『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』
「言葉を創造したホモ・サピエンスは、少なくとも4~3万年前には、今・ここを超えた想像力を身に付け
たと思われる。丸山圭三郎氏が言う、言分(ことわ)け構造が出来上がり、言葉によって紡がれた疑似
現実の世界に生きるようになる。そして、目には見えない精霊たちの世界・アニミズムの世界が現実の
ものと信じられるようになる。やがて、それらの精霊のうち、特定の精霊が神としてあがめられるように
なる。そうすると、同じ神を信仰する、かなりの大集団が形成されるようになるんだ。
そして、家族単位の集団しか形成しておらず、そのような大集団を形成することのなかったネアンデル
タール人は絶滅してしまった。」
「大集団の形成とネアンデルタール人の絶滅は、どう関係しているの?」
「3万数千年前の西欧は、激しい気候変動に見舞われ、ほぼ10年ごとに極端な寒冷化と温暖化を繰
り返していたことが分かってきた。その気候変動によって森林がなくなり動物も激減して、ネアンデルタ
ール人は食糧を確保できなくて絶滅してしまったんだ。ホモ・サピエンスの一種であるクロマニヨン人と
の戦いによって滅ぼされたわけではない。」
「激しい気候変動にあっても、クロマニヨン人はなぜ絶滅しなかったの?」
「クロマニヨン人は、大集団を形成していて、広範囲の地域において食糧の融通を行って助け合った
ので、絶滅を免れたんだ。しかし、そのクロマニヨン人同士が、殺し合いの戦いを始める。」
「お互いに助け合っていたのに、どうして殺し合ったの?」
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