆程度を少し超える程度で維持していた。保有株からの配当も入り、非上場の会社もいくつか上場して、ジブトラストの持つ現金は増え続けていった。

悦子のニコニコホテルも、ホテルの数が増えてきた。都内中心で始まったが、治部ホテルが大都市中心にあったので、中都市や地方都市の駅付近を調査して、見込みのありそうな土地を購入しながら、進めていた。正子やジブトラストからの借り入れも多く、悦子は慎重だったが、ジブトラストの管理を兼ねている高杉は、ジブトラストからの借り入れを増やし積極的にホテルを展開するように薦めた。悦子はそれに押し切られるように、次々にホテルを増やし、エコノミーホテルは、ほぼ5年間で、もう10を超えてきた。高杉はホテルの立地条件などを見極める能力に優れ、土地代や建設費用を抑えながら、宿泊稼動率の高いホテルになった。悦子は逆に冶部サービスが、悦子のスタートだった事もあり、ソフトと言うかサービスに関心があった。より安価で質のいいサービスが悦子の目標であり、ホテルサービスとともに、オフィスサービスも拡充しようとしていた。人は急には育たないので育成に努めた。悦子は治部ホテルの役員でもあり、人材やサービスに、あまりの差があったので、新しいホテルを開業しながら、人を教育するようになった。

高杉はホテルとして運営しやすい場所の選択や交渉、ホテルのレイアウト、建築費用の捻出等を担当し、実際のホテル運営や提供サービスの充実は悦子が主導となって進めていた。こうして新しいホテルを開業しながら、人を教育するようになっていった。

聖子は、「安いよ」の業績が好調で、特に海外での販売が増えてきた。治部洋服の中国での合弁会社で作って貰っていたが、もっと売るから、安くしてねと頼んだら、クソ高く投資が必要と言われ、大人しい聖子は、もっと安く作ってくれる所を探し、タイで縫製工場を作りだした。聖子は、有希の中国の製造工場とは別に、アジアでの製造工場を作りだす事になった。しかし、アメリカでは売れたが、いかにも値段だけで勝負しているような名前を変えろと云われだした、仕方なしに、洋服製造事業は、快適洋服と云う別会社になった。聖子は、出資以外にも、正子やジブトラストからも借りていたが、それには目をつむり、「安いよ」の配当も出さず、儲けた金を、「安いよ」から快適洋服への出資金とした。弱々しい聖子は、有村に交渉させて、ジブトラストにも出資して貰った。運用会社からの配当も更につぎ込んだ。聖子は両方の会社では副社長であったが、聖子は貢ぐ金が欲しいので、社長の有村は給料は定額にして、自分だけは、利益比例の給料にした。あまりにも堂々と振る舞ったので、誰も変だとは思わなかった。

今まで生地は叩き買った生地だったが、治部レーヨンに強引に頼み、撥水性を工夫して、化学繊維を入れて、汚れの付きにくい安い生地を作ってもらった。それに縫製だけの工場は、そんなに資本も要らなかった。聖子は安くできる所であれば、どこでも工場を作った。生地や出来上がった洋服を港まで運べれば、ジャングルの奥地とか徹底的に不便な所でも作った。安い中古のミシンなどを買って、手間賃欲しさの人に、仕事をさせた。技術講習会なんかはしなかった。それでも器用な人もいて、それなりに服も出来た。

それが又売れた、そして会社に貯まる金で、アジアで小さな縫製工場を増していった。そして聖子は貢ぐ金を増やし、素直な二郎は、聖子の仕事が分からない振りをして、聖子を思い切り突いたので、聖子の病気は益々悪化していった。聖子の病気は深くなり、二郎には隠しながらも、貢ぐ金欲しさに事業は複雑な方法で発展していった。聖子は家にいる時は、子供たちと一緒に二郎にまとわりつき、寝室では二郎のものをしゃぶり、突かれる事を望む単なる色ボケの女だったが、会社では利益を上げるための鬼になっていた。

本当は利益が出てくると、配当に回す約束だったが、まだ発展途上と云う事にして、配当は雀の涙にして、自分だけは、利益の5パーセントも営業貢献とか云った名前の利益比例の給料にして、金をかすめ取った。

快適洋服は、儲かり、更に小さい縫製工場を作っていった。不思議な事に、仕事も慣れてくると、それなりに洋服や衣料品は出来た。安かろう、悪かろうではあったが、取りあえず売れた。聖子は驚くべき事に、数多くの小さい縫製工場を作ったのに、視察もしなかった。「安いよ」の製造担当の兄ちゃんに任せていた。「安いよ」には、人もそんなにいなかった。海外の販売先にも行かなかった。禎子と信治の会社に任せていた。それでも売れた。

快適洋服の国内の販売元は「安いよ」の店であったが、店は衣料品だけでなく、バッタ屋のように日付管理や鮮度管理の要らない食料品を現金で叩き買い、衣料品もクソ安い値段をつけ、お店の設備費に金をかけず、小汚いディスカウントスーパーにして、売っていった。安ければいいんだろうと云う売り方だった。確かに安かった。泥棒でもしてきて売っていると思う程の値段をつけていた。それが売れて利益がでた。本当に、安いよのバイヤーも泥棒してきたものや横領したものではないと云う書類をとった。

そして快適洋服も儲かり、安いよも儲かった。聖子の利益比例の給料は増え続けた。会社にも金が貯まってきた。有村は、少しは配当と言って、やっと出資金の一割の配当をだした。バッタ屋のような安売りの店とアジアの田舎や僻地で中古のミシンでつくっていた快適洋服は、儲け続けた。馬鹿なマスコミは、製造工場も見ずに、「安いよの奇跡」と云って賞賛した。

香奈オフィスも、瑠璃は、組織運用では香奈以上だった。それに商売もできるし、相場にも興味のある人は、香奈がジブトラストにつれて行き、取りあえずの繋ぎ役にもなってくれた。利権を持っての仲買のような仕事やルートが決まった原油販売の仕事は瑠璃には向いていた。香奈オフィスには、香奈自身の運用会社が間借りする形で残っていたが、香奈がジブトラストを作ってからは運用をしなくなっていた。銀行口座の名義として存在するような会社になっていた。瑠璃は知らない素振りをして、香奈オフィスとして保有していた金を使い、鉱山関係の利権の確保にも努めていた。香奈も香奈オフィスの報告を見て、業界動向を見ていたが、香奈オフィスの事は瑠璃に任せ、報告を貰うようになってきた。瑠璃は段々仕事に慣れてくると瑠璃の方針で鉱山利権を獲得しだした。瑠璃は、大きな投資のいる油田開発なんかはしなかった。瑠璃は小さな油田や鉱山の権利を細かく集める事にした。新しい高品位の原石が採れる鉱山は高いが、ピークがすぎると段々値段は下がってくる。採掘のインフラも整っている。そのようなピークをすぎた鉱山の中には、今まで見落としていた新しい鉱物もあるかもしれない。無駄とは云われながらもそのような鉱山が安く売れ出されるのを待った。又瑠璃は、目につけた鉱山や油田の権利を持っている会社や産油国の内部事情を分析し、大きな危機が訪れたりや苦衷に陥った時に、現金を出し、こっそり権利の一部を分けて貰うと云う事もした。裏工作の瑠璃、ボッタクリの瑠璃、原油や鉱山のハゲタカ瑠璃とも言われはじめていた。

有希の洋服事業も、聖子の安いよで影響がないわけでもなかったが、聖子は過激な安値で、商売をしていったため、有希の中級路線や高級路線とは差が出て、かえって企業としてその方向性も固まった。それに有希も禎子の病気、妊娠を切っ掛けに、ご主人ごっこの病気も治まり、目先の利益を追いかける事も少なくなった。禎子が、アメリカで有希の中国での合弁会社の製品を販売していった事から、有希の他の洋服も輸出の道が開き、特にグッズや関連商品の販売も好調であった。有希の娘の禎子と信冶の北米の会社も、俊子のホテルとオフィスサービス、真理の貴金属すべて順調だった。洋太郎と二郎の紡績、洋治の化学、有希、雅也と太朗の商会、つまりジブトラストと自宅で正子たちに接触している人ものは、すべて好調だった。

コシロも化け猫のように、益々元気になり、不死身の猫になった。午前中は香奈と一緒にジブトラストの会長室で、香奈とメールや報告を読み、香奈に、にゃーと言って問題点を知らせ、お客さんや会社の人が来ると絵の裏に逃げ、その裏に寝ていた。

太朗は神太朗が生まれた時は、それほど、商会ではまだ高い地位ではなかったが、太朗にいる部署はいつも成績が良く、神之助が生まれた時には、部長にまで上がった。元々資本の力もあり、課長になるのが早く、その課はやたら業績が良く、最年少記録を更新して、出世した。太朗は、洋太郎の悪い気質も受け継いでいたが、正子の前では正子を満足させる事だけの存在に自然となった。正子に奉仕する男に変わってきてきていた。正子もそんな太朗を可愛がった。

財団で相談を受けて、妊娠から出産まで援助する女の人が増えてきた。財団は住居を斡旋したり、生活費を援助していたが、住居が急には手配しにくい事も増えてきた。赤ちゃんスキ不動産の賃貸には空きがない事も多かった。そこで赤ちゃんスキ不動産は、賃貸住宅と託児所だけの小さなビルも幾つか作る事にして、基本的な備品は、ニコニコサービスに依頼した。ニコニコサービスは、1ヶ月に1回程度のハウスクリーニングも安く請け負う事にした。ホテルとウイークリーマンションとの混合のようなものを作った。基本的なシーツとか備品も、ニコニコサービスと「安いよ」が、提供してくれた。財団もある程度の部屋を押さえて、援助もやりやすくなった。

神之助が小学校に上がっても、数年間は、ジブトラストもみんなの会社も順調だった。

取引を行うチームは、少し社長室から離れていた。管理セクションは都心のオフィスにもあったが、少数の人が、社長室から距離を取り、都心のオフィスとの連絡を取っていた。社長室の前には室内にも拘わらず、庭のような物を作っていた観葉植物も次々と増えて、部屋の三分の一ほどは植物が置かれていた。そしてその観葉植物はみんな異様に大きくなっていた。

「大分変わったね。森の中にいるみたい。」
香奈「みんなへの影響を緩和しようとして考えたの。クッションゾーンが必要なのよ。取引は別のチームが少し離れた場所でやってるの、4チームで各地域との連絡も取っているのよ。今は世界的にやっているのよ。現地のオフィスもロンドンとフランクフルト、チューリッヒ、ニューヨークとシンガポールに置いて、証券会社などにも連絡取っているのよ。香奈オフィスが一部合体したようなものよ。色々な相場もやっているわよ。海外関係は私が見てるのよ。」
「凄い組織になっているんだ。」
香奈「瑠璃は、相場は好きじゃないのよ。政則君の事も関係しているみたいね。でも相場好きな人とか詳しい人も香奈オフィスにはいるから、そういう人をジブトラストとして働いてもらっているのよ。海外の会社の株の保有は、できるだけ押さえているのよ。私が知ってる範囲だけで保有しているの。現金の比重は大きいのよ。日本の場合よりも多いのよ。」
「もう10年近く、配当も高いわよ。あんなに出して大丈夫なの。」
香奈「10年以上、高水準を維持しているからね。もう運用しているお金は2兆程度あるし、それとは別に現金は、大体一兆程度もっているわよ。」
「凄く大きくっているんだね。コシロも一緒に来てるの。絵の裏なの。」、
香奈「そうなのよ。人に見られるのが嫌いなのよ。それに青不動さんの掛け軸の下が一番落ち着くみたいで、一緒に来て一緒に帰るのよ。コシロのコップも持ってくるのよ。おトイレも便利になって匂いもしないでしょう。」
「そうだね。」
(いくら強気の恵でも、少し臭うとは言えなかった。香奈はジブトラストでは絶対の存在であり、恵に言えない事はジブトラストの社内の人は、尚更言えなかった。)

ジブトラスト本体は、保有している株は、非上場の株も多かった。支援を求める会社は、中小企業が多かった。そのため株式保有残と云っても、明確ではないが、株式への投資は、海外を含めて上場株では、初期投資で五千億程度であり、この時点では九千億程度になっていた。非上場では九千億程度投資していた。その内、直属のビル等の企業も二千五百億相当程度あった。まだ貸しているだけの金額でも千億程度あった。資源関係の会社のように上場した会社は、何社かあった。配当利回りは、上場企業で2%、非上場では無配の所もあったが、平均すると5%になっていた。二千億程度は、株式の売買に回していた。五千億で商品相場や株式先物で運用していた。その内、海外に運用の為に準備している金額は、株式では千億程度、商品及び株式先物と二千億程度であった。運用しない現金は海外で三千億程度のお金まで増えていた。運用利益としては八千億から1兆になり、内部への保留は年間二千億程度が増え続けていた。海外では香奈オフィスからの人が多いため、株式相場以外にも商品相場も多く、国内では、正子は先物主体で運用していた。正子は海外でも先物取引もしていた。ただ正子もそんなに一方的な取り組みはしなくなっていた。運用利益も安定して、もうそんなに税金を意識する事もなく、国内での上場株の株式投資は少しずつ控えめになっていた。

遺伝子研究センターでは、牛や豚についての研究はほぼまとまった。ジブトラストの急成長の約10年間で、設備は一挙に充実していた。ヒトへの対応も遺伝子そのものの解明も全部とはいいにくくものの、かなりの研究成果は上がっていた。遺伝子修復の為に手段や胎児段階での遺伝子修復の方法も進みつつあった。

製薬と遺伝子研究センターではいくつかの代表的な疾患について、根本的な治療として、病気にかかりにくくしながら、病巣への攻撃をする新薬を開発中であった。しかし、極秘研究でもあり、秘密の研究所を作る必要があった。そしてその研究所として、友恵は、敷地内の土地に目を付けた。友恵自身が暮らしており、一種の隠れ里のように、独立しており、第三者は入りにくい土地でもあった。香奈とは面識もあり、治部ホーム不動産に、真一郎が住むための住居として、斡旋してもらった。真一郎は、市橋一族で製薬の研究もあったし、遺伝子研究センターの仕事もあった。自宅でも研究できる施設を作り、真一郎は、家族と共に引っ越した。病気にかかりにくくする薬の原液も運んできた。この薬は、実験を繰り返している内に、突然出来た。遺伝子研究センターでは幾つかの漢方薬成分を研究している時に、牛や豚では、病気にかかりにくくなるように遺伝子そのものが修復されると言う報告があった。製薬は、不老不死と云われる妙薬を煮詰め、それを濾過して、更に、幾つかの細胞活性化の効果があると云われる漢方薬の煮詰めたものを濾過にして入れ、試行錯誤しているうちに、出来ていた。内容成分を細かく分析しても、特に代わった成分はない、漢方薬にも一応薬理成分はあるが、濾過する過程で少なくなっていた。いくら精密に分析しても、そんな薬理作用を示す有機物もないし、漢方薬由来の微量の水溶性有機物があるが、単にカルシウムとカリウムの多い抽出液としか思えない。マウスに飲ませると普通のマウスよりは、2倍近く長生きし、病気にもかかりにくい。濃縮してみると、漢方薬由来の水溶性の有機物は、溶解されにくくなり、濾過残査として除去され、濃縮液には微量になっていたが、効果は濃縮比例より高くなっていた。更に精密濾過しても、その効果は変わらない。有効成分を明示できないものは薬としては、許可も取れない。ただ免疫力を上げ、幾つかの遺伝子異状を修復する事が出来るようであった。そしてこれらの薬草の抽出液を大量に作り、更に実験していく事にした。

真一郎の自宅兼研究所が出来て、この抽出液の濃縮物を運ぶ時に、大型の20kg入れの瓶を5本割ってしまった。50倍に濃縮したものだったので、還元すると、5トンほど流れた事になる。研究所も兼務と云う話だったので、敷地の端を借りた。敷地内には井戸があり、その井戸は、今やジブホーム不動産が水道設備を管理し、一族の家に供給していた。香奈が清美の手伝いをして失敗して、逆に大きな儲けを出して、簡易水道を作っていた。その後何回も設備を更新し、今はジブトラストが、ジブホーム不動産に出資し、他のソーラーシステムを持つ自家発電装置などを含めて、敷地内の設備の管理をするようになっていた。普通の水道水も、敷地内の水源が枯れた時のために、使えるようになっているが、今では敷地内の集中クリーニング設備程度にしか使用されていなかった。敷地内の井戸は、過去の日照りで飢饉が起こっても、水が出たと云われるほど堅い岩盤の中の水源に通じていた。

製薬は、正直に毒性はないが、実験用の水がこぼれたので、敷地内の水を暫く検査したいと言って、敷地内の家に、ミネラルウォーターを大量に配って、敷地内の水を検査した。もう敷地内では、公共水道を使った大型クリーニング設備も完備していたので、各家での水使用量は、飲料水程度がほとんどだった。驚くべき事に、敷地内の水には、あの抽出液に近い効果が弱いながらあった。岩盤を通るにしても早すぎた。前の水がいいと言う意見が相次いだ。製薬は、敷地内の水の検査を毎日する事で、敷地内の人の了解を取った。友恵と真一郎は、自ら実験台になり、毎日水を飲んだ。

「真一郎さんの家は、いやに隅っこにしてたのね。何かこぼれたと言って、配ってくれたミネラルウォーターは不味かったわ。毒性のない水なら 問題ないのに。」
香奈「何でも、小さい研究所も併設するからだって、言っていたよわ。本当に今までの水に比べると、不味いわね。コシロも不服そうな顔をしていたわよ。今まで気付かなかったわ。今後は毎日、検査しますと言っていたわよ。でも最近、お水、美味しくなったような気がするね。海外から戻ってきたら、お水飲んで、家に帰ってきたと云う気になったのよ。」
「やっぱりここの水は美味しいわ。井戸水使い出したのは、清美さんが香奈さんの失敗で、大儲けしたした時に作ったらしいね。」
香奈「嫌な事を云うわね。棚ぼたの儲けだったので、みんなにも還元しようと言って、井戸水をみんなに飲めるように設備したのよ。それから何度もやり直しているわよ。」
「そう言えば、真一郎さんは、遺伝子研究センターに勤めているらしいね。あれは運用会社の会社なの。」
香奈「私が作ったのよ。神野先生が遺伝子治療の研究は面白いとか言うからね。でもなかなか成果も出なかったのよ。牛や豚の肉質を改善させ、売っているけどね。儲けなんてないと思ったから、ジブトラストの中に入れたのに、センター長にした建部が、少しでも収入がないと寂しいとか言うのよ。牛や豚のお肉を美味しくするための研究じゃないの。エビなどの水産物も効果があるといってもね。製薬も協力してくれたわ。漢方薬の一部に病気にかかりにくくする成分があるんだって、遺伝子レベルでも、修復するらしいよ。今も研究中なのよ。」
「そんな薬が出来ればいいね。でも、敷地内の人は病気にもならないし、関係もないか。」
香奈「本当はね、先天性の病気を治すために、研究しているのよ。先天性の病気の子供ができる可能性が高い時は、中絶する事もあるのよ。それを少なくできないか研究しているのよ。と言っても、ジブトラストではみんな判らないけどね。結構、経費も相当かかっているのよ。正子さんは熱心に聞いているわよ。何かできればいいでしょう。」、
「それはそうだよ。」

