『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』
「突厥(とっけつ)・鮮卑(せんぴ)・契丹(きったん)・蒙古(もうこ)などの騎馬民族国家の王位継承
は、あくまで父系であり、血統が途絶えた時はすなわち王朝の滅亡を意味し、農耕民族国家のよう
に、易姓革命思想に基づく禅譲などはあり得ないことだった。そして、王位継承の儀式において、継
承者はフェルトに包まれて横たわり、擬態として一度死に、天神の神霊を身に受けて、<俗>に死ん
で、<聖>に復活し、現御神(あきつみかみ)になるというものだった。」
「それと、御間城入彦が行った神話形成と、どう関係するの?」
「御間城入彦は、そのような騎馬民族の神話や王位継承の伝統と、倭人の伝統的な太陽神信仰と
の習合を行ったんだと思う。つまり、騎馬民族の神話をそのまま倭人の地に持ち込んでも、拒絶され
るのみだと気づいたんだ。そこで、卑弥呼を天照大神(あまてらすおおみかみ)として祭り上げ、自分
は天照大神の子孫であり倭の地を支配する正統な、また正当な大王であるという神話を形成したの
だと思う。
だから、今でも、天皇の即位式の時には、騎馬民族の儀式と同じように衾(ふすま)をかぶって臥
し、1時間ほど絶対安静のもの忌みをする。そして、神霊を身に受けて現人神(あらひとがみ)として
復活するということになる。また、天皇の権威・権力の正統性・正当性は、あくまで父系の血統を守っ
てきたという血統カリスマにあるという点も騎馬民族の伝統と一致する。」
「御間城入彦は、なぜ、殺害した卑弥呼を神に祭り上げたの?」
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