『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』
「哲学者であり社会学者のアルフレッド・シュッツという人が言っていることなんだけれども、
人間の意識は常に何かを志向している。何に対して意識が向かい、それに対してどのように
感じるか、というようなことが民族によって、また個人によって違いがある。そういったことが、
感情移入の絆を通して赤ちゃんの心に沈殿し、習慣化していくんだ。それをシュッツはレリヴァンス・
ストラクチュア(有意性構造)と言っている。それが感情のパターンなんだよ。そして、それがそれ
ぞれの民族の文化の基礎を形成しているということなんだ。」
「心に沈殿し、習慣化していくって、どういうことなの?」
「脳の神経細胞のネットワークがある程度固定化し、それ以降はそのネットワークが基本構造は
変わらずに複雑化していくということだと考えられる。人間の心とは、そのネットワークの形であり、
機能的特性だと思う。」
「じゃ、もっと具体的には、どのようなやり方で鋳型にはめられていくの?」
「それは、不安という感情が大きな役割をするんだ。赤ちゃんは、母親の保護を必要とするので、
母親から自分に向けられる有害な情緒に不安を感じて、それを避けようとして、母親が是認する
パターンに形成されていくことになる。そして、一旦、感情のパターン(有意性構造)ができあがると、
その後も、大体その方向で形成されていくことになる。なぜなら、その傾向を否定するような体験を
した場合、強い不安を感じてしまうからなんだよ。」
「そのことと、時代の枠組みと、どう関係するの?」
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