製薬が開発していた実験段階の薬で、癌細胞には非常に効くが、正常細胞にもダメージがある薬に、この漢方薬の抽出液を加えてみた。すると、正常細胞の細胞膜の周辺では、この薬は幾つかの変化をしていた。この変化物質をそれぞれ精製すると、癌細胞に与えると癌細胞には効くが、正常細胞には害を与えにくい物質たちが見つかった。ただこの物質群を直接作る化学合成は難しかった。一度オリジナルの物質に、特殊条件下で製薬の作った薬草抽出液を加えないと出来ないようだった。癌の新薬として、承認を求める作業を始める事にした。製薬の旧薬草園で漢方薬の栽培も、進み始めた。いくつかの旧薬草園は、相続税対策で、洋之助に売ったが、思い切り、辺鄙な所にあったものが多く、各地の治部不動産でも持てあましていた。製薬に対して、治部不動産にこれらの土地の使用を求めた。治部不動産は、長期に貸す事に同意して、栽培が開始された。するとこの土地で栽培された薬草からは、より効果の強い薬草が採れた。すべての実験データを明らかにする必要は無かった。物質特許と製法特許を、ジブトラスト遺伝子研究センターと共同で、広範囲に取って、薬の承認を得るための作業を実際に開始した。許可が早くおりるアメリカが優先した。アメリカでは、その効果に驚き、異例に早く、許可がおりた。日本でも薬としての許可を求め、治験薬になった。

アメリカでは、製薬は販売ネットワークが弱かったが、この薬を販売するために、中程度の製薬会社をジブトラストと共同で買収し、安倍製薬アメリカとした。アメリカでは、この薬は画期的に売れ出して、製薬もジブトラストも利益が入ってきた。

真一郎は病理データを製薬に渡し、更に遺伝子研究センターで、ヒト以外で、遺伝子組み換え実験を進めていった。遺伝子欠損のマウスも作れ、そのマウスでは、効果はあった。ただ薬理成分は依然として不明だった。遺伝子組み換えによる、遺伝子修復にも成功していた。体内への戻した後の挙動がまだ不安定だった。

 ジブトラストの運用はまだ好調だったし、長期に保有している株は上場株、非上場とも配当は増えていた。ジブトラスト直属のビルも儲けていた。しかし香奈は配当としては出資金の倍以上は出さなかった。香奈の独特の計算でももっと出せる状態だった。ジブトラストも運用報告書は出資者には出していた。

「運用会社からの配当も、出資金の倍で打ち止めなの。儲かっているのじゃないの。配当は、最後に残ったお金の半分は配当するとか言ってなかった。」
香奈「これ以上は出さないよ。ジブトラストも保有株も多くなったし、企業支援も増えているんだよ。直属のビルを増えてきたのよ。会社でも貯める必要があるのよ。どんなに悪くなっても、少なくとも出資金程度は出し続けるようにしたいのよ。」
「もう出資金と同額以下の配当なんてみんな予想もしていないから、突然減ると困るかもしれないね。ところで、ここの敷地では病人もいないね。年寄りも多いのに、みんな元気だね。」
香奈「みんな、仕事も調子いいしね。考えてみると、神太朗君が生まれてから、死んだ人もいないし、病気にもならないよ。ただ小百合は都心に住んでいるので、ここに越すように言っているんだけど、都心が便利と言って、こないのよ。折角家もあるのに、時々くる程度なのよ。敷地内に住んでいない一族の人には病気の人もいるのよ。」
「真美さんもここに越してきたら、調子がいいと言ってるいるわよ。私たちの家では、まだみんなに管理会社の株を買わせているから、金ないしね。ここは便利だし、出て行く事もしないよ。」
香奈「小百合は、真理さんが一杯給料出しているし、そろそろ社長を譲ろうとしているのよ。道之助さんもお金持っているしね。」

貴金属は真理が社長で小百合が副社長の体制が長く続いた。真理は70才になると、小百合に社長を譲り、会長となった。ただ小百合は、敷地内の建てられた家には時折来る程度であった。、道之助と子供たちと一緒に都心に住んでいた。社長になって、小百合はわずか66才で、病気になり、やがて治部病院の医者は匙を投げた。ところが、香奈の夢に、青不動さんが現れて、小百合に敷地内の家に住むように勧めた。香奈は小百合と道之助に、敷地内の家に帰ってくるように勧めた。死期を感じた小百合も、子供頃住んでいた敷地内で最後を迎える事にしたかった。社長には、まだまだ元気だった真理が、会長兼務のまま復帰していた。そして真理の娘の美枝子と小百合の娘の道子が副社長になっていた。道之助も時計製造のカズコウォッチをカメラの特殊レンズも手がける会社にして、技術力では定評のある会社にしたが、社長を退き、息子の道太郎に譲っていた。そして一家で敷地内の家に引っ越しした。みんな揃って小百合との最後の時間をゆっくり暮らそうと思っていた。香奈は、製薬と遺伝子研究センターで繋がりが出来ていたので、治部病院よりもむしろ製薬を頼りにして、製薬の関連病院から医師を派遣して貰い、敷地内の医院は、小児科、産婦人科の医院だったが、内科も作り、小百合を定期的に見て貰った。小百合は胃ガンであった。かなり悪かった。製薬で遺伝子研究センターと合同が開発した癌の新薬は、アメリカで許可がおりた直後であった。日本でも、直ぐに治験薬となっていた。製薬から来た医者は早速、小百合に注射した。もう末期だから無理かもしれないと思っていたら、病巣は直ぐに小さくなり、そしてなくなった。そして小百合は元気になり、時折、銀座の店に行けるようになった。そして真理は会長となり、小百合は副会長となり、美枝子が社長となり、新しく徹彦の妻の智恵子が副社長となった。

小百合には劇的に効いた薬も、人によって効果は変動していた。劇的に効果がある人は小百合以外にも多くいたが、治療効果にはやや変動があった。製薬は敷地内の水の効果を知り、飲用している水の調査も始めた。劇的に治療効果が上がった人は、井戸水を飲用している人が多かった。しかし水道水を飲用している人やミネラルウォーターを飲用している人でも劇的に治った人もいた。多くの人は治療効果が出てくるまで少し時間が必要だった。真一郎は製薬の新薬にも関与していた。敷地内の水と製薬の作った抽出液には、微妙な違いもある事が判ってきた、細胞活性作用が、敷地内の水の方が強かった。単に製薬が作った抽出液が浸透している結果とも云えなかった。遺伝子組み替えにより、欠損部分を修復させた遺伝子を、体内に戻し、製薬の作った濃縮し、還元した抽出液をマウスに与えると、修復された遺伝子が自動的に、まだ欠損している遺伝子を修復していった。濃縮する前の漢方薬の抽出物では効果は落ちた。漢方薬に含まれる薬理物質が効果を阻害しているのと考えられた。敷地内の水では、製薬の作った抽出液の濃縮物よりも効果があった。そして何回が実験している内に、敷地内の水の細胞活性効果は強くなっていった。ただ不思議な事に、敷地外の製薬の研究所に長期保存していると、その効果は弱くなっている事が判ってきた。揮発性や放射性のものかと疑い、精密な調査をしたが、そうではないようであった。製薬の作った濃縮し還元した抽出液も長期保存すると若干効果も落ちたが、大きな下落はなかった。

好調に推移していた一族の会社ではあったが、まず一番早く、異変があったのは、「安いよ」を進めていた聖子であった。やはり神も仏もいた。聖子は「安いよ」以外にも、アジアで作った快適洋服の製品を海外で多く売り、「安いよ」の安売りの店も、ディスカウントスーパーとして大きく伸び、ジブトラストからの借り入れも一部返し、一部は増資にし、正子にも借りたお金も返した。更に安いよも快適洋服も、ケチくさい聖子も少しは配当を出し、会社にはお金が一杯貯まってきた。聖子も利益比例の収入が伸び、二郎にも思い切り突いて貰えるという順回転をして、聖子は満足していた。名目的な社長とは云え、有村も注目され、有村も慢心し、ジブトラストの社内で、身体が強ばりはじめた。有村はまだ気がつかず、居づらくなった社内から海外に行って、女でも抱こうと思い、海外の製造拠点を視察する名目で海外出張を計画した。工場での製造拡張の余地を探ると云う名目もつけた。聖子は金が入り、二郎に突いて貰っていたので、海外に行く気にもならず、海外視察をすべきにも拘わらず、人任せで、進めていたので、有村の海外視察は渡りに船であった。ただ有村は株屋だったし、縫製工場なんかはまったく分からなかった。形をつけるために、紡績の工場を見学に行った。洋太郎や二郎は、親切に工場を案内し、有村も清潔な社内、ビカビカの機械類、整理された製造ライン、礼儀正しい社員などに吃驚しながらも、紡績の工場を見学して、気楽な気持ちで海外に行った。ほとんど遊びのつもりだった。快適洋服の工場は辺鄙な所にあったが、少し見て、中心部のホテルでアダルトビデオでも見ようと思っていた。気楽な気持ちで工場に入った。工場内部は雑然として、機械類も少なく、ボロボロのミシンが並んでガタガタと動き、人はやたら多く、縫製の出来上がりも株屋の目で見ても大差があった。聖子は設備をケチり、もう初期投資などは回収していた。聖子は単に手間賃が安く、輸出入がしやすいと云う事だけで、工場を建てていた。働いている人の環境などにも無関心だった。工場の回りには働いている人の子供たちが集まって遊んだりしていた。縫製工場で働いている人の子供たちなのに、服はボロボロだった。有村は、本来は三人の子にも多少感応していた人だったので、気楽な気分は吹き飛び、真剣に工場内を見学し、働いている人にも意見を聞き、工場の周辺も見て回った。そして何枚も写真を撮り、報告をまとめ、予定していた他の快適洋服の工場も、同様に真剣に視察した。日本に帰ってきて、聖子と相談した。

有村「聖子さん、これは大変ですよ。二郎さんにばれるとヤバイですよ、当分抱いて貰えなくなりますよ、縫製もボロボロですよ。私もどう報告しようかと思ってます。」
聖子「そんなに酷いの。私も見に行かなかったのよ。儲かっているから浮かれていたのね。」
有村「それに働いている人の子供たちもボロボロの服着て、周囲で遊んでましたよ。託児所もないし、環境も最悪ですよ。うちの社長に云うと、私まで怒られそうですよ。」
聖子「どうしよう。」
有村「とりあえず会長に相談して、快適洋服の設備を新しくして、工場周辺に子供たちの家とか、施設を建てましょう。費用は、足りなければ、ジブトラストからの出資を増やしますよ。設備更新と云う事で処理しますよ。縫製の技術講習も紡績に頼みましょう。」
聖子「そんな事すると、二郎さんにばれるわよ。紡績を辞めた人とかに頼んでみてよ。」
有村「そうしましょう。それも会長と相談してみます。ところでスーパーの方は大丈夫ですか。」
聖子「私もそんなには行ってないの。私が見てくるわ。」

有村は、こっそり香奈と相談した。香奈は機械関係の設備については、機械に設備更新の計画をさせ、技術の講習は専門家にと思い、俊子経由で、こっそり洋太郎に頼む事にした。社員の環境改善や工場周辺の環境設備については、恵に頼んで、財団や施設の人を派遣して、意見を求める事にした。一方、聖子もスーパーを見て回り、雑然とした店内、食品もばらばらに置いてあるし、単に安いだけの店に愕然としていた。食料品も腐りかけているものまで並んでいた。聖子は有希の店の感覚で、利益だけを追い求めていた。有希の洋服店は、言わないまでも、店内の整理や整頓、売れ筋の管理、お店としての管理があった。こんな事が二郎にばれると大変と云う思いで、専門家を呼び、店長たちと共に対策を練った。

香奈「そう言う訳で、なにをすればいいか、だれか視察に行ってくれない。」
「アジアの事情なんて誰もしらないよ。」
香奈「工場で働いている人の要望は聞くように有村には言っているよ。それに応じてできるだけの対策でもいいから。とりあえず頼むよ。」
「仕方ないね。アジアに行った事のある奴に見てきて貰うよ。」

工場の設備関係の更新は、機械の専門家なので、比較的計画は簡単に進んだ。電気もない所もあった。発電装置まで用意しなればならなかった。機械は昔から発電装置は作り、歴史もあって、発電所サイズから、小さな自家発電装置まで取りそろえていた。そんな所で作っていたにも拘わらず、聖子の快適洋服は好調ではあったので、更新時期の調整とか製品のストック等の調整も必要だった。聖子は生地の供給を受けていた治部レーヨンにも頼んで、生地の製造設備も作れる工場には併設する事にした。治部レーヨンから輸出しているとコストも高かった。治部レーヨンもアジアでの工場を作る事には積極的になった。治部レーヨンが生地を作る工場には、快適洋服とジブトラストも共同で出資し、そして生地を作り洋服まで作る工場と縫製工場だけの工場とに区別していった。洋太郎は俊子からの依頼を受けて、紡績の製造で定年退職して、暇そうな人たちに話をした。何人かは、短期間なら行ってもいいと言った。工場関係の設備更新については計画が纏まり、工場が休止し、製造設備を更新している間に機械と共同して技術講習会を開いた。治部レーヨンは独自に技術センターまで、併設した工場も作った。

一方、財団や施設の派遣団も、工場で働いている人の要望を中心に、実際の工場も見て、意見をまとめた。子供たちも集められる休憩所や、食堂、簡単な宿泊設備などを作った。井戸や簡易水道も作らないといけない所もあった。働いている人の要望には食堂が欲しいと云う意見が多かった。

聖子は、会社に貯まっていたお金だけでは足らず、ジブトラストに社会基盤や工場拡張のために、大きな増資も依頼した。聖子もお金を出した。二郎は、聖子からの貢がれた金で、新しい女を囲ったり、SMクラブに行ったり、競馬、競輪やパチンコなどには行く事はなかった。いくらぼんやりの二郎でも、それなりには知っていた。それに大きな金になっていったので、俊子と相談した。正子も、自分名義でも太郎の名義でも管理会社などへの出資もほぼ終わり、聖子も、遅れたものの、自分の名義も二郎名義でも管理会社などへの出資は終わりかけていた。二郎は、俊子に聖子の貢ぐ金を預けていた。俊子は聖子からのお金はジブトラストの有村に預けていた、必要な投資は、有村が聖子と相談して進めていた。貢いだ金がそのまま残っている事の不自然さなんかは、聖子は気にしなかった。貢いで脅して突いて貰えば、それでよかった。結局、快適洋服は、貯まっていた会社のお金に、かすりを取っていた聖子と配当を貰っていたジブトラストが再投資して、事業規模を大きくした形になった。それに聖子はそんなに出資比率には拘らなかった。利益の5パーセントを聖子が貰えればよかった。この時の増資により、聖子の出資比率は下がったが、十分な出資をジブトラストから受ける事になった。ジブトラストもお金があり、十分な投資をして、快適を支援できた。

食堂を作ったので、働いている人が食べたい食材や付近で用意できる食材などについても働いている人の意見を聞き、集めていった。食品などの情報も集まり、イチコプロダクツとも連絡を取って、現地で小さい食品会社を快適洋服とイチコプロダクツと共同で作る事にした。ジブトラストも増資に応じた。国内でも安いよスーパーも再投資されて、整備され、単に安いだけの店から脱却する工夫を始めていた。かなり大きな投資になったが、こうした投資は直ぐに結果になって現れた。アジアでの製品の品質は上がり、生産効率は上がり、海外での売上は上がった。結局利益が上がり、ジブトラストにも聖子にも還元された。ジブトラストも出資金の10パーセント以上の配当を取れば良かった。聖子がかすめ取るお金は、結局、ほとんど会社に再投資され、ジブトラストにも増資を求め、快適洋服にはお金が貯まり、工場を増やすことも出来た。聖子は、売りやすく、作りやすく、輸送賃も安く済むように、現地法人や他の資本も入れていった。現地に多くの金を残し、更に縫製工場は増えて、快適洋服は大きくなり、聖子もお金が入り、ジブトラストもお金が入った。そして快適洋服は大きくなり、配当も一割を続け、会社もお金が貯まり、更に外部資本も入り、調整増資して、更に会社は、大きくなり、売り上げも伸び、聖子への利益比例の5パーセントは多くなり、それが又、聖子の儀式が終わると会社の成長に使われることになった。そしてこれが繰り返され、快適洋服は成長していった。有村も今度は海外にも視察名目の息抜きに出かけ、製造工場の視察に行き、聖子だけでなく、香奈や正子にも報告するようになった。人をこき使って金を儲ける事をすれば、有村が、怒られたので、インフラの確保や厚生施設の確保に努め、それを聖子が儲ける為に、利用していった。聖子もたまには海外にいった。細かい儲け口を見つけて、人が増え、新しい仕事が増えた。聖子は長い期間などは考えなかった。少しでも利益が出ればよかった。聖子は、人をこき使って儲ける事もやりかねない人ではあったが、二郎にばれると有村が脅し、その脅しには屈する人だった。こうして快適洋服は、設備を充実しながら、多くの人の雇用を確保し、現地資本も入れ、独自に大きくなっていった。

太朗も二郎も自分の給料もそれなりに高かったが、さすがに正子や聖子に比べると、はるかに少なかった。正子や聖子は大金を稼ぎながら、仕事しかしないのに、自分たちだけが、自分の給料を自由に使って遊び回る事も出来なかった。それに管理会社の自分名義の株をいつまでも立て替えて貰っているのも、情けなかった。自分名義の株くらいは自分の金で払おうと思い、自分たちでこっそり貯めていた。太朗のいる商会では接待があった。会社の接待では結構遊んでいたが、一応仕事と云う事になっていた。二郎のいる紡績では、接待は、少なかった。

「快適洋服の工場のある所は、田舎なのね。大きな港の近くだから、大きな町だろうと思っていたのに、みんなびっくりしていたよ。港の安ホテルに泊まったけど、風呂もなくてシャワーだけだったらしい。飯もろくな物がないとこぼしていたよ。」
香奈「機械や紡績を辞めた人も大変だったみたいなの。聖子ちゃんが安く作れ、港にも近いと云うだけで選んだみたいなの。有村には言ったよ。名目とは云え、社長なんだから、しっかり見なさいと、お前の責任だよと言っているよ。とりあえず宿泊設備も作ったし、食堂も作ったよ。休憩所も作ったよ。増資も工場設備の更新と云う事で認めたよ。」
「行った奴に聞くと、大変な所ばっかりだよ。電気も水もない所もあるのよ。医者もいないし、日本みたいに看護婦や保育士を集める訳にはいかないね。」
香奈「そうなのよ。有村には、利益の中でなんか地域に貢献できる事を考えなさいと言ったけど、難しいみたいなのね。有村は、近くの病院と話して、工場の近くに医院の設備を作るとか言っていたけど。医者も少ないらしい。でも週に一回ぐらいはきてくれるらしいよ。井戸も探すとか言っていたよ。電気のない所には小さい発電装置も作ったのよ。聖子ちゃんはさすがだよ。イチコプロダクツと話して、農園や養殖などの食品会社も作ろうとしているよ。インフラにもお金かけたし、今度は少しでも他にも儲ける方法を考えると言っているらしいよ。」
「これだけ騒いでいて、二郎君は分からないの。」
香奈「分からないと云うより分からない振りをしているよ。聖子ちゃんは、有希さんの治部洋服の役員だし、洋太郎さんに頼んで、治部レーヨンの役員にもなったから、治部洋服や治部レーヨンの仕事だと思いたいのよ。安いよはスーパーを展開していると思っているの。有希さんや俊子さんは知っているけど、黙っているでしょう。洋太郎さんや洋治さんは笑っているだけだし、それに聖子ちゃんの対応には感心しているわよ。洋太郎さんも密かに退職している人に頼んでいるのよ。今後も技術の講習をするように。洋治さんもレーヨンに言っているのよ。生地の工場に参加するだけでなく、アジアでも技術センターを作る事はいいのかもしれないと薦めているのよ。」
「分からない振りってどうしてなの。」
香奈「二郎君は詳しく知ろうとしないだけかもしれないね。二郎君は、お金は俊子さんに預けているのよ。もう凄いお金になるのよ。利益の5パーセントだからね。紡績は自分だけの哲学で動いている会社だからね。洋之助おじさんでも変えられなかった社風だよ。治部レーヨンや安倍化学からはちゃんと報告受けている筈よ、親会社だから。現に水着なんかは、レーヨンの生地も使っているよ。でも洋服だけは、紡績だけの生地で作りたいのよ。」
「複雑だね。」
香奈「聖子ちゃんは、それも知っているのよ。結構気が強いのよ。」

