『爺(じっ)ちゃんからの直伝・文化社会学の極意』
「それは、複数の理由が重なり合っての決断であったと思う。それらの中でも、光秀にとって最も重
要な理由は、信長の描いていた戦乱終了後の国の在り方が、光秀の理想とあまりにも違っていて、
光秀にとっては許せないものであったことだと思う。」
「具体的にはどういうことなの?」
「光秀は、平穏だった頃の室町時代の伝統的な秩序を再建したかったのだと思う。しかし、信長は
それらの秩序の破壊者であると、光秀は感じていたに違いない。だから、自分のアイデンティティを伝
統主義に依拠していた光秀は、自分の命に代えても阻止しようとしたのだと思う。
あとは、怨恨説とか、信長の油断が光秀に絶好の機会を与えたことなどが考えられるけれども、二
番目に重要なのが、信長の四国政策の転換であったと思う。」
「信長は、光秀に四国の長宗我部元親(ちょうそかべもとちか)の懐柔を命じていた。そこで、光秀
は家臣の斎藤利三(さいとうとしみつ)の妹を元親に嫁がせて姻戚関係を結んだ。しかし、信長は武
力による四国平定に方針を変更してしまった。そこで、光秀は、大坂に四国征伐軍が終結する直前を
見計らって、四国征伐を阻止するという目論見からも本能寺を襲撃したのだと思う。」
「そうか。でも光秀の天下はどうして三日天下で終わってしまったの?」
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