『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』
「具体的には、カルヴァン主義者たちの集団なんだ。」
「カルヴァンってあのルター、カルヴァンのカルヴァンなの?」
「そう。カルヴァンは、フランスのルター派の信者だったんだけれども、フランスでルター派が弾圧さ
れ、スイスのジュネーヴに亡命した。その地で、彼はルターの考えを自分なりに発展させて、予定説
と呼ばれる考えに到達した。」
「予定説ってどんな考えなの?」
「カルヴァンが考える神は、絶対的な創造神で、その人の心の奥底まで見通しているような神であ
り、一人一人の人間が、死後、天国に行くのか、そうでないのか、あらかじめ決めている神なんだ。」
「最初から、死んだ後、天国か地獄か決まっているんだったら、僕がキリスト教徒だったら、生きて
いるうちは自分の好きなように生きると思うよ。どう行動しようと決まっているんだもの。」
「日本人の大半の人は、そう考えるよね。でも、当時のカルヴァン主義者たちは、そうは考えなかっ
た。カルヴァン自身は、宗教的な天才だったからだろうけれども、どちらに予定されているのか、人間
は知ることができないという緊張に耐えて、信仰を維持することができた。でも、普通の人間は、その
ような緊張状態に長期間耐えていくことは非常に難しい。自分は救いに予定されていないのかもしれ
という不安や恐怖を何とかしたいと思ったに違いない。そこで、自分は救いに予定されているという
確信を得たいと、強く渇望するようになるんだ。」
「どうすれば、そのような確信を得ることができると考えたの?」
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