二郎はぼんやりだが、世の中の動きに無関心と云う訳でもなかった、しかし紡績には、紡績の事情もあった。いいものだけを作る。良い生地で最高の縫製技術で作る。それが紡績の生きる道と信じている人が多かった。世の中の動きに対応するために化学が出来たし、レーヨンまで作った。そんな会社が対応していればいいと云う社風が徹底していた。人を育て、人を、社員を、社会を愛していく。それを貫いていく。洋次郎が長い間築いてきた。洋之助でさえ、変えられなかった社風である。洋太郎はそれに感応して、自分も変わり、洋太郎が社長になると紡績の社風は更に確固たるものになった。総務から紡績の役員になった二郎には、その事は十二分に分かっていた。単に安いだけのものを作ったり、時の流れに対応して、素早く対応する事の出来る会社ではなかった。出来ない事をせず、自分たちの道を歩いていく。洋之助も世の中に対応するために治部レーヨンを作っていた。紡績は、化学やレーヨンの大株主でもあり、多くの一族の会社の株を持ち、配当も貰っていたし、赤字でもなかった。上場もしなかった。治部洋服は社会の流れに対応して、紡績の糸や生地も使い、そしてレーヨンからも供給されて、洋服を作っていた。安倍紡績は、手堅く運営するしかなかった。紡績はレーヨンからは、機能性繊維については報告も受けていた。機能性のもつ生地を天然繊維で加工出来ないかと研究もしていた。

美佳と真智子はまだまだ元気で、二人で旅行などに行っていた。ただ二人とも高齢になり、由香や清香たちの子供や嫁は一緒に行くようにはしていた。

美佳「みんなうるさいのよ。もう歳だからと言って、うろうろすると危ないとかいって、清香や俊子さんなんかがついてくるの。」
真智子「私のところも同じだよ。真美や由香さんたちがうるさいのよ。でもみんなお祖母さんになったね。和子さんが元気だったら、もっと楽しいのにね。」
美佳「そうよね。でも恭助さんと一緒だから、それはそれでよかったのかもしれないわ。」
真智子「それはそうかもしれないね。」

和子と恭助の事故死以来、敷地内に住む、この三家族では亡くなる人がいなかった。美佳も真智子も不死身のおばあさんと思われていた。それはやっばり違っていた。やっぱり不死身ではなかった。やがてちょっとした風邪が原因で、大事を取るといって、二人とも真智子が勤めていた治部病院に検査入院していた。真智子は長年勤めていた治部病院に愛着があった。入院して10日後、突然、次々と亡くなってしまった。しかし美佳も真智子も100才を超えた時には、いきなり孫やひ孫たちに遺産を分ける遺言書を作っていた。真智子も美佳も資産は多くは現金になっていたが、それでも管理会社や事業会社の株や不動産の個人名義は残っていた。

香奈「大変だったね」
「お義母さんもそんなに悪いとは思わなかったけど、あっと云う間に亡くなってしまったよ。」
香奈「俊子さんや清香さんも同じ事を言っていたよ。やっぱり人間はいつかは死ぬんだよ。」
「それはそうだね。あれほどやっていたけど、やっぱり相当取られたよ。でも私たちの子供や孫たちに残してくれたよ。香奈さんの予定とは少し違ったね。相続税は、運用会社から少しお金を借りたようだよ。あれは助かったよ。」
香奈「ジブトラストはそんな役目もしていこうと思っているのよ。美佳おばさんは、聖子ちゃんと正子さんがいるから、みんなに少し貸していたみたいだよ。」
「でも直ぐに私たちの番からしれないね。」
香奈「そうだね、そんな歳になったね。でも神太朗君の予言ではみんな長生きすると言う事だよ。」
「神太朗君たちは、怖いね。特に神子ちゃんは、頭もよくて、綺麗だけど、なんか近寄りがたい感じがするよ。どんな人と結婚するんだろ。」
香奈「さすがに、自分の事はよく分からないらしいよ。でも神子ちゃんも普通の人と結婚すると神之助君が言ってるらしいよ。」

真智子のジブトラストへの出資枠は大きく、一旦返却され、相続された。代わりに恵たちは、子供たちが出資していくよう調整し、美佳の出資枠は、俊子が子供たちが出資していくように調整した。

遺伝子研究センターや製薬は、美佳と美智子の死に驚いた。二人とも、110才を超えていたが、まだ検診では元気だった。細胞は、老化もしていなかった。もっと生きる筈だと思っていた。人間の生命は無限ではないと云う意見と、敷地内の水を飲用している期間が長い世代はもっと生きる筈と云う意見もあった。製薬の関連病院を、あれほど薦めたのにと残念がる意見は多かった。

癌の新薬は、世界各地で販売し、ヨーロッパでも、各地でジブトラストと共同で現地の会社を買収して、売りやすくなり、癌の新薬としては画期的な売上を示した。特にフランスでは、販売ネットワークの充実の為に、ジブトラストとの共同出資で買収した製薬会社は、アメリカとは違い、販売ネットワークだけとは違い、規模も大きく、研究開発部門のスタッフも多く、安倍製薬は、新しい開発拠点である安部製薬フランスが出来た。それだけに高い買収金額だったが、この頃のジブトラストも一杯金もあり、どうせ必要ならと云って、規模の大きな会社をジブトラストが多く出資して買収した会社だった。ジフトラストの連中も、複数の役員を兼務していた。しかし漢方薬の栽培が不足する事も考えられた。世界各地で栽培地を探し出した。敷地内の真一郎の庭で試験的に栽培した薬草は、強い効果を示していたので、井戸水や地下水を調べると、アメリカ、フランス、オーストリア、ハンガリー、ブラジルなどで、製薬の作った抽出液水より弱く、敷地内の水より、もっと弱いが、効果のある水も発見された。いずれも山間部の辺鄙な所だった。製薬は早速栽培を開始した。アジアでもチベットの山で、効果のある水も見つかった。ただ効果を強く出る薬草を栽培するには、幾つかの漢方薬の抽出液を少し、薬草に時々与える必要があった。

聖子の快適洋服が、中南米で工場を作った。アメリカでは人件費が高すぎると思ったからだが、アメリカは広く、北米用のために、快適洋服としては珍しく中西部の山間部に、やっぱり、アメリカの縫製工場を作った。山間部なのに村もあった。土地は嘘のように安く、生地や繊維までも作れる広い土地にし、北米関係の倉庫も建てようと思って広大な土地を買った。ジブトレーディングは、東部とサンフランシスコにオフィスも持ち、倉庫もあった。中継地点にもなるし、アメリカとカナダの専用工場のつもりであった。アメリカやカナダで売れた衣料を補完的に作る工場になったが、東部と西部とは、売れ筋も違い、倉庫の建設は止めることになった。南米でも工場を、作る計画があった。南米の売り上げも伸びていたが、チリがいいかブラジルがいいいか会議をした。生地や繊維までも作る工場にはしないものの大きな土地を買っておこうと候補地を選んだ。快適も安いよも会社の方針とか大きな路線は、副社長の聖子が決めて、実際の運営とか、事業の運営規模、資金融通から出資の調整とかは、社長の有村が決めている不思議な会社だった。聖子は次々に儲かる事を探し、有村がそれをフォローしていた。

聖子「この間のアメリカの土地は、もの凄く広いらしいのね。どうしてなの。」
有村「聖子さんが、快適洋服の利益を二郎さんに知られたいないと言うから、快適洋服北西アメリカを、安いよが多く出資して作ったですよ。これで快適洋服は、アメリカに2社あります。快適洋服の子会社と安いよの子会社に分けたのです。山は、香奈オフィスの瑠璃さんが旧鉱山には興味があり、頼まれました。瑠璃さんが動くと騒がれるし、土地も安かったので思い切り広い土地を買っておきました。それに農園や牧場もあるし、日本に持ってくる予定はまだないですが、損でもないですよ。もういいでしょう。快適洋服が治部洋服より利益も上回っていても。有希さんなんてとっくに知ってますよ。税務署も関係ないし。」
聖子「まだ駄目よ。安いよの子会社と快適洋服とに分けておいてね。南米も快適洋服の子会社をチリに工場拡張の余地を持たして、縫製工場を作りましょう。港にも近いし、最低源のインフラもあるみたいね。ブラジルには、安いよの子会社として快適洋服ブラジルを作って、イチコプロダクトとも話して農園と養殖事業を進めしょうよ。インフラも少し整えてブラジルの状況を見ましょう。お金は大丈夫かしら。」
有村「快適にも安いよにもお金はありますが、ブルガリアにも工場を作る計画もあるし、スーパーも増やしたいし、ジブトラストからもどの程度増資できるか借り入れとするか会長と相談してみます。」
聖子「私は、商会などと相談するわ。現地の販売者にも声をかけてもらうわ。場合によっては一度見てくるわ。」
有村「聖子さん自身が、海外出張とは積極的ですね。」
聖子「私は、ブラジルはなんか大きくなりそうな気がするのよ。」

牛や豚などの遺伝子組み替えに基づく品種も、数世代経つと、肉質が落ちてくるために、子牛や子豚などの売上も上がってきた。数多くの農作物についても、遺伝子研究センターと製薬の子会社の種苗会社が、共同して特許を取った。多くは数世代で元に返る性格だった。2世代目が最も効果が高く、4世代目には効果が落ちる性格だった。初代がなぜ効果が弱いのかまだ判らなかったが、初代にある漢方薬の抽出残査を肥料に加え、得られた二世代目の種苗を製品として売り出す事にした。長い時間調べられたが、許可がおり、全世界で画期的な売上を示した。この農作物は、病気にもならず、収穫量も高かった。水産物にもこの漢方薬の抽出残査を混合した肥料を与えると、大きくなり、味もよくなった。化学の子会社の安倍肥料と共同して肥料を作り、それを有効に使った。聖子の快適洋服と共同で作ったイチコプロダクツの現地の食品会社や養殖場は増えていった。聖子は利益が上がれば、よかったので、売りやすい所に売っていった。製薬の薬草園も大きくなっていった。製薬と遺伝子研究センターは、製薬の抽出液の中の薬理物質の特定を努めていたが、未だに判らなかった。

ジブトラストも、一族と共に共同出資したり、それ以外の会社でも支援していった。そうした支援を受けたいくつかの非上場企業の中には、上場した会社もあった。保有する現金はそんなに多くは増えていかなかった。ビルなどの不動産も増えていったし、遺伝子研究センターも特許料も入ってきたが、経費も安くはなかった。莫大な初期投資も終わり、ジブトラストが負担する経費は少しずつ減ってきた。それでも赤字が出ていた。ヒトの遺伝子は膨大でその役割を解明するのは、大変な事業であった。相変わらず、正子は先物主体で稼いでいたし、海外のオフィスは株式相場や商品相場で稼いでいた。長期的に保有する株式は、香奈がコシロと一緒に選択して、保有していた。支援や出資の最後の判断も香奈がしていた。香奈は正子とは話もしていたが、正子は先物投資を静寂な環境下で取引しており、お香が焚かれている事もあった。正子と取引時間に話できるのは、香奈が至急の用事がある時ぐらいであった。

神の子たちのオーラは強まり、敷地内に住む一族すべてに影響を与えていくようになった。香奈も恵も俊子たちも、もう相続対策なんかの必要はなくなった。ジブトラストが一時的に、相続税を貸してくれる財政的な基盤がジブトラストに出来たし、みんな長生きしていたので、子供たちも稼いでいた。香奈や俊子そして恵たちの管理会社は、ほとんど子供たちの名義が多くなっていたし、管理会社はお金も一杯あった。長生きした良子もついに亡くなった。良子も体調を崩し、眠るように敷地内の家で亡くなった。海運会社の一人娘であり、安倍海運は、幾つもの管理会社が保有しており、子供たちもその会社に相当出資していた。相続人も多かったものの、相続税も多かった。良子は、運用でお金を持っており、父の鉄平も長生きして、孫たちに管理会社を割り振り、安倍海運の株も持たしていた。そのため、鉄平が亡くなった時も、鉄平がまだ持っていたほとんどの株はそのまま継承できていた。その後一族の上場した会社も大きくなっていた。資産も膨れ上がっていた。一之助たちの子供たちの中には、敷地外に住む子供たちの中では亡くなった人もいた。相続税はなんとか払えそうだったが、今後の事も考えて、継承したものも含めて、幾つの上場株は、ジブトラストに売って行く事にして、ジブトラストへの出資に切り替えていった。ジブトラストは、一代限りではあったが、多くの場合子供は望めば、同じ株の出資を認めてくれた。

香奈「良子さんも亡くなってしまった。もうトラストに遊びにも来てくれないわ。」
「これで私たちが一番の年寄りになってしまったね。香奈さんたちが一番の長老になったわね。でも、ジブトラストに、なんで株なんか売ったのかしら。税金もなんとかなったのでしょう。」
香奈「良子さんは、長く運用会社を支えてくれた人なの。だから良子さんの出資枠より少し多いジブトラストの株を、子供や孫たちに持って貰う事にしようと思っているの。一之助さんたちも、もう若くないし、今後の事を考えて、上場株を売って、少しジブトラストの株を持った方がいいと思ったみたいなの。海運株は非上場でも、良子さんは、上場している株も結構持っていたの。良子さんが、相続する時も大変だったのよ。みんなの出資枠も少し拡大してくわよ。今回は特に二十歳じゃなくても私たちの孫まで広げていくわよ。」
「それはいいね。みんなも喜ぶわよ。孫も大きくなって、結婚しそうな人もいるわ。」

一族の中には、同様に考える人もいて、一族の会社で上場株をある程度ジブトラストに売り、ジブトラストの株を持ちたいと思う人もいた。香奈はもう一度出資枠の枠を広げ、出資比率を調整して、上場株も少し買い取っていった。ジブトラストの出資金も300億になり、保有する上場株も増えていった。香奈は現金の保留を増やそうとしていたが、上場株の保有も増え、新宿オフィスも支援する会社も増えていたので、現金だけが増加する事はなかった。それでも現金の保有は少しずつ増えていった。

ジブトラストは順調に発展していった。年間利益は八千億から一兆の間を維持していた。上場株や非上場株の配当も増え、赤ちゃんスキ不動産も好調に推移して、独自に地方都市にもビルを建て、託児所も増やしていった。一方ジブトラストもビルを建てていった。託児所や乳幼児施設を増やしていったので、地方都市毎に整理して行くようになった。小都市には赤ちゃんスキ不動産が小さなビルを建て比較的大きな中都市には、ジブトラストが中規模のビルを建て、赤ちゃんスキ不動産はそれを囲むように、小さいビルを建て、賃貸住宅のビルと託児所を建てるようになった。

ただ経済は循環しながら、進んでいくので、世界経済も低迷する時期に入ろうとしていた。もう昔のように大きな国が支配する事は出来ず、世界は、アジア、ヨーロッパ、アメリカ大陸の三極に分離していた。南米や中東そしてアフリカはまだまだその存在は弱かった。このような多極構造の経済は、好調な時は相互に刺激し、成長は加速するが、一国が支えるだけではなく、複数の国が範囲となるために、弱い国が、どうして問題になった。ヨーロッパは、時々小国の問題で、ユーロは揺れていた。アメリカも北米や中南米も含めた経済共同体の構想もあったが、そんなにうまく行かず、アメリカの影響力が強いグループでしかなかった。アジアは共通の通貨は結局持てなかった。中国とベトナムは共産主義と云う名の国家資本主義を堅持していた。ただ決済上の仮想単位であるアジア単位を持つ事になった。円も元もドイツがマルクを捨て、ユーロを選択した決断は持たなかったし、地域格差も大きかった。そのため、有名無実のアジア単位となり、ほとんど使用されなかった。ただ中国は、鈍化させながらも成長は持続していた。中国は足手まといにかるアジア共同体には乗り気ではなかった。ただアジアの大国意識は強く、アジア単位には、反対しなかった。もう一つのアジアの経済的な大国は、そもそも自分の国がアジアにあるとも思っていなかった。海の離れた遠く国の一州の感覚しかない人が多かった。頼りに思うその国は、中国人と自分の国の人間でさえ、区別できない人が多いと云う事すら、考えないようにしていた。初めて原爆を自国に落とした国が、自分たちの安全保障を本気でしてくれると思っている人も多かった。ヨーロッパが揺らぎ、アメリカも揺らぐと、バラバラのアジアは一層大きく揺らいでいた。そのためヨーロッパの小国の問題でも、アメリカの聞いた事のない銀行の倒産でも、大きく騒ぐと、みんなが揺れた。何か対策を取っても、誰も判らないくせに、それは抜本的な対策ではないと云う言葉が、変に説得力を持った。そんな対策があれば誰も苦労しないと思う人は少なかった。そして対策への信用度は落ち、何となく不況になり、低迷が低迷を呼ぶ回路に入っていた。

日本も世界も、経済は低迷の経路に入り、株価も少しずつ下がり、さすがの正子の先物も、運用利益が少しずつ減り、株式も良子プログラムを売りベースに替えたものの、大きな利益も上がらなくなってきた。配当は保有する株式が増えたものの、配当率が落ちてきた。現金での保留を増やしていたが、ジブトラストとしても少しずつ、配当を減らしていた。香奈は正子に少しのんびりするように言った。今まで、神や鬼のように稼いでいたので、充電も必要だった。

香奈「正子さんも今まで、頑張りすぎたのよ。少し休みながら、のんびりすればいいのよ。動かない時には、じっくりするのよ。」
正子「でも少しでも利益を上げていかないと。保有株も目減りしていきますし。」
香奈「上がる時には上がるけど、そんなバタバタしても疲れるだけよ。現金の保留もあるし、ゆっくり構えるのよ。」
正子「そうですね。相場には無理は禁物ですね。ゆっくりしていきます。」

