『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』
「ここで、また回り道して説明することにするね。まず、アメリカの精神医学者・ハリー・スタック・サリヴァン
(1892~1949)のパーソナリティ理論を紹介しよう。彼は、人間のパーソナリティは、<自己>からだけ
成るものではなく、抑制・抑圧・解離という<自己>の機能によって意識の枠外に追いやられた諸体験、
すなわち<非自己>も<自己>とともにパーソナリティを構成する一部分であると言っている。
また、彼は、<自己>とは一個の固定的実体ではなく、対人的過程が集合してつくる一つの図形(かたち)
であると言っている。この考えに従って、古代イスラエルの預言者の行動を見てみよう。
古代イスラエルの預言者は、多分、幼少期にヤハウェについて、ヤハウェが与えた律法について
親や周りの人たちから聞いていたに違いない。しかし、ヤハウェそのものは<自己>に統合できるものでは
ないので、抑制・抑圧・解離という<自己>の機能によって、無意識の<非自己>の領域に追いやられていたに
違いない。何らかの原因により、この抑制・抑圧・解離という<自己>の機能が弱まったとき、意識の枠外へと
追いやられていた体験が意識へと昇ってくるのだと考えられる。そして、預言者は、意識の枠外から聞こえてきた声を
神・ヤハウェの声であると信じたんだね。だから、その神の声をイスラエルの民に届ける使命があると思ったんだ。
当時の人々は、それらの現象を、神・ヤハウェのルーアッハ(霊)がその人間に降ったのだと考えたんだ。」
「じゃ、どうして預言者は迫害されたの?偽預言者とでも思われたの?本物の預言者か偽預言者かは
どうやって見分けたの?」
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(2018/6/13)
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