『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』


 「伊藤は、日本が国民国家となり、徴兵制をしいて庶民が軍人として組織されるにあたり、日本の庶

民に欠けているものは何かを考えたに違いない。それは、西欧人が持っているようなバックボーンの欠

如であり、日本も、西欧のキリスト教にあたるような強力なバックボーンが必要だと考えたんだ。そし

て、その強力なバックボーンとして『国家神道』を導入し、庶民への浸透を図っていった。」

 「じゃ、戦前・戦中にあれだけ護持しようとこだわった国体というものは、実質的には、たかだか百数

十年前に始まったものだったの?」

 「そうだね。江戸時代の庶民は、天皇の存在については、あまり関心がなかったのだと思うよ。」

 「でも、大正時代には『大正デモクラシー』が日本社会に登場したんでしょ。なぜ、それが昭和に入る

と軍国主義に変わっていったの?」

 「大正デモクラシーのクライマックスは、1925年(大正14年)の普通選挙法の成立なんだ。女性には認

められなかったけれども、25歳以上の男性すべてに選挙権が与えられた。でも、ほぼ同時に治安維持

法も成立している。」

 「治安維持法ってどんな法律なの?」

 
     

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