『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』
「それらの部族は、それぞれ弱小部族で、土地を所有している民族から差別されていたパーリア(賤
民)民族だったんだ。そして、出エジプトの時代、地中海東岸地域は、それまでシリアを支配していたヒ
ッタイト王国が海の民によって滅亡し、カナン(現在のパレスチナ)を支配していたエジプト新王国も国力
が衰退していた。そこで、シリア・カナンは都市国家の分立状態にあった。
その地中海東岸地域は、メソポタミアとエジプトとの交通路になっており、地中海への出入り口でもあ
り、また、比較的降水量の多い地域で、当時、レバノンにはレバノン杉の森林があって木材の供給地と
なっていた。そこで、過酷な自然環境・社会環境を生きてきたセム系遊牧民にとっては、是非とも手に
入れたい地域だった。」
「でも、既に都市国家が多数成立していたんでしょ。弱小の部族ではどうしようもないね。」
「そうなんだ。だから、彼らがそれらの都市国家を打ち破り、土地を手に入れるためには、セム系遊牧
民の各部族が連合する必要があった。しかも、それらの都市国家との戦争に打ち勝つためには、それ
ぞれが決して裏切らない強固な連合でなければならなかった。」
「そうか。それで、各部族が未知の神ヤハウェを受け入れることにより誓約連合を形成したんだね。そ
れにしても、各部族は、よく旧来の神を捨て、未知の神を受け入れることが出来たね。習合は起こらな
かったの?」
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