『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』

 「神観念の出現に関しては、ちょっと回り道して説明することにするね。

話は、3万数千年前のことに戻るけれども、その頃のヨーロッパは激しい気候変動に

みまわれて、ほぼ10年ごとに極端な寒冷化と温暖化を繰り返していたんだ。

それによって森林がなくなり動物も激減して、ネアンデルタール人が絶滅してしまったんだ。」

 「その頃のヨーロッパには、ホモ・サピエンスもいたんでしょ。彼らは絶滅しなかったの?」

 「さっき、フランスで見つかったホモ・サピエンスの洞窟壁画から、彼らが宗教意識を持ち始めて

いたらしいという話をしたよね。その頃になると、いろいろな精霊の中から有力な精霊を礼拝する

ようになったと考えられる。その有力な精霊が憑依したと信じられたシャーマンが儀式を執り行い、

それによって家族集団を超えた何百人、何千人といった大きな集団が形成されていったんだ。

そして、その有力な精霊が神として信仰されるようになり、その集団の成員はお互いに助け合うようになった。

だから、ある地域で食糧が不足した場合、食糧に余裕のあった地域の仲間が助けたんだね。

こうして、ホモ・サピエンスは激しい気候変動という環境をも何とか乗り切っていったんだ。

しかし、その頃のホモ・サピエンスの頭蓋骨には、石斧で殴られてできたような陥没のある頭蓋骨が

多数見つかっているんだ。」

 「えっ。どうして、そのようなことになるの?」


  

(2018/5/30)

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