香奈は、中国への投資を検討していたが、ふんぎりがつかなかった。瑠璃に調査に行かせたが、中華料理は美味しかったとか上海の高層ビルからの風景は良かったよと言うだけで、役に立たなかった。瑠璃はイギリスが長かったので、規制の強い国には、抵抗があった。ハゲタカの瑠璃は、ハゲタカ相手やボッタクリする相手との交渉はあまり乗り気ではなかった。類は友を呼ばず、反発していた。そして機械を輸出しても、直ぐにガラクタの機械を紛らわしい名前で売る国にも、抵抗もあった。香奈の躊躇もそこにあった。香奈もアメリカで勉強し、アメリカの底力を信じていた。香奈自身もそれほど中国は好きとは言えなかった。でもフランス人もドイツをそんなに好きでないのだ。近い国の近親憎悪的な感情は別にして、広大な領土と資源溢れる国土そして優秀で狡いとも思える指導者に率いられた国が、発展しない訳はないとも思っていた。そこが瑠璃とは違っていた。同じアジアだから仲良くというだけでもなく、中国の発展の可能性も認めない訳にはいかないと香奈は思っていた。

有希は、そんな事には、無頓着に、中国に合弁の会社の縫製工場を作っていた。紡績は躊躇したので、洋服事業単体でさっさと始め、もう初期投資は回収してしまった。聖子は自分の仕事が増えてきたが、有希の合弁会社がこれ以上できませんとか云って、くそ高い投資を要求してきたので、大人しい聖子は、別のルートで調査して、もっと安く作ってくれるベトナム、タイ、カンボジアそしてインドネシアに、子会社である快適洋服を作っていた。これにはジブトラストも出資していた。有希も聖子も、極めて短期的に動いていた。可能性とか将来性とかは考えず、近い将来に利益になればよかった。投資も少なくしていた。

ただ聖子は、途中から、生活基盤をも含む投資をしていくようになった。聖子の会社が作った小さい発電所も大きくなり、井戸も何本も掘ったり、水道にもなった所もあった。会社の休憩所が託児所のようになり、保育士のような人も雇いだし、食堂は付近の人にも食事を提供したりするようになった。医院も付近の人が来るようになった。有村は、聖子には、二郎にばれると脅かしただけだったが、聖子は利益が減るとぼやきながらも、有村の言う通りにした、しかし聖子は転んでも金を掴みたい性格だったので、縫製工場以外にも儲けようとして、食品会社をイチコプロダクツと共同で、そして現地資本も入れて作り出していた。そして他にも、儲けるために何か出来ないか検討していた。聖子はとても善意の人とは呼べないものの、結局、快適洋服の工場付近では、生活のためのインフラは、徐々に整いだし、働き先も出来ていた。そして快適洋服は、始めはジブトレーディングで北米に売ったが、商会も興味を示し、その他の地域へも売っていた。聖子は、もっと儲けようと思い、会社内で、社員割引と言う名前の販売も行った。現地では、まだ快適洋服の製品を買える程の給料ではなかったので、始めあまり売れなかった。聖子は儲けないと気が済まない性格でもあり、売れないと聞くと、理由を聞くように指示した。そして現地の人の所得と製品の価格とを聞いて、現地の人でも買える製品について考えるように指示していた。それが結局、現地でも売れる製品を考える切っ掛けだった。すべては聖子が、儲けて、二郎に貢ぎ、突かれたい一心で考えた事だった。

やがて聖子は生産地近くで消費した方が儲けやすいと思い出した。一見すると高い所得の地域で売った方が利益はでるが、いつも儲けるためには、常に需要の動向の調査が必要で、高い金を出して調査するよりも、消費地の近くなら、そんなに金もかけず売れるものも作っていける。それに現地の販売に慣れている現地資本も入れれば、もっと利益がコンスタントに上がると考えた。聖子は、時間をかけて、大きく儲ける事は考えなかった。いつも二郎に貢ぐ金が欲しかった。別に日本で売る必要もなく、むしろ海外で売った方が良かった。海外に頻繁に出かけるのも避けた。二郎に突いて貰う時間が減る。こうして生産地で独自に製品を考える、販売地で需要を考える体制を作っていった。快適洋服はこうして工場が増え、販売も増えていった。聖子は、利益の5パーセントを貰えばよかった。トラストから派遣の有村も、出資金の10パーセントが配当としてでれば面目がたった。快適は大きくなり、出資金の10%は、利益換算では5%以下になっていた。今は、聖子のかすめ取ったお金もほとんど再投資されるので、結局利益の多くのお金は再投資された。働く人の福利厚生や付近の子供たちのための出費には、ジブトラストでは、寛容であったし、むしろうるさかった。現地にも金を残し、更に働く場所を増やし、現地の社会基盤を充実していく姿勢は、聖子や有村の思いとは別にやがて評価され、快適洋服は大きくなっていった。景気の変動にもそんなに影響も受けなかった。むしろ単価が安いのでかえって売り上げも伸び、利益も上がった。

その後香奈が中国への本格的な投資を躊躇している時に、本当に景気後退期に入った。

世界経済や日本経済も本格的に低迷の時代に入り、株価も緩やかに下降し、株式相場も底を這うような状態に入った。株式市場は、時々大きな下落したが、少しずつ戻ると言う状態だった。国内のみならず、世界でも景気後退期に入っていた。企業への支援も行っていたが、大きな利益もない状態が続いた。上場株式評価損も出てきた。正子は先物で、ある程度利益を出していたが、値動き自体が少なくなり、全体としては大きな利益を上げられない状態が続いた。資本金はまだ300億前後だったし、保有していた現金は、二兆になっていた。しかし、上場株式保有評価額は、一時、1兆五千億を超えていたが、一兆を切った。非上場は八千億程度で商品相場や先物で五千億程度運用し、株式用として二千億程度用意していた。ついに年間利益は段々落ちて二千億程度まで落ちた、ジブトラストの受け取るビルからの収入や株式からの配当などを集めると、五百億程度あったが、香奈は10年程度低迷すると考え、不動産投資や企業支援を優先して、配当を少しずつ下げ、出資額まで引き下げていった。香奈は、ジブトラストの直属のビルや企業からの利益と保有する株式からの配当で、ジブトラストの恒常的な経費、つまりジブトラストからの配当や財団への寄付などをカバーできればいいと考えていたが、財団の活動も活発になり、まだ少し足りなかった。それに、香奈たちの世代も高齢となり、個人名義や管理会社の株や資産をジブトラストが、購入する必要も考えられた。香奈はそれにも備えようとしていた。財団も基金も取り崩さないように、利益の5%を拘らず、ジブトラストは寄付をしていた。まだ赤ちゃんスキ不動産も少しだったが、寄付もしながら、配当も出せていた。

中国市場も低迷していた。香奈は、この機会に中国への投資を考えるために、香奈自身がシンガホールのオフィスの人と中国に行った。コシロも歳だったが、まだまだ元気だった。香奈は、大きく株価が落ちた鉄鋼とかエネルギーや資源などの会社に、投資したかった。香奈はこっそり観察してと思っていたが、シンガポールオフィスの人が大袈裟に、中国政府に、市場活性化のための投資とか適当に法螺をふいたので、中国は歓待してくれてた。中国政府は、上海に為替関係を含めたオフィスを作る事も認めたし、中国企業への投資も別枠を用意してくれた。香奈は、鉄鋼とかエネルギーや資源などの会社には、二千億程度の投資を考えていた。香奈は、自分の仕事がそうだった事もあるが、発展する国では、基盤産業が伸びると思っていた。香奈は、日本とドイツの機械の実質的な大株主でもあり、日本やドイツの機械の技術導入も中国政府は期待していた。香奈は、まだ上場していない、金の鉱山を持つ資源会社の株も欲しかった。香奈は、機械の会社では既に役員も辞めて影響力もないと言ったが、狐と狸の話し合いの末、ジブトラストが中国政府の薦める機械会社に出資し、香奈が、日本の機械が、その中国の機械会社の一定の株式を持ち、中国の工場で特定の機械の製造をするように働きかける事で、合意した。その代わりに中国政府は、ジブトラストが金鉱山を含む多数の鉱山を持つ鉱山会社に、特例として相当の株の出資を持つ事を認めた。銀行も含めて、結局四千億程度の出資となった。保有する現金や株式用の枠に比べると大きな投資だったが、香奈は即断した。持ち帰って相談してとは言わなかった。これが中国政府の香奈への信任を高めた、香奈は、出資はドル、円、ユーロの3つの通貨の混合で、上海のジブトラストのオフィスで、両替したいと言った。そして即時に買ってもいいと言った。香奈は、今までも低迷期や暴落時に、果敢に買って、大きく儲けてきた。時間はかかる事もあるが、それが結局儲ける事に繋がるとも思っていた。即時購入は、市場活性効果があり、中国政府は、ジブトラストに両替を専門に行う銀行を特例として認め、中国政府の指定する銀行も出資して、為替専門のジブ上海銀行が出来た。中国は、人民元を基本的に国内だけの通貨にして、投機筋の玩具になる事は嫌った。その代わりに中国は、他の国の通貨を玩具にする事は平気だった。ジブ上海銀行は、やがて中国銀行が為替介入の道具としても使ってくれるようになった。

香奈は約束通り、日本の機械に、中国の機械会社への資本参加を働きかけ、最新鋭機種を含めて、一部の機械を中国の機械会社で作るように働きかけた。泥棒に追い銭との批判もあったが、海外担当の勝は、香奈の薦めと云うよりも、実際に中国の機械会社を見学して、その技術レベルにも一定の評価を持っていた。それに中国の技術担当ともよく話し合った。技術屋同士には言葉の壁は、思っていたよりも少ない事が多い。今の最新鋭は、何年後には普及型に替わるとも思っていた。そして、資本参加と一部の機械を中国の会社で製造を委託する事が直ぐに決まった。そして、中国の機械会社と日本の機械会社は、製造と研究スタッフが、相互に人員を派遣し合う事まで決めた。中国政府の某高官は、単に技術だけをかすめ取ろうとも思っていたが、日本の機械は真剣に技術交流を始めた。日本の機械では、中国の機械会社のレベルを馬鹿にする人もいたが、中国から来た人は、優秀だったし、中国の工場の製造レベルも決して低くはなかった。日本の機械も得る所は多かった。やがて、日本と中国の機械会社は、機械を共同開発し、他の国に輸出する事もしていくようになった。中国の機械会社の技術力は上がったが、日本の機械の技術力も上がった。学ぶ意欲のある人には学べる事が多いのである。得意な機械を、それぞれ日本と中国で分け合うような事も起こった。勝は、香奈とは違い狸と狐の化かし合いをする事は出来ないが、人と技術を信じて、国際担当を勤めていた。香奈は、技術を中国にあげろとは言わなかった。伸びゆく市場での動向と技術力の伸びを肌で感じる事は、表面的な技術の断片を与える事よりも得る所は多いのではないかと言っていた。それは香奈と勝との違いでもあった。

ジブトラストが、豊富に持っていた筈の現金も、上場株を購入したり、非上場の会社に出資したり、中国株などを購入していったので、半分程度に減ってしまった。

「この頃、運用会社からの配当も減って、ついに出資金程度の配当になった。臨時配当も出ないし、やっばり調子悪いのかね。」
香奈 「今は、経済は低迷し、株式も低迷しているんだよ。普通の投信は軒並み赤字だよ。それに恵の孫まで入っているんだよ。それでも出資金程度の配当をだしているのが、凄いと思って欲しいね。恵も、出資金は18億あるだろう。今はジブトラストも内容を充実させ、投資をしている方がいいんだよ。ジブトラストは今や、10以上の直属のビルも持っているんだよ。去年も2つのビルを建てただろう。」
「そう言えば、そうかもしれないね。赤ちゃんスキ不動産やその他のビルからの寄付もそんなに減ってないし、運用会社からの寄付も財団の状況に併せて寄付をしてくれるよ。財団も施設も今まで通り活動を続けていけるよ。友貴なんか託児料を2時間100円にしようと言っているよ。パチンコする間でもどうぞとかいいだしたよ。しかも長時間割引もつけるとか云って、ネットカフェー並みだよ。」、
香奈 「あんまり無茶をしないで欲しいね。正子さんは普通の人ではないよ。正子さんみたいな人は、そう出ないよ。」

洋太郎は会長になり、時々会社に行く程度であった。二郎は紡績の社長になっており、太朗は商会の役員になった。そして悦子はエコノミーホテルの数を増やしていき、その副社長であり、高級ホテルの役員にもなった。ただ俊子が元気で敷地内のホテル運営本部や各ホテルにはよく行っていたので、ほとんど高級ホテルの運営には、口を出さず、一族以外の人のベテランが社長となり、俊子の意向を受けて運営していた。結局高級ホテルは、福岡にホテルを作った後は、新しいホテルは作らなかった。箱根と軽井沢は、建物が古くなったので、別に新しい建物を作った。古い建物は壊そうとしたが、建物はまだ丈夫であり、構造的にも問題なく、人気もあったので、補修して使う事になった。結局増設した事になった。付近に観光施設やゴルフ場を作ったが、保留金も貯まる一方であった。ホテルの管理会社は、改築すると言って、正子たちから増資をさせていた。それを改築準備金として貯めていた。すべてのホテルの改築費用も貯まり、やがてそれが増えていった。高級ホテルも、景気低迷期には、客席稼働率も70パーセント前後まで落ちた。

高級ホテルである治部ホテルも、低迷期に、大阪を始めとして、東京の本館、千葉を改築する計画を立てた。東京の本館は、まだ予約が多く、調整が難しかった。それに昔風の建築物を懐かしむ意見も多く、構造も頑丈だった。仕方なしに付近のビルの売り物が出てくるまで待ち、結局、中規模のホテルを新設する事になった。念のため、土地代金を追加するために、追加出資して貰う事にした。正子、聖子、悦子、禎子のお金も貯まり、正子たちは、神太朗などの自分の子供たちの名義で、ホテルの管理会社に増資していく事になった。

大阪は、稼働率も低く、抵抗も少なく、今までより少し大きくして、余裕資金で先行して早く建築した。同じく余裕資金で、千葉は小さなホテルで、今まで所有し、庭として使っていた所に同規模のホテルを建てた。そしてやっばり昔の建物が頑丈で、懐かしむ意見が多く、増設になってしまった。漸くすると、東京ではやっと付近の土地が見つかり、建築が始まった。建築する時には、保留金も貯まり、ホテルを豪華にして中層のホテルを建てたが、建築完成後、相当お金が残った。そしてまた次ぎの改築費用に貯めていった。一族の銀行から借りたお金も、馬鹿な支店長が大きな顔をして、横柄な口調で俊子に言ったので、俊子は怒って全額返してしまった。それから又、完全無借金会社となっていた。

景気低迷期にも拘わらず、エコノミーホテルは、毎年少しずつ、地方都市に増やしていった。悦子が育てていた人もなんとか間に合った。土地の値段も建築費も安かった。運用会社として貸した金は、ある程度経つと、結局増資と云う形で、運用会社は大きな株を持つことになった。ジブトラストも注意深く、東京と各地方都市に直属の商業ビルや複合ビルを作り、時にはそのビルの中にオフィスを作り、地方の優良企業を探し出した。託児所だけとか、幼稚園なども作りながら、財団も相談室などを作っていった。エコノミーホテルも20でひとまずホテルの充実と財政的な充実に努めた。それぞれの地方都市には、ジブトラストのビルも、エコノミーホテルや赤ちゃんスキ不動産の賃貸住宅も建っていたので、ニコニコサービスは、オフィスサービスやハウスクリーニングなどを請け負い、サービス拠点も増えて大きくなった。ジブホーム不動産は、治部サービスのハウスクリーニングを取り入れた。秘密性の高い真一郎の研究所やジブトラストの本社のある建物の一部は、出来なかった。

有希は、治部洋服としては、結局中級品以下の洋服は作らなかった。治部洋服の直営店も名古屋、大阪、福岡までは、店舗を増やしていたが、それ以上は、北日本の中都市に数店出しただけだった。幾つかのデザイナーブランド、美佳ブランド、新しく人気の出た平太郎ブランド、人気モデルのキヨコブランドなどを複数持って、商売していた。聖子の着ていた妊婦服も普通の時でも着られるようにして、聖子ブランドの婦人服になった。ヨーロッパの高級ブランドが後継者難で売りに出された時に、ジブトラストと共に出資して、買い取り、治部洋服とは、別個に独自の商売をしていた。グッズなども直営店では置いた。有希が手がけた、幾つかの小物は、やがて多くの販売店で販売するようになり、ジブトレーディングが国内や海外でも販売していった。ジブトレーディングは、当初、治部洋服の輸出を目的だったが、快適洋服の比重が多くなった。聖子の「安いよ」は、国内ではディスカウントスーパーチェーンのようになった。快適洋服は世界に向けて、製品を作り、「安いよ」の子会社である事は知らない人が多かった。快適洋服は、やがて、婦人服や男性用の洋服以外にも進出し、聖子は生活基盤まで投資したからと言って、快適洋服の工場付近で儲けられる製品を手作業や簡単な装置で作るようになり、小物やグッズまで、軽工業まで広がり、現地の人も買えるようにと低価格路線を走り、色々な生活雑貨まで手がけるようになった。

紡績は結局、品質が低い海外の会社への出資は拒否した。高品質が売り物として、日本の紡績製の生地を使いましたと云うフレーズも出来た。日本の紡績の裁縫や縫製は世界的にも高い評価だったので、世界各地の高級素材も使って、新しい高級品も作り出していた。決して大きくはならなかったが、高品質だけを売り物に頑迷なままに路線を堅持していた。

化学は発光ダイオード、化学繊維や医療品用品そして化学素材そして肥料なども展開していき、大きな企業群を展開していくようになっていた。紡績との合弁の治部レーヨンは大きくなり、紡績よりも大きな会社になった。何回も上場の話があり、紡績が上場には反対し、流れていた。

聖子は洋太郎に頼み、治部レーヨンの役員になっていた。景気が回復すると単に安いだけでは、売れなくなるかもしれない。特徴のある衣料品、洋服が欲しいと思った。役員会で、高機能素材に取り組むように、か弱く言っていた。役員会に出た研究や開発の人には、脅されたと思うほど、か弱かった。しわにならない服、虫も食わない服、丸めても直ぐに着られる服そして洗濯で洗える服などを要望していた。聖子は綺麗で素直な性格だったので、加工は二段階工程以上にして、出来れば最終工程で使う加工剤を特殊にして欲しいと言った。みんな不思議がった。簡単な工程で一貫して生地を作れば、コストも簡単なのに。聖子は色ボケで家事もせず稼ぐだけだったので、若くなった。この姉ちゃんは何も判らない姉ちゃんだと馬鹿にしていた。治部聖子は、快適洋服の代表だし、治部洋服の役員でもあった。紡績の社長である二郎の奥さんでもあったが、それを忘れるほど若かった。しかしやっぱり忘れない人もいて、仕方なしに、複数工程にして、使用する加工剤に工夫を凝らした。聖子は尚も注文をつけた。高温多湿でも大丈夫なようにして欲しい。みんな文句をブーブーいいながら、取りあえず要望に応えた。始めはわざわざ複雑な工程で、化学繊維を作り、化学繊維を入れた生地を作った。それをアジアの縫製工場まで持っていき、洋服を作ると云う無駄な事もしていた。それをアメリカやヨーロッパそしてアジア、日本で売り出していった。あの姉ちゃんが余分な事を言わないと、もっと簡単だったし、低コストで作れると文句を言っていた。しかし複雑な工程としたために、複雑な特徴も持つ生地もできた。水を弾き、しわにならず、洗濯もしやすい生地も出来た。

