『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』


 「かつては、出雲には力のある豪族は存在せず、大国主命の話は神話の形を取った完全なフィクシ

ョンであると考えられていた。しかし、島根県荒神谷(こうじんだに)での1984年(昭和59年)から翌年

にかけての発掘調査によって、銅剣358本、銅鐸(どうたく)6個、銅矛(どうほこ)16本が出土し、さら

に、1996年(平成8年)に、荒神谷遺跡からわずか3~4キロメートルしか離れていない島根県加茂岩

倉(かもいわくら)で、39個の銅鐸が発見された。荒神谷で見つかった銅剣358本という数字は、それ

までに発見された銅剣の総数を上回る数だった。また、加茂岩倉遺跡で見つかった39個の銅鐸は、

一カ所での最多記録で、今まで一番多かったのは14個なんだ。これらの発見により、出雲地域にか

なりの勢力のある豪族が存在していたという説が有力になってきた。したがって、大国主命の神話

は、完全なフィクションではなくて、歴史的事実が核となって構成されたフィクションではないかと推察

される。

 私は、出雲氏が日本海を通って朝鮮半島から鉄鋌を輸入し、それを各豪族に分配することにより、

畿内の豪族連合の中で権力を握っていったものと考えている。」

 「じゃ、なぜ『日本書紀』では、キビ政権やイズモ政権などが記述されていないの。邪馬台国や卑弥

呼なども登場しないんでしょ。どうして?」


     

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