『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』

 「ローマ皇帝ディオクレティアヌス帝がキリスト教徒の大弾圧を行ったことは知ってるね。

それ以前にも、ネロ帝以降、キリスト教徒は弾圧されていたんだ。」

 「どうして?」
 
 「ディオクレティアヌス帝はローマ帝国最初の専制君主で、自分を礼拝するように強制したんだ。

しかし、キリスト教徒はそれを拒否したので迫害されたわけだけれども、彼以前の皇帝も

皇帝崇拝を求めており、それに従わなかったキリスト教徒が迫害されてきたんだ。」

 「そのような迫害にもかかわらず、なぜローマ帝国内でキリスト教徒が増えていったの?」

 「キリスト教団には、ミトラス教団というライバル教団が存在していたんだけれども、

ミトラス教団に入会できるのは、男性のみだったし、ミトラス教にはキリスト教の聖書のような

教典が存在していなかったことが大きいと思う。キリスト教団では、紀元百年前後に新約聖書が

成立しつつあったし、ユダヤ教の聖書をも自分のものにしていた。それらの聖書の存在が

キリスト教徒の信仰を支えていたんだ。そして、ローマ帝国には奴隷がたくさんいたので、

神のもとの平等を説くキリスト教がそれらの奴隷たちに受け入れられていったんだ。

さらに、キリスト教は女性の入会も可能だったので、社会的に差別されていた女性たちにも

受け入れられていった。女性がキリスト教信者になれば、その女性の子どもたちは、幼児期から

キリスト教文化を身に付けていくわけだよね。しだいに、社会的に上層の女性たちも信者になってくると、

その子どもたちがキリスト教信者になり、社会的に上層の男性の信者も増えていったんだ。」

 「でも、ディオクレティアヌス帝はキリスト教徒を捕まえて虐殺したんでしょ。そのような大弾圧にあっても

何故キリスト教団は壊滅しなかったの?」


  

(2019/1/11)

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