アジアなどの快適洋服の工場で、生地を作れる工場では、幾つか増設して、化学繊維入りの生地を作るようになった。特許も複雑で、工程も複雑だった。それに加工剤も独自だった。その上、聖子は世界各地でレーヨンの研究センターまで作るように進言した。そして新しい機能が増える度に加工剤は複雑になり、工程も複雑になっていった。快適洋服は一見して、無駄とも思える複雑な工程を持つ生地製造工場を持つようになった。治部レーヨンも出資した。少しずつ世界の各地で作り出した。簡単な工程ではなく、社員は覚えるのも大変だった。覚えたら、直ぐに辞める人もいるし、いつも講習会が必要だった。そして工程は何度も変わっていった。そして世界各地で色々な需要に応じて、変化する工程になり、色々な生地で洋服や衣料品を作り、世界各地で販売するようになった。聖子には、ワンパターンで巨大な設備を作るよりも、消費地に近い所で、需要に応じて、変更できる工程が欲しかった。そして近い地域で分散化できれば、もっと良かった。大きな設備投資はしないものの、色々な地域で工場が出来るようになった。聖子は秘密保持なんてせこい事も考えないではなかったが、やがては各地で需要に応じて、考えていく事が出来ると思っていった。快適洋服は、結局安い洋服や衣料品だけではなく、各地の需要や要求に併せて、機能性の洋服や衣料品を作るようになった。快適洋服は、単なる安価な服だけを作る会社ではなくなり、様々機能を持つ服も作る会社になった。治部洋服用の機能性洋服まで作るようになった。販売ルートも製造工場毎に違っていた。地域毎に機能を変えて、服の生地を変えた積もりだったが、アメリカ用に作った服が日本で売れたり、アジア用がアメリカで売れたりした。安かろう悪かろうと言われていた時もあった快適洋服は、機能的な衣料を作る会社に変わっていた。快適洋服の世界戦略と云う本まででたが、毎月、常時儲けて、聖子が二郎を脅し、突かれたいと考えたからだと知る人は少なかった。

香奈「聖子ちゃんの快適洋服は、そんなに安くはないらしいよ。この頃は、結構いい値段で売っているものもあるらしい。」
「施設でも結構増えているよ。洗濯のしやすい服とか汗がかきにくい服とか涼しい服とか汚れが付きにくい服とか色々あるらしいよ。私は木綿が一番いいと思うけどね。」
香奈「二郎君みたいな事を言うのね。でも世界の色んな所で作っているらしいよ。消費地に近い所が、本当に需要が分かるとか言っているようよ。」
「聖子ちゃんの貢ぎ病は治ったの。二郎君は怒らないの。」
香奈「聖子ちゃんの貢ぎ病は悪化しているよ。凄い額になっているよ、貢いでいる金額は。二郎君は知らない顔をして聖子ちゃんを突いているよ。複雑な経路で売っているでしょう。日本で売っているのは、ほんの少しらしいよ。各地で応用して少し変えているらしいよ。ジブトレーディングも売っているし、商会でも売っているのよ。他にも販売ルートもあるみたいなの。南米でも東欧でも快適洋服の子会社を作っているのよ。」
「運用会社ではすべて把握しているのでしょう。社長は有村さんと云う運用会社の管理の人でしょう。」
香奈「有村も社長のくせに、名義貸しの社長だから、詳しくは知らないと言うのよ。有村がこそこそ動いて処理しているのに、説明するのが、邪魔くさいだけのくせにね。聖子ちゃんは、合弁会社を作っていくから、複雑らしいよ。有村は僕は名義貸しだからと言って開き直っているわ。でも快適洋服はもう治部洋服よりは、利益もずっと多いみたいよ。売り上げはずっと前に多くなっていたけど。利益も多いと思うわ。決算書ではまだ少ないようになっているけど、5割以下の出資は省いているのよ。」
「それは大した事はないでしょう。」
香奈「それがね、ややこしい経由で、安いよの関係会社も出資させているのよ。安いよの利益は高いもの。ただ小売もあるから、複雑なのね。販売のために外部資本も入れているよ。聖子ちゃんは、こんな事が好きなのね。二郎君対策らしいよ。一応知らない事になっているからね。有希さんは、商会からの資料で知ってるわよ。世界で売ってるもの。利益率が上がれば当然と言ってるわ。機能性の服が利益率高いのね。」
「あの病気もなかなかだね。聖子ちゃんも現金主義らしいね。」
香奈「有希さんも、禎子ちゃんの妊娠まで、長い間、貢ぎ病だったからね。まだ現金主義は治らないけど。」
「世界的規模の貢ぎ病になったね。」
香奈「初めは、ジブトラストの各現地オフィスで立て替えて、日本に送っていたから、面倒くさかったのよ。今は、有村が、安いよが、ジブから金を借りる事にしているわよ。だって、最後には、ジブトラストで預かっているもの。」
「聖子ちゃんの儀式のために、現金を用意するだけなの。」
香奈「そうよ。有村がお金を用意して、治部洋服や治部レーヨンなんかの関係会社からもお金を集めたものを加えて、持っていって、翌日又預かりに行っているよ。」
「大変だね。」
香奈「お金の勘定を2日間するのよ。高速の機械を買ったわよ。有希さんからも預かるからね。」
「運用会社にお金を預けるのも、便利かも知れないわ。私も預かって貰おう。」
香奈「止めてね。面倒なの。恵には、要る時にはお金貸すわよ。」
「でも必要かも知れないと思って用意しても要らない時もあるし。運用会社は24時間、人もいるし、大きな金庫もあるでしょう。」
香奈「私も預けているから、いいけどね。」
「なんだよ。私も、配当も一部預かって貰おう。」
香奈「そんな人も増えてきたわ。でも聖子ちゃんみたいに二度手間は止めてね。」

聖子の「安いよ」も、快適洋服も大きくなった。イチコプロダクツやジブトラストとの合弁で、世界各地で食品会社や生活雑貨も作っていた。聖子は利益の5バーセントを現金で貰う事に固執していた。聖子も40代になっていたが、貢ぎ病は激しくなっていた。さすがに、経理上の問題もあり、月々に変動する利益比例の給料は難しくなっていた。給料日と聖子が決めた日には、安いよからもお金が入り、快適洋服からのお金が入り、治部洋服そして治部レーヨンの役員給与まで、みんな二郎に貢いでいた。有村がジブトラストから、大きなケースに入れて、二郎と聖子の寝室に運びこんでいた。

聖子「二郎さん、今月は4億になりました。一杯突いてね。バックでも入れてね。私を壊すつもりで、突き続けてね。壊れるとか逝くとか私が言っても止めないでね。」
二郎「でもこの間も泡ふいて、痙攣していたよ。やっばり限度があるよ。」
聖子「あの時が最高なのよ。今日も頑張って突いてね。」
二郎「分かったよ。頑張るよ。」

二郎は、聖子を突き続け、聖子の希望通り、お尻を突きださせ、バックからも思い切り、突き続けた。二郎も年を取っていたが、あれはすこぶる元気で、大きく硬くそして長かった。聖子は30分間突きかれて、意識が薄れてきた。腰やお腹の筋肉も小刻みに痙攣していた。膣は燃えるように熱かった。二郎はまだ発射しなかった。尚も突き続けて、聖子はついに泡をふきだしていた。二郎にも限界が来た。大きく硬く長いものを、根本まで差し込み、ハエを落としたと言われるほど元気な二郎の精液が聖子の中で発射された。聖子の子宮には直撃弾が当たり、聖子の意識は消えて、膣から火が出て、燃えていった。聖子はしばらく意識が戻らなかった。そして意識が戻っても、身体の痙攣は止まらず、身体は動けなかった。聖子は二郎を脅し、むりやり自分の口の中に入れさして、舐めて、綺麗して幸福感に包まれて、眠りに落ちた。二郎は聖子を抱きながら、激しい疲労を感じて、布団を被って寝た。これで二郎の月に一度の激しい労働は終わった。聖子は、翌日の朝には元気を取り戻し、二郎のものをしゃぶり、二郎を起こし、二郎にデザートを要求した。

二郎「聖子、昨晩あんなに突いたでしょう。もうしゃぶるのは止めなさい。朝だよ。」
聖子「まだ6時よ、もう一度軽く突いてよ。二郎さんのものも元気になっているわ。私が上で動くからいいでしょう。」

二郎は、しつこい聖子に少し腹が立ち、上で動く聖子の乳房も強く掴む、二郎も激しく動いた。聖子は簡単に逝って、崩れ落ち、二郎は、無慈悲にもバックからも激しく突いて、聖子は何回も逝って、最後に二郎から少し発射され、デザートは終わった。聖子は意識が薄くなりながら、二郎のものを舐め、綺麗にして、ゆっくり味わっていた。聖子は、スッキリとした表情になり、洗面して、ご飯も一杯食べて。又稼ぐために、安いよの本社に働きにいった。

二郎は腰も重いし、大変だった。漸くご飯も食べ、俊子にお金の処理を頼み、会社に行った。
二郎「お母さん、聖子からのお金又お願いします。」
俊子「もういい加減にしなさい。いつまで続けるのよ、子供たちも結婚するような年なのよ、第一、面倒なのよ。一応ジブトラストに預かってもらってるのよ。みんな大変なのよ。現金を集めて持ってくるのは。」
二郎「有希伯母さんもまだしているでしょう。治らないんだよ。」
俊子「有希さんはもう自分でお金を管理しているわよ。自分でジブトラストに預けるように手配しているわよ。その中から、病院にも寄付しているわよ。現金も家に寄るだけで、直ぐにジブトラストに預けているわよ。」
二郎「聖子はまだ駄目みたいだよ。兎も角お願いしますね。今日は僕も忙しい。」

俊子は、ジブトラストの管理の人が出勤するまで、家でゆっくりし、お金を取りに来て貰うように連絡しなければならなかった。有希の現金主義もいい年なのに、治らず、ジブトラストにお金を預けていた。ジブトラストには大きな金庫があり、現金も保管していたので、聖子分、有希分も一緒に保管していた。もう慣れたもので、俊子が連絡するまでもなく、今日も預かりましょうかと言って、車でやってきた。
有村「お金、いつものように預かりましょうか?」
俊子「お願いしますね。」
有村「来月は、ジブトラストの配当も出ます。快適洋服と安いよも来月には配当を出します。来月はもっと多いですよ。」
俊子「もういい加減にしてほしいわね。10年間以上同じ事をしているのよ。有村さんも元気ね。」
有村「僕もここが長くなって、いつまでも元気なんで。今月は4億程度ですから、ケース二つ程度ですよ。それに旅行ケースのように動けるようにしています。」
俊子「気をつけてね。若い人も連れて来たらいいのに。」
有村「僕はジブでは若い方ですよ。来月は多いから、台車も持ってきます。来年からは、聖子ファイナンシャルが出来ますから、お金は、毎月同じ金額になるようにします。今年は間に合わなくて。聖子さんが配当の出た月の翌月が寂しいとか云うので考えました。確認はジブ社内でしますよ。どっちにしても持っていった時に同じなんですけど、念のため。俊子さんはホテルの運営本部におられますね。」
俊子「午後は早く帰るつもりなの。確認なんていつでも良いわよ。無駄な事をやっているわね。」
有村「お金ですから、確認して預かり書も出さないといけません。銀行にはもう入れないのですか。手配しておきましょうか。」
俊子「もう銀行には入れないの。どこの銀行に入れても、なんでこの銀行にしたとかうるさいのよ。五つくらいの銀行に、それぞれ10億程度入れているけど、もう入れないわ。ジブトラストに預かって貰った方が簡単ですよ。出資の時も簡単だし、聖子ちゃんも仕事しかお金も使わない人なの。」
有村「会社もお金があるから、もうそんなに出資する必要もないですよ。」
俊子「好調なの。」
有村「もうジブからの増資も少なくなりました。会社に貯まっているお金で十分なんですが、聖子さんが販売するのに有利とか云って、色々な所から出資も貰うので、整理して増資しているだけなんです。」
俊子「聖子ちゃんのやり方複雑よね。」
有村「整理しているのですけど、やたらと会社つくるので、会長や神太朗さんに説明するの大変なんですよ。名義貸しの社長だから、詳しくは知らないとか言って誤魔化していますが、会長も神太朗も知ってるような気がします。二人とも、鋭い人たちですから。」
俊子「もう治部洋服よりも大きいの。」
有村「治部洋服も複雑で、有希さんの管理会社や治部洋服の管理会社も絡んでいる会社なんですが、聖子さんの話では、快適洋服は、売上は治部洋服の5倍以上ですが、衣料品でも利益は次部洋服の衣料品の利益も超えていると思います。快適洋服全体では倍に近づいています。快適洋服は衣料以外も結構多くなって、途中から安いよの子会社も使い出したら、どこまで服飾の売り上げや利益とするかは微妙なんです。聖子さんがやたらと複雑に別会社を作るんですよ、もう二郎さんもレーヨン経由で知っている筈なのに。」
俊子「二郎は知らないふりをしているわ。認めたくないのよ。洋太郎さんはやっと、素直に状況が判るようになったわ。安倍紡績も機能性の洋服を出すらしいの。生地の外側表面だけを加工する事にしたみたいなの。」
有村「紡績も複雑ですね。」
俊子「まったくね。自分だけの哲学もいいけど、少しは世の中の動きに対応しないしね。」

彩香と村井明との三つ子のうち、二人の男の子は、医学部に入り、医者になり、良家の気の強いお嬢さんに言い寄られ、姑なんかも気にせず、敷地内に住んでいた。女の子の和美は、医学部にも入れる成績でもあったが、アメリカの大学に行き、大きな組織である商会を嫌いジブトレーディングに入り、みんなが反対するのに、アメリカで、アフリカ系アメリカ人と結婚し、子供も二人出来たが、気の強い者同士で喧嘩が絶えず、ついに離婚し、子供の養育を巡ってさらに揉め、清香の関係するアメリカの法律事務所の力を借りて、延々と裁判をして、なんとか和美が養育する事になったが、面接交渉権を振り回され、和美は顔も見るのも嫌になり、子供たちが大きくなるのを待っていた。

彩香の娘の和美が、子供たちを連れて、帰ってきた。子供たちも大きくなったが、なにより、尊大で気位の高い和美の前の旦那が、マフィアの親分の女に手を出し、おまけについに興奮して首を絞め、女は救急車で病院に運ばれ、助かったが、自分は救急車で病院に運ばれる事もなく、絞め殺されて死体で発見された。

「和美さんもついに帰ってきたね。再婚もしなかったのね。」
香奈「離婚は簡単だったけど、アメリカは、共同親権の国なのよ。子供たちと一緒に日本にもっと早く帰りたかったらしいけど、誘拐になるとか云われて、問題があったらしいの。別れた男の人が突然亡くなって、漸く帰る事ができたと言っていたわ。」
「どうして死んだの。病気とか事故なの。」
香奈「俊子さんも言いたがらないけど、清香さんに聞いたら殺されたらしいの。興奮すると首絞める癖がある男らしく、マフィアの女の首を絞め、殺しそうになって、結局自分が首を絞められたらしいよ。」
「殺した人が捕まったの。」
香奈「まだ捕まっていないけど、清香さんの関係する法律事務所が調べたらしいよ。そんな癖のある人らしい。和美さんも調べられ、法律事務所が調べて分かったらしい。内緒だよ。」
「なんて奴なの。」
香奈「和美さんも暴力振るわれていたらしいよ。そんな人だから、養育問題も難しかったらしいよ。相手はお金もあったらしい。なにしろどっかの国の国王の末裔らしい。」
「国際結婚も子供が出来ると離婚した時は、厄介らしいね。でもヨハネル君もマルト君もそんなにハーフと云う感じがしないね。」
香奈「前の旦那がアフリカ系の人でも、どっかの国の国王の子孫だから、白人の血も混じり、黒人でもなく、白人でもなかったらしいよ。気位も高かったらしい。初めは、そんな所が自信たっぷりのような気がしてみんなの反対を押し切って結婚したけど、結局うまくいかなくなったみたいなの。転職してうまくいかず、和美さんに暴力を振るうようになったらしい。和美さんはあまり思い出したくないらしく、詳しくはわからないの。」
「二人とも日本の学校にいっているね。日本語も出来るのね。」
香奈「家では和美さんと日本語で話をしていたからね。でも漢字は苦手らしいわ。二人とも工学関係に進むつもりらしい。」
「和美さんはどうするの。」
香奈「聖子ちゃんの快適洋服が、衣料以外でも何でも各地でしているから、ジブトレーディングの北米ルート以外にも自前の貿易ルートを整備したいと考えているらしい。有村が言っていたわ。和美さんも暫くはアメリカには行きたくないらしい。」、
「友恵さんに聞いたら、製薬の薬草園も快適洋服から借りている所もあるらしいね。」、
香奈「有村も快適洋服が大きくなって、工場用の土地を広く買うようにしていると言っていたわ。瑠璃まで旧鉱山の土地を買って貰っているらしい。」
「旧鉱山なんて、もうなにも出ないのでしょう。」
香奈「それが出る事もあったの。金が出なくなった鉱山からウランが採れたりして、くず拾いの瑠璃とか云われていたけど、この頃は、香奈オフィスが動くと値段が上がるようになったの。快適洋服は、僻地でも買うから、目立たないの。アメリカとブルガリアでは、上手くいったのよ。ブラジルでは、農園と養殖場で広い土地を買って、縫製工場も作ろうとしたら、油田があってね。快適洋服が安いからといって広大な土地を買っていたから、香奈オフィスと資源開発それに現地資本まで入れて共同して掘ったのよ。ジブトラストも大分お金もだしたわよ。今は、ブラジル資源開発となったのよ。結構直ぐに原油は出たの。快適洋服は、又奥地と海岸に土地買ったよ。ブラジル政府とも約束もあって、農園と養殖場は確保したいし、工場用の土地も欲しいらしいよ。」、
「快適洋服は何でもやるのね。」
香奈「何でもしているよ。衣料品以外は、大体安いよの子会社にしているけど。転んでも金を掴む聖子ちゃんだからね。今、叩き売っている果実はブラジルの農園から輸入していたので、農園はどうしても欲しいとか言っていたわ。聖子ちゃんは、大きく儲けるよりも、日銭稼ぐ商売が大切なのよ。」

聖子は、ブラジルの農園の隣に縫製工場を建てようとして、油田が出た事をそんなに喜ばなかった。ブラジルの農園からの果実は、安いよスーパーでたたき売ってスーパーの目玉になっていた。ブラジルでの快適洋服も売り上げが伸び、縫製工場を作ろうとしていた。養殖場も何とか軌道に乗り、日銭が入ってくる所であった。突然油田と云われても、又農園も養殖場も探す必要もあった。縫製工場も生地や化学繊維までも作る工場も視野に入れ、ブラジル政府とも話が進んでいた。資源になると色々とうるさく、瑠璃に頼んで、後は任せたものの、又初めから農園も養殖場も工場も探す必要があった。油田が出たとしても収入が不安定になり、二郎も年になり、この頃、聖子を突くのに手抜きする傾向もあった。収入が減ると手抜きされる可能性もあった。聖子は考えて、和美を口説いて、快適洋服や安いよが出資して、そして和美やジブトレーディングそしてジブトラストまで出資させて、貿易部門の調整、資源関係の調整などの仕事を中心に快適交易を作り、安定したお金が入ってくるようにした。安いよや快適洋服などに出資金を元に、聖子ファイナンシャルと云う聖子の個人の管理会社を作り、毎月均等に貰うようにしていた程であった。

