『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』


 「彼は、参謀本部の作戦課長だったとき、日中戦争に関しては不拡大方針を採っていたんだ。それ

で、関東軍参謀長だった東條英機(とうじょうひでき)と対立し、太平洋戦争開始前の1941年(昭和

16年)3月に、東條の根回しによって予備役に編入させられ、現役を退くことになったんだ。」

 「だから、東京裁判では罪に問われなかったんだね。東條英機は、なぜ、日中戦争不拡大方針に反

対だったの?」

 「東條は、明確な構想も戦争目的も持っていない人物であったと思う。

 1942年(昭和17年)、ミッドウェー海戦で敗北した年の暮れ、東條が石原を呼んで戦局の打開につい

て相談したとき、石原は次のように言ったという。『戦争の指導など君にはできないくらいなことは、最初

から分かっていることだ。このままで行ったら日本を滅ぼしてしまう。だから、一日も早く総理大臣を辞め

るべきだ』」

 「じゃなぜ、東條は総理大臣になって太平洋戦争を始めたの?」

 
     

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