『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』


 「パウロは、自分の精神構造の基本的な部分まで組み替え直した、本物の思想家だったからだよ。

自分はキリスト教徒だとか、マルキストだとか、ポスト構造主義者だとか言っている自称・思想家が

いるけど、そのほとんどは山本七平流に言えば、日常の行動様式において日本教徒にすぎない。も

ちろん、日本教徒だから駄目だと言っているわけではなくて、その本人にそういう自覚がなくて、自分

は何々主義者であると勘違いしていることが問題なんだ。しかし、パウロは、ユダヤ教徒としてのア

イデンティティ崩壊後、『イエスこそキリストである』というクレドー《思想の核となる信念》を基にキリス

ト教徒としてのアイデンティティと新しい世界観を自分で構築していった本物のキリスト教思想家だっ

た。」

 「だから、イエスの一番弟子と言われるペテロに対しても、自分の主張をぶつけることができたんだ

ね。ペテロとパウロの対立点の要点は何なの?」


     

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