この快適交易が、無計画に進めていたり、バラバラに進めていた快適洋服の各部門をまとめあげ、香奈オフィスやジブトレーディングとも連絡を取り、和美の経験も生かし、世界各地と交易で製造計画を管理し、交易による利益と計画的な製造を行う事で、より利益を上げていった。

機械と製薬そして化学の合弁会社のスリースター医療器械は上場しないものの大きくなっていった。カズコウオッチの道之助もタイマー部分の仕事をしていたが、医療カメラなどの特殊レンズにも興味を持ち、複層レンズを作り、一度の撮影で多くの部位を多層的に同時に撮影できるレンズを作りだし、スリースター医療器械の発展にも寄与して、少しカズコウオッチもスリースター医療器械に出資していた。化学の子会社の治部肥料と製薬の子会社の安倍種苗会社は協力して、仕事をする事が多くなっていた。化学はその他にも多くの子会社を持っていた。

妙子たちの血筋が、化学の本流ではあったが、洋之助たちの孫たちも、化学の管理会社の増資を応じていた。ジブトラストはその関連会社も使い、株を基本的には買い支えていた。基本的には上場会社であり、常に一族が社長になる事はなかった。ただ、鉄鋼から島流しになった洋一郎は、洋治に比べて、根性や性格は素直とは呼べず、化学の社長になった。

鉄鋼も洋一の血筋が、本流であるが、子供が一杯いた登と良子の子供は、何人かは鉄鋼に入り、良子は、子供たちみんなにジブトラストへの出資を認めて貰い、ジブトラストからの配当は、自分の複数の管理会社に出資させ、低迷している鉄鋼の株を買った。洋一の血筋と洋之助の血筋そして良子の血筋が入り乱れて、それに少しずつ幸之助たちの血筋も加わり、複合した創業者一族群となった。合併に応じた一家たちや多くの会社も株を持っていたので、この一族から社長になる事は、少なかった。ただ役員には、常に何人かの一族の人がいた。洋之助たちの孫たちも、鉄鋼の管理会社の増資に応じていた。ジブトラストは、関連会社も使い、株を基本的には買い支えていた。

商会は、元々一族の比重が少ない会社であった。正子の夫の太朗が勤めていた会社なので、正子は、自分でお金の管理が出来、聖子や悦子の事業を手伝い、一族や家族の管理会社への出資に目途がついてから、太朗と自分の管理会社を通して余裕があれば、少しずつ買うようにしていた。しかし有希の娘婿の雅也は、頭も良く、有希仕込みの利益確保も上手く、商会で頭角を現し、洋之助直系の太朗を飛び越し、社長になっていた。

非上場の貴金属会社や時計製造会社のカズコウオッチでは、香奈や勝そして小百合たちが完全に押さえ、次世代への継承は既に進んでいた。真理が運営している貴金属は基本的には買いの姿勢で、貴金属の保有は大きくなり、先物では、売りを主体にヘッジしていく事に変わりなかった。一族の貴金属会社はそのまま残っていた。度々子供たちが増資をした。そして真理は相場をみながら、保有する金を増やしていった。一族の貴金属会社である鉄平会と次平会は、名目だけは別会社であったが、敷地内の真理の貴金属会社に置かれていて、真理が管理していた。保管庫も作り、一部は陳列したりしていた。貴金属会社は、全くのファミリー企業であった。直営店も10店舗程度にはしたか、それ以上は増やさなかった。宝飾品以外にも工業用途などの貴金属も販売していた。ジブトラストは、アメリカの貴金属会社の他に、スイスのチューリッヒに貴金属の保管と売買をする貴金属会社を持っていたので、真理はその会社とも情報を交換して、真理の会社のヨーロッパの協力会社そして資本参加しているアメリカの貴金属会社ともに大きな情報力を持って、仕事をしていく事が出来た。

スイスの貴金属会社は、金の保有が増えていた。ジブスイスは金先物もしていたが、ある時に金の先物を安い値段で買ったのに、もっと安くなり、香奈はついでに金の現物をもっと買わせ、先物の金も一緒に引き取り、ジブトラストの完全子会社として、スイスの山間部に土地も買い、山の中にジブスイス貴金属会社の保管庫を建てた。治部一族や香奈たちは、金になぜか執着があり、金を保持する事には、積極的だった。スイスジブ貴金属は、金の売買をするための会社だったが、安い時に金の現物を購入したり、金の先物以外はしなかった。金の先物とか金を含む貴金属の情報を集める不思議な会社だった。社員も数人で、ジブスイスの管理との兼任だった。

安倍海運は、不思議な非上場の会社であった。多数の管理会社が株主であった。そして資本金も少なく、持っている自社の船は少ないのにも拘わらず、多くの船やタンカーを使用していた。子会社がやたら多く、その子会社や孫会社が、他国籍の船を雇っていた。孫会社が出資した関連会社の一つは、良子の娘である優香の夫、大原友人が社長になり、安倍原海運として、ジブトラストの前身の運用会社の時に、洋之助の紹介で出資も受け、大きくなり上場して海運業界でも有名な大会社になった。安倍原海運は安倍海運グループとしても、動いていたが独自の仕事もするようになっていった。

料理店は、真智子の母の京子が受け継いだものを清美が発展させていた。製薬の人たちや純子会も持っていたが、いつしか統合された。数店は、コックが有名になり、そのまま運営を任せる形となった。料理店グループは、清美の死後は、清美の子供である新吾に受け継がれていた、清美の二人の子供、寺下新吾、真次郎、は、結婚して敷地内に住んでいた。真次郎は鉄鋼に入った。敷地の近くにある料理店は、運用会社が買い取り、敷地内の各家に配達したりしていた。そのため比較的大きな調理場を持ち、客席に比較すると、料理人の数は多かった。一種のデリバリーサービス、つまり配達が一つの特徴であった。はっきり言えば敷地内の多くの家のコックのような存在になった。赤字覚悟の積もりだったが、配達可能地域は広くないものの、敷地外の家にも配達し、店もそれなりに繁盛して、赤字になる事は少なかった。それ以外の料理店は、新吾が運営していたが、真智子の管理会社も京子の管理会社をある程度引き継いだので、かなりの株を持っていた。真智子から、清美たちの運営に口を出さないでねと言われ、ほとんど口は出さず、新吾が運営していた。清美の子供である真次郎や新吾はボンクラというか普通の人で、真次郎は鉄鋼の幹部にはなったが、それほどの活躍はせず、新吾は、清美の作った料理店を守るだけで精一杯だった。新吾や真次郎たちは、最初の出資枠の拡大時に、清美の枠を拡大して、ジブトラスト発足時から出資していた。真智子程ではないが、清美も土地や不動産そして鉄鋼を含む上場株も持っていた。清美自身は、現金比重の高い資産があった。特に波乱なく、相続していた。

製薬は基本的には、幸之助、知子の血筋が守り続け、ただ一族以外の人もトップにつく事もあった。知子は、製薬では中興の祖と言われていたが、友恵は知子の再来とも言われ、社長となっていた。紡績などの一族の会社も、相互に株を持っていたものの、実際には、お互いに干渉する事はなかった。昔からの付き合いで、会社としての保有する株は多いものの、ずっとそのまま持っているだけだった。癌の新薬などで、海外市場にも売上を伸ばし、海外の製薬会社をジブトラストと共同で資本参加したり、買収して、販売と新薬研究の拠点にしたりしていた。豊富な保有資産を抱え、各地の病院や医学単科大学までも傘下に入れている会社になった。

治部病院は大きな病院になったし、一族の人は理事会では半数弱いたし、一族の医者も相当勤務していたが、病院長には二代目次平の後は、名医と云われた真智子が継ぐと思われていたが、何故かならず、平凡と云われていた外科の洋平が院長となった。
玲子の娘の雅子は、二人目の男の子の次助を産んだ後、何故か夫婦仲が冷え、君島商会と商会の繋がりだけで、夫婦関係を続けていたが、君島が2号を囲い、子供を産ませた時点で、ついに離婚して、雅子は治助だけを連れて家に帰った。雅子は優秀な内科医であったが、何故か医者を止め、病院の理事だけに専念し、裏で病院の人事を牛耳り、子供の治助を育てた。真智子とは気が合わず、真智子の院長昇進を阻止し、洋平を院長にした。雅子は、洋平が院長になるとすぐに、若くして亡くなったが、治助は、優秀な医師になり、二代目次平に生き写しの容貌を持つ、天才的な外科医になり、治部次平の再来と云われ、心臓移植も手がける有名な医師になり、洋平は、若い治助に病院長を譲り、病院は更に有名になった。ただ治助は、先代次平の熱血感や至誠感からは遠く、二代目次平の真面目さからも遠かった。手術や知識では群を抜いていた。冷たい感じの男だった。治助は、他人を思いやる事は、人の自主性や公正性に対する侵害にもなると考えていた。みんな自分の事は自分の力で切り開いている。自分で道を開けないような、弱い人間を部分的に救ってみても、狡い人間を助長するだけとも考えていた。純子会の医療補助も迷惑だと思っていた。困っている人を助けるのは、政府の仕事だ、個人がする事ではない、個人はせいぜい政府のやる事に文句言う事だろう、助けろと言って、後で財源がと云って非難すればいいだけなのに、適正な医療報酬は当然だ、目の前の人だけ救ってみても、一握りの砂を掴むのと同じで、多くの人への公正性にも欠くと思っていた。しかし、生活保護とか明らかな書類が整っている人たちには、先代次平や純子の理念「誰でも気兼ねなく、医療が受けられる」事を、一応病院の建前にしている手前、渋々手続きした。まして小さい命を救うとか助けるのは、自分の責任で出来た子供であり、生まれたのではないか、無責任な奴らを助けるのも無責任ではないか、それこそお節介だと思っていた。そんな事に熱心な一族の多い敷地で暮らすのは、息苦しくなっていた。妙子は長生きして治部一族の長老と言われていたが、妙子や玲子が亡くなった後、治助は、敷地内を離れていった。妙子や玲子たちが暮らしていた家は、ジブホーム不動産が買い取り、やがてホールやゲストハウスに替わっていた。古い蔵は、二代目次平の息子の洋平が管理していたが洋平も院長を譲ると、敷地内の一族では珍しく若くして、直ぐに亡くなり、そしてその息子の洋也が管理していた。

鉄平会、次平会は、名目的には貴金属会社なので、真理が管理していた。これらの4つの会社は、株主になるためには、既存の株主の半数を超える人の承諾が入り、譲渡もできず、一代限りの株主であった。株主は出資した株の表面額を会社に請求して、株主を止める事が出来た。又死亡した時は、相続人がその請求権を持つ事になっていた。洋之助は、始め自分が買っていっていたが、運用会社が大きくなった時に、小判の分散化を避けるために考えた。治助や宏太郎たちは、妙子が亡くなると直ぐに、次平会、鉄平会そして純子会、洋介会の株を金に換え、相続分を分けた。香奈は、これらの管理会社の運営を参考にしてジブトラストの仕組みを整理していた。鉄平会や次平会は小判や金を保有する貴金属会社であり、大きな出資額を持つ株主はほとんどなくなり、今は子供たちや孫たちがその後を継いで、額面としての少ない株主が増えていた。金を保有だけではあったが、金の調整的な売買は、真理の会社に委託していた。一時期運用会社に資金を借りていたが、子孫たちが増えて、新しく株を持つ人が増え、逆にお金が貯まっていた。真理は、自社保有の金と同様に、調整売買を時々行っていた。 純子会は多くの会社の株主でもあり、ビルや料理店まで持っていたが、ジブトラストが大きくなって、ビルや料理店を買い取り、純子基金を拡充していた。同様に洋介会も基金を作り、治部ホーム不動産内に事務所が置かれていた。ジブトラストは特例としてこの4つの会に最低単位の株を与え、純子会と洋介会は、合同で、治部病院での医療補助に使う事にしていたが、治部病院は医療補助の手続きを厳密にしてから、使用される頻度が減っていた。純子会の株主には、吟醸酒「お純」が今でも、新酒が出来ると届けられていた。現在は、純子会の株主は、ほとんど敷地内に住むその血筋の人ないしはその配偶者だけになってしまった。厳密な定款や規約はないが、それがないと株主にはなった人はいなかった。

二代目次平の息子の洋平は亡くなったが、その息子の洋也や娘の洋子は、敷地内に住み続け、ボンクラでもなく、秀才でもないが、普通の医者として暮らしていた。洋也や洋子は結婚したが、便利な敷地内に住んでいた。やがて、ジブトラストが安定して伸びていくと、香奈はお金を貸してまで、ジブトラストに最低単位の出資をさせた。自分たちの管理会社の持つ上場株は、相続時には必要な額を、運用会社に売り、その金で相続問題を解決した。

銀行も一族の保有株数はそのままだったが、何故か一族の会社ともそれほど密接な関係が出来ず、一族の会社は借金を嫌い、化学や鉄鋼そして商会などと云った資金需要の多い会社は、一定の取引がある程度だった。銀行はこっそり、ヤミ金やサラ金にも資金を回し、業績は良かったが、規制が強化され、逆に経営の重荷となってしまった。そして何年か置きに、名前が変わるほど、合併を取り返し、銀行は大きくなり続け、一族の保有する株の比率は下がり続けた。小さい地方の銀行が大きくなったけれども、益々一族との距離が出来た。そのため一族の会社も、この銀行以外の銀行との取引が増えていった。

「運用会社では、ハムも売ってるのね。千恵が安いと言って、ハムを買ったら、とても美味しいかったよ。あんなに安く売って大丈夫なの。」
香奈「伊智子さんの会社に、ジブトラストもお金を入れて、色々な会社を買ったり、設備入れて、統合してイチコプロダクツと云う会社を作ったのよ。私は食品企業にはあんまり関心なかったけど、正子さんが、専門家も派遣して、運営しているのよ。ジブトラスト直営の料理店や新吾さんの料理店チェーンには、安く納めているから、少し分けてもらって、味見として希望者に売ったのよ。あんな値段では、売ってないわよ。イチコプロダクツの牛や豚は肉質がいいのよ。子牛や子豚だって売っているのよ。ハムも高級品なのよ。恵だって、新吾さんの料理屋チェーンの役員でしょう。」
「あれは座って聞いているだけだよ。真美さんや由香さんが、なるのいやと言うから、信者の子もバイトしているから引き受けたけど、余程の事がないと何も言わない事になっているの。お義母さんにも言われていたのよ、口は出さないでねと。そんな事まで知らないわよ。一族の会社から、美味しい肉を買っていて、評判いいとは言っていたよ。又買ってみよう。でも伊智子さん、なんであんな会社持っていたの。田舎は嫌いと言ってるらしいよ。お父さんは、建設会社をやっていたのでしょう。」
香奈「お父さんは、頼まれるといやと言えない性格で、資金援助を頼まれたり、買ってと云われて、だんだん増えたらしいの。でも建設業本体とはまったく違うし、みんな伊智子さんに押しつけたのよ。土地も広いから、時価総額は大きいけどね。伊智子さんは嫌がったのに、説得されて、結局貰ってしまったのよ。相続税も多くて、ジブトラストに相談に来たの。私はお金を貸すだけにしたかったのに、正子さんが、熱心でね。伊智子さんはあまり熱心でもなかったから、少しお金も入れて、専門家も入れて運営しているの。利益が出ているから、税金のお金はゆっくり返してくれるように云っているのに、伊智子さんが、借りたお金も払うから、もっとイチコプロダクツの株を買ってと言うから、相当買ってジブが過半数になったの。でもそれじゃ取ったみたいで、悪いから、ジブトラストにも出資をしてもらったのよ。みんなにも認めて貰ったでしょう。」
「伊智子さんは託児所で頑張っているし、一族だからと思っていたわ。」
香奈「昔から持っている人とは別にして、夫婦でそれぞれ持っている人はそんなに多くないのよ。恵の所は、真智子おばさんが、初めから多く持っていたから出資枠が大きいのよ。俊子さんたちそして私たちも多いのよ。清美おばさんさんと良子おばさんの所も少しあるけど、それ以外の人は、ほとんど夫婦で最低単位なのよ。ちゃんと説明した文書も配ったでしょう。」
「そんなややこしい文書なんか見ないわ。でも色々な会社を持っているのね。」
香奈 「イチコプロダクツは、インドネシアにもエビの養殖場も持っているのよ。商会に頼んで輸入しているのよ。」

まだジブトラストが、過半数を超えて株を持っている会社はそんなに多くはなかったが、ほとんど非上場企業だった。少しずつ増えていった。上場企業の鉄鋼、機械、化学、資源開発などは、一族の人から、買ったりする事もあった。それにあんまり安い時には、市場で買う事もあった。

香奈が思っていたよりも早く、低迷の時代も終わり、再び、世界も日本も景気は上向いてきた。ジブトラストも運用利益が少しずつ増えていった。通常の状態では正子の勝率は7割程度だった。上場株は低迷時に少し増やしていたので、上場株式保有額は、海外を含めて、2兆になり、保有評価損もいつしか消えた。保有評価損得や配当を除いても運用利益も再び5千億を超えていた。正子は、保有株が増えるに従い、先物の売りは大きくなり、買いは少ないものになった。全体的には株価は上がっていったが、時折大きく下落した。下落時の売りはその分大きくなり、正子の神のような運用も出た。正子は売りには強かった。時には普通扱いの保有株まで調整売りもしていた。正子は神懸かりではあったが、元々売りにセンスがあり、暴落しやすいタイミングを掴むのが巧かった。香奈は逆に、低迷したり、暴落時に買って、そして儲けようとしていた。そして少しずつ、現金や保有する株、貴金属特に金そしてビルなどの不動産が増えていった。金は、アメリカでも買ったが、スイスで買う量は多かった。株は、株価が上がるにつれて、長期保有株以外の上場株は少しずつ売っていった。ジブトラストや現地オフィスが、依頼を受けたり、国内の関係する企業が依頼して、海外で保有したりしていたが、低迷期に保有した株も、少しずつ調整売りをしていった。

ジブトラストは、運用会社ではあったが、香奈は保有する現金を増やす事にしていた。香奈自身を始め、俊子、洋太朗、有希、洋治、そして恵たちの世代が高齢化していき、次世代が継承するための手助けとして、資産を買い取る必要があると考えていた。ただ時折、見込みのある企業には、企業支援として、現金を貸し出したり、増資や出資には、応じていった。国内でもビル投資は、乳幼児施設や財団の関係もあり、保有する必要もあった。利益は、増資や出資を含む株式、金やビルを含む不動産、現金の三つに分ける形で進んでいた。単純な株式投資は益々減っていった。調整的な売買が主流になった。海外では香奈オフィスの動向や情報を元に、海外オフィスが株式相場と商品相場を主に取引していたし、国内では正子が先物が主体であった。ただ海外株式は海外での利益が上がれば、香奈がコシロと相談して、長期的に見て上がると思った株は本体や支店名義で買わせていた。利益が増えると海外株式も増え、それに従い、海外先物も増えてきた。商品相場や先物相場で大きく儲けながらも、香奈は、このような商品相場や先物相場で運用する金額は、ほとんど増やさなかった。香奈は、チャンスとみれば果敢に、株式を購入したが、リスクの高い先物や商品相場に比重を置きすぎる危険もよく知っていた。

