『二度生まれの男・パウロ物語』


 ナザレのイエスが生まれてから何年かが過ぎた頃、ローマの属州キリキアの首都タルソで一人の男

の子が生まれました。その子はパウロと名づけられました。

 人間は、生まれる時代も場所も親も選ぶことはできません。それらは人間にとって宿命的なもので

す。人間は必ず、特定の時代の、固有の文化を持つ特定の社会の中に生まれます。パウロにとって、

両親がディアスポラ(離散)のユダヤ人であったことは、まさに宿命的なものでした。

 生後八日目に、割礼の儀式が行われました。割礼は、ユダヤ人が信じるヤハウェという神によって選

ばれた、神との契約の民であるイスラエルへの加入を意味していました。つまり、それは、ユダヤ人社

会への加入を意味する契約の印でした。こうして、パウロはユダヤ人として生きていくよう方向づけられ

たのです。


        

      
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