『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』


 「未知の神を受容した背景には、戦争に勝つために各部族が強固に連合する必要があったことが挙

げられるけれども、それだけでは旧来の神を捨てきれなかったのではないか、モーセの神・ヤハウェを

受け入れざるを得ないような何らかの奇跡体験があったのではないか、と思う。

 『紅海の奇跡』は、浅瀬の海で大干潮があり、実際に海底が現れたのではないかと私は考えてい

る。」

 「そんなすごい体験をしたら、奇跡を起こした神を信じちゃうよね。でも、その後、習合は起こらなかっ

たの?」

 「やはり、すぐに旧来の神を礼拝したり、カナンに定着した後は、土地の神との習合問題が常にあっ

た。だから、『十戒』の第1条は『あなたは私のほかに、何者をも神としてはならない』というものなんだ。

初期の頃の神観念では、ヤハウェは妬む神であり、他にも神がいることが想定されている。ただし、『十

戒』は最初からあのようなものではなかったらしい。」

 「『大化改新の詔』が最初からあのようなものではなかったのと一緒だね。」

 「ところで、ばらばらだった各部族が一つの集団を形成し、それを維持していくために重要なことは何

だと思う?」

 
     

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