『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』
「オリエント世界を初めて統一したのは、アッシリア帝国だったのだけれども、アッシリアは、圧政をし
たために被支配民族の反抗を受けて、統一からわずか60年ほどで新バビロニア王国とメディア王国の
連合軍に滅ぼされてしまった。ペルシア王はそれを反面教師としたんだろうね。被支配民族の宗教や
慣習を許容するなど、寛容な政策を採った。そこで、バビロンに捕囚されていたイスラエル人にもカナン
への帰還を許した、ということなんだ。
そして、帰還したイスラエル人たちは、『モーセ五書』を編纂し、神殿を再建した。ここに、自らを他から
儀礼的に遮断した、ユダヤ教団が成立し、ユダヤ教徒・ユダヤ人が誕生したんだ。」
「ユダヤ人って、血縁関係でつながった民族ということではないの?」
「サマリヤ人などは血縁的には、北の王国・イスラエル王国の末裔で、イスラエル人なのだけれども、
彼らは、カナンに定着してからは土地の神との習合が進んで、バビロンから帰還したユダヤ教徒たちに
とっては、ヤハウェとの誓約を守って律法を遵守しているユダヤ教徒とは認められなかった。逆に、イス
ラエル人ではない異邦人でも、ユダヤ教に改宗し律法を守り割礼を受けた者は、ユダヤ教団に受け入
れられ、彼から3代後の子孫は完全資格のユダヤ教徒・ユダヤ人と認められたんだ。」
「ヤハウェは、世界神・創造神と観念されるようになったけれども、ユダヤ教は世界宗教ではなく、あく
まで民族宗教なんでしょ。世界宗教のキリスト教につては、前に話してもらったけど、もう一度話してくれ
ないかな。」
「ユダヤ教は選民思想を持っていて、ヤハウェによって選ばれたイスラエル民族だけが唯一神ヤハウ
ェを信仰するという民族宗教なのだけれども、キリスト教は民族の出自に関係なく、イエスをキリストと信
じることによりキリスト教徒になれるということで、世界宗教へと変貌したんだ。
しかし、キリスト教の中心思想である、そのキリスト信仰も、『モーセ五書』にある、『第二イザヤの苦
難の僕(しもべ)』という思想に大きな影響を受けている。」
「『第二イザヤの苦難の僕』の思想って、どんな思想なの?」
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