『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』
「遠交近攻って言葉を知ってるかい?」
「遠い国と同盟を結んで、近くの国を挟み打ちにして滅ぼすということなの?」
「そうだね。中国はその方法で近くの国々を滅ぼしてきた。そのときも、唐は新羅を滅ぼすために倭
国との同盟を求めてきた。」
「でも、そうやって新羅が滅ぼされてしまったら、次は日本がやられてしまうんじゃないの?」
「その通りだと思うよ。」
「天智天皇は唐の同盟要請を断ったんでしょ。」
「いや、天智天皇は新羅の同盟要請を断り、唐と同盟しようとしたみたいなんだ。」
「なぜなの?ここは新羅と同盟して、朝鮮半島に新羅を存続させるという選択をすべきだったんじゃ
ないの?」
「欽明天皇の時に、任那が新羅に奪われてしまって、欽明天皇が息子の敏達天皇に任那奪還を命
じたということを前に話したよね。その時以来、新羅からの任那奪還は天皇家の家訓として残った。
任那は天皇家のルーツだからね。どうしても、取り戻すべき地だった。天智天皇は敏達天皇の曾孫
にあたる。天智天皇にとって、その家訓は、いまだに重要なものだったに違いない。したがって、天
智天皇にとって、新羅との同盟はあり得ないことだったと思うね。」
「じゃ、新羅はどのような外交戦を展開したの?」
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