『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』
「分かった。それでは、最初の疑問に戻りたいんだけれども、キリスト教国でもない日本が、どうし
て、このような経済成長を遂げることができたの?」
「私が、その最も大きな理由であると考えているのは、日本に、西欧とはまったく同じではないんだ
けれども、封建制の社会が成立したことなんだ。」
「どうして日本に封建制の社会ができたの?」
「それについては、日本と中国を比較しながら考えてみようね。
封建制とは、簡潔に言うと、土地(封土)を媒介とした主従関係と言うことができる。中国では、秦王
朝から清王朝まで、絶対的な権力を持つ皇帝が支配する中央集権的な国家が続いたんだけれども、
それと比べれば、日本の封建制は地方分権的な制度だよね。その違いはなぜ生じたと思うかい?」
「日本が島国だったことと何か関係があるんじゃないかな。」
「そう。中国は大陸国家であり、国が強力な軍隊を持たないことには周囲の国から侵略されてしま
う。そして、強力な軍隊を保持するためには、経済的な支配権も握った強力な中央集権国家である必
要があった。」
「日本は島国であったために海が防御壁となり安全であったので、平安時代には軍隊を廃止してし
まったんだよね。」
「そうだね。だから、日本国内は治安が悪くなり、平安時代後半には、有力農民である開発領主た
ちが、自分が開墾した土地を守るために武装した。それが武士の起こりなんだ。そして、それらの武
士たちの土地所有権を保証することによって成立したのが鎌倉幕府ということだね。
頼朝が御家人に対して安堵状(あんどじょう)を出し、御家人はその御恩に対して軍役などの奉公
を行うという関係なんだ。それから、次に重要なのが支配の正当性に関する考え方の違いだ。」
「皇帝制と天皇制の違いってことなの?」
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