『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』


 「それは、宇佐八幡宮には天照大神が祀られているからだよ。」

 「えっ、天照大神は伊勢神宮に祀られているんじゃないの?」

 「宇佐八幡宮には三柱の祭神が祀られている。応神天皇、神功皇后そして比売大神(ひめのおお

かみ)の三柱なんだ。井沢元彦氏は、その比売大神こそ天照大神であると言っている。社殿での配

置は、比売大神が真ん中の主祭神の位置に祀られている。しかも、拝礼作法は、出雲大社と同じ二

礼・四拍手・一拝となっている。四拍手は死拍手であり、怨霊を封じ込める意味を持っている。

 ところで、卑弥呼のところで話したことを覚えているかい。邪馬台国が狗奴国との戦争に敗れた

時、崇神天皇が、霊力が衰えた卑弥呼の責任を問い、殺害し、その後、祖先神として祭り上げたこと

を話したよね。だから、天照大神は天皇家の祖先神であると同時に怨霊的存在でもあり、死拍手で

封じ込めなければならない存在なんだ。

 そのようなことから、井沢元彦氏は、宇佐八幡宮の主祭神は天照大神であり、それゆえに、血統に

よる皇位の継承という、それまでの皇位継承ルールの変更に当たり、祖先神・天照大神の神意を確

かめるために、宇佐八幡宮に和気清麻呂を派遣したのだ、と言っている。私も、その通りだと考えて

いるんだ。」

 「じゃ、伊勢神宮に祀られている天照大神はどういう存在なの?」

 「伊沢氏は、墓と仏壇の関係に例えると、宇佐八幡宮が墓であり、伊勢神宮が仏壇のような関係で

あると言っている。

 応神天皇の時、天皇一族は北九州から畿内に進出し、後の天皇が畿内の豪族たちを従えたとき、

天照大神の霊を伊勢神宮に迎えたんだと思うよ。でも、前に話したように、持統天皇を除いて、歴代

の天皇たちは伊勢神宮には参詣(さんけい)していない。天照大神は祖先神であると同時に恐ろしい

存在でもあったからであると思う。」

 
     

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