『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』


 「樹上で二足歩行していた猿の一種が、地上で二足歩行して食糧を採集するという行動様式を身に付

けた。それは、本能に従った行動様式ではなかった。つまり、文化の始まりだったんだ。それが、700万

年前頃と考えられている。

 そして、450万年前から430万年前に生息していたとされるアルディピテクス・ラミダスは、一夫一妻の

家族を形成し、オスがメスの子育てを助けるという文化を作った。それは、人類の生存にとって、かなり

有利だったと思う。地上で、メスだけが子育てをするのは危険が大きすぎただろうからね。進化の途上

で枝分かれしていた他の種は、皆絶滅したと思う。

 それから、やがて複数の家族が集団で生活するようになる。これも、文化だね。道具を作り、武器を持

って集団で狩りをするようになると、お互いのコミュニケーションツールとして、言葉が作られるようになっ

た。このような進化を遂げたのは、たまたま、そのような文化を作った種だけであり、枝分かれした他の

種は絶滅したものと考えられる。」

 「そうか。人類は、たまたま作り出した文化が、激変した環境世界に対して適応した生き方となり、そ

れ以外の人類の祖先たちは、皆滅んだというわけだね。文化とは、人類が生き延びていくために必要

なものだったんだね。」

 「ところが、現生人類であるホモ・サピエンスは、ホモ・サピエンス同士で殺し合うという文化も作ってし

まう。」

 「どうして?」

 
     

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