『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』


 「不比等が最も隠しておきたかったことは、天皇一族の出自が朝鮮半島であったことだと思う。それ

から、邪馬台国や卑弥呼も隠しておきたかった。不比等らは『魏志倭人伝』については、中国の文書

なので隠すことはできないと思ったのだろう。『日本書紀』神功(じんぐう)皇后の巻に『魏志倭人伝に

よると、倭の女王が中国に朝貢した、云々』という記述があり、その倭の女王が神功皇后であるかの

ようにみせかけて、邪馬台国や卑弥呼、臺与を抹殺した。そして、天皇一族の出自が朝鮮半島であ

ったことを隠すために、高天原からの天孫降臨という神話を作り、神々につながる天壌無窮(てんじょ

うむきゅう)の存在としたんだ。また、崇神天皇と応神(おうじん)天皇の歴史的事実を核として、神武

(じんむ)天皇の東征を捏造し、それに辻褄を合わせるために、神武天皇以降、崇神天皇の前までの

天皇を捏造したものと思われる。

 それから、井沢元彦氏も言っているように、不比等は、持統天皇から孫の軽皇子(かるのみこ)・後

の文武(もんむ)天皇への先例のない譲位を正当化するために、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)の外祖

父にあたる高皇産霊尊(たかみむすひのみこと)ではなく、祖母の天照大神(あまてらすおおみかみ

を)最高神とする天孫降臨の神話を作り上げたのであろうと私も考えているんだ。」

 「そうだとすると、『日本書紀』は歴史書としては、あまり信用できないよね。」

 「でも、書かれてあることは、改竄・捏造は部分的なものだと思うし、歴史的事実が核となっている

面もあるので、『日本書紀』の叙述を多面的に考察し、考古学的事実を勘案しながら歴史的事実を推

理していくしかないと思うね。」

 「じゃ、イズモ政権に戻ってほしいんだけれども、イズモ政権とヤマト政権の対立はどうなったの?」


     

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