『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』
「そのことに関しては、『日本書紀』は、誰が何のために編纂させたのかを明らかにする必要があ
る。今から、そのことについて話してみることにするね。」
「『日本書紀』は、天武天皇が当時の学者たちに命じて編纂させた、最も信頼できる古代の歴史書
というわけではなかったの?」
「『日本書紀』は天武天皇の命で編纂が始まったのだけれども、完成したのは720年(養老4年)で、
元正(げんしょう)天皇の時なんだ。その頃、実権を握っていたのは藤原不比等(ふじわらのふひと)
で、彼の考え方が編集方針に大きな影響を与えたものと思われる。」
「不比等はどのような考えを持っていたの?」
「まず、不比等は、自らは天皇になることを目指さず、天皇家に寄生して実権を握っていくという道を
選択したんだ。」
「どうやって実権を握ったの?」
「天皇や皇太子などに自分の娘を嫁がせて、自分の孫を天皇に即位させることによって、天皇の外
戚として権力を握っていった。そして、藤原一族が永久に権力を握っていくためには、寄生先の天皇
家が永久に続いていく必要がある。そこで、歴史の改竄(かいざん)・捏造(ねつぞう)が行われたも
のと思われる。」
「どんな改竄・捏造が行われたの?」
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