『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』


 「罪なき者の苦難の意味を問うといった思想なんだ。罪なき者が苦難を受けることによって、私たちの

罪が贖(あがな)われるのだという考えが述べられていて、キリスト教成立に、特に、パウロの思想形成

に大きな影響を与えている。

 キリスト教成立については、前にも話したので、今回は、キリスト教の神の人格神という側面に焦点を

合わせて話してみることにするね。」

 「そもそも、人格って何なの?」

 「人格とは、いろいろな状況において、その人がどのような状況の捉え方をし、どのような行動を取っ

たのかという、その人の行動特性によって、その人と関係を持っている人たちが理解しているその人の

人物像と、その人自身が自覚している自己像との相互作用によって形成された、『ひとがら』、と言える

のではないかと思う。」

 「それはどのように形成されていくの?」

 「人格とは、要するに、環境世界をどう把握し、周りの人間とどういう関係を持っていくのかという、そ

の人の関係の仕方のかたちなんだよ。それは、乳幼児期に母親など、その人にとっての重要人物たち

との関係によって形成されていくもので、実体ではなく、ある程度習慣化された関係の仕方のかたちに

すぎない。だから、もともと、人格は不安定なものなんだ。」

 「そのことと、キリスト教の神が人格神であるということと、どう関係するの?」

 
     

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