『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』
「我々日本人は、そういった弱点を自覚しておく必要があると思う。」
「天皇が、中国の皇帝や古代ローマ帝国の皇帝のような絶対的な権力を持たなかったのは、日本
人が憲法十七条に示されているようなエートスを持っていたからなの?」
「天皇は豪族連合の最高首長というだけで、中国の皇帝やローマ帝国の皇帝のような強力な権力
を持ったことは一度もない。豪族たちの意向を無視することはできない存在だった。それは、縄文人
の『和』を大切にするという価値観が日本人のエートスの底流として、弥生時代から現代まで継承さ
れてきたということが、専制的な権力者を嫌うという傾向を形成してきたからであると思う。
また、日本が島国であったために、海が防御壁となり、異民族の侵攻を撃退するために中央集権
的な権力のもとに、強力な軍隊を保持する必要がなかったという点も大きな理由だと思う。」
「そうか。それから、聖徳太子の一族が、息子の山背大兄王(やましろのおおえのおう)の時、全滅
させられたのはどうしてなの?」
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