上場株の配当率は海外株の方が高かったし、香奈はビジネスは海外に比重があった。それに海外の方が成長すると思っていた。香奈は、日本を含めたアジア、ユーロの拡大ヨーロッパ、アメリカを中心とした北米が3極になり、南アメリカ、アフリカの成長はまだ先になると思っていた。アジアはインドを含めて、オセアニアとも一体化すれば伸びるが、バラバラのままでは、そんなに成長はしないのではないかと危惧していた。日本の成長は、実は出生数の推移が握っているのではないかと個人的に思っていた。財団への協力は経済的な理由だけではないが、人が減る国にそんなに未来は感じなかった。小さい命を救うのは、実は日本の未来を救う事にもなるとも考えていた。

ジブトラストは海外比率を増やしながら、少しずつ大きくなっていった。香奈は中国にも投資した。有希や聖子も製造工場をアジアに進出させ、イチコプロダクツを始めとする食品関係の企業をアジアに展開させ、食品や繊維会社を増やして、それ以外の他の産業もアジアに展開していくようになった。中国政府から無理矢理持たされた中国の機械会社の株も上がっていたが、中国の機械会社や日本の機械会社と共同で、アジアへの展開も少しずつしていく事になった。

恵は財団には、よく行ったが、ビルはほとんど息子の嫁、小夜たちに任せていた。小夜は好き者で派手な格好をして、乳房丸出しで家の中をウロウロし、家事もせず、舐めるとかやりたいとしか言わない、やりたいだけの女のようであったが、ビルの管理は賢く運営していた。恵のビルはハデハデの恵の店やハデハデ姉ちゃんがウェイトレスの喫茶店もあり、占いコーナーや恵教の事務所まであり、派手な格好の女の子も出入りしていたが、ビルの2階以上は一転して雰囲気が変わり、弁護士事務所、企業相談所、職業案内所、税理士事務所、よろず相談所などが並び、ジブトラストの出張事務所まであった。そして時々講習会が開く事も出来るホールもあり、中小企業の経営講習会と起業講習会、お稽古事の会などもしていた。財団の連絡事務所もあった。お助けビル、相談ビル、あ稽古ビルとも呼ばれていた。暗い顔をした人たちが入り、気も軽く晴れ晴れとした表情で出ていく事もあった。由香の店はファション関係の店が並び、喫茶店も現代風で、ファションビルになり、宏美と満の店があるビルは若者専用ビルになり、バイクの展示場やアウトドアーのスポーツの専門店が入り、上層はヤング用の賃貸住宅になっていた。ただ3つのビルも古くなり、ビルの管理会社にも改築資金も十分貯まり、改築準備をしていたが、その期間が取れないでいた。

名古屋のビルは、東京の恵のビルと同じだったが、小夜はビルの管理会社に金が貯まっている事を知り,恵を誤魔化し、大阪、福岡に大きなビルを作っていた。恵は今までと同じようなビルの積もりにしようと思っていたが、財団の仕事が忙しく小夜に任せた。小夜はジブトラストにも金を出資して貰い、調査もして大きな商業ビルを建てた。今まで通り、女の子用の服飾店は作ったものの、完全な商業ビルであった。恵教の連絡事務所や女の子が興味を持つ店を作り、そこに来る若い女の子も客寄せに利用して活気溢れる商業ビルになった。福岡では駅に近い事を利用して上層階にはニコニコホテルまで入れた。そしてこれらの5つのビルの利益を貯め、初めの3つのビルの建て替えの計画を練っていた。大阪と福岡のビルは高収益であったので、高収益ビルへの改造計画を考えていた。恵教も信者たちが年を取り、恵より恵的な人たちが、教団を牛耳っていた。恵も、若いうちはイケイケどんどんと利益を上げていたが、女の子の相談にのり、乳幼児施設の運営に参加し、財団にも参加して、運営を進めるうちにビルの効率的な運営よりも、財団への運営に活動の比重が増えてきた。その上、商魂逞しい小夜をある程度認めていたので、ビル関係ではもうする事もなくなっていた。

健太郎も健次郎も会社は、既に辞めて、釣りや碁、将棋で暇をもてあましていた。敷地内にも寿クラブが出来たが、何もする事もないのて、寿クラブ経済研究所を作り、新しい会員も増えて、経済研究も始めていた。小百合の病気以来、製薬が関係する病院から医者を派遣して、週に2回診察して、みんなの健康状態を詳しく検診していた。寿クラブは、乳幼児施設の見える場所におかれていた。

神太朗が大学に入ってから、神太朗の薦めで、正子は、三人の人の子と共にカミカミファイナンシャルを作った。正子の運用手数料などの報酬や配当は多く、もうバランス的にも、親たちの管理会社やホテルや紡績などの管理会社に出資する事もなくなってきた。正子自身は敷地外に出る事も少なく、銀行にもある程度預けていたが、多くは、ジブトラストに預かって貰っていた。カミカミファイナンシャルを作ってから、正子は、報酬や配当の中で使わなかった多くのお金を、カミカミファイナンシャルに増資していくようになった。三人の子の比重は、少なかった。正子が三人の子に、少しずつ貸す形だった。正子は、自分のお金は、雑念が入るといって、カミカミファイナンシャルの運用はしなかった。神太朗が取引する程度だった。そして神子が大学に入ると、神子の方が取引は上手く、ほとんど神子に運営を任せるようになった。

香奈も、ジブトラストからの報酬や配当は、ほとんど使わなくなっていた。正子と同じように、ジブトラストに預けていたが、正子のカミカミファイナンシャルの話を聞き、国内の自分の個人管理会社を香奈ファイナンシャルと改名して、使わないで貯まっていた報酬や配当を出資していく事にした。そこには、香奈の個人名義の株なども集め、香奈の金庫のような会社になった。香奈ファイナンシャルには、香奈だけではなく、瑠璃や徹彦にも出資させ、香奈の財産管理会社が出来た。

ジブトラストのコンピューターシステムは、より整備され、付き合いのある証券会社と商品相場の取引業者と調整して、本体や新宿そして渋谷に中規模のシステムを揃え、今や完全にジブトラスト独自の取引画面で取引できるようにしていた。先物や株式では複数の証券会社にジブトラスト全体の総合口座を持ち、その下に取引担当別の複数の総合口座との資金のやり取りを行い、支店やジブスイスまでシステムを共有化していき、商品相場までジブトラストの取引仕様で支店のコンピューターと渋谷と本体とを結合させ、新宿と本体とも別個に結合させていた。カミカミや香奈ファイナンシャルも同様のシステムを取った。

ジブトラストは、現金とは別に運用資産が三兆五千億を超えた。上場株では、2兆三千億にもなった。ビルを含む非上場は1兆二千億になった。運用利益は、六千億程度に回復していた。株式売買用の口座には、海外を合わせて、二千億程度、商品と先物の口座には六千億程度、そして別に現金が二兆五千億になった。ジブトラストは、配当を上げていった。毎年一千億程度は、企業に出資するか、ビル等の不動産に投資したりしていた。現金でも貯めるようにしていた。一族からの上場株の購入や低迷時代には、企業からの要請で、株を持ったりしていた。調整的な売り買いはしていたが、そんな活発な株式取引はしなくなった。今は企業から依頼で株を買ったり、企業の増資や支援の相談に乗ったり、合弁の手伝いをしたりする事が多かった。それには色々と調査をしておく必要もあった。それに、新宿の一件以来、調子に乗ってビルを建てた。渋谷にも高層ビルを建て、海外関係のオフィスと研究センターを置いた。六本木にも高層ビルを建てたし、日本橋にもビルを持った。乳幼児施設や寿クラブなどは赤ちゃんスキ不動産に任せたものの、全体のビルの管理サービスや運営も業務になった。海外でも少しビルも持った。ついには、俊子の治部東京不動産会社もビルの管理などの仕事は依頼するようになった。ジブトラストの新宿オフィスはビルの管理業務もするようになった。東京郊外の駅周辺にも複合ビルを持った。ビルの購入や建築などの大きな決定は、敷地内の本社で香奈や正子の承認などが要った。ビルを持つと共に、託児所や医療スペース、その他の乳幼児施設は財団と協議しながら、進めていた。

ジブトラストは、順調に利益を上げていた。海外関係の相場も安定しており、正子も先物で、現地オフィスとの繋がりも増えてきた。香奈は、企業支援や相談も、時間が取られた。海外での市場について、先物や株式などは、正子に任せるようになってきた。香奈だけが海外担当では、海外に行く必要もあった。海外に行くのも面倒になった。知り合いがどんどん減って、新しい人も増えてきた。正子もたまには、各現地オフィスに行って、意見交換や打ち合わせをようになった。

香奈「私が今までは海外を直接見ていたけどね。神太朗君も手伝うようになって、正子さんにも少しは、見てもらうようになってきたの。私と正子さんが監視していて、修正や変更も、ここと正子さんの部屋では出来るのよ。私はしないけどね。正子さんが偶にやっているわ。正子さんは家のパソコンでも多少はやっているみたいね。私もそうだけど、パスワードが厄介だから、私はほとんど見ないわ。」
「香奈さんも海外行くのも減るね。」
香奈「私ももう面倒になってきたの。正子さんもここから出ない人だけど、たまには海外に行くのもいいわよ。」
「今なんか空気が変わったよ。何か張りつめたような、霊気のような感じがしてきたわ。」
香奈「多分、神太朗君が来たのよ。ここの部屋には青不動さんの掛け軸があるから少しましなのよ。真理さんもお地蔵さんの掛け軸かけているけど、それでもわかると言っているわよ。」
「凄いのね。二十歳すぎればなんとかと言ってるのに。」
香奈「ますます力は強くなっているのよ。そして神子ちゃんや神之助君はもっと凄いのよ。ジブトラストにも相当現金置いてあるし、真理さんの会社では一部金も保管しているのよ、鉄平会や次平会の昔の小判や金の延べ棒なんかを。だからここのビルには警備会社と契約して警備してもらっているの。でもこの間泥棒が夜中に入ろうとした。かなりのプロだったらしいれど、建物の敷地に入った時点で金縛りにあって、動けなくなったの。取引チームの人が帰る時に見つけて、警備会社が連絡して、警察も来て、捕まったのよ。5時間ほど動けなくなったらしく、捕まった時にはむしろ喜んでいたらしいよ。」
「怖いのね。」
香奈「神子ちゃんが来たら、もっと凄い事になりそうよ。」

そして神太朗が来ると、正子の取引は活発になり、大きな利益を上げていた。神太朗は大学では法学部に行っていたが、教室内は緊張感が張りつめていたので、次第に特別待遇で、授業にも来なくてもいいと言われるようになった。敷地内の木々も大きくなり、敷地そのものが大きな森になってきた。花は異様に大きく咲いていた。ジブトラストは益々大きくなった。不動産投資もピークを超え、保有する現金も増えてきた。

香奈「正子さんにも海外を見て貰ったら、成績も上がったのよ。神太朗君も見ているみたいね。私が修正する事はほんんどなくなって来たのよ。」
「正子さんは、そんなに海外に行かないよ。年に1回か2回程度だよ。ほとんどこの敷地内にいるよ。よく海外の状況がわかるね。」
香奈 「私とも少し話はしているけどね。海外のオフィスから時折来ているよ。神太朗君にも会っているよ。」

神子は、神太朗とは違う国立の経済学の名門大学に入っていた。神子は綺麗だったし、頭もよかった。何人もの男が言い寄ったが、相手にされかった。暫く大学に真面目にでていたが、神太朗と同じく、特別待遇になった。そして正子の部屋には、良く来ていた。神子は予測する力は強く、経済予測や株価展望は、正子にも言ったし、カミカミファイナンシャルの取引も行うようになった。正子が個人的に出資していた聖子や悦子の会社の株もカミカミファイナンシャルへ出資する形となった。神子は、予測の力があり、神太朗よりも取引が上手く、正子の名義でカミカミファイナンシャルの運用を担当し、大きく増やしていった。それでも現金比重を多く、堅実に運用していた。正子の意向もあり、商会の株は、下値で拾う程度で買っていた。

正子は、神子の予測の力をジブトラストにも影響させて、この時期に運用会社は又伸びていった。あらゆる相場で勝ち続け、ついに運用会社の資産は、現金とは別に5兆を超えていた。上場株の保有評価額は、ついに海外を合わせて、2兆6千億を超え、非上場で1兆5千億になった。4千億から始めた中国での株式は少しずつ増資には応じてきたが、もう株式評価額では、8千億を超えていた。香奈が投資した中国企業は、今や世界的企業になっていた。配当も5百億程度貰っていた。ジブ上海銀行もニューヨークとロンドン、フランクフルト、シンガポール、東京に小さい支店を出した。相変わらず為替中心の専門銀行として独特の存在だった。アメリカでも香奈が1億株、買った石油会社の株は、香奈が、結局ほとんどをジブトラストに市場価値で売却し、今では、ジブトラストに売却した価格の3倍にもなっていた。それ以外にも50億ドルを超える上場株をアメリカで持っていた。ヨーロッパでも50億ユーロの株式があり、それ以外にも海外の非上場の株式を保有する事になってきた。海外比率は、元々少なくしている筈なのに、何故か増えてきていた。ジブトラストは不動産投資も落ち着き、現金も貯まってきたので、香奈の独特の計算でも配当は、どんどんと増え、ついに出資金の3倍になった。流石にこれ以上の配当は出さなくなった。

「運用会社からの配当は凄すぎて、声も出ないよ。出資金の3倍の配当が毎年出るよ。」
香奈「これでも抑えているのよ。みんなに渡しても大変だから。私はもう見てるだけだよ。海外の大きな会社の株も低迷時期に少し買って、少しずつ増え、今では相当持っているよ。」
「今は運用会社も大変らしいね。あの付近の木は異様に大きい。真理さんに聞いても建物自体が異次元空間になっているらしいね。香奈さんも異様に若いよ。私も財団では怪物とか言われているけど、私よりもずっと若いよ。真理さんや俊子さんも若くなっているよ。怖いくらいだよ。」
香奈「私は午前中は大体行くだろう。近くだから影響も強いのよ。一緒に住んでいる俊子さんも有希さんも若いよ。有希さんが商会の役員会に久しぶりに行ったら、若い秘書が、ここは役員用のフロワーだからと言って、追い返したらしいよ、たまたま役員が来て、平謝りだったらしいよ。」
「有希さんは元々若い感じだけど、異様な若さだね。」
香奈「運用会社の中はもっと凄いよ。空気が違うのよ。管理の人も時々交代するのよ、都心の人と。みんな若くなるけど、凄い緊張感が張りつめているからあんまり長くいると大変みたいよ。正子さんは早く帰るからまだいいけどね。」

神太朗は大学を卒業するまでにも、ジブトラストによく来て正子を手伝っていた、正子は先物取引以外の仕事は神太朗に整理してもらうようになった。神子も時々来た。正子の家の部屋も一つのディーリングルームになっており、神子は、カミカミファイナンシャルで運用して、自信を付けていた。正子も刺激を受けた。そして、この時期に運用会社は更に大きくなり、国内外の証券会社も影響を受けた。

神太朗と神子の霊力がジブトラストに影響して、そして更に、ジブトラストは大きくなっていった。株式用の口座には三千億、商品や先物の口座には六千億が用意され、現金は三兆に増えた。運用利益は、一兆を超え、毎年繰り越していくお金は、二千億程度になり、配当として九百億程度出す事は問題なかった。財団への寄付は、財団の活動状況で、五百億以上出す事もあった。

神子の取引での力は、カミカミファイナンシャルでは遺憾なく発揮され、保有する現金の半分以下で運用しているにも拘わらず、その上、やはり神子は学校にも時々は行っていたにも拘わらず、カミカミファイナンシャルの資産を倍々ゲームのように増やしていった。正子の運用手数料、報酬や配当は膨大だったが、それを神子は更に増やしていった。

「運用会社は凄く大きくなったね。配当は、出資金の3倍で張り付いてるけど。」
香奈「恵も惚けたね。みんなの生活はこれで十分でしょう。それにみんな、管理会社の株も何とかなったでしょう。これ以上、出しても意味ないのよ。一族の会社には、運用会社がお金を援助するでしょう。」
「そうかもしれないね。財団や施設の資金も増えたよ。病院も、運用会社から寄付も貰っているよ。産婦人科小児科病院では、診察代を貰わなくても、やっていけるようになって、財団からの無利子無担保無期限の貸付で、診察代を取らなくなったよ。託児所も一杯できたよ。保育士や看護婦の学校まで作ってしまったよ。どこまで大きくなるのかね。」
香奈「もうそんなに大きくするつもりないわよ。」
「健次郎さんたちは、会社辞めて、のんびりしていたけど、退屈していたから、寿クラブ経済研究所なんか大層な名前の老人クラブ作って、遊んでいるわ。少しは役に立っているの。」
香奈 「渋谷の研究センターとは少し違う発想だから、参考にはなるわよ。」

財団は、産婦人科小児科病院にも寄付をして、産婦人科小児科病院はいつしか、自由診療に近いものとなった。自己負担分や診察代は、財団が貸すシステムが整った。保険適用外にも病院は安くしていたが、窓口での現金支払いは少なくなり、やがて消えていった。無利子無担保無期限の借用書にサインすれば、領収書を出した。財団からの紹介の患者には、始めから同様の事をしていたので、全部の患者にも同じ事をするようになった。余裕があれば、その分だけの支払いをしてもらう事にした。直ぐに金を払うと言った人には払って貰ったが、借りておくと逆に病気の事とか、健康相談の小冊子が届き、電話相談などもしやすく、いつしかみんな借りるようになった。寄付をしてくれた人にも同様だった。先代の治部次平の考え方は、部分的に取り入れられた。ただ初めは、限定的なものだった。財団も無制限な財源を持っているわけでもなかった。ただ思いがけなく、返してくれるお金も多く、寄付も集まり、ジブトラストや赤ちゃんスキ不動産に入ってる医院にまで、少しずつ、この制度が広がって行くようになった。長い間払えない人には、財団が相談して、就職先を斡旋したり、対応を協議していくようになった。

聖子の快適洋服も海外で製造し、海外で販売して、アフリカを除いて工場網もほぼ完備された。ついにエジプトの港の近くで縫製工場を作る計画があった。安いよのスーパーも郊外の3店舗から始まり、赤ちゃんスキ不動産のビルの一角も借りたりしていたが、少しずつ店を増やし、店も広くしていったが、そんなに大型店はなかった。それでも今では、全国の中都市にまで店舗網は広がり、20店舗を数えていた。客寄せや二郎対策で食品も置いたのが、効果が出て、安売りの店として有名になっていた。聖子は、生鮮や総菜も置いたが店内管理に自信がなく、売り切り方式を取っていた。閉店間際には、みんな値下げして、生鮮や総菜は無くなる店だった。

二郎と聖子との間の子供も大きくなり、長男の清太郎は、モデルのような青年になりタレントにもスカウトされるほどだったが、聖子は年齢よりずっと若く、家の中では、色ボケで艶やかな若い女としか見えず、清太郎は、女の子を聖子と比べるようになり、女の子と遊び回る事もせず、女の子を騙して風俗にたたき売る事もせず、いつしか牧師や坊さんのような青年になり、経済学部を卒業して、紡績に入っていた。礼儀正しく、品行方正で絵に描いたような青年になっていた。長女の綾子は、聖子と二郎の愛を奪いあうライバルになり、いつまでも異様に若い聖子にライバル心を持ち、聖子の快適洋服を上回る企業を自分の手で作ろうと考えていた。そして俊子や悦子に近づき、世界的なホテルチェーンを作ろうと、経済学部に進み、観光について勉強し、治部ホテルにアルバイトにいっていた。

