『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』


 「それらの日本文化の核心的思想を、山本七平にならって『日本教』と呼ぶとすると、その日本教と最

も対照的な宗教はイスラム教であると思う。

 日本教徒にとって重要な行動指針は、自分の心が純粋であるかどうかなんだ。私心がなく、心清らか

であれば、自分の行動が正当化される。行動の結果についての責任はあまり重要視しない。つまり、

心情倫理・状況倫理での行動になる。

 それに対して、イスラム教徒の行動は、日常生活の行動に至るまで、絶対的な神が授けたという律法

に従った行動様式になる。だから、日本人でイスラム教に改宗する人は非常に少ない。日本人はその

ような戒律に縛られた生活を嫌うからね。

 キリスト教は、パウロの『信仰のみ』という思想によって、それまでのユダヤ教の律法からは解放さ

れ、社会的な行動の指針は世俗法に従うという伝統が形成されたので、日本人も比較的受容しやすか

ったと思う。

 仏教も戒律が重要なのだけれども、日本では、戒律はしだいに重要視されなくなっていく。

 さて、日本における朱子学の変容についてなんだけれども、それは、山崎闇斎の二人の弟子の思想

を見ていくと、分かりやすいと思う。」

 「二人の弟子って誰なの?」

 
     

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