『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』


 「佐治芳彦氏の言っていることが事実だとすれば、黒板勝美・今西龍は、知的誠実さという学者とし

ての魂を売り渡した、曲学阿世(きょくがくあせい)の徒ということになるね。

 当時、そのことを追求されたとしたら、彼らは、次のように言うと思う。『我々は日本国のために皇国

史観を守ってやったんだ』とね。」

 「どうして皇国史観を守ろうとしたの?」

 「彼らは、男狭穂塚の発掘調査や朝鮮半島の歴史資料から、天皇一族の出自が朝鮮半島であるこ

とは分かっていたと思う。しかし、当時の日本社会の思想的潮流は皇国史観となっていたんだ。彼ら

は、歴史研究者としての自由な精神と知的誠実さで、その流れにあえて逆らうという道を選択せず

に、その流れに乗って学会での権力を握るという選択をしたのだと思う。」

 「そうだとしたら、ほんとにとんでもないことだね。もし、彼らが学者としての良心を発揮して、そのよ

うな時代の空気に水を差していたら、太平洋戦争へと突き進むこともなかったかもしれないね。」

 「たとえ、焼け石に水ということになったとしても、そうすべきだったと思うね。」

 「また、弥生時代の話に戻ってほしいんだけれど、御間城入彦の北九州への再侵攻は成功した

の?」


     

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