『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』


 「それは、パウロが、原体験・クレドーによって紡ぎ出された自分の思想に自信を持つ、本物の思想

家だったからだろうね。

 ここで、パウロの思想を整理してみよう。彼は、原体験後もヤハウェの存在についての信仰は変わ

らなかったということは、さっき話したよね。しかし、『イエスこそキリストである』というクレドーを形成

すると、ヤハウェについての観念がかなり変わったんだ。つまり、原体験以前のヤハウェはイスラエ

ル民族と契約を結び、イスラエル民族が契約を守らなかった場合、契約を忠実に守っていたノアの家

族以外を皆殺しにしてしまうような恐ろしい神だったんだけれども、原体験後のヤハウェは、愛の神に

変わるんだ。」

 「えっ、どういうことなの?」

 「やはり、回り道して説明しよう。アダムとイヴが神の言いつけを守らなかったために、エデンの園を

追放されたという話は知っているよね。」

 「うん。神から、食べてはいけないと言われていたリンゴの実を食べてしまって、楽園から追放され

てしまったという話だよね。」

 「そう。アダムとイヴは神の言いつけに背いたので、その子孫はすべて罪人として生まれてくる。

そして、それがすべての人間が負っている原罪なんだと、パウロは考えたんだ。」

 「じゃ、みんな地獄に行くというの?」


     

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