『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』


 「第9代将軍・家重(いえしげ)の側用人から老中にもなった田沼意次(たぬまおきつぐ)の政策がそ

ういうものだったと思う。」

 「田沼意次って、時代劇では収賄行為を行う悪徳政治家として登場してたんじゃないの?」

 「田沼意次の悪評は、意次を追い落とし、幕府の老中となって権力を握った松平定信の代のものな

んだ。実際は、意次は当時のしきたり以上のものを要求したりはしなかったし、贈り物を喜んではい

なかったらしい。また、意次が亡くなった時、ほとんど財産が残っていなかったという報告がなされて

いるんだ。」

 「じゃ、どうして意次は悪く言われたの?」

 「意次は、米本位制に基づく政治ではなく、商業を重視した政治を行ったので、商業を蔑視する朱子

学の徒から、特に松平定信などから憎まれていた。だから、意次が失脚し定信が権力を握ると、意次

は収賄行為を行った悪徳政治家として断罪されることになった。」

 「意次の商業を重視した政治って具体的にはどんなことをしたの?」

 
     

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