『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』


 「西欧中世社会の時代の枠組みを突破して形成された社会とは、近代社会だよね。それでは、近

代社会の枠組みと言ったら何だと思う?」

 「民主主義の政治と資本主義の経済じゃないかな。」

 「その通りだね。政治についてはいろいろな解説書が出ているので、そちらを読んでくれ。」

 「分かった。じゃ、中世社会の枠組みの突破と資本主義経済の成立の話を聞かせて。」

 「まず、資本主義経済というものをどのように定義するかということなんだけれども、単にお金儲けを

目的とする経済と定義するなら、資本主義経済は古代からあったし、中国やインドやイスラム社会に

もあった。しかし、目的合理的な経営を行う資本主義経済というふうに定義するなら、それは、16世

紀から17世紀にかけての西欧のごく狭い地域においてだけ、自生的に成立した。」

 「どうして、その時期の、限定された地域においてだけ成立したの?」

 「西欧中世社会は、ローマ・カトリック教会が人々の精神を支配していた。そして、人口の数パーセ

ントの支配者たちが90パーセント以上の農民などの人民を搾取しているという社会にあって、教会は

人々に『労働は神が人間に与えた罰であり、つらいものだ。しかし、死後に天国という救いがあるの

だ』と教えていた。また、利子を取ったり、お金儲けをするのは良くないことだと教えていたんだ。」

 「じゃあ、近代資本主義は、そのような、経済に対する教会の規制が緩和されていった地域で発生

したんだね。」

 「いや、それがまったく違う。宗教的には、キリスト教が人々に、より厳しい宗教的規律を要求するよ

うになった地域で発生したんだよ。」

 「えっ、それはどういうこと?」


     

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