『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』


 「彼は、師の山崎闇斎の日本的朱子学を拒否し、あくまで朱子学の正統を守ろうとした。つまり、朱

子学にとって絶対なのは天であって天子ではないということにこだわった人なんだ。

 彼は、『もし、天照大神が不行跡な天皇は蹴殺すと言っているなら立派だが、そう言っていないから

よくない』と言っている。」

 「直方の考え方が具体的に示された事例は何かあるの?」

 「それは、吉良邸に討ち入った赤穂浪士たちの処分に対する直方の批判に表れている。幕府は、

赤穂浪士たちに切腹を命じた。それは、彼らは主君に忠義を尽くすために吉良上野介を討ち取った

のであり、それゆえ、彼らに武士の名誉を守る形での切腹を許す、という考えからなんだ。

 それに対して、直方は、彼らは切腹ではなく斬首にすべきであると言っている。」

 「赤穂浪士たちは、主君・浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)の怨みを、命をかけて晴らした忠臣た

ちであり、義士ではなかったの?どうして斬首にすべきであると考えたの?」

 
     

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