『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』


 「山本七平が『日本教』と名付けた、日本の伝統的な文化の弱点が出たのだと思う。

 宗教を、人間の行動を根本的に規定している思想と捉えるなら、この頃の日本人は、『日本教』という

宗教によって、出来上がってしまった空気に対する抵抗力を失っていたのだと思う。

 その問題は、今も解決してはいない。」

 「文化って、そもそも何だろうね?」

 「前に、ダニの生態について話したよね。森に棲むダニは、目も耳もなく、人間から見ると何とみすぼ

らしい世界に生きているのだろうと思えるけど、嗅覚・触覚・温度感覚・全身光覚といった感覚を使っ

て、今・ここの自分の周りの環境世界を身分けし、自分が生き、子孫を残すのに必要な情報を入手する

など、本能にしたがった生活をしている。つまり、本能にしたがって、今・ここの現実に密着して生きてい

るんだ。

 それに対して、ヒトは、本能にしたがった行動の仕方では生きられなくなり、本能にはない行動の仕方

を作り出した。その、ヒトが作り出した行動の仕方を文化と言うんだ。」

 「ヒトは、どうして本能では生きられなくなったの?」

 
     

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