『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』
「西欧だけが、古代社会という時代の枠組みを突破し、典型的な中世封建社会を形成した。また、
中世封建社会という時代の枠組みを突破し、近代社会を形成することができたからなんだ。」
「どうして、そのようなことができたの?」
「時代の枠組みを突破するには、生産力と生産関係の矛盾といった経済的な諸条件が整っただけ
ではだめなんだ。突破のための精神的エネルギーを持った集団の存在が必要なんだ。その精神的
エネルギー形成のためには、ユートピア思想が必要となる。そのユートピア思想を提供したのが、
ルター、カルヴァンであり、パウロおよび古代ユダヤ教の預言者たちだった。」
「ユートピア思想って何なの?」
「<トピア>というのは、<場所>という意味なんだけれども、人々が実際に住んでいる社会のこと
だと思っていいよ。その社会に住む人たちは、自分たちの社会は当たり前のものであり、自分たちが
把握している世界は自明の現実であると思って生活しているんだ。それに対して、その社会を超えた
社会もあり得るんだということを示した思想がユートピア思想なんだ。<ユートピア>という語は、ラテ
ン語で<どこにもない場所>という意味なんだよ。」
「ユートピア思想は、ユダヤ教、キリスト教だけではなかったんでしょ。なぜ、その二つの宗教だけ
が歴史に大きな影響を与えることができたの?」
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