『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』


 「その頃、幕府の直轄領である天領に派遣されていた代官たちは事実上世襲になっていて、その

代官たちの中には不正を働く者が多かった。綱吉はそれが許せなかったんだね。勘定吟味役(かん

じょうぎんみやく)という役職を新たに作って、萩原重秀(はぎわらしげひで)という旗本をその役に任

じ、厳しく取り締まらせたんだ。結局、萩原によって34名の代官の不正が暴かれ、彼らは罷免され

た。そして、そのほとんどが死刑になった。34名という数は、全代官の約6割にあたる。代官の不正

の追及はかなり厳しいものとなった。これは、組織内の身内同士でかばい合うといった日本人の心

情にとっては、許せないことであり、だから、旗本たちは綱吉に恨みを持ったんだね。」

 「そうか。他にも何か理由があったの?」

 「さっき話した、妊婦と7歳以下の子どもの名前の登録、そして犬の登録事務は武士の仕事で、そ

のような繁雑な事務作業は、武士たちにとってはやめて欲しい、しんどい仕事だったと思うよ。あと、

経済的な事情もあった。」

 「経済的な事情って何なの?」

 
     

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