悦子と洋一郎の長女の尚子は、逆に服飾に興味を持ち、文学部で心理学を勉強したにも拘わらず、治部洋服に入っていた。有希は、聖子に利益ベースでも追い越された事が、世界と日本との差であると認識していたので、幾つかの世界の有名ブランドを手に入れたり、交渉もしていた。孫の尚子を治部洋服の海外戦略の先兵にしようと教育していった。有希は、貢ぎ病は治ったものの、聖子とは違う路線で競う積もりであった。長男の洋高は、大人しい青年になり、理学部で化学を専攻し、洋一郎の手伝いをする積もりであった。
禎子と雅也との間の雅彦も大人しく、雅也の誘いに応じ、商会には入っていた。

香奈は、コシロと一緒にジブトラストに通い、海外のオフィスからの報告を見て、指示して、支援や出資の相談を受け、来客と会う日々だった。来客の予定がなければコシロと一緒に家に早く帰り、コシロと一緒にお不動さんの絵をみたり、香奈オフィスの報告をみたりとのんびり暮らしていた。歳にも拘わらずたまにスイスのコッソリートからの情報を元に、香奈ファイナンシャルとして取引したりしていた。スイスの運用会社での運用もコシロと一緒に取引していた。コシロが、コッソリートのメールを見て、香奈に、にゃーと鳴いて、国内株式を買う事もあったし、先物取引もコシロの表情に見ながら取引していた。ジブトラストも順調だったし、香奈はこんな生活が永遠に続くと思っていた。香奈はいつまでも元気だったし、歳の事は忘れていた。コシロも化け猫のように元気な猫だった。香奈はまだ海外総括だったので、海外に出かける事もあった。コシロはそんな時はゆっくり自分で部屋で休んでいた。香奈は出張の予定をコシロに言うのが癖になり、コシロもそれが分かるのか、そんな時は香奈を玄関で見送っていた。

ただコシロには、友達だった青不動さんから、夢の中で伝えられていた事があった。コシロは元気だったが、もう60才を超えていた。

青不動さん「コシロ、もうそろそろ香奈とはお別れだよ。もうそんなに生きられないよ。わしの力も限界があるのだよ。」
コシロ 「折角のんびりした日がおくれているのに、残念。でも今まで、楽しかったよ。香奈は海外に行っているけど、最後に会えないの。」
青不動さん 「今日や明日の事ではないよ。暫くは大丈夫だよ。でも心の覚悟をつけておきなさいよ。」
コシロ 「香奈と会った大学へ行ってみたいけど、無理だろうね。」 、
青不動さん 「奈津実の彼の良平が、今日夕方、奈津実を送りに敷地の端の美術館の前にくる。その車は屋根のついてない車だから、潜り込めば、大丈夫だ。お前が乗れば忘れ物を思い出して大学に戻るようにしてやるよ。その車は出発出来ないように、させるから、翌朝までゆっくりしなさい。朝、奈津実を迎えに来るようにしてやるよ。」
コシロ 「ありがとう、1晩ゆっくりとしてくるよ。」

コシロは、良平が奈津実を送ってくるのを美術館の前で待ち、こっそり車に乗って、大学に戻った。良平は忘れ物を取りに帰った隙にコシロは抜け出し、香奈と初めて会った大学の夜の構内を見て回った。コシロが香奈をつけ回していた頃から、月日が過ぎてすっかり、様子が変わってしまった。そして懐かしい部室の裏に行った。そこには茶色の猫が段ボールの中で寝ていた。茶色の猫は、何故か、怒りもせずに、じっとしていた。

コシロ「君が今ここに住んでいるのか、大昔ここに住んでいたので、一晩だけ、ここに休ましてもらうよ。」
茶色の猫 「大昔というといつの頃なの。」
コシロ 「60年ぐらい前かな。ここはあまり変わらないね。」
茶色の猫 「冗談の多いおじさんなのね。猫はそんなに生きられないのよ。」

茶色の猫は雌猫だった。コシロは、天才肌の孤高の猫だった。若い時の香奈を見て、秘めた想いを胸に隠し、長い間香奈と一緒に暮らしてきた。コシロは、猫が嫌いだったが、茶色の猫は真摯な、そして純粋な心を持つ雌猫だった。語り合っているうちに、初めて猫と関係を持った。コシロは、無意識に生きた証を残した残したかったかもしれない。翌朝まだ寝ている茶色の猫に無言で別れを告げ、激しい疲労を覚えながら、屋根のない赤い車に足を早めた。

良平は、忘れ物を取りに、大学に帰ったが、忘れ物を取って戻ってきると車の鍵が見つからなかった。ポケットの中に入れた筈なのに、判らなかった。修理会社に連絡しようとも思ったが、とりあえず明日の朝にしようと思い、カバーを掛け、タクシーで家に帰った。降り際にお金を払おうとして財布の中に車のキーがあった。大切なスポーツカーだったが、何故だか酷く疲れ、明日の朝は早く、奈津実を迎えに行く約束をしてしまっていた事に気付き、そのまま寝た。翌朝早く、家から又大学に行って、敷地の美術館に行った。道もすいていたので、早くついた。まだ時間には早く、少し散歩していると奈津実が来て、もう一度大学に行った。

香奈の家では大変だった。香奈が大事にしていたコシロの姿が消えていた。
瑠璃「コシロがいないのよ。お母さんが出張の時にいなくなっているのよ。お母さんが、帰ってきたら、大騒ぎだよ。いついなくなったのだろう。もう歳なのに。」
正人 「帰ってくる時に出かけるのを見たよ。姉さんも見たでしょう。」
奈津実 「美術館の前まで良平さんに送ってもらったけど、見かけなかったよ。」
正人 「良平さんとキスでもしていたから、判らなかったのでしょう。どちらにしても遠くには行っていないよ。不用心だけど、庭に面しているコシロの部屋の窓を少し開けておこうよ。」
「そうしよう、泥棒なんてこないよ。コシロを閉め出して、風邪でも引かすと香奈がうるさいよ。」
瑠璃 「お母さんには内緒だよ。お母さんは、2日したら帰ってくるから、それまでに帰って欲しいもんだね。」
正人 「明日みんなで探そうか。」
奈津実 「明日は、私早く大学に行くの。卒業論文の整理をしておきたいの。良平さんが迎えにくるのよ。」
瑠璃 「それは勝手にしなさい。こんな時にそんな事いって大変なのよ。コシロは私よりお母さんとの付き合いは長いのよ。60年以上も生きている猫なのよ。ギネス級の長生きの猫なの。取りあえず明日まで様子を見ましょう。」

そんな時、ジブトラストの管理セクションの常務で部長の斉藤から電話がかかってきた。
斉藤「会長は元気ですよ。ジブドイツの連中が今日はベルリンに案内して、良いブランディの出すレストランに案内してから、ホテルに送ると言ってました。翌日は空港まで送るので、もう電話出来ないから、コシロに言っておくようにとの会長からの伝言です。」
瑠璃 「コシロがいなくなったのよ。」
斉藤 「それは大変です。管理の連中で捜索隊を編成しましょう。みんなを呼び戻しましょう。」
瑠璃 「一応、明日の朝まで様子を見ましょう。お母さんには内緒にしてね。恵おばさんにも言ってないの。」
斉藤 「明日の朝、お電話しますね。捜索隊を作らないといけません。警備会社からも応援の人を出してもらいますよ。ヘリコプターも準備させるか考えます。」

翌朝、朝ご飯の前には、コシロはいなかったが、おそるおそる見に行った智恵子が、コシロが絵の裏で、深い眠りに入っているコシロを見つけた。死んでいるようにぐっすり寝ていた。
智恵子「コシロが寝ています。でも動きませんよ。」
徹彦 「でもお腹が少し揺れているよ。ぐっすり休んでいるんだよ。」
瑠璃 「コシロの部屋とお母さんの部屋の窓を閉めておいてね。もう大変だよ、コシロがいなくなると。内緒だよ、コシロがいなくなったのは。斉藤さんにも口止めしておくわ。」
徹彦 「そうしよう。智恵子も黙っているんだよ。」
智恵子 「そうします。」

香奈「この間誕生日が来て吃驚したよ。私も、もう82才になっているんだよ。」
「私も78才になったよ。この間財団で話していると、ここは仙人の里と言われているらしい。お義父さんたちも長生きだったけど、最近はなんかおかしいね。病気にもならないし、みんな元気だね。」
香奈 「この間気が付いたけどね、神太朗くんが生まれてから、100才以下では死ななくなったね。」
「そう言えばそうだね。小百合さんもここに越してから、元気そうだね。もう大丈夫なの。」
香奈「もうすっかりいいよ。貴金属会社に副会長室も作って、お店関係の総括をしているよ。真理さんは会長になったよ。海外関係は美枝子さんが動いているよ。」
「徹さんもこの頃家に居るね。」
香奈「もう年だからね。会社も完全に辞めたよ。未練たらしく、会長とかにしがみついていたが、さすがに85になったら、辞めたよ。今は徹彦が副社長になっているけどね。徹さんは瑠璃の会社をこっそり見ているよ。瑠璃は日本でも石油会社も持っているからね。」
「瑠璃さんは海外にも良く行くけど、よく帰ってくるね。」
香奈 「ここの家に帰ってくると元気が出てくるらしいよ。」
「香奈さんの海外の会社はどうなったの。」
香奈 「ある程度はジブトラストに吸収したよ。資源関係のビジネスなんかは、瑠璃が面倒見て大きくなっているよ。機械販売会社まで持っているよ。資源利権をボッタクリのように取ってくるのよ。それに相当あいつのものになっているよ。増資もしたからね。報告は受けるけど、もうほとんど瑠璃に任せているよ。私は、今、ジブトラストの会長と香奈オフィスの会長なのよ。」
「私もビルはほとんど小夜さんに任せているよ。ビルは結局、小夜さんが大きなビルを、大阪と福岡にも作ったので、私も、集中的にビルを管理する会社の会長になったよ。みんな孫も大きくなってきたからね。」
香奈 「徹彦や瑠璃の子供でさえ、大学に行くようになったよ。みんなの孫も同じような年齢になってきたね。瑠璃の娘の奈津実は大変な娘になったよ。」
「やっぱり売春でもやっているとか、変な趣味があるとか、妊娠しているとかなの。真面目そうな女の子に見えるけど。」香奈「瑠璃の娘だし、瑠璃は海外によく行くし、放任しているから、そうなるかと思っていたけど、くそ真面目な女の子になったよ。色々とうるさいんだよ。飯食う時の箸の持ち方が悪いとか、新聞読んで飯食うなとか飯食う姿勢が悪いとか言うんだよ。瑠璃にもこそこそ工作するのではなくて、相手の気持ちを酌んで、誠意を持った対応をしなくてはならないとか言ってるよ。瑠璃は、一枚の紙にも裏もあるし、表もある。裏で処理する方がその人の面子を守る事にもなるんだよとか云ってるよ。この間格安で鉱山の利権を取った事を説明していたよ。ボッタクリだと言われたが、色々相手側にも事情があったんだね。陰で売った人の援助しているなんて、私も始めて知ったよ。私は、瑠璃が又金で頬撫でて、ボッタクリしたと思っていたよ。みんな、須坂瑠璃とは言わないよ。資源ハゲタカと言われているのよ。奈津実も真剣に聞いていたよ。徹彦の長男の徹志も言葉使いも丁寧で、飯なんて云うとご飯でしょうとか言うんだよ。勝彦君の子供の瞳ちゃんも綺麗な女の子だけど、地味な格好で真面目だし、最近おかしいと思わない。恵の所の孫も頭もいいし、真面目な子みたいばっかりだね。」
「健一の息子の健は、頭良いんだよ。東大の工学部に行って、鉄鋼に入る事になったのよ。健一は身体だけの男だし、小夜さんはハデハデおばさんなのに。健二の娘の由香里も格好は派手だけど、真面目で優秀なんだよ。医学部に行っているのよ。由香さんの息子の健太君の所も、健行君が東大の理学部の数学科で勉強して、大学院に行くつもりらしいよ。家の中は、一時キャバクラみたいな雰囲気だったから、どんな子に育つか心配していたのに、友一まで東大に入っているのよ。もうすぐ法学部を卒業して安倍化学に入る予定なのよ。あの友貴の息子だよ。私の家から四人も東大に入るなんておかしいね。香奈さんの所は、ほとんどみんな東大だけから珍しくないかもしれないけど、私の家では大変な事だよ。」
香奈 「俊子さんもそう言ってるよ。悦子さんの子供も真面目な子でね。聖子ちゃんの息子の清太郎君はモデルにでもなりそうな男の子なのに、真面目なんだよ。禎子ちゃんの子供も真面目なんだよ。みんな品行方正な子ばっかりだよ。東大なんてマイクロバスで行っていた時もあるらしいよ。」
「神太朗君の影響かも知れないよ。みんな一緒に幼稚園まで行っていたから。」
香奈 「いい子に育つのはいいけど、なんか面白くないね。小百合の息子の道太郎君は、まだ本音を言うよ、道之助さんの真面目な所も引き継いでいるけど、小百合に似て結構生意気な面もある子なんだよ。みんな、もっと本音言い合う事もして欲しいね。」
「いい子に育つのは良いことだよ。結構子供同士では言い合っていると思うよ。」
香奈 「瑠璃は頭は良かったけど、不良でそれなりに私と同類みたいで分かったけど、孫たちは、みんな真面目で姿勢もいいけど、本音は分からないから、大丈夫かね。神太朗君はみんな大丈夫だと言ってくれているけどね。」
「真面目な子で心配するのはおかしいよ。神太朗君は運用会社にも行ってるみたいだね。」
香奈 「そうだよ。よく来ているのよ。社長室には正子さんの椅子以外に大きな椅子が3つのあるよのよ。神子ちゃんも時々来ているよ。神太朗君たちがくるとすぐ分かるよ。空気が変わるもの。真理さんまで分かるらしいよ。」
「今度、運用会社に行ってみるよ。私はビルには週1回程度しか行かないよ。香奈さんはいつ行くの。」
香奈 「私は午前中は、コシロと一緒に毎日いるよ。午後はコシロと一緒に早く帰るよ。香奈オフィスからの報告を見るのよ。」

神太朗が大学を出て、ジブトラストに入り、社長秘書となり、正子を手伝いだして、一層大きくなり、現金とは別に、運用資産は六兆になった。

コシロが死んだ!

香奈は、神太朗がジブトラストに入り、ジブトラストも益々安定的になってきたので、ゆったりとした生活をおくっていた。神子も、大学を卒業した後はジブトラストに入る予定だった。神子は、カミカミで株式投資をして、好調な成績を上げていた。神太朗は若いのに、国内の支援や出資を、良くまとめており、香奈も安心していた。正子も、神子の株式投資の予測を信頼して、先物にゆっくり取り組んでいた。香奈は、コシロとジブトラストに行き、海外チームの報告を見て指示し、全体的な話を決定して、家にコシロと一緒に帰り、お昼を食べ、コシロと一緒に香奈オフィスからの報告を読み、たまには画廊の人とお不動さんのコレクションの話をしたりしていた。奈津実たちも大きくなり、奈津実は大学を卒業し、大学院に入った。晩ご飯の食卓も賑やかであった。晩ご飯の後、コシロと一緒に、スイスのコッソリートからの連絡をみながら、チャンスがあれぱ短時間取引して、海外の動向も入手していた。海外のジブトラストも順調だった。香奈オフィスも瑠璃が上手に運営して、鉱山や油田の利権も取り、安定していた。香奈は、冗談を言って、雑談する程度であった。香奈は益々元気だったし、コシロも不死身のように元気だった。香奈にとっては、穏やかな日々が続いていた。ある日、コシロは、ジブトラストの会長室にかけてある青不動さんに向かって、にゃーにゃーと言って、ジブトラストから香奈と一緒に帰り、何度も振り返った。

青不動さん 「コシロ、いよいよ明日の早朝だよ。こっちの世界に来る事になったよ。今日の晩は香奈とゆっくりしなさい。」
コシロ 「色々とありがとう。今日は香奈とゆっくりするよ。長い間ありがとう、もう会えないね。」
青不動さん 「こっちではいつも会えるよ。お前の子供たちが出来ているよ。又香奈と一緒に暮らすよ。香奈はまだこの世でなすべき仕事が残っているんだよ。コシロもこっちから見ているといいよ。」

コシロが死んだ。やっぱり不死身ではなかった。前日は元気で、香奈に、にゃーにゃーと普段無口なコシロなのに、いつになく声をかけていた。人嫌いで香奈だけには寄ってきたが、抱かれる事はない猫なのに、その晩は香奈に長い間、抱かれて甘えていた。ジブトラストに一緒に行く時間になっても玄関に来ず、不審に思った香奈が、コシロの部屋に行くともうコシロは、お不動さんの絵の裏でもう冷たくなっていた。コシロは眠るように死んでいた。香奈は、コシロのお葬式を挙げ、ショックのあまり、ジブトラストを1週間も休んでしまった。香奈とコシロは、60年以上の付き合いであった。お不動さんの絵の裏を何度も眺め、涙が出てきた。とても取引どころではなかった。予め予定された出張とは異なり、ジブトラストの重要な決定は延期され、いくつかの来客の訪問も延期され、急ぎの話は、正子が取引が済むまでじっと待って、承認を貰う羽目になった。正子は取引の時は静寂な環境の中で、お香を焚いて心を静めて取引しており、さながらお寺の中のような雰囲気の社長室であった。緊急の事で、話できるのは香奈程度であった。漸く会っても、正子は細かく色々と質問した。正子は神掛かり的な取引をしていたが、やはり天才的な先物ディラーであり、そして自己責任を重視し、他人の弱さや間違いを大目に見る事はなかった。要するにボンクラを相手にしなかったし、失敗や間違いを大目に見る事は出来ない人だった。人にも厳しく、自分にも厳しい人だった。やっとの思いで、正子の了解をとっても、香奈の意向を確認してねと最後に言われ、管理セクションの常務は、毎日香奈の家に行き、コシロにお線香をあげ、香奈の意向を聞き処理した。これ以上香奈が出てこないと仕事にも影響が出そうだった。親しかった恵に、香奈を慰めるように依頼した。香奈には、青不動さんも夢の中に出てきて慰めていた。

「香奈さん、大丈夫なの。猫で60年以上生きれば、信じられない程の長生きだよ。本当の大往生だよ。」
香奈「なんと言っても長い付き合いだからね。私とは徹さん以上に長いのよ。歳に不足はないけど、やはりショックだよ。前の晩は、いつも触られるのが嫌な猫なのに抱きついて、ゴロゴロと鳴いていたのよ。いつもいる存在が突然いなくなるのよ。徹彦や瑠璃よりも付き合いは長いのよ。」
「生き物だから、いつかは死ねよ。私たちもそうだよ。」
香奈 「それはそうかも知れないね。コシロの分も頑張るよ。青不動さんにも、猫でも一生懸命、生きたのだからお前も頑張れと言われたよ。」
「そうだよ。頑張るしかないのよ。」


香奈スペシャルNo.3-1  に続く
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