『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』


 「同じ神を信仰する集団内では、お互い助け合ったのだけれども、異なる神を信仰する集団と利害が

衝突した場合は、激しく戦ったのだと考えられる。実際、その頃の遺跡で、石斧で殴られてできたような

陥没のある頭蓋骨が多数見つかっている。」

 「ホモ・サピエンスが、3万数千年前には宗教を形成していたことを実証する何かが発見されたの?」

 「3万5千年前のホモ・サピエンスの遺跡であるロシアのスンギール遺跡から、マンモスの牙から作られ

た世界最古の指輪や50匹のホッキョクギツネの歯で出来た頭飾りなどが発見された。それらは、死者

のための埋葬品と考えられる。その頃のホモ・サピエンスは死後の世界に思いをはせていたんだ。つま

り、彼らは、死後の世界を想像する力を持ち始め、原始的な宗教が生まれていたと推測される。」

 「宗教の始まりに関して、他にも何か発見があったの?」

 「フランスで見つかったショーヴェ洞窟壁画は、約4万年前のホモ・サピエンスの遺跡なんだが、そこに

は現実には存在しない不思議な生き物の姿も描かれている。上半身は動物で足は人間の姿の絵など

も描かれている。また、顔はライオン、体は人間の半人半獣像も見つかっている。それらは、儀式を執り

行うシャーマンの姿ではないかと考えられる。つまり、原始的な宗教が生まれていた可能性が高い。そ

して、その宗教の力によって人々が結びつけられ、さっき話したような何百人、何千人といった大集団

が形成されていったんだ。そして、異なる神を信仰する諸集団が、利害が対立することにより、殺し合う

ことになってしまった。」

 「3万年以上も前から、そんな殺し合いが行われていたんだね。唯一神教が誕生すると、その殺し合

いは益々激しくなっていったんでしょ。唯一神教はどのようにして出現したの?